弘前大学教育学部紀要 第
7 6
号 :6 7 ‑8 0( 1 9 9 6
年1 0
月)Bul l .Fa c .Edu c .Hi r o s a kiUni v.7 6:6 7 ′ ‑8 0( Oc t .1 9 9 6 ) 67
アメ リカ公立学校制度 における特殊学級 ( 学校)の成立
一 特殊学級 (学校)対象の明確化 と州法 の規定 を中心 に ‑TheEs t a bl i s hme ntofSpe c i alCl as s e s( Sc hool s )i nPubl i cSc hool Sys t e msi nt heUni t e dSt at e sdur i ngt heFi r s tQuar t e r
oft he2 0 t hCe nt ur y:St at eLawsandEl i gi bi l i t y.
安 藤 房 治 *
Fus a j iANDO
論文要 旨
本小論で は,アメ リカ合衆国の
2 0
世紀初頭四半世紀 において,公立学校制度内に特殊学級 (学 校)が成立,発展す る歴史的過程 を分析 した。特 に,精神薄弱特殊学級組織化 の論理,中 ・重 度精神薄弱児問題が顕在化 し,彼 らが特殊学級 (学校)対象か ら排除 され,その結果特殊学級 (学校)対象が明確化 され る過程, さらには特殊学級 (学校)が州法 によりいかに規定 されて いたかを明 らかにすることを目的 とした。精神薄弱児 を初 め とした 「問題児」 に教育機会 を保障す る立場,および精神薄弱児のための 独 自の学級 (学校) を組織す る論理 を明 らかにした。 このような論理 (立場) は,重度児 も含 めた教育保障の立場 に立てない とい う歴史的制約 もあ り,公立学校制度か ら中 ・重度児 を排除 す る方向に加担 した。中 ・重度児 をその対象か ら除外 しつつ,公立学校 内特殊学級 (学校) は 制度的に発展 し,四半世紀の間にい くつかの州法で も規定 され るようになった。
キーワー ド:アメ リカ合衆国,特殊学級 (学校)
,2 0
世紀初頭は じめに
本小論 は, アメ リカ合衆国の公立学校制度 における特殊学級制度の成立過程,特 に
2 0
世紀初 頭の四半世紀 に,「精神薄弱特殊学級 (学校)」
を中心 に,「白痴( i di o t )
・痴愚( i mbe c i l e ) 」
な ど中 ・重度精神薄弱児が特殊学級 (学校)対象か ら排除 され,特殊学級 (学校)対象が明確化 され る過程および特殊学級 (学校)が州法 によっていかに規定 されていたかについて明 らかに す ることを目的 とす る。すでに,中村満紀男
( 1 9 9 2 , 1 9 9 3 a, 1 9 9 3 b)
は, アメ リカ合衆国特殊学級成立 ・発展史 に関す るわが国お よびアメ リカ合衆国の研究 を概括 し,
「世紀転換期 アメ リカ公立学校制度 における精 神薄弱特殊学級 (学校)の成立 とその意義 について」明 らかにしている。中村 によれば,精神 薄弱特殊学級 は,学業 ・規律 ・健康等の標準か ら逸脱 した児童や成人 を含む教育機関 としての 広義の特殊学級の展開の中で成立 した とい う。 このように とらえた上で中村 は,広義の特殊学 級か ら精神薄弱学級が分化す る過程,精神薄弱特殊学級 と聾,盲 な ど他の種別の特殊学級の比*弘前大学教育学部心身障害学科教室
De p a r t me n to fEd u c a t i o nf o rHa n d i c a p p e dChi l d r e n, Fa c u l t yo fEd u c a t i o n, Hi r o s a kiUn i v e r s i t y
較 お よび これ ら特殊学級設置が公立学校改革 といかなる関連が あったか, またいかなる教育的, 社会的意味があったのか を明 らかにした。
本研究 で は, これ ら特殊学級が成立,発展す る中で,中 ・重度精神薄弱児問題が顕在化 し, 彼 らが特殊学級対象か ら排除 され, その結果特殊学級対象が明確化 され る過程, さらには特殊 学級が州法 によ りどの ように規定 されていたか を明 らか にす る
。
なお,文中の用語 には,現在 で は死語 となっていた り,差別感 ・不快感 を助長 させ る恐れの ある もの もあるが,歴史的語句 として使用 し,初 出時 に原語 を付 した。
1
)公立学校制度内特殊学級 (学校)の開設義務就学法 の制定 と強化 によ り
,1 9
世紀後半か ら,公立学校 は 「すべての」子 どもが就学す ることになった1)。義務就学法 の強化 によって,多 くの問題児が公立学校 に就学す るようにな ったが これ らの子 どもたちは通常の学級での通常 の教育課程 による指導 に従 うことがで きない ために通常学級か ら排除 され ることとなった。排除 されたグループの中の第一 は身体障害児, すなわち聾,育,肢体不 自由,第二 は怠惰( t r uant )
と非行( i ncor r i gi bl e)
,第三 は低能( me nt al l y s ubnor ma
l) と精神薄弱( f e e bl e‑mi nde d)
であった( Roge r s ,A.
