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博士(水産学)高木健治 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(水産学)高木健治 学位論文題名

調 査 用 サ ケ ・ マ ス 流 網 の 網 目 選 択 性 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  北太平.洋を大きく回遊し、成長・成熟を遂げた後に、母川ヘ回帰し て産卵・再生産を続けるサケ科サケ属魚類に関する合理的な漁業資源 管理を行うためには、淡水域や沿岸域のみでなく沖合域を含む海洋生 活期における資源生物学的知見が必要である。

  資源研究の主要部分を占める商業漁獲物解析は、漁船の水揚物から 代表性の高い標本を抽出することによって行うことができるが、他方

、水揚げされた商業漁獲物とは別に、海の中にいる魚の集団の実態を 知ることが、資源管理のための調査研究にとって非常に重要である。

  海洋表層に生息するサケ.マスを採集する漁具としての流網は、作 業性に優れた効率的な用具である。しかし、流網は網目の大きさに適 合するサイズの魚だけを選択的に漁獲する・という特性を有するので、

単 一 の 目 合 に よ っ て 採 集 し た 標 本 は 母 集 団 か ら の 偏 り を 示 す 。   体長組成、年齢構成、性比、成熟段階、相対的豊度などに関する偏 りのない推定値を得るためには、代表的な偏りのない標本を採集する ことが最も肝要である。

  この目的のために、筆者は、サケ・マスを対象として48、55、63、72、 82、93、106、121、138、および157ミりという公比14%の幾何級数をなす 10種 類 の 異 な る 目 合 か ら 構 成 さ れ る 調 査 用 流 網 を 提 唱 し た 。   尾又長25〜 70センチの範囲内のサケ・マスに対して平滑な合成選択 性 曲 線が得 られ るよう に、実 用的知 見か ら設計 した10種目合 構成の 調査用流網により、1971年に実施した試験操業の漁獲資料を用いて、

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理論的に期待された選択性曲線を検証した。さらに、その結果に基づ いて実際に導入した10種目合調査用流網を使用して、'19 7..2〜1984年 にわたって得られた大量−データに基づく網目選択性曲線、新しい成長 曲線、沖合分布に関する新知見、魚群豊度指標の経年的変動など、の 主要な調査研究結果を解析した。

  試験操業資料から帰納的に求めたカラフトマスに対する選択性曲線 は、調査用流網の設計基準として用いた選択性曲線と時期・海域が同 じ場合は極めて良く類似した。横軸を体長とした時の網目選択性の相 対的効率のピークは、時期の推移にっれて左ヘ移動した。これは、魚 の 肥満 度 が時 期の 推 移に っれ て 増大 する こ とに よる と 判断 した。

  網目選択性曲線の精度を検証するために、同じ時期・海域において 操業した延繩調査船と流網調査船の漁獲資料を用いて、延縄による漁 獲物体長分布を母集団に見立てて、これに先に求めた曲線を当てはめ て、目 合別CPU丶Eの理論的な期待値 を計算し、次いで 、これと独立 に 求め た 流網 によ る 目合 別CPUEの 実際 の観 測 値と 比較 し た結 果、

両者の値は大部分で良く一致した。同様に平均尾又長の期待値と実測 値を求めて差の検定を行った結果、ここでも両者の一致度は高く、認 められた有意差は標本数の十分な月別の選択性曲線を用いれぱ解消す ると判断した。

  10種目合を組 み合わせた合成選択 性曲線は、時期の 推移にっれて 構成要素を成す各目合別の選択性曲線が、一様に左へ移動するために 相補的に働き合い、季節的な差異は僅かに両端部に現れるに過ぎない ことが判明した。28 cmから68cmまでの体長範囲のカラフトマスに対す る合性曲線の変動係数はO. 013〜O.035であり、殆ど平滑となり非選択 的に勧くという結諭を得た。

  各試 験操 業 点に おけ る10種目合のA型調査用流網と5種目合C型調 査用流 網のカラフ`トマス およびシロザケのCPUEの相 関はそれぞれ 極めて高く、また、両型網による漁獲物,の平均体長に有意差はなかっ

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たoA型網 とC型網の合 成曲線の変動係数 を此較したところ、 カラフト マスの場合O. 013〜0.035に対して0.084、シロザケではO.126に対して 0. 143と .A型 網 の 平 滑 性 が 優 れ て い る こ と が 認 め ら れ た 。   実際の調査 用流網操業におい て発生することが避けられない、各目 合の使用 反数の不揃い、特 定目合の欠如、魚体測定標本の部分的抽出 という事 態に起因する不完 全データによる推定値の偏りを評価した。

