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高等教育 におけ る障害学生支援

‑アメ リカの支援 システムに学ぶ ‑

大 庭 重 治*

近年, 日本の大学では,特定の私立大学 に限定 され ることな く,障害のある学生が多数大学 に進学 す るよ うになってきた。障害学生が大学 に入学 した場合,受 け入れ大学 は,彼 らの障害の状況に応 じ て,在学中の学習 ・研究環境 を整備,保証 してい くことが必要である。 このため,障害学生支援 シス テムを構築 し,全学的見地 か ら障害学生に対す る支援 に努めている大学 も散見 され るよ うになってき た。 しか しなが ら,地方 にある特 に小規模 な国立大学 においては,その対応 が大 き く遅れているのが 実状であ り,その改善策が求め られている。 この よ うなことか ら,本研究では,障害学生に対す る支 援 システムが確立 しているアメ リカの大学 を訪問 して聞 き取 り調査 を実施 し,障害学生支援室を中心 とした一連 の支援手続 きや具体的 な支援 内容 について整理す るとともに,今後大学が障害学生支援 シ ステムを構築 してい く際に配慮すべ き諸課題 につい て検討 した。

キーワー ド :アメ リカ 訪問調査 高等教育 学習 ・研究支援 システム 障害学生

Ⅰ.問題 と目的

障害のある学生 ( 障害学生) に対す る高等教育が実 施されるよ うになったのは,私立大学 における教育 に 負う所が大 き く,早稲 田大学や慶応大学 な どは, この ような教育における先駆的 な役割を果た してきた ( 鈴 木 ,2 0 0 2 ) 。これに比べ ると,国立大学 における障害学 生に対す る対応 は非常 に遅れてお り, よ うや く近年 に なってその必要性が認識 され,大学 内に障害学生を支 援す るための組織 を設 け る大学 が散見 され る よ うに なっている。 また,現在それ らの大学 に在籍す る障害 学生や,既 に盲学校や聾学校 を初め とす る様 々な教育 現場において活躍 している障害のある教師の中には, 今後, さらに大学院に進学 して研究をすすめ よ うとし ている者 も少 なか らず存在 してお り,大学院における 支援の必要性 も生 じている。 この よ うな障害のある学 生や教師に とって,大学 において学習 ・研究をすすめ るためには,大学か らの適切 な配慮を伴 う支援が必要 不可欠である。す なわち,障害学生が大学 に入学 した 場合には,当然 の ことなが ら,受 け入れ大学 は在学中 の彼 らのアカデ ミックな学習 ・研 究環境 を保証 してい かなければな らない。

アメ リカでは ,1 9 7 3 年 の「リ‑ ビリテ‑シ ョソ法 5 0 4

* 上越教育大学障害児教育講座

粂 ( Se c t i o n5 0 40 ft h eRe ha bi l i t a t i o nAc to f1 9 7 3 ) 」

によ り,連邦政府の補助金 を受 けている団体 は,大学 も含めて障害を理 由にした差別 を してはな らない こと が明示 された。 さらに 1 9 9 0 年 の 「 障害を持つ アメ リカ 人法 ( TheAme r i c a n swi t hDi s a bi l i t i e sAc t : ADA)

に よ り,大学 に障害学生を支援す るシステムが整備 さ れ ,ADA コーデ ィネータが置かれ るよ うになった。ま た, イギ リスやオース トラ リア, カナダな どにおいて も障害学生の支援 を保障す る法的整備が進 んでいる。

日本ではこの よ うな法律の整備 は遅れているものの, 教育の機会均等を保障す るために,各大学 の責任 にお いて障害学生支援を実施 していかなければならない。

その際,学生本人に対す る支援 とともに,その学生が 受講す る授業 の担当者, あるいは研究室の指導教官を

も大学が組織的に支援 してい くことが必要である。

そ こで本研究では,障害学生に対す る支援 システム

が確立 しているアメ リカの大学を訪問 し,同様 のシス

テムを 日本の大学 において構築 してい くための情報収

集を行 った。 この調査結果 に基づいて, 1)障害学生

支援 に求め られ る実施手順 と支援 内容 を整理 す る こ

と, 2) それ らを実現す るために,大学が支援 システ

ムを構築 してい く際に検討すべ き諸課題 を明 らかにす

ることを本研究の 目的 とした。特 に,地方 にある小規

模大学 において,障害のある大学院生を対象 とした専

(2)

