コンピュータ・グラフィックスの美術教育への利用
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(2) 目. 次. 二 ■はじめに. 一e一一一一一一ie一一eetese 1. 凹1章 美術とコンピュータ・グラフィックス 1節 コンピュータ・グラフィックスとは. …一一一一一一・一 3. 1.CGの進化過程 2.CGの活用分野 2節 美術とCG. 1.美術の中でのCGの位置づけ 2.道具としてのCGの特性. ・一・・一一一一一・一 4. ・一一一一一一一・一 9 ・一・.一一一一一一・ 15. ・一一一一一一一・一 15 … 一・… 一・・… 一 21. ■2章 美術教育とCG. 1節 学校教育での平面表現 1.学校教育での平面表現の目標 2.学校教育での表現の道具と技法. 2節 平面表現の道具としてのCG 1.学校教育でのCGソフト 2.CGソフトの活用の現状 ■3章 CGでの平面表現に関する調査 1節 児童がCGに持つイメージに関する調査 1.調査の概要 2.作品単位での分析と考察 3.児童がCGに持つイメージについての考察 2節.児童の表現に関する調査 1.調査の概要 2.従来の描画材での表現とCGでの表現の比較. 3.児童のCG表現に関する考察 3節.道具としてのCGの受けとめ方に関する調査 1.調査の概要 2.従来表現との比較による分析と考察 3.CGソフトの使用感に関する分析と考察 4.道具としてのCGの受けとめ方に関する考察. ・・…. @一・・・・・・・・… 30. ・・・・・・…. @ 一・・・・… 30. ......・・・・…. @ e・・” 34. ・・・・・・・・・・・・・・・… ・・一・・・…. @ 38. @ 一一・・…. ・・・・・・・・・・・・・・・…. 38. @ 44. ’”””一一一… @ 一 54 ・・・・… ・…. @ 一一一・・…. 54. @ .・・一・・・・・・…. 58. ’’’’’”H一・・・・… @ 90 …. 一・・・・・・・・…. 一 99. ....・一・・一・e・・’” 99 ................e・ ・・・・・・・・・・・・…. P00. @ 一・・126. ・・・・・・・・・・・・・・・…. @ 129. ・・・・・・・・・・・・・・・…. @ !29. ・・・・・・・・・・・・…. @ .・・132. ..........・・…. @ e・’137. ・・・・・・・・・・・・・・・…. @ 144. 1節 教材化の視点. ・・・・・・・・・・・・・・・…. @ 146. 2節 CGを使った教材. ・・・・・・・… @. ■4章 CGの教育利用の可能性 1.混色など色作りにつながる教材 2.ユニークな表現を楽しみ発想を広げる教材 3.表現する行為を楽しむ教材 4.想像したことやイメージを表現する教材. e・’’’’”153. ・・・・・・・・・・・・・・・… ・・・・・・・・・・・・・・・…. …. e・…. ・・・・・…. @ 155 @ 163. ’’’’’’’’”170 @ 一・・・・・・…. 3節 CGを使った教材の問題点と方向性. ・・・・・・・・・・・・・・・…. ■おわりに. .........・・…. 176. @ 183. @ e・”186.
(3) ■はじめに. 昭和53年度の学習指導要領の改訂以降,美術教育は「表現の喜び」をキーワ ードに展開されてきた。絵画偏重の教育と作品主義からの脱却を目指して,領域 や時間配分の見直しがなされ,子どもサイドからの授業づくりが工夫されるよう になったのは周知の通りである。その中で表現の技術を鍛え,時間をかけて表現 させることが主流だった絵画は,表現を楽しむ活動を展開するために,子どもの 思いを表すことができる多様な表現のあり方が求められるようになった。近年よ く見られる様々な材料を貼り付けた半立体的な表現は,画用紙と絵の具だけによ る表現からの脱却でもあったわけである。. しかし,子どもが使っている画材は,改訂前のものと同じであり,種類も多い とはいえない。子ども主体の新しい多様な絵画表現の実現には,それを可能とす る新しい道具が必要なのではないだろうか。. コンピュータ・グラフィックス(以下CG)は,テレビや映画の特殊効果や, ゲー・・ムなどの娯楽の中でよく目にするようになった,コンピュータをメディアと. した表現である。最近のグラフィック・デザインもCGによるものが多いという。. ”限りなく本物に近いが,本物とは何かが違う不思議な表現”CGを見た誰しも が,まず感じる印象であろう。10年ほど前から,家庭用のパーソナル・コンピ ュータでも絵がかけるようになってきた。初期のものは,現在目にするCGとは 比べものにならないお粗末なもので,使える色も16色しかなかったが,表現の 仕方は,かく人の興味を引きつける独特の雰囲気を持ったものであった。パーソナ. ル・コンピュータは近年飛躍的な進歩を遂げ,それに伴いCGの機能も向上した。 プロが使うものと同じ表現ができるようになってきたのである。また,子どもを. 対象とした遊び心に溢れる「お絵かきソフト」とよばれる児童用CGソフトも登 場してきた。児童用CGソフトは,最近の子どもたちの最大の関心事であるコン ピュータ・ゲームソフトにまで移植されるほどの普及ぶりを見せている。. 平成元年度の学習指導要領の改訂では,学校教育の中に,コンピュータの指導 が位置づけられ,その設置が進められた。それに伴い高等教育の一部でしか扱う. ことができなかったCGも,中等教育及び初等教育の中で活用が可能となってき たのである。. 一1一.
(4) 「CGは,現在の美術教育の課題である”多様な表現”を実現できる,新しい表 現の道具として利用できるのではないか」これが,この研究のテーマである。. 研究を進めるには,道具としてのCGの表現機能を明らかにしないといけない。 そこで現在子どもが使っている描画材との比較を行うこととする。またそれと同. 時に,CGの誕生の背景や美術との関連も明らかにしないといけない。また,学 校教育で扱うことができるCGは,平面表現を中心に開発されており,表現や操 作性は従来のものとは異なる能力を要求される部分もある。新しい表現の道具と. しての可能性を探るうえでも,子どものCG表現の実態を調べる調査が必要であ る。これらをもとに,CGの美術教育での利用のあり方として, CGを使った教 材の開発を行うこととする。. そこで,研究の方法や手順は,次のような視点を検討,考察していくことから 研究のテーマに迫ることとする。. ○美術の中でのCGの位置づけや扱われ方などを明確化する。. ○学校教育での従来の描画材と,道具としてのCGの特性の比較によりCGの特 性を探る。. ○児童の表現に関する調査を行い,児童がCGに持つイメージやCGを使った表 現の実態,その受けとめ方を明らかにする◎. ○調査結果の分析からの,教材としての要素を抽出し,CGを使った教材の開発 を行う。. 尚,調査及び教材の開発は,この課題が提議された小学校の美術教育を対象と して行うこととした。. 一2一.
(5) ■1章美術とコンピュータ・グラフィックス 1節コンピュータ・グラフィックスとは 「コンピュータ・グラフィックス」という用語は,R. A.サイダースの『コ ンピュータ・グラフィックス』(1966)によると, 「コンビPt 一タ・グラフィック. ス」という言葉が一一般化する以前は,これを意味する言葉としてADE(Automat ed Design Engineering)あるいは,「デジグラフィックス(Degigraphics)」とい. う表現がされていた。「コンピュータ・グラフィックス」は,ADEを説明する 用語の一一種として使われていたと述べられている。この説明のための用語がいつ しか主客転倒し,現在では専門用語として用いられるようになったといえる。ま た, 「コンピュータ・グラフィックス(Computer Graphics)」を略して「CG」 と表現することが多いが,この略称は日本のマスコミ業界で生み出されたものが 一般化したものである。 CGは,工学の世界ではコンピュータのみを用いた画像生成と定義づけられて いる。これはCGの生い立ちや進歩の過程に関係することと考えられる。広義で. のCGは,工学はもとより様々な分野で活用されている,コンピュータを核とし たビジュアルな表現の総称といえる。この中には,文字や記号等の視覚情報も含 まれるが,本論文はCGと美術の関わりをテーマとしたものであり,文中でのC Gは,コンピュータによる造形的な視覚表現を指すものとして用いている。. 1節では,このCGの特性を明らかにするために, CGの起源と現在のCGに 至るまでの時代的な進化の過程をたどり,CGが応用されている分野とその活用 の形態について概観してみたい。. 一3一.
