アメ リカにお ける公認会計士証明基準 の動 向
児 嶋 隆
1.は じ め に
アメ リカの大規模公認会計士事務所の経営は,監査 ,コンサルテ ィング, 税務が3本柱である。その うち監査 といえば,企業の財務諸表監査を思い浮 かべ るのが 自然であろ う。 しか しなが ら,近年監査部門の業務は多様化 して いる。た とえば,会計士事務所は,アカデ ミー賞の投票や宝 くじの抽選 ,さ らには,あるメーカーの ゴルフボールの飛距離に対 して保証 (assurance)杏 提供 している(1)。それ らは証 明業務 (AttestEngagement)と呼ばれている。
アメ リカ公認会計士協会 (AICPA:AmericanInstituteofCertifiedPublic Accountants)の監査基準審議会 (ASB:AuditingStandardsBoard)は , 1986年に証明基準 (AttestationStandards)お よびその解釈書セある証明業 務基準書 (SSAE:StatementonStandardsforAttestationEngagement) 第 1号を公表 した。SSAE第 1号に よれば,証 明業務は次の ように定義 され る (SSAE No.1,para.13)0
「証 明業務は,実務会計士 (practitioner)が,他の当事者の責任である書面 に よる言明 (assertion)の信頼性に関 して結論を表 明す る書類を発行す る こ とに従事す る,あるいは発行す る業務である。」
1998年3月現在,SSAEは第 1号か ら第8号まで発行 されている。1998年
‑ 121‑
6月,ASBは証 明基 準 お よび SSAE第1号 改正 のた め の公 開草 案(2)(以 下
「公 開草 案」 とい う) を公表 した。 そ の後,1999年1月 に改正証 明基 準 お よ び改正 SSAE第1号 が公表 され,1999年6月30日以降発 行 され る証 明業 務 の報 告 書 に 適 用 され る こ とに な っ て い る 。 本 稿 で は ,証 明 基 準 お よび SSAE第1号 が改正 され た背景 ,内容 を考察 す る ことに よって ,証 明業 務基 準 の動 向を探 る ことにす る。特 に断 らな い限 り,SSAE第1号 につ いてはパ ラ グ ラ フNo.を 用 い て 本 文 中 に 注 記 す る。 な お ,本 稿 で は , "criterion (criteria)"を 「規 準上 "standard(S)"を 「基 準」 と訳 してい る。
2.
公開草案公表 の経緯(1) 公表 の理 由
公 開草 案 の 「概要」 (以下 「」を省略 す る)は ,公表 の理 由につ いて次 の よ うに述 べ てい る。
SSAEは,最初約10年前に発行された。過去数年間の間に,SSAEに従 って実施 された業務は急激に増加 した。ASBは,意思決定者がますます,公認会計士 (証明 基準およびSSAE第1号本文では 「実務会計士」とい う用語が使用 されている一筆 老註)に彼 らが信頼する財務諸表以外 の情報の信頼性を高め ることを期待す るた め,証明業務に対する需要は増え続けると考えている。たとえば,AICPAの保証業 務常務委員会 (ASEC:AssuranceServicesExecutiveCommittee)によって展開さ れた業務の多 くは,SSAEに従 って実施 される業務を含むであろ うと予想される。
最近発展 したWebTrustサービスは,インターネ ットによってサービスまたは物を 販売する事業体の方針や内部統制についての保証 を提供す るものであるが ,それ は,SSAEに従 って提供 されるサービスの例である。‑ ASBは,SSAEの有用性 を向上させるために,意思決定者の要求に焦点を当て,それ らの要求を最大限に満 たすためにSSAEに対 してなされ得 る向上が何であるかを明らかにする。
引用文中のASECは,1997年にAICPAに設け られた ものであ り,その任務 は 「保証業務特別委員会 (通称 エ リオ ット委員会)報告書」(3)(Reportofthe SpecialCommitteeonAssuranceServices)で推奨 された6つの保証業務の
うち次の業務を発展 させ ることである(4)。
・電子商取引 (ElectronicCommerce)‑ (公認会計士が一筆者註 ,以下 同 じ)電子商取引 と通信の真正 さと安全性を保証す る。
・高齢者医療サービス (ElderCareService)‑高齢者の財務取引 と医療保証 制度を保証す る。
・企業業墳測定 (BusinessPerformanceMeasures)一業績測定の 目的適合性 と信頼性を保証す る。
・システムの信頼性 (SystemsReliability)一情報の完全性 とコン トロールを 保証す る。
ASECについて考察す ることは本稿の趣 旨ではないが,ASECを通 してエ リオ ッ ト委員会報告書が証 明業務に関連性を持 っていることが理解 され る。
(2) エ リオ ッ ト委員会報告書 と保証基準
1996年12月に公表 されたエ リオ ッ ト委員会報告書は,保証業務を次の よう に定義す る(5)0
「意思決定者のために,情報の質 ,あるいは情報の内容を向上 させ る,独立 の職業専門家の業務」
「この広い概念は,監査業務 (auditservice)お よび証 明業務を含み,コンサ ルテ ィングとは区別 され る (規似点はあるが)oなぜな ら,その概念は助言を し,またはシステムを設置す るとい うのではな く,む しろ主 としで情報を向 上 させることに焦点を当てるか らである」(5)oェ リオ ッ ト委員会報告書 は職 業会計士の業務に関 して次の ような図を示 している(6)。
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他 の業務 (例 :税務)
⑪
保 証 証 明 離 コンサル テ ィ ン グ
・監査 合意された手続
*Audit/ examination
報告書の定義に よれば,職業会計士の保証業務は,財務諸表監査 ,またはそ の他の証 明業務 よ り相当範囲が広 くなっている。AICPAは,証 明業務 に関 しては証 明基準お よびSSAEを,財務諸表監査に関 しては一般 に認 め られ た監査基準 (GAAS:GenerallyAcceptedAuditingStandards)お よび監査 基準書 (SAS:StatementonAuditingStandards)を設定 してい るo Lか し,保証業務に関す る基準お よび解釈基準書の設定につ いては,「エ リオ ッ