大 庭 重 治 門性 の高 い学習 ・研究支援 システムを構築す るための

手だてについて検討す ることを 目指 した。 これ らの成 果 は,小 ・中学校 において,今後障害のある子 どもた ちを対象 とした特別支援教育を実現 してい くための校 内体制 を構築 してい く際のモデル として も貢献で きる と思われ る。

Ⅰ Ⅰ . 方 法 1.調 査 日 時

2 0 0 3 年1 0 月1 9 日 〜1 1 月 1 日

2. 調査大学 と調査内容

アメ リ ! カオ レゴン州 ユージーン市 にあるオ レゴン大 学 ( Uni ve r s i t yo fOr e go n) ,レイン・コ ミュニテ ィー・

カレッジ ( La neCo mmuni t yCol l e ge ) ,及 び ワシソ ト ソ州 シア トル市 にあるワシン トン大学 ( Uni ve r s i t yo f Wa s hi ng t o n) を夢問 した. これ らの大学では,主 に以 下の凌関において関係者 に対 してインタ ビューを行 う

とともに,文献資料の収集を行 った。

1) オ レゴン大学 における調査 内容 (障害学生支援室 ( Di s a bi l i t ySe Ⅳi c e s ) )

障害学生支援全般 に関す る資料 の収集及 び聞 き 取 り調査 を実施 した ( 写真 1)0

( 適応支援 セ ソクー ( Ada pt i veTe c hnol o gy°e n‑

写真 1 オレゴン大学障害学生支援室

室長の St e v ePi c ke t t氏とともに。支援室には室長を含 め 6 名のスタッフと秘書が常駐 してお り,学習上の支援を 申し出た学生との話 し合いにより具体的な支援内容を決定 し,その支援の実現に向けた手続 きを行っている。

t e r ) )

障害学生 に適用す る具体的 な補助器機 の視察と その支援 内容につ いて,聞 き取 り調査 を実施 した。

(カウンセ リング・テステ ィングセ ンター ( Co u n s e l ̲ i n g & Te s t i ngCe nt e r ) )

支援対象 となる障害学生の診断 ・評価 について 聞 き取 り調査 を行 うとともに,施設 を視察 した。

くアカデ ミック・ラーニング・サー ビス ( Ac a d e mi c Le a r ni ngSe Ⅳi c e s ) )

LD 学生 な どに対す る学習支援 ( 特 に,読み,香 き,数学) につ いて,資料 の収集及 び聞 き取 り調 査 を実施 した。

その他,視覚障害学生本人や障害学生を支援し ている博士課程 の院生にインタ ビューを行い,実 際の支援状況 について説 明を受 けた。

2) レイン ・コ ミュニテ ィー ・カレ ッジにおける調 査 内容

(障害学生支援室 ( Di s a bi l i t ySe r vi c e s ) ) 障害学生支援全般 に関す る資料 の収集及 び聞き 取 り調査 を実施 した。障害学生支援室 内の視覚障 害 インス トラクター及 び手話通訳者 よ り,各領域 における支援 内容 とその実施方法 について聞き取 り調査 を行 い, その後授業 における支援 の様子を 参観 した( 写真 2) 。 また,視覚障害学生本人 より 実際の支援状況 転っいて説 明を受 けた. さらに, 支 援 室 長 の ご厚 意 に よ り, ADA に関 す るセ ミ

写真 2 レイン・コミュニティー・カレッジ障害学生支援室 支援室に所属する手話通訳者の Ca t h i eRe s c hke 氏が, 調 理師養成プログラムの授業において,最前列に座っている 学生に対 して手話通訳を行っている。脇に立っているのは,

この授業のインス トラクターを務めていた レス トラソの

シェフである。̲

(3)

写真 3 レイン ・コミュニティー ・カレッジ図書館 図書館の一角に,視覚障害者用のコンピュータが設置 さ れており,障害学生が優先的に使用できるようになってい る。図書館のスタッフは機器の使用に関する研修を受け,使 用の申し出があった時にはす ぐに対応できるようになって

いる。

ナ一にも参加 した。

( 大学図書館)

図書館長 よ り,図書館 における障害学生支援 の 内容について説 明を受 けるとともに,館 内の設備 を視察 した ( 写真 3) 0

( 社会科学部)