(6) 1.CGの進化過程 CGの進化は,コンピュータのハード的な進歩と密接に関係している。コンピ ュータの進歩は,コンピュータの心臓部ともいえるCPU(中央演算処理装置) に使われるものによって,第1世代から第4世代までの時代分けがされている。 この時代区分にそってCGの進化の過程を捉え,現代のCGの活用の実体をまと めてみたい。. (1)第1世代. コンピュータの誕生は,第ご次世界大戦の影響によるものであった。大戦中に アメリカ陸軍の弾道研究所の依頼を受けたモータリーとエッカートらによって, 大砲の弾の弾道計算を目的に開発進められた高速計算機がコンピュータのルーツ である。大戦終了の翌年1946年に完成した世界初のコンピュータは「エニア ック(ENIAC)」(図:1−1−1・一1)と呼ばれた。このコンピュータは,真空管180. 00本を使い,重さ30トンからなるものであった。この「エニアック」に続い て,プログラムを内蔵した「エドバック(EDVAC)」,外部制御を可能としたデジタ. ル・コンピュータ「バイナック(BIMC)」が,開発され1951年には,商業用コ ンピュータ「ユニパック1(UNIVACI)」が完成した。当時のコンピュータは「エニ アック」をはじめとして演算処理に真空管を使っていた。この真空管によるコン ピュータの時代が第1世代とよばれている。. 図:1−1−1−1断初のコンヒ’ユータ「エニアック」(1946). 一4一.
(7) コンピューータの芸術への応用は,美術よりも音楽が先であった。1950年以 前からニューヨークのコロンビア・プリンストン電子音楽センターや西ドイツの ケルン放送局などで実験音楽として創作が進められていた。1959年イリノイ 大学のL.ピラーとL.アイザクソンは乱数を使った作曲プログラムにより「イ リアック組曲」を発表している。この研究は楽器の音を人工的に再現する方向に 進み現在のコンピュータ・ミュージックの基礎となった。美術よりも音楽の分野 で研究が進んだのは,音の構成要素である波長や振幅が数字に置換しやすく,デ ジタル信号としてコンピュータで扱えるためであろう。. 美術の世界では,CGのルーツ的なものが作り出されている。コンピュータを 使い,ブラウン管に数学的曲線を表示させたものや,プリンターによって白と黒 の点でパターンを打ち出したもので,1950年頃から登場している。 1986年に開催されたコンピュータ・グラフィックスの世界会議である「シ ーグラフ(SIGGRAPH)」の「コンピュータ・アート25周年回顧展」では, B.ラ ポスキーの「オシロン40」(1952)(図:1−1−1−2)が,世界初のコンピュータ・ アートとして展示された。. ベル電話研究所の所員だったラポスキーをはじめとして,当時のコンピュータ ・グラフィックスの作者は,本来は科学者やエンジニアであった。コンピュータ ・アートはコンピュータを使った別の研究の過程で遊び的に生まれた副産物であ. ったともいえる。しかし,1963年にはアメリカのコンピュータ専門誌「コン ピュータ・アンド・オートメーション」に「誌上コンピュータ・アート展」が登 場するなど徐々に芸術としての地歩を固めて行いた時代であったといえる。. 図1−1−1−2B.ラボ’スキー「オ沌ン40」(1952). 一5一.
(8) (2)第2世代. 1960年代に入り,トランジスタやダイオードを使った第2世代コンピュー タの登場により,CGの世界も格段の進歩を遂げている。 航空機メーカーのボーイング社では,パイロットの動きを立体的に表現するた めに,「ワイヤーフレーム・モデル」(図:1−1−2−1)と呼ばれる方法を完成させ た。「ワイヤーフレームモデル」とは立体の形を,針金細工のように輪郭線で表 現する手法である。これは当時のディスプレイが「ベクトル・スキャン型」とい う線表示しかできないものであったために生み出された表現であるが,この「ワ イヤーフレーム」の表現が,3次元グラフィックスと呼ばれる立体表現の原形で あった。. さらに,1963年にマサチューセッツ工科大学のイワン・サザーランドによ って開発された「スケッチパッド・システム」(図:1−1−2−2)は,それまで機械. に人間が合わせて表現していたシステムをくつがえした。ディスプレーを利用し, 対話形式で,グラフィックス図形を取り扱うこのシステムは,人間の感性によっ てコンピュータに図形を表現させることを可能とした。このインタラクティブの 概念を持った図形処理システムが,現在のグラフィックス・ソフトのルーツだと いえる。. 羨 懲愚 図1−1−2−1「ワ二一フレームモテ●ル」ボーイング社(1960). 図1−1−2−2「スケッチパッド・システム」(1963). 一6一.
(9) (3)第3世代. 1970年代にはICやMSIが開発されコンピュータの第3世代を迎える。 「スケッチパッド・システム」を開発したサザーランドはユタ大学に移り「コン ピュータ・グラフィックスにおける10の未解決問題」という論文を発表した。 その中で陰線消去,ハーフトーンの表示,アニメーション用ソフトの開発,図形 表示のためのコンピュータとの会話技術などを課題としてあげている。サザーラ ンドのもとに集まった研究者は,次々とこの問題を解決している。G. S.ワト. キンスとJ.E.ワーノックは,1970年に陰線消去処理用のソフトを開発し た。陰線消去とは「ワイヤーフレームモデル」に見られる,本来見えるはずのな い背面の線(陰線)を消去することである。この陰線消去がなされたものは「サ ーフィスモデル」とよばれた。(図1−1−3)さらにH.グロウやP.ブイスオンに よって開発された「スムーズ・シェイディング法」により,「サーフィスモデル」 で作成した立体の,多面体の表面を滑らかな曲面で表現することが可能となった。. 1972年にE.カットマルとF.パークは,これらの技術を総括してつくりあ げた人間の顔を,コマ撮りして動きを与えたアニメーションである「ハーフトー ン・アニメーション」を完成した。. このアニメーションの作成には膨大な時間と多額の研究費が必要であった。資 金面を援助していたのはアメリカ国防総省であり,そのねらいはコンピュータ・ グラフィックスの産業や軍事利用であった。そのため,アート色の強いアニメー. ションの開発に対しては難色を示し,結果的にユタ大学の研究メンバーはNYI T(ニューヨーク工科大学)に移籍することなった。 「ハーフトーン・アニメーション」が開発されていた同時期に,オハイオ州立 大学では,C.クスリらによって「リアルタイム・コンピュータ・アニメーショ ン」の研究が進められていた。これは対話型で処理できる3次元ソリッドモデル によるアニメーション作りを目標としていた。この成果は1977年「アニマ皿 システム」として完成された。このシステムは,スムーズ・シェイディング処理 がなされない,多面体のままの表面を持つ表現であったが,インタラクティブな 操作性とビデオ信号による出力形式など,現在のアニメーション・ソフトの全て の要素をもったものであった。. 図1−1−3「ワイヤーフレームモデル」と「サーフェスモデ刻. 一7一.