ト委員会には基準設定の権限がない」(7)ことか ら,保証基準 ともい うべ き基 準の設定は予定 されていなか ったのであるO
(3) AICPAの反応
AICPAのASBは,1997年12月に公表 された,「監査基準審議会の未来 : 21世紀 に 向け ての戦略 的率先事項 (HorizonsfortheAuditingStandards Board:StrategiclnitiativesTowardtheTwenty‑FirstCentury)」 と題す る 報告書の4項 目の 「率先事項」の第2で次の ように述べている(8)Q
「新たに起 こっているユーザー ・ニーズに応える,新 しい保証業務を促進す るために証 明基準の利便性を高める」
その具体的な行動計画は次のとお りである。
①証 明可能な測定規準のためのフ レーム ・ワークを確立す る0
② さらなる業務の機会を可能 とす るために証 明基準の理解可能性お よび柔 軟性を増大 させ る。
③ (現行の証 明報告の‑筆者註)代替的報告モデルを探 るo
④ (現行証 明業務基準書の対象以外の一筆者註)追加的分野に関す る特定 の証 明基準あるいは指針を開発す る。
行動計画の趣 旨は,言明の対象事項 (subjectmatter)はその規準を用いて 合理的に首尾一貫 した測定 または見積 りが可能でなければならず ,その条件 がなければ対象事項 の信頼性に対す る意味のある結論を出す ことはできない こと (上記①),証 明基準を,言明そのものではな く言明の対象事項に対 して 直接報告す ることを認めるよう修正 し,実務会計士が新 しい業務を提供す る ために証明基準を どの ように利用す るのか ,より理解 しやすい よう基準の文 言を明確にす ること (同②),責任のある当事者か ら言明が得 られない業務 ,
また場合に よっては実務会計士が責任 のある当事者である業務 のための基準 を作 る可能性を調査す ること (同③),な らびに,特定 の証 明 (例えば,経営 に対す る内部統制 ,電子商取引,ISO基準お よびパブ リック ・セクタ‑の業 績評価)規準 ,または特定の測定規準‑の証 明基準適用に関す る指針は,実 務会計士が新たに起 こっているユーザ 一 ・ニーズを満たす うえで助け となる
こと (同④),であるo
この ような ことか ら,ASBには,証明基準お よびSSAEを改正す ること に よって新 しい保証業務を促進 しようとす る意 図が あ る ことが明 らか であ る。その ようなASBの意図が ,証 明基準お よびSSAE第 1号改正のための 公開草案が公表 された背景であると理解 され るO
(4) 財務諸表監査 ,証 明業務 と保証業務
これ まで,証 明基準お よびSSAE第 1号の改正のための公 開草 案公表 の 経緯について述べたが,改正証 明基準お よび改正 SSAE第 1号を考察 す る 前提 として,財務諸表監査 と証 明業務 ,さらにはそれ らと保証業務 との関係
‑ 1 2 5 ‑
について概念的な整理が必要 と考 える。Ricchiuteは ,証 明業 務 と保証 業 務 な らびに財務諸表監査 との関係について次 の図を示 している(9)。
図2
情報の質を向上させ、
あるいはその質に関し て報告する業務
なお,Ricchiuteは,「多 くの コンサルテ ィング業務 は,コンサル タン トが情 報 の利用を推薦す る2当事者 の契約である。 コンサルテ ィングは ,情報 の利 用に焦点を当てるのであ り,利用 され る情報 の質 には焦点を当てないのであ る。 これに対 して ,保証業務 は ,保証者が情報 の質を向上 させ ,またはそれ に対 して報告す る3老契約 である。」(9)と述べてお り,図1で示 されている保 証業務 とコンサルテ ィングの重複部分については触れていない。
さらに,Ricchiuteは,「保証業務 のあるものは証 明業務 であ り,証 明業務 のあるものは監査 と呼ばれ る。」(10)と述べてい るが ,先に述べたASBのアプ ローチは,上記図2ではな く,次の よ うな概念 図で表す ことがで きると考 え られ る。
図3
→ 讐匙
栗
urance)‑ :証明業務の広がり を示す。
3.
改正証 明基準証 明基 準 は ,一般 基 準 (第1‑ 5),実施基 準 (第 1‑ 2)お よび報告基 準 (第1‑ 4)か ら構成 され るo 改正点 の 3箇 所 につ い て ,以下 順 に考 察 す る。
(1) 一 般基 準 の第3
改正 基 準 を次 に示 す (取 消 し線 部 分 が 削除 され て い る)0
実務会計士は,以下の2つの条件が存在すると信 じる理由がある場合にのみ ,莱 務を行 うのでなければならないO
・言明が,認められた機関に よって確立された,またはその規準について よく知 っ ている読者が理解できる十分明確で包括的な方法に よって言明〇表示上で述べ ら れた合理的な規準に照 らして評価することが可能であるO
・言明が,上記規準を用いて合理的に首尾一貫 した見積 りあるいは測定が可能であ るO
改正後 では 「言 明の表 示」 か ら 「の表 示」 が削除 され て い る。 これ は ,後述 す る よ うに ,改正 SSAE第 1号 が マネ ジ メ ン トの言 明だ け でな く,言 明の対 象 事項 に対 して直接報 告 で きる ことを意 図 して い るか らで あ る と考 え られ る。す なわ ち,「言 明 の表 示」とい う表 現 では書面 に よる言 明が あ る こ とが前 提 に な るか らで あろ う。
(2)報告 基 準 の第 2
同様 に改正基 準 を次 に示 す (取 消 し線 部 分 が 削除 され ,太字 部分 が追 加 さ れ てい る)O
報告書は,言粥がそれが測定 される確立された,または表明された規準に
て 孟 示 されて.vL,・Y̲言方二に基づいた言明の信頼性に関する実務会計士の幕命を表明 し なければならない。
一一12 7 ‑
変 更 内容 の ポイ ン トは2つ に分 け られ る。 まず,「規 準 に 準 拠 して (in conformitywith)」 が 「規 準 に基 づ いた (basedon)」に変 わ って い る。
SAS第518号に よれば ,財務諸表監査 におけ る無限定報告 書 の意見 パ ラグ ラ フは,「‑上記 の財務 諸表 は ,‑Ⅹ社 の財 政 状態 ‑・経 営成 績 お よび キ ャ ッ シ ュフ ローを一般に認 め られ た会計 原 則 に準拠 して適正 に表 示 して い る」
