奈良教育大学 ダイヤルアップIP接続プロジェクト
著者 藤原 公昭
雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要
巻 6
ページ 163‑171
発行年 1997‑03‑31
その他のタイトル Dial‑up IP Connections for Schools. A Project report.
URL http://hdl.handle.net/10105/4347
藤IT,¥ 公 昭
(奈良教育大学教育実践研究指導センター)
Dial‑up IP Connections for Schools. A Project report.
Kimiaki FUJIWARA
(Center for Educational Research and Training. Nara University of Education)
要旨:県内の小中高校および関連機関を対象として、電話回線を用いたインターネットへの実験 的接続(Dial‑upIP接続)を行った。電子メール利用とWWWによる学校紹介のホ‑ムページ 作成がおもな利用形態であり、教室へのインターネット導入は今後の課題である。
キーワード:インターネット、電子メール、WWW
Synopsis: An experimental project for Dial‑up IP connection between schools in Nara Prefecture and the University has been carried out. The connection is utilized mainly for the purpose of communication by E‑Mail and of school introduction via home pages of the WWW. Expected deployment of the Internet connection in classrooms is of yet unsettled
problems.
Keywords: Internet, E‑Mail, WWW
1.経緯
1995年3月、奈良教育大学LANが敷設され、 ORIONS (大阪地区大学間ネットワーク)と512 kbps専用線で接続された1)O これにより本学教職員等は、電子メールを始めとするインターネッ トのサービスを利用できるようになった。また、同年6月には、 wwwサーバーを立ち上げ、本 学のホームページを通した情報提供を開始した。
当初、教官研究室を中心とするインターネットの利用も、大学院生、留学生、事務職員あるい は、附属校園等と利用者の層が拡大し、在宅での研究・学習・連絡のための電話回線でのインター ネット利用の要望もあることから、 1995年8月より、ダイヤルアップIP接続の実験を開始した。
当初は、 Hewlett‑Packard社製のワークステーションHP‑9000/712およびHP‑9000/715の 2台にIIJ.pppソフトウェアをインストールし、 28,800bpsモデムで公衆回線からの接続を可能 とした。
これによって、家庭内のパソコンを用いて、学内LANで利用可能なインターネットのサービ スが、スピードが遅い点を除けば、同様に利用可能となったo いわゆるネットワ‑クサービスプ ロバイダー(NSP)と同じ機能を本学が持っことになった。
1995年8月時点では、奈良県内にアクセスポイントを持っ商用プロバイダ‑はまだ存在してお らず、県内の小中高校がインターネットを利用しようとする場合、大阪にアクセスポイントを持 つ商用プロバイダーと契約する以外の方策はなかった。しかしながら、 NiftyserveやPC‑VAN に代表される、従来のパソコン通信にすら、校費での支出は困難である状況で、ましてインター ネットプロバイダ‑との契約は無理というのが現場の先生方多くの意見であった.一方で、文部・
通産両省のバックアップを受けた100校プロジェクトを始めとする「幸運な」、 「選ばれた」学校 の先進的なインターネットの教育利用の事例が紹介され始め、特に奈良県では、情報アクセスへ の格差が拡大していく危慎が感じられた。
小中高校の現場に潜在するインターネット接続への希望を、本学のダイヤルアップ回線の利用 で実現していくことは、また本学にとっても地域への貢献となりうることから、情報処理センター 運営委員会や他の学内教官との話し合いの中で、県内の小中高校へのダイヤルアップIP接続を 支援していくこととなった。
