博士(医学)西川武志 学位論文題名
ヒ ト パ ピ ロ ー マ ウ イ ル ス 8 型 E7 遺 伝 子 に よ る 発 癌 機 構 の 実 験 的 研 究
学 位論文内容の要旨
ヒトパピロ―マウイルス human papillomavirus ( HPV )は、皮膚 や粘膜に乳頭腫を形成し、ことに皮膚粘膜の悪性腫瘍にかかわるウ イルスとして重要である。現征までに60 以上のゲノム型が分離され、
ゲノム型によって感染部位ならびに関係する病変が興なることが知I られている。そのIl |に疣賀状表皮発育異常症(EV 症)や免疫不全 状態の患者に発生する皮膚悪性腫瘍から主に分離されるHPV5 型、
8 型、47 型などの皮膚商リスク型、子宮頚部異形性ならびに子宮頚 痛 組 織 の 約 80 % か ら 分 離 さ れ る HPV16 型 、 18 型 な ど の 粘 膜 高 リス ク型 が合 まれて いる。粘膜高リスクHPV 型による発癌機構 の研究においてそのE7 遺伝子は、ラットやマウスの細胞株をトラ ンスフオームし、活性型ras 遺伝子と共同で初代ラット培養細胞をト ランスフオームする活性があること、またE7 遺伝子単独でヒト角 化上皮細胞を不死化し、E6 遺伝子はこの活性を促進することが報 告されており、E7 遺伝子が発癌の主役を担っていると考えられて いる。
一方、皮膚 i 前リスク型HPV による発癌機構の研究においては、
FIPV8 型 と HPV47 型 の E6 遺 伝 子 が 、 マ ウ ス や ラ ッ ト の 細 胞 株を形態学的に卜ランスフオームし、トランスフオーム細胞株1 ルこ E6 遺伝子の発現が見られることなどが報告されている。しかしな がら、E7 領域も合め他の領域の細胞不死化活性やトランスフオー ム活性の研究は現征までになされていなぃ。
木研究では、皮膚高リスク型 E7 遺伝子のトランスフオーム活性
を 検 討 す る た め 、 FIPV8 型 E7 遺 伝 子 お よ び E6 / E7 遺 伝 子 を
合 む
I断 片 を 発 現 ベ ク タ ー で あ る
pcD2ー
Yの
SV40エ ン ハ ン サ ー / プ ロ モ ー タ ー の 下 流 に そ れ ぞ れ 糸
ltみ 込 み 、
pcD2‑8E7、
pcD2‑8E6/E7を 作 製 し た う え で 以 卜 の 尖 験 を
ifっ た 。
1錫 性 コ ン ト ロ ー ル と し て 、
I‑IPV16型E7 遺伝f およびE6 /E7 遺伝,f を合む断片をl1 み
込んだpcD2 ー16E7 、pcD2 ー
16E6/E7を作製した。
トランスフオーメーショと型と篷:これらのプラスミドを活´yI 三
Jt!H ・
ras遺伝子と」ヒに、初代ラット線維爿ミネIIl 〃包rat embryo fibroblast(REF) に ト ラ ン ス フ ェ ク 卜 し 、 卜 ラ ン ス フ オ ー ム 活 性 の 布
411Eを 培 養
2迎 後 に お け る
REFの ト ラ ン ス フ オ ー ム コ ロ ニ ー 形 成 数 を 測 定 す る こ と に よ っ て 検 オ 、
fし た 。 紺 果 は 、
pcD2‑8E7:
12% 、
pcD2・
16E7:
43% 、
pcD2‑16E6/E7:
53% の ト ラ ン ス フ オ : ー ム 効 率 を 示 し た 。 そ れ ぞ れ の ト ラ ン フ オ ー ム コ ロ ニ ー か ら 卜 ラ ン ス フ オ ー ム 糸
III胞 株 を 樹 屯 し 、
pcD2‑8E7プ ラ ス ミ ド で 卜 ラ ン ス フ オ ー ム し た 細
i胞 株 を
8REネ
m包 株 、
pcD2‑16E7プ ラ ス ミ ド で ト ラ ン ス フ オ ー ム し た 卸
1胞 株 を
16RE細 胞株と名づけ以下の実験を〒テった。
サ ザ ン ブ ロ ッ ト ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ と :
8RE細 胞 株 の
DNA Iル こ 、
HPV8! 叫
E7何
I域 が 剰
1. み 込 ま れ て い る こ と を
j離 認 す る た め に 、
pcD2ー
8E7プ ラ ス ミ ド
I| | の
HPV8型
E7DNAの
iIIJ側 に
Lフ
JI析 冉
K位 を も つ 酵 素
BamH1、
HPV8型