(‑ the financialstatements ‑ presentfairy ‑ in conformity with generallyacceptedaccountingprinciples)と記載 され る (SAS第58号 , para.8,下線加筆)0SAS第69号は ,一般 に認 め られた会計原則 (GAAP) を 「一定時点で ,認め られた会計実務を定義す るために必要な慣行 ,規則お よび手続を含む技術的用語」 と定義 し,さらにGAAPを具体的に階層化 し て示 してい る (SAS第69号,para,2,5,10,ll,16)。 した が って , GAAPは,「財務諸表 に示 されてい る経営者の言明の一つ一つについて評価 で きる一定 の準拠枠 を提供す るものである」(ll)O この ことか ら,財 務諸 表 監 査 の報告書において 「準拠 して」 とい う表 現 が用 い られ る ことが理解 で き
る。
「しか しなが ら,証 明業務 の範 囲は広 いため ,すべての言 明に妥当す る単 一体 の規準を設定す ることで きないO証 明者 (attestor)は ,監査 ソフ トウェ アの表 明された規準‑ の整合性 についての結論を表 明す ることを依頼 され る 場合 もあれば ,その結論が ,経営者 の仮定 が財務予測に対 して合理的な基礎 を提供 しているか どうかに関係す る場合 もある」(12)。証 明業務 では ,個 々の 業務 について 「準拠枠」 に替わ る規準を設け ることが必要 とな る こ とか ら,
「規準に基づいた」 とい う表現にな るもの と理解 され る。
次に ,言 明の 「信頼性」 が加 え られた ことに関 してであるが ,後述す るよ うに言 明はマネジメン トの責任であることと関連があると考 え られ る。すな わち,証 明業務 の報告書は言明その ものではな く,あ くまで もその信頼性 に ついての結論 を表 明す るものである。「信頼性」が加 え られた ことは ,実務会 計士 の責任 を限定 し,報告書の利用者 の期待 ギ ャップを埋め るものであると
解釈 で きよう。もっとも,先に引用 したSSAE第1号中の証 明業務 の定義 の 中には改正前か ら 「信頼性」の文言が入 っているoその点ではSSAE第1号 は改正後 も変わ らないか ら,改正に よって証 明基準 とSSAE第 1号 との一 貫性が得 られてい る。
(3) 報告基準の第 3
同様 に改正基準を次に示す (取消 し線部分が削除 されてい る)0
報告書は,業務および言明の表示に関する実務会計士のすべての留保事項を表明 しなければならない。
「言明の表示」か ら 「の表示」が削除 されているが ,これについてはすでに 述べた とお りである。
4.
改正SSAE
第1
号改正 SSAE第 1号を考察す る前に,SSAE第1号は証 明基準 の解 釈書 で あることを再確認 してお きたい。SSAE第 1号の改正点は ,大 き く分け るな らば ,①実務会計士がマネ ジメン トの書面 に よる言 明に対 してだけでな く, 言明が関連す る対象事項 に対 して直接報告 で きることにな ること,お よび② SASとの整合性 を図ること,の2点であろ う。この他 ,レビュー報告書 の要 素に関す る規定 の整備が行われてい る。 ここでは ,主 な改正点を考察 し,さ らに,ASBが ,証 明基準 の改正 と同様 にSSAE第1号の改正に よって広範 囲な実務会計士 の保証業務 に対応 しようとしているスタンスについて考察す る。
(1)対象事項 に対す る直接報告
①改正に よる効果
改正 SSAE第1号は,「書面 に よる言明の信頼性に対す る結論 は,その言
‑129‑
明または言明が関連す る対象事項 の どち らに言及 して も よい」 と して い る
(para.51 )。「実務会計士が他 の当事者 の責任 である書面に よる言 明の信 頼 性に関 して結論を表 明す る」 とい う証 明の定義 は変わ らない ものの ,実務会 計士は ,企業 のマネジメン トの言 明に対 してだけでな く,その言 明が関連す る対象事項 に対 して も直接結論 を表 明す る ことが で き るの で あ る。 た とえ ば ,改正SSAE第1号に よれば ,実務会計士が ,内部統制 に対す るマネジメ ン トの言明ではな く,内部統制 の よ うな特定 の対象事項 に対す る結論を クラ イアン トに報告す ることが可能 とな る。公開草案の概要 では ,対象事項 に対 す る直接報告 について ,次 の ような例を示 しているQ
私たちの意見では,W社は tレッドウェイ委員会支援観.織委員会による内部統制 一統合的枠阻みにおいて確立された規準に基づいて,19ⅩⅩ年12月31日において財 務報告に関する有効な内部統制をすべての重要な点で維持 していたものと認める。
公開草案の概要 はまた ,改正前のSSAE第1号に従 った次 の例 も示 して いる。
私たちの意見では,W社は トレッドウェイ委員会支援組織委員会による内部統制 一統合的枠魁みにおいて確立された規準に基づいて,19XX年12月31日において財 務報告に関する有効な内部統制をすべての重要な点で維持していたというマネジメ
ントの言明はすべての重要な点で適正に表示されているものと認めるO
新 しく認め られ る方法 は原則的方法 と下線 の部分が異 な っている。改正後 は 両方 とも認め られてい る。
ElliottとPallaisは ,先述 の保証業務 の定義 に関 して,「保証業務 の概念 は 幅広 いoそれは ,保証 の対象 とな る情報 の種頬 には制限がないか らであるo 情報は ,財務情報 ,非財務情報 の どち らで もあ り得 る。情報 は過去 の事象 , 現在進行中の事象で もよい し,あるいは内部統制 の よ うな システムも対象 と な り得 るのである。 さらに ,情報は ,直接 (製品に関す る情報) あるいは間
接 (製品に関す る誰かの言明に関す る情報)の こともある」(13)と述べている。
すなわち,保証業務には,言明だけでな く,言明が関連す る対象事項につい て保証を提供す ることも含 まれているので あ る。改正証 明基準 お よび改正 SSAE第 1号 には,ASBの率先事項 であ る 「新 た に起 こ って い る ユ ー ザ 一 ・ニーズに応える,新 しい保証業務を促進す るために証 明基準の利便性 を高める」 こと,具体的にはその行動計画である 「さらなる業務の機会を可 能 とす るために証 明基準の理解可能性お よび柔軟性を増大 させ る」 ことが反 映 されているO