(10) (4)第4世代. 現在使われているコンピュータは,1980年代に入ってから登場した,LS Iを演算処理に使った第4世代コンピュータによるものである。 「スムーズ・シェイディング」に見られるリアルさの追求は,リチャード.テ イラーらによって,作成したものの表面に材質感を貼り付ける「テクスチャ・マ ッピング」という技法を完成させた。また,「レイ・トレーシング」とよばれる 光の反射や写り込みを表現する技法や,「フラクタル」とよばれる自然界固有の の曲線を再現する技法も生み出された。これらの技法により,それまでのコンピ ュータ・グラフィックス特有の無機的な表現は,写真のようなリアリティの高い 表現へと向上していった。(図:1−1−4)また,コンピュータの周辺機器の進歩は 写真の取り込みや加工を可能とし「フォトレタッチ」とよばれる分野も登場して きた。さらに,「アニマ皿システム」からのコンピュータ・アニメーションの流 れは,テレビ用コマーシャル・フィルムや映画の特撮といった分野に応用され, 一躍,脚光を浴びることとなった。 一方,パソコン(パーソナル・コンピュータ)の性能の向上と一般への普及は, それまで研究機関やスタジオでしか触ることのできなかったCGを個人レベルで 操作することを可能とした。1990年代に入ってから,パソコンでの表示色も 最大1677万色となり,自然色に近いものの表現ができるようになった。また,. CD−ROM等のメディアの開発により大量の画像情報を得ることが可能となっ てきている。コンピュータは活用されだしてから,30年忌まりで,表現の形態 が,平面,立体,動画と進歩し,音楽情報や文字情報との複合からマルチメディ アと呼ばれるまでに至った。CGの作成に関しても,パソコンの高性能化と, C Gソフトの進歩により比較的簡単な手順で製作することができるようになってき ている。. 以上,CGの進歩をまとめてきたが, CGだけに限らずコンピュータは,各分 野で活用され進歩してきた。その際にCGは必要不可欠の要素となっている。こ れはコンピュータで処理した情報を活用する際に,CGがコンピュータと人間を つなぐインターフェイスとして非常に優れていたからである。この情報の視覚化 の方法としてのCGの発達は,近年,画質や表現形態の飛躍的な進歩に伴い,マ ルチメディアの中核をなすものとなってきた。また,パソコンの普及と高性能化 により誰もがCGを作成できるようになってきていることが明らかになった。 一8一.
(11) 2.CGの活用分野 前項でまとめたように,コンピュータは誕生してわずか30年あまりでめざま しい進歩を遂げ,社会に普及してきた。それに伴い情報の視覚化の方法であるC Gも,活用範囲が広がってきた。現在,CGが活用されている分野は図:1−2のよ うになる。以下,各分野でのCGの活用のなされ方をまとめてみた。. [iiiiiiiEiiiiii. 広告・コマーシャル. 璽. @x i /pm. CG一遡. [iig一/ / XEiiEiizz]. 巫. 図:1−2 CGの活用分野. (1)産業 「CAD(Computer Aided Design)」とよばれる,コンピュータによる設計支援. システムは,CGの進歩を促した一番大きな分野であったといえる。このCAD を使って1960年には,ボーイング社がジェト旅客機ボーイング737を設計 したのをはじめとして,電子関係,自動車,航空機産業等の分野で活用が進んで いる。現在,CADシステムは単なる設計支援システムからさらに進歩している。 CADで設計した製品や部品をシミュレーション・ソフトで実物と同じようにテ ストし,コンピュータで制御する自動工作機械によって組み立て,搬送するとい うFA(Factory Automation)へと変わってきた。 C A Dの中で, C Gは設計のた. めの図面作成から,製品の全体的なイメージや形状デザイン,さらに製品のシミ ュレーションと作業行程の中核をなしている。前項で述べたワイヤーフレーム・ モデルからテクスチャ・マッピングに至るまでの技術革新もこの分野の需要から 生まれたものである。 一9一.
(12) (2)ビジネス A.シュミットは『コンピュータ・イメージ』1)の中で「ビジネス分野では, 特定の活動は,膨大な情報をグラフィック・イメージの形で使用するが,大半が, グラフィックスをゴミニュケーションの手段としては利用していない。機械工学. や製造業は,グラフィックス・コミュニケーションに頼っている。ボーイング社 のリサーチでは,典型的な工業関係の文章は図表が30%,文章が65%,数字が5 %を占めているとしている。その他,一般的なビジネス・グラフィックスは,ガ ント・チャート,ネットワーク・ダイヤグラムが使われていて,マネージャーが 諸計画の立案や,モニターに使用する。シニア・マネージャーや重役も,表示説 明のためにグラフィックスを使用する。」と述べ,ビジネスでのCGの活用例と してマーーケティング,用地選択,潜在マーケット,市場浸透,財務管理,会計報 告,財務動向分析,投資分析をあげている。さらにビジネス・グラフィックスの 将来について「ビジネスの分野では,グラフィックスは業績のモニター,分析研 究,決定補助をするための経営レポートの規準となるであろう。定期的なデータ 中心のレポートは,グラフィックス・レポートの作成者によって作られるグラフ ィックス的要約を含むことになるであろう。マーケット・リサーチや,財務アナ リストによって行われるような専門的でアイディア中心の研究は,何が,いつ, どこで式の問の評価が可能な対話式グラフィックスを使用するようになるだろう。 プロジェクトの立案,数学的モデリングや開発訓練プログラムといったものも, 対話式グラフィックスの主要な用途となろう。」と予測している。この予測通り,. 1980年代初頭からのオフィス・オートメーションによるビジネス革命は,事 務の機器化をおしすすめ,文書をCGによりビジュアル化した。. (3)広告・コマーシャル. CGの最新技術を人々に知らせるのがこの分野である。1980年代に日本の 広告業界でブームを巻き起こしたCGを使ったテレビ・コマーシャルは,197 0年代にアメリカで完成した「デジタル・ビデオ・エフェクト」によるものであ った。この技術は,ビデオに収録した映像をコンピュータで制御しながら,新し い映像効果を生み出すものである。この技術は,テレビ番組のタイトルなどにも 使われている。前述のニューヨーク工科大学のR.テイラーは,CFプロダクシ ョン「トリプル・アイ(Information International Inc.)」を設立し,写真と. 見違えるようなリアルな映像をテクスチャ・マッピングによって作り上げている。 また,近年では「デジタル・ビデオ・エフェクト」の最新技術である「モーフィ ング」を使ったコマーシャルが話題になった。コマーシャル以外にも,パッケー ジのデザイン,企業のトレードマークやロゴタイプの制作,タイポグラフィの選 定,イラストレーションの制作など様々なかたちで利用されている。. 一10一.
(13) (4)娯楽. 広告・コマーシャルと並んで人々がCGを目にするのがこの分野である。特に. 映画の分野では特撮場面にCGを使い演出効果を高めている。1981年に作成 されたSF映画「トロン」では,美術担当のD.エムによる幻想的なCG(図= 1−2−4)が話題となったのをはじめとして,「SFX」とよばれる映画の特殊撮影 には不可欠な要素となっている。また,前述の「デジタル・ビデオ・エフェクト」 と「SFX」は,現在のテレビ放送の舞台美術や画像合成にも使われており,ハ イビジョン・テレビ映像でも活用が期待されている。さらに,「テレビ・ゲーム」 の分野でのCGの活用はめざましく,最新の視覚効果をインタラクティブなかた ちで人々に提供している。. 図:1−2−4 「トロン1こ使われたCG」(1981). (5)医学. 医学研究や診断,治療器機と医学の分野でコンピュータが活用されるにつれて, 生物医学情報を表す分野でCGが活用されている。 X線写真や断層写真スキャン などの2次元画像から得られた情報を,完全な3次元画像として表示する機能を 使って検査がおこなわれている。この外部からの検査により,試験的手術の必要 性は減ってきている。また,薬学の分野でも分子構造のモデル化と,各種の薬剤 成分の付加手段としてCGを使っている。(図:1−2−5). 図:1−2−5 「DNA分子モデル」. 一11一.