心理学 のインス トラクターよ り,障害学生を含 めた学 生支援 の具体的 内容 につ いて説 明を受 け た。 また, 同インス トラクターの研究室 に所属す る学生によるチ ューターとしての支援活動 を視察 し

た 。

3) ワシソ トン大学 における調査 内容

( 障害学生支援室 ( Di s a bl e dSt ud e ntSe r vi c e s ) )

障害学生支援全般 に関す る資料の収集及 び聞 き 取 り調査 を実施 した。 また,障害学生の診断 ・評 価のためのテステ イソグセ ンターを視察 した。

( 適応支援 セ ンター ( Ada p t i v eTe c h no l o gyCe n‑

t e r ) )

障害学 生 に適用す る具体 的 な補 助器機 の視察 ( 写真 4) と,その支援 内容 について聞 き取 り調 査を実施 した。 また, また ワシソ トン大学 におい て実施 されてい る DO‑ I T プ ログ ラムに関 して説 明を受 けた。

写真 4 ワシン トン大学補助器機支援センター 同センターコソサルタソ トの Da nCo md e n 氏より補助 器機に関する説明を受けた。ここでは,学生へのコンピュー タのフィッティングを中心的な活動 としてお り,全ての学 生が全ての操作を行 うことができるように工夫している。

HI . 障害学生支援の実施手順 と支援内容 1.実 施 手 順

障害学生に対す る支援 は 「 障害学生支援室」がその 窓 口とな り,全学的な視点 に立 った コーデ ィネータの 役割を果た している。支援室の主 な活動 は,学習上の 支援 を申 し出た学生 との話 し合 いによ り具体的 な支援 内容 を決定 し,その支援 の実現 に向 けた手続 きをサ ポー トす ることである。

調査か ら得 られた情報 を整理す ると,支援室 におけ る障害学生に対す る支援 は,お よそ以下の よ うな手順 によって実施 されている。

1) 障害 に関す る書類 ( Do c u me n t a t i o n) の提 出 学生は,支援室 に対 して, 自らの障害状況が記 述 された書類を添 えて,必要 な支援 について申請 す る。その際,障害状況の説 明には専門機関によ る診断が求め られ る。た とえば,学習障害 ( LD) の学 生が提 出す る Do c u me n t a t i o n には,過去 3

年以内に実施 された学習到達度検査,知能検査, 情報処理能力検査 の結果が記述 されていなければ ならないO学 内のテス トセンターにおいて もこれ らの診断が可能である。

2) 支援 内容 ( Re a s o na bl eAc c o mmo da t i o n) の決 定

支援を受 ける資格があるか ど うか ( El i gi bi l i t y )

を判断 してもら うために,学生は支援室のスタ ッ

フとの話 し合 いの機会 を持つ。そ して支援が必要

(4)

大 庭 重 治 であると判断 された場合 には,その適切 な支援 の

内容を決定す る。

3)支援 に関す る相互理解 の促進

支援 の内容,方針,手続 き等が書かれた‑ ソ ド ブ ックに眼を通す。‑ ソ ドブ ックは冊子 として提 供 され る他,大学 の We b ページに掲載 され てい る。そ こでは学生 自らによる自主的 な行動の重要 性が何度 とな く強調 されてお り,障害学生支援室 はあ くまで も学生の行動 を支援す るとい う姿勢が 伺われ る。 また,支援 を受 けるためには, 自らの 責任 を正 し く理解 してお くことも求 め られ て い る

・た とえば,手話通訳 のサー ビスを受 ける場合 に,支援室 に無断で2回授業 を欠席す ると,その後 の手話通訳 サー ビスは停止 され る。 また 1 0 分以上 の遅刻 も欠席 と同様 にみなされ る。

4) 支援 申草書 と受講計画の提 出

支援 につ いて正式 な申請書を作成 し,受講計画 書 と共 に支援室 に提 出す る。支援 内容が決定 した 後, それ らの支援がいつ, どこで開講 され る授業 に必要 であるのかを明確 にす る。 また, ノー トテ ィカーや手話通訳者 な ど,人的支援が必要 な場合 にはその確保 を図 る。

