アメ リカにおける宗派学校への 公 的助成 と政教分離
‑ 二 つ の連邦最高裁判決 の紹介‑
猪 股 弘 貴
Ⅰ は じめに
日本国憲法
20
条1
項後段,同条3
項および8 9
条 は,いわゆる政教分離原則 に ついての規定である1)。周知のように,この政教分離原則についての重要事件 として津地鎮祭訴訟があり,その最高裁判決 は,神式地鎮祭を市が挙行す るこ とはこの原則 に反 しないとした2)。そ してそこでは,国 (地方公共団体を含む。以下同 じ)と宗教 とのかかわ り方の達意審査基準 として目的効果基準が使用 さ れ,しか もそれは緩やかな基準 として用い られたこともあって,日本国憲法下 の政教分離解釈の達意審査基準 としてふ さわ しくないとの批判が見受 け られ
*本稿 は,北海道大学 アメ リカ公法判例研究会 において報告 した ものを,ま とめ直 した ものである。
1) 近時,政教分離規定 は制度的保障規定 なのか,人権規定なのか とい う形で議論 が展 開 されている。 この点の議論を整理 し,このような論 じ方を批判的 に検討す るもの として,戸波江二 「政教分離原則の法的性格」声部信書先生還暦記念 『憲法訴訟 と 人権の理論』5
2 5
頁以下 は重要である。筆者 は,概ね,戸波教 授 の見解 に賛成 で あ るが,この点 は後の機会 に詳 しく論 じることに したい。さらに,中村睦男 『憲法30
講』91頁以下 ,同 「政薮分離の原則」法学教室86号38
頁以下参照。2)
最大判昭和52
年7
月1 3
日民集31巻4
号5 3 3
頁。その後 ,箕面忠魂碑訴訟 大阪地裁 判 決 (大阪地判昭和57
年3
月2 4
日行裁例集33
巻3
号564
頁),岩手靖国訴訟盛岡地裁判 決 (盛岡地判昭和62
年3
月5
日判時12 2 3
号3 0
頁),箕面忠魂碑 ・慰霊祭訴訟大阪高 裁判決 (大阪高判昭和62
年7
月1 6
日刊時12 3 7
号3
貢)において リーディング ・ケーI スとして踏襲 されている。ただ し,大阪地裁判決 は,津地鎮祭訴訟最高裁判決 を先 例 として引用 しつつ,目的効果基準の実際の用い方 は,最高裁判決 と異 な り,か な り厳格な分離の基準 として使用 していることに注意。さらに,拙稿 「箕面忠魂碑 ・ 慰霊祭訴訟控訴審判決」判例地方 自治40
号40
頁以下参照。〔75
〕た3)。目的効果基準 は,アメ リカ合衆国連邦最高裁判例 によ って確立 されて き た ものであ り,津地鎮祭最高裁判決多数意見 はそれを参考 に した ものと推測 さ れ る。 しか し,近時の研究 によると,この基準 は,アメ リカにお いて,後述 す るように不統一 もみ られるとはいえ,国家 と宗教の分離 について一般 に厳格性 を要求す るもめ として使用 されていることが明 らかにされている4)。本稿 にお いて紹介す る,宗派学校
( par o c hi als c hoo
廿 への公的助成 に関す る二判決 も また,この ことを実証す るであろう5)。 もちろん、両国 にお いて,その使 われ 方 に相違 が生 じて も不思議で はないとの議論があるか もしれない。 しか し,そ の基準 の母国での使われ方 を検討 してお くことは,無益ではなかろ う。 日本国 憲法における政教分離 は,戦前の国家神道6)の反省を踏 まえて,厳格 な分離 を 要求 しているものと考え られ ることか ら,む しろ大 いに参考 になるとい うべ き であろう。 本稿 において,判決 を詳細 に紹介す ることを心掛 けたの は,わが国 で目的効果基準 を使用す るについて,参考 とす るのにで きるだけ便宜 にな るようにとの配慮か らである。
本稿 で紹介す る両判決 において扱われている,宗派学校への公的助成 と政教 分離の問題 は,わが国で は,従来私学助成の問題の中で論 じられ て きた7)。 し か し,宗派系私立学校‑ とりわけその中で も小 ・中学校 ‑ へ の助成 につ い て,政教分離原則 との関わ りをめ ぐって,さほどっめた議論が これ まで な され
3)
特に,福祉的財政援助事件以外には使用すべきではないとの観点からの批判が多い。たとえば,高柳信一 「国家と宗教‑ 津地鎮祭判決における目的効果論の検討」法 学セミナー増刊 『思想 ・信仰と現代』10貢以下,横田耕一 「地鎮祭と政教分離の原 則 (津地鎮祭訴訟
)
」樋口陽一編 『憲法の基本判例』6 3
貢以下参照.4)
声部信書 「国家の宗教的中立性」法学教室8
5号6
貢以下参照.詳 しい文献として, 瀧津信彦 『国家と宗教の分離』がある。アメリカ合衆国における政教分離原則に ついて,熊本信夫 『アメリカにおける政教分離の原則』,および声部 ・同上16
貢注 (1)引用の諸文献を参照のこと。5)
本稿で紹介する二判決を取り上げている邦語文献として,ジェームズ・E・ハーゲッ ト (著)常本照樹 (釈)「アメリカ憲法における宗派学校への公的助成間藤につ.い て」北大法学論集3 7 拳 1
号51貢以下参照。6)
国家神道について,たとえば,村上重良 『国家神道』参照。7)
中村睦男 「私学助成の合憲性」声部信書先生還暦記念 『憲法訴訟と人権の理論』423貢以下参照。
アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
7 7
てきたとはいえない8)。この脈絡で も,両判決 は参考になること大であろ う9)0
ⅠⅠ 二つの連邦最高裁判決 、
A Gr andRapi dsSc hoolDi s t r i c tv ・Ba
lllO)(1)事実の概要
グランド・ラピッズ事件での問題 は,非公立学校 (そのほとんどは宗派学校 である)か ら賃借 した教室において,公費で,非公立学校の生徒 に授業 を提供 する,共有時間
( Shar e dTi me )
と社会教育( Communi t y Educ at i on)
の二 つのプログラムが,合衆国憲法修正1
条 の国教樹立禁止条項( e s t abl i s hme nt c l aus eofFi r s tAme ndme nt )
に反す るかどうかである。共有時間プログラムは,州が要求 しているコア ・カ リキュラムを補 うために, 非公立学校において,通常の授業時間に授業を提供するものである。 提供 され
る科 目には,補習の数学,補習の読書,美術,音楽,体育などが含 まれてい る。 共有時間の教師は,公立学校の専任職員である。
社会教育プログラムには子供およびおとなが自発的に参加 し,通常の授業時 間が終了す るとともに開始 される。 提供 される教科には,工芸,家庭経済,ス ペイ ン語,体操,卒業 アルバム製作などがある。 社会教育プログラムの教師は, 非公立学校の専任職員 (しか もそのほとんどが社会教育課程が開講 される学校
の)であり,公立学校の臨時職員 として活動す る。
両プログラムに参加 している学生 は,これ らが実施 される非公立学校 に通学 している。どの教科を提供 し,どの教室で実施す るかば,非公立学校 の管理者 が決定する。 使用 される教室 にはいかなる宗教的装飾 もなされてはな らず,
「公立学校の教室」であるという掲示 をすることが要求 されている。
8)
同上 ・4 4 3
貢参照。9)
なお,アメ リカにおいて,州憲法の大半が宗派学校への公金支出を禁止す る規定 を 設けていることについて,T・
Ⅰ・エマス ン‑木下毅 『現代 アメ リカ憲法』2 0 3
貢参 照。1 0) 4 7 3U.S.3 7 3,8 7L Ed.Z d2 6 7,1 0 5S.Ct .3 2 1 6( 1 9 8 5) .