(14) (6)教育. 1960年代にM.ミンスキーによって提唱された「CAI(Co叩uter Assis ted Instruction)」は,コンビュー一三での授業の支援を目指すものであった。当. 初,CGは文字や言葉では説明が難しい図形や,各種のシミュレーション等に利 用されるだけであった。しかし,近年のパーソナル・コンピュータの性能の向上 とグラフィック・ソフトの進歩により,学習者が主体的に学習を進める道具とし てコンビュー・タを利用する「ツール的利用」が一般化してきた。その中でCGは 教師により作られ提示されてきたものから,学習者により作られるものへと変わ ってきている。アメリカでは1980年代に,ニューヨーク工科大学の工業デザ イン科の教育課程にCGによるレンダリングが採用され,ブラウン大学では基礎. 造形教育の色彩構成にCGが取り入れられている。日本でも1989年度の学習 指導要領に情報機器としてのコンピュータの活用が位置づけられてから,義務教 育の中でCGを取り扱うことが可能となってきた。この内容は,本研究と大きく 関わることであり,第2章で詳しく述べるものとする。. (7)デザイン デザインの分野は,グラフィック・デザイン,工業デザイン,建築デザインな. ど様々であるが,その中でCGは,配色,パターンづくり,レイアウト,タイポ グラフィなど多くの分野で活用されている。それぞれの用途に合わせたCGソフ トが開発されデザイナーの多くが,今までの道具に加えてコンピュータを新たな ツールとして利用している。特に工業デザインやインテリア・デザイン,クラフ ト・デザインでのクライアントに対するプレゼンテーションでは,今までのレン ダリングによる説明から,CGによる3次元グラフィックスの説明に変わってき ている。これは,短時間で部分的にデザインを変更したり,色を変えたバリエー ションを提示したり,さらに見る視点を移動することも可能とするCGの利点に よるものである。. デザイン界とCGの関係について,河北英也は『デザイン原論』2)の中で「ク オンテルのグラフィックペイントボックス・システムは,今までのグラフィック ・デザインの形態を根底から変えてしまうものである。グラフィック・デザイナ ーの職業訓練(習得しなければならなかった数々の技術訓練)を必要としなくな る。具体的にいえば,ロットリングで細い線を引くことも,色を塗ることも,エ アー一■ブラシを使うことも,いとも簡単に,何の訓練もなしにできてしまう。誰で. もできるということは,グラフィック・デザイナーでなくてもできるということ だ。一中略一確かにグラフィック・デザインの技術だけを売り物にしてきた人達 は失職するかもしれない。線を引くのが上手だとか,色を塗るのがうまいとかエ アーーブラシの名人とかは危ないだろう。このシステムは,単なるコンピューータ・. グラフィックス・システムではない。まだまだ問題は残しているが,ほぼ完成に 近づいている現代の絵の具箱,それも万能の絵の具箱である。表現する人間が芸 術的能力を持っていれば自由自在に表現することができるのである。芸術的能力 一12一.
(15) (哲学,思想,造形力,イメージ・…)があればの話である。このことは大変重 要である。今までの技術のうまさだけで表現されてきたものは,全て埋没するこ とになる。このシステム以降のグラフィック・デザインは非常に本質的な問題, 芸術的能力やメッセージの質が問われるようになるだろう。」と述べている。こ れは,CGを使うことによって,今までの技術や技法が中心であった表現が,発 想やイメージを中心としたものになる可能性を示している。 (8)芸術. CGの使われている各分野についてまとめてきたが,多くの分野ではCGは情 報を視覚化することを目的として使われている。これは,パーソナル・コンピュ ータの分野で,近年,「GUI(Graphic User Interface)」ということが注目さ れコンピュータと使用者とのコミュニケーションの方法としてグラフィックスを 用いることが一般化していることにも見ることができる。 情報の視覚化について,安居院猛は『コンピュータグラフィックスーこれから の画像情報シリーズ5一』3)の中で「CGは,科学,工学,芸術,医学等多くの 分野において活用されているが,その目的は,コンピュータによる各種のデータ の一 ツ溢血すなわちビジュアライゼーションである。たとえば科学の分野(気象, 流体特性等)における大規模なデータをスーパーコンピュータによりシミュレー ション解析した結果を,分かりやすくグラフィックス表示することをサイエンテ ィフィクビジュアライゼーションといい,現実に我々の身の回りにある“物”を 対象に,まるで写真で撮ったようにCGの技法を用いてその画像を生成すること を,フォトリァリスティク・ビジュアライゼーションという。」と述べている。 しかし,CGの使い方が,明らかに他の分野と異質である分野が美術である。 この分野でのビジュアライゼーションは,サイエンティフィクともフォトリアリ スティクともいいきれない。これは美術が視覚化の方法を追求してきた分野であ るためであり,CGはその一方法であったからである。 CGによる最初の美術作品は,コンピュータ技術者の遊び的な試みから生まれ て物であることは前項で述べたとおりである。しかし,コンピュータの進歩に伴 い,コンピュータでの画像作成に美術的な表現の要素が取り入れら表示能力が向 上すると,今度は逆に,コンピュータでの画像作成が美術にフィードバックされ るようになってきた。. デザインの分野でのCGは表現のための便利な道具としての浸透していること は前述のとおりである。また,CG自体を新たな表現の手段とする流れも見られ る。河口洋一郎は『コンピュータ・イメージ』4)の中で「“計算機”から出発し てコンピュータは,様々な仕事を代行してくれたが,画像においては,単に労力 の省力化や合理化にとどまらず,全く新しい視覚表現の方法を顕在化したのであ る。殊にラスター・グラフィックスによるカラー表示技術は,芸術やデザインに イメージの拡大をもたらした。すなわち造形に数学的手法をもちこんだことであ る。」と述べている。このように美術分野でのCGは,新しい表現の道具や表現 の方法として使われている。 一13一.
(16) 以上のように,コンピュータは誕生してから30年あまりで急速に進化し社会 に普及してきた。CGも,コンピュータの進歩と普及に伴い,初期のワイヤーフ レームによるものから,写真と見分けがっかないくらいのものへと進歩し,産業 やビジネスなど,多くの分野で活用されるようになってきた。しかし,これらの 分野でCGを使う目的は,あくまで情報の視覚化であり, CGは作成した側から, 受け取る側へ送られる情報の形態でしがなかった。ところが,このようなCGの 使い方と全く違った扱い方をしたのが美術の分野であった。1963年のスケッ チパッド・システムの開発以来,CGはコンピュータの専門家でなくても作成が できるようになってきた。このCGでの表現に注目し,新しい表現の方法として CGを扱ったのが美術の分野である。また,近年のパソコンの進化と普及により, だれもがCGを作成できるようになってくると, CGは表現の道具として扱うこ ともできるようになってきた。CGを単なる情報としてではなく,表現の方法や 道具として扱っている美術の分野とCGの関係について,さらに明らかにしてい くこととする。. 一14一.