C.1 9 07
,4 6 9)
0公立学校制度 における聾学校 (学級) は
,1 8 8 0
年代以降各地 の公立学校制度 に開設 され,盲 学級 は1 9 0 0
年代以降新 たに開設 された (中村。1 9 9 3 a)
。肢体不 自由児 の教育 は,整形外科学 の 発展 を背景 に して,民間団体 による病院内での教育 を基盤 として公立学校制度 に段階的 に移行 してい く点 に特徴があった (中村。1 9 9 3 a) 。
また,「い くつかの都市で,私的な ものか ら公的責 任へ と徐々 に移行 していった」 とも言われている( Sol e nbe r ge r , E. R. 1 91 8 , 8
)。最初 の公立学 校 内の肢体不 自由児学級 は1 8 9 0
年 にシカゴで開設 された。同様 の学級 はニ ュー ヨークで1 9 0 6
年,デ トロイ トで
1 91 0
年, ク リーブラン ドで1 91 0
年, フィラデル フィア とボルチモアで1 91 3
年 に開 設 された( Sol e nbe r ge r , E. R. 1 91 8, 8)
。 病院内学級 の例,私立収容施設への公立学校教師の派 遣( Sol e nbe r ge r ,E. R.1 91 8, 8)
な ども試み られた。次 に,精神薄弱特殊学級 (学校)が公立学校制度 に設置 された経過 を,初期 に開設 されたプ ロビデンス とボス トンを例 にして見てみ る。
ロー ドアイラン ド
( Rhodel s l and)
州 プロビデ ンス( Pr o vi de nc e)
が合衆国で問題児 のため の公立学校 を設置 した最初 の都市であった( Le gar de, E. 1 9 0 3‑0 4, 3 6)
。 同市 は1 8 9 3
年 に怠惰児 お よび懲戒児( di s c i pl i nar y)
のための学校 (6
学級)を設置 した( Pr ovi s i onf orExc e pt i onal Chi l dr e ni nPubl i cSc hool s . 1 2 )
。 プロビデ ンスの学校 は 「普通児か ら犯罪児( del i nque ntc hi l ‑ dr e n)
を切 り離す運動 の一部」であった (Johns t one
,E. R, 4 8 6)
。正規 の学校( r e gul ars c hool s )
か ら,乱暴 な( di s or de r l y)
生徒が懲戒学校( di s ci pl i nar ys c hool s )
に送 られた後,比較的利益 を得ていなかった学業不振, あるいは精神欠陥( me nt al l ydef i c i e nt )
児 たちが残 った。 これ ら の 「ひ弱( f e e bl e)
で とぼ とぼ歩 くような( pl oddi ng)
子 どもたち」 に とって,「学校 の生徒た ち の 大 部 分 を 占 め る賢 く,健 康 的 で, い た づ ら好 きな 少 年 た ち の発 達 に必 要 な 訓 練( di s ci pl i ne)
,指導( i ns t r uc t i on)
お よび体操( phys i cale xe r c i s e s )
は,不適切 であることは 明 白であった」( Es t e n
,R. A. 1 9 0 0 /1 9 01 , 1 2 )
。 この ような ことか ら,1 8 9 6
年1 2
月,特別 な学校( a s pe c i als c hoo
l)が,「これ らの生徒 たちへの より良い治療 (t r eat me nt )
のために」市内に開設された。 ここには
1 5
名の生徒が,初等学校 か ら選 ばれた教師の指導の下 に入れ られた。1 8 97
年アメ リカ公立学校制度 における特殊学級 (学校)の成立
6 9
に二校 目,
1 8 9 8
年 に三枚 目が開設 され,翌年四校 目が開設 された( Es t e n
,R. A. 1 9 0 0 /1 9 01 , 1 2 )
0 この ように, プロビデンスの場合 は,問題児 のための特殊学校 の中か ら精神薄弱特殊学級 (学 校)が分化,開設 された。マサチューセ ッツ
( Ma s s a c hus e t t s )
州 ボス トン( Bos t on)
の公立学校 に 「学業不振 または 精神薄弱児( ba ckwar dorf e e bl e ‑ mi nde dc hi l dr e n)
」のための学級設置 の準備 は,教育長 シー ヴ ァ‑ ( Se a ve r )
の下で始 まった。彼 は,学校委員会 の承認 に基づ き,1 8 9 8
年秋 に一人 の教師 を雇 った (Li nc ol n, rl . F. 1 9 0 2 / 0 3 , 8 4 )
。教育長 は,この教員 に対 して,数百 の学業不振( ba c kwar d‑
ne s s )
の事例 の リス トを示 した02
,3
ケ月間慎重 に検討 した後,彼女 はこれ らのケースの中か ら,彼女が1 8 9 9
年1
月開設予定 の学級 の対象 として緊急 な1 5
例 を選 んだ。徐 々 に発展 して学級 数 は7
学級 になった (Li nc ol n, D. F. 1 9 0 9 /1 0, 8 9 )
。 この学級 (学校)は学業不振児 と精神薄弱児 を対象 として開設 されたが,実態 は移民の子弟が多 くを占め,精神薄弱 はわずかであった2
)。 この ような特殊学級 (学校)はプロビデンス, ボス トンに続 き, スプ リングフィール ド( 1 8 9 8
午,マサチューセ ッツ州), フィラデル フィア( 1 8 9 9
年,ペ ンシルバニア州)に設置 された。 クリーブラン ド (オハイオ州) は
1 9 0 5
年 に4
学級 を設置 し, ポー トラン ド (メイン州) は1 9 0 6
年 に1
学級設置 した( Pr o vi s i onf orExc e pt i onalChi l dr e ni nPubl i cSc hool s , 1 2 )
02
)精神薄弱特殊学級 (学校)開設の論理これ らの子 どもたちを公立学校制度か ら排除す るので はな く,特殊学級 (学校) を設 けて対 応す るには積極的な理 由づ け,公立学校制度 を維持す る納税者 を納得 させ る理 由が必要であっ た。 まず, これ らの子 どもたちに対す る教育 の必要性 に関す る議論 について紹介す る。
その第一 は,近代的な平等観 に基づ く,教育機会均等論 の立場か らの意見である。 た とえば,
「すべての子 どもが コモ ンスクール教育 (
c o mmons c hoole duc at i on)
を受 ける権利 を もって いる とい う原理以上 にアメ リカ国民 に完全 に理解 されている原理 はおそ ら くない。利益 を受 け るすべての児童 に開かれてお り,全国同一の方法 と標準 によって管理 されている公立学校 は, 知的,道徳的発達のために学校 に送 られて きた子 どもたちにおけるおお よその能力 を決定す る ための大 きな手形交換所( c l e ar i n ghous e )
になる機会 を与 える。」( Ro ge r s ,A. C. 1 9 0 7 , 4 71 )
。「すべての子 どもはニーズ と能力 に合 った教育 を受 ける権利 を持 ってい る。
」( Fe r nal d
,W. E.
1 9 0 3 / 0 4 , 3 3 )
0第二 は,教育す ることによって結果的 に社会 の経済的負担が軽減す る とい う経済的効率性 の 立場 か らの意見であった。 た とえば, ボス トン (マサチューセ ッツ州)の リンカー ン
( Li nc ol n , D. F. )
は「 5 0 0
名 の小学校 で, ほ とん ど呼吸で きない, アデノイ ドで呼吸が停止 しそ うな子 ども が様々なクラスに1 2
人 いることがある調査で判明 した。 もちろん彼 らは落第 した。多 くが視覚 障害 を有 している。彼 らの多 くは適切 な措置 によ り援助 で きる。他 の児童 は栄養不良 に冒され てい る。 もし世話 を受 けなか った ら, これ らの児童 の多 くは将来社会 の重荷 になるだろう。彼 らは精神薄弱 の収容保護施設( as yl um)
に収容 され るか, もし くは被救済貧民か犯罪者 にで も なるだろう。州 は何 らかの方法で彼 らを世話 しなければな らないだろう。彼 らを後 に刑罰施設 で処遇す るよ りも今世話す る方が よ り安上が りでかな り効果的であることを,社会 に対 してより多 く啓蒙す る必要がある。
」( Li n c ol n, D. F. 1 9 0 2 / 0 3 , 9
1.) と述べている。 また,全米精神衛生 委員会( TheNat i onalCo mmi t t e ef o rMe nt alHy gi e ne )
精神欠陥部門主任( Di r e c t o r , Di vi s i on
o nMe nt alDe f i c i e nc y)
へイ ンズは 「私 たちが精神的障害児 を放棄す ることは彼 らにサー ビス を与 え,幸福 にで きないばか りか,裁判所や刑務所,救貧院や他の慈善施設 において多額 の費 用 を費やす ことになる。」( Hai ne s , T. H. 1 9 2 4 , 91 1 )
と主張 している。
また,特殊学級 を設置 して いるある幼稚園長 は 「公立学校体制 に組 み込 まれた特殊学級 は,子 どもの知的能力 を増大 させ ることによって, また子 どもたちに利益 を与 え,有用 にす る道 を開 くことによって家庭 と社会 の負担 をよ り少 な くす ることによって,我々の子 どもの発達 のために多 くの ことをなす ことが で きる。」( Ro ge r s ,A. C. 1 9 0 7 , 4 7 4 )
と述べている。
第三 は社会防衛論 の立場か らの意見であった。 た とえば,先 に上 げた特殊学級 を設置 してい る幼稚園長 は 「街頭 をさまよって,社会 の脅威 となっているだ ろう
。
そして,いつか は彼 らの 子孫が公費で保護 されなければな らないだろうとい うのはただ時間の問題 だ。」( Ro ge r s , A.