E7領 域 の
lllに 切 断 」 心 を も つ 酵 素
PstIと
Sau3AI、 ま た は
pcD2・
8E7プ ラ ス ミ ド を
1ケ 所 の み で
Lフ
J断 す る 酵 素
I‑tind IIIで 、
8RE細 胞
DNAを 消 化 し 、 サ ザ ン ブ ロ ツ 卜 ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を
irな っ た 。 そ の 結 果 、
f廿 ら れ た ト ラ ン ス フ オ ー ム
1 JYd株 に は 、 導 入 し た
HPV8』 卍
E7領 域 が 後 数 コ ピ 一 存 続 し 、 少 な く と も そ の
‑i恥 ま 完 全 な 形 で 糾 み 込 ま れ て い る こ と が 示 さ れ た 。
ト ラ ン ろ
Z空 二 蠱 細 胞
Q蚰
lu& 丘
g:
8RE細 胞 株 お よ び
16RE細 胞株のin vitrokyi 養におけるエ曽釿A 能を検ヨ、f するため、倍カ‖‖ヤ|肌飽輔I 密 度、 プレ ー卜 効率 およ び0.3 %
I欧 寒天培地lIl 坩ケi ^能を検, 丶JI した。
倍カnnI ‖IIJ は 、
8RE爺‖胞株で、平均20 .3 IIll'I/ljJ 、16RE 荊‖J 地株は、
平均9 .7 ii,lfiilkl の倍カ‖ll.lj: 川を示し、8RE ネmJ 泡株の↓田ダjA 速度は、16
RE細 胞 株 の 約
1/2で あ っ た 。 飽 羽 | 密 度 は
8RE網
0胞 株 の 場 合 、 平 均
6 5.2X10s/6cm dishで、16RE 細JJ 包株では、平均255.8
X1 0s76cm dish
で あ り 、
8RE耐 ‖ 胞 株 は 、 非 ト ラ ン ス フ オ ー ム 舖
0胞
(REF)の
4倍 以 上 、
16REffi0胞 株 の 約
1/4の 飽 和 | 衛 度 を 示 し
‑ 232 ‑
た 。
8RE、
16REilJ嗣
II胞 株 は 、 と も に
0.3%
I欧 寒 天 培 地
llIで コ ロ ニ ー を 形 成 し た が 、 コ ロ ニー 形 成 卒も 、
8 RE細
J也株 で 甲 均4.6
% 、
16REE細 胞 株 で 平 均
13.2% で あ っ た 。 以 | : の 魚
If果 か ら
8 R E甜
lI胞 株は卜ランスフオームネ‖
lJ也としての性質を示したが、
16 RE瀦川 包 株 より
IJl'J田 釿 九 能が 低 いこ と が
I准 ゑ懇 さ ォL た。
トラン丕Z 変二蠱盈!I !塑Q 造腫瘍世:トランスフオーム糾I 胞(2Xl ぴ)
を
PBSに懸 濁 し て、 生 後
1〜
21.
l卜
Iの 同系ラッ ト(
FislerF344)の 皮下 に接種し 、腫瘍形 成のイ
r無 および担癇ラットの生存を1 ケ
J11f‖ 観 察 し た 。 接 征 後
5川 ニ
1に は 、
8RE荊 ‖ 胞 株 や
16RE網
II胞 株を 接 種し たすべて のラッ卜 で
J匝瘍
J形 成がみられ、また担痴ラットの甲均 生存
J蜘1 ‖|は、8RE 尉
Il胞株を移
t1たしたラットの方が16RE 荊
lIJJ包株 を 移あ虹し たラット より短い 値を示し た。腫瘍 の↓曲生も
8RE細胞株 による魎瘍の方が速く、人きな腫痾を形成した。
萱壁 塁れ挺腫 癒の謝
I越 堂的!亜 旦:
8RE舖‖胞株により誘発された 腫瘍 は、異型 性が鹸く 濃染性の 核を持つ 細lJ 胞からぬり、周囲には小
|
IJ形 卸
1胞 の 浸潤 が 多く 兄 ら れる 低 分化 型 の 肉腫 像 を 示し 、
16RE細 胞 株で 誘 発 され た 腫瘍 に く らべ悪性 度の
1弼い 糾織f 象を示 した。
本 研 究 に お い て 、 皮 膚 | 奇 リ ス ク 型 で あ る
IIPV8型
E7遺 伝 予 が 活性型H‑rs 遺伝予と共同で初1 ℃ラツ卜綜維屶ミ網
Il胞(REF )をトラン ス フオ ー ム する こ とを 初め て見いだ した。樹 立したト ランスフオ ー ム細胞株は高レヽ↓曽あ^能を示し、造腫瘍能を認めた。またその腫瘍は、
耐
1織 学 的 に 低 分 化 型 の 肉 腫 像 を 示 し た 。 以 上 の 結 果 から
HPV8型
E7遺 伝 子 は 、
HPV関 連 の 皮 膚 の 癇 化 を 考 え る .