1996年6月発効 とな った SSAE第4号,「合意 された手続業務」 (Agree‑ d‑uponProcedures)では,同時期に公表 されたSAS第75号 と対照的に,香 面に よる言 明を要求 してお り,証 明は言明に対 して行 うものであるとい う考 え方が鮮 明に現れていた ことに鑑みると(14),言明の対象事項に対 して直接報 告を認めることは証 明基準における重要な方 向転換であろ う。
②国際監査実務委員会の公開草案
国際会計士連盟 (IFAC:InternationalFederationofAccountants)の国際 監査実務委員会 (IAPC:InternationalAuditingPracticesCommittee)が 1997年8月に公表 した 「情報の信頼性についての報告」 と題す る保証業務の フ レームワークと実務原則に関す る公開草案は,保証業務に該当す ると考え られ る報告サービス業務 (reportingserviceengagement)を次の ように定義 している(15)。
「当事者間の一方 の責任であ り,対象事項 (subjectmatter)と呼ばれる情報 の信頼性に対 して,特定 された適切な規準に照 らして評価 し,結論を表明す ることに よ り報告す ることを 目的 とした業務」
ここでは,会計士の報告サービス業務において 「対象事項」 の信頼性に対 し
‑131‑
て直接報告す ることが予定 されている。
ASBは ,先述の 「率先事項」の第3の行動計画 として,「情報の信頼性に 関す る報告のための国際的に基準 となるフ レームワークに関 してIAPCと協 力 して作業を開始す る。その協力作業の 目的は国際的に存在す る監査 (aud‑
it)/証 明/保証 のフ レームワークの相違を合理的に説 明 し,または統一す ることである。」(16)と述べている。改正SSAE第1号が示す対象事項に対す る直接報告は,上記報告サービス業務の定義を認め ようとす るものであると も考えられ る。 しか し,IAPCの 「情報の信頼性についての報告」公開草案 が,報告書の形式について定型 フ ォームではな く長文式報告書を提示 してい ることに対 して(17),改正 SSAE第 1号は後述す るように定型 フ ォームの報 告書を示 してお り,ASBはIAPCとの調和について是 々非 々とい う態度 を 崩 していない。
(2)監査基準書 (SAS)との整合性
①財務諸表監査の報告書 との整合性
公開草案の概要は,「報告の指針を,SAS第58号,「財務諸表に対す る報告 書」(AICPA,職業基準 ,第1巻,AU 508)に含 まれている歴史的財務諸表 に対す る監査人の報告書上で要求 されている報告要素 と似た要素を含む よう 適合 させ る。」 と述べている。改正前のSSAE第1号では,監査に基づ く報 告書について報告書の例が示 されているのみであ り,報告書の要素について は定め られていない。一方SAS第58号では,報告書に含め られ るべ き要素 について定めがある (SAS第58号,para.8)。証 明基準の 「序文」は,「証 明基準は10個の一般に認め られた監査基準 (GAAS)を 自然に拡張 した もの である」としている。「証 明基準は,財務諸表監査以外の幅広い業務のための 指針を提供 しているものであ り,証 明業務のすべてに対す る傘 としての役割 を果た している。GAASは,財務諸表監査 とい う証 明業務の一つの特別なタ イプの証 明業務にだけ適用 され るのである」(18)o Lたが って,証 明業務一般
の報 告 書 の要 素 は財務 諸 表 監 査 の監 査 報 告 書 の要 素 と似 る ,言 いか えれ ば報 告 書 の 内容 ,形 式 に共 通 点 を持 つ 必 要 が あ るの は 当然 とい え よ う。
こ こで は
,SSAE
第1号 の改正 点 を示 した うえ で,SSAE
第1
号 とSAS
との整 合 性 が どの よ うに 図 られ て い るか ,証 明業 務 の監 査 に基 づ く報 告 書 の 要 素 を検 討 す る。
(a)監 査 に基 づ く報 告 書 の要 素
改正
SSAE
第1号 で は ,実 務 会 計 士 の監 査 に基 づ く報 告 書 は 次 の 事 項 を 含 まな けれ ば な らな い と され て い る (para.56)。a.「独立の」 とい う文言を含む表題
b.マネジメン トの言明の特定 (マネジメン トの言明が実務会計士の報告書 に添付 されない場合には,第 1パ ラグラフはまたマネジメン トの言明の表示 も含 まな ければならない.)
C .言明はマネジメン トの責任であるとの表明
d.実務会計士の責任はその監査に基づいてマネジメン トの言明 [または言 明の対 象事項]に対す る意見を表 明す ることであるとの表明
e.監査は
AI CPA
に よって確立 された証 明基準に準拠 して実施 され ,したが って, その状況において必要 と認めた手続を含んでいるとの表明f.実務会計士は,監査は 自分の意見のための合理的な基礎を提供 してい ると信 じ ているとの表 明
g.以下のいずれかに対す る意見
(1) マネジメン トの言明はすべての重要な点で確立 された,または表明 された規 準に基づいて [または準拠 して]表示 されているか [または適正に表 明 され て いるか] どうか
(2)言明の対象事項はすべての重要な点で確立 された,または表明された規準 に 基づいて [または準拠 して]いるか どうか
h.言明が,言明者 と特定 された当事者 とに よって合意 された特定の規準 (パ ラグ ラフ19参照)に基づいて作成 されている場合には,実務会計士の報令書 は以下
‑133 ‑
の事項を含まなければならない。
(1)特定された当事者のためのみを意図していることを理由とする報告書の利用 に関する制限 (報告基準の第4参照)の表明
(2)確立された規準がある場合,言明は,[確立された規準を特定する]に基づい ていたならば表示されていたであろう言明と異なることは意図されていない と の表明
i.実務会計士の事務所の手書きまたは印刷による署名 j.監査報告書の日付
(b)改正点 の検討
改正前 の SSAE第1号 で例示 されてい る監査報告書 は2つ の パ ラ グ ラフ で構成 され るが ,改正後 で示 され てい る監査報告書 は,SAS第58号 の定 め る 監査報告書 と同 じく導入 (introductory),範 囲 (scope),意見 (opinion)の 3つ のパ ラグラフか ら構成 され る。上記報告書 の要素がいずれ のパ ラグラフ の内容 に該 当す るかを示 せ ば次 の よ うにな るO
・導入パ ラグラフーb.〜 d.
・範 囲パ ラグラフー e.〜 f.
