博士(医学)高木攝夫 学位論文題名
シラカンバ花粉症の臨床的研究と その抗原解析,花粉飛散調査
学位論文内容の要旨
北 海 道 の 花 粉 症 は カ モ ガ ヤ な ど イ ネ 科 の 牧 草 花 粉 症 が 主 体 で あ る と 考 え ら れ て き た が 、 最 近 臨 床 的 に シ ラ カ ン バ 花 粉 症 の 増 加 が 観 察 さ れ 、 こ れ ま で と は 異 な っ た印象を受けるようになった。
シ ラ カ ン バ 花 粉 症 は1972年 に 我 妻 ら が 本 邦 で は じ め て5症 例 の 鼻 炎 、 結 膜 炎 患 者 を 報 告 し 北 海 道 の 春 の 花 粉 症 と し て 知 ら れ る よ う に な っ た が 、 全 国 的 に 有 名 な ス ギ 花 粉 症 ほ ど は 調 査 さ れ て お ら ず 、 そ の 後 の 患 者 発 生 状 況 な ど に つ い て も ま と ま っ た 報 告 は な い 。 ま た 、 シ ラ カ ン バ 花 粉 の 抗 原 性 に つ い て は 、 北 米 、 北 ヨ ー ロ ッ パ な ど に お い て カ バ ノ キ 属Scandinavian Birch (Betula verrucosa)の 抗 原 性 に 関 す る 研 究 が な さ れ て い る が 、 日 本 に お け る シ ラ カ ン ′ く(Betula platyphyllaエSukatc hev var. japonica)にっいてほとんど知られていない。
し た が っ て 臨 床 的 に 増 加 が 観 察 さ れ る 札 幌 市 の シ ラ カ ン バ 花 粉 症 患 者 の 病 態 に つ い て は 患 者 発 生 状 況 に お い て も 、 原 因 と な る 花 粉 抗 原 に つ い て も 不 明 な 点 が 多 い。
こ れ ら の 観 点 か ら 以 下 の 研 究 を 行 い シ ラ カ ン ノ ヾ 花 粉 症 の 病 態 に つ い て 明 ら か に し た の で 報 告 す る 。 1) 当 科 ア レ ル ギ ー 外 来 に お け る 臨 床 集 計 よ ル シ ラ カ ン バ 花 粉 症 患 者 の 発 生 状 況 に つ い て 調 査 し た 。 2) 花 粉 症 の 原 因 と な っ て い る カ バ ノ キ 属 花 粉 の 札 幌 市 に お け る 花 粉 飛 散 状 況 に つ い て 調 ペ 、 シ ラ カ ン バ 花 粉 症 患 者 の 受 診 状 況 と 比 較 検 討 し た 。 3) 札 幌 市 の 主 な カ バ ノ キ 属 樹 木 で あ る シ ラ カ ン バ ( Betula platyp緲ZぬS,‖たaとcんeひひ0r.丿〔やoれfca)およびダケカン′く(BeとM缸ヱヶ′n0凡ぬ
Cham)の花粉についてその抗原性を分析し、患者血清中のIgE抗体との反応にっい て検討した。
その結果1)本邦におけるシラカンバ花粉症患者は最近数年間で増加している ことが判明し、臨床像としては男女差は少なく、年齢は30〜40歳に多いことが明 らかになった。
2)他の花粉症を合併している症例が44%存在し、カモガヤ花粉症合併例では時 期によっては診断に注意を要すると考えられた。
3)原因であるシラカンバ花粉の飛散状況調査では、過去の報告例と比較し花粉 飛散数の増加は認められないが、飛散開始時期および飛散ピークの早期化、飛散 期間の延長が観察された。
4)花粉飛散状況と気象の諸条件との関係を検討した結果、気温の変化と花粉飛 散数との相関性が示され、シラカンノヾ花粉の飛散をある程度予測可能となり、平 均気温が10℃を越えると飛散が急増すると思われた。さらに前記の花粉飛散形式 の 変 化 は 札 幌 市 の 気 候 の 変 化 が 大 き な 要 因 と し て 考 え ら れ た 。 5)今回抽出したB. platyphllaェSukatchev var. japonica花粉夕ンパクはPBS のみの系とToluene‑Glycerol/PBSの系でタンパク収集量に大きな差はなく、RAS T抑制試験によって抗原性が確かめられ、SDS‑PAGEを用いたタンfくク分析で17の バンドに分離された。またB. Erーmanii Chamも類似した17のバンドに分離された。
6)Western blottingを用いた花粉抗原分析においてシラカンバ花粉症患者血清中 の特異IgE抗体はほと.んどの症例でB.platyphlla Suたatchev var. japonicaおよび B. Ermanii Chamの分子量17kdのタンパクと反応を示し主要抗原と考えらえた。
7)また症例によってはその他の分子量のタンノヾクとの反応もみられ、シラカン バ特異IgE抗体には個々の症例によってHeterosteneityが存在することが判明し、個 体差を示すものと考えられた。
結論としてこれらの花粉抗原に対するアレルギー素因を持った個体に札幌市の 環境、シラカンバ花粉飛散状況の変化などが加わったことが、シラカンバ花粉症 増加の大きな要因と考えられた。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
シラカンバ花粉症の臨床的研究と そ の 抗 原 解 析 , 花 粉飛 散 調 査
こ れ ま で 北 海 道 の 花 粉 症 は 牧 草 花 粉 症 が 主 体 で あ る と 考 え ら れ て い た が 、 最 近 臨床上 シラカンバ花粉症患者を多く経験するようになった。