1995年10月、御所市立葛上中学、奈良県教育研究所との接続を開始した。当初は、本学卒業の 現職教員への口コミとパソコン通信で情報が広まったが、同年11月、藤原が県立富雄高校での講 演で接続支援を公表したこと、あるいは1996年に入っては新聞報道等で紹介されたこともあり、
問い合わせも増加した。
1996年3月、情報処理センター機器更新に伴い、ダイヤルアップ接続専用の機器(ANNEX ターミナルサーバー)が導入され、利用者の認証が可能となり、各種の利用統計が取得できるよ うになったo また、回線数も1996年5月には8本に増加した。
1996年12月現在で、接続機関も18校の公立学校と県および市の教育機関など5つの機関・組織 に増えている(義‑ 1)0 ‑万で、本学教職員および学生の在宅からのダイヤルアップ接続も急 増しており、これらは同じ回線を共用することから、回線の共同利用に配慮が必要になってきて いる2)0
この1年あまりの間に、全国の民間商用プロバイダー数は約30倍3)になり、奈良県内でも15社 のプロバイダーがアクセスポイントを提供している.料金的にも、従来のパソコン通信と同程度 の経費負担でインターネットが利用可能になってきている.また、 100校プロジェクトの肯定的 総括にもとづいた、 1,000校程度の拡大プランも中央官庁で検討されているとのことである。そ れに先立ち、 NTTによる「こねっと・プラン」が開始され、本県では20校4)に機器および技術 的、資金的な援助が与えられた。
NTTによる低廉なインターネット接続サービスである「OCN」が1996年12月より営業を開始 し、民間プロバイダ‑加入者数が急増する一方で、ボランティア的に運営されている学術組織内 でのネットワーク管理業務が次第にオーバーフローし、障害による回線トラブルの頻度が無視で きないまでになってきている。回線品質を重視する利用者・組織は、むしろ民間プロバイダーへ の接続を検討する段階に立ち至っている。
このような状況で、本学の対外的なダイヤルアップ接続サービスを将来的にも継続するか、は 検討課題である。また、限られた回線本数の共有という観点から、全学部学生へのアクセス許可
を積極的に進めていくか否かという問題にも何れ答えを出していかなければならない。
いずれにしても、ダイヤルアップIP接続という形態は、インターネットの接続形態としては 変則的なものであり、特に学校などでの組織的な利用の場合、専用線接続が本来の姿であろう。
初等中等教育の現場にあまねく専用線が引かれるよう、政策的な配慮が望まれる。
2.接続機関
2.1.目的と申請の条件
教育現場におけるインターネットの活用について、先駆的な試みが始められている5)。常に更 新され続ける最新のデータベースとしてのインターネット、および、情報交流、情報発信のツー ルとしてのインターネット、いずれも面でも、従来のメディアの延長とは異質の、新たなメディ アととらえる必要がある。この新たなメディアの教育における利用可能性について、できるだけ 多くの現場の教員の方が経験できる機会を提供することが、本学に求められている。
従来、本学では公開講座、研修などで、本学施設を用いたインターネット体験を進めてきたが、
やはり現場の学校から実際に接続し実験を行いたい、との要望に応える形でダイヤルアップ接続 実験を1995年10月開始し、 1996年4月からは情報処理センター運営委員会の承認の元、教育実践 研究指導センターの研究プロジェクトとして発足させたO
本学のダイヤルアップIP回線は国費で運用されている学内共同利用の資源であることから、
外部機関からの接続にあたっては、以下のガイドラインに沿ったものであることが必要である。
1)本学教官との共同研究であり、申請時に共同研究計画を提出すること0 2)研究の成果を報告書として作成すること。
3)機関としてのホームペ‑ジを立ち上げ、情報の発信を行うことO
この要請に基づいて1996年4月までに、各接続機関から提出された1995年度の報告と1996年度 表1 ダイヤルアップ接続機関(196/12現在)
機関名 接 続組織 接続 開始 時期 H o m eP ag e の有無
御所市立葛上 中学校 学校 199 5′10 ○
吉 野郡大塔 中学校 学校 199 5′11 ○
奈良市立輿東 中学校 学校 199 5′12 ○
県立 生駒 高校 学校 199 5ノ12 ○
広 陵町真美 ケ丘 中学校 学校 199 6′1
県立郡山高校 学校 199 6′1 ○
奈良市教 育委 員会 個 人 19 96′2
奈良市立平城 西中学校 障害児学級 199 6′2 ○
大学生協 個 人 19 96′2
御 所市立襟上小学校 学校 199 6′4 (⊃
奈良県立工業 高校 学校 199 6′4
県立教育研究所 個 人、教育情報部 199 6,′4