C.
,4 7 4‑4 7 5 . )
と述べている。次 に, これ ら子 どもたちの教育 を通常学級で はな く,分離 された学級 (学校)で与 える とい う場合 の論理 はどの ような ものであろう。
まず第一 は, これ らの子 どもたちか ら通常学級の子 どもたちを守 る とい う意見である。連邦 教育局長官 クラクス トン
( p. p. Cl axt o n)
は 「長年,学校 当局者 たちは,通常学級 に この ような 子 どもたちが入 っていることは特異児( t hee xc e pt i o na
l) と非特異児( t heno n‑ e xc e pt i o na
l) の両者 に とって害悪であることが分か っている」( Pr o vi s i o n f o r Exc e pt i onalChi l dr e n i n Publ i cSc hool s . 5
) と述べ, またヴァイ ンラン ド ・トレイニ ング ・スクール校長 のジ ョンス トンは 「正常児が これ らの障害児か ら困惑 され,妨害 されて はな らない とい う理 由があれば,彼 らは通常学級か ら隔離 され。欠陥児
( de f e c t i vec hi l dr e n)
の学級 に措置 され るべ きであろう。」( J o hns t o ne ,E.
Rリ 4 8 6 )
と述べている。また, ゴダー ドは,つ ぎの ように述べている。
「第一 に,彼 らは通常学級か ら移動 させ られなければな らない。 これ らの子 どもたち
1
人 は4
人 の正常 な子 どもたち と同 じ位 の教師の時間 をたやす く使 うだろう。
一方彼 は学校 の他の全部 の子 どもたち と同 じ位 の妨害 と心労 を引 き起 こす だ ろう。実際,一人 の この ような学業不振( ba ckwa r d)
あるい は欠陥児1
人 の代わ りに5
人 の正常 な,賢い子 どもたちを喜 んで世話 しな いような教師 を兄いださないだろう. これ らの子 どもたちは通常学級か ら出 され, グループ化 され,彼 らを理解 し,彼 らの特性 に応 じて扱 う訓練 を受 けた特別 な教師が用意 されなければな らない。5 0 0
人 の子 どもたちのいる学校 システムが特殊学級 を有 しない とい うことはあ り得 な い。」( Godda r d,H. 1 91 0 , 2 4 3 )
第二 は,特殊学級が障害の診断や障害原因の解明 に貢献す る機能 を持 つ とい う位置づ けであ る
。
た とえばロジャースは,特殊学級 の機能 として,「 ( 1 )
事例 の深 い診断,(2 )
不適切 な者 を排除 し,必要な場合,医学的衛生学的援助 を確保 す ること,(3)学業不振児 に機会 を与 えること,(4) 原因解明 に役立つ状態 に関す るデータの収集」( Ro ge r s , A.
C. , 47 2‑4 7 3 )
を上 げ,チ ャニ ングは「もし,私 たちが人類の病的変質 をよ り良 く理解 し,予防 しようと望 むな らば,異常な発達 を している子 どもたちを教育す るあ らゆる努力 をすべ きである
。
そ して精神薄弱のための学校 の 中の特殊学級が この結果 を達成す る手助 け となるだろう。 とい うのは,必然的にすべての学齢 児の大部分 の注意深い調査 に もつなが る」「子 どもたちの健康診 断カー ドの作成 な どに結 び付 く」( Channi ng,W. 1 9 0 0 , 4 4 )
とし,障害児 だけでな く子 ども全体 の役 に立つ ことを強調 した。最後 に, これ らの子 どもたちの教育 は収容施設 において保障す るよ りも,公立通学制学校 で
アメ リカ公立学校制度 における特殊学級 (学校)の成立
71
の教育が有利 であることについてのい くつかの意見 を紹介す る。マサチ ューセ ッツ州の精神薄 弱学校
( TheMas a c hus e t t sSc hoolf ort heFe e bl e 一 mi nde da tWal t ha m)
校長であったファー ナル ド( Fe r nal d)
は 「現在 のアメ リカの収容施設での精神薄弱児 の指導の機会があるにもかか わ らず,我が国のよ り規模 の大 きい都市の公立学校 内での特殊学級 の組織化 を正 当化する一定 の理 由がある。」 として,第一 に収容施設が年齢 の早 い時期 に親子関係 を奪 う問題 を上 げてい る。彼 は 「傷 つ きやすい年代 の子 どもを見知 らぬ人 に世話 をして もらうために家庭 か ら遠 く離 れた収容施設 に送 ることは子 どもと親 たちに とって大 きな苦労である。収容施設で得 られ る利 益 にかかわ らず,子 どもはノーマルな家庭生活,母親か らの道徳的,社会的影響,地域社会 と の全体的な関係 を奪われ る。」 とし,「もしこのような学級が利用で きれば,一般的 に生徒 はも っ と早 い時期 か ら特別 な指導 を受 けるだ ろう。」 と述 べ,特殊学級へ の期 待 を表 明 してい る( Fe r nal d,W. E. 1 9 0 3 / 0 4 , 3 3 )
。ニ ュー ヨー クで特殊学級開設 に尽力 したファレル
( Fa r r e
l)は 「通常学校の一部 として この学 級 を置 くことによって,私たちは学級の子 どもに付 けられ るか も知れないステ ィグマ を避 ける し,混合学年学級( un gr ade dc l a s s )
の子 どもたち と他 の子 どもたち との最 も望 ましい関係 を 得 る。 」( Far r e
ll ,E且 1 9 0 8‑0 9 , 9 4 )
とし,特殊学級 の方がステ ィグマ を付 けられ る恐れが少 な い ことをメ リッ トとして上 げた。 フイツツ( Fi t t s )
は,特殊学級の役割 について次 のようにま とめている。「特殊学級 は問題 を解決す る試みの第‑のステ ップであることが一般的 に信 じられている。そ の役割 の第一 は,地域社会 と通常 の子 どもたちの教師 に対 して現状理解 の教育す ること,第二 は精神薄弱
( f e e bl e ‑ mi nde d)
の子 どもたちを見付 け出 し援助 す ること, そうす ることによって 遅滞 していた普通 の子 どもたちを援助 す ること,第三 はエネルギーの3 0%
を少数の精神薄弱 に 与 えている教師の負担 を軽減す ること。第5
(ママ) は社会 に対 す る公正 を確保 す ること。
と いうのは精神薄弱がで きる限 り理解 され,訓練 され ることが社会的公正 の問題 であるか らだ。」( Fi t t s ,A. M. 1 91 5 / 1 6 , 7 8 ) 3)
3
)公立学校対象の明確化 と中 ・重度児の排除アメ リカで初期 に設置 された特殊学級 (学校) は,学業不振児や怠学児,精神薄弱児 な ど通 常の課業 についていけない子 どもたち,他の多 くの子 どもたちへの被害 を防 ぐために構想 され た。「い くつかの都市で は特殊学級 (学校)はあ らゆる教育的不適合お よび社会的やっかい者 の ごみすて場 を形成 している
。
すなわち教育学的 に遅れている正常児,学業不振児( me nt al l yo r