5)授業者‑の支援要請

必要 とす る支援 内容 について,学生本人が授業 者 に要求す る。障害学生支援室 において検討 され た支援 内容を学生本人が授業者 に伝達 し,その実 施 を依頼す る。支援 の必要性が授業者 に十分伝わ らない場合 には,学生の要求 に応 じて障害学生支 援室がその仲介役 を果たす こともある。

6)支援 内容の変更連絡

受講 クラスの追加等 によ り支援 内容に変更が生 じた場合 には,速やかに支援室 に連絡をす る。

7)障害学生支援室 との継続的連携

各学期 ごとに支援室のスタ ッフと面会 して,逮 絡 を と り続 ける。

2. 支 援 内 容

障害学生支援室 は他 のサ ー ビス機関 と連携 を とりな が ら,上記の手続 きに基づいて,次 の よ うな具体的支 援 を提供 している。 なお,視覚障害,聴覚障害,運動 障害のある学生 に対す る具体的 な支援 については,障 害別 にその内容 を Ta bl e lに示す。

1)履 修 支 援

カ リキ ュラムの内容や単位 の取 り方 について説 明 した り, コソピュークや電話での履修登録が困 難 な学生 に対 して登録 の支援 を行 うサー ビスであ

る。 また,必要 とされ る支援 を授業が開始 される 前 に準備 してお くために,通常 の履修登録期 日よ りも早 い時期 か ら登録がで きるよ うな配慮 もなさ れている。

2)教室の場所 の移動

運動障害や疾病 に よ り移動が困難 な学生のため に,履修登録後, アクセスが容易 な位置 にある教 室 に講義室 を変更す るサー ビスである。障害学生 支援室 は,必要 な支援 を教務 に関わ る部署 に依顔 す る。

3)授業者 との コ ミュニケーシ ョンの支援 授業者 に配慮 を依頼す る際のアシス トである。

支援室 は,障害学生か らの申 し出に よ り,障害の 状況や必要 としている支援 内容を授業者 に伝 える ための手紙 ( N o t i f i c a t i o nl e t t e r ) を発行 した り, 学生,授業者 を交 えた話 し合 いの機会 を設定 した

りす る。

4) 補助器機 を使用す るための支援

障害者用 コンピュータを中心 とした補助器機の 使用 に関す る技術 を提供す るサー ビスである。障 害 の状況 に応 じて使用可能 な補助器機 を紹介 した り,学習 ・研究 においてそれ らを使用で きるよう に訓練 の機会 を提供す る。 このサ ー ビスは学内の 適応支援セ ンターが担 当 している。

5)特殊 な機器 の短期貸 出

障害学生が学習 ・研究 において必要 となるテー プレコーダ ,TTY ,点字地図な どを貸 し出すサー ビスである。

6) 録音 サー ビス

視覚障害や読み障害, あるいは本 をめ くること が困難 な運動 障害 の あ る学 生 に対 して,図書を テープに録音 して提供す るサー ビスである.

7) ノー トテイク

講義 ノー トを提供す るための支援者 の手配を行 一うサ ー ビスである。 ノー トティカーとなるのは同 じクラスの成績が優秀 な学生であ り,障害学生支 援室が報酬 を支払 っている。報酬 は 遇2‑3 回程度 で一期 $1 0 0 程度 である。障害学生 は自らもノー ト を とる努力 を求め られ,その補足的 な手段 として, 提供 され るノー トを利用す る。無断欠席 の場合に さは ノー トは捉供 されない0

8)手 話 通 訳

履修 の先行登録 に よ り,手話通訳者が手配 され

る。手話通訳 を受 ける場合 には, ノー トを とるこ

とが困難 に な るた め,合わ せ て ノー トテ イクの

(5)

Tablel 視覚障害,聴覚障害,運動障害のある学生に対す る具体的支援 内容 (オ レゴン大学の支援 内容 よ り抜粋)

