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戦後アメ リカ経済 とスタグフ レーシ ョン

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(1)

戦後 アメ リカ経済 とスタグフ レーシ ョン

花 田 功 一

は じめに

前稿 1 )で我 々は日本 におけるスタグフ レーション ( 不況下の物価騰貴)に ついて解明 した。本稿では引き続いてアメ リカにおけるスタグフレーションに ついて解明を試みることに したい。

前稿同様 1 97 3 年末か ら 7 5 年初めにかけて発生 したスタグフレーシ ョンを念 頭に置き,まず,70 年代前半のアメ リカ経済を分析す ることによってスタグフ レーションの核心的問題をえ ぐり出 し,その上で,その核心的問題について戦 後アメリカ経済全体の流れを視野において究明す るという方法で解明を試みる

ことにする。

ところで, 日本の場合 にはスタグフ レーシ ョンが1 973 年末 に始 まった とい うことについては異論のないところであ り, したがって,前稿で とった上のよ うな方法は一つの方法 として当然許 されるものであると思われるが,アメ リカ の場合には必ず しも直ちにはそうは言えない。なぜな ら,アメ リカにおいては 73 年末か らのスタグフ レーシ ョンに先立 ってすでに1 970 年 にも不況 と物価上 昇 とが共存す る事態が発生 していたのであ り, したが って,アメ リカにおいて はスタグフ レーシ ョンは1 97 0 年 に始まった と考えることも可能だか らである。

そ して,その場合には,我々の方法でスタグフレーションを解明 しようとす る

1)拙稿 「スタグフ レー シ ョンについて」『 商学討究』,第43 巻第 3 ・4合併号,1993 年参照。

〔 85 〕

(2)

86 商 学 討 究 第 45巻 第 2 号

場合で もスタグフ レーシ ョンの核心的問題 は 6 0 年代末のアメ リカ経済の分析の 中か ら別出されなければな らないであろ うか らである。

しか し,スタグフレーションの根本的原因を偶然的な要因や政府の政策的な 要因に求め るのではな く,戦後アメ リカ経済に内在 していた矛盾が顧在化 し, 従来の循環を もはや繰 り返す ことができな くな ったことにその根本的原因を求 め る立場 に立っ な らば2 ),従来型の景気拡大が不可能 にな り,従来 の循環 パ

ターンが崩れて しまった時点にスタグフ レーシ ョンの出発点を求めなければな らないが,そ うした事態はアメ リカにおいて も 7 0 年代に入 って初めて現われた のである。

6 0 年代末のアメ リカ経済 において も設備投資が停滞す る中で物価上昇が 目立 つようにな り 7 0 年代前半 と類似 した現象が現われてはいたが, しか し,それは すでに終わ りかけていた 6 0 年代前半か ら後半 にかけての戦後最大かっ最長の景 気拡大が政府の財政 ・金融政策 によ って遮二無二 引 き延 ばされた ことの結果 だ ったのであり,従来型の景気拡大が不可能にな り,従来の循環パターンが崩 壊 した ことによって出現 した事態ではなか ったのである

したが って,我 々は従来型の景気拡大の行 き詰 まりやその結果 としての従来 の循環パ ターンの崩壊を出発点 とす るという厳密な意味でのスタグフ レーシ ョ

ンはアメ リカにおいて も7 3 年末か ら始 まったと考えるのであ り, したが って, アメ リカにおけるスタグフレーションの解明に際 して も日本の場合 と同様な上 のような方法が許 され ると考えるのである。

そこで,以下,第 1 節では 7 0 年代前半のアメ リカ経済を分析 しスタグフレー シ ョンの核心的問題,根本的原因を確定 し,第 2節〜第 5節ではその根本的原 因について1 950 年代か らの戦後 アメ リカ経済の流れをたどりなが ら解明す る。

2) このような立場に立っならば,アメリカのスタグフレーションの解明に際しては何

よりもまず,戦後アメリカ経済に内在 していた矛盾,本稿の論旨に即 して言えば,

戦後アメリカ経済が極めて停滞的で主に軍事支出や輸出の拡大といった外的な要因

によって辛 うじて景気拡大を達成 してきた所以について解明しなければならない

が,本稿ではその点は前提されるにとどまっている。その意味では本稿はまだ準備

的考察にとどまっていると言わざるをえない。

(3)

戦後アメリカ経済とスタグフレーション β7 そ して,最後の第 6 節では以上を もとに してアメ リカの事実にもとづいてスタ グフレーションの解明を試みてお られる馬渡尚憲氏 と小松聡氏の見解を取 り上 げて検討す る。

第 1 節 スタグフレーションの根本的原因と しての設備投資意欲の減過

前稿で明 らかに したように, 日本 における 1 9 7 3 年末か ら 7 5 年初めにかけて のスタグフレ‑ションは 7 0 年代に入 って設備投資意欲が大 きく減退 して しまっ たにもかかわ らず, 政府が財政面, 金融面か ら過大な有効需要を創出 したため,

これが大企業を中心 とす る企業によって価格吊 り上げによる利潤増大に利用さ れ る結果 とな り, この結果生 じた物価の急上昇に対抗す るためにとられた景気 引締め策 ‑ 「 総需要抑制政策」を直接のきっかけとして発生 したのであった。

もちろん,アメ リカの 1 9 7 0 年代前半 における事態の推移 は日本 の場合 と全 く同 じではないが,上の基本的過程に関 しては共通 しているように思われる。

日本では 1 97 0 年 8 月に景気後退局面に入 って以降,政府 ・日銀の懸命 な景気 回復策にもかかわ らずなかなか景気 は回復 しなか った 。7 2 年に入 ってようや く 景気 は回復局面に入 ったが,なかなか思 うようには生産 は拡大せず,よ うや く 同年後半になって景気は本格的に拡大を始めたのである。

これに対 してアメ リカでは日本 よ り半年余 り早 く 1 9 7 0 年 1 月か ら景気後退 局面 に入 ったが,従来 とほぼ同 じ11カ月でそこか ら抜け出 し,同年11 月か ら景 気 は順調に拡大を始め, 日本ではまだ回復がはかばか しくなか った 7 2 年 には 7 0 年代では最 も順調な景気拡大局面を現出 していたのであった。

こうした景気動向の推移 における相違を反映 して, 日本 とアメ リカとでは政 府 ・金融当局の景気対策やその規模,物価動向などにおいて もかな りの相違が 見 られるが, しか し,設備投資意欲の大幅な減退‑政府 ・金融当局の強力な景 気刺激策‑物価の急上昇‑景気引締め政策への転換‑不況への突入 という基本 線においては両国で共通 しているように思われ るのである。

以下 この点について順を追 ってやや詳 しく見てい くことに しよう

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β β 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号

第 1‑ 1 表 戦後 アメ リカの景気循環

拡 大 後 退

第 2 循環 49 年 1 1月‑ ( 45 カ月) ‑53 年 7 月 5 3 年 8 月‑ ( 1 0 カ月) ‑54 年 5 月 第 3 循環 54 年 6 月‑ ( 39 カ月) ‑57 年 8 月 57 年 9 月‑ ( 8 カ月) ‑58 年 4 月 轟 4 循環 58 年 5 月‑ ( 24 カ月) ‑60 年 4 月 6 0 年 5 月‑ ( 1 0 カ月) ‑61 年 2 月 第 5 循環 61 年 3 月‑ ( 10 6 や月) ‑69 年 1 2 月 7 0 年 1 月‑ ‑ ( 11 カ月) ‑70 年 11月

、 第 6 循環 70 年 1 2 月‑ ( 3 6 カ月) ‑73 年 11 月 7 3 年 1 2 月‑ ( 1 6 カ月) ‑75 年 3 月 (出所) U. S.I ) e par t me nto fComme r c e ,SuT ・ U e yO fCur r e ntBz L S i ne s s ,Nov.1 9 9 3 ,C‑4 8 よ

り作成。

第 1‑2 表 製造業 の設備投資 ( 実質) の各循環 での ピークの前の ピークか らの増大率

( 単位 1 0 億 ドル ,%)

前 の ピー ク 各循環 での ピ ー ク 増大率 第 2 循環 20. . 51( 4 8Ⅰ) 21 .1 6 ( 5 2Ⅱ) 3 .2 第 3 循環 21 .1 6 ( 5 2Ⅱ) 26.0 2 ( 57Ⅱ) 23 .0 第 4 循環 26.0 2 ( 57Ⅱ) ‑2 3.36 ( 60Ⅱ) ‑ 1 0 .2 第 5 循環 2 6.0 2 ( 57Ⅱ) 4 2.27 ( 67Ⅰ) 6 2.5

( 注)カッコ内はそれぞれのピークをつけた年 と四半期.例えば 4 8 Ⅰは 1 9 4 8 年の第 1四半期.なお,第 5 循環での実際の ピー クは 6 9 年第Ⅲ四半期の 4 2 5 億 6 , 0 0 0 万 ドルであるが,それ以前 の 6 7 年第 Ⅰ四半期に一度 4 2 2 億 7 , 0 0 0 万 ドルで ピークに達 し, 設備投資の高揚はそれで終 っているので,第 5 循環でのピー

クとしてはその数値を取 った。

( 出所) U. S.De par t me ntofComme r c e ,Sz L T Ve yO fCL L T re n tBus i ne s s ,Fe b.1 9 8 5 ,pp. 2 8‑3 3 よ り作成.