pe da go gi c al l yba c kwar dpupi l s )
,魯鈍( mo r ons )
,痴愚( i mbe c i l e s )
,軽度 白痴( hi gh一 gr ade
i di o t s )
,道徳的痴愚( mo r ali mbe c i l e s )
,怠惰( t r uantorunl ul yc hi l dr e n)
,知能 は良いが感 覚剥奪 の児童 (弱視,難聴,語盲),肢体不 自由, まひ または言語障害児,障害が言語上 の もの である知能 の良い外国生 まれ児童 な どである。 」( Wal l i n, ∫ . E. W. 1 9 1 7 , 6 4 )
。 ボス トンで は,最初 に設置 された学級 だけでな く,2
,3
の学級で は重度者 の世話( l ow‑ gr adec a r e )
が負担 とな っていた。 これ らのケースは収容保護施設 の適格者 であ り,小学校教員か ら手放 されたケース であった。2 4
名 の生徒 は特殊学級か らウェイバ リー( Wa ve r l e y
,収容保護施設)に送 られてい る。 これ らの学級 は 「収容保護施設 のための一種 の手形交換所( c l e a r i n ghous e )
の役 目を果 た している。 」( Li nc ol n, D. F. 1 9 0 9 / 1 0, 8 9 )
と嘆 いているように,遅滞 の程度が重い子 どもが多 くを占めていた。 そ こで特殊学級 は 「痴愚や準 白痴
( s e mi ‑ i di ot s )
の世話 にそれほ ど多 くの時間 を費やすべ きでない と思われてお り,訓練 した ら通常学級 に入 ることので きる保障のある子 ど もが選択 され るべ きだ」との意見が教員 の中か ら出て きた (Li ncol n, D. F. 1 9 0 9 /1 0, 8 9 )
。 ゴダー ド( Goddar d,H. )
は,精神遅滞者 を次 のように分類 し,「白痴 は決 して公立学校 に入 らない。彼 らは余 りにも低 い。
」( Goddar d, H. 1 91 0, 2 4 3)
として,公立学校対象 を明確化す るよう主張 し ていた4
)0これ らの多種多様 の障害,程度 の異 なる障害 を持 った子 どもたちが同一の学級で,同一 の課 業 を課 す ることは不可能 に近 く,公立学校対象 とされ る子 どもたちの教育対象 としての分化, さらに公立学校就学対象外すなわち収容保護施設対象 とされ る子 どもの明確化が求め られ るの は時間の問題 であった。ホフマ ンによれば,「学校 は暗 に,あるいは明 白に子 どもたちの中の「正 常」,結果的 に同様 に偏 りを定義 しなけれ ばな らなか った
。 」( Hof f man,E. 1 97 5 , 4 1 6 )
0肢体不 自由特殊学級か らの精神薄弱児 の排除 もあった
。1 91 0
年代 には,「公立学校 内に肢体不 自由児学級のおかれているほ とん どの都市 は一定程度 の精神遅滞児 を兄いだ している」( Sol e n‑
be r ge r , E. R. 1 91 8, 2 7 )
と言われ るように,肢体不 自由特殊学級 において次第 に重複障害児,すな わち精神遅滞 を伴 う肢体不 自由児 の教育的処遇上の問題が顕在化 し, その解決が求め られ始 めた 。
ニ ュー ヨー ク市 においては
1 91 5‑1 6
年度 に3
学級が設 けられていた。肢体不 自由児学級 の特 別指導主事 は,重複障害児( doubl yhandi cappe dc hi l dr e n)
のための このような学級が公立学 校 内に置かれ ること, しか し,教育施設 によ り全 く利益 を得 られない ことが明確 な子 どもたち は適度 な試 みの後 に教育局 の監督 の下 におかれている収容施設 に送 られ るべ きである と推奨 し ている。フィラデル フィアにおいて は,肢体不 自由児学級 を設置 している学校 の内
2
校 において,一 つの学級 を構成で きる程十分 な遅滞児がいない とい う理 由によって,低能 の子 どもたちが,非 遅滞肢体不 自由児 たち と共 に同一 の学級 に入れ られたOマ コール校( Mc Cal lSc hoo
l)で は,低 能 の生徒 のいる学級教師が,ニ ュージャー ジー州バ イ ンラン ド施設 の養成 コースで精神薄弱児 指導のため特別 な訓練 を受 けた。 ( Sol e nbe r ge r ,E. R. 1 91 8, 27‑2 8)
マ コール校
( Mc Cal lSc hoo
l)で は,肢体不 自由児のための三教室 の内の一つ は精神的に正常 な第一,第二学年の子 どもたちに提供 されていた。 もう一つの教室 は第三学年の子 どもたちが 使用 し,三番 目の教室 は,程度の低 い子 どもたちだけがお り,低能児や実際上障害のある子 ど もたちが含 まれた。 この学級 の教師 は精神遅滞生徒 の指導のために特別 に訓練 を受 けていた。ミ‑デ校
( Me adeSc hool
)で は,二つの肢体不 自由児学級 のそれぞれが何人かの遅滞児 を も った, しか し,一つの教室 のほ とん どの子 どもたちは最初 の三学年 に含 まれていた。二番 目の 教室で は五年の学習 をしていた。 これ らの二学級 の4 5
名 の中の8
,9
名 はい くらか遅滞 してい た。( Sol e nbe r ge r ,E. R. 1 91 8, 41‑4 2)
4)特異児の分化,特殊学級の行政的把握
‑1 91
1年連邦教育局調査「問題児」への対応 とい う側面か ら各地で設置 されて きた特殊学級 (学校)が連邦 の主導の下 で整理 し,分化 していった契機 となったのが
1 91
1年 に連邦教育局 によって実施 された調査であ った( Pr ovi s i onf orExc e pt i onalChi l dr e ni nPubl i cSc hool s . 31‑3 5) 0
アメ リカ公立学校制度 にお ける特殊学級 (学校) の成立
7 3
この調査報告書 の前書 きにおいて,連邦教育局長官 プ レクス トン
( p. p. Cl axt o n)
は, 「学校 当局者 たちは,通常学級 に この ような子 どもたちが入 ってい ることは特異児( t hee xc e pt i o na
l)と非特異児
( t heno n‑ e xc e pt i o na
l)の両者 に とって害悪である ことが分 か ってい る」 とし, こ の調査 は 「これ らの子 どもが必要 としてい る教育的保護 に関 して公立学校 関係者 に示唆 を与 え る」と述べてい る( p. 5)
。 同長官が, この調査 によって,特別 な保護 を必要 としてい る子 ども を1 0
段 階 に分類 してい る ことな どに言及 してい る ことか ら,公立学校 が責任 をはたすべ き特異 児 を明確 に し, それ に対 す る教育的対応策 を明確 にす る ことを期待 した もの と考 えられ る。
調査 を実施 したの はヴ ァン・シックル
( Va nSi c kl e, J . H.
