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博士(医学)樋口栄作 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)樋口栄作 学位論文題名

CDDP 耐性ヒト頭頚部扁平上皮癌細胞株における カ CGQ および human 771 チCOII 遺伝子発現の増強

学位論文内容の要旨

    

緒言

  cis

一Diamminedichloroplatinum(II) (CDDP)は頭頚部癌に対する化学療法のキードラッグであ り , 癌細 胞の

CDDP

耐性は 臨床 上重 要な 問題 であ る.

CDDP

耐性 獲得 には ,金 属代謝 に関 わる タ ン パ ク 濃 度 の 上 昇 や

DNA

修 復 能 の増 強, 細胞 内CDDP蓄 積量 の減 少な ど様 々な機 序が 関与 す る と考 えら れて いるが 未だ 完全 には 解明 され てい ない .CDDP耐 性と の関 連が報 告さ れて い な か っ た 既 知 遺 伝 子

T‑p

´ 郡 血 の発 現が ,CDDP耐 性細 胞株 にお いて 増強 してい るこ とが

Di

胤rentimDiSplayのD)法を用いて最近明らかにされた.LiangとPardeeによって開発されたDD 法は ,任 意の 配列 のプ ライ マー をPCRに用 いる 事で 複数 のcDNA断 片を同時に増幅しゲル電気 泳動 で展 開後 ,得 られ たフ イン ガー プリント間の比較により特異的発現パターンを示す分子 種を同定する方法であり,真核細胞における遺伝子発現の差異を検出する強カな手段である.

本 研 究 で は

DD

法 の 改 良 版 であ る

RuorescentDD

FDD

) 法を 用 い て ,2組の

CDDP

感 受性 /耐 性ヒ ト頭 頚部扁平上皮癌(HNSCC)細胞株における遺伝子発現差異を検討したので報告する.

    

材料と方法

1

)細胞株とCDDP処理による細胞生存率の測定

  

ヒ ト 口 腔 底

SCC

細 胞 株

KB

, ヒ ト 喉 頭

SCC

細 胞 株

HEp2

と , そ れ ぞ れ の

CDDP

耐 性 変 異 株

KB

cDDP

,HEp2/

cDDP

を単 層培 養で 継代維持し,sulforhodamineBassりを用いてCDDP処理に よる生存率を測定した.

2

)RuorescentDifferen6alDisplay法

  

培 養細 胞か らto讎RNAを抽 出し ,ア ンカ ープ ライ マー を用 いた 逆転写反応によりcDNAを合 成し た. これ を螢 光標 識し たア ンカ ープ ライ マー と任意 プラ イマ ーを用いたPCRにより増幅 し, 得ら れた

cDNA

断片 を電 気泳 動に より分画し,遺伝子発現差異を螢光イメージアナライザ ーで視覚化した.

3

)cDNA断片の再増幅とサブクローニング,塩基配列の解析

  

親 株と 耐性 株の 間で 螢光 信号 強度 の異なるバンドをゲルから切り出し再増幅した.得られ た

PCR

産物 をサ ブク ロー ニン グし て塩 基配 列を 解析し

BLASTe

m

砠 シス テム を用い て相 同性 の検索を行った.

4

)ノーザンブロット法

  To

伽RNAを ゲル 電気 泳動に より 分画 しナ イロ ン膜 に転 写し ,デ イゴキシゲニンで標識した

cDNA

プ ロ ー ブ を 用 い て ハ イブ リ ダ イ ゼー ショ ンを行 い,

mRNA

を検 出し た. 対照 とし てa一

tubulmmRNA

を用いた.

(2)

    

結果

1

)CDDP処理による細胞生存率の比較

  3xio

個 の細 胞を 液体 培地 に懸 濁し て96穴 プレ ートに播き,種々の濃度のCDDPで細胞を処 理 し生 存率 を測 定し た,

ICso

で比 較す るとKB/cDDPとHEp2/c DDPはそれぞれの親株に対し2.5 倍(50時間処理)と6倍(63時間処理)の

CDDP

耐性を示した.