桜井市立織田小学校 学校 199 6′6
奈良市立東登美 ケ丘小学校 個 人 19 96′6
奈良市立富雄 第三小学校 個 人 19 96/ 6
奈良市立伏見小学校 個人 199 6′6
英語教育 フォー ラム 団体 19 96′6 ○
山添村立西豊小学校 学校 199 6′7 ○
県立畝傍 高校 4 ^ 199 6′7 ○
県立志貴高校 情報科 学部 19 96ノ9
生駒郡三郷北小学校 学校 19 96/10 ○
県立桜井商業 高校 学校 199 6′10 ○
の計画および実績に基づき、ダイヤルアップ接続の現状について報告する。
2.2.接続械関の現状
1996年12月現在でのダイヤルアップ接続機関を表‑ 1に示す。
対象は県内の教育機関であり、特に制限は付けていないが、結果的に学校はすべて公立校であ る。多くは学校としてインターネットに接続することを申請しているが、数校、学内の合意形成 にいたらないために、教諭個人、または、部活動として、接続申請を行っている。
このことについて、合意形成を作っていくためにも、接続の実験は意味のあることと考えられ る。特に、成績・身体データなどの児童・生徒の個人情報の扱いについて慎重であることは当然 ではあるが、インターネットを介した児童・生徒の自発的な情報発信がもたらす交流の範囲の広 範さとそのインパクトの重要性は見逃すことができない。インターネットにおける交流の経験は、
体験者が一様に"カルチャーショック''と表現するように、既存のメディアの延長では類推しが たい性格のものであり、自分自身の経験として捉えた上で、利用すべきか否かの判断を持っこと が望ましい。
3.利用の形態
マスメディアで取り上げられる場合、 WWWによる画像検索(いわゆる"ネットサーフィン′′) がインターネットであるとの印象を持たれやすい。しかし歴史的にもまた、現実にも、電子メー ルとファイル転送がもっとも重要なネットワーク利用上のアプリケ‑ションである。機械可読 (Machine Readable)なデータを共有することで遠隔地での共同作業を支援するということがイ ンターネット発展の動機であり、そこから派生した電子メールが今日では一般市民にも利用可能 な新たな電子メディアとなってきている。
今回のプロジェクトにおいても、多くの参加者は、当初素朴な興味からインターネット接続を 開始するが、最終的には継続的な電子メール利用者となっていることがわかる。
以下に各プロジェクト参加組織におけるネットワーク利用の形態について、概要をまとめる (表‑2)。
3.I.交流としての電子メール
電子メールアドレスは各組織毎に、組織の代表アドレスと若干の担当の教員の個人アドレスを 付与しているo ホ‑ムペ‑ジを作成している組織では、対外的な電子メール受付の窓口として組 織の代表アドレスを用いている例が多いが、個人アドレス、あるいは、民間プロバイダ‑でのア ドレスを用いる例もある(真美が丘中学など)。個人アドレスは、教員の個人的な交流あるいは 情報収集に活用されているようである。このことは、教科教育などに関連する各種のメーリング
リストからの電子メールが、参加組織の個人アドレスに到達することから推察される。
一方、代表アドレスの本来想定していた利用形態として、児童・生徒の代表アドレスとしての 利用があるO これは、実際に葛上中学、興東中学で、英語教育の一環としての生徒による海外と の電子メ‑ル交換という実践に活用されている。このような利用形態をさらに推進させていくこ とが望まれる。そのためには、生徒の個人メールアドレスが発行できることが理想的ではあるが、
今回の実験プロジェクトの範囲を超えることであり、将来の検討課題とする。
3.2.教材としてのwww
教室においてWWWを教科の教材として活用している、との報告は1996年3月までにはなかっ たが、教員個人の情報収集手段としては大いに利用されている様子が、アクセスログから分かる。
教科におけるWWWの活用は今後の課題である。第一に、インターネット接続パソコンの所 在は教員室などに限られており、教室で利用可能なインターネットに接続されたパソコンは事実 上皆無である。パソコン教室内のネットワークがインターネットに接続されている例は、 loo佼 プロジェクトに選ばれた、県立高取高校一校のみである。このような状態では、資料の調査を行 うことを学習課題として設定することは難しい。
第二に、 WWWの利用者の「指数関数的な」急増により、慢性的なネットワークトラフィッ クの混雑状態が続いており、特に利用が集中する昼間は授業時間帯と重なっており、数件の調べ
表2 組織毎の利用形態
機 関名 メー ル ア ドレス H om ePageの構 成 その他 の利 用 形態