(17) 第2節 美術とCGの関係 1節でまとめたように,CGが美術の分野で扱われるようになった出発点は, コンピュータに携わる科学者の遊び心からであった。勿論,最初に作られたCG は美術とよべるようなものではなかったが,そのCGによる表現のおもしろさに 注目した芸術家たちがCGを美術の分野に取り入れたのであった◎そこで,美術 の分野に焦点を合わせ,CGと美術の関係を明らかにしていくこととする。その 中で,CGは美術の中でどんな位置におかれ,どのように発展したのかを探り, また,新しい表現の道具としてのCGの特性が何であるかを考察してみたい。. 1.美術の中でのCGの位置付け コンピュータが第二次大戦終結の翌年に完成し,進歩してきたことは前に述べ たが,第二次大戦後の美術の流れも大きく変化している。高階秀爾5)は現代美術 の特徴について次のように述べている。「今日では,絵画,彫刻,建築といった ような伝統的分類では捉えきれない作品が数多く作られているし,パフォーマン スやハプニングのように,伝統的な美術の枠からはみ出た試みも少なくない。一 中略一このような傾向は,ある程度までは戦前の前衛的な試みにおいても見られ. たが,第二次大戦後の混乱が一応落ち着きを取り戻した1960年代頃から,い よいよ顕著になって来たものである。その意味で,かつては『フォーヴィスム』, 『キュビスム』『シュルレアリスム』など,主として『イズム』(主義)によっ. て捉えられてきた美術の流れが,1960年代以降,『ポップ・アート』『オッ プ・アート』,『キネティク・アート』など,もっぱら『アート』(芸術)とい う名称で呼ばれるようになっていることは,はなはだ象徴的である。そのことは, 野獣派や立体派が飽くまでも美術の枠の中での運動であったのに対し,現代の新 しい試みは,それ自体が新しい別の『芸術』を生み出すものだということを暗示 的に示しているからである。それらの新しい『アート』の中には,『ライト・ア ート』や『ランド・アート』(土地の芸術)のように,新しい方法や材料を追求 しているものもあれば,『ミニマル・アート』や『コンセプチュアル・アート』 のように,芸術の在り方に鋭い問題意識を投げかけるものもある。芸術とはいっ たい何なのかという問題が,改めてクローズアップされてきているのである。」 大戦前の美術の枠からはみ出し,様々な方向性を求めるアートが混沌としてい る現代美術の流れの一つにコンピュータ・アートの存在を見ることができる。コ ンピュータ・アートを含む一連の流れはテクノロジー・アートとよばれている。. そこで,CGと美術の関係を明らかにするために,テクノロジー・アートの流れ を追い,そこに含まれるコンピュータ・アートを概観してみたい。. 一15一.
(18) (1)テクノロジー・アート マクルーハンは『メディアはマッサージである』6}のなかで「総合的な電機的. 情報によって作り出された現代の家庭の環境と教室の環境間には,大きな違いが ある。今日のテレビっ子は”おとな”が受け取る最近のニュースーインフレー ション,暴動,戦争,税金,犯罪,入浴している美女など一に波長を合わせて いる。そしていまだに十九世紀の環境そのままの教室にはいると途方にくれてし まう。そこでは情報が,量は少ないのに,断片化され,分類されたパターン,科 目,時間割によって配列され,構成されているからである。それはまさに,在庫 表と流れ台作業によって構成された工場とよく似ている。」とのべている。60 年代にメディア論とよばれたこの考え方は,テレビなどの新しいメディアによっ てもたらされた情報環境に対応できるように,社会や人間を変えていかなければ ならないというものであった。この考え方は80年代初頭,アルビン・トフラー が『第三の波』の中で述べた通信による高度情報化時代の到来に備えて社会の仕 組みを再構築しなければならないという考えと通じるものである。産業革命以降, いつの時代にあっても社会とテクノロジーは密接な関係にあり,マクルー一期ンや トフラーのように,テクノロジー一にあわせて社会の仕組みを変容させるという考 え方が支持されてきた。現在,社会や教育でおこなわれている様々な改革も,こ のテクノロジー崇拝論が背景にあるといえる。 現代美術の中でこのようなテクノロジーを崇拝した流れは「テクノロジー・ア ート」とよばれた。. テクノロジーアートのはじまりは,立体造形に「仕掛け〈機械〉による動き」 という要素を持ち込んだ「キネティック・アート」であった。先駆者としては, モホリ・ナギやマルセル・デュシャンがあげられる。ナギは「光・空間の調節器」 という作品に,デュシャンは「回転するガラス板」(1920)という作品に,モー ターによる動きを取り入れた。この流れはアレキサンダー一・カルダーの初期のモ ータ■一・一によるモビール作品にも見ることができる。この「仕掛けによる動き」を. 発展させたものは,「サイバネティックス」とよばれた。各種のセンサーにより 外部の情報を感じとり,その情報に反応して形を変えたり動いたり,さらには光 りや音で反応するものも制作された。シェフエールの制作した「光の塔」(1961) は,多数の反射鏡と投光機とコンビ訊一タを組み合わせたものであった。イン・ ッァイの「サイバネティックス彫刻」(1966)は動きや音に反応して動いたり発 光したりするものであった。 「動き」に加えて「光」という要素を追求したものが「ライト・アート」であ る。「環太平洋博覧会」(1936)は,白熱電球で照明された展示が話題となり劉 名「ライト・』 Aート展」とよばれた。この「ライト・アート」は光源のテクノロ ジーの進歩とともに進化した。レーザー光線による「光」と,コンピュ・一一タ制御. による「動き」が加わった「ライト・アート」は大阪の万国博覧会(1970)で話 題となった。. 一方,平面の中で「動き」を追求したものは「オプティカル(オブ〉・アート」 一16一.
(19) とよばれた。目の錯覚を応用し,動かないものを動くように見せる「オブ・アー ト」は「応答する目の展覧会」(1965)を契機として一般に広まった。ブリジッ ド・ライリーの波模様やV・バザルリの市松模様の作品で知られる,この錯視に よる美術は,エッシャーの「だまし絵」から風景画的要素を取り除いた,幾何学 抽象絵画であった。この流れのテーマは,イリュージョンであり,近年ではラン ダムドット・ステレオグラムで知られる3Dがこの流れをくむものである。 「ビデオ・アート」はVTRの進歩とともにうまれたものである。先駆者とし て知られるナムジュン・バイクは複数のモニターとVTRを組み合わせて作品を 制作した。「ビデオ・アート」の形態は上映用のビデオ作品だけでなく,インス タレーションの一部や,パフォーマンスの記録もその中に含まれる。 「テクノロジー・アート」の流れを追っていくとその所々にコンピュータが関 わりを見せてくる。(表:1−2−1)この最先端テクノロジーの産物であるコンピュ ータ自体をメディアとして制作されたものがCGであり,「コンピュータ・アー ト」とよばれるジャンルである。. 表:1−2−1テクノロジーの進歩とテクノロジー・アートの流れ ハイテクノロジー. テクノロジー・アート 1920デュシャン「回転ガラス板」. 初のキネティク・アート作品 1931カルダー,モビール作品 1945. 946初のコンピュータ. 1947バザルリ. 「ENIAC」完成 948トランジスターの開発成功 948ガボール,ホログラフィーの原 理発表 950ノイマン型コンピュータ. オブ・アートでデビュー. 1950. 「EDVAC」稼働. 1952「オシロン40」初のCG作品 1954シェフエール 初のサイバネティックス作品 1955. 956VTR実用化始まる 9561C開発成功. 1958初のマルチ・スクリーンの実験 映画. 1959「イリアック組曲」. 960レーザー光線開発成功. 1960. 963ホログラム開発成功 963世界衛星テレビ中継実用化. 初のコンピュータ音楽 1960ホイットニー,グラフィック・ デザインにコンピュータを使用 1961シェフエール「光の塔」 1963「Computer and Auto皿ation」. に誌上CG展登場 一17一.