まず設備投資についてであるが,今,戦後 アメ リカ経済における 1 9 4 9 年末 か ら始 まる第 2 循環か ら 70 年代前半の第 6 循環 までの 5 つの循環 ( 第 1‑ 1 義)について製造業の設備投資のそれぞれの循環におけるピークを前の ピーク

と比較 してみると第 1‑2 表のようになる。

これでわか るように,第 3 循環 と第 5 循環で は設備投資は大 きく拡大 した

が,第 4 循環では設備投資の ピークは前の ピークを1 0%以上 も下回 っており,

設備投資は全 く低迷 している。第 2 循環 と第 6 循環では設備投資のそれぞれの

循環での ピークは前の ピークを上回ってはいるが増大率はいずれ も 1ケタにと

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戦 後 アメ リカ経済 とスタ グフ レー シ ョン

第 1‑ 3表 耐久財産業 の設備投資 ( 実質)の各 循環 での ピー クの前 の ピー クか らの増 大率

( 単位 1 0 億 ドル ,%)

前 の ピー ク 各循環 での ピー ク 増大率 第 2 循環 8 .1 0( 47Ⅰ) 1 0.1 8 ( 52Ⅰ) 25.7 第 3 循環 1 0 .1 8 ( 52Ⅰ) 1 3.39( 56Ⅳ) 31 . 5 第 4 循環 1 3.39( 56Ⅳ) l l .69( 60Ⅱ) ‑ 1 2.7 第 5 循環 1 3 .39( 56Ⅳ) 23.1 6 ( 66Ⅳ) 7 3.0

( 注)カ ッコ内は第 1‑2 表に同 じ。

( 出所)第 1‑2 表に同 じ。

第 1‑ 4 表 非耐久財産業 の設備投資 ( 実質) の 各循 環 での ピー クの前 の ピー クか らの 増大率

( 単位 1 0億 ドル ,%)

前 の ピー ク 各循環 での ピー ク 増大率 第 2 循環 1 2.8 5 ( 48 Ⅰ) l l .30 ( 53Ⅱ) ‑ 1 2.i 第 ‑ 3 循環 1 2.8 5 ( 48 Ⅰ) 1 3.02 ( 57Ⅱ) 1 .3 第 4 循環 1 3.0 2 ( 57Ⅱ) l l .67( 60Ⅱ) ‑ 1 0. 4 第 5 循環 1 3.0 2 ( 57Ⅱ) 1 9.32 ( 67 Ⅰ) 4 8. 4 第 6 循環 19 .49( 69Ⅲ) 22. ‑ 25 ( 74Ⅳ) 1 4. 2 ( 荏)カ ッコ内は第 1‑ 2 表に同 じ。なお,第 5 循環での実際の ピークは 6 9 年第 Ⅲ四半期であるが,第 1I2 表の場合 と同 じ 理由で 6 7 年第 Ⅰ四半期の数値を取 っている。

( 出所)第 1‑2 表に同 じ。

89

どまっている。 したが って, これ らの循環において も設備投資は大 きく低迷 し ていたと言 うことができるであろう

ただ,第 2 循環についてはちょうど朝鮮戦争の時にあたるのでさらに詳 しく

見てみる必要がある。製造業全体では第 2循環での設備投資の ピークは前の

ピークをわずか 3 . 2% 上回 っているにす ぎないが,製造業を耐久財産業 と非耐

久財産業 とに分けてみるとやや様相を異に して くる。第 1‑3 表,第 1‑4 表

か らわかるように,非耐久財産業では第 2 循環での ピークは前の ピークに比べ

(6)

90 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号

て1 2.1%の減少 となっているが,耐久財産業では逆 に25 .7%の増大 とな って いるのである。 このように,主要な産業である耐久財産業でこれだけの設備投 資の拡大が行われたのであるか ら,第 2 循環では設備投資の拡大をともなった 景気拡大が行われたと見 るべきであろう

念のため,第 6 循環についてこの点を確かめてお くと,製造業全体 としては 前の ピークを7 .4%越 えていたが,耐久財産業では 3 .3%越えているにす ぎな いのである。 非耐久財産業では耐久財産業よりは増大 しているが,それで も 1 4.2

%にす ぎないのである。

以上のようなわけで,70 年代前半 においては 50 年代末か ら 60 年代初めの第 4 循環 ほどではないに して も ,50 年代の第 2 循環,第 3 循環,60 年代の第 5 循環

と比べ ると設備投資意欲は大 きく減退 して しまっていたと言 うことがで きるの である。

そ して, こうした設備投資意欲の大幅な減退の中で政府 ・連銀 は70 年代前半 にかなり強力な景気回復 ・刺激策を継続的に展開 したのである。

まず,公定歩合か ら見てい くと ( 第 1‑ 5 表) ,それは7 0 年11 月か ら 71 年 2 月までの間に 5 回にわたって連続的に引き下げ られ,それまで 6%だった公定 歩合が4.75%にまで引 き下 げ られた。その後71 年 7 月には 5%に引 き上 げ ら

第 1‑ 5 表 公定歩合の推移

( 単位 %)

年月 日 年月 日

69,4.4 6.00 7 3.1 .1 5 5.0 0 7 0. l l .1 3 5.75 2.26 5 .5 0 1 2.4 5.50 5.4 5 .7 5 7 1 ,1 .8 5. 25 5.ll 6 .00 1 .22 5.00 6.ll 6 .50 2.19 4,75 7.2 7 .0 0 7 .1 6 5.00 8.1 4 7 .50 l l .19 4.75 7 4.4. 25 8.0 0

( 出所) Boar do fGov e r nor soft heFe de r al

Re s e r v eSys t e m ,Feder alRes er veB

ul l e t i n 各号.

(7)

戦後 アメ リカ経済 とスタグフ レー シ ョン

第 1‑ 6 表 公開市場操作 ( プラスは買い越 し額,マイナスは売り越 し額)

( 単位 1 0 0 万 ドル) 97

年月 年月 年月 年月 年月 年月

7 0 .1 ‑ 1 , 3 9 5 7 1 .1 ‑ 3 57 7 2 .1 ‑ 7 8 7 7 3 .1 2, 1 9 7 7 4 .1 ‑ 3 2 8 7 5 .1 3 8 7 2 5 7 2 6 7 3 2 ‑ 1 , 7 8 9 2 6 4 4 2 7 2 2 3 0 9 3 ‑ 4 3 3 1 , 9 6 8 3 2 , 4 0 8 3 1 , 6 3 6 3 1 , 7 8 0 3 ‑ 1 3 6 4 8 1 1 4 ‑ 7 0 7 4 4 7 2 4 1 , 1 0 6 4 7 8 9 4 7 , 8 2 9 5 7 0 2 5 1 , 0 9 9 5 1 , 3 8 6 5 ‑ 1 , 47 0 5 2, 1 5 5 5 ‑ 3 , 2 0 7 6 3 9 7 6 7 0 5 6 ‑ 2 21 6 1 , 0 8 5 6 ‑ 1 , 1 1 5 6 ‑ 1 , 3 1 7 7 8 8 7 7 3 1 6 7 ‑ 5 7 0 7 2 , 41 6 7 ‑ 2 , 0 1 1 7 ‑ 2 , 9 2 6 8 1 , 4 0 7 8 1 ,1 4 8 8 2 2 8 ‑ 91 5 8 3, 3 2 2 8 1 , 2 2 2 9 1 01 9 6 3 4 9 ‑ 1 , 0 0 9 9 7 9 3 2 2 9 5 , 1 5 5 1 0 3 4 1 0 ‑ 3 2 6 ■1 0 2 0 6 1 0 2, 4 4 0 1 0 ‑ 1 , 9 7 0 1 0 4 4 5 l l 1 , 2 0 4 l l 8 6 2 l l ‑ 4 4 2 l l ‑ 1 , 3 0 7 l l 2 , 7 3 9 l

l

‑ 2 , 5 3 7

(出所)第 1‑ 5 表 に同 じ。

れ たが,同年 1 1 月 にはまた4.7 5%に引 き下 げ られ,同年 1 2 月 には 4%にまで 引 き下 げ られた。 これは年率で 3‑ 4%の物価上昇の もとではかな り低 い水準 であるが, この低金利が物価がすでに急上昇を開始 していた73 年 1 月 まで維持

されたのである。

次 に,連邦準備制度の主要 な資金供給手段である買 いオペにつ いて見てみ る と ( 第 1‑ 6 表) ,70 年 には 4 月か ら 1 2 月 まで 9 カ月間にわた って買 い越 しが 続 き,その間に63 億 6, 200 万 ドルの資金が供給 され, さ らにそれ に続 く 7 1 年 に は全体で88 億 6, 500 万 ドル とい う巨額の資金が供給 された。7 2 年 には景気の順 調 な拡大を反映 して資金供給 は減少す るが,同年末か らまた増大 し ,7 2 年 1 2 月 か ら 7 3 年 7 月 までの 8 カ月 間だ けで82 億 1 ,000 万 ドルの資金が供給 されて い

る。

そ して,以上のよ うな金融緩和を反映 してマネー ・サプライ ( 第 1‑7 表) も 70 年後半 ごろか ら伸び率が増大 に転 じ,特 に,7 2 年 9 月か ら 73 年 8 月 にかけ ての 1 年間は前年同月比で 7%台〜 9%台 とい う極 めて高い伸びを持続 した。

次 に,財政面か らの景気回復 ・刺激策であるが,政府の財 ・サー ビスの購入

につ いて見 てみ ると ( 第 1‑ 8 表),連邦政府 の国防関係 の購入 はベ トナム戦

(8)

92 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号

第 1‑7 表 マネー ・サプライ ( M l ‑現金 +要求払預金)の伸び率 ( 原数値の 前年同月比)

( 単位 %)

年月 年月 年月 年月 年月 年月

6 9 .1 7 .9 70 .1 3 . 4 71 .1 4. 5 7 2 .1 6 .7 7 3.1 9 .1 7 4 .1 4 .8 2 7 .8 2 2 . 4 2 6 .1 2 6 .8 2 8 .5 2 5 .1 3 7 .8 3 2 .9 3 6. 3 3 7 .1 3 7 .4 3 5 .9 4 7 . 6 4 3 . 2 4 6 . 4 4 7 . 0 4 7 .3 4 5 .7 5 6 .9 5 3 . 5 ̲ 5 7 .1 5 6 .1 5 8 .0 5 5 .0 6 6 .3 6 3 . 4 6 7 .7 6 6 .0 6 8 . 5 6 4 .6 7 6 .0 7 3. 4 7 8. 2 7 6 . 2 7 7 .9 7 4 .7 8 5 .3 8 4 . 3 8 7 . 5 8 6 . 8 8 7 .1 8 4 .8 9 4 .9 9 4 . 8 9 6 . 9 9 7 . 4 9 ‑6 . 0 9 5 .1 1 0 4 .5 1 0 4 . 6 1 0 6 . 8 1 0 7 .8 1 0 5 .8 1 0 5 .2 l l 3 .7 l l 4 . 6 l l 6 .7 ll 8 .3 l l 6 .1 l l 4 .9

( 出所)U. S.Depart me ntofComme r c e ,Bus i ne s sSt at i s t i c s ,1 9 6 3‑91 ,1 9 9 2,A‑7 6 よ り作成。

争で敗色が濃 くなったことを反映 して 7 0 年か ら 7 3 年にかけて減少乃至停滞を続 けてお り,非国防関係の購入 も 7 1 年第 Ⅲ四半期か ら 7 2 年第 Ⅱ四半期 までの 1 年 間を除けば停滞的であるが,州 ・地方政府の購入は 7 0 年か ら 7 1 年にかけては一 時は 1 3 % を越えるような高い伸びを続 けているし,その後一時景気回復 ととも にやや伸び率を落 とすが ,7 2 年第Ⅳ四半期にはまた 9 % を越える伸びとな り ,7 3 年中は 1 0 % 台 〜1 1 % 台の高い伸びを持続 させている。