(@ nara‑ (英 語ペ ー ジ の有無 ) edu.acーjp) (アクセ ス カ ウ ン ト9 6′12′25現 在)
御 所 市 立 葛 上 中 kj‑jhs ア クセス 、 ス タ ッフ . マ ン ガ版 、校舎 の 配置 ア ンケ 】 ト、海 外姉 妹
学 校 回、修 学 旅行 、 国際 理解 教 育′カナ ダの姉 妹
校′朝鮮 初 中級 学校 との 交流′パ ソコ ン通信 、 校 長 の挨 拶 、生 徒 の作 品 、葛 城 の道 、葛 城王 朝 、平 成 7 年 度 学校 基本 調査 、 アマ チ ュ ア無 線 の紹 介 (English 有)
校 との交 流
吉 野 郡 大 塔 中 学 ooto」hS 今 日の大塔 中学校 、 大塔 村 に つい て 、 毎 日
校 の学校 生 活 、 部 活動 、 主 な行事 、 教職 員 、
(E nglish有)、(830)
奈 良 市 立 輿 東 中 koto一jhS 校 区 の絵 地 図 、 陽気 な村 の鍛 冶 屋 さん′奈 良 E ‑M ailに よる英語 作 文
学校 で は珍 しい 酪農 家 ′山 口神 社 に伝 わる 大柳 生
太鼓 踊 り、学 校 創 立 30 周年 につ いて 、柳 生 街 道
教 育
県 立生 駒 高校 ikom a‑hs 生駒 高 等 学校 紹介 、 生徒 会 のペ ー ジ、 解放 ア ンケー ト 研 か らの ア ピー ル、先 生 の ペ ー ジ 、同 窓会
だよ り、最 新 情報
C u‑SeeM e実験
広 陵 町 真 美 ケ 丘 m am i」h S 真美 中の歴 史 、 部活 動 、主 な行 事 、修 学旅 作 品紹 介 中 学校 m am i」h S 行 、真 美 中の 職員 、 リ ンクの コ ーナ } 、科 学
@ sh ik asenbei.or. 部のホームページ jp (E nglish有 )(123)
県 立郡 山 高校 kori yam a English 、概 要 、学校 紹 介 、職 員 のペ ー ジ、 ア ンケー ト
生徒 の ペ ー ジ、郡 高 百景 、郡 高 関係 者 のペ 】 カ リキュ ラム 、学 内行
ジ 事 予定 紹介
卒 業生へ の リ ンク 奈 良 市 教 育 委 員
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奈 良 市 立 平 城 西 heijojhs 奈 良市 の 障害児 学 級年 間 行事 、 み ど り学 級 の 学級 の 自己紹介
中学 校 紹介 と取 り組 み、 平城 西 中学 校 の紹 介
大 学生 協 hikita 未
御 所 市 立 襟 上 小 w akigam i アクセ ス、校 長、 教頭 、 子供 達 、子 供 の 日、
学校 校舎 内 、す ず か け タイム 、す ず か けの木
奈 良 県 立 工 業 高 校
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県立教育研究所 m otozuka.kaw ak ita,uem shi,tujim o t0
莱 教育大学 との共同研究
(統計処理)、非常勤講 師業務連絡
桜 井 市 立織 田小 学校
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奈 良 市 立 東 登 美 ケ丘小学校
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奈 良 市 立富 雄 第 三小学校
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奈 良市 立 伏 見 4 、 学校
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英 語 教 育 フ ォー hsugim ot N E T FO R U M とは ? 、N E T FO R U M の組織、 教育大学との共同研 究
ラム N E T FO R U M の活動(179) (授業研究)
山 添村 立 西 豊 /1、m sitoyo 道案内、学校の まわ り、子 どもたち、パ ソコ 児童の 自己紹介
学校 ン活用、校歌、職員紹介、 リンク(649) パソコン活用計画
県立畝傍高校 unebi‑hs 学校紹介、部活動紹介、進路状況、教職員紹 介、創立100周年、歴史、卒業生のページリ
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県立志貴高校 sm ki‑hs 学校紹介、情報科学部の紹介、クラブ紹介、 開放講座募集