2

)FDD法

  40

種 類の 任意 プラ イマ ーと 螢光 アン カープ ライ マー を組 み合 わせ たPCRから 得られたcDNA 断 片 の

FDD

で は ,

KB

HEp2

と それ ぞれ の耐 性株 の間 で異 なる 発現 をし てい るバ ンドは

105

個 認 めら れ, その うち

34

個 が親 株に 強く 発現し ,

71

個が耐性株に強く発現していた.これらの ノ ヾ ン ド は

2

回 の

FDD

で 再 現 ´ 陸 を 示 し た た め , ゲ ル か ら 切 り 出 し さ ら に 検 索 し た .

3

) cDNA断片の再増幅と塩基配列の解析

  105

個の バンド のう ち87個が再増幅され,47個がサブクローニング可能であった.この47個 に つい て塩 基配 列解 析と 相同 性検 索を 行った 結果 ,37個はデータベースに登録されている遺 伝 子 と 高 い 相 同 性 を示 し, 残り の10個は 有意 な相 同性を 示さ なか った . 37個 のうち

2

個 は

human chorionic gonadotropin alpha subunit gene

伽CGa)の転写物の3.末端と99%以上の相同性を 示した,また,他の1個はhuman mff0めon(炳0nヴr0曲r〇me甜jdaSeSu6弸むロぎ卸e(由Um卸mr

C

〔瑚の転写物の3,末端と全塩基配列が一致した・

4

)ノーザンブロット法

  FDD

で 螢 光 信 号 強 度 の 異な る

47

個 の

cDNA

断 片 に つ い て , 親 株 と

CDDP

耐 性 株 の

mRNA

レ ベ ル で の 発 現 差 を ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 法 に よ り 検 討 した .

hCGamRNA

の 発 現 は

KB

cDDP

に認 め ら れ ,

KB

に は 認 め ら れ な か っ た .

humanmtCOHmRNA

の 発 現 は 親 株 に 比 べ

KB

cDDP

で増 強 し てい た. 伐―

mbum

の発 現差 は認 めな かった .

47

個のcDNA断片のうち20個は親株と耐性株の 間 で 発 現 差 を 認 め ず ,

24

個 は ぃ ず れ の 株 で も

mRNA

を 検 出 で き な か っ た .

    

考察

  

本 研 究 で は

FDD

法 を用 い て ヒ ト

HNSCC

細 胞 株 と その

CDDP

耐 性 変 異 株 の 遺 伝 子 発現 差異 を 検 討 し た .

FDD

フ イ ン ガ ープ リ ン ト 上 で は 発 現 の 異 な る 多 く の バ ン ド が 認 め ら れ たが ,

KB

/cDDPに非常に強い螢光強度を示したニつのノヾンドの塩基配列がゎC,Gのの3 末端と一致し,

ノ ー ザ ン ブ 口 ッ ト 法で もhCG伐耐 水Aの発 現が

KB

に 比べKB/cDDPで 増強 して いる 事が 確認 さ れ た. 由CIGぱと

CDDP

耐性 変異 株と の関 係に つい ての報告は本研究が初めてである.hCGは伐 と

p

の サブ ユニッ トか ら成 る糖 蛋白 ホル モン のー つで あり ,通 常妊 娠女性 の栄 養膜細胞から 産 生さ れる .あ る種 の腫 瘍組 織や 腫瘍 細胞株 にお いて もhCGや その サブユ ニッ トが産生され る 事が 知ら れて おり ,こ れら の蛋 白は 男性や 非妊 娠女性においては通常測定されないためそ の異所性発現は腫瘍の存在を示唆すると考えられている.現在カ(1´GロのCDDP耐性機構におけ る 役 割 は 不 明 で あ る . も し ヒ ト

HNSCC

患 者 に

CDDP

を 用 い た 化 学 療 法 を 行 っ た 後

hCGa

蛋 白 が 過剰 発現 する よう な場 合, カC,

Ga

CDDP

耐性 マー カー にな る可 能性が ある と思われる.