したが って ,7 0 年か ら 7 3 年 にかけては,一時期連邦政府の非国防関係の購入 増大にも助け られたが,主に州 ・地方政府がかなり強力な景気回復 ・刺激策を 展開 したと言 うことができるであろう。

以上のようなわけで ,7 0 年代前半には金融 ・財政両面か らかな り強力な景気

回復 ・刺激策が展開されたのであるが, この うち ,7 0 ‑7 1 年 にかけてのそれは

不況か らの早期脱出と景気の順調な回復を目指 して行われたと考え られる。そ

して ,7 2 年になり景気の順調な回復が達成されるとともに金融面か らの刺激 も

財政面か らの刺激 もやや弱め らたが ,7 2 年末か らまた設備投資の拡大を目指 し

て景気刺激策が両面か ら強化 されたのである これによって設備投資は拡大を

(9)

戦後 アメ リカ経済 とス タグフ レー シ ョン

第 1‑ 8 表 連邦政府及び州 ・地方政府 の財 .サー ビスの購入

( 単位 1 0 億 ドル ,%)

連 邦 政 府 州 .地方政府 国 防 関 係 非国防関係

7 0 I 年 1 8.9(0.5) 5.4 (‑ 1 . 8) 27. 4( 10 .5)

Ⅱ 1 9.5(‑ 4.4) 5.2 L ( 1 0.6) 29.6(9 .6)

Ⅲ 1 8.7(‑ 6.0) 5.1(0.0) 31 .4(1 2. 1)

71 Ⅰ 年 1 1 9. 8.3(‑ 6 (‑ 3. 1 .5) 2) 6.3(6. 5 .7(5.6) 8) 31 31 .1(1 .0( 1 3 3 . . 1) 1)

Ⅱ 1 9.1(‑ 2.1 ) 5.5(5. 8) 33.1 (l l .8)

Ⅲ 17.6(‑ 5.9) 6 .9( 3 5.3) 34. 3(9 .2)

7 2 Ⅳ Ⅰ 年 19.0(‑ 19.6(7.1 3.1 ) ) 7 7 .7( .0( 22. 22. 2) 8) 34.1(9 33.8(9 .6) .0)

Ⅱ 20.0(4.7 ) 6 .6( 20.0) 3 5.7(7 .9)

Ⅲ 1 8.7(6.2) 6.9(0.0) 3ナ. 3(8.7 )

Ⅰ Ⅴ

7 3 Ⅰ 年 19.5(‑ 1 9.1(0.5) 0. 5) 7 7 .8(1 .0(0. .3) 0) 37 37.5( .3(9.4) 1 0.9)

Ⅱ 19.7 (‑ 1 .5) 6 .4(‑ 3.0) 39.7 (l l .2) ーⅢ 1 8.7(0.0) 6.6(‑ 4.3) 41 . 4 (l l .0)

7 4 Ⅰ 年 1 19. 9. 6(2.6) 8(1 .5) 8 7 .8( .4(5.7) 1 2.8) 41 42. .6 2(1 (l 2.5) l .5)

Ⅱ 20. 8(5. 6) 7 .7( 20. 3) 45.5( 1 4.6)

Ⅲ 20. 5(9. 6) 8.5( 28.8) 47.6(1 5.0)

( 注)購入額 は名 目の原数値。 カ ッコ内は伸 び率で前年同期比。

( 出所) U.S.De par t me ntofCommer ce ,TheNat i onalI ncome andPr oduc tAc count so ft heUni L edSt at es,1 9 2 9‑8 2 ,

1 9 8 6 , p . 41 5 , p . 41 9 よ り作成。

9 3

始 めたが,本格的 には拡大せず,逆 に物価 の方 が急激 に上昇 して い ったの である 。

卸売物価の上昇率 ( 第 1‑9 表)は 7 0 年初めには 5% 近か ったが,景気後退

の影響で しだいに低下 していき ,7 0 年 1 2 月 には 2 . 2 % にまで低下 した。その後

(10)

94 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号

第 1‑9 表 卸売物価 ( Al lc ommodi t i e s ,1 9 6 7 年 ‑1 0 0 ) の対前年 同月上 昇率

( 単位 %)

年 月 年 月 年 月 年 月 年 月

70 .1 4. ̲ 8 71 .1 2.3 7 2.1 ̲ 4 .0 73 . 1 7 .1 74 .1 17 .8 2 4 ‑ .7 2 2.8 2 4.0 2 8.2 2 1 7 .8 3 4.3 3 2.9 3 3.8 3 1 0 .6 . 3 1 6 .6 4 4.3 4 3.1 4 3 .6 4 l l .1 4 17 .0 5 3.5 5 3.5 5 3.8 5 1 2.7 5 1 6.4 6 3.4 6 3.6 6 3.8 6 1 4.5 6 1 4.5 7 3.6 7 3.4 7 4.4 7 1 2.2 7 20 .4 8 3.3 8 4.3 8 4.2 8 1 8.5 8 17 .8 9 3.6 9 3.2 9 4.9 9 1 6 二2 9 1 9 .7‑

1 0 3.3 1 0 3.2 1 0 4.8 1 0 1 5.6 1 0 22.7 ll 2.6 ll 3.3 l l 5.3 ll 1 5 .3 ll 23 .5 1 2 2.2 1 2 4.1 1 2 6.3 1 2 1 5 .4 1 2 20.9 ( 出所) U. S.De par t me ntofComme r c e ,Bus i ne s sCondi t i onsmge s t ,Mar .1 9 7 7 ,p. 9 9 よ

り作成。

第 1‑1 0 表 短期 プ ライム レー トの推移

( 単位 %)

年月 日 年月 日

7 2.1 .24 5.0 0 7.1 8 8.50 1 .31 4.7 5 7 .30 8.75 4.5 5.0 0 8.6 9 .00 6.26 5.25 8.1 3 9.25 8 .29 5.50 8.22 9 .50 10 .4 5.7 5 8. 28 9 .7 5 1 2.27 6.00 9.1 8 1 0 .00 7 3.2.27 6.25 1 0.24 9 .75 3 .26 6 .50 74 , 1 .29 9 .50 4.1 8 6.7 5 2.ll 9 .25 5 .7 7.00 2.19 9 .00 5.25 7 .25 2. 25 8.75 6 .25 7.7 5 3.22 9 .00 7 .3 8.00 3. 29 9 .25

( 出所)第 1‑ 5 表 に同 じ。

(11)

戦後 ア メ リカ経 済 とス タ グ フ レー シ ョン 95 は,景気回復にともない しだいに上昇率 は高まっていったが,それで も ,7 2 年 前半 まではまだ概ね 3% 台で比較的落ち着 いていた。 しか し,同年後半 になる

と 4% を越 え るよ うにな り, 1 1 月 に 5% を越 えてか らは 7 3 年 8 月の 1 8 . 5 % ま で ほぼ一本調子で急激に上昇 していったのである。

こうした物価の急上昇に対抗す るために連邦準備制度 は 7 3 年 1 月か ら同年 8 月までの問に 7回にわた って連続的に公定歩合を 引 き上 げた。公定歩合 はそれ

までの 4% か ら 7 3 年 1 月には 5% に引き上 げ られ,連続 7 回の引き上げで同年

8 月 には 7 . 5 % という史上最高水準に達 した ( 第 1‑5 表参照) 0

そ して, この物価 と公定歩合の急上昇を受 けて市場金利 も軒並急騰 していっ た。短期プライム レ‑ ト( 第 1‑l o 衷)は 7 2 年 4 月以降徐 々に上昇 していたが,

7 3 年初めにはまだ 6%の水準にとどまっていた。 ところが,同年 2 月末か ら急 上昇を開始 し, 5 月 7 日には 7 % とな り, 7 月 3 0 日には 8 . 7 5 % と史上最高水準 となった。そ して,その後 も上昇を続 け 9 月 1 8 日にはついに 1 0 % の大台に達 し た。その後, 1 0 月 2 4 日には 9 . 7 5 % に下が ったが, 7 4 年 1 月末 まで はこの 1 0 %

近い高い水準を持続 した。

また,フェデラル ・ファン ド・レー ト ( 第 1‑1 1 表) も 7 2 年 3 月か ら上昇を 第 1‑1 1 表 フ ェデラル ・フ ァン ド・レー ト

の推移

( 単位 %)

年 月 年 月 年 月

7 2 .1 3. 50 7 3 .1 5 . 9 4 7 4 .1 9. 65 2 3. 29 2 6 . 5 8 2 8.9 7 3 3. 83 3 7 . 09 3 9 . 35 4 4.1 7 4 7 .1 2 4 1 0 . 51 5 4 . 27 5 7 .84 5 l l . 31 6 4. 46 6 8 . 49 6 l l . 9 3 7 4. 5 5 7 1 0 . 40 7 1 2. 9 2 8 4 . 80 8 1 0. 50 8 1 2. 01 9 4 . 87 9 1 0. 7 8 9 l l . 3 4 1 0 5 . 04 1 0 1 0. 01 1 0 1 0 . 06 ll 5. 0 6 ll 1 0 . 0 3 ll 9. 45

( 出所)第 1‑ 5 表に同 じ。

(12)

96

t r , r

商 学 討 究 第 4 5 巻 第 2 号

続けていたが ,7 3 年に入 って急上昇を始め,同年 2 月には 6% 台, 3 月には 7

%台, 6 月には 8% 台に上昇 し, 7 月か ら 1 1 月までは 1 0 % 台の史上最高水準を 持続 した。その後,やや下が るが ,7 4 年 4 月にはまた 1 0 % 以上に上昇 し, 5 月 か らはさらに一段高い水準 に達 している。

さらに , T. B. ( 財務省証券) 3 カ月物の新規発行分の金利を見てみると ( 第 1

‑1 2 表) , これ も 7 2 年 3 月か ら徐 々に上昇 していたが,同年 1 2 月か ら急上昇を 始め,それまで 5% 台であったものが ,7 3 年 3 月には 6% 台, 6 月には 7% 台 とな り, 7 月には 8% 台の史上最高水準 とな り,それが 9 月まで持続 した。そ して,その後 も上が り下が りを繰 り返 しなが ら 7 4 年いっぱいは 7% 台 〜 8% 台 の高水準を持続 した。