し か し 、1972年 に 我 妻 ら が 本 邦 で は じ め て シ ラ カ ン バ 花 粉 症 を 報 告 し て 以 来 、 全 国 的 に 有 名 な ス ギ 花 粉 症 ほ ど は 調 査 さ れ て お ら ず 、 そ の 後 の 患 者 発 生 状 況 な ど に つ い て も ま と ま っ た 報 告 は な い 。 ま た シ ラ カ ン バ 花 粉 の 抗 原 性 に つ い て は Scandinavian Birch (Betula verrucosa)の抗原性に関する研究がなさ れているが、日本 におけ るシラカンノヾ (Betula platyphylla Sukatchev var. japonica)についてはほとんど 知 ら れ て い な い 。 こ れ ら の 観 点 か ら シ ラ カ ン バ 花 粉 症 の 病 態 に つ い て 明 ら か に す ること を目的として以下の研究を行った。
1) 北 海 道 大 学 医 学 部 耳 鼻 咽 喉 科 ア レ ル ギ ー 外 来 に お け る 臨 床 集 計 よ ル シ ラ カ ン バ 花 粉 症 患 者 の 発 生 状 況 に つ い て 調 査 し た 。2) 花 粉 症 の 原 因 と な っ て い る カ バ ノ キ 属 花 粉 の 札 幌 市 に お け る 花 粉 飛 散 状 況 に つ い て 観 察 し 、 患 者 の 受 診 状 況 と 比 較 検 討 し た 。 3) 札 幌 市 の 主 な カ バ ノ キ 属 樹 木 で あ る シ ラ カ ン バ(Betula platyphyぬS出 脚ey眦 伽0n鰰 お よ び ダ ケ カ ン ノ ヾ (Be舶E舳 刪 の 紬 ) の 花 粉 に つ い て そ の 抗 原 性 を 分 析 し 、 患 者 血 清 中 のIgE抗 体 と の 反 応 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 (1) シ ラ カ ン バ 花 粉 症 患 者 は 全 花 粉 症 患 者 の50% 近 く を 占 め 、 過 去 に お け る 我 妻 、 小 崎 ら の 報 告 に 比 較 し 明 ら か に 増 加 し て い る こ と が 判 明 し た 。 ま た そ の 臨 床 像 と し て は 男 女 差 は 少 な く 、 年 齢 は30〜40歳 に 多 い こ と が 判 明 し 、 他 の 花 粉 症 を 合 併 し て い る 症 例 が44% 存 在 し 、 特 に カ モ ガ ヤ 花 粉 症 合 併 例 で は 花 粉 飛
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散 が 重 な る時 期があ るこ とか ら診 断に 注意 を要 する と考 えら れた 。(2)原因 であ るシ ラカ ンバ 花粉 の飛 散状 況調 査で は、 過去 の報 告例と 比較し花粉飛散数の増加 は認 めら れな かっ た。 しか しな がら 飛散 開始 時期 および 飛散ピークの早期化、飛 散 期 間 の 延長 が観察 され 花粉 飛散 形式 が変 化し てい るこ とが 判明 した 。(3)花粉 飛散 状況 と気 象条 件と の関 係を 検討 した 結果 、気 温の変 化と花粉飛散数との相関 性が 示さ れ、 平均 気温 が10℃を 越え ると 飛散 が急 増する と思われた。また前記の 花粉飛散形式の変化は札幌市の気候の変化が大きな要因として考えられ、シラカン バ 花 粉 症 増加 の大き な要 因と して 考え られ た。(4)シ ラカ ンバ 花粉 の抗 原解 析に お い て は 、今 回抽出 したB.pぬ卯 り仏Suわ 蝴eyy亂仰 夘ぬ 花粉 タン パク はPBSのみ の系とToluene‐GlyceroゆBSの系でタンパク集収量に大きな差はなく、RAST抑制試 験 に よ っ て抗 原性が 確か めら れた 。ま たSDS‐PAGEを 用い たタ ンパ ク分 析を 行い Coomassiebmliantblue染色で17のバンドが確認され、B.丘m釦丘のamも類似した17 のバ ンド が確 認さ れた 。(5)Wes他mb10tdngを用 いたシ ラカンバ花粉症患者血清 中の特異IgE抗体との反応解析では、ロ・pぬ抑んガZぬShんa¢ぬeDひnr.血p〇凡Zcロで は100%(35/35例)の症例で、B.Er′れ0nぬC仇8mでは97%(34/35例)で分子量17 kdのタンパクと反応を示し主要抗原と考えられた。また症例によってはその他の分 子量のタンパクとの反応もみられ、シラカンバ特異IgE抗体には個々の症例によって Heterogeneityが存在することが判明し、個体差を示すものとして臨床症状との関連 において今後の研究が期待された。
口 頭発 表に あた り川 上教 授よ り花 粉喘 息の 問題 と花粉 症増加における大気汚染 物質 など 環境 因子 の関 与に つい て、 寺沢 教授 よル シラカ ンバ花粉の抗原夕ンパク の存 在部 位、 また 鼻粘 膜上 にお ける 抗原 夕ン パク の侵入 過程について、小林教授 よりWestemb10ttingに おけ る患者血清中IgE抗体の濃度と抗原夕ンパクとの関係と Be舶ye.mJcmaの 抗原 夕ンパ クの抽出法、抗原性について質問がなされたが、申請 者 は 概 ね 適 切 な 回 答 を な した 。 ま た 副 査 の川上 、寺 沢両 教授 には 個別 の審 査を うけ合格と判定された。
以 上本 研究 は、 最近 花粉 症が 社会 問題 化さ れて いるな かで、札幌市におけるシ ラカ ンバ 花粉 症の 増加 を臨 床集 計か ら指 摘す ると ともに その患者像についても明 らか にし た。 さら に花 粉飛 散状 況調 査か らそ の原 因の一 端を究明し、札幌市の気 象の変化が大きな要因であることを解明した。またシラカンバ花粉の抗原性を免疫