Lで 、 非 常 に 亟 要
であると考えられる。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
ヒトノくピ口ーマウイルス8 型E7 遺伝子による 発癌機構の実験的研究
ヒ ト パ ピ 口 ― マ ウ イ ル スhuman papillonlavirus(IIPV) は 、 皮 膚 粘 膜の 悪 性 腫 瘍 にか か わ る ウ イ ル ス と し て 重 要 で あ る 。 現 在 ま で に60以 上 の ゲノ ム 型 が 分 離さ れ 、 そ の 中 に疣 贅 状 表 皮 発育 異 常 症 や 免 疫 不 全 状 態 の 患 者 に 発 生 す る 皮 膚 悪 性 腫 瘍 か ら 主 に 分 離 さ れ るI・IPV5型 、8型 、 47型 な ど の 皮 膚 高 リ ス ク 型 、 子 宮 頸 痂 組 織 の 約80% か ら 分 離 さ れ るIIPV16型 、18型 な ど の 粘 膜 高 リ ス ク 型 が 含 ま れ て い る 。IIPV16型 で は 、E7遺 伝 子 に 、 ラ ッ 卜 や マ ウ ス の 細 胞 株 を ト ラ ン ス フ ォ ー ム し 、 活 性 型ras遺 伝 子 と 共 同 で 初 代 ラ ッ ト 培 養 細 胞を ト ラ ン ス フォ ー ム す る 活 性 が あ る こ と な ど が 報 告 さ れ て お り 、E7遺 伝 子 が 発 癌 の 主 役 を 担 っ て い る と 考 え ら れ て い る 。 一 方 、 皮 膚 高 リ ス ク 型IIPVで は 、IIPV8型 と47型 のE6遺 伝 子 が 、 々 ウ ス や ラ ッ ト の 細 胞 株 を 形 態 学 的 に ト ラ ン ス フ ォ ー ム す る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、E7領 域 も 含 め 他 の 領 域 の 細 胞 不 死 化 活 性 や ト ラ ン ス フ ォ ー ム 活 性の 研 究 は 現 在ま で に な さ れて い な い 。 本 研 究 で は 、 皮 膚 商 リ ス ク 型E7遺 伝 予 の ト ラ ン ス フ ォ ー ム 活 性 を 検 討 す る た め 、HPV8型 E7遺 伝 子 お よ びHPV16型E7遺 伝 子 ( 陽 性 コ ン 卜 ロ ー ル ) を 含 む 断 片 を 発 現 ペ ク タ ー で あ るpcD2‑YのSV4( ) エ ン ハ ン サ 一 / プ ロ モ ー タ ー の 下 流 に そ れ ぞ れ 組 み 込 み 、pcD2‑8E7、 pcD2‑16E7を作 製した うえで 以下の 実験 を行っ た。
上 弖2ス ヱ ょ ニ と 二2ヨZ効 壅 : こ れ ら の プ ラ ス ミ ド を 活 性lluH‑ras遺 伝 予 と 共 に 、 初 代 ラ ッ ト 線 維 芽 細 胞(REF)に 卜 ラ ン ス フ ェ ク ト し 、 培 養2週 後 に お け るREFの 卜 ラ ン ス フ ォ ー ム コ 口 ニ 一 形 成 数 を 測 定 す る こ と に よ っ て ト ラ ン ス フ ォ ー ム 活 性 の 有 無 を 検 討 し た 。 結 采 は 、 pcD2‑8E7:12% 、pcD2―16E7:43% の ト ラ ン ス フ ォ ー ム 効 率 を 示 し た 。 そ れ ぞ れ の ト ラ ン フ ォ ー ム コ ロ ニ ー か ら 細1胞 株 を 樹 立 し 、pcD2‑8E7およ びpcD2‑16E7で ト ラ ン スフ ォ ー ム し た細 胞株 をそれ ぞれ8RE細胞 株、16Rじ!*lIl胞 株と名 づけた 。