納税者達が,両プログラムは国教樹立禁止条項に反するとして,学校 区およ び幾人かの州の公務員を相手に,連邦地裁に訴訟を提起 した。
連邦地裁 は,レモ ン・テス トを適用 し11),プログラムの目的 は世俗的であ る が,効果は明 らかに許容できないとした。また,両プログラムは,公立学校組 織 と宗派学校 との問に,許 されざる程度のかかわ り合いを伴 うと述べた。 そ し て,両プログラムをさらに実施す ることを禁止 した12)。
連邦第
6
巡回控訴裁判所では,意見が割れたが,連邦地裁判決を支持 した13)。( 2)
連邦最高裁判決a
プレナン最高裁判事の法廷意見 14)1 「連邦議会は国教の樹立に関す る法律を制定 してはな らない」 15) とい う 修正
1
条の保障は,国教 として一つの宗教を指定 してほな らないということ以 上のものである。また,宗教の間に差別を設ける政府のプログラムは違憲であるということ以上のものである。国教樹立禁止条項 は,宗教活動に対する後援, 財政援助,および積極的関与を禁止 している。
2
国教樹立禁止条項が州に適用 されることをェパーソン判決 16)が明 らか に して以来,宗教学校 に対す る州の援助の問題にしば しば取 り組んできた。 これ らの事件のすべてにおいて,われわれの目標 は,人々に福祉を提供す る州の能 力を不当に害 さずに,国教樹立禁止条項の乏 しい文言 と広大な目的に意味を与ll )
レモ ン ・テス トは,Le monv.Kur t zman,4 0 3U.S.6 0 2 ( 1 9 71)
にお いて定 式化 された ものである。 レモ ン事件判決では,教会系初等 ・中等学校 の世俗教科 の 教師の給料および教材 の助成が違憲 とされた。熊本信夫 「宗教 と国家 の分離」 英 米判例 百選 Ⅰ公法1 06
頁 以下参照。1 2) Amer i c ansUni t e df orSe par at i onofChur c hand St at ev.Sc hoolDi s
t.ofGr andRapi ds,5 4 6 F. Supp.1 0 71( W. D.Mi c h.1 9 8 2).
1 3) Ame r i c ansUni t e df orSe par at i onofChur c hand St at ev.Sc hoolDi s
t.ofGrandRapi ds,71 8
F.2d1 3 8 9( 6 t hCi
r.1 9 83).
1 4)
この法廷意見 には,マーシャル,ブラックマ ン,パ ウエル,スティー ブ ンス各最高 裁判事が加わ っている。1 5) "Congr es ss hal lmakenol aw r e s pec t i ngane s t abl i s hme ntofr el i gi on".
1 6) Ev e r s onv.BoardofEducat i on,3 3 0U.S.1 (1 9 4
7).宗派学校 の学生 が支 払 うバス運賃を州がその親 に償還す ることを合憲 とした。アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
7 9
えることであった。生徒に教育を提供す ることは,確かに賞賛すべき目的であ る。 しか し,援助が特定の宗教または宗教一般を助長す る効果を持つ とき,ま たは援助によって政府が宗教に不当にかかわ り合 うとき,そのような賞賛すべ き世俗 目的をもって してさえ,宗派学校に対す る政府の疲助を有効にす ること はできない。というのは,宗教 は,精神的慰め,導 き,および感化 を与 え ると ともに,社会を分断 し,優勢 となった特定の宗教ない しは宗派 と違 う信仰 を も つ ものを排除することをもしてきた。惹法制定者達が採用 し,当裁判所 が一貫
して認めてきた解決方法 は,宗教間,および宗教 と非宗教 との間で中立 を維持 す ることを政府に要求す る一方,良心の命ずるままに信仰す る個人の権利 をぬ か りな く保護す ることである。 このようにして,さまざまな信仰および信条 の ための場所を広範 に残す ことができ,政府の側においていかなる一つの団体 に もかたよらないことを示 し,支持者の熱意 と教義の魅力によって栄えさせ る姿 勢を政府が保持す ることができる。
3
レモ ン事件判決において初めて述べ られた三基準 は,この領域 における 検討の指針 となる。 これ らの基準 は,憲法上の審査を正確に限界づけるもので はな く,国教樹立禁止条項の目的が損われているかを判断する指針である。 レ モ ン・テス トでは,特定の州の行為が国教の樹立 に関す る不通切な法であるか ど うか を決 す るにつ き,目的( pur pos e)
,効果( e f f e c t
),か かわ り合 い( e nt angl e me nt)に注 目す る
?4 学校助成事件において しば しばそ うであるように,本件 において,第‑
の基準 (目的基準)に関 して問題 はない。
5
プログラムが遂行 される学校の性質か ら,われわれの検討 は始め られな ければな らない。援助を受ける41
の私立学校の うち,4 0
が宗教学校である。 当 該宗教学校では,学校の存在理由である宗教伝道 とともに世俗教育が行われる。学校内において,両者 は不可分である。
「本件において
,41
の学校のうちの4 0
が,このように 『広範に宗派的』であ ることを前提にす るな ら,宗教学校 において遂行 されている,異議 を申 し立 て られている公立 一学校プログラムは,三つの異なった仕方で,許 されざ る宗教の助長 とな りうる。第一に,プログラムに加わっている教師達 は,意図的 にま たは不注意に,特定の宗教教義や信念 を教化することに関 るか もしれない。 第 二に,プログラムは,政府 と宗教 との間の重大な象徴的結合を提供す るか もし れない し,それによって‑ 少な くとも感受性 の強い若者 の目には‑ 学校 に 影響 している宗派に,政府権力による支持を与えていると映 るか もしれない。
第三に,プログラムは,援助を受 ける学校の重要な宗教伝道に許 されざ る補助 金を提供することによって,直接的に宗教を助長する効果をもちうる
。
」 17)6
国教樹立禁止条項 は,政府の援助によって,あるいは政府 の後援 によっ て,信仰を教化することを絶対 に禁止する。 もしそのような教化が遂行 された なら,腐食作用を有す る世俗主義によって,信仰が腐敗 させ られ る一方,国家 か らのいかなる強圧か らも自由に,自発的に,何を信 じるか (あるいは信 じな いか)を決定する個々人の権利に壊滅的な効果を与える。Me e kv.Pi t t e nge r