■視覚障害学生に対す る配慮 内容

・OHP

,黒板,t資料 の内容を大 きな声で読み上 げるo

・挙手を求めた時 に何人が手を挙げたかな ど,授業中の様子を言葉で説 明す る

・ノー トテイク用のテープレコーダ, ノー トパ ソコン,筆記用具 を準備す る。

・実験助手 を手配す る。

・あらか じめ講義の項 目や概要 を読み上げてお く。

・最大 コン トラス トが得 られ るよ うに白い紙 に黒文字で書 く。

・授業の予定や教室の変更が確実に伝わ るよ うに配慮す る。

・拡大表示,読み上げ,点字出力な どが可能 な コンピュータの使用を許可す る。

・試験の実施方法 を変 える。た とえば,問題 を録音 テープ,拡大文字,点字で提示す る。また,問題 を読 んだ り口頭 での解答を記述 した りす る補助者,テープレコーダー‑の録音に よる解答,時間延長,コンピュータや拡大読書機 の使用 を認める。

・代行機器 を使用 した り,問題 を読 んだ り,口頭での解答を代筆 した りす る補助者が必要 な場合 には,試験時間を延 長す る。

・宿題 を出す場合 には,読み上 げや点字 出力が可能 な コンピュータが使 えるよ うに

,E‑ ma

ilのよ うな電子 フォーマ ッ トを利用で きるよ うにす る。

・実験室 における補助的設備 を利用す る (音声温度計,音声電卓,光検知器,触覚 タイマーな ど

)0

・図形 を提示す る場合 には, レ‑ズ ライターや立体 コピーで提示す る.

・副音声 の説 明がっいた ビデオ教材 を使用す る。

■聴覚障害学生に対す る配慮 内容

・授業者,黒板,手話通訳者が良 く見 える位置 に着席 させ る。

・話 している人の顔や 口が見 えるよ うにす る。

・口頭で指示 を出 した り課題 を与 えた りす る場合 には,その内容を文書 にして渡す。

・学生が授業中に新たな資料 を読 んだ り写 した りしていると手話通訳者を見ていられな くなって しま うので,資料 は 事前 に渡 してお くよ うにす る。

・キャプシ ョン付 きの ビデオを使用す るな ど,可能であれば常 に視覚教材を使用す る。

・室内を暗 くす る必要がある場合 には,手話通訳者が見 えるよ うに小 さなスポ ットライ トを使用す る

・他の学生か ら出た質問や意見 を授業者が繰 り返す。

・手話通訳者 に注 目してい られ るよ うに, ノー トティカーを手配す る。

・試験の際には,時間延長,個別受験室の設定,ワープロの使用許可,指示 を伝 える手話通訳者の手配 な どの配慮を 行 う。

・新 しい用語 は黒板 に善 くか,資料 として書いた ものを渡す。

・授業者 との議論 には

,E‑ mai l

, ファックス, ワープロを使用す る.

・コンピュータによるノー トテイクや同時キ ャブシ ョニソグを行 う

・緊急事態を知 らせ るための視覚的な警告 システムを設置す る。

}運動障害学生に対す る配慮 内容

・移動が容易な場所 に教室を設定 した り,授業者が生徒 と会 える場所 を確保す る。

・教室に座れ る場所 を確保す る。

・ノー トテイカ一, テープレコーダ, ノー トパ ソコン,授業者や クラスメー トの ノー トの コピーを用意す る。

・特別 な機能 を持つ コンピュータ設備/ ソフ トウェアを利用す る。音声で動 くワープロを使用 した り,キーボー ドや マウスの改造を行 う。

・試験方法 を配慮す る。時間延長,別室受験,口頭 による解答の代筆,特別 な機能を持つ コンピュータの使用を認め る

・宿題が コ ミュニテ ィー資源 の利用を必要 とす る場合 には,締切を柔軟 に設定す る

・高 さ調整が可能 なテーブルを用意す る。

・実験助手や受講時の補助者を手配す る。

・建物 の近 くに駐車で きるよ うにす る。

・身体的能力の範囲で参加で き, しか もコースの 目的に適合す るよ うな活動 を設定す る

・教科書を録音 したテープを用意す る。

・参加可能 な校外学習を計画す る。

(6)

大 庭 重 治 サービスも必要 になる。 また,手話通訳の代用 と

して, コンピュータを介 した同時キャブシ ョニソ グを利用す ることも可能である。

9)試験方法の配慮

通常の試験を受けることができない学生に対す るサー ビスである。サービスの内容は,学生の障 害の状況 と受講科 目における試験の形式によって 異なって くる。具体的なサー ビスとしては,試験 時間の延長, 口頭 による解答,代筆 による解答, 試験問題 の拡大 または電子化,別室受験 などがあ