学校周辺の史跡、ス タッフの紹介 科学部生徒のH P
生 駒 郡 三郷 北 小 sango‑es 学校案 内 、校歌、子 どもたちの作 品、運動 児童絵画の展示
学校 会、学校に咲いている花、三郷町紹介
県 立桜 井商 業 高 sakuraic 学校長 より一言、桜井商業はどんな学校です
校 か ? 、他
もので一時間の授業時間が終わってしまうこともある。
いずれも、物理的な障害であり、日本のインターネットの普及が未だ過渡期であることを示し ているが、将来的には図書館における資料調査と同様、あるいはお互いに補完するものとして、
学習内容の調査にインターネットが利用されていくことになる。この方向での先駆的な試みとし て、教科内容毎の利用可能なデ‑夕の所在を示すページ(Yellow Page)の作成が何人かの研究 者によって行われている6)0
3.3.情報の発信
最も手軽な情報発信の手段として、多くの学校・機関がWWWのホームページを作成し、公 開している。実際に、このように簡単な方法で、全世界に対しで情報の発信ができてしまうこと が、今日のインターネットの「ブーム」を引き起こした主な要因であるo今回のプロジェクト参 加校のホームページにも、一様に学校紹介、地域の紹介があり、学校をアピールしていこうとい う意欲がみられる。
インターネットの国際的な性格から、英語による情報も併存することが望ましく、今回も4校 では英語ページを用意している。特に、葛上中学、大塔中学では英語情報がむしろメインと位置 づけられている。これは、作成者の資質もさることながら、この二校のホ‑ムページ作成の時期 が1995年であり、 「インターネット大衆化」直前の、英語による情報提供が当然と考えられてい た時期に当たるためである。
さらに立ち入った情報の提供については、各校毎の違いが顕著になってくる。児童・生徒の個 人の作品紹介、自己紹介を行うページ(平城西中学障害児学級、西豊小学校、志貴高校など)、
あるいはカリキュラムや授業計画の公開を行っているページ(郡山高校、西豊小学校)もあるが、
これらは少数である。また、これらの公開を行っている学校でも、網羅的に情報を公開している わけではなく、ホ‑ムページ作成担当者の裁量の範囲内での公開であると推察される。インター ネットの性格からして、機関としてのオーソライズされた「公式」な情報提供が必要であるのか 否か、あるいは可能であるのか否かについて、多くの議論が起こることであろう。
このことと、裏腹ではあるが、現実のホームページは一人ないし数名のボランティアによって 維持されており、立ち上げることは比較的容易でも、情報を最新に維持し続けることはきわめて
困難である。個人が組織の情報をCareすることには限界があり、個人は個人の情報のみをCare するという方向へ向かうのであろう。児童・生徒の個人情報も、個人の自発的な発信ということ が前提として必要となる。その前提の下であれば、ホームページ作成は、児童・生徒にとってコ ンピュータリテラシイ養成の格好の学習課題でもある(県立志貴高校科学部など)0
4.今後の計画と課題
本プロジェクトの開始の直接の契機となった事情は、前述のように1995年秋の時点で、本県内 に民間プロバイダ‑が存在しないことであった。かねてから、パソコン通信でネットワークの教 育利用に関心を持ち、情報交換を行ってきていた教員の方々は、他府県でのインターネット利用 の取り組みに着目しつつも、大阪地区のプロバイダーとの契約費用と回線費用の負担が校費では 賄えないことから、県内の大学などへ接続依頼の打診を行っていた。本学でも、この打診を受け、
教育大学として地域への貢献と位置づけ、接続を受け入れてきた経緯は前述の通りである。しか しながら、この一年余で、奈良県内にアクセスポイントを有するプロバイダーは15杜、アクセス ポイント数は19ヶ所になり、また、利用料金も業者間の競争により低廉化し、通常のパソコン通 信と大差ないまでになったことで、本プロジェクトの前提条件はかなり根拠を失いっつあるとい える。実際、ダイヤルアップ接続のノウ‑ウも一般的に普及し、実験のフェーズはすでに通過し ている。学校・教室におけるダイヤルアップ接続の事例も数多く報告されてきていることから、
接続すること自体にはすでに新奇性はない。民間のプロバイダ‑に適切な料金を支払い、それに 見合ったサービスを享受するか否か、のみの問題に帰着したともいえる。また、基本的にボラン ティア作業に支えられている大学間接続に比較して、現在では民間プロバイダー接続の方が、高 速かつ安定である場合が多くなっている。