こうして,物価の急上昇に対抗 してまず公定歩合が急速に引き上げ られ, こ れを受 けて市場金利 も急騰 し 7 3 年 7 月には軒並史上最高水準を記録 したが, 8 月か らは公開市場操作の面か らも引締 めが実行 され,引締 めが一層強化 され た。 8 月には 9 億 1 , 5 0 0 万 ドルの売 り越 しとなりそれだけの資金が市場か ら吸 収 された。 9月には買い越 しとな ったがわずか 7 0 0 万 ドルにとどまった。その 後は景気や金利‑の配慮か ら一律な動 きは示 していないが ,7 5 年初めまでは物

第 1‑1 2 表 T.B. ( 財務省証券, 3 カ月物)の 新規発行分の金利の推移

( 単位 %)

年 月 年 月 年 月

7 2.1 3.403 73.1 5 .307 7 4.1 7 .7 55

2 3.1 80 2 5.558 2 7 .0 60

3 3.7 23 3 6.0 54 3 7 .9 86

4 3.7 23 4 6.2 89 4 8 .2 29

5 3.648 5 6.348 5 8.430

6 3.87 4 6 7.1 88 6 8.1 45

7 4.059 7 8.01 5 7 7 .7 52

8 4.01 4 8 8.672 8 8.7 44

9 4.651 9 8.478■ 9 8 .363

1 0 4.71 9 1 0 7 ,1 55 1 0 7 .244

l l 4.77 4 l l 7.866 ll 7 .585

1 2 5.061 1 2 7.364 1 2 7 .1 79

( 出所)第 1‑5 表に同 じ。

(13)

戦後 アメ リカ経済 とスタ グフ レー シ ョン 第 1‑1 3 表 全商業銀行の商工業向け貸付残

高 ( 原数値)の対前年同月伸 び率

( 単 位 %)

年 月 年 月 年 月

7 2 .1 5 . 6 7 3 .1 1 4 . 6 7 4 .1 1 8 . 3 2 5 . 3 2 1 7 . 7 2 1 5 . 6 3 6 . 5 3 1 9 . 7 3 1 6 . 4 4 7 . 6 4 2 0 . 2 4 1 7 . 9 5 7 . 5 5 21 . 2 5 1 7 . 7 6 7 . 7 6 2 2 . 1 6 1 7 ∴ 8 7 7 . 8 7 2 4 . 1 7 1 7 . 5 8 7 , 0 8 2 4 . 5 8 1 7 . 7 9 7 . 2 9 2 4 .1 9 1 7 . 4 1 0 8 ̲ . 8 1 0 2 1 . 9 1 0 1 8 . 3 ll 1 0 . 4 ll 21 . 2 l l 1 7 . 7 1 2 1 2 . 0 1 2 2 0 . 5 1 2 1 5 . 5

97

( 出所) Boar dofGov e mor soft heFe de r alRe s e r v e Sys t em ,Feder alRe se r v eBul l e t i n 各号より作成。

価動向をに らんだかな り慎重な運営が堅持 された ( 第 1‑6 表参照) 。

以上のような引締め政策を反映 して ,7 2 年 1 1 月に前年同月比で 1 0% を越えて 以来急激な上昇を続 けていた商業銀行の商工業向け貸付残高の伸び率 ( 第 1‑

1 3 表) も 7 3 年 8 月の 2 4.5 % を ピークとして徐 々に低下 していった。

そ して, これ らの事を反映 して, 7 2 年 9月か ら 7 3 年 8月まで前年同月比で 7

%台 〜 9% 台の非常に高い水準で推移 していたマネー ・サプライの伸び率 も, 7 3 年 9 月か ら 7 4 年 5 月 までは概ね 5% 台,その後 は概ね 4% 台 とい うよ うに 徐 々に伸び率を落 としていった ( 第 1‑7 表参照) 0

以上,金融面か らの引締めとその市場への影響について見てきたが,次に財

政面に目を転 じてみると,先に見たように州 ・地方政府の財 ・サー ビスの購入

はすでに物価が急上昇を開始 していたにもかかわ らず 7 2 年末には再び 9% を越

える伸びとなり ,7 3 年には 1 0% 台 〜1 1 % 台の高い伸びを続 けたが,連邦政府の

非国防関係の財 ・サービスの購入 は 7 1 年後半か ら 7 2 年前半にかけて非常に高い

伸びを示 したにもかかわ らず,その後は 7 3 年第Ⅲ四半期まで停滞乃至減少を続

けた ( 第 1‑8 表参照) 。 この連邦政府支出の停滞乃至減少 は当然物価の急激

(14)

9 8 45 巻 第 2 号

な上昇に対抗することを意図 した ものと考えるべ きであろう

したが って,財 政面か らは州 ・地方政府は景気刺激策を持続 させたが,連邦政府 は反イ ンフレ 的行動をとったと言 うことができるであろう

以上のような物価の急上昇に対抗す るための財政 ・金融両面か らの引締め政 策の発動の結果,生産活動 は 7 3 年 8 月以降 しだいに低下 していった。鉱工業生 産 ( 第 1‑1 4 蓑) は 7 3 年 8 月に 0 . 0 % と全 く横ばいとな った後, 9 月 には 0 . 5

%と一時やや上向いたが, 1 0 月 と 1 1 月はともに 0 . 2 % と微増 にとどまった。そ して ,1 2 月にはついにマイナスとな り不況に突入 していったのである。

以上,アメ リカにおけるスタグフレーション発生の基本的過程について順を 追 って見てきたが,以上の説明か ら明 らかなように, 日本の場合 とアメ リカの 場合 とでは 7 0 年代初頭の景気動向や景気対策,物価動向などにかなりの相違が 見 られ るものの,設備投資意欲が大 きく減退 しているもとでのかなり強力な景 気刺激策が生産や設備投資の拡大ではな く物価の急上昇を もた らし,それに対 抗す るためにとられた景気引締め政策を直接の結果 として不況に突入 してい く

第 1‑1 4 表 鉱工業生産 ( Tot aH ndex)の 伸 び率

( 単位 %)

年 月 年 月 年 月

72.1 2.0 73 .1 0 . 4 74,1 ‑ 1 .1.

2 0.6 2 1 . 2 2 ‑ 0. 2 3 1 .0 3 0.5 3 0.3 4 1 .0 4 0.0 4 ‑ 0 . 1 5 0 . 3 5 0 . 9 5 1 .1 6 0.5 6 0. 2 6 0.5 7 0.5 7 0. 4 7 ‑ 0 . 1 8 1 .2 8 0.0 8 ‑ 0.i 9 0.9 9 0 . 5 9 0.1 10 1 .3̲ 1 0 0. 2 1 0 ‑ 1 .7 ll 0 .8 ll 0. 2 ll ‑ 3.6 1 2 1 .1 1 2 ‑ 0.2 1 2 ‑ 4.5 ( 荏) 1 9 6 7 年 ‑1 0 0 の季節調整値 の前月比。

( 出所)BoardofGov e r norsort heFe de ralRes e r ve

Sys t em,I ndust r i alPr oduc t i on: 1 9 7 6 Re vi s i on ,

1 9 77 ,S‑27 よ り作成。

(15)

戟後アメリカ経済とスタグフレーション 99 ことにな った とい う基本的な過程 に関 して は両国で全 く共通 しているので あ る。 したが って,アメ リカにおけるスタグフ レーションについて もその核心的 問題,解明すべ き最 も重要な問題 はやはりなぜ 7 0 年代 に入 って設備投資意欲が 大 きく減退 して しまったか とい うことなのである。そ こで以下 この問題の解明 に進む ことに しよう 。

第 2 節 1 950 年代 における設備投資の拡大

前節で明 らか に したよ うに, 1 9 7 0 年代 に入 ってか らの設備投資意欲 の大幅 な減退 こそがスタグフ レー シ ョンの核心的問題 なのであるが, スタグフ レー ションが世界的な広が りを持 った ものであ り,かつ,戦後の比較的順調な成長 か ら長い停滞への移行を媒介す る契機 となった ものであることか ら見て,設備 投資意欲の大幅な減退の原因を偶然的な要因や政府の政策的な要因に求めるこ

とは誤 りであると言わなければな らないであろ う。それは当然,戦後 アメ リカ 経済の四半世紀 にわたる展開の必然的な帰結であると考えなければな らないの であ り, したが って,その原因は戦後 アメ リカ経済において設備投資意欲を支 えてきた諸要因が 7 0 年代 に入 って消滅 して しまった ことに求め られなければな

らないのである。

したが って,我 々は戟後アメ リカ経済 において設備投資意欲を支えて きた諸 要因は何であったのかをまず明 らかにす る必要があるのである。

ところで,戦後 日本においては耐久消費財生産や輸 出や政府支出が高度成長 の間はぼ一貫 して高い伸 びを続 けていた。 したが って, これ らの高い伸びこそ が高度成長の問の旺盛な設備投資意欲を支えた諸要因であると容易に指摘す る ことがで きた3

) 。

ところが,戦後 アメ リカにおいてはそれ らの要因の持続的 な高い伸 びは見 られないのである。 したが って,戦後 アメ リカにおける設備投 資の拡大 に関 しては,設備投資が拡大 したそれぞれの期間についていかなる要

3)前掲拙稿第 2 節参照。

(16)

100 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 2号

因が設備投資の拡大 に寄与 したかを具体的に検討 してみる必要があるのであ る。

とは言 って もしか し,戦後資本主義経済において設備投資の拡大を可能に し た要因 としては,基本的には上の 3 つの要因以外にはありえないことは明 らか である。そこで以下,戦後アメ リカにおける設備投資の拡大 にそれ ら 3 つの要 因がどのように寄与 したかについて具体的に検討 してみることに したいと思 う が,政府支出の うち国防費以外の支出は不況の緩和や景気の回復には大 きな役 割を果すに して も,それ 自体では設備投資を拡大させ る力はな く設備投資の拡 大に対 しては副次的な役割 しか果 しえないと思われるので, ここではそれは除 外 し,それ以外の要因,つまり,耐久消費財生産 と輸出と国防費支出の三つの 要因について検討 してい くことに したい。

本節ではまず,戦後経済が本格的に開始 された50 年代前半の第 2 循環 ( 49 年 1 1 月‑54 年 5 月) と,続 く 50 年代後半の第 3 循環 ( 54 年 6 月‑5 8 年 4 月)にお ける設備投資の拡大について考察 してみることにす る

まず第 2 循環についてであるが,第 2 循環の拡大期間は 49 年1 1 月か ら 53 年 7 月までの45 カ月で,後退期間は5 3 年 8 月か ら 54 年 5 月までの1 0 カ月であり,前 者の拡大期間の うち設備投資が前年同期比で1 0% 近 く以上のかな り高い伸びを