マサチ ューセ ッツ州 スプ リングフィ ール ド市教育長), ウイッ トナ‑( Wi t me r
,L.ペ ンシルバ ニア大学心理実験 ・臨床主任 ),エア ーズ( Ayr e s
,LP. Rus s e l lSa ge
財 団教育部主任) の三氏 であった。特異児 の分類 について は, 「本報告書
( Bul l e t i n)
は,子 どもの特異性 の原 因 を理解 した上 で,科学的分類 よ りも特異児 の適切 な処遇( t r e at me nt )
に関す る問題点 に関心 を持 つ人々 に対 して」 (p1 9)書かれてい る。す なわち, これ らの分類 に よ り教育的対応 を も明確 にす る とい う
連邦教育局 の期待 に応 えようとした もの となってい る。
まず,子 ども全体 を知的能力 の側面 か ら次 の ように分類 してい る。
英才
( Tal e nt e d)
・・・・・・・・・・4%
優秀
( Br i ght )
・・・・・・・ ・ ・普通
( No r ma
l) ・・・・・・・・・遅進
( Sl o w)
・・・・・
・・・ ・ ・I 9 2%
精神薄弱
( Fe e bl e ‑ mi nde d)
・・・・・・4%
この中の 「精神薄弱」 とされてい る
4%
は行政的 には二 グループに分類 され る。低 い方 は全 学齢児 の0・5%
を占め,公立学校 で見 られ る最低 の精神能力 の子 どもたちであ る。彼 らは真 の( ge nui ne l y)
精神欠陥児( me nt al l yde f i c i e nt )
であ り,公立学校 で は適切 には扱 うことがで きない。彼 らは収容保護 のケースであ り,収容保護施設 に移 され るべ きである。
残 りの3・5
% は精神薄弱 であるが,公立学校 内の特殊学級 である程度訓練が与 え られ得 る
( Pr o vi s i o nf o r Exc e pt i o nalChi l dr e ni nPubl i cSc hool s , 1 6 )
0「 Sl o w,Ba c kwa r d, Re t a r de d,o rLa ggar dChi l dr e n」
な どと呼 ばれ る 「精神薄弱」 の上 にラ ンキングされてい るグループ は最 も多 い子 どもたちのグループであ り,学齢児 の1 0%
か ら5 0%
の部分 を構成 す る。精神 欠陥者
( me nt al l yde f i c i e nt )
で はないが進歩 が遅 い子 どもたちで あ る。人数や重要性 の点か ら,これ らの子 どもたちは最大 で はないが大 きな学校 での問題 である。」(p.16)
分類 す る上 で最 も重要 な ことは, 「公立学校 で適切 に教育 され得 ない児童 と通常 の学級
( day c l as s )
で適切 に教育 ・訓練 され得 る児童 の間の差異」であって,調査者 たち は 「収容保護施設( i ns t i t ut i o n)
ケース と公立学校 ケースの間の区分」 を一層鮮 明 にす るべ きで あ る としてい る。
この区分 の設定 のために少 な くとも三 つの基準 を上 げてい る。 まず第一 に, 白痴
( i di o t i c)
お よび痴愚( i mbe c i l e )
の子 どもたち,道徳 的堕落( de ge ne r a t e )
お よび怠学( de l i nque nt )
の児 塞,重度 の( s e ve r e l y)
肢体不 自由ない しは療病 を もってい る子 どもたちの存在 である。
これ ら の子 どもたちは 「同学年 の普通児 と一緒 にす る ことは不適切」であ り,「多 くは隔離的 な収容保 護施設 内にあってす ら, ただ保護的処遇( c us t odi alt r e at me nt )
の対 象 にす ぎない。」第二 の基準 は,児童 の症状 の治療可能性 あるい は症状 の相対 的 な安定性 とい う点 に関連 す る。
あ る児童 は外見上 おおむね正常 で,精神的特性 においてなお退行 してい る
。
彼 ら自身 の安全 の ために も, さ らに彼 らが公立学校 内で関係 を持 つ子 どもたちの安全 のために も彼 らが学校 か ら 移 され,収容保護施設 に措置 され ることが望 ましい。彼 らの何人 か は教育可能 でおそ ら く公立 学校 で訓練 され得 る, しか し彼 らが彼 らが その ように処遇 され ることは不適切 である。
道徳 的 痴愚( mo r a li mb e c i l e )
の最 も危険 なタイプが この クラスにはや って くる。 これ らの児童が道 徳 的感化 の危険お よび彼 らの特性 を伝染 させ る可能性 を もって正常児 の間で生活 しない ように す るために, これ らの児童 を特別 な収容施設 に隔離す るための法的な保障 を得 るために学校 当 局 は助力 すべ きであ る。第三 の基準 は公立学校 と収容施設 での処遇 に対 す る受 け入れ易 さである
。
児童 の全生活時間 一睡眠時や覚醒時一 をコン トロールす る収容施設 は公立学校 (学級)で教育 す るよ りも,困難 なケースのために よ り効 果 的 な訓練 を与 える こ とがで きる とい うこ とは道 理 が あ る。 (p19‑20)
報告書 は,公立学校対 象 と収容施設対 象 との分類基準 を設定 した上,具体例 として次 の よう に提示 してい る (p21‑22)0
収容保護 のケース (公立学校 当局 の監督 と保護 か ら除外 され るべ きケース)
1
.非道徳児( Mo r a l l yi n s a n ec h i l d r e n)
2.
暴力的児童( Vi o l e n t l yi n s a n ec hi l d r e n) 3.
痴呆児童( De me n t e dc h i l d r e n )
4.
中程度痴愚以下 の全精神薄弱児( Ba r r
の分類 による)5.
程度 が高 い道徳 的痴愚( Hi g h一 gr a d emo r a li mb e c i l e s ) 6.
重症療病( Se v e r ec a s e so fe p i l e p s y)
7.
伝染性疾患のケース (一時的あるい は長期的)8.
重度肢体不 自由児( Ch i l d r e n h e l p l e s s l y c r i p pl e d)
もし くは人 を不快 にさせ る奇形( s u f f e r i n gf r o m r e vo l t i n gp h y s i c a ld e f o r mi t y)
公立学校 にお ける特殊学級措置児童 もし くは特別 な指導 を受 ける児塞
1
.外国人2.
過年入学( La t ee n t e r i n g)
3
.学業不振( Ba c kwa r d )
であるが ノーマルな段 階 に急速 に回復 が可能4.
鈍感 で低能( Dul la ndf e e bl ygi f t e d )
5.
職業訓練 が必要 な児童( Chi l d r e nr e q ui r i n gvo c a t i o n a lt r a i n i n g)
6.
