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博 士 ( 獣 医 学 ) 志 水 泰 武 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 獣 医 学 ) 志 水 泰 武

学 位 論 文 題 名

褐色 脂肪組織における熱産生とグルコース利用の交感神経性調節

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  褐色 脂肪組織(brown adipose tissue;BAT)は,化学的 熱産生の特異的部位であり, 寒 冷暴露や冬眠からの覚醒時の非ふるえ熱産生や過食時に余剰のエネルギーを浪費するための熱産 生を行っている。本研究では,BATでの熱産生とグルコース利用に対する交感神経の役割を明 らかに する目的で,ラットを用いて,この組織への非代謝性グルコース誘導体である2一de‑

oxyglucose(2―DG)の取り込みをinvivoで調べた。更に,交感神経によるグルコース輸送 の促進機構にっいて,グルコーストランスポ一夕ーに焦点を当てて検討し,以下の結果を得た。

  1) ラットを絶食させた後, 再摂食させると,BATへの2―DGの取り込みは,心臓,骨 格 筋及び白色脂肪組織と同様に,血中のインシュリン濃度の上昇に対応して増加した。しかし,寒 冷に暴露した場合は,血中のインシュリン濃度はわずかに低下しているにもかかわらず,BAT でのみ 特異的に2―DG取り込みの増 加が認められた。一方,BATを支配する交感神経を外科 的に切除すると,再摂食の効果は影響を受けないのに対し,寒冷暴露の効果はほぼ完全に抑制さ れた。これらの結果から,BATにはインシュリン非依存性で,交感神経によって活性化される ような,独特のグルコース輸送系が存在すると推察された。

  2)麻 酔によって誘発される低体温 からの回復時に,BATの組織温度の上昇が体温の上昇に 先立って起こり,回復に至るまで常に体温より高い温度で推移したことから,BATの熱産生が,

寒冷環境下での体温の維持のみならず,低体温からの回復にも寄与していることが示唆された。

この時2−DGの取り込みも調べたところ,体温回復期に顕著な増加が観察された。このような 変化は,交感神経を切除するといずれも消失した。これらの結果も,BATにおけるグルコース 利用の 亢進が,交感神経を介し熱産生と並行して発現するとの考えを支持するものである。

  3) BATの直近で交感神経を 電気的に刺激した場合,2―DG取り込みは刺激頻度に応じ て 増加し ,寒冷刺激に対する反応を再現できた。同様に,交感神経の伝達物質であるNEを血中 に投与した場合も,投与量に依存した増加が観察され,交感神経のグルコース利用促進作用が直 接証明された。更に,2―DGの取り込みと組織温度の上昇速度に有意ナょ相関が認められたこと,

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(2)

及 び上 記1),2) との 結果 を総 合 して,BATにおける2―DGの取り込みは,熱産生の 鋭敏 で確実な指標であると結諭した。

  4)交感 神経ブロッカーを用いた検索 で,神経刺激やNE投与の効果がロブ口ッカーにより ほぼ完全に抑制され,aブ口ッカーには影響されないことが明らかとなった。また,低体温から の回復期にみられる2―DG取り込みの増加も,ロブ口ツカーで抑制されることから,熱産生と 並行して起 こるグルコース利用の亢進は,交感神経の終末より放出されるNEのロ作用によっ ていることが判明した。

  5)インシュリンは,細胞内プールに存在するグルコーストランスポーターを細胞膜上ヘ急速 に移動させ ,そこでの数を増加させる ことにより糖輸送の増大をもたらす。NEの2一DG取り 込み亢進作用が,これと同様の機構によっているか否か調べるために,BAT細胞膜画分のグル コーストランスポ一夕ーを,グルコース輸送の拮抗阻害剤であるサイトカラシンBの結合によっ て測定した。NEを投与しても,細胞膜画分におけるサイトカラシンBの結合部位数及び親和性,

ともに変化は認められなかった。更に,BATに存在する2種類のグルコース卜ランスポ一夕ー,

即 ち, イン シュリン感受性 臓器に特徴的な4型(GLUT4) と広く全身臓器に存在し定常 的な 糖 輸送 を担 う1型(GLUTl)に 対して作製した特異抗体を 用いた検討も行った。その結 果,

GLUTlとGLUT4の量 は,NEの 投与 に よっ て, 細胞 膜画 分 及び 細胞 内プ ー ルで ある ミク 口 ゾーム画分のいずれにおいても全く変化しないことが判明した。これらの結果は,NEがインシュ リンとは全く異なるメカニズムによってグルコースの利用を促進していることを示唆するもので ある。

  6) 短期 間(4時 間) の寒 冷暴 露 で,2−DG取り込みは 約4倍に増加するものの,NE投与 の 場合 と同 様 に,GLUTlとGLUT4の 細胞内分布には変化 が認められなかった。しかし ,数 日 問 寒 冷 に 暴 露 す る と ,GLUT1の量 は変 化し ない に もか かわ らず ,GLUT4はBATで のみ 3〜4倍に増 加した。なお,交感神経を 予め切除した場合,GLUT4の増加は完全に消失した。

従 って ,寒 冷 暴露 が長 期間 にわ た ると,交感神経の作 用を介してGLUT4の合成がBATで特 異 的 に 促 進 さ れ , こ れ が グ ル コ ー ス 利 用 の 亢 進 に 寄 与 し て い る と 結 論 し た 。

