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博士(獣医学)橋本憲佳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)橋本憲佳 学位論文題名

放 射 線 発 癌 モ デ ル と し て の マ ウ ス 肺 腫 瘍 に 関 す る 研 究 学 位 論 文 内容 の 要旨

  本研究では放 射線発癌機構の研究において必要とな る、腫瘍の低自然発生率並びに高誘発系のマウスモデル の作出を 目的に、C3 H/He雄マウスの胸部へのX線照射 による肺腫瘍の誘発を、様々な照射法によって試みた。

また、このモデルの特徴を明らかとするため、照射後早 期の肺の細胞動態を調べると共に、1回照射による肺腫 瘍誘発の線量効果、分割照射法を用いた線量率効果、並 び に 全 身 照 射 の 効 果 に つ い て 検 討 を 加 え た 。   3H̲TdRの取り込みによるミクロオートラジオグラフ イーによ りX線胸部1回照射後の肺の細胞動態を調ぺる と、肺腫瘍誘発との関連を示唆する照射後1力月目頃に 肺胞上皮細胞の増殖が観察された。

  肺の細胞動態の日内変動は、3 H̲TdRの取り込みによ るミクロオートラジオグラフィーにより、夜に高く昼に 低い取り 込みが見られた。この細胞標識率の変化は、

Goから細胞回転 へ入る細胞数を反映するものと考えら れ、放射線感受性が夜に高いことを示唆するものと思わ れた。

(2)

  10Gy昼1回 照射 後の経時観察により、 肺腫瘍発生率 は照 射後15力月目までほぼ直線的に増加するが、12力 月目で非照射群との有意な差が見られたため、以後の腫 瘍誘発実験の観察期間を120月と定めた。照射を昼に行 っ た 場合 の肺 腫瘍 発生率の線量効果は、5〜10Gyで有 意に増加し、より高線量では自然発生率の水準まで減少 する釣鐘型となった。さらに腫瘍径の変化は腫瘍細胞の 増殖速度を反映すると考えられるが、照射で増大した腫 瘍径が高線量で非照射群の水準まで減少したことから、

X線照射の細胞増殖速度への影響が示唆されlた。このこ とは高線量での発生率と腫瘍径の減少の原因の1っとし て腫瘍の増殖に対する抑制的な因子としての宿主因子の 存在が考えられた。

  夜照射による腫瘍誘発の線量効果では、1.25 Gyで有 意な腫瘍発生率の増加が観察され、腫瘍誘発における肺 の放射線感受性は夜に高いことが示唆された。またこの ことは細胞動態の日内変動から予想された変化と一致し ていることから、腫瘍誘発の感受性変化は細胞増殖サイ クルに入る肺の肺胞上皮細胞数、即ち腫瘍誘発の標的細 胞 数 に 関 係 し て い る こ と が 考 え ら れ た 。   一般に放射線による腫瘍誘発の線量率効果に関し、線 量率を下げることにより放射線による細胞損傷が修復さ れて、腫瘍発生率が低くなると考えられてきた。そこで 分割照射法を線量率を下げる方法として用い、分割照射 による腫瘍誘発への効果を調べた。

(3)

  2等分割照射を種々の線量および照射間隔で行ったと ころ、1回照射では腫瘍誘発にとって過線量となった線 量を分割照射すると、腫瘍誘発における負の効果を減弱 されたためと思われる腫瘍発生率増加が観察された。ま た分割間隔の延長に伴って、腫瘍原性損傷の修復と思わ れる発生率減少が観察された。一方、総線量が1回照射 での腫瘍発生率の直線的増加領域である場合において、