る。

1 0 ) その他

障害学生支援室 は,学生に対 して支援手続 きや 支援内容を明示す るとともに,授業者 に対 して, 障害の説明や授業における具体的な配慮方法を示 した 「 教員用 ガイ ドブック」を発行 している。

Ⅳ. 支援 システム構築のための検討課題

アメ リカの大学 における訪問調査を通 して,障害学 生支援 に求め られる実施手順及 び支援 内容の概略を把 握す ることができた。 これ らを参考にしなが ら,今後 大学が障害学生支援 システムを構築 してい く際に必要 になると思われ る主 な検討課題 について以下に列挙す る。

1.学生支援における中心的な役割 を果たす支援室の 設置

学生支援を実現 してい くためには,その支援を全学 的な視点か らコーデ ィネー トす るための障害学生支援 室の設置が必要不可欠である。 このよ うな支援室の設 置 は,支援を希望す る学生に対 して支援の申請先を明 示できるとともに,支援の遂行手続 きを一元化できる 利点がある。ただ し,小規模 な大学においては,本研 究 において調査を実施 した大学にあるような独立 した 支援室の設置 は困難である場合 も多いと思われ る。 し たがって,障害学生だけではな く,留学生なども含め た学生支援 とい う枠組みの中で, ひとつの柱 として障 害学生支援 を位置づけてお くことが必要である。また, その 日常的な運営 においては,障害状況や研究内容の 把握が必要であるとともに , I T 技術 に基づ く支援が必 要であることか ら,障害学生支援 における教員の積極 的な関与 と,情報処理センターなど ,I T 技術に詳 しい スタ ッフを抱 える部門による支援室のバ ックア ップが 求め られ る。

2. 障害学生支援 に関する内容の整理 と実現化への対 応

障害学生支援では,少な くとも次の よ うな 4 つの側 面か らの支援が必要である。

1) 入学支援 :入学試験の実施方法 に関す る支援 大学入試センター試験 における障害受験生に対 す る特別措置 として実施 されている問題作成や受 験時の配慮が参考 になる。ただ し, これ らの具体 的な方法 についての情報収集を行 ってお く必要が ある。

2)受講支援 :入学後 の受講科 目に応 じた支援 多 くの大学の場合,当面の間は常時障害学生が 多数在籍す る可能性は少な く, また障害の状況に よって必要 となる配慮 内容が異 なることから,常 にすべての配慮内容を準備 してお くことは困難で ある。 したがって,実際の支援 においては,他の 大学等 において実施 されてきた支援 内容を把握し ておき,先行履修登録等 によ りニーズが生 じた際 に,迅速 に対応で きる体制を整備 してお くことが 必要である。

3) 研究支援 :図書館の利用,情報収集,論文執筆 における支援

院生の場合 には,特 に論文作成に関連す る様々 な支援が必要 とな り, しかも専門的な支援内容が 含 まれ る。 このため,所属す る研究室の教官によ る支援が重要であるが,専攻や研究室の院生によ るボランテ ィアの確保 も必要である。 また,特に 研究の琴施においては , I T を活用 した支援 も今後 ます ます重要性を増す もの と考 えられ る ( 広瀬, 2 0 01 ,20 0 2 ) 0

4) 生活支援 :通学及 び宿舎での生活 における日常 的な支援

まず大学校舎や宿舎等の動線を検証 し,計画的 な改修が必要である。 また,生活支援では,特に 障害学生の自立を支援す るために, ボランティア の養成 と活用が不可欠である。障害理解 に関する 授業 と連動 させ るな どの工夫 によ り, ボランティ ア学生 と障害学生の双方 にメ リッ トを見出す こと ので きるシステムの形成が望 ましい。

なお,研究支援,生活支援 においては,障害学生の i

非常時における安全性の確保が重要 な課題である。特

に,単独行動を とる可能性のある院生室や図書館の書

庫 などにおいては,聴覚障害者の避難誘導を可能にす

るパ トライ トなどの諸設備の整備が急務である。

(7)

高等教育における障害学生支援 3. 学生支援の実施過程 における手続 きの整備

障害学生支援 を効率 よく実現す るために, また事実 に基づいて支援 を実施 してい くために,一連 の支援手 続きを明確化 してお くことが必要である。具体的 には, 上述 した支援手続 きを進め るために,以下の よ うな書 類様式の整備 を行 い,支援過程 を確実に記録 に残 して おくことが必要である。