第 2‑ 1 表 設備投資 ( 実質)の対前年 同期伸 び率

( 単位 %)

製造業全体 耐久財産業 製造業全体 耐久財産業

50 I 年 ‑ 1 8.4 ‑ 1 2.1 52 I 年 21 .6 3 4.8

Ⅱ ‑ 4.9 1 3. 2 Ⅱ 1 0.9 1 5. 2

Ⅲ 1 2. 4 28.0 Ⅲ ‑ 1 .4 ‑ 2.1

Ⅰ Ⅴ

51 Ⅰ 年 32.2 34.0 44.6 51 . .4 53 Ⅰ Ⅰ Ⅴ 年 ‑ ‑ 0.5 0.5 ‑ ‑ 4. 1 .3 5

Ⅱ 40.1 51 .1 Ⅱ ‑ 1.1 ‑ 3.5

Ⅲ 33. 3 55. 4 Ⅲ 2.7 ‑ 1 . 2

(出所)第 1‑ 2 表に同 じ。

(17)

戦後 ア メ リカ経 済 とス タ グフ レー シ ョン 第 2‑2 表 耐久消費財生産の動向

指数 伸び率( %) 指数 伸び率( %)

47 Ⅱ Ⅰ 年 3 40 8.9 .0 2.8 51 Ⅱ Ⅰ 年 53.9 48.8 ‑ ‑ 3.1 9. 5

Ⅲ 39 .5 ‑ 1 .3 Ⅲ 40. 2 ‑1 7.6

Ⅰ Ⅴ

48 Ⅰ 年 41 41 .8 .9 5.8 0.2 52 Ⅳ I 年 41 40.7 .3 1 1 .2 .5

■ Ⅱ 41 .6 ‑ 0.7 Ⅱ ̲4 2. 5 2.9

Ⅲ 4 2.6 2.4 Ⅲ 4 3.1 1 .4

Ⅰ Ⅴ

49 Ⅰ 年 41 3 8.1 .3 ‑ ‑ 3.1 7 .7 53 Ⅳ Ⅰ 年 5 51 4.7 .0 1 8.3 7 .3

Ⅱ 3 8.1 0.0 Ⅱ 5 4.3 ‑ 0.7

Ⅲ 40.8 7.1 Ⅲ 51 .6 ‑ 5.0

50 Ⅰ 年 40.9 45.0 1 0.2 0.0 54 1 Ⅰ V 年 47 46. .9 2 ‑ ‑ 3. 7 .2 5

Ⅱ 5 2.7 1 7 .1 Ⅱ 47. 8 3. 5

Ⅲ 59.1 1 2.1 Ⅲ 4 8.1 0.6

10 1

( 荏)指数は 1 9 6 7 年 ‑1 0 0 の季節調整値.伸び率は前期比。

(出所) BoardorGov e rn?rsoft heFe de ralRe se rv eSys t em ・

I ndz L S t r i alPr oduc t 乙 On:1 9 7 6 Re u i s i on,1 9 7 7 ,S ‑3 4 より 作成。

持続 した 4) のは製造業全体では 5 0 年第 Ⅲ四半期か ら 5 2 年第 Ⅱ四半期 までの 8 期で,製造業の うちの耐久財産業では 5 0 年第 Ⅱ四半期か ら 5 2 年第 Ⅱ四半期まで の 9 期である ( 第 2‑1 表)。 この設備投資の拡大 は何 によって支え られて進 行 したのであろうか。

まず,耐久消費財生産 について見てみると ( 第 2‑2 表) ,それは 48 年第 Ⅲ 四半期につけた前の循環での ピークを この循環の初期の 5 0 年第 Ⅰ四半期にはす

4) 設備投資の拡大 を前年同期比で見 た場合, どれだけの伸 びが続 いた場合を設備投資 の本格的な拡大の‑指標 とすべ きかにつ いてはいろいろな考え方が あると思われ る が,本稿で は一応 10% 近 く以上の伸 びが続 いた場合 をその指標 と して議論 を進め る

ことにす る。

(18)

10 2 45 巻 第 2 号

第 2‑ 3 表 連邦政府の国防葺関係の財 ・ サー ビスの購入

( 単位 1 0 億 ドル ,%)

( 荏)第 1‑ 8 表の注 に同 じ。

(出所) U, S.De par t me nto fComme r c e ,TheNat i on alI nc omeandPr oduc tAc c oL L T uSO ft heUT dt e dSt at e s , 1 9 2 918 2 ,1 9 8 6 ,pp. 4 1 3‑41 5 よ り作成。

でに越え,その四半期か らその年の第 Ⅲ四半期 までは前期比で1 0%を越える非 常 に高い伸 びを持続 した。 しか し,続 く第Ⅳ四半期か らはかな り大 きなマイナ スが 4 期 にわた って続 き,そのため51 年第Ⅳ四半期か らまた 6 期にわたって増 大を続けたが, この循環 中には50 年第 Ⅲ四半期の ピークを回復で きないで終 っ ている。 したが って,耐久消費財生産 は設備投資の拡大が始 まった初期 にはそ の拡大に重要な役割を果 したが,それ以降は何の役割 も果せなか った と言 って よいと思われ る。

そ こで,設備投資の拡大を支えた主要 な要因を他 に求 めなければな らない

が, この循環で何 といって も目立っのは,朝鮮戦争 ( 50 年 6 月‑53 年 7 月)の

勃発に伴 う連邦政府の国防費支出の増大である ( 第 2‑3 表) 。 国防費支出は

50 年に入 ってか ら第 Ⅲ四半期 までマイナスが続いていたが,第Ⅳ四半期か らプ

ラスに転 じるとともに急増を開始 し,特 に51 年の第 Ⅱ四半期か ら第Ⅳ四半期ま

(19)

戦後 ア メ リカ経済 とスタグフ レー シ ョン

第 2‑ 4 表 防衛 ・宇宙設備財 ( De f ens eands pace equi pment ) 生産の動向

指数 伸 び率 (%) 指数 伸 び率 ( %)

49 I 年 1 3.0 ‑ 0. 8 52 Ⅰ 年 47.4 5. 8

Ⅱ 1 2.9 ‑ 0. 8 Ⅱ 49.7 4.9

Ⅲ 1 2.7 ‑ 1 .6 Ⅲ 52. 4 5. 4

50 Ⅳ Ⅰ 年 ‑ .1 l 2.1 l .9 ‑ ‑ 4.7. 1 .7 5 3 Ⅳ Ⅰ 年 ‑ 59.9 56. 3 6.4 7. 4

Ⅱ 1 2.7 6.7 Ⅱ 6 2.7 4.7

Ⅲ 1 5. 3 20.5 Ⅲ 63.6 1 . 4

Ⅰ Ⅴ

51 Ⅰ 年 26.9 1 9.5 37 27.5 .9 54 Ⅰ I Ⅴ 年 60. 57.5 2 ‑ ‑ 5.3 4 .5

Ⅱ 3 4.9 29.7 Ⅱ 55 . . 0 ‑ 4 .3

Ⅲ 39.8 1 4.0 Ⅲ 53. 0 ‑ 3.6

Ⅳ 44.8 1 2.6 Ⅳ 51 . 3 ‑ 3.2 ( 注)第 2‑2 表 の注 に同 じ。

(出所) Boar dofGov e rnorsoft heFede ralRe s e rv eSys t em ,I n dus t r i alProduc t i on: 1 9 7 6Re u i s i on ,1 9 7 7 ,S‑4 5 よ り作成.

10 3

では1 00% 以上 という極めて高い伸びを続 けた。そ して,設備投資が1 0%近 く 以上の伸びを記録 した最後の四半期である 5 2 年第 Ⅱ四半期にもまだ50% 近 くの 伸びを維持 していた し,その後 も 1 年間にわたって1 0% 以上の伸びを続 けたの である。

そ して, この国防費支 出の急増を反映 して,防衛 ・宇宙設備財 ( Def ens e ands pac eequi pment ) の生産 も急拡大 した ( 第 2‑ 4 表) 。防衛 ・宇宙設 備財の生産 は 4 9 年第 Ⅰ四半期か ら 50 年第 Ⅰ四半期にかけてマイナスであ った が,国防費支出の増大よりやや早 く 5 0 年第 Ⅱ四半期か ら拡大に転 じ,第 Ⅲ四半 期か らは急拡大 した。 50 年第 Ⅲ四半期か らの 1 年間は 20%以上の伸びを持続 し, 51 年後半 も 1 0% 以上の伸びを続 けた。その後伸び率 は低下 したが,5 3 年第 Ⅱ四 半期 までは比較的高い伸びを持続 した。

このように見て くると, この朝鮮戦争遂行のための連邦政府の軍事支出の増

(20)

10 4 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号 第 2‑5 表 商品輸出の動向

( 単位 1 0 億 ドル , %)

( 注)輸 出額 は名 目の季節調整値の年率換算値。 カ ッコ内 は伸 び率で前年 同期比。

( 出所) U. S.De par t me ntofComme r c e ,TheNat i on alI nc omeandPr oduc tAcc ount so ft heUni t e d St at e s ,1 9 2 9 ‑8 2 ,1 9 8 6 ,p p . 2 0 5 ‑2 0 6 よ り作成O

大 とそれに伴 う軍需生産の拡大が この第 2 循環での設備投資の拡大を支えた主 要な要因であると考えて間違いないであろう

最後に輸 出について見てみ ると ( 第 2‑ 5表) ,輸出 も設備投資が拡大 して いた期間とほぼ同 じ期間の間高い伸びを続 けている。輸出は 5 0 年第 Ⅲ四半期ま ではマイナスであったが,続 く第Ⅳ四半期か ら 5 2 年第 Ⅰ四半期までの 1 年半 は 高い伸びを続 けた。特に 51 年 1 年間は 30 % 台 〜4 0% 台の非常に高い伸びを持続 した。 したが って,輸出の拡大 も 5 0 年末か ら 5 2 年初めにかけては設備投資の拡 大に重要な役割を果 したものと思われる。

以上のよ うなわけで, この第 2循環における設備投資の拡大を もた らした最 も大 きな要因は朝鮮戦争遂行のための軍事費の増大 とそれに伴 う軍需生産の拡 大であり,耐久消費財生産の拡大 も初期には,そ して 5 0 年末か ら 5 2 年初めにか

けては輸出の拡大 も重要な役割を果 した と考えてよいであろう

(21)