身体 的早熟, と くに性 的早熟児童( Chi l d r e no fp r e c o c i o u sp h y s i c a ld e v e l o p me n t , e s p e c i a l l yo fp r e c o c i o u ss e xd e ve l o p me n t )
7.
英才児( Exc e p t i o n a l l ygi f t e do ra b l ec hi l d r e n)
8.
進歩 を妨 げ,一時的あるい は恒久的 に学年への適応 を困難 にす る種々の身体 的欠陥 を 持 つ児童9.
言語 に問題 あ るケース( Sp e e c hc a s e s )
1 0.
社会 的な問題 を持 つケース ;遅滞 の原因が主 として,特殊教育教師 と同様,社会的訪 問サー ビスを必要 とす るような家庭環境 にあ る もの。
アメ リカ公立学校制度 における特殊学級 (学校)の成立 75
不明確 な区分 の児童 (収容保護 あるいは特別 なケース)
1
.盲お よび準盲( Bl i ndands e mi ‑ Bl i nd)
2
.聾お よび準聾( De afands e mi ‑ de af )
3.
長期欠席 を含 む怠学( Del i nque nt s ,i ncl udi ngpe r s i s t e ntt r uant s ) 4.
程度 の高い痴愚( Hi gh‑ gr adei mbe c i l e s )( Bar r
の分類参照)5.
程度 の高い痴愚 よ り程度 の高いすべての精神薄弱児( Al lf e e bl e一 mi nde dc hi l dr e nof hi ghe rgr adet hanhi ghgr adei mbe ci l e s )
6.
肢体不 自由児( Cr i ppl e dc hi l dr e n)
7
.軽症 の療病 を持つ児童 あるいは神経 または通常 の学級 の一員 となることを困難 もし く は不適切 にす るような他の疾患 を持つ児童次 に, これ らの特異児のための特殊学級 (学校)の状況 についての調査結果 について述べ る。
調査 は,全米 の都市教育長 を対象 に,調査用紙 を送付 し,回収 す る とい う方法で実施 された。
調査用紙 は
1, 2 8 5
都市 に送付 され,8 9 8
都市か ら回答があった。調査用紙 の内容 は,「怠学( Del i n‑
que nt ) 」
「学業不振( Backwar d) 」
「欠陥( De f f e c t i ve) 」
「盲 あるい は準盲( Bl i ndors e mi bl i nd)
」な ど
1 4
種類 の名称 を例示 し, それ に該 当す る学級が設置 されているか否か を問 う形式であ り, 学級 の実態 を調査す るもの とはなっていなかった。中村( 1 9 9 3 )
が指摘す るように, この調査 で は 「全国的な実態把握 は十分 に行 われなかった」( p5 6)
のであるが, この調査 は,「特殊教育 のすべてのタイプを包含 した最初 の重要な統計的研究」( Publ i cSc hoolEducat i onofAt ypi cal Chi l dr e n. 1 9 31 , 3
.)とされてお り, この時期 の特殊学級 (学校)の全米的な設置状況 について は 知 ることがで きる。結果 は次 の通 りであった。
道徳的特異児 ( mo l l a l l ye xc e p t i o n a lc h i l d r e n ) のための教育施設設置都市 地 域 怠学,非行児学級 寄宿制学校 計 設置率 ( %) 大西洋岸北部
大西洋岸南部 中南部 中北部 西部
970935131 0l157日H 981406142 9324611113
計
精神的特異児 ( t h eme n t a l l ye xc e p t i o n a l )のための教育施設設置都市 地 域 低能児学級 遅進児学級 英才児学級 計 設置率 大西洋岸北部
44(12) 97(26) 22(6)大西洋岸南部
3(5) 15(25) 2(3)中南部
7(8) 18(20) 3(3)中北部
32(10) 70(22) 19(6)西部
13(23) 20(36) 8(14)3081162224日HHH 431834333︻′‑
計 ( 平均)
99(ll) 220(25) 54(6)身体的特異児 ( t h ep h y s i c a l l ye xc e p t i o n a l )のための教育施設設置都市
地 域 盲学級 聾学級 唖学級 吃音学級 開窓学級 肢体不 自由学級 計
大西洋岸北部 4 6
大西洋岸南部 中南部 中北部 西部
9 1 2 1 1 9 2 日H 4 1 1 5 0
計 1 2
環境的特異 児 ( t h ee n v i r o n me n t a l l ye xc e p t i o n a l )のための教育施設設 置都市
地 域 非英語 非英語 入学遅れ 特殊 計 設置率 ( 昼 間) ( 夜 間)
大西洋岸北部 大西洋岸南部 中南部 中北部 西部
l 1 4 6 1 4 1 1 2 4 8 3 0 12 5 1 6 6 7 7 9 2 2 9 2 9 6 0 8 1 1 9 3 日H 1 0 1 9 4 5 2 2 2 5
計
5
)特殊学級 に関する州法規定以上 の ような特殊学級設置 は各都市 の自治 に委ね られ,州 レベルで これ らの学級設置 を裏付 ける法整備 は遅れていた。
1 91
1年,Ne wJ e r s e y
は,聾,育,お よび教育的遅滞者 のための特殊 (教育)学級強制法 を通 過 させ た最初 の州であった( Ne wJ e r s e yCommi s s i on,1 9 6 5 ,I nSi gmon,Scot tB, 4
)が,必 ず しもすべての州がニ ュー ・ジャージー州 に引 き続 き特殊学級設置法 を設 け, しか も設置 を義 務化 した訳で はなか った。カ リフォルニア州の特殊学級 (学校)に関す る規定 は次 の通 りであった
( Hai ne s .1 9 2 5, 5 3 0‑
5 3
1) 0「すべての市学 区教育委員会
( t heboar d ofe ducat i on)
は,市教育長( t he c i t y s upe r‑
i nt e nde ntofs c hool s )
の勧告の下 において,もし くは,すべての小学校 区学校理事会( t heboar d ofs c hoolt r us t e e s )
は,郡教育長 の勧告の下 において,小学校 のために作成 されている通常の 教育課程以外 の教育課程か ら利益 を得 る生徒 のために,一学級以上 の分離学級 を設置 し,維持 して もよい( may) 。
通常の教育課程 に代 えて,在籍生徒 の精神的ニーズに適合 した,校長 の承 認 を受 けた他の学習活動 を与 えて もよい。」
(J une3,1 9 2
1)コネチカ ッ ト州 は 「州教育委員会委員長 の明確 な承認 な しに,数育上,特異児 は学校 に通学 す る特権 を剥奪 されて はな らない。締 め出 されたすべての子 どもは適切 な保護 と訓練 を保障す るためにただちに適切 な当局者 の注視 の下 にお くべ きである。」とし,特殊学校 について は以下 の ように規定 していた
( Hai ne s .1 9 2 5, 5 31 )
0「い ず れ か の 視 学 委 員 会
( boar d of s c hool vi s i t or s )
, タ ウ ン学 校 委 員 会( s c hool
commi t t e e)
,あるい は教育委員会 は教育上 の特異児 に特別 な指導 を与 えるべ きである。二つ以アメ リカ公立学校制度 における特殊学級 (学校)の成立
7 7
上 の学 区が結束 して このような指導 を与 えて もよい。学 区内に居住す る教育上 の特異児 の
1 0
人 以上 の親 と後見人 の陳情,州教育委員会 の承認 を受 けた陳情 に基づ き,視学委員会, タウン学 校委員会, あるい は教育委員会 はいわゆる教育上 の特異児のための学校 を設立すべ きであ り,また は他 の何 らかの方法で指導 を行 うべ きである。」
(
June2 4, 1 9 2 1 )
この当時の,各州の特殊学級 に関す る規定 の全般的状況 は次 の ようであった
( Hai ne s . 1 9 2 5
,5 3 4‑5 3 5 )
0「1.成文規定 を持つ これ らの州 のすべてが,公立学校 内にい くつかの特殊学級 を持 ってい る
。
しか しなが ら,命令 には十分従 っている とは言 えない。州法が特殊学級 の設置 を要求 して いる多 くの学 区において設置 されていない 。2.7
才か ら1 5
才 の子 どもで特殊学級 に通学 している比率が低 い州のい くつか は, この よう な特殊学級 の設置のための州法 による明確 な規定 を持 ってい る。ルイジアナ,ユタ, ミズー リ お よびウィスコンシン州が それ らの例 である。3.