・意見パ ラグラフ一 g.〜 h.
a., i.お よびj.につ いてはいずれ もSAS第58号 の定 め る監査報告書 と の形式 的な整合性 を持つためであ り,実質 的な改正 ではない ことは明 らかで あ る。そ の他 につ いて ,以下 ,パ ラグラフごとに考察す る。
(i)導入パ ラグラフ
b.は改正前 と変更 はないが,SAS第58号 の監査報告 書 との比較 で述 べ る。財務諸表監査 では 「言 明は財務諸表 に表現 され てい るマネ ジメン トの陳 述 であ る」(SAS第31号,para.3)とされ ,監査報告書 の導入パ ラグラフで
「会社 の財務諸表 を監査 した」(SAS第58号,para.8)と述べ られ るo Lた
が って,言明は監査報告書上で特定 されているといえるか ら,財務諸表監査 の報告書 と実質的な差異はない。
C.お よびd.は改正に よって新たに設け られた ものであるが ,財務諸表 監査の標準報告書
( s t a n d a r dr e p o r t )
に同様の記載があ る( SAS
第5 8
号 ,p a r a .
8)0C.
は,言明に関す る責任が誰にあるかについてあいまいさを排 除す るためであ り,またd.紘,実務会計士の責任は言明に対 してではない ことを明らかにす るためであ り,いずれ も実務会計士の責任の範囲を限定す ることを 目的 としていると考えられ る。 この ような結果 ,導入パ ラグラフに 関 しては,SAS
第5 8
号の監査報告書 との整合性が得 られている。(ii)範囲パ ラグラフ
e.については
SAS
と大 き く異なる。改正SSAE
第1号で示 されている 報告書の例示は改正前 と同 じ表現であるか ら改正点ではないが,SAS
と比 較す ることは証 明業務を考察す るに当た って有益であると考える。証明業務 の監査報告書の範囲パ ラグラフでは,
「私たちの監査はAI CPA
に よって確 立 された証 明基準に準拠 して実施 され ,したが って,‑その状況において必 要 と認めた手続を実施す ることを含んでいる。」 と述べ られ る( p a r a .5 8 )
0SAS
第58号で示 されている標準監査報告書の範囲パ ラグラフでは,
「私たち は,GAAS
に準拠 して監査を実施 した。」 とのみ記載 され,
「したが って,そ の状況において必要 と認めた手続を含んでいる」 とい う記載はされない (S‑AS
第5 8
号,p a r a .8)
0 「監査が一般に認め られた監査基準に準拠 して実施 さ れた ことを読者に報告す ることは ,監査人が監査の実施に当た って職業監査 人に よって確立 された基準に準拠 した とい うことと同 じである」(19)。財務諸 表監査では,AI CPA
の会員はAI CPA
職業行為規定に より1 0
個のGAAS
の 解釈書であるSAS
に準拠す ることが要求 されている(20)。sAS
は監査の実 施方法 ,手続を明らかに していることか ら,結果 としてGAAS
が 「その状況 において必要 と認 め られた手続」 を包含 してい る ことにな る(21)0sAS
は‑1 3 5 ‑
AICPA職業基準に体系化 されてお り,仮に監査報告書の利用者がそ の職業 基準をみ るならば監査人が従 うべ き監査 の実施方法について知 ることが可能 であるo Lか し,証 明業務においてはSASに該当す る体系化 された手続 を 定めた ものはな く,個 々の業務で実施すべ き手続 は異 な るのであ る。 した がって,個 々の業務 ごとに 「その状況において必要 と認めた手続」を決定す
る必要が生 じる。
f.は SAS第58号の報告書 と同 じ表言であるQ
(iii)意見パ ラグラフ
g.では,言明 と言明の対象事項の どちらに対 して も意見を表 明できるこ とが示 されている。言明の対象事項に対 して直接報告 できることについては すでに述べたので再度述べ る必要はないであろ う。しか し,「確立 された,普 たは表 明された規準に基づいて [または準拠 して
]
」中の 「準拠 して」につい ては検討が必要である。すでに述べた よ うに証 明基準 の報告基準 の第3で は,「確立 された ,または表 明された規準に準拠 して」が 「確立 された ,また は表 明された規準に基づいた」に変更 されているか らである。財務諸表監査 において監査人が 「‑財務諸表は,GAAPに準拠 して適正に表示 している」との意見を表明できるのは,GAAPが財務諸表に示 され てい る経営者 の言 明の一つ‑つについて評価できる準拠枠 を提供す る ものであ るか らであ っ
た 。
しか し,証 明業務において 「準拠枠」に替わ る規準に 「基づいた」ではな く,「準拠 して」 と意見が表明され るための条件を改正 SSAE第 1号は示 し ていないのである。SSAEの機能 も兼ね備えた特定の業務のための規準が設 定 され るな らば,「規準に準拠 して」 と表現できると考えられ るが(22), この 点について SSAE第1号で明らかにす る必要があると考 える。
改正に よって新たに付け加え られた 「適正に表 明されている」 とい う記載 についても検討の余地があると考 えられ る。SAS第69号では,「財務諸表の
全体的な表示 の適正性 に関す る監査人の判断は,GAAPの枠姐 み のなか で な されなければな らない。」(SAS第69号,para.3)とされ ,適正性 の意味 は明 らかに されている。 したが って ,証 明業務 の監査報告書で 「適正に表 明 されている」と意見を述べ るためには
,
「適正」の解釈が与え られ る必要があ ろ う(23)oまた ,改正後 では 「規準に準拠 して」 の前に 「すべての重要な点で」が加 え られている。 これ もSAS第58号 と整 合 させ るた め で あ る と理 解 され る (SAS第58号,para,8)aSSAE第 1号 では ,証 明 リス ク (attestation risk)を定義 した うえで ,証 明 リス クは固有 リス ク(inherentrisk),内部統制
リスク (controlrisk)お よび発見 リス ク (detectionrisk)か らなるとし (S‑
SAE第 1号 ,注8),固有 リス クと内部統制 リス クを評価 し,発見 リスクを 許容で きる レベルに抑 えることに よって証 明 リス クを許容で きる レベルに抑 えることがで きる,いわゆ る リス ク ・アプ ローチを採用 している。 リス ク ・ アプ ローチを採用す るためには ,それぞれ の リス クは金額 または金額以外 の 測定単位 の重要性 とともに評価 され る必要があるo Lたが って