分割照射により腫瘍発生率が1回照射よりも増加する場 合のあることが観察された。その線量域においては高線 量で見られた腫瘍誘発に対する負の効果は除外されるこ とから、分割照射によって腫瘍原性損傷が増幅されたと 考えられた。その損傷増幅機構についての詳細は不明で あるが、分割照射によるマウスの肺腫瘍誘発は、分割に よる腫瘍原性損傷の修復と増幅という2っの競合する効 果 に よ り 決 定 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   1回照射では腫瘍誘発に抑制的な効果を表す線量域に ついては、その2等分割照射によって腫瘍誘発に対する 負の効果が減弱或は消失するので、本来の腫瘍誘発の線 量効果としての腫瘍発生率を得ることが可能であると考 えられた。そこで腫瘍誘発の負の効果を減弱させると共 に総線量をさらに増加させる目的で、分割間隔を1週間 にとったX線の胸 部4等分割照射を行った。その結果線 量の加算効果は得られたが、腫瘍発生率は最大でも2等 分割照射における最大発生率には及ばなかった。しかし ながら、腫瘍 径は明らかに増大する傾向が見られた。

(4)

  肺腫瘍誘発に対する抑制因子としての宿主の免疫機能 の影響について考察するために、X線の7.SGy胸部1回 照 射後 、 免 疫 抑制 の 目 的 で30月 間 隔 でに3回の3 Gy 全身照射を行った。その結果、肺腫瘍発生率は過去最大 の47%となり、しかも担腫瘍マウスの平均腫瘍数におい ても顕著な増加が観察されたことから、腫瘍誘発に対す る宿主因子の関与が示唆された。このことはX線による マウスの肺腫瘍の高発系の作出には、定期的な全身照射 が 有 効 で あ る こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨 主 査  教 授  佐 藤 文 昭 副 査  教 授  藤 永   徹 副査  助教授  桑原幹典 副 査  教 授  佐 藤   博

学 位 論 文 題 名

放射線発癌モデルとしてのマウス肺腫瘍に関する研 究

  放射線による発癌リスクの推定は、放射線障害を防止する上での最重要課題で ある。しかしながら放射線発癌研究のための優れた動物モデルが少なぃために、

現在におぃてもりスク推定のための基礎的データは不足している。申請者は、放 射線発癌の研究におぃて必要となる、腫瘍の低自然発生率並びに高誘発系のマウ スモ デルの作 出を目的 に、C3H/He雄マウ スの胸部 へのX線照 射による 肺腫瘍の 誘 発 を 試 み る と と も に 、 放 射 線 発 癌 モ デ ル と し て の 特 性 を 検 討 し た 。   3H̲チミ ジンの取 り込みに よるミクロ オートラジオグラフイーにより、X線胸 1回 照 射 後 の 肺 の 細 胞 動 態 に は 、 肺 腫瘍 誘 発と の 関 連を 示 唆す る 照 射後 1カ月 目頃の肺 胞上皮細胞の増殖のあることが観察された。さらにこの細胞増殖 応答や正常肺の細胞動態には、夜に高く昼に低い日内変動が見られた。この細胞 動態の変化は、Go期から細胞回転へ入る肺の細胞数を反映するものと考えられ、

腫 瘍 誘 発 に お け る 放 射 線 感 受 性 が 夜 に 高 く な る こ と を 示 唆 し て い る 。   1回 照射による肺腫瘍誘発におぃては、腫瘍発生率、腫瘍径其に釣鐘型の線 量効 果曲線が 観察され、腫瘍の誘発と抑制との2因子により腫瘍の誘発が決定さ れることが示されたが、夜1回照射ではより小線量で有意な腫瘍誘発が観察され、

肺腫瘍誘発における放射線感受性の日内変動を示唆した。

  2等分 割照射は線量率を下げるもっとも単純な方法であり、一般的には線量率 を下げると損傷の修復のために腫瘍発生率は低くなるとされているが、本モデル にお ぃては、 分割照射により腫瘍発生率が1回照射よりも増加する場合のあるこ とが観察された。従って分割照射による肺腫瘍誘発は、腫瘍原性損傷の修復と増 幅 と い う 2つ の 競 合 す る 効 果 に よ り 決 定 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   以上のように、このマウス肺腫瘍モデルは放射線発癌研究のためのモデルとし

(6)

ての有用性が非常に高い。よって審査員一同は、橋本憲佳氏が博士(獣医学)の 学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。

参照

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