戦後 アメ リカ経済 とスタグフ レー シ ョン 第 2‑ 6 表 設備投資 ( 実質)の

対前年同期伸び率

( 単 位 %) 製造業全体 耐久財産業

54 Ⅰ 年 ‑ 0.1 ‑ 0 .8

Ⅱ ‑ 4.0 ‑ 2.8

Ⅲ ‑ 3.2 ‑ 3.4

Ⅰ Ⅴ

55 Ⅰ 年 ‑ 1 ‑ 5 0.0 .7 ‑ ‑ 7 8.7 .7

Ⅱ ‑ 1 .7 ‑ 2.0

Ⅲ 6 .6 9 .4

Ⅰ Ⅴ

56 Ⅰ 年 24.7 1 3.5 30.1 1 9 .1

Ⅱ 25 .2 3 4.7

Ⅲ 23 .2 31 .5

Ⅰ Ⅴ

57 Ⅰ 年 17 10 .7 .0 26 9 .1 .8

Ⅱ 5 .3 5 .3

Ⅲ ‑ 0.9 ‑ 3 .7

Ⅰ Ⅴ

58 Ⅰ 年 ‑ 15 ‑ 7 .8 .5 ‑ ‑ 1 1 3.1 5.4

Ⅱ ‑ 27 .8 ‑ 31 .2

Ⅲ ‑ 32.2 ‑ 34 .7

第 2‑ 7 表 耐久消費財生 産の動向

指数 伸 び率 (%)

55 Ⅰ 年 ̲ 57 .1 1 2.6

Ⅱ 5 9.9 4.9

Ⅲ 60.5 1 .0

Ⅰ Ⅴ

56 Ⅰ 年 6 5 0.5 8.9 ‑ 0.0 2.6

Ⅱ 58.1 ‑ 1 .4

Ⅲ 56.5 ‑ 2.8

57 Ⅳ Ⅰ 年 56.9 58.9 0.7 3.5

Ⅱ 57 .5 ‑ 2.4 描 58.4 1 .6

58 Ⅳ Ⅰ 年 5 50.1 5.8 ‑ ‑ 1 4.5 0.2

Ⅱ 48.1 ‑ 4.0

Ⅲ 49.7 3.3

( 荏)第 2‑ 2 表の注 に同 じ。

( 出所)第 2‑ 2 表 に同 じ。

105

( 出所)第 1‑2 表 に同 じ。

以上,第 2循環における設備投資の拡大について考察 したが,続いて第 3循 環 ( 54 年 6 月 ‑58 年 4 月)における設備投資の拡大について考察 してみること

に しよう

この第 3 循環の拡大期問は 54 年 6 月か ら 57 年 8 月までの 39 カ月で,後退期問

は 57 年 9 月か ら 58 年 4 月 までの 8 カ月であり,前者の拡大期間の うち設備投資

が前年同期比で 1 0% 近 く以上の伸びを持続 したのは製造業全体では 55 年第Ⅳ四

半期か ら 57 年第 Ⅰ四半期までの 6 期であ り,製造業の うちの耐久財産業では 55

(22)

1 0 6 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号 第 2‑ 8表 連邦政府の国防妻関係の財 .

サー ビスの購入

( 単位 1 0億 ドル ,%)

( 注)第 1‑8 表 の注 に同 じ。

(出所)第 2‑3 表 に同 じ。

第 2‑ 9 表 防衛 ・宇宙設備財 (Def enseandspace equi pment ) 生産の動向

指数 伸 び率 ( %) 指数 伸 び率 ( %) 5 5 Ⅰ 年 5 0 . 3 ‑ 1 . 9 5 7 Ⅰ 年 5 2 .1 2 . 8

Ⅱ 4 9 . 9 ‑ 0 . 8 Ⅱ 51 . 8 ‑ 0 . 6

Ⅲ 4 9 . 3 ‑ 1 . 2 Ⅲ 5 0 . 9 ‑ 1 . 7

5 6 Ⅳ Ⅰ 年 4 4 9 7 , . 0 9 ‑ ‑ 0 2 . . 2 6 5 8 Ⅳ Ⅰ 年 4 4 7 8 . .1 8 ‑ 6 0 .1 . 6

Ⅱ 4 7 . 4 ‑ 1 . 0 Ⅱ 5 0 . 5 5 . 0

Ⅲ 4 8 . 0 1 . 3 Ⅲ 5 2 .1 3 . 2

Ⅳ 5 0 . 7 5 . 6 Ⅳ 5 2 . 8 1 . 3

( 症)第 2‑2 表の注 に同 じ。

(出所)第 2‑4 表 に同 じ。

年第 Ⅲ四半期か ら 5 7 年第 Ⅰ四半期 までの 7 期である ( 第 2‑6 表) 。 この設備 投資の拡大は何によって支え られて可能 となったのであろうか。

まず,耐久消費財生産について言えば ( 第 2‑ 2表,第 2‑ 7表) , この循

環ではそれは 5 4 年第Ⅳ四半期か ら 5 5 年第 Ⅱ四半期にかけて拡大 しているにす ぎ

ず,耐久財産業で設備投資の拡大が始まった 55 年第 Ⅲ四半期には伸び率 は 1 .0

(23)

戦後 ア メ リカ経 済 とスタ グフ レー シ ョン 107

%に低下 し,その後 も概 して停滞乃至減少に終 っている。 したがって ,5 5 年第

Ⅱ四半期か ら始 まる設備投資の拡大には耐久消費財生産 は何 ら寄与 しなか った と言 ってよいであろう

次に,連邦政府の国防費支出,防衛 ・宇宙設備財生産 について見てみると, 国防費支出 ( 第 2‑8 表)は設備投資拡大の末期の 5 6 年第Ⅳ四半期か ら 5 7 年第

Ⅰ四半期にかけて比較的高い伸びを示すまでは総 じて減少傾向を辿 っていた。

そ して, これを反映 して防衛 ・宇宙設備財生産 ( 第 2‑ 9表) も 5 6 年第Ⅲ四半 期か ら 5 7 年第 Ⅰ四半期 にかけてプラスとなったが,それ以前 はマイナスが続い ていた し,プラスとなったといって も比較的高い伸びを示 したのは 5 6 年第Ⅳ四 半期の 5 . 6 % だけなのである。 このような国防費支出,防衛設備財生産の低迷 か らすれば, これ らもこの第 3 循環では設備投資の拡大に何 ら寄与 しなかった

と言 ってよいであろう 。

そこで,最後 に輸出について見てみることに しよう ( 第 2‑5 表,第 2‑1 0 義) 。輸出は 5 4 年の第 Ⅱ四半期か ら増大傾向を示 していたが,設備投資が拡大 を始めた 5 5 年第 Ⅲ四半期か らは 2 年間にわたってニケタ乃至それに近い伸びを 続け,特 に 5 6 年第 Ⅱ四半期か ら 5 7 年第 Ⅰ四半期にかけての 1 年間は 2 0 % を越え

る高い伸びを持続 した。

第 2‑1 0 表 商品輸 出の動向

( 単位 1 0 億 ドル ,%)

( 荏)第 2‑ 5 表 の注 に同 じ。

(出所)第 2‑ 5 表 に同 じ。

(24)

10 8 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号

こうい うわけで, この第3 循環においては耐久消費財生産や国防費支出,防 衛設備財生産が低迷 していた中で輸出だけが このように順調に拡大 したのであ る。 このことか ら見て, この循環での設備投資の拡大はこの輸出の順調な拡大 に支え られて進行 したもの と考えてよいであろう

第 3 節 1 9 50 年代末から 6 0 年代初めにかけての設備投資の低逮

アメ リカの景気 は58 年 5 月か ら回復 し始め第4 循環が開始 され るが,その回 復 ・拡大の過程 は日本や ヨーロッパの場合 と異な って極めてはかばか しくな か っ

鉱工業生産 はこの第 4 循環では 6 0 年第 Ⅰ四半期にピ‑クに達す るが,前循環 の ピーク ( 57 年第 Ⅰ四半期)か らわずか8 .4%の増大にとどまった。第 2 循環 と第 3 循環 における前の ピークか らそれ らの循環の ピークまでの増大率はそれ ぞれ3 4.2%,1 2 .9%であったか ら, この第 4 循環 における増大率 はそれまで で最低であった ( 第 3‑ 1 表)

設備稼働率を見て も,第 2 循環で は 91 .3% ( 53 年第 Ⅱ四半期),第 3 循環 で は8 8.6% ( 55 年第Ⅳ四半期) にまで達 したが, この第 4 循環 で は84.6%

第 3‑ 1 表 鉱工業生産の各循環での ピークの前の ピークからの増大率

前 の ピ‑ ク 各循環での ピー ク 増 大率 (%) 第 2 循環 41 . 5( 4 8Ⅲ) 5 5 . 7( 5 3Ⅱ) 3 4 . 2

第 3 循環 5 5 . 7( 5 3Ⅱ) 6 2 . 9( 5 7 Ⅰ) 1 2 . 9

第 4 循環 6 2 , 9( 5 7Ⅰ) 6 8 . 2( 6 0 Ⅰ) 8 . 4

( 症)生産指数 は 1 9 6 7 年 ‑1 0 0 の季節調整値。カ ッコ内については 第 1‑2 表の注に同 じ。

(出所)第 1‑1 4 表 に同 じ。

(25)

戦後 ア メ リカ経済 とスタグフ レー シ ョン 第 3‑ 2 表 設備投資 ( 実質)の対前年同期伸 び率

( 単位 %) 製造業全体 耐久財産業 製造 業全体 耐久 財産業

59 Ⅰ 年 ‑ 17 .0 ‑ 21 .1 61 Ⅰ 年 ‑ 1 . 4 ‑ 6 .4

0 .2 3 .1 6.4 1 2 .0

Ⅲ 1 3.4 1 8 .4 Ⅲ ‑ 7. 4 ‑ 1 3 .7

( 出所)第 1‑2 表 に同 じ。

第 3‑ 3 表 耐久消費財生産の動向

指 数 伸 び率 (%) 指数 伸 び率 ( %)

59 Ⅰ 年 59.6 6.8 60 Ⅰ 年 66 .5 1 3 .1

Ⅱ 61 .8 3.7 Ⅱ 65 .4 ‑ 1 .7

Ⅲ 62.0 0.3 Ⅲ 62.8 ‑ 4 .0

10 9

( 注)第 2‑2 表 の注 に同 じO (出所)第 2‑ 2 表 に同 じ。

( 59 年第 Ⅱ四半期)にまで しか達 しなか った 5)0

そ して,それ らにも増 して注 目されるのは設備投資の動向 ( 第 3‑2 表)で ある。製造業全体で もその中の耐久財産業で も設備投資は 59 年第 Ⅲ四半期か ら 60 年第Ⅳ四半期まで前年同期比で10%以上の伸びを持続 しているのであるが,

この循環での ピークを前の循環での ピークと比較す ると,前に見たように,製 造業全体で は10.2%, その中の耐久財産業で は1 2.7%の大 幅なマイナス と

なっているのである 製造業における設備投資が前循環の ピークを越えること

5)Board ofGovernorsoft heFederalReserveSyst em ,Feder alRe ser ve

Measureso fCa paci t yandCapaci t y Ut i l i z at i on ,1978,p.30.