特殊学級 の設置比率が高 い州 のい くつか は, この間題 での法令上 の要件 は持 っていな い。 ミシガ ンとロー ドアイラン ドがその例である。」へイ ンズによれば 「成文法的な許可や要件 は, いずれの州で も特殊学級 を設置す るための必 要条件 として はおそ ら く必要 ないけれ ども, この ような法令上 の要件 は,公立学校 内での特殊 学級設置 の推進力 としての役割」 を演 じていた
( Hai ne s ,T. H. 1 9 2 5 , 5 3 4‑5 3 5 )
0考察 された
3 0
州の内2 5
州が特異児( a t ypi c alc hi l dr e n)
のため卯 可らかの規定 を有 してい る.これ らの州 の内の
5
州 を除 くすべての州 の法が小規模学 区 と同様大規模学 区に適用 され る。
例 外 :アラバマ州 は「人 口6, 0 0 0
人 のすべてのタウンの学校委員会 は特殊学級 を設置すべ きである( s ha
ll)」 と規定 している。
1 9 2 3
年 のオ レゴンの成文法 は 「住人1 p, 0 0 0
人以上 の学 区のt heboa r dofdi r e c t o r s
は特殊学 校 を設置す る権限が与 えられ る」 と書 いている。他方,1 9 2 9
年のオ レゴン州法 は身体障害者 だ けに言及 しているが, それ は 「オ レゴン州内のすべての学 区は身体 障害児 のための設備 を準備 す ること (一定 の条件で)
」と要求 している.
ユタは主要都市 に一定 の学級 を設置す ることを要 求 しているが,許可( pe r mi s s i on)
は他 のすべての地方ユニ ッ トに拡大 され る。 この法令 は 「主 要都市( f i r s tcl a s sc i t i e s )
の教育委員会 は特殊学校 お よび特殊学級 を設 けなけれ ばな らない( s ha
ll),他の学 区教育委員会 は設置 して よい( may)
」 と書いていた。ワシン トンは低能
( me nt al l ys ubnor ma
l)に関連す る法令 を主要な学 区に制限 していた,す なわち法律 は 「主要 な学 区のt heboa r dofdi r e c t or s
は欠陥児( de f e c t i veyo ut h)
のための学 校 を設置 し維持 す る権限 を与 えられ る」 と規定 していた。 しか しなが ら,他のワシン トン州法 はpar e nt als c hool s
を5 0, 0 0 0
人以上 の都市 に限定 している。イ リノイは人 口1 0 0, 0 0 0
人以上 の都 市 にpar e nt als c hool s
の設置 を義務づ け,人 口2 5, 0 0 0
か ら1 0 0, 0 0 0
人の都市 に対 して は任意設置としていた。
こうして
,2 5
州 の内5
州が法令が適用 され る学 区の規模 に関 して何 らかの制約 を設 けていた。( Pu bl i cSc hoolEduc at i ono fAt ypi c alChi l dr e n. 1 9 3 1 , 7‑8)
最後 に,特殊学級 (学校)の対象 となる精神遅滞 あるいは他の特異児 の定義 はどの ようにな っていたであろう
。
成文法 による定義 は,特殊学級 (学校)での訓練 のための志願者 として考 慮 しなければな らないほ ど,子 どもたちが重大 な問題 を抱 えているか, あるい は学校 での活動 において遅滞 しているか どうか, あるいは精神的な欠陥があるか どうか を明確 にす ることを目的 としてい る。特殊学級への入級 のための適切 な志願者 として子 どもたちを選抜 す るために, ミズー リ‑州法 は 「教授 の可能性 のあ る精神薄弱児」 と明記 し,マサチ ューセ ッツ州 とニ ュー ヨー ク州 の法律 は 「三年以上 の遅滞」 との文言 を使 用 し,ニ ュー ジャー ジー州法 は 「普通 よ り 三年以下」 との文言 を用 いていた
( Hai ne s ,T. H. 1 92 5, 53 6‑537)
0州法で特殊学級 (学校) の対象 を規定 してい る州 はこの時点で は一部 であ り,規定 してい る 遅滞 の程度 もまだ厳密で はな く 「三年以上 の」遅滞 と規定 されてい るだ けであ った。 ミズー リ 州 の 「教授 の可能性 のあ る精神薄弱児」 との対 象規定 は,教授 の可能性 の低 い中 ・重度 の精神 薄弱児 を公立学校対象外 とす る可能性 を含 む規定 として注 目したい。
おわ りに
本小論 は,今世紀初頭
4
半世紀 において, アメ リカ合衆 国公立学校制度 の中 に特殊学級 (学 校 )が成立す る過程 を分析 す る ことを目的 とした。 この分析 を通 して,公立学校制度 に設置 さ れ た 「問題児」 のための特殊学級 (学校)か ら精神薄弱特殊学級 (学校)が分化 し,成立 した ことが明 らか となった。 さらに,精神薄弱 を含 む 「問題児」 に教育 を保 障す る三 つの立場 と精 神薄弱特殊学級 (学校) を組織 す る論理 を明 らか にす る ことがで きた。特殊学級 (学校) を組 織 す る立場 には,中 ・重度 の精神薄弱 を含 む 「すべての子 どもたち」 の教育 を保障す る もので はな く,学級 (学校)組織化 の後時 を経ず して,中 ・重度 の精神薄弱児 たちは公立学校対象外 として排除 され た。公立学校制度 内特殊学級 (学校) は,州法での規定 も始 ま り,今世紀初頭 四半世紀 の内にそ の制度的骨格 は完成 した。本研究 で は制度的枠組 みを追跡す る ことに重点 を置 き, その制度が 成立す る社会的,歴史的背景 の分析 には至 らなか った。 この点 について は今後 の研究課題 とし て残 したい。
(近)
1)Cr e mi n ( 1 9 6
1)は,「義務就学法はアメリカ教育史においてあらたな時期 を画 した。肢体不 自由, 盲,聾,病気,愚鈍が増大 してきた。以前 は学校から落ちこぼれていた数千の不従順で救いがた い子 どもたちに今や最低限の期間公的責任 を持つこととなった。 」( Hof f ma n
,E. 1 9 7 5 , 4 1 8 )
と指摘 している。ヘツク( He ck
,A.0)は,「義務就学法がで きるまで,公教育 はこのような特殊学校 も しくは学級に大 きな関心を示さなかった。義務就学法 は所定の年齢のすべての子 どもたちの就学 を強制 した ;これは教育者たちの注意を, これまで様々な理由で排除されてきた子 どもたちのグ ループに向けさせた」(Hof f ma n,E. 1 9 7 5 , 4 1 7 )と述べた。 また,アメリカで最 も初期に特殊学級