,
「すべ て の 重要な点で」が加 え られたのは リス ク ・アプ ローチの採用 の観点か ら説 明さ れ得 るであろ う。 しか し,証 明業務 に財務諸表監査 と同 じように リス ク ・ア プ ローチを採用で きるか どうかについては ,さらに検討すべ きであると考 え る。htはSASと異な ってい る。(1)に関 してであるが,SAS第58号が定め る報告書 は公開会社だけでな く非公開会 社 に もま った く同 じ文 言 が適用 さ れ ,利用 の制限の文言は入 らないoSAS第62号に定め る,キ ャッシュ ・ベー ス等 GAAP以外 の会計基準で作成 された財務諸表 に対す る監査報告書にお いて も,政府規制 当局の報告規定に準拠 して作成 された財務諸表 を除いて利 用 の制限の記載は されない (SAS第62号,para.5)。(2)に関 しては ,財 務諸表監査 の場合 は該 当がない。SAS第58号では ,監査報告書上GAAP
へ
の準拠性 に対 して報告が行われ る。一 方 SAS第62号 では ,監査 報告 書上
‑ 1 37 ‑
キ ャッシ ュ ・ベ ース等 GAAP以外 の特定 された会計基準‑の準拠性 に対 し て報告が行われ る。証 明業務において ,規制 当局な どに よって確立 された規 準があるに もかかわ らず (para.16),言 明が言 明者 と当事者に よって合意 さ れた特定 の規準に基づいて行われ る場合 ,言 明が測定 され る規準が異なるだ けであ り,言明その ものが変わ るわけではない ことを強調す る必要 があると 理解 され る。
②虚偽記載 の重要性
改正前 の SSAE第1号では ,個 々の言 明の欠落 または虚偽 記載 が重要 で あるのは ,言 明 (の表示‑改正前) を信頼す る合理的な人が 「個 々の言 明が 含め られた ことあるいは修正 された ことに よって影響を受け るよ うな程度 で ある場合」 としていたが ,改正後 では 「その欠落 または虚偽記載 に よって影 響を受け るような程度 である場合」 に変わ ってい る (para.52)。改正後 の表 現は,SAS第47号で引用 されている財務会計基準審議会 財務 会 計 諸概 念 塞 準 書 (FinancialAccounting Standards Board Statement of Financial AccountingConcept)第2号,「財務会計 の質的特徴」 の表現を用 いて い る
(SAS第47号,para.6)。これに よって ,重要性 の概念 を明 らかにす るだけ でな く,報告書上 の 「すべ ての重要 な点で」 とい う記載 とも一貫性 が とれ , さらに SASで採用 されてい る重要性 の概念 との整合性 も得 られてい る。 た だ し, リスク ・アプ ローチについて述べた ように ,証 明業務において重要性 の概念が財務諸表監査 の場合 と同様 に適用可能か ど うかは さらに検討 の余地 が あると考 える。
③証 明基準 と品質管理基準書 との関係の指針
改 正 SSAE第 1号 は,SSAE第 1号 と 品 質 管 理 基 準 書 (SQCS:
StatementonQualityControlStandards)との関係に関す る指針を提供 して いる。公開草案の概要 は ,改正の趣 旨について,「ASBは,SQCSが どの よ
うにSSAEに関係す るかを明 らかにす ることに よって ,高い 品質 の職業 的 サ ー ビスに関す る公共的会計士業 の名声 が永続 す る こ とを確 実 にす るた め に ,適切な枠阻 みのなかで証 明業務 を実施す ることの重要性 を明確 に認識 し てい る。」 と述べているO
改正 SSAE第1号では ,次 の3つの事項が新たに設け られている。
・独立実務会計士は ,証 明業務においてAICPAのSSAEに準拠す る責任 があること (para.6)
・ (個人の独立実務会計士だけでな く一筆者註)独立実務会計士事務所 に 対 して,事務所 の証 明業務 の実施において品質管理基準書 の遵守を要求
した こと (para.7)
・証 明基準は個 々の証 明業務 の実施に関係 し,品質管理基準書 は事務所 の 証 明業務 の実施全体に関連す ることを確認 した こと (para.8)
① ほ,SSAEが証 明基準 の解釈書であることを表現 した ものであ り,② ,③ はSASに同様 の規定があることか ら (SAS第25号,para.1,3),この改 正 も財務諸表監査 との整合性 を図 った ものであると考 え られ るO
(3) レビューに関す る改正
① レビューに基づ く報告書 の要素
改正 SSAE第1号では ,実務会計士 の レビューに基づ く報告 書 は次 の事 項 を含 まなければな らない とされている (para.60)0
a.「独立の」という文言を含む表題
b.マネジメソトの言明の特定 (マネジメントの言明が実務会計士の報告書に添付 されない場合には,第 1パラグラフはまたマネジメントの言明の表示 も含まな ければならない。)
C.言明はマネジメントの責任であるとの表明
d.監査はAICPAによって確立された証明基準に準拠して実施されたとの表明 e.レビューは,言明 (または言明の対象事項)に対する意見の表明を目的とする監
…139‑
査 よりも範囲が相当に狭いものであ り,したがって ,その ような意見は表 明 さ れないとの表明
f.実務会計士は,もしあれば報告書に示 した修正事項以外に,言明がすべ ての重 要な点で規準に基づいて [または準拠 して]表示 され る [または適正に表 明 さ れ る]ためになされ るべ きどの ような重要な修正事項にも気づいていないか ど うか,あるいは実務会計士は,もしあれば報告書に示 した修正事項以外 に ,言 明の対象事項がすべての重要な点で規準に基づいて [または準拠 して]表示 さ れ る [または適正に表 明され る]ためになされ るべきどのような重要 な修正事 項にも気づいていないか どうかの表明
g.言明が言明者 と特定 された当事者 とに よって合意 された特定の規準 (パ ラグラ フ
1 9
参照)に準拠 して作成 されている場合には,実務会計士の報告書 は以下 の 事項を含 まなければならない。(1)特定 された当事者のためのみを意図 していることを理由とす る報告書 の利用 に関する制限 (報告基準の第4参照)の表明