(26)

110 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号 第 3‑ 4表 連 邦 政 府 の 国 防 費 関 係 の 財 ・

サ ー ビ ス の 購 入

(単位 1 0 億 ドル,%)

59 Ⅰ 年 l l .3(3.7) 60 I 年 l l .0(‑ 2.7 )

Ⅱ l l .9(0 .0) Ⅱ l l . 2(‑ 5.9) 刀 1 ‑ 1 .1(‑ 0.9) Ⅲ l l . 3 (1 .8) ( 注)第 1‑8 表の注 に同 じ。

(出所)第 2‑ 3 表 に同 じ。

第 3‑ 5 表 防衛 ・宇宙設備財 (Def enseandspace equi pment ) 生産の動 向

指数 伸 び率 (%) 指数 伸 び率 ( . %)

59 Ⅰ 年 52.9 0 .2 60 Ⅰ 年 5 5.0 1 .9

Ⅱ 53.6 1 .3 Ⅱ 54.9 ‑ 0 . 2 刀 53 .9 0 .6 刀 5 5.6 1 .3

( 荏)第 2‑2 表 の注 に同 じ。

(出所)第 2‑4 表 に同 じ。

第 3‑6 表 商品輸出の動 向

( 単 位 1 0 億 ドル ,%)

( 荏)第 2‑5 表の注 に同 じ。

(出所)第 2‑ 5 表 に同 じ。

(27)

戦後アメリカ経済とスタグフレーション 1 1 1 ができなか ったとい うことは極めて異常な ことであり, ここにこの時期のアメ

リカ経済の低迷ぶ りが如実に現われているということがで きるであろう

それではなぜ この設備投資の低迷‑アメ リカ経済の低迷が生 じたのであろう か。設備投資の動向を規定す る 3 つの要因を順次検討 してみることに しよう

まず,耐久消費財生産について見てみると ( 第 2‑ 7表,第 3‑ 3表) ,そ れは1 958 年第 Ⅲ四半期か ら 5 9 年第 Ⅱ四半期にかけての 1 年間 は増大 したが, 設備投資が拡大を始めた59 年第Ⅲ四半期には低迷,続 く第Ⅳ四半期には5 .2%

の大幅減少 とな っている。その後,60 年第 Ⅰ四半期に1 3.1% と大 きく増大 し たが,一時的な ものに終 って しまい,その後 はまた減少を続 けている。

次に,国防費支出,防衛 ・宇宙設備財生産について見てみると,国防費支出 ( 第 2‑ 8 表,第 3‑ 4 表)は 5 8 年か ら 59 年初めにかけてやや増大 したが,設 備投資が拡大 していた5 9 年第 Ⅲ四半期か ら 60 年第Ⅳ四半期にかけては概ねマイ ナスとなっている。 こうした国防費支出の低迷に照応 して防衛 ・宇宙設備財の 生産 ( 第 2‑ 9 表,第 3‑ 5 表) も 58 年第 Ⅱ四半期か ら第Ⅲ四半期にかけてや や大 きな増大を示 した後 は 0%台 〜 1%台の低 い伸びとマイナスが続 く結果 と なっている。

最後 に輸出についてであるが ( 第 3‑6 表) ,輸出はそれまでの減少乃至低 迷か ら脱 して,6 0 年には 20%近 くか ら 3 0% 近 くの増大を続けている。 これだけ を見 るとこの年輸出はかなり増大 したように見えるが, ピークの61 年第 Ⅰ四半 期の21 2 億 ドルで も前の ピークの206 億 ドル ( 57 年第 Ⅰ四半期)か らわずか2.9

% しか増加 していないのであ り, したが って,すでに到達 した水準か らすれば 輸出はこの循環中にははどんど増加 していないのである。

以上のようなわけで, この第4 循環においては設備投資の動向を規定す る 3 つ

の要因のどれ もが全 く振わなか ったのであ り, この ことが設備投資を低迷 さ

せ,ひいてはアメ リカ経済を全体 として大 きく低迷 させた原因であると考え ら

れるのである。

(28)

112 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 2 号

第 4 節 1 9 6 0 年代における設備投鷲の高揚

前節で見たよ うにアメ リカ経済 は 1 95 0 年代末か ら 6 0 年代初めにかけて深刻 な低迷に陥ったのであるが ,61 年 3 月か ら始まった第 5 循環では生産 ・設備投 資 ともそれまでの循環に比べ ると遥かに順調に拡大 し ,6 9 年末まで戦後最長の 1 06 カ月の拡大を記録 した 6)。 鉱工業生産 はこの循環中に前の循環の ピークに 比べて 6 4 . 4% 増大 した( 第 3‑ 1 表参照) 。 設備投資 も製造業全体では前の ピー クと比べて 6 2 . 5% 増大 し,その うちの耐久財産業では 7 3 . 0% 増大 した ( 第 1‑

2 表,第 1‑3 表参照) 本節ではこの設備投資の高揚が何によって支え られ た ものであったかについて検討 してみることに したい。

6) とは言え ,67 年 に入 ると生産が一時マイナスとなっている ( 付表 1 ) ことか ら推察 で きるよ うに,景気拡大 は基本的に 66 年末で終 っているのであ り ,67 年後半以降の 拡大 は財政 ・金融政策 によ って遮二無二 引 き延ばされた ものにす ぎないのであ る が。

付表 1 鉱工業生産 ( To t aHn d e x )

の伸 び率

( 単位 %)

( 注) 1 9 6 7 年 ‑1 0 0 の季節調整値の前期比。

(出所)第 1‑1 4 表に同 じ。

(29)

戦 後 ア メ リカ経 済 とス タ グ フ レー シ ョン

第 4‑ 1 表 設備投資 ( 実質)の対前年同期伸 び率

( 単位 %) 製造業 全体 耐久財産業 製造業全体 耐久財産業

6 2 Ⅰ 年 0.4 ‑ 3.5 66 Ⅰ 年 22.8 29.9

Ⅱ 0.1 2.9 Ⅱ 22.4 28 .1

Ⅲ 6.0 1 2. 4 Ⅲ 1 9 .1 22 .5

6 3 Ⅳ Ⅰ 年 2.1 1 .5 . 4.6 8.2 67 Ⅳ Ⅰ 年 1 4.6 9 .4 1 6 9.2 .9

Ⅱ 6.4 1 0. 8 Ⅱ 1 .0 0 . 5

Ⅲ 7 .7 5.9 Ⅲ ‑ 5.8 ‑ 4.4

6 4 Ⅳ I 年 20.3 1 0.4 23.1 1 2. 2 68 Ⅳ I 年 ‑ ‑ 8.1 8 .3 ‑ ‑ 6 5.5 .4

Ⅱ 20.0 21 .6 ‑ Ⅱ ‑ 7 .0 ‑ 7 .8

Ⅲ 1 9.6 26.0 Ⅲ ‑ 0 .5 ‑ 0 .8

65 Ⅳ Ⅰ 年 26.0 1 7.3 31 1 8.9 .6 69 Ⅰ Ⅰ Ⅴ 年 0 3 .6 .3

0

3.7

.0

Ⅱ 1 8.4 21 .3 Ⅱ 8 .7 l l .6

Ⅲ 1 9.6 23.5 Ⅲ 9 .5 7 .4

Ⅳ 1 8.1 23.0 Ⅳ 6 .9 3 .3

113

( 出所)第 1‑2 表 に同 じ。

この第 5 循環 は1 961 年 3 月か ら始 ま り 1 970 年1 2 月に終 る 11 7 カ月 とされてお り,この うちの拡大期間は 61 年 3 月か ら 69 年1 2 月までの1 0 6 カ月,後退期間は 7 0 年 1 月か ら同年1 1 月 までの1 1カ月 とされている。そ して,前者の拡大期問の う

ち設備投資が前年同期比で1 0%近 く以上の伸びを持続 したのは製造業全体で も その うちの耐久財産業で も 6 3 年第Ⅳ四半期か ら 67 年第 Ⅰ四半期までの1 4 期であ る ( 第 4‑1 表) 0

この循環の以前の 3 つの循環 と違 う大 きな特徴 は耐久消費財生産の拡大が設

備投資の拡大が始 まった後 も長 く持続 したとい うことである ( 第 4‑2 表) 。

耐久消費財生産の拡大は 61 年第 Ⅱ四半期か ら始まり,途中二,三度伸び率が落

ちたりマイナスになった りした期 もあったが,66 年第 Ⅱ四半期まではほぼ順調

に拡大を続 けたのである。それまでの循環では設備投資の拡大が始 まる前 ま

(30)

114 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号 第 4‑2 表 耐久消費財生産の動 向

指数 伸び率( %) 指数 伸び率( %) 指数 伸び率( %)

61 Ⅰ 年 5 6 .7 ‑ 7 . 4 6 4 Ⅰ 年 80 . 9 0 .9 67 Ⅰ 年 9 8 .1 ‑ 5 . 2

Ⅱ 6 2.7 1 0 , 6 Ⅱ 8 3. 4 3 .1 Ⅱ 9 8 .0 ‑ 0 .1

Ⅲ 6 4 . 8 3. 3 Ⅲ 85. 2 2 . 2 Ⅲ 9 8 .8 0 . 8

6 2 Ⅰ 年 6 6 8. 9 . 2 0 5 1 . . 2 2 6 5 Ⅳ I 年 8 9 3. 3 . 9 9 l ‑ 1 l .5 .9. 6 8 Ⅳ Ⅰ 年 1 1 05 0 8 .0 .0 6 2 .3 . 9

Ⅱ 7 1 . 4 3. 5 Ⅱ 9 6 . 6 2 .9 Ⅱ 1 09 .7 1 .6

Ⅲ 7 2. 0 0 . 8 Ⅲ 9 8. 0 1 . 4 Ⅲ 11 1 .2 1 . 4

6 3 Ⅳ Ⅰ 年 7 7 2. 4. 8 5 2. 1 .1 3 6 6 Ⅰ Ⅰ Ⅴ 年 1 1 0 01 3.1 .0 3 2 .1 .1 6 Ⅳ 9 Ⅰ 年 1 1 1 1 5 6 . .6 4 3 1 .8 .0