(20) 1965. 1963バイク,初のビデオアート作品 1965「応答する目の展覧会」 (ニューヨーク近代美術館) オブ・アートを世界に広める 1966イン・ッァイ 「サイバネティックス彫刻」 1966ケージ「音楽とテクノロジー の実験ループ」結成. 1967幸村真佐男,CTG結成. 1969アポロ計画成功 19704ビット・マイクロプロセッサ 一量産開始,電卓が普及 19738ビット・マイクロプロセッサ 一量産開始,パソコンが登場. 1970. 1968サイバネティック・セレンデピ ティ展 1969ホログラフィー個展 1970大阪万博,ライト・アート キネティク・アートの競演 1973第1回コンピュータ・アート展. (CTG)開催 1974CG国際学会 1975. 「SIGGRAPH」創立. 1976家庭用VTR発売開始 1978日本語ワープロ登場 1978テレビゲーム登場 1979P C 一一 8 O 01(NEC)発売開始. 198C. 198116ビット・パソコンが登場. 1982CD発売成功. 1982「第1回コンピュ・一一タ・アート. ショウ」(SIGGRAPH)開催 河口洋一郎出品. 1983光ファイバー一. 世界通信網敷設開始 1983ファミリー・コンピュータ登場 19848ミリビデオ登場 ビデオカメラが普及 1985超伝導物質の開発. 1984バイク,衛星中継番組制作 1985. 1985つくば科学博,3D映像の競演. 198632ビット・パソコン登場 1986CGソフト「Illustrator」発売. 1990CD−ROM量産開始. 1990. 1995「インターネット」通信開始. (2)コンピュータ・アート. コンピュータの進歩とともに生まれたCGは,「コンピュータ・アート」とい われる分野を生み出した。この分野は当初「オートマチィク・ドローイング」と 一18一.
(21) 呼ばれ,コンピュータが自動的に描いた絵のような捉え方をされていた。正式に 「コンピュータ・アート」という名称が生まれたのは,1968年にロンドンで 開催された「サイバネティック・セレンデピティ展」であった。機械的な表現が 新しいと受け入れられた「コンピュータ・アート」が,現在のものに至ったのは, コンピュータの進歩に伴う表示能力の向上が大きな要因であったが,それ以上に CGを使って新しい表現を追求したアーティストの存在によるものが大きい。こ の分野で活躍したコンピュータ・アーティストに目を向けて,「コンピュータ・ アート」の流れを追ってみる。 コンピュータ・アートの胎動期のアーティストとしては,前述のB.ラポスキ ーなどがいるが,この分野を世に広めたアーティストとしては,K.ノールトン とL.ハーモンがあげられる。二人はベル研究所の研究員であったが,コンピュ ータを美術の分野に取り入れる試みをしたパイオニアであった。彼らによる「コ ンピュータ・ヌード」(1966)は,それまでの文字や記号を曖昧に並べるだけの単 純な表現から進歩し,カメラからコンピュータに入力した写真の濃淡を,濃度に 応じたタイプフェイスに置き換えて出力したものであった。 C.クスリはオハイオ州立大学の教授で,前述の「アニマ∬・システム」の開 発者である。彼はコンピュータのアルゴリズムの持つ特性を芸術に応用した作品 で知られている。コンピュータで発生させた「乱数」を人物の線描画に投入し, 部分的に不規則な“ずれ”を起こす表現や,「座標変換」を応用してものの形を 凹面鏡や凸面鏡に写ったように見せる表現を生み出した。これらの数学を応用し た表現は後の多くのコンピュータ・アーティストに影響を与えている。. 日本でのコンピュータ・アートは1967年,多摩美術大学の学生であった幸 村真佐男をはじめとするCTG(コンピュータ・テクニック・グループ)によっ て生み出されている。このアーティストたちは,M.モンローやJ. F.ケネデ ィなど時代的なテーマを,XYプロッターを使い,インクの濃淡やペンによる線 で紙に表現した。規則的な繰り返しや,形態をメタモルフォーゼさせる技法は,. 前出のC.クスリの影響が見られるが,斬新でポップな表現は1968年のサイ バネティク・セレンデピティ展で好評を博し,日本のコンピュータ・アートを一. 躍有名にした。この後,1982年忌CGの国際学会である「シーグラフ(SIGG RAPH)」の「第1回コンピュータ・アート・ショウ」には,河口洋一郎のアニメ ーションが出品され高い評価を得た。 CGをテレビというメディアに持ち込んだアーチストもいた。ロバート・エイ ブルはテレビ・コマーシャルにCGを使い,コンピュータ・アニメーーションを一 般の人々に知らせた。全米コマーシャル・コンテストの「クリオ」賞をほとんど. 独占したエイブルは,1979年,日本のCMも手がけ,日本にコンピュータ・ アニメーションのブームをもたらした。また,リチャード・テイラーらが創設し た「トリプル・アイ(lnformation International Inc.)」は,テクスチャ・マ ッピングのレベルを高め,本物のような質感を持ったCGによるコマーシャル・ フィルムを制作した。これらのCGによる映像技術はテレビや映画の特殊撮影へ と発展していく。 一19一.
(22) テクノロジー・アートについて,若林直樹は『現代美術入門』7)の中で「テク. ノロジーをテーマとするような芸術には,大きな弱点がある。それはテーマとさ れている技術が古くなると,作品そのものまでひどく陳腐になってしまうことだ。 だから,キネティック・アートもサイバネティックスも数年,場合によっては数 七月でただの機械になってしまった。」と述べている。確かに,オブ・アートに してもビデオ・アートにしても過去の一時代を象徴するアートであり,新しさを 感じる表現ではない。「コンピュータ・アート」もテクノロジーを背景に進歩し てきたものである以上,同じように時代に凌駕されるものなのであろうか。同じ く若林直樹の引用を続けると,CGについて次のような記述がある。「80年代 になるとCG世界に微妙な変化が現れた。それは, CG映像の陳腐化だった。ゲ ームセンターや子供用ファミコンゲームにさえ,CG作家を叩きのめすようなビ ジュアルが氾濫し始める。産業としては成功,しかしアートとしてはどうか。C Gは,最新技術を使ったものがよいアートだと考えてしまうテクノテーマの芸術 だったのである。そこでレイ・トレーシングまで到達して,それが産業化されて しまうともう先がなかった。60年代にキネティック・アートなどに手を染めた 作家たちは,とうに気がついていたことである。技術を追った作品は,その技術 が陳腐化したときに無惨に投げ捨てられるのだ。CGは日進月歩のコンピュータ に振り回されていて,現代美術にまつわるこの問題を考えてみようともしなかっ たのである。CGだろうと絵には違いない。絵を描くとはどんなことなのか。二 十年の眠りから醒めたCG作家には考えなくてはならないことが山ほどある。第 一,コンピュータを扱えるということだけでは,何の意味もなくなってしまった。 パーソナル・コンピュ・一一タの普及によるCG制作の大衆化が始まったからである。 そして,この大衆化の中からCGの本来の可能性が見えてきた。それは,道具と してのコンピュータ,道具としてのCGである。鉛筆,クレヨン,筆,サインペ ンとならんで私たちのヴィジュアル創作用具のリストに加えられたCGがそれで ある。」と述べている。. 確かに,CGの知名度を最も高めたのは広告・コマーシャルの分野であった。 80年代初頭に隆盛を誇ったコンピュータ・アニメーションによるCMは,最近 ではあまり見られなくなってきた。今日,CGを目にするのは,映画の特殊撮影 シー一一ンやテレビゲームの画面など,娯楽の分野であることが多い。CGが,コマ. ーシャルや娯楽などテクノロジーと関連する分野と,美術以上につながりを深め ることは,CG自体もテクノロジーの産物であり,必然的な流れなのかもしれな い。美術の分野でのCGが,娯楽などの分野に振り回されて投げ捨てられるまで は行かなくとも,ピュア・アートとしてのCGの間口が狭められたのは事実であ ろう。しかし,CGと美術とのもう一つの接点は, CG自体が表現の道具として も進化してきたことである。これに拍車をかけたのは,パソコンの性能の飛躍的 な向上と,それに伴う一般への普及である。CGは芸術家だけのものから,誰も が触ることができる表現の道具へと発展してきていたのである。 ここに「道具」という視点から,美術とCGの関係が見えてくる。 一20一.