1)支援室 に対 して配慮 に関す る最初 の意思表示 を す るための申請書類 と,配慮を必要 とす ることを 証明す るための証拠書類。

2)希望す る配慮 の内容が具体的 に記述 されている 申請書類 と受講科 目の一覧。

3)障害状況や学習 ・研究 内容 に基づ き,適切であ ると判断 された配慮 内容を学生 に伝達す るための 書類。

4)配慮 内容を実現 してい く際に,障害 の状況や個 人的な情報 を どの範 囲の関係者 まで共有 してよい かを確定す るための同意書。

5)適切であると判断 された配慮 内容を学生が授業 者に伝達 した際に,授業者か らその配慮 内容 に対 す る回答を受 けるための書類。

これ らの手続 きは,支援 の実現 における必要最低限 の手続 きである。実際の支援過程 においてほ,支援室 が学生 と授業者 の間にた って話 し合 いの仲介をす るこ とも必要 になる。 また, この よ うな支援手続 きをホー ムページ上 において広 く公開す ることによ り,在学生 のみならず,入学希望者 も入学後 の支援 についての情 報を得 ることが可能 となる。

4. 学生支援実施時の責任の明確化

学生 自身 は支援 に関す る申請 を 自発的に行 う責任が あり,その申請 は事実 に基づ くものでなければならな い。またその申請 に基づいて実施 され る配慮 に対 して も責任を負 う義務があ り,変更が生 じた場合 には速や かに申し出なければならない。 まず, これ らの学生 自 身による責任 内容を明示 してお く必要がある。

このよ うな手続 きを進め る際に最 も配慮すべ きこと は,支援対象が障害のある学生であることである。支 援の実現のためには,障害 に関す る情報 を学生 自身か ら提供 して もら うことになるため,そ こで得た個人情 報を厳重 に管理す ることの責任を支援 に関わ る老全員 が十分に認識 していなければなち ない。

さらに,特別 な配慮 を必要 とす る学生が受講者 の中 にいる場合 には,授業者 はそれに応 じるための最大限 の努力を払 う責任があることも明示 されていなければ ならない。 しか しなが ら,全 ての教官が障害 に関す る

十分 な知識 を持 っているわけではない。 したが って, 支援室が授業者 を支援 した り,障害 に関す る理解 を促 すための ファカルテ ィー ・デ ィベ ロップメソ トの実施 が必要 となる ( 広瀬 ,2 0 0 1 ) 0

また, これ らの ことを明記 した支援室その もののガ イ ドブ ック, 支援 を受 ける学生のためのガイ ドブ ック, 授業者‑のガイ ドブ ックの作成 も必要である。

5. 支援資金の確保 と運用方法

障害学生支援 においては,録音,点訳,手話通訳 な ど,様 々な活動 において実施のための資金が必要 とな る。それ らの資金 を安定的に確保 していかなければな らないが,常 に同 じ支援 内容が要求 され るわけではな く,予算化が困難 な側面 もある。 このため,必要 に応 じて出費で きるよ うに,支援資金を大学が プール して お くよ うなシステムが必要 である。 また,常 に十分 な 資金が得 られ ることは期待で きない ことか ら,募金等 の方法 による収入の増加を図るとともに,学 内に存在 す る物的,人的資源 を有効に活用 してい く努力が必要 である。

Ⅴ. お わ り に

本研究 は,高等教育 に学ぶ障害学生を支援す るため のシステムの構築を 目標 に,その支援 において求め ら れ る実施手順 と支援 内容を明 らかにし, さらにその構 築過程 において必然的に検討が求め られ る諸課題 を整 理 してお くことを 目的 として実施 された。 アメ リカの 大学 における支援 システムに関す る調査 よ り,一連の 支援手順 と支援 内容の概要 を把握す ることができた。