(2)確立 された規準がある場合 ,言明は,[確立 された規準を特定す る]に基づい ていたならば表示 されていたであろ う言明と異なることは意図されていない と の表明
h.実務会計士の事務所の手書 きまたは印刷に よる署名 i.監査報告書の 日付
② 改正 点 の検 討
改 正 前 の
SSAE
第1号 で は報 告 書 の例 が示 され て い るが ,規 定 と して ほ , e.お よびg.(1)が定 め られ て い るの み で あ る。改正 後 で は ,監 査 と同様 に報 告 書 のす べ て の要 素 を定 め る規 定 を新 設 して い る。 内容 に 関す る改正 点 と して は, C .が新 た に設 け られ,d.お よびfが 一 部 修 正 され , さ ら に g .(2)が変 更 され て い る。1 978
年 に 発 行 さ れ た , 会 計 お よ び レ ビ ュ ー 業 務 基 準 書( SSARS・
StatementsonStandardsforAccountingandReview Services)」第1号 ,
「財務諸表 の調製 お よび レビ ュー」(CompilationandReview ofFinancial Statements)紘 ,非 公開事業体 (nonpublicentity)の財務諸表 の調製 お よび 財務諸表 の レビューを定義 し,会計士 (accountant)に対 しその よ うな業 務 に適用 され る基準 と手続 に関 して指針 を提供す るものであ る0‑万 ,公 開事 業体 (publicentity)の中間財務情報 の レビューを会計士が実施 す る場 合 の 手 続 を 定 め る も の と し て,SAS第71号
,
「中 間 財 務 情 報」(Interim FinancialInformation)が1992年 に発行 され てい る。 以下 では , まず ,改 正 SSAE第1号を SSARS第 1号 お よびSAS第71号 と比較 す る ことに よって 改正点を考察 し,次 に監査 との関係 を考察す るoc.は新設 であ るが , これ に よって SSARS第 1号 お よびSAS第71号 と の整合性 が得 られ てい るO マネ ジメソ Tlの責任 を報告書に記載す る意味につ いては監査 の ところです でに述 べた とお りであ る。
d.に関 して,SSARS第 1号 では 「AICPAに よって発行 された会計 お よ び レビュー業務基 準書 に準拠 して‑・レビューを行 った」 と記 載 され (SSA‑
RS第 1号,para.35),SAS第71号 では 「AICPAに よって確立 され た基準 書 に準拠 して レビュ‑を行 った」 と記載 され る ことに な って い る (SAS帯 71号,para.28)。 改正 前 の SSAE第 1号 で は
,
「私 た ち の レビ ューは , AICPAに よって確立 され た基準 に準拠 して実施 され た」 とな って いた が , SSARS第1号 お よびSAS第71号 と実質的 な差 異 はない と考 え られ る。改正 後 では 「基準」 が 「証 明基 準」 に変わ った うえで ,例示 において ,導入パ ラ グ ラフか ら範 囲パ ラグラフに移 され ,報告書 のパ ラグ ラフの構成 につ いて もSSARS第1号 お よび SAS第71号 との整 合性 が得 られてい る。
しか し, レビューの場合 は監査 と異 な り 「したが って ,そ の状況 において 必要 と認 めた手続 を含 ん で い る」 との表 明が な い。SSARS第1号 お よび SAS第71号には実施すべ き手続 が規定 され てい るか ら,そ れ ぞ れ の基 準 に 従 った業務 では
,
「AICPAに よって発行 された (または確立 され た)基準 に‑ 1 4 1 ‑
準拠 して レビューを行 った」 と述べ ることに よって報告書の利用者に対 して 手続の範囲を示す ことができる(24)o Lか し
,SSAE
第1
号は,レビューに関 して具体的な手続を定めていないのであるか ら,監査 と同様の表現がなされ るべ きではないか との疑問が残 る。f.には,改正に よって 「すべての重要な点で」が加えられているO限定 された保証を提供す る レビューの場合は,証 明 リス クを中位 まで下げるため に十分な証拠を収集 しなければな らない (para.44)。証 明手続が実施 され る 程度を決定す る要素 として ,提供すべ き保証 の レベルに加え,言明全体に対 してテス ト (手続 と同意 と考えられ る‑筆者註)を実施すべ き情報の性質 と 重要性が挙げ られている (para.46)。 したが って,報告書において 「すべて の重要な点で」が加えられた ことに よって,重要性 に関 して手続 と報告書 と の一貫性が達成 されている。さらに
,SSARS
第 1号の報告書お よびSAS
第71
号が定 め る報告書上 で も重要性 は記載 され るか ら( SSARS
第1
号 , para
.3 5,SAS
第7 1
号,para.2 8 )
,それ らとの整合性 も得 られている。g.に関 しては ,監査報告書の要素の改正点の検討において述べた とお り である。
③報告書の形式
改正
SSAE
第1
号では,レビューに基づ く報告書に関 して,SSARS
第1
号お よび
SAS
第7 1
号 との整合性だけでな く,同 じ証 明業務の監査報告書 と の形式に関す る一貫性 も得 られている (para
.5 6,6
0)
0SSAE
第 1号は従来 か ら証 明業務に よって提供 され る保証 の レベルを 「高い」 と 「中位」に限定 し,それぞれ監査 , レビューに よって提供 され る と してい る (para.42, 43)O改正後では,保証の程度は異なるものの,報告書の形式については一貫 性を持たせ ようとしていることが理解できる。監査 とレビューの報告書の形 式に一貫性を持たせ ることは ,利用者に とってその保証水準の違いを明確に 示す ことを 目的 としてい ると考 えられ る。 また ,監査 , レビュー とも定型フォームの報告書を採用 し,先に述べた ようにIAPCの 「情報の信頼性につ いての報告」公開草案の示す長文報告書を予定 していないのは,すでに財務 諸表の監査報告書 とレビュー報告書の形式が社会一般に受入れ られているこ
とが理 由であると考えられ る。
5.