事件で18),当裁判所 は,非公立学校 の構内 において,捕 習授業,ガイダンス,およびテス ト等の業務を提供す るために,州 の専門職員 を派遣することとしている法令を無効に した。そのようなプログラムは,広範 な,垂削 1,継続的な州の監視に服 さなければ,州の後援 による教員が,教会立 学校の宗教伝道を援助するという受 け入れがたい危険を招 くであろう。教師は, 州か ら給料を支払われているとはいえ,彼 らの置かれた状況のもとで,宗教 の 許 されざる助長 となる可能性がある。Me e k
事件におけるプログラムは,もし 十分に監視 されなければ,州による援助によって教化するという多大な危険を 伴 うであろう。両プログラムは,
Me e k
事件におけると同様の欠陥を持っ 。 す なわち,社会 教育プログラムに関 して,連邦地裁が判示 したように,非公立学校 か ら貸 りた 施設で行われるほとんどすべての課程 は,同 じ非公立学校の専任教師によって 遂行 される。 これ らの教師達‑ その多 くはその宗派の支持者であ り,教団 に 奉仕 したいが故に教鞭を執 っているのであるが‑ は,通常の授業時間 におい1 7 ) 4 7 3U.S.
at3 8 5.
1 8 ) 4 2 1U.S.3 4 9( 1 9 7 5 )
アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
81
て,学生 にその宗派の教義や信仰を教化す ることを期待 されている。 ところが, このプログラムにおいては,これ らの教師達 は,授業時間が終 るやいなや宗教 的確信をひとまず忘れ,全 く世俗的社会教育に従事す ることがで きる,とい う
ことが前提 になっている。 しか も,同 じ宗教学校 の学生の前で,同 じ宗教学校 の教室でそうす ることを期待 されている。上告人自 ら述べているよ うに,社会 教育の授業 は,宗教的内容 に関 して特に監視 されない。社会教育プログラムに 雇われた宗教学校 の教師達が,彼 らの世俗的使命 を誠実 に遂行す ることは疑 い ない。 しか し,公然 に しろ秘かに しろ,通常の授業時間に期待 されて いる宗教 伝道が,放課後に教える世俗的授業 に入 り込む実質的危険が存在す る。危険は,
自らの任務 を宗教への奉祉 に故意 に転化 Lやす いか らではな く,む しろ環境 の 圧力によって通常 のコースか らそれるおそれがある故 に生ず る。
共有時間プログラムは,社会教育プログラムとその仕組にい く分違 いがあ る とはいえ,州の後援 による教化の危険性を有す る。 両プ ログラムの最 も際立 っ た相違 は,以下の点 にある。 すなわち,共有時間プログラムの教 師 のほとん ど は,公立学校の専任教師‑ しか もその うちのわずかの人達のみが以前宗教学 校 に勤務 していた‑ なのに対 して,ほとんどの社会教育 の教 師 は,専任 の宗 教学校の教師である。 しか し,宗教的内容に関 して,共有時間課程 を監視す る 試みがなされていないので,両プログラムの問にこのよ うな相違があるとはい え,
Me e k
事件 における判示 は,共有時間に関 して もあてはまる。 共有時間 の 教師は,宗教学校 において,宗教学校の通常の授業時間に提供 され る教科 と密 接不可分な教科を教えている。 このプログラムにおける教師は,教育が宗教伝 道 に絶対不可欠な部分であ り,信仰を促進 させ ろ雰囲気が常に維持 されてい る 学校 において,社会教育の教師達以上に重要な教育業務 を行 っている。 学生は, 提供 され る教育を学校の宗教伝道の脈絡で受 けとめる丁方,教師 は,そのよ うな雰囲気 において,秘かに (あるいは公然 と)教育を彼 らが教えている環境 に 一致 させ る可能性がある。 州が作成 した標準 テス ト
( Commi t t e ef orPubl i c Educ at i onandRe l i gi ousLi be r t yv.Be gan,4 4 4U.S.6 46 ( 1 9 80))
,または診断業務
( Wol manv.Wal t e r,43 3U.S.2 2 9( 1 9 77
))のよ うな,当裁判所が支持 した援助の型 と違 って,この環境において遂行 されるプログラムには, 宗教教育 目的のために使用 される実質的危険が存在する。
7 「国教樹立禁止条項 は,特定の信仰を若者に教化するための,直接的な 州の資金提供以上のものを保護 していることを,われわれが扱 って きた諸事件 において認めて きた。政府が,その権限 と責任 とを,いかなる‑ あるいはす べての‑ 宗教教義 とも,密な同一化を促進す るとき,特定の宗教教義 を教化 しようとするのと同 じだけ有効に,政府 は宗教を助長する。 もしこの同一化 に よって,政府による宗教の是認 または否認の趣旨を伝えるな ら,国教樹立禁止 条項の核心 は害 される。」19)
効果基準の重大な関心の一つは,以下のことにある。 すなわち,異議 を申 し 立て られた政府の行為 によって生ず る,教会 と国家 との象徴的結合
( s ymbol i c uni on)が,当該宗派の支持者によっては支持 と受 けとられ,非支持者 によっ
ては否認 と受 けとられるのに十分であるかどうかということである。 効果に関 す るこの種の検討 は,政府の趣意を受 けとる市民の多 くが,形成期 にあ る子供 達であるとき,特別に注意 して行われなければならない。教会 と国家 との結合 の象徴主義( s ymbol i s m ofauni on)
は,その経験が限 られ,その信仰が自 由な,自発的な選択であるとともに,環境の作用で もある,若年 の子供達 に特 に影響 しがちである。「本件で異議を申 し立て られたプログラムにおいて,宗教学校 の学生達 は,, 宗教学校 と 『公立学校』の授業の間を移動 しなが ら通常の授業 日を過 ごす。両
タイプの授業 は,同 じ宗教学校の建物で行われ,大部分同 じ宗派 の信者 である 学生によって構成 されている。 この環境において,たとえ 『公立学校』の授業 が宗教の教化か ら首尾 よく免れたとして も,学生 は,宗教学校の授業 と 『公立 学校』の授業 との間の決定的相違を見分けることができないであろう。」20)この 効果,すなわち,政府 と宗教 との象徴的結合 は,国教樹立禁止条項Qの もとで許
されざる効果である。
1 9) 4 7 3U.S.at 3 89