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学位論文審査の要旨

  褐 色 脂 肪組 織 (BAT)は , 化 学的 熱 産 生 の 特異 的 部 位 で あ り, 寒 冷 暴 露 や冬眠 からの 覚醒時 の 非ふる え熱 産生や 過食時 に余剰 のエ ネルギーを散逸するための熱産生を行っている。申請者は,

BATで の熱 産 生 と グ ルコ ー ス 代 謝 の 神経 性 調 節 様 式を 明 ら か に する 目 的 で , 実験 動 物 と し て ラ ッ ト を 用 い, 種 々 の 生 理・ 病 理 的 条 件 下でBATでの グル コース 利用を 測定し ,交感 神経 の役 割 を確立 した 。更に ,交感 神経に よる グルコ ース利 用の促 進機構 にっ いて, グルコース輸送担体 (GLUT)に 焦 点 を 当 て て 検 討 した 。 こ れ を まと め た 本 論 文は , 和 文46頁 か ら な り ,参 考 論 文 7編を 付して いる。 その 概要は 以下の 通りで ある 。

  ラ ッ ト に 非 代 謝 性 グ ル コ ー ス 誘 導体 で あ る2―deoxyglucose(2―DG)を 投 与し ,BATへ の 取 り 込 み 量 から グ ル コ ー ス利 用速 度を 算出し たとこ ろ,(1)摂食 ,(2)寒 冷暴露 及び(3)麻酔 に よ る 低 体 温か ら の 回 復 時に 増加 した 。これ らの増 加に対 して, 交感 神経の 外科的 切除は(1) の 場 合 は 影 響 し な い が ,(2)及 び(3)の 場 合は 消 失 さ せ た。 ま た , (1) の 場 合 , 血 中イ ン シ ュ リ ン 濃 度は 上 昇 し , これ に 対 応 し て 心臓 , 骨 格 筋 及び 白 色 脂 肪 組織 (WAT)にお けるグ ル コ ー ス 利 用 も増 加 し た が ,(2) 及 び (3)で は こ のよ う な 変 化 は認 め ら れ なか った。 従って , BATに は, イ ン シ ュ リ ン非 依 存 性 で 交感 神 経 に よ って 活性 化され るよう な,独 特のグ ルコ ース 利 用調節 系が 存在す ると推 察され た。

  次 に ,BATで の グル コ ー ス 利用 に対す る交感 神経の 促進作 用を 直接証 明する ために ,(4)末 梢 で 交 感 神 経を 電 気 的 に 刺激 し た り ,(5)交 感 神 経の 伝 達 物 質 であ る ノ ル ア ドレ ナ リ ン(NA) を 血 中 に 投 与し て ,2―DGの 取 り 込 みを 調 べ た 。 (4) ,(5)い ず れ の 場合 も , 刺 激 頻 度あ る い は投与 量に 依存し た増加 が観察 され た。更 に,ア ドレナ リン作 動性 受容体 遮断薬を用いた薬理 学 的な検 討を 加え, ロ受容 体の関 与を 明らか にした 。これ らの結 果か ら,交 感神経節後線維終末 よ り 放 出 さ れるNAは , ロ受 容 体 を 介 してBATでの グ ル コ ― ス 利用 を 促 進 す ると 結 論 さ れ た。

  BATで の グ ル コ ース 利 用 に っ いて は , 細 胞 膜 での グ ルコー ス輸送 が律速 段階 である 。そこ で 最 後 に ,GLUTに 着 目 し てNAの 作 用 や 寒 冷 暴 露 の 影 響 を 検 討 し た 。BATに 存 在 す る2種 類

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之 夫

和 榮

昌 富

幸 文

藤 野

里 藤

斉 菅

中 首

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

のGLUT (GLUT1とGLUT4) に 対 し て 作 製 し た 特 異 抗 体 を 用 い てBAT膜 標 品 のGLUT 量を測定した結 果,NAの投与や短時間の寒冷 暴露ではGLUTの細胞内分布は変化せず,イン シュリンとは異なる機構によってグルコース輸送が増加することが示唆された。この考えは,

GLUTとサイトカ ラシンBとの結合実験での成績からも裏付けられた。数日間寒冷に暴露する と ,GLUTlの 量 は変 化し ない に もか かわ らず ,GLUT4は3〜4倍に 増加 し,この 増加は交 感神経を予め切 除することにより消失した。一方,心臓,骨格筋及びWATでは変化は認めら れなかった。従 って,寒冷暴露が長期間にわたると,交感神経の作用を介してGLUT4の合成 がBATで 特異 的 に増 加し ,こ れ がグ ルコ ース 利用 の亢進に寄与していると結論 された。

  以上のように,申請者はI BATにおけるグルコースの利用が,熱産生と同様に交感神経によっ て直接支配されていることを明らかにし,更にその機構が,他組織にみられる既知のものとは異 なりBATに独特のものであることを示した。従来,グルコースの利用亢進因子にっいては,イ ンシュリンが知 られていたが,BATではこれとは別にNAが亢進作用を持っとの成績は,独創 的であり糖代謝調節の研究領域への寄与も大きい。よって審査員一同は,申請者志水泰武氏が博 士(獣医学)の学位を受ける資格を有するものと認める。

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参照

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