その結果 、使用反数や標本 抽出率の変動による年齢構成や体長組成の 推定値の 偏りは、補正しき れないことが判明した。他方、各目合の等 量反数使用と漁獲物全数測定という条件が満たされている限りでは・、

目合別にデ一夕がとられていなくても不偏推定値が得られるといえる。

  大量データ が利用できたので 、網目選択性曲線の推定手続きを簡便 化するこ とを試みた。本研 究においてシロザケ大型魚にっいて得られ た曲線の 形状は、カラフト マス、シロザケ・ベニザケ小型魚、ならび にシロザ ケ・ベニザケ中型 魚の曲線との類似性が高かった。それとは 対照的に 、ベニザケ大型魚 およびギンザケの曲線は、右側の傾斜が緩 やかで横に長く伸びるという特徴を示した。

  一般的な網 目選択性曲線とし て、縦軸を相対的効率として横軸を体 長 とす るa型曲線 、ならびに横軸を 目合とする声型曲線 があり、各魚 種 にっ いて両方の型の選 択性曲線を求めた が、a型曲線 の右側傾斜の 特徴は、 ロ型曲線では左側 傾斜の特徴として現れ、その意味する内容 は基本的に同様であった。

  10種目 合 調査 用流 網 の導 入に よ って 、従 来になく代表性の高 い標 本が大量 に採集されたので 、成長曲線の推定が有意義となった。ベニ ザケ雌にっいては次の成長式が新たに得られた。

ベニ ザケ 雌・未成熟魚  :L(t=556[1−e0.89(t−。. OI) ベニザケ雌・成熟魚  :Lt)=630[1−e−。・ 。 t−。・ ‖)]

  有漁率が50%以上の温度範囲を求めたところ、魚種毎の特徴が認め られ、これは北太平洋分布域の特徴的な位置関係と表裏一体をなし、

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さ ら に 沿 岸 来 遊 時 期 の 特 徴 と 結 び っ く こ と が 判 明 し た 。   すなわち、漁獲水温域の高いギンザケは南部水域に分布し、漁獲水 温域の低いべニザケは北部水域に分布し、シロザケおよびカラフトマ ス は 両 者 の 中 間 に 主 要 分 布 域 を 有 す る と い う 特 徴 を 示 す 。   また、カムチャッカ・オホーツク沿岸における来遊時期の魚種別順 序は、マスノスケ、ベニザケ、カラフトマス、シロザケ、ギンザケで あ り 、 漁 獲 水 温 域 や 分 布 域 の 特 徴 と 良 く 符 合 す る 。   7〜8月のアリュー シャン水域におい て、10種目合調査用流 網によ って採集されたべニザケ未成熟魚の資源量指数は、翌年のブリストル 湾ベニザケ来遊豊度との間に有意の相関関係を示した。この関係から 資 源 豊 度 の 経 年 的 比 較 お よ び 動 向 予 測 が 可 能 で あ る 。   本研究において、海洋に・おけるサケ・マスを一様な漁獲効率で採集 するために 、等比級数をなす10種 目合構成の調査用 流網は適切であ り 、 表 層 性 魚 類 の 調 査 用 具 と し て 役 立 っ と い う 結 諭 に 達 し た 。   今後の課題は、調査用サケ・マス流網の各目合の反数構成の吟味で あり、また最尤法の導入などにより流網選択性曲線の推定法を一層改

善す る こと が 望まし い。

(5)