  

さ ら に 本 研 究 で

t

humanmtCOHmRNA

の 発 現 が ,

KB

に 比 べ そ の 耐 性 株 で 増 強 し て いる 事 を

FDD

法と ノーザ ンブ ロッ ト法 で確 認し た. ミト コン ドリ アは 様々 な機能 を有 する細胞内小 器 官で あり ,活 性酸 素の 産生 を通 じて 細胞に おけ るATP産 生や 細胞 内の酸 化還 元バランスに 貢 献 し て い る . 近 年

CDDP

耐 性 細 胞 株 に お け る チト クロ ーム

c

酸化 酵素 の活 性亢 進や

NADH

脱 水 素酵 素の 異常 ,ミ トコ ンド リア の膜 電位上 昇な どが報告され,ミトコンドリアの機能異常 と

CDDP

耐 性 と 関 連 が 注 目 さ れ て い る . 本 研 究 で示 した

CDDP

耐性 細胞 株に おけ るhuman  mt

COHmRNA

の 発 現 亢 進 は , ミト コ ン ド リ ア の 機 能 が 細 胞 の

CDDP

耐 性 と 関 係 し て い る 事を 示

(3)

唆していると思われる.

  DD

法は遺伝子発現の差異を検出する強カな方法であり,本研究でもCDDP感受性細胞と耐 性細胞の間で発現差を示す多くのノヾンドが認められ,その発現差は良好な再現性を示した,

本研究の技術的な間題点としては,

1

)目的とするバンドの精製度が低いためかサブクロー ニングの効率が低かったこと,

2

)ノーザンブロット法での

mRNA

検出率が半分以下であっ たこと,が挙げられる.後者の原因としては

DD

法から得られるcDNA断片の多くがATrichで 短い3,末端部分であり,ノーザンブロット法のcDNAプローブとして不適当である事が考えら れる.

    

結語

  FDD

法を 用いて

CDDP

感受性 及び耐性ヒ ト

HNSCC

細胞 株の遺伝子 発現を比較 し,hCGaと

human mt COII

の 発 現 が 親 株 に 比 ベ

KB/cDDP

に 増 強 し て い る 事 が 認 め ら れ た .

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

CDDP 耐性ヒト頭頚部扁平上皮癌細胞株における カ CGQ およびhuTna,'z 所チCOII 遺伝子発現の増強

  cis‑Diamminedichloroplatinum(II) (CDDP)は頭頭部癌の化学療法におけるKey Drugであり,

癌 細 胞 のCDDP耐性 獲 得 は 臨床 上重要 な問題 である が未だ 完全に は解明さ れてい ない. 本研 究 はFluorescent Differential Display (FDD)法を用いて,2組のCDDP感受性及び耐性ヒト頭 頭部扁平上皮癌(HNSCC)細胞株における遺伝子発現差異を検討した.

  細 胞株 は ヒ ト 口腔 底SCC細 胞株KB, ヒト 喉 頭SCC細胞 株HEp2と , そ れぞ れ のCDDP耐性変 異 株KB/cDDPHEp2/cDDPを 用い た.CDDP処 理によ る生存 率はsulforhodamineBassayで測 定 し た.FDD法 では培 養細胞 からtotal RNAを抽出 し,ア ンカープ ライマ ーを用いた逆転写反応 に よ りcDNAを 合成 後 , 螢 光標 識 し た アン カ ー プ ライ マ ーと任意 プライ マーを 用いたPCR よ り 増 幅し , 得 ら れたcDNA断 片を電 気泳動 により 分画し ,遺伝 子発現差 異を螢 光イメ ージ ア ナライ ザーで 視覚化し た.親 株と耐 性株の 間で螢 光信号 強度の 異なるバンドをゲルから切 り 出 し 再増 幅 し た .得 ら れ たPCR産 物をサ ブクロ ーニン グして塩 基配列 を解析 しBLAST   mailシ ス テ ム を用 い て 相 同性 の検索 を行っ た.mRNAレ ベルで の発現 差をノ ーザン ブロッ ト 法により検討した.対照としてa‑tubulin mRNAを用いた.