ただ し,調査対象 となった大学 はいずれ も大規模 な大

学であ り,常 に多 くの障害学生が在籍 している状況に

あった。 この よ うなことか ら,今後,地域資源の乏 し

い地方 に位置 し, しか も小規模 な大学 において,同様

の支援を実現 してい くための方策 を検討 していかなけ

ればならない。そのためには ,I T の有効活用 を含めた

検討が必要不可欠であると考 えられ る。 また,本研究

において得 られた成果 は,決 して高等教育 に限定 され

た成果ではな く,初等,中等教育における障害のある

児童,生徒 を対象 とした特別支援教育の実施において

ち,当然配慮 され るべ き内容を含 んでいる。 したが っ

て, さらにこのよ うな検討を進めることによ り,同 じ

小規模 な組織である小学校,中学校 における障害児童,

生徒 に対す る支援体制 についても,その実現方法 を具

体化 してい くことができると考 える。

(8)

大 庭 重 治 拳 考 文 献

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高等教育棟閑における障害者 のた めの学習支複 に関す る FD の必要性. メデ ィア教 育開発 セ ンター研究報告 .2 6,1 6 0 ‑ 1 6 9.

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付 記

本 研 究 の 実 施 に あ た り, オ レ ゴ ン大 学 の St e v e

Pi c ke t t氏, レ イ ン ・コ ミュニ テ ィー ・カ レッジ の

Na nc yHa r t 氏, Da vi dLe un g 氏, ワシン トン大学の

Dya neHa yne s 氏, Da nCo mde n 氏を始め として,多

くの方 々よ り多大 なるご協力を頂 きました。 また,メ

デ ィア教育開発セ ンターの広瀬洋子氏か らは調査 に関

す るア ドバイスを頂 きました。 ここに記 して,感謝申

し上 げます。なお,本研究 は上越教育大学研究 プロジェ

ク トの一環 として実施 された ものであ り,調査 に際し

ては上越教育大学学長裁量経費 よ り補助 を受 けた。

(9)

Suppor tSys t e m f ort heSt ude nt swi t hDi s a bi l i t i e si nHi ghe rEduc at i on:

Re f e r r i ngt ot h . eSys t e m oft heUni ve r s i t i e si nt het J ni t e dSt at e s

Shi ge j iOHBA

( Di vi s i o no fSpe c i alEduc a t i o n,J o e t s uUni ve r s i t yo fEd uc a t i o n)

Ⅰ nr e c e ntye a r s ,ma nys t ude n t swi t hdi s a bi l i t i e sha vec o met ogot oauni ve r s i t yi nJ a pa n. Whe na s t u d e n twi t hdi s a bi l i t ye nt e r st heuni ve r s i t y,t heuni ve r s i t yha vet ounde r s t a ndt hes i t ua t i o no fhi s / he r d i s a bi l i t y, a ndt oi mpr o vea ndg ua r a nt e es t ud y/ r e s e a r c he nvi r o nme ntunde re nr o l l me nti nt heu ni ve r s i t y. Fo r t h i sr e a s o n, s o meuni ve r s i t i e sf o r mul a t et hes up po r ts ys t e mf o rt hes t ude nt swi t hdi s a bi l i t i e sa nda r es t r i vi n g f o rt h e i rs uppo r tf r o m al luni ve r s i t y‑ s t a nd po i nt s .Ho we ve r ,e s pe c i al l y,i nt hes mal トs c a l eNa t i o na lUni ve r ‑ s i t i e si nadi s t r i c t , t hec o r r e s po nde nc ei sl a t egr e a t l y, a ndt her e me dyi sc al l e df o r . Ⅰ nt hi sr e s e a r c h, t hea u t ho r v i s i t e dt heuni ve r s i t i e si nt heUni t e dSt a t e si nwhi c ht hes u ppo r ts ys t e mf o rt hes t ud e nt swi t hdi s a bi l i t i e sha ve e s t a bl i s he d,a ndc ol l e c t e di nf o r ma t i o na bo utt hes ys t e m. Fr o mt her e s ul t s , as e r i e so fs uppo r tpr o c e d ur ea nd c o n c r e t ec o n t e nt so fs uppo r twe r ea r r a nge da nds o mes u b j e c t swhi c hs ho ul dbec o n s i d e r e di nc a s e也e u n i v e r s i t ywo ul df o r mul a t et he s uppo r ts ys t e m we r ee xa mi ne d.

KEYWORDS:t heUni t e dSt a t e s ,vi s i t i ngi n ve s t i ga t i o n,hi g he re d uc a t i o n,s t udy/ r e s e a r c hs u ppo r ts ys t e m ,

s t ude n twi t hdi s a bi l i t y

参照

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