   学 位論 文 審査 の 要旨 主 査    教 授    島 崎 健二 副 査    教 授    梨 本 勝昭 副査    助教授   小城春雄

       文 題  

調 査 用 サ ケ ・ マ ス 流 網 の 網 目 選 択 性 に 関 す る 研究

    北 太 平 洋 産 サ ケ 属 魚 類で あ る べ ニ ザ ケ 、 シ ロ ザ ケ 、カラ フト マス 、マ ス ノ ス ケ 、 お よ び ギ ン ザ ケ等 ( 以 下 サ ケ ・ マ ス と い う )は、 母川 回帰 性の 極 め て 強 い 溯 河 性 魚 類 で あ り 、 古 来 北 太 平 洋 諸 国 では 産 業 的 価 値 の 高 い 魚 類 と し て 伝 統 的 に 珍 重 され て き た 。 サ ケ ・ ・ マ ス は 淡水域 で孵 化し た後 降 海 し 、 北 太 平 洋 の 亜 寒 帯 水 域 を 大 回 遊 し 成 長 ・ 成熟 を 遂 げ る が 、 資 源 豊 度 を 予 測 す る 上 で 、 最 も 資 源 生 物 学 的 情 報 が 欠 如し て い る の は 外 洋 生 活 期 で あ る 。 特 に 外 洋 生 活 期 に お い て は 、 種 ご と に 体 長 組 成 、 年 齢 構 成 、 性 比 、 成 熟 段 階 、 相 対 的 豊 度 、 主 分 布 域 等 が 異な る た め 、 資 源 管 理 の た め の 基 礎 的 情 報 を 偏 り 無 く 得 る こ と が 強 く 求 めら れ る 。 海 洋 表 層 に 生 息 す る サ ケ ・ マ ス を 採 集 す る 漁 具 と し て の 流 網 は、 作 業 性 に 優 れ た 効 率 的 な 漁 具 で あ る が 、 網 目 の 大 き さ に 適 合 す る サ イズ の 魚 だ け を 選 択 的 に 漁 獲 す る 特 性 を 有 す る ので 、 単 一 目 合 に よ る . 標 本 は母集 団か らの 偏り

‑ 356

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を示す。

  本研究は、外洋域のサケ・マスの資源生物学的情報を得るための採集 器具として、公比14%の幾何級数をなす48〜157mmの10種類の異ナょる網 目から構成される「新調査用流網」を設計して、1971年に実験を行い、

その漁獲資料から理論的に期待される選択性曲線を検証した。その結果 に基づいて実際に導入した「新調査用流網」を使用して、1972〜1984年 に得られた大量データに応用し、網目選択性曲線、成長曲線、時空間的 分布、魚群豊度指標の経年変動等に関する結果を解析したもので、特記 すべき点を要約すると次のように示しうる。

  カラフトマスに関して、試験操業結果から得られた選択性曲線と、

「新調査用流網」の設計基準として用いた選択性曲線とは、時期と海域 が同一の場合は極めてよく一致した。また肥満度の時期的変化も反映さ れることが判明した。

  操業時期と操業海域が同一の場合には、延縄漁獲資料を母集団とみな して、理論的な目合別の,CPUEと平均尾又長の期待値を計算し、っいで流 網による実際の観測値を求めて比較すると、大部分で両者の値はよく一 致した。  「新調査用流網」の合成選択性曲線は、時期の推移にっれて若 干変化するものの、各目合の選択性が相補的に働き、僅かに両端部に差 異が現れるにすぎないことが判明した。体長範囲が28−68cmのカラフト マスに対する合成曲線の変動係数はO. 013ー0.035で、殆ど平滑となり非 選択的に働くという結諭を得た。

  各魚種間の網目選択性曲線の比較では殆ど類似していたが、ベニザケ 大型魚およびギンザケの曲線は、右側の傾斜が緩やかで横に長くのびる という特徴を示した。

    「新調査用流網」の導入によって、これまでになく代表性の高い標本 が大量に採集されたため、成長曲線の推定が有意義となった。ベニザケ

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雌にっいては次の成長式が新たに得られた。

    ベニザケ雌・未成熟魚:L(t)=556[1―e−。,89(t−。,001)]     ベニザケ雌・成熟魚  :L(t)=630[1―e―。,8°(t−o, 81)]   有漁率が50%以上の温度範囲では、魚種ごとに特徴が見られ、さらに 沿岸来遊時期の特徴とも結びっくことが判明した。すなわち、ギンザケ は南部海域に、ベニザケは北部海域に、そしてシロザケとカラフトマス は前二者の中間に主要分布域が形成されていた。

  カムチャッカ・オホーツク沿岸における来遊時期の魚種別順序は、マ スノスケ、ベニザケ、カラフトマス、  シロザケ、ギンザケであり、漁獲 水温域や分布域の特徴とよく符合していた。

  7¥8月のアリューシャン水域において採集されたべニザケ未成魚の資 源量指数と、翌年のブリストル湾のべニザケ来遊豊度との間には、有意 な相関関係が見出された。この関係から資源豊度の経年的比較および動 向予測が可能とぬった。

  以上の成果は、サケ・マス類の海洋生活期の生物学的情報を的確に把 握する方法論を確立し、資源豊度の経年的比較、および資源動向の予測 を可能にする道を開拓したに留まらず、本研究はまた海洋生態系におけ るサケ属魚類の季節的分布、種間関係、密度依存効果、そして環境収容 力等を生態系概念で研究することを可能にした点で極めて高く評価され るものである。よって、主査・副査は本論文が博士(水産学)の学位請 求論文として相当の価値を有するものと認定した。

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参照

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