(23) 2.道具としてのCGの特性 道具として進歩してきたCGは,前述のようにまずデザインの分野で活用され. だした。1986年に登場したAdobe社のパソコン用CGソフト「111ustrator」 それに続く「Photoshop」は,多くのデザイナーの支持を得た。そして, C Gソフ トが社会一般に表現の道具として普及していく口火を切ったのであった。しかし. 道具としてのCGは,多くの点で従来の画材とは異なっている。そこで,この特 性を明らかにするために,「機器の構成」「表現の形態」「色の表現機能」に分 けてまとめることとする。. (1)機器の構成 コンピュータは,ハードウェアとソフトウェアに分けることができる。ハード ウェアは外形的な機器をさし,ソフトウェアはそれらの機器を動かすコンピュー タのプログラムをさしている。ハードウェアは入力装置,本体,記憶装置,出力 装置の四つに分けることができる。一般的にはこれら全てをまとめてコンピュー タと呼ぶことが多いが,正確には,コンピュータとはハードウェアの本体を指す ものである。本体は演算処理装置を内蔵した機器で,この演算処理装置の処理速 度がコンピュータの性能の大部分を左右している。1節でまとめたように現在L SIが演算処理装置に使われている。コンピュータで作成したものは,本体の電 源を切ると消滅してしまう。そこで作成したものを保存するのが,記憶装置であ る。記憶装置はフロッピィ・ディスクがポピュラーなものであるが,CGで作成 したものは容量が大きいためハード・ディスクとよばれる固定型の大容:量記憶装 置に保存するのが一般的である。また,作成されたものの読み込み専用の装置と. してシーディー・ロム(CD−ROM)も活用されている。本体の接続される装 置やソフトウェアの構成は図:1−2−1のようになる。. 入力装置 腫データ入力 ロキーボード ロマウス ロタブレット ロライトペン ■画像入力 ロカメラ ロスキャナー. 出力装置 ソフトウェア. 本 体. ■ハードコピー ロプリンタ ロプロッタ ■ソフトコピー. EICRT. 記憶装置 フロッピー・ディスク ハード・ディスク. CD−ROM 一21一. 図:1−2−1ハードウェアの構成.
(24) CGでの描画の流れを例にとると,使用者(画家)が入力装置で描いた絵は, 本体に入りソフトウェアによって絵として認識され,出力装置によって見ること ができるわけである。以下,表現の道具として,直接使用者(画家)に関わって くる入出力装置についてまとめてみた。. ①入力装置 入力装置には,データ入力装置と画像入力装置がある。データ入力とは,コン ピュータに色や形,位置といった情報を数値で与えることをいう。一方,画像入 力は絵や写真などの画像を数値化してコンピュータに入力することをさす。 ■データ入力 ロキーボード(Keyboard) 英文タイプライターのような鍵盤型の入力装置である。一般的に文字情報 や数値情報を入力するのに用いられる。キーボードはアルファベットを規. 準とした設計であり,国内ではJIS規格により配列が標準化されたのも のが主流である。 ロマウス(Mouse) キーボードの補助入力装置としては最もポピュラーなものである。一般に ポインティング・デバイス(Pointing device)と呼ばれている。ポインテ ィング・デバイスとは,コンピュータに数値座標を入力する装置のことで. あり,画面上の1点を指定するために用いられる。手のひらに収まる楕円 形の小さな装置で,コンピュータ本体と接続するコードが上部に付いてい る。その形が鼠に似ていることからマウスの名称がついた。机の上で移動 すると,装置の裏側に付いているボールの動きが本体に伝わり,座標が決 定される仕組みとなっている。しかし,座標の精度はあまり高くはない。 ロタブレット(Tablet) マウスと同様にポインティング・デバイスである。精度はマウスよりも高 く,より正確なデータを入力できる。また,タブレットはスタイラス・ペ ンとよばれる電子ペンを用いることができるので,鉛筆で絵を描く感覚に 近い。従って絵を描くためのツールに最も適しているが,マウスよりもコ ストがかかる。アーチストやデザイナーの間で普及している。 ロライトペン(Light pen). ディスプレー画面に直接触れて,その位置により座標を判定する方法をと る。従って画面を見ながら,直接操作ができるがディスプレーのガラスの 厚みや曲面によって座標誤差が生じることがあり,正確な絵の入力にはあ まり適していない。. 一22一.
(25) ■画像入力 ロカメラ(Digitizing camera). コンピュータに直接,画像を入力できるカメラはデジタル・カメラとよば れるもので,カメラ内部で画像を数値化して保存できる機能を持ったもの である。静止画だけでなく動画に対応したデジタル・カメラも登場してい る。また,動画に関してはコンピュータ本体にビデオ・ボードとよばれる 変換器を接続することでアナログの動画を取り込むこともできる。 ロスキャナ(Scanner). 写真などの静止画をコピー機と同じような操作で入力する装置である。動 画の入力は不可能であるが静止画に関しては,原稿と同等の画質で入力で きる高性能なものが登場している。 ②出力装置 出力装置には,紙などの媒体に物理的に出力するハードコピーと,テレビ画面 のように電心的に出力するソフトコピーがある。 ■ハードコピー ロプリンタ(Printer). 紙に出力する最もポピュラーな出力装置である。CGの画像はドットよば れる点の集合体で構成される。そのため,印刷できるドット数が多いほど 高性能なプリンタである。印字ヘッドがインクリボンを直接紙にあてるド ット・インパクト・プリンタ,細かいノズルでインクを吹き付けるインク ジェット・プリンタ,コピー機と同じ原理を用いたレーザー・プリンタな どがある。 E]プロッタ(Plotter). 設計や製図用に作られた装置で,機械にペンを持たせて,紙などの上に線 で表現した図形や文字を描かせることができる。ペンの動きはコンビュー. タによって制御され,X軸とY軸によって描く位置が決定されるためXY プロッタともよばれている。 ■ソフトコピ■・一. UCRT (Cathode Ray Tube). コンピュータでの作業行程をモニターできるテレビ画面で,出力装置とし ては最も一般的なものである。CRTディスプレイまたは,単にディスプ レイともよばれている。電子ビームの制御形式からランダム・スキャン・. リフレッシュ型CRTとラスタ・スキャン・リフレッシュ型CRTに分か れ,画面を電子ビームの水平走査のよって画面を提示するラスタ・スキャ ン・リフレッシュ型が一般に普及している。CRTの特性は,従来の画材 と違い,何回でも消去し修正することが可能な点である。 一23一.
(26) 以上のように,CGで描くためには,従来の画材と比べると類を見ない重装備 が必要となる。しかし,これらの機材はあくまでハードウェアとよばれるコンピ ュータの外形的な部分でしかない。コンピュータを動かすにはソフトウェアとよ ばれる,人間の意志をハードウェアに的確に伝えるものが必要である。このソフ トウェアの機能や特性によって,できあがってくるものの形態の大部分は決定さ れる。このソフトウェアによる表現の形態を次にまとめてみた。. (2)表現の形態 CGでの表現はその形態から,平面,立体,動画の三つに分けることができる。. それぞれ,2次元(2D),3次元(3D),4次元(アニメーション)グラフ ィックスとよばれている。. ■2次元グラフィックス 従来の絵画を含む平面表現に,最も近い表現形態が2次元グラフィックスであ る。静止画ともよばれる2次元グラフィックスには,製図のような図形表現に適 しているドロー系グラフィックス,描画に適しているペイント系グラフィックス, 多少特殊なポストスクリプト系グラフィックスの3種類がある。特にペイント系 グラフィックス・ソフトは,「お絵かきソフト」ともよばれ最も一般に普及して いる。このペイント系グラフィックス・ソフトでの描画は,準備された各種の筆 や従来の画材のシミュレーションによっておこなわれる。また,画像を変形,加 工したり,色変換,輪郭抽出,ぼかし,モザイク処理,ノイズ補正など様々な画 像処理システムを揃えているものもある。描画だけでなく,素材として写真など 既存の画像を取り込み加工することも可能である。. ■3次元グラフィックス 従来の絵画は2次元の画面を3次元の空間に見せるために様々な技法を生み出 してきた。3次元グラフィックスは,この逆で,コンピュータの中に3次元の空 間を仮設し,その一場面を2次元の画面で表現したものである。表現の手順も2 次元グラフィックスと比べて複雑になってくる。まず,「モデリング」とよばれ る仮想空間を作成する。その際に,それぞれの物体の形や配置,空間を眺めるア ングルを設定する。この段階での表現はワイヤーフレーム・モデルで表示される。 次に,「アトリビュート」とよばれる素材やそれぞれの色の設定をおこなう。モ デリングされた物体にガラスや木のような質感を与え,「マッピング」とよばれ る処理で表面に画像データを貼り付ける。また,「ライティング」とよばれる光 源の設定をおこなう。そして最後に「レンダリング」とよばれる計算処理で画面 全体を表示させる。このような,光の反射や屈折,写り込みを使った表現は「レ イトレーシング」とよばれ,現在の3次元グラフィックスの技法の中でも最高水 準のものとされている。 一24一.