2 0) I d.at 3 9
1.アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
8 3 8
「エパーソン事件33 0U S 1,91L Ed7 71,6 7SCt5 0 4,1 6 8ALR 1 3 92( 1 9 47)
において,当裁判所 は次 のように述 べた。
『多 少 にかかわ らず, いかなる額の税金 も,宗教を教え実践す ることに使 うため,何 と名 づ け られよ うと,またどのような形態をとろうと,いかなる宗教活動や教育 を も援助す る ために賦課 されえない。 』I d. ,at1 6,91
LEd 71
1,6 7 S Ctat5 0 4,1 6 8 ALR 1 39 2
」2
1)一つの例外を除いて22),その後の事件 において,州が直接初等 または中等宗教学校 に公金を支払 うことを無効 として きた。
現金 の支払 いを別 として,当裁判所 は,宗教学校の世俗活動を援助す る計画 を二つのカテゴリーに区別 してきた。第‑ のカテゴリーとして,宗教学校へ の 間接的
( i ndi r e c t )
,遠回 しの( r e mot e )
,付随的( i nc i de nt a
l)利益を付与す る 法律 は,この理由のみでは達意 とな らない,と当裁判所 は述 べて きた。
「この ような 『間接』援助事件において,主 に世俗的目的を遂行す るために主 に世俗 的手段 を使用 し,従 って,宗教 を助長す る 『主要な効果』 は兄い出 され なか っ た。 このような理由で,当裁判所 は,非公立学校学生 に世俗教科書 を貸与す る プログラムBoar dofEduc at i onv.Al l e n,3 9 2U S2 3 6,2 0L Ed2 d1 0 60, 8 8SCt1 92 3( 1 9 6 8);s e eal s oWol manv.Wal t e r ,433U S,at2 3 6 ‑ 2 3 8
,5 3LEd2d71 4,9 7SCt2 5 93,5Ohi oOps3 d1 9 7;Me e kv.Pi t t e nge r ,4 21 U S,at3 5 9 ‑ 3 6 2,9 5SCt1 7 5 3
,並びに非公立学校生徒 のためにバ ス輸送 を す るプログラムを支持 して きたEve r s onv.Boar dofEduc at i on,s upr a。 」2 3 )
第二 のカテゴリーとして,当裁判所 は,宗教学校 を,直接 ,実質 的 に援助す る型 を,国教樹立禁止条項 によって禁止 されるとして きた
。
「このよ うな理 由 で,当裁判所 は,次のような州のプログラムを無効 として きた。 すなわ ち,千2
1) Id.at3 9 2.
2 2 ) Commi t t e ef orPubl i cEduc at i onandRe l i gi ousLi be r t yv .Re gan,4 4 4 U ・S ・6 4 6( 1 9 8 0 )
・州が作成 した各種 テス トの実施,採点,記録 の保存,および 報告等の業務について,非公立学校‑の実費償還が合憲 とされた。本件q)全訳 とし て,拙訳 「宗教学校 に対す る財政援助 に係 るアメ リカ連邦最高裁判例‑Com̲
mi t t e ef orPubl i cEduc at i onandRe l i gl OuSLi be r t yv・Be gan,4 4 4U.S.
6 4 6( 1 9 8 0 ) ‑
」北海学園大学法学研究2 0
巻1
号2 9
貢以下参照。2 3 ) 4 7 3U.S.at3 9 3.
供が宗教学校 に通学 している親 に対す る授業料助成
( t ui t i ongr ant s)
および 税金控除( t axbe ne f i t s)
プ ログラムs e eSl oanv.Le mon,41 3
US82 5,3 7 L Ed2d93 9,93S Ct2 9 82
(1 9 73);Commi t t e ef o rPubl i cEduc at i onv.
Nyqui s t ,s upr a,at7 80‑ 79 4,3 7L Ed2 d9 4 8,93SCtat2 9 55
,並 びに宗 教 学 校 に お い て 使 用 さ れ る教 材 の 『貸 与 』 プ ロ グ ラ ム で あ るS e e Wol man v. Wal t e r ,s upr a,at2 4 8‑ 2 51 ,53L Ed2d71 4,9 7SCt2 5 9 3,5 Ohi oOps3 d1 9 7;Me e k v. Pi t t e nge r,s upr a,at3 6 5,4 4L Ed2 d21 7,9 5 SCt1 7 53 。
」24 ) sl oan
事件 とNyqui s t
事件 において,援助 は,親 に対す る も のであって,直接宗教学校に対す るもので はなか った。 また,Wol man
事件 とMe e k
事件 において,援助 は,公金の直接的支出とい うよりは,本来的に補 助的な ものであった。 しか し,これ らの型態 における相違 は,効果 において宗 教学校‑の直接的助成 と区別がっかないプログラムを救済す るのに十分ではなか った。
以上のように,当裁判 は,助成であるということだけで は,援助 プ ログラム を無効 に して こなかった。 各事件 において問題なのは,提供 される援助 の効果 が,直接的,実質的か,それとも間接的,付随的か とい うことであ る。 憲法 に おける多 くの問題同様 ,程度の問題である。
宗教学校 は,特定の宗教的観点を促進 させなが ら,学生 に世俗教育 を提供す るという二重の機能を持 っている。
Me e k
事件 とWol man
事件 において,戟 育設備や教材を宗教学校に貸与す る州のプログラムを,宗派学校 の主要な,宗 教 に指向 された教育を助長す るとい う理由で違憲 とした。 本件で異議を申 し立 て られたプログラムは,教育設備や教材 に加えて教師を派遣す る ものであ り, 宗教 を助長す る同様の効果を持っ 。 宗教学校 の教育活動 に対す るこの種の直接的援助 は,国教樹立禁止条項 によって明確 に禁止 される,宗教学校 に直接現金 を支出す る規定 と区別す ることがで きない。
上告人 は,ここでの援助 は
Al l e n
事件 にお ける教科書同様 ,宗教学校 で は な く,主 に学生 に流れ ると主張す る。宗教学校へのあ らゆる援助 は,究極 的 に2 4) I d.
at3 9 4.
アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
8 5
は学生に流れるのであ り,もし上告人の主張が受 け入れ られ るな ら,イデオ ロ ギーにかかわ らない宗教学校‑のすべての援助の型が有効 となるであろう。 し か し,
Me e k
事件 において,宗教学校への教材の貸与を達意 とし,Wo l man
事 件 において,類似 のプログラムを,個々の学生への援助 として隠蔽す ることに よって救済す ることを拒絶 した。本件での援助 は,教材だけではな く,宗派学 校 の建物 における教師による授業の提供 を も含む ものであ り,宗派学校を直接 かつ実質的に援助す る主要な効果を持っ 。 本件のよ うに,学生への援助 と学校 への援助 との間に意味のある区別がで きないところでは,個人‑の貸与 との考 えは,見れ透いた擬制である。上告人 はまた,社会教育および共有時間プログラムは,宗教学校 において以 前 には提供 されていない,学校規則あるいは州の規定が要求 していない教科 に よって,カ リキュラムを補 う故 に,本件 における助成金の効果 は重要 で はない と主張す る。 しか し,これは決定的ではない。第‑に,公立学校組織 が これ ら の教科を申 し出なか ったな ら,宗教学校が これ らのい くつか,あるいはすべて を開講 したかどうか知 る手立てはない。従 って,通常 のカ リキュラムを補充す ること
( s uppl e me nt )
と代替す ること( s uppl ant)
との相違 は,上告人が申 し立てる程明確ではない。第二 に,これ らのプログラムたおいて提供 され る教 科 は,宗教学校 にとって目新 しいものとはいえ,それ らの一般的主題 ,す なわ ち,読書,数学等々は,カ リキュラムの一部だ ったのであ る。 従 って,科 目の 補習的性格にもかかわ らず,国教樹立禁止条項 との関わ りを誘発す る。第三に,そ して最 も重要 なことは,上告人の主張を認めるな らば,公立学校 が宗教学校 の全世俗教科を漸次肩代 りす ることが可能 となる。 というのは,宗教学校 は既 存の教科 を中止 し,そ して
1
,2
年後,同 じ内容 を社会教育課程 あ るいは共有 時間課程 によって代替す ることがで きるか らである。9
「われわれの結論 は,異議 を申 し立て られたプログラムは,三点 にお い て宗教を助長す る効果をもっ ということである。 州 によって給料を支払われる 教師達 は,彼 らが働 く宗教学校 に深 く浸透 した宗派的性格 に影響 され,秘 かに あるいは公然 と,公費で学生達 に特定の宗教教義を教化す るか もしれない。宗教学校の建物における州の世俗教育の提供に本来的な,教会 と州の象徴的結合 は,学生および公衆一般に,宗教 に対す る州の支持の趣旨を伝達す る危険があ る。最後 に,プログラムは,世俗教科を教える責任の実質的部分 を肩代 りす る ことによって,結果的に宗派学校の宗教作用を助成す る。 これ らの理由によっ て,社会教育および共有時間プログラムは,宗教を助長する 『重要 ない し主要 な』効果をもち,従 って修正
1
条の国教樹立禁止条項の命令を侵害す る。非公立学校 は,アメ リカの教育の発展において重要な役割を演 じて きた し, 親および子供 は,公立学校 と宗派学校の間で選択する権利を持っ ことを以前 か
ら認めてきた
。Le mon事件において当裁判所 の長官が述 べたよ うに Le mo n v.Kur t z ma n,s up r a,at6 2 5,2 9L Ed2 d7 4 5,91SCt21 0 5
,『教会に関連した初等および中等学校が,われわれの国民生活において果 している役割 をさ げすんでいると解 されるようなことを,われわれは何一つ述べたことはない。
それ らの貢献 は多大な ものであった し,そうであ り続 けている。』 しか し,国 教樹立禁止条項 は,『政府 と宗教の結合 は,政府を破壊 し,宗教を堕落 させる方 向に向か うという信念 に依拠 している
』En ge lv.Vi t a l e ,3 7 0U S,at43
1,8LEd2 d6 01 ,82SCt1 2 61 ,2 00hi oOps2 d3 2 8,8 6ALR 2 d1 2 85
。従っ て,『宗教 は,個人のための,家庭のための,そ しそ私人が選択 した団体 のため の私事でなければならず,幾分の接触やかかわ り合いは不可避であるとはいえ, 境界線が引かれなければならないことを憲法 は命 じている』Le mo nv.Kur t z ‑ ma n,s u pr a,at6 2 5,2 9L Ed2 d7 4 5,91SCt2 1 0 5
0 『支配的な憲法基準が 堅固に定着するようにな り,われわれが検討 した広範な輪郭が今や十分明確 に されている』Co mmi t t e ef o rPubl i cEduc at i on v.Nyq ui s t ,41 3U S,at 7 61
,3 7L Ed2 d9 4
8,9 3SCt2 9 5 5
ので,これ らの限界 の位 置/は,今 や 全 く明 らかになり,そ して控訴裁判所 を支持す ることを要求 しているのである。」.25)
b バーガー最高裁長官の一部同意,一部反対意見
レモン事件判決のもとで, グランド・ラピッズの社会教育プログラムが国教
2 5) I d. a t3 9 7 ‑ 8 .
アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
β7
樹立禁止条項 に反す るとい う法廷意見に同意す る。共有時間プログラムに対 し て,Agui
l ar
事件判決 において述べ る理由で反対す る。C オ ッコンナー最高裁判事の一部同意,一部反対意見
Agui l ar事件判決の反対意見において述べた理由で,グラン ド・ラピッズの
共有時間プログラムは,宗教を助長す る許 されざるものであるとい う法廷意見 に反対す る。共有時間プログラムに従事す るのは公立学校 の専任教師であ り, 学生達 に宗教 を教化 しようとしたことを示す記録 は何 もない。1 3
人の共有時間プログラムの教師が,宗派学校 に勤務 したことがあるだけであ り,その うちの ほんのわずかが以前 に勤めていた宗派学校で教えるのである。 これ らのわずか な数の教師の経験 というものが,共有時間プ ログラムの現実の効果 と して,公 費で宗教を教化す る危険を増大す るとはほとんど考え られない。 しか し,社会 教育プログラムについては,国教樹立禁止条項を侵害す るという法廷意見 に同 意す る。 宗派学校 における社会教育課程 は,ほぼ現 に宗派学校の専任であ る教 師が教える。 さらに,社会教育プログラムの管理者 は,概ね当該学校 の校長 で ある。専任の宗派学校の教師が,宗派学校の監督の もとで宗派学校 の学生 に世 俗教科 を教えるために公費を受領す るとき,プログラムは教会立学校の宗教 目 的を助長す る現実的効果を持つ。
d レー ンキス ト最高裁判事の反対意見
Wal l ac e
事件判決 26)の反対意見において述べた理由で,法廷意見に反対する。グランド・ラピッズ事件 において,法廷意見 は,Eve
r s on事件および Mc Col l um
事件27)に依拠 し,これ らの事件が依 り所 とした 「壁」 とい う誤 った前提 を議論 す ることを していない。それによって,法廷意見 は,国教樹立禁止条項1 5 0
年 の歴史 に目をっむっている。法廷意見 は,政府 と宗教 との間の象徴的結合によっ て許 されざる効果を生 じると判示 し,レモ ン ・テス トの効果基準 に内容 を与 え よ うと して いる。 しか し,数 学 ,ス ペ イ ン語l体 育 を教 え る ことが,Lynch
2 6) Wal l anc ev.Jaf f r e e,4 7 2U.S.3 8( 1 9 8 5).
2 7) Mc Col l um y・Boar dofEduc at i on,3 3 3U・Sl2 0 3( 1 9 4 8),
公立学校の中で 行われる宗教教育プログラムを違憲 とした。事件 28)において支持 された市 のキ リス ト像
( c r e c he)
,あ るい はMar s h
事 件29)において支持 された議会専属牧師( l e gi s l at i vec hapl ai n)
より,より大 きな象徴的結合を生 じるかは疑問である。 グラン ド・ラピッズ事件の最 も不幸 な 帰結 は,公立学校教師の誠実性
( i nt e gr i t y)
を論難す ることになることである。絶えざる監視を必要 とす る,宗教教義の熱心な伝導者 と考え られているのであ る。 グランド・ラピッズおよびニューヨークのプログラムは数年にわたって遂 行されてきたが,本件の記録には宗教が教化されようとした例を示すものはない。
e
ホワイ ト最高裁判事の反対意見30)Le mon
事件判決 とNyqui s t
事件31)の反対意見 で述 べたよ うに,私立学校 への州の援助事件 における当裁判所の国教樹立禁止条項 の解釈および適用に反 対 してきた。 これ らの反対意見 で述 べたよ うに,Le mon
事件 やNyqui s t
事 件 のような事件での当裁判所の判決 は,修正1
条 によって要求 されず,国の長 期的利益に反す ることを確信 してい る。 同様 に,Gr and Rapi ds
事件 およびAgui l ar
事件で問題 とされてい る州 の行為 は,国教樹立禁止条項 に違反 しない。
B Agui l arv .Fe l t on
32)(1)事実 の概要
ニュー ヨーク市 は,宗派学校において教育活動 に携わる公務員の給料 を支払 うために,連邦資金を使用 した。 ここでの問題 は,これが修正
1
条 の国教樹立 禁止条項を侵害す るかどうかである。2 8) Lync hv.Donne l l y,4 6 5日.S.6 6 8( 1 9 8 4) . 2 9) Mar s hv.Chambe r s,4 6 3U.S.7 8 3( 1 9 8 3) .
3 0)
ホワイ ト最高裁判事 は,Gr andRapi ds
お よびAgui l ar
両事件 につ いて単一 の反対意見を提出 している。3
1) Commi t t e ef orPubl i cEduc at i onv.Nyqui s t ,41 2U.S.7 5 6( 1 9 7 3).
非公 立学校の施設の維持 ・修理費の助成 ,親 に対す る痩業料の一部償還,および所得控 除を違憲 とした。3 2) 4 7 3U.S.4 0 2,8 7L.Ed.2 d2 9 0,1 0 5S.Ct .3 2 3 2( 1 9 8 5) .
アメ リカにおける宗派学校‑の公的助成 と政教分離
8 9
本件において問題 となっているプログラムは,1
9 6 5
年の 「初等および中等教 育法」の第1
章( Ti t l e I oft heEl e me nt ar yandSe c ondar yEduc at i onAc t of1 9 6 5)
として制定 されたものであり (以下 「第1
章プログラム」とい う), 低所得家庭の教育的 に恵 まれない子供達 のために,教育長官( Se c r e t ar y of Educ at i on)が地方教育機関 ( l oc ale duc at i onali ns t i t ut i ons )
に財政援助 を す る権 限 を認 めて い る。 資金 は,地方教育行政 機 関( l oc ale duc at i onal age nc i e s )が提案 し,州教育行政機関 ( s t at ee duc at i onalage nc i e s)が承認
したプログラムに支出される。プログラムは,次の条件を満たさなければな ら ない。すなわち,子供 は,教育的に恵まれない条件にある者 に限 り,低所得家 庭の密集地域に住んでいなければな らない。そ して,プログラムは,当該援助 がなされな くて も遂行 されるものを補充するものであ り,代替するものであ っ てはならない。
1 9 6 6
年以来,ニューヨーク市 は,第1