Ⅱ 7 6. 8 3 .1 Ⅱ 1 04 . 3 1 . 2 Ⅱ‑ 1 1 4 .1 ‑ 2 .1

Ⅶ 7 8. 5 2. 2 班 1 0 0. 9 ‑ 3 . 3 Ⅲ 1 1 6 .6 2 . 2

Ⅳ 8 0 . 2 2. 2 Ⅳ 1 0 3 .5 2 .6 Ⅳ ‑1 1 3 . 0 ‑ 3 .1 ( 荏)第 2‑2 表の注 に同 じ。

(出所)第 2‑2 表 に同 じ。

第 4‑ 3 表 商品輸出の動向

( 単位 1 0 億 ドル, %)

( 荏)第 2‑ 5 表の注 に同 じo

(出所)第 2‑ 5 表 に同 じ。

(31)

戦後 ア メ リカ経済 とス タグフ レー シ ョン 115 で,あるいは,せいぜい始まってか ら半年程度 しか耐久消費財生産の順調な伸 びは持続 しなか ったが, この循環では設備投資の拡大が始まった後 も 1 1 期 ( 63 年第Ⅳ四半期〜66 年第 Ⅱ四半期)にわたって順調な伸びを持続 したのである。

したが って, この耐久消費財生産の順調な拡大が この循環での設備投資の高揚 を支えた一つの重要な要因であったことは疑いないであろう

次に輸 出について見てみると ( 第 3‑ 6 表,第 4‑ 3 表) ,輸 出は 63 年第 Ⅲ 四半期までは概ね‑ケタの伸び乃至マイナスであったが,設備投資の拡大が始 まった63 年第Ⅳ四半期か ら 6 4 年いっぱいにかけては 1 0% 以上の比較的高い伸び を続 けている。 しか し,その後は断続的にニケタの伸びを記録 してはいるが概 ね‑ケタの伸びにとどまっている。 したが って,輸出は 6 3 年第Ⅳ四半期か ら 64 年第Ⅳ四半期にかけては設備投資の拡大に寄与 したが,その後 は寄与 しなか っ たと言 ってよいであろう。

最後に,国防費支出,防衛 ・宇宙設備財生産について見てみると,国防費支 出 ( 第 4‑ 4 表)は63 年か ら 65 年第Ⅲ四半期にかけては低迷 していたが,べ 卜

第 4‑ 4 表 連邦政府の国防費関係の財 ・サー ビスの購入

( 単位 1 0 億 ドル , %)

( 荏)第 1‑8 表 の注 に同 じ。

(出所)第 2‑ 3 表 に同 じ。

(32)

116 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号

第 4‑ 5 表 防衛 ・宇宙設備財 (Def enseandspaceequi pment ) 生産 の動 向

指 数 伸び率( %) 指数 伸び率( %) 指 数 申び率 ( %)

61 Ⅰ 年 5 4.7 ‑ 0 . 4 64 Ⅰ 年 68.6 ‑ 1 .6 67 Ⅰ 年 97 .3 3.5

Ⅱ 5 4.6 ‑ 0.2 Ⅲ 67. 2 ‑ 2.0 Ⅱ 98.3 1 .3 m 55. 6 1 .8 Ⅲ 66.8 ‑ 0.6 Ⅲ 1 00 .1 2.1

t V

6 2 Ⅰ 年 61 5 9.0 .8 6.1 4.7 6 5 Ⅰ Ⅴ Ⅰ 年 . ̲ 68. 70.5 3 2.2 3,2 68 Ⅰ Ⅰ Ⅴ 年 1 1 04.3 07 .4 4.3 3 .3

Ⅲ 63. 8 3. 2 Ⅱ 73.9 5.6 Ⅱ 1 07 .9 0.8 m 6 6. 3 3.9 Ⅲ 76.6 4 .9 Ⅲ 1 10 .1 2.9

l V

6 3 Ⅰ 年 67.4 7 0.5 4.6 1 .7 6 6 Ⅰ Ⅰ Ⅴ 年 82.1 78. 6 3.4 5 .3 69 Ⅳ Ⅰ 年 1 1 07 06.7 .5. ‑ ‑ 2.3 0.3

Ⅲ+ 69.5 ‑ 0.7 Ⅲ 90.0 4.7 Ⅲ 1 03.5 ‑ 1 .4 ( 注)第 2‑2 表の注に同 じ。

( 出所)第 2‑ 4 表に同 じ。

ナム戦争の拡大を反映 して,続 く第Ⅳ四半期か ら 1 0% を越える伸び とな り ,67 年第Ⅳ四半期までの 9 期にわたって 1 0% 以上の伸 びを持続 している。中で も 6 6 年第 Ⅱ四半期か ら 67 年第 Ⅱ四半期 までの 5 期の問は 20 % 近 くか ら 3 0% を越える 非常 に高い伸びを続 けている。一方,防衛 ・宇宙設備財の生産 ( 第 4‑ 5表)

は国防費支 出の増大 より早 く 6 4 年第Ⅳ四半期か ら増大に転 じ ,6 5 年には前期比 で 3% 台 〜 5% 台 ,6 6 年には 4% 台 〜 5% 台の高い伸びを持続 し ,67 年第 Ⅰ四 半期にもまだ 3% 台の伸びを維持 している 。 こうしたベ トナム戦争の拡大 に伴 う国防費支出の増大や防衛設備財生産の増大が設備投資の高揚 に大 きな力を発 揮 したことは論を待たないであろ う

こうして見て くると ,6 0 年代前半か ら後半にかけての設備投資の高揚 は ,6 3

年末か ら 6 4 年 にかけては耐久消費財生産の拡大 と輸出の拡大に ,6 5 年か ら 6 6 年

前半 にかけては耐久消費財生産の持続的拡大 と国防費支 出の増大を見越 した,

あるいは,実際の増大にともな う防衛設備財の生産拡大 に,そ して ,6 6 年後半

(33)

戦後アメリカ経済とスタグフレーション 117 以降はもっぱ ら国防費支出の増大 と防衛設備財の生産拡大によって支え られて 達成 された もの と言 うことがで きるであろう 。

第 5節 1 9 70 年代前半における設備投資意欲の大幅な減退 とその原因

以上, 1 9 4 0 年代末か ら 7 0 年代初頭 にかけての戦後 アメ リカ経済の四つの景 気循環のそれぞれについて設備投資の順調な拡大が達成 された原因,或 は達成 されなか った原因について検討 して きた。以上で見て きたよ うに,設備投資の 順調な拡大が達成 されたのは第 2 ,第 3 ,第 5 循環においてであ り,それを可 能 に した要因は 1. 国防費支出の増大 とそれに伴 う防衛設備財生産の拡大, 2.

輸出の拡大, 3. 耐久消費財生産の拡大の三つの要因であ り,それ らがある時 は単独で働 き,ある時は複合的に働いて設備投資の順調な拡大を可能 に したの であった。 これに反 して ,5 0 年代末か ら 6 0 年代初めにかけての第 4 循環ではそ れ ら三つの要因のどれ もが全 く振わなか ったのであ り,その ことが設備投資の 順調 な拡大を不可能 に し,ひいてはアメ リカ経済 を深刻 な低迷 に陥れたので あった。

ところで ,7 0 年代 に入 ってか ら設備投資は製造業全体では 7 2 年第Ⅳ四半期か ら 7 4 年第 Ⅱ四半期 までの 7 期にわたって,その うちの耐久財産業では 7 2 年第 Ⅲ 四半期か ら 7 4 年第 Ⅱ四半期 までの 8 期 にわたって,前年同期比で 1 0 % 近 くを越 え る拡大を持続 したが ( 第 5‑1 表) ,すでに見たよ うに,そ こでの ピークを す ぐ前の ピークと比べ ると,製造業全体では 7 . 7 % 増大 したにす ぎない し,そ の うちの耐久財産業で はもっと少な くわずか 3 . 3% 増大 したにす ぎないのであ る。

本節の課題 は第 1 節でスタグフ レーシ ョンの核心的問題 と規定 した 7 0 年代 に

入 ってか らの このような設備投資意欲の大幅な減退の原因について究明す るこ

とであるが,今 まで述べてきた ことか らその原因 自体 はすでに自ずか ら明 らか

なのであ り,第4 循環 の場合 と同様,上の 3つの要因の どれ もが設備投資の順

調な拡大を もた らすには全 く力不足であ ったことがその原因にはかな らないの

(34)

118 商 学 討 究 第 45 巻 第 2 号 第 5‑ 1表 設備投資 ( 実質)の対前年 同期伸 び率

( 単位 %) 製造業全体 耐久財産業 製造業全体 耐久財産業

7 0 Ⅰ 年 3 .9 0 ー4 7 3 Ⅰ 年 1 3. 5 ̲ 1 9 . 5 刀 ‑ 1 . 2 ‑ 3 .8 Ⅱ 1 5 . 8 2 4.1 描 ‑ 6 . 2 ‑ 8 . 4 Ⅲ 1 7 . 8 21 .1

‑ 1 3 . 6 . ‑ 21 .1 1 4. 9 1 5. 5

■丑 ‑ 1 4 .5 ‑ 21 .5 Ⅱ 1 3 .6 9 .6

Ⅲ ‑ 1 5 . 2 ‑ 20 .6 Ⅲ 8 . 6 4. 2

(出所)第 1‑2 表 に同 じ。

である。

そこで以下では,上の 3つの要因が70 年代に入 ってか ら設備投資の順調な拡 大をもた らすには全 く力不足 となったことを確認するとともにその原因につい て究明 してみることにしたい。

まず,国防費支出,防衛 ・宇宙設備財生産か ら見てみることに しよう

国防費支出 ( 第 1‑8 表参照)は 7 2 年 にやや増大 したはかは ,7 3 年前半に至 るまで概ね減少を続け,その後 も 7 4 年前半までは低迷を続けている。 こうした 国防費支出の減少 ・低迷に照応 して,防衛 ・宇宙設備財生産 ( 第 5‑ 2表) も 全 く振 るわず ,7 1 年いっぱいまで減少が続 き,その後 も微増乃至減少に終 って

いる。

こうして,国防費支出,防衛設備財生産は設備投資の拡大を刺激す るように

は全 く働かなかったのであるが,その原因がベ トナム戦争における戦局の悪化

と国際収支赤字 ・財政赤字の拡大のため戦争の拡大が困難になったことにある

ことは言 うまで もないであろう

参照

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