を設けてこれ らの問題に対応 したプロビデンス市の特殊教育主事 は次のように報告 している。「教育が大衆に拡大 して くるにつれて,以前 は無視 され,否定 され,見捨てられた社会の下層に まで教育が広まってきている。スピーチ能力を獲得するのが遅い子 ども,そして知覚が鈍 く,認 知力が弱い子 ども,筋力や神経が弱い子 どもか ら生来の賢さが自らの教師である子 どもまで,そ の距離 は大 きくない, しかし,それは日々急速に増大する
。 」( Es t e n
,良. A. 1 9 0 0 / 1 9 01 , 1 0 )
さらに,中村 は次のように述べている。「 1 9
世紀前半以降,聾 ・盲 ・精神薄弱児は,州が管理する特殊学校で教育の機会があった。就学 義務が徹底 して実施 されていなかった公立学校では,その他の障害児およびその周辺児童による「問題児」問題 は成立 しなかった。「問題児」が通学 しても,公立学校では出席停止が罰 として活 用され,学業が著 しく遅れた児童 は放校処分 となった。学業や規律に問題がある児童 は,注目を 受けた り,他児への指導を妨げるほど,学校にはなが くとどまらなかった。だが, このような措
アメ リカ公立学校制度 における特殊学級 (学校)の成立
7 9
置 は,就学義務 が強化 され る
1 9
世紀末 には不可能 となる。
」 (中村,1 9 9 3 b, 5 4)
2
)これ らの学級 (学校)に就学 した生徒 の内実,数お よび教育成果 は次 の ようであった( Che ne y, F.
E. 1 9 0 3‑0 4, 3 9 )
05
年間で3 0
名 の少年 と5
名 の少女が在籍 した。1
年 の最大人数 は1 5
人 で最少 は1 0
名,平均 は1 2
名 であった。 国籍‑2 0
名が アイル ラン ド人,6
名 がアメ リカ人,6
名が ロシア系ユダヤ人
,1
人 が ドイツ系ユダヤ人,1
人 がス ウェーデ ン人,1
人が ア ッシ リア人 であった。年齢 一 入学年齢 は6
才か ら1 4
才 まで様 々であった。1 2
人 は1
1才か ら1 4
才 の間であった。在学期 間‑3 5
名 の うち,1 8
名が1
年未満 の在学 であ り,1 7
名が2
年か ら5
年 の在学 であった。1
1名 は明確 には精神薄弱で はなか ったが,彼 らの属 す る学年 の学習 よ りは絶望 的 に遅れてお り, しか し低学年 に置 くには年齢 が進 みす ぎていた。 この1
1名 の中の一人 は学校 をや めて働 いた。残 りの1 0
名 は進級,6
名 は学年制小学校 に進級 し,4
名 は混合学年制 の文法予備校 に進級 した。小 学校 に進級 した6
名 は2
年か ら6
年 まで順調 に進 んだ。 9
名 は就職 し,工場 で一 日に6 0
セ ン トか ら1
ドル稼 いでい る。 この9
名 の うち3
名 は明確 に精神薄弱であ り,残 りの6
名 は平均以下 の知 的能 力 で あ っ た。卒 業 生 で1
人 だ け無 業 で あ る。 この少 年 は遅 滞 の程 度 が 低 く( l ow‑ gr ade def e c t i ve)
, ウェイバ リー( Wave r l e y)
州 立収容施設 に入 れ られ るべ きだ った。3
名 は行 方不 明。一人 はウェイバ リー に送 られたが,母親が死亡 してお り,父親 が子 どもたちを捨 てた( Che ne y
,F. E. 1 9 0 3‑0 4, 3 9)
0ボス トン特殊学級 の教育 の結果 について は次 の ような報告 もある。全部 で
2 6 4
名が教育 を受 けた。2 4
名 ウェイバ リー に送 られた。5
名 死亡。1 5
名 私立学校 に。3 6
名 公 立普通校 に再入学。97
名 まだ,特殊学級 に在籍。87
名1 6
才 の年令制 限,病気 な どで 退学。 ( Li ncol n,D. F. 1 9 0 9 /1 0, 8 9)
3
)フイツツ( Fi t t s )
は,特殊学級 の役割 について, ほ とん ど同様 な ことを別 の部分 で も次 の ように 述べてい る。「社会 お よび普通児 の教師 たちを教育す ること。 これ は特殊学級 の教師 によってな されなけれ ば な らない。
Mi s s . Che ne y
の活動 はこの典型。特殊学級 での教育 のための児童 を探 し出 し,徳 らを 援助 す る こと。わずかな精神欠陥( me nt al l yde f e c t i ve)
の生徒 にエネルギーの大部分 を使 う小学 校教師 を救済す ること。 」( Fi t t s ,A. M. 1 91 6 /1 7 , 9 4. )
4
) ゴダー ドは以下 の ように精神遅滞者 を分類 し, 白痴 を公立学校対象外 とす るよう主張 した。「(1)全体 的 に三才未満の発達停止, すなわち二才以下 の達成 の者。 これ らは白痴 である。
( 2 ) 3
才か ら7
才の年齢 で恒久的 に発達停止す る程 の遅滞 の者。 これ は痴愚であ る。(3)7才か ら
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才の年齢 で発達停止す るほ どの遅滞 の者。 これ らは公式 には精神薄弱 と呼 ばれ る が,遅滞者全体 に も適用 され る用語 で もある。我々 はここで彼 らを軽愚( mor ons )
と呼ぶ こ とを提唱す る。 この語 は" f ool "
のギ リシア語 で あ る。英語 の" f ool "
は公式 に使 われてい るが, 正確 に この段階の子 ども,判断や感覚 で欠陥が ある子 どもについて記述す る。 」( Goddar d, H.
1 91 0, 2 4 2)
「子 どもの最終的な段階 は完全 な発達停止が生 じた期 間 に依存 す る。 もし,
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才 で停止 した場 合,彼 は痴愚である。 もし7
才か ら1 2
才 の間 まで発達 し続 けるな らば,彼 は軽愚 あ るい は程度 の 高 い精神薄弱児 になる。彼 は非常 に多 くの ことがで きるように訓練 され るが決 して正常 にはな ら ない し,指示 な しに身 の まわ りの ことがで きるようにはな らない。 」( Goddar d,H. 1 91 0, 2 4 3)
文献