しかしながら、ダイヤルアップ接続という形態は、組織間接続としては、インターネットの本 来の接続形態(専用線による常時接続)から見て、きわめて変則的かっ不適当である。第‑に、
接続時問に比例した従量料金では、資料調査のメディアとしては不適格である。それは、時間の 制約の下では、決まり切った、表面的な検索以上に踏み込むことが難しいためである。何処に何 があるかが予めわかっていなくては、使用料金の見積もりができないが、これは未知の事柄を調 査・研究するという行為とは相容れない。
第二に、インターネットでの情報の担い手は、基本的に個人であるO学童・生徒であっても個 人として情報の送受を行うことが可能であることが望ましい。具体的には、個人識別としての電 子メ‑ルアドレスを希望する者すべてが持てることが必要であるが、通常のダイヤルアップ接続 では、 1契約あたり、ユーザー1人、つまり電子メールアドレス1個である。情報ネットワーク システムは主にPublicな用途で発展してきたものではあるが、 Privateな情報の交流にも役立
つことで、このメディアに親しみを持っことができる。そのためにも、個人アドレスによって個 人の情報交流のプライバシーは尊重されるべきである。
このように、ダイヤルアップ接続は、個人の対インターネット接続形態であり、学校という組 織のインターネット接続としては専用線による常時接続(いわゆるLAN接続)が有りうべき形態 である。米国で推進されている「全教室へのインターネット接続」は当然この形態である。しか るに、日本での専用線の回線費用は、現実に校費として賄える限度を遥かに超えている7)。これ に対するクレームに答える形で、 NTTは新たなインターネット専用線サービスOCNを本年12 月より開始したが、奈良県内で接続可能になる時期は未定である8)0
行政による財政的支援策が強く望まれるところであり、中央教育審議会・第一次答申では、
「近い将来、すべての学校がインターネットに接続することを目指し、インターネット利用の実 践研究などを進める」ことが唱われている。
この動きに先立って、教育実践研究指導センターでは、今回のダイヤルアップ接続プロジェク トから、 LAN接続の運用実験に移行していく計画を持っている。具体的には、すでにLAN接 続されている附属小学校でのサ‑バー運用への技術的協力、および高畑キャンパス外にある附属 中学校とのISDNルータ接続と校内LAN構築への支援である.これによって、常時接続形態で のインターネット利用を更に推進していく。
補遺:接続の方法について
ダイヤルアップ回線による接続の方法は、民間プロバイダー(NSP)への接続方法と概ね同様 であるが、唯一、利用者認証の方式が異なっているO 本学への接続にはメールサーバ‑
(mailsrv機)への利用者登録が必要であり、 Annexターミナルサーバーでは、このmailsrv機 へのアカウント名・パスワードによる「クリアテキスト」認証が行われるO 従って、
PAP/CHAP認証では不要な「ログインスクリプト」を用意する必要がある。
詳しくは、 http://www. nara‑edu. ac.jp/PRIVATE/PPP/を参照のこと。また、本学学 生については、学生用メ‑ルサーバー(student機)への登録で、ダイヤルアップ接続が利用で
きる。これについては、 http://www. nara‑edu. ac. jp/PRIVATE/PPP/passwd. htmを参 照のこと。
1)対大阪大学専用線速度は1995年8月より1.5Mbpsに増通された。
2)公衆回線での最大接続時間は2時間に限定している。
3) Internet Magazineのアンケ‑卜調査では、民間プロバイダー数は17 (1995/4/7)、 95 (1995/ll/1)、 570 (1996/12/1現在)となっている。
4) 「こねっと・プラン」への県別参加校リストはhttp://www.wnn.or.jp/wnn‑s/sanka kou/ kpsanka. htmlにある。
5)例えば、 『日本教育工学会第12回大会講演論文集』ではインターネット/ネットワ‑ク活用 に関する論文数は56を数える。
6 )例えばhttp:. 、 osaka‑kyoiku. ac. jp/educ/、 http://www. cer. yamanashi. ac.
jp/narita/edudir/ learners, htmlなど
7 ) NTT64kbps専用線の場合、最短距離15km以内で月額77千円、 50km以内で132千円である。
8) OCN常時接続(「OCNエコノミ1 128kbpsメタリックケーブル)で月額38,000円となっ ている(http://www. ocn. ne. jp/d̲2. html)