型 ニ 盤Zロ ッ ヒ ご ニ イ7! !Zイ 〓 ピ ニ2ヨ2:pcD2‑8E7プ ラ ス ミ ドlf| のIIPV8型E7DNAの 両 側 に 切 断 部 位 を も つ 酵 素Bam Hl、E7領 域 内 に 切 断 点 を も つ 酵 素PstIとSau3AI、 ま た は pcD2‑8E7を1ケ 所 の み で 切 断 す る 酵 素Hin dlllで 、8RE細 胞DNAを 消 化 し 、 サ ザ ン ブ 口 ッ 卜 ハ イ プ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 行 な っ た 。 そ の 結 果 、8Rじ 細 胞 株 に は 、 導 入 し たII PV8型E7 領 域 が 後 数 コ ピ ― 存 続 し 、 少 な く と も そ の 一 部 は 完 全 な 形 で 組 み 込 ま れ て い る こ と が 示 さ れ た。
ー亅二乙Zスヱぇニム細1也O)1W19ltffL:̲:トランスフォー厶荊1|胞株の加vItro培養における倍加時間、
飽 和 密 度 、0.3% 軟 寒 天 培 地lf| 増 殖 能 を 検 討 し た 。 倍 加Hキt珂 は 、8RE細 胞 株 で 平 均20.3 時 間 、16RIて 細 胞 株 で 平 均9.7時 | 川 で あ っ た 。 飽 和 密 度 は8RE荊 |I胞 株 で 、 平 均65.2x 10 5/6cm dish、16RE荊0胞f宋 で は 、jIえ 均2 5 5.8x105/6cnldisllで あ り 、8RE細 胞 林 は 、 非 ト ラ ン ス フ ォ ー ム 細 胞 (REF)の4f舟 以 .L、16RE荊0胞 株 の 約1/4の 値 を 示 し た 。 ま た0.3% 軟 寒 天 培 地ll| で の コ 口 ニ ー 形 成 卒 は 、8RIニ 銅 ‖ 胞 株 で 平 均4.6% 、16RE;flil胞 株 で 平均13.2% で あ っ た 。以 ―I. ・ .の 結 果 か ら8RE;fIll胞 株 は 卜ラ ン スフ ォーム 細胞と しての
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章
明
暹
光
原
沼
巻
河
大
柿
葛
授
授
授
教
教
教
査
査
査
主
副
副
yli質を 示す が 、 16RE荊0胞株 よりmL 加 にお ける舖0胞増殖能が低い ことが確認された。
bi2ス2え ニム 細! 色 の造 腫瘍 缶: トラ ン スフ ォーム壽攤胞(2x105) を生後l〜2口目の同 系ラット(FjshcrF344)の皮下に接柚し、脆 瘍形成の有無および担痂ラットの生存を10月問観 察 した 。接 穐後5HL,1には 、81ミE荊lI胞株 、16RE細胞株を接種したす ぺてのラットで臓瘍 形 成 が み られ 、ま た担 痂 ラッ トのjF均 生存 期 間は 、8RE細 胞株 を移 柿し た ラッ トの 方が16 RE荊fl胞株を移 植したラットより短し、f直 を示した。H唖瘍の増生も8RE細胞株による臓瘍の方 が述く、大きな 脈癇を形成レた。
遜発 さ扛 たH亜癌 の封I繊 坐01迎i囲Lニ8RE細胞 株により誘発された肺 癌は、16RE細胞林で 誘発された〃唖 瘍にくらべ、異型性が強く濃染性の核を持つ細胞からなる低分化型の肉腫像を示 した。
以亅 二本 研究 にお し ヽて 、皮 膚高 リス ク 型で あるHPV8型E7遺伝予が 、活性型H‐脚遺伝予 と共同で初代ラ ット線維芽細胞をトランスフ ォームすることを幼めて見いだした。樹立したト ランスフォーム 細胞株は高い増殖能を示し、 造かB瘍能が認められた。またその腫瘍は、組織学 的 に 低 分 化 型 のf勾 臓 像 を 示 し た 。以 上の 結 果か らIIIPV8型E7遺 伝子 は、HPV関連 の皮 膚 の癖化において 、非常に重要であると考えら れる。
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