章プログラムの教育業務 を宗派学校 の 構内において,宗派学校の学生に提供 してきた。 とれ らの学校で遂行 され るプ ログラムには,補習の読書( r e me di alr e adi ng)
,読む技術( r e adi ng s ki l l s)
, 補習の数学,第二外国語 と・しての英語,ガイダンスを含んでいる。 これ らのプログラムは,公立学校の専任職員 (教師,ガイダンス ・カウ ンセ ラー,心理分 析家,精神科医およびソーシャル ・ワーカー)によって遂行 される。各職員 が 宗派学校において費やす時間の総計 は,特定のプログラムにおける学生数,こ れ らの学生のニーズによって決められる。市の非公立学校援護局
( Bur e au of Nonpubl i cSc hoolRe i mbur s ● e me nt )が教師 の割当てを し,教師 は, 1
ヵ月 に 少な くとも1
回予告な しに現場視察官( f i e l dpe r s onne
l)の監督をうける。 そ して,現場視察官 は,計画調整者( pr ogr am c oor di nat or s )
‑ 彼 らもまた宗 派学校における第1
章授業を監視す るために予告な しに視察 にで る‑ に報告 す る。 プログラムに携わる専門職員は,私立学校の中で行われる宗教活動 にか かわることを禁 じられ,教室内の宗教にかかわるものを取 り除 くように命 じら れている。 プログラムに使用 されるあ らゆる教材や用具 は,政府か ら提供され,これ らのプログラムにのみ使用 される。専門職員 は,学生の選抜に責任 を負 う
のみである。専門職員 は,私立学校職員 と接触す るのは最小限にす るよ う指示 される。宗派学校の管理者には,公立学校職員が使用す る教室か らあらゆる宗 教的象徴を一掃することが要求 されている。
1 9 7 8
年に,6
名の納税者が,ニューヨーク市 によって遂行 され る第1
章 プ ロ グラムは,国教樹立禁止条項を侵害す ると申 し立てて,連邦地方裁判所 に訴訟 を提起 した。 これ らの納税者,すなわち本件の被上告人達 は,宗派学校 の構内 での教育を含んでいるプログラムに資金を提供す ることの禁止を求めた。連邦地裁 は,
Nat i onalCoal i t i on f orPubl i c Educ at i on and Re l i gi ous Li be r t yv.Har r i s
事件判決33)における証拠記録に基づいて,被告 の主張 を支 持する形で略式命令( s ummar yj udgme nt)
を出 した。連邦第
2
巡拭控訴裁判所 は,全員一致で破棄 し,宗教学校 に教師等 を派遣す るために使用 される連邦資金 は,国教樹立禁止条項 に反す るとした34)。(2)
連邦最高裁判決a
プレナ ン最高裁判事の法廷意見35)1 Gr andRapi dsSc hoolDi s t r i c t sv.Bal
l事件判決において,連邦最高 裁 は,本 日,グランド・ラッピズ公立学校区によって遂行 される二 つの補習 プ ログラムを,国教樹立禁止条項のもとで無効 とした。このプログラムで は,撹 業 は,私立学校か ら賃貸 した教室において,公費で私立学校の学生 に提供 され る。 本件において異議を申 し立て られたプログラムは,グランド・ラッピズ事 件において検討 したプログラムと非常 に似ている。両者 ともに,公費を支給 さ れる教師は,私立学校の建物 において,もっぱ ら私立学校の学生 によって構成 される授業で教える。両者において,私立学校の圧倒的多数 は宗教学校である。両者において,専門職員だけではな く,プログラムの遂行 に必要 なあ らゆ る教
3 3 ) 4 8 9F.Supp.1 2 4 8( S.D. N. Y.1 9 8 0 ) .
3 4) Fe l t on v. Se c r e t ar y,Uni t e dSt at e sDe par t me ntofEduc at i on,7 3 9F.2 d 4 8( 2 dCi r.1 9 8 4) .
3 5)
この法廷意見には,マーシャル,ブラックマン,パウエル,スティーブンス各最高裁判事が加わ っている。
アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
9 1
材や設備が提供 される。最後に,両事件において,教師は公立学校組織 のみの コントロールのもとに置かれる公立学校職員 とされる。
上告人 は,宗教学校 における第
1
章授業 に宗教的内容が含まれないかを監視 する制度を採用 して きた点をあげ,ニューヨークの場合をグランド・ラッピズ の場合 と区別 しようとして きた。本件における監督 は,宗派学校の宗教教義を, 意図的にせよ無意識 にせよ,教化す るのを妨げる助 けとなるであろう。 しかし, 上告人の主張 は失敗に帰す る。なぜならば,ニューヨーク市によって確立 された監督制度 は,必然的に教会 と国 との過度のかかわ り合い‑ 国教樹立禁止条 項が効果基準 とは別に関心がある‑ を生 じる。 宗派学校へ の州 の援助が,た とえ宗教を助長す る主要な効果を持たないときでさえ,援助遂行中の教会 と州 との相互作用の故に国教樹立禁止条項を侵害 しうる。
「州 は援助の遂行 において,教会 とあまりに密接 にかかわるようにな るべ き でないとい う原理 は,二つの関心事 に根差 している。 州が,宗教的意義 のある ことにおいて,所定の宗派に巻 き込まれるようになるとき,かかわ り合 いの根 底にある政府の目的が主 として世俗的な ものであるときでさえ,この宗派の非 支持者の信教の自由は害 される。 さらに,宗派の支持者でさえ,神聖 な ものへ の政府の侵入 によって,その自由が制限される
。
『宗教 と政府 の両者 は,それ ぞれが各 自の領域の中で他か ら自由であるとき,それ らの高尚な目的を最 もよ く達成するように働 くことができるとの前提に,修正1
条 は依拠 している。』Mc Col l um v.Boar d ofEduc at i on,333 U S 2 03,21 2,92 L Ed 2d 6 49, 6 8SCt461,2ALR 2d 1 33 8
(1 9 48) J
36)
2
控訴裁判所が認めたように,小 ・中学校 は,Roe me r
事件判決37),Hunt
事件判決38),およびTi l t on
事件判決 39)において問題 とした大学 とは異なる。3 6) 4 7 3
U.S.at4 0 9 ‑ 1 0.
3 7) Roe me r v. Mar yl andPubl i cWor ksBoar d,4 2 6U.S.7 3 6( 1 9 7 6) .
高等 教育機関に対す る非宗派 目的のために使用される助成金を合意 とした。3 8) Huntv.Mc Nai r,41 3 U. S.7 3 4( 1 9 7 3) .