  CDDP処 理 によ る 細 胞 生存 率 をIC50で 比較 す る と ,KB/cD DPとHEp2/cDDPは それぞ れの親 株 に 対 し2.5倍 (50時 間 処 理 )と6倍(63時 間 処 理) のCDDP耐性 を示し た.40種 類の任 意プ ラ イ マ ーと 螢 光 ア ンカ ー プ ラ イマ ー を 組 み合 わ せ たFDDでは,KB,HEp2と それぞ れの耐 性 株 の間で 異なる 発現をし ている バンド は105個認 められ,そのうち34個が親株に強く発現し,

71個 が耐性 株に強 く発現 してい た.この うち87個が再増 幅され ,47個がサブクローニングさ れ た.塩 基配列 解析と相 同性検 索を行 った結 果,こ のうち37個は既 知遺伝子で,10個は未知 遺伝子であった.そのうち2個はhuman chorionic gonadotropin alpha subunit (hCGり呂eneと99 以 上 の 相同 性 を 示 し, 他 の1個は 由um卸m´ 眦honむ0nfocカmmeox耐 欝esu6unむ ロmum卸mr c〔) めgeneと一 致した .ノー ザンブ ロット 法によ り47個のcDNA断片に ついて 親株とCDDP 性 株 のmRNAレ ベ ル で の 発 現 差 を 確 認 し た 結 果 ,hCGamRNAhumanmtCOIImRNAの 発 現 が 親株に 対しKB/cDDPで 増強し ていた ,a‐tubulinの発現差は認めなかった.他の20個は親株 と 耐 性 株の 間 で 発 現差 を 認 めず ,残りの24個は いずれの 株でもmRNAを検 出でき なかった .   FDD法を 用 い てCDDP感 受性 及 び 耐 性ヒ トHNSCC細 胞 株 の 遺伝 子 発 現 を比 較 し ,由ClGa

439

夫 男 三

   

   

澄 征眞 信 山川 犬細 西 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

human mtC・〇ロ乃発現が親株に比べKB/cDDPに増強している事が認められた.hC,GaとCDDP 耐性細胞株との関係についての報告は本研究が初めてであるが,カ CGaのCDDP耐性機構にお ける役割は分かっていない.hCGはaとBのサブユニットから成り,腫瘍組織や腫瘍細胞株に おぃてhCGやそのサブユニットが異所性発現することが報告されている.もしヒトHNSCC患 者にCDDPを用いた化学療法を行った後hCGa蛋白が過剰発現するような場合,カCく弧は CDDP耐性マーカーになる可能性があると思われる.human mtc〇口がCDDP耐性機構にどの ような役割を果たしているかは不明であるが,ミトコンドリアの機能が細胞のCDDP耐性と 関係している事を示唆している可能性があると思われる.

  公開発表では,細川眞澄男教授からFDDで発現差を示すバンドの多くがノーザンブロッテ イングで発現差を示さない理由について質問があった.西信三教授はhCGaとhuman mtc〇H のHEp2とそのCDDP耐性細胞株における発現の有無ついて質問した.犬山征夫教授はヵCGa のCDDP耐性マーカーとしての臨床応用の展望を求めた.いずれの質問に対しても,申請者 はおおむね妥当な回答をした.

  この論文は,hC,Gaとhuman mtc〇ロの発現がCDDP耐性HNSCC株において増強しているこ とをはじめて明確にしたことで高く評価され,今後のFDD法を用いたCDDP耐性の研究の発 展が期待される.

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ申 請者 が博 士( 医学 )の 学位 を受 ける のに充分な資格を有するものと 判定した,

440

参照

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