お わ り にこれまで証 明基準お よびSSAE第1号の改正案を考察 して きたが ,改正 SSAE第 1号では,①実務会計士がマネジメン トの書面に よる言明に対 して だけでな く,言明が関連す る対象事項 の信頼性に対 して直接報告が可能 とな ること,な らびに② SAS第58号に定める財務諸表監査の報告書 との整合性 を図ること,の2点に重点が置かれていることが明らかであろ う。
しか しなが ら,それ らの改正に よって ,直 ちに新 たに起 こってい るユ ー ザ ー ・ニーズに応える新 しい保証業務を促進す ることになるか どうかについ ては,なお,以下の検討すべ き事項があると考えるo
証 明業務を行 うためには,証 明基準 とSSAE第 1号に加え,すでに述べた ように業務実施のための 「その状況において必要 と認めた手続」を内容 とす る規準 と,言明または言明が関連す る対象事項が準拠すべ き 「確立 された, または表 明された規準」 とが必要 となるOすなわち,実務会計士が証明業務 において よるべ き規範は,証 明基準,SSAEお よび個 々の業務 ごとの規準の 3層構造にな らざるを得ない と考えられ る(25)。 したが って,新 しい保証業務 を促進す るためには,特定の業務のためのSSAE,あるいはSSAEの機能を 兼ね備 えた個 々の証 明業務実施のための規準設定を急 ぐ必要があろ う。
その他にも,検討すべ き点がい くつかあると考えられ るO第‑に,改正証 明基準の報告基準の第3では,改正前の 「確立 された,または表明された規 準に準拠 して」か ら,「確立 された ,または表 明された規準に基づいた」に変 更 されている。改正 SSAE第 1号では 「基づ いて」 だけ でな く,「準拠 し
‑ 143‑
て」 とい う表 現 も用 い る こ とが で き る とされ て い るが ,そ のた め の条 件 を示 して い な い0 第 二 に ,監 査 お よび レビ ューに基 づ く報 告 書 で 「適 正 に表 明 さ れ て い る」 と記 載 す るた め に は,「適 正 」の概 念 が 与 え られ る必 要 が あ る。第 三 に ,改 正SSAE第 1号 に は ,証 明業 務 に財 務 諸 表 監 査 と同様 の重 要 性 の概 念 お よび リス ク ・ア プ ローチ を適 用 す るた め の具体 的指 針 が不足 して い る。
改 正証 明基 準 お よび 改 正 SSAE第 1号 は ,幅 広 い保 証 業 務 の た め の フ レー ム ・ワー クを提 供 す る機 能 が 向上 して い る こ とは否 定 で きな い が ,個 々 の業 務 に適 用 す るた め に は ,な お ,改善 す べ き点 が あ る と考 え る。
注
(1)1998年に出版された,D.N.Ricchiute,Auditing&Assurance,5thed.,South‑Wes‑ ternCollegePubL 1998,および1999年にCD‑ROMで発行 された,IraSolomonand Mark E Peecher, Assurance Services. An lnlroduction and Applications, Instruclor'sversion,South‑WesternCollegePub1.,1999,では,ともに最近の会計士証
明業務の例 としてこれ ら3つの同 じ例が使われている(Ricchiute(1998),p5,p.7., Solomon and Peecher (1999),Assurance Services‑Main Introduction file.///Q
t/www swcollegecom/acct/solomon/student/as̲main̲intro.htmi)O最近の監査論 教育において,伝統的な財務諸表監査だけでなく,証明業務も加えようとする慣向が う かがえるO
(2)Exposure Draft, Amendment to Statement on Standards for Attestation EngagementsNo1,AttestationStandards,June 1,1998.
(3)エ リオット委員会の詳細については,内藤文雄稿 「公認会計士の監査 ・保証業務の拡 大に関する調査研究の動向」,『JICPAジ ャーナル』第10巻第10号(1998年10月)および 山田恵稿 「会計士に よる保証業務の特質一保証業務に求め られる顧客思考に関連 し て」,『日本監査研究学会課題別研究部会中間報告』(1998年11月)を参照されたい。
(4)RobertK ElliotandDonM.Pallais,ToMarket,ToMarketWeGo,JournaloJ Accountancy,Vol184No3(September1997),p.81.,http://www aicpa.org/ass‑ uTanCe/ongoing/index.h上m
(5)Robert K.Elliot and Don M Pallais,Are You Ready for New Assurance Services?,JournalofAccountancy,Vol.183No6(June1997),p48.
(6)AICPA Assurance Service‑Definit10n and Interpretive Commentarfile.///G I/assure/seas/comstud/defncom/indexh上m.
(8)http・//www aicpaorg/members/diy/auditstd/horison/initb.htm.
ェ リオ ッ ト委員会報告に対す るAICPAの反応の経緯については ,山浦久 司稿 「保証 (assurance)業務のフ レームワークと会計士の責任」,『日本監査研究学 会課題別研 究 部会中間報告』(1998年11月)を参照 されたい。
(9)Ricchiute(1998),pp 4‑5.
(10)RICChiute(1998),p.7.
(ll)V M O'Reilly,etal,Monlgomrey'sAuditing,12thed,JohnWiley& Sons,Inc, 1998,中央監査法人訳 『モ ン トゴメ l)‑の監査論 (第2版)』 中央経済社,1998年,p.
927。
(12)中央監査法人 ,前掲訳書,plO360 (13)ElliotandPallais(June1997),p48.
(14) 「言明」に関す るSSAE第4号 とSAS第75号の比較 については ,拙稿 「アメ リカ証 明基準 (AttestationStandards)の レビューお よび合意 された手続の検討」,『日本監査 研究学会課題別研究部会中間報告』(1998年11月)を参照 されたい。
(15)iFAC,ReportingontheCredibllityoH niormation,1997,General PrlnCiples,para 2.この公開草案の内容については,山浦久司稿 「IFAC(国際会計士連盟)「情報の信 用能力 (Credlbility)についての報告」‑そのフ レームワークと一般原則‑」,『日本監 査研究学会課題別研究部会中間報告』(1998年 11月)に詳 しい。
(16)http://www.aicpa.org/members/diy/audistd/horizon/initbhtm.
(17)IFAC (1997),GeneralPrinciples Governing and Engagement to Report by ProfessionalAccountantsontheCredibilityofInformation,para.39.
(18)Ricchiute(1998),p.29.
(19)中央監査法人 ,前掲訳香,p9230
(20)AICPA ProfessionalStandards,IntroductlOn.
(21) 中央監査法人 ,前掲訳書,p9260
(22)AICPA と カ ナ ダ 勅 許 会 計 士 協 会 (CICA Canadian Institute ofChartered Accountants)の共同プ ロジェク トに よる,イ ンターネ ッ トを通 じて取引をす る企業 の 内部統制等を外部に対 して保証す る (WebTrust)会計士の監査に基づ く報告書では, 監査の実施お よびマネジメン トの言明について,いずれ も 「私たちはAICPA/CICAの 規準に準拠 して‑監査 を行 った∴ 「内部統制等が有効に維持 され て い る との マネ ジメ ン トの言明はAICPA/CICAの規準に準拠 して適正に表 明されている」 と記載 され る
(http//www aicpa.org/webtrust/recipes/Accountanthtm)O
(23)監査報告書におけ る 「適正表示」 とGAAPとの関係については,山浦久司稿 「適正 意見の意味の再確認 とわが国へのイ ンプ リケーシ ョン」,『会計』第151巻第3号に詳 し
い。
(24)SSARS第1号 とSAS第71号 との手続の違いについては,前掲拙稿(1998年11月)杏 参照 されたい。
(25)拙稿 「米国証 明 (attestation)基準の最新動 向とわが国におけ る基準設定」,『JICPA ジャ‑ナル』第11巻第5号 (1999年5月)0
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