3 9) Ti l t onv.Ri c har ds on,4 0 3
U.S.6 7 2( 1 9 7
1).世俗 目的のために用い られる大 学の施設の建設費の助成を合憲 とした。宗派性が深 く浸透 していない大学 と異な り,本件 に関わ りのある学校 の多 くは, 宗教的価値 の教化が実質的目的である宗派学校である。 さらに,本件 と類似 し
た教育業務 を無効 に した
Me e k
事件判決 は,次の事実 を根拠 と した。 す なわ ち,教育が宗派伝道 の必要不可欠の部分であ り,信仰を促進す るための雰囲気 が常 に維持 されている学校 において,教師達 は教育業務 を遂行 していることで ある。 控訴裁判所が判示 したように,本件 に関わ りのある学校 にはこのよ うな 性格が備わ っている。 学校の多 くは,教会か ら基金を受領 しそ して教会 に報告 し,教会の宗教行事 に参列す ることを要求 し,学校 日または授業時間 をお祈 り で開始 し,その宗派の信者 を優先的に入学 させている。なお,援助 を受 ける学 校 の大多数 を占めるカ トリックの学校 は,地域教会( l oc alpar i s h)
の一般的 監督および統制下にある。3
「従 って,Le mon
事件判決およびMe e k
事件判決で禁止 されたかかわ り合 いの決定的要素が本件 にみ られる。第一に,上述 したように,援助 は宗派 性が浸透 した環境 においてなされる。 第二 に,援助 は教師を派遣す る形態 でな されるので,宗教伝道がなされていないことを保証す るために,継続的 な監督 が必要 で ある。C
f.Le mon,40 3U S. ,at61 9,2 9LEd2 d7 45,91SCt ,at 21 0 5,Wi t hTi l t on,s upr a,at6 8
8,2 9L Ed 2 d79 0,91S Ct ,2 0 91,and Roe me r,s upr a,at7 65,49L Ed2 d1 7 9,96SCt2 33 7.
要す るに,ニューヨークの第 1章プログラムが及ぶ範囲 と継続性 は,援助 を受 ける宗派学校 にお いて,永続的,広範 な州の関与を必要 とす る。」40)
宗派学校 におけるこのように広範な公権力による監視 は,過度のかかわ り合 いの禁止の根底にある,国教樹立禁止条項 の諸価値を侵害す る。 州の公務員 は 宗教学校を定期的に訪問 し,監視 しなければな らず,第
1
章授業 にお いて,餐かにまたは公然 と宗教的事項 に関わることに対 して油断な く警戒 しなければな らない。さらに,州 の公務員が,何が 「宗教的象徴」 であ るか,従 って,第 1 章授業 に持 ち込まれてほな らないかを決定 したな ら,宗教学校 はこれに従わな
ければな らない。要す るに,主要 な目的が特定 の宗教の助長にある宗教学校は,
4 0 ) 4 7 3 U. S.at4 1 2 ‑ 3.
アメ リカにおける宗派学校への公的助成 と政教分離
9 3
宗教思想の侵入を防 ぐために教師や学生を監視す ることが主要な目的である州 の公務員の継続的関与に耐えなければならない。
ここで問題 としている教育プログラムを維持す るために必要 とされる行政上 の協力は,さらにもう一つの仕方 において,国教樹立禁止条項の核心的部分 に あたる利益を害す る。すなわち,公務員 と宗派学校組織 は,スケ ジュール,敬 室の割当,プログラム遂行中に生 じる諸問題,業務の増加要求,プ ログラムに 関わる情報の普及に関す る問題を解決するに際 して一緒に働かなければな らな い。さらに,プログラムは,常勤教師と補習担当教師 (またはその他 の職員 ) との頻繁な接触‑ そこでは,各サイ ドの教師が,個 々の学生 のニーズ,直面 した問題,達成 された結果について報告する‑ を必要 とす る。
国教樹立禁止条項の根底にある目標 は,教会 と国はそれぞれ他の領域 に侵入 す ることをできるだけ妨 げることである,と従来か ら理解 されてきた。分離 は あらゆる接触の禁止を意味 しないが,ニューヨークの第
1
章プログラムを維持 す るのに必要な細部にわたる監視 と行政上の密接な接触 は,継続的,日常的関 係‑ 中立の要請か ら最小限度であることが要求 され る‑ を生 じる。 州 の公 務員による無数の判断 は,微妙で議論の余地のあるものであるが,宗派 には深 い宗教的意味を持ちうる諸事項である。 公務員がこれ らの判断をす るとき,宗 教上の傾向に沿 った政治的分断( po l i t i c ald i vi s i ve n e s s )
が増大す る。 州 の視 察官が宗教学校の廊下を巡回 し,教室での教育を検査す るさまは,政府 による 信仰の世俗化の亡霊以上のものを生ず る。‑ 4 援助の性質,援助を受ける機関,そ して次のような憲法原理,す なわ ち, 州政府 も連邦政府 も,特権の促進を通 じ,または特権の遂行において教会 と過 度 にかかわ り合 うことを通 じて,特定の信仰または信仰一般を推進 または妨 げ てはな らないという原理によって,ニューヨーク市による善意の努力に もかか わ らず,本件のプログラムには憲法上の欠陥がある。
b パ ウエル最高裁判事の同意意見
本件において,宗教学校の活動 に対す る政府のかかわ り合いの危険があま り に大 きい故に,国教樹立禁止条項 に反す るという法廷意見に同意す るが,この
ことは
Gr andRapi ds事件 について もいえることである
。 また,このイ ンタ ングルメン トの危険 は,政治的分断( pol i t i c aldi vi s i ve ne s s )の危 険 によって
増長 される。 すなわち,宗教学校への直接的援助の妥当性 ,および限 られた政 府資金の妥当な配分 をめ ぐって継続的政治闘争を生 じる危険が存在す る。 この 点 は,法廷意見では詳細には論 じられなか ったが,第1
章プログラムお よびグ ラン ド・ラッピズのプログラムがイ ンタングルメ ントを理 由に無効であること の強力な理由となる。第
1
章プログラムは,Lemon事件判決において適用 された効果基準 の もと
で も無効 となるであろう。 すなわち,第 1章 プログラムによってニュー ヨーク に提供 される援助の型 は,補習教育を当該学校に免除す ることによ って,宗派 学校への州の補助金 となっている。 これは,合憲 とな りうる,間接的,付随的 効果の型ではない。 レモ ン ・テス トの効果基準 とイ ンタングルメント基準の相 互作用 によるディレンマについては,承知 している。 当裁判所の諸判決 は,援 助の主要な効果 として宗教を助長 しないことを保証す ることと,過度のかかわ り合いを避 けることとの間の,非常 に狭 い道 を歩 くことを要求 して きた。 しか しこの ことは,援助を締め出す ことを意味 しない。当裁判所 の意見 と して,宗 教学校‑の間接的援助 は否認 していない。たとえば,世俗 目的であることか らそれるおそれがない故 に,私立学校 において政府の監督な しに遂行 しうる,公 立学校 と私立学校の両者に公平な財政援助計画を連邦議会が作 ることができる
な ら,問題 はなかろう。
C バーガー最高裁長官の反対意見