(27) 3次元グラフィックスは複雑な制作手順が必要だが,一度完成されたものは, アングルを変えるだけで様々なバリエーションの作品を生み出すことができる。 また,詳細を設定することで写真のようなリアリティーの高いものにすることも 可能である。しかし,ハードウェアにかける負担が大きく,数年前までは大型コ ンピュータや専用のワーークステーションでしか表現することができなかった。今. 日では,CGソフトのアルゴリズムの改良や, CPUをはじめとするコンピュー タの性能の向上によりパーソナル・コンピュータでも扱うことができるようにな ってきている。しかし,演算速度の速い高性能なパーソナル・コンピュータが必 要になってくる点,手順が複雑な点,レンダリングでの計算処理時間が長くかか る点など難点も多い。. ■4次元グラフィックス 2次元グラフィックスもしくは3次元グラフィックスで作成されたものに,時 間軸での表現を加えたものが4次元グラフィックス(アニメーション)である。 アニメーションの作成は,2Dソフトで作成した複数の絵を,紙芝居的につなぎ 合わせて動きを表現するアニメーション・ソフトから,3Dの仮想空間内で設定 した動きを映画のように撮影するものまである。しかし,どちらも作成に手間が かかる点や,3Dアニメーションは高性能のパーソナル・コンピュータが必要と なる点など難点がある。. (3)色の表現機能. 表現の形態は上記の三つに分類できるが,表現の重要な要素である色について も,近年飛躍的に開発が進んでいる。 コンピュータが認識し表現できる色は,8ビット・コンピュータ時代は,わず か8色であった。それが,16ピット・コンピュータで16色,32ピット・コンピュ ータで256色と進み,「グラフィク・アクセラレータ」という装置の開発により, 65536色,遂には1677万色もの色を扱えるようになった。ここにきて初めて, 「フルカラー(自然色)」という言葉がコンビ=・・一タの中で使われるようになっ. た。コンピュータは,色を認識し表現(合成)するのに,RGB, HSV, YM Cという三つの方式を取っている。 この三つの方式の基本原理は,コンピュー タのために生み出されたわけではなく,色彩学として既に確立しているものであ る。 光の3原色はヤング(1807),ヘルムホルッ(1852)が可視スペクトルの うち,最も人の目に感じとれる三つの波長が,それぞれ赤・緑・青であるという 説(光の3原色説)を発表し,グラスマン(1853)が3原色の混合によって任意 の色が出せるという法則を立てている。色相・彩度・明度については,マンセル (1905)やオストワルト(1923)が,カラーシステムを色立体として表している。 特にマンセルのカラーシステムは,色名を記号に置き換え,色を明確に10進法. で扱うことができるため,CIE(国際照明委員会)を通してJIS(日本工業 規格)にも取り入れられている。コンピュータはこれらの色彩学の原理を電子三 一25一.
(28) に忠実に再現し,従来の画材では分類が不可能であったフルカラーを合成し,表 現に使うことを可能としている。. CGの道具としての活用が最も盛んなデザイン分野での, CGの取り扱いにつ いて,前出の河北を再度引用すると「このシステムは,単なるコンピュータ・グ ラフィックス・システムではない。まだまだ問題は残しているが,ほぼ完成に近 づいている現代の絵の具箱,それも万能の絵の具箱である。表現する人間が芸術 的能力を持っていれば自由自在に表現することができるのである。」8,と,道具 としてのCGの利点について述べている。また,多田薫弘は『画材大全』9》の中 で「イメージをつくるための方法ということでは,CGも一種の”画材”といえ るであろう。しかし,他の画材と決定的に違うところが一つある。それはCGで っくられたイメージ自体は物質(素材)を伴わないという超純粋性である。一般 の画材においては,絵の具やキャンヴァスなどの物質を伴って作品が成立する。 この場合,作品=物質(素材の組み合わせ)という即物的な見方もできる。しか し,CGの場合は,情報を可視化するために,コンピュータや記憶装置,出力装 置などの物質的要素は必要であるが,それらは絵具の場合の”筆”などの道具に. 近いもので,作品を構成する素材ではない。とくにCRTディスプレイはRGB の”光”によって,最も純粋に近いイメージを可視化することができる。一中略 一CGはまさに光で描くことができる。古来からの絵師たちが求めてきた究極の 画材だ。イラストレーーションなど”絵”としてCGが目指すべき方向は,実在し ない空想の世界や,物質的ではない内面的世界のリアリティ(神秘体験など)の 可視化であろう。既存の画材では表現しきれなかったり,物質化すると逆にリア リティを失ってしまうような題材ではないだろうか。」とCGの画材としての特 性を述べるとともに,表現される題材について触れている。現在,CGは多くの デザイナーが道具として使っており,その要望に応えるべく次々と新しい表現機 能を持ったCGソフトが開発されている。近年,目にするイラストレーションの ほとんどがこれらのCGソフトで作られたものに変わろうとしており,また,3 Dやアニメーションといった新しい表現の普及によりグラフィック・デザインの 形態自体が大きく変わろうとしている。一方,一般に普及しているCGソフトは, ハードウェアの制限等から,2次元グラフィックスのCGソフトであり,そこで は従来の平面表現に近い使われ方をされている。しかし,様々な画像処理機能や 扱える色心など従来の画材にはない能力を持っている。新しい表現の可能性を持 った道具,それがCGであるといえる。. 以上,美術とCGの関係について概観してきた。技術と芸術の融合を追求して きたテクノロジー・アートの流れの中に,コンピュータによる新しい表現を目指 したコンピュータ・アートが生まれた。しかし,CGは芸術性を追求したアート 一26一.
(29) の分野以上に,その表現の新しさから広告や娯楽といった分野で社会へ普及して「 いった。一方,表現の道具としてのCGは,コンピュータの進歩に伴い,飛躍的 に表現機能を向上させ,2次元,3次元グラフィックスさらにはアニメーション などの動画まで表現できるようになった。また,パソコンの普及により,だれも がこの道具を手にすることができるようになってきたことが明らかになった。 現在の美術とCGの関係は, CGの道具としての可能性にかかっているという ことができる。道具としてのCGの在り方については,次のような問題点があげ られている。. ●CGを作成するにはコンピュータをはじめとした機器が必要である。 ●現在,普及しているパソコンが扱えるのは2次元グラフィックスが中心である。 ●従来の画材のシミュレーションにばかり力を入れているソフトが多い。 しかし,これらの問題点を抱えながらも,CGは, ○今までにない多くの表現機能を持っている。 ○発想したことやイメージをすぐに表現できる。 01677万色という莫大な色を認識し,扱うことができる。 ○何度でもかき直すことができ,その過程を保存できる。 ○従来の画材を使う上で必要であった技術と作業時間から解放される。 ○写真や一度表現されたものを素材として加工できる。 ○かいたものを何度でも修正できる。 ○変形や特殊効果などの加工ができる。 など,新しい表現の道具としての可能性を持っていることが明らかになった。. 一27一.
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