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博士(獣医学冫小林 潔 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学冫小林   潔 学位論文題名

IacZ 遺伝子導入腫瘍細胞を用いた微小転移モデルの作出と 微小転移巣の抗癌剤感受陸に関する研究

  癌の集学的治療の進歩にもかかわらず治療成績に著しい進歩が見られない理由は,癌によ る死亡の最大の原因である転移の抑制が現時点では困難なことによる.転移を抑制するため には微小転移の段階でこれを治療する方法が有効と考えられることから,癌転移の初期段階 のメカニズムを解明することは極めて重要と考えられる.転移形成には各種の接着因子,マ トリクス分解酵素,宿主の増殖因子など多くの因子が関与することが,主として面函むりの 実験から明らかにされつっある‐しかしながら,癌転移の初期過程の細胞動態には依然とし て不明な点が多く,転移機構の解明のためにも,また転移の治療という臨床的側面からもこ の点を明らかにすることは重要である.

  近年,酵素遺伝子をマーカーとして転移性細胞に導入することにより,微小転移巣を面 VI VOで検出する技術が報告された.以後,由来臓器の異なる種々の細胞にロ‑galactosidase

(ム彪)遺伝子が導入され,わwv0における転移細胞の検出に応用されてきた.しかし,癌 転移の初期段階における細胞動態を詳細に検討した報告は乏しく,その実態はいまだ明らか にされていない.本研究では,ラット前立腺癌細胞株とマウス肺癌細胞株を用いて,大腸菌 由来のム彪遺伝子導入による微小転移モデルの作出を行い,これらニつの細胞の微小転移 形成過程を,その細胞増殖動態を含めて詳細に検討した.さらに,マウス肺癌微小転移モデ ルを用いた抗癌剤の微小転移抑制効果の判定を試み,転移の初期段階における治療の有効性 について検討した・

  第1章では,分化型ラット前立腺癌細胞株にlacZ遺伝子をマーカーとして導入すること により微小転移モデル(PLS3012細胞)を作出した.PLS3012細胞の形態学的特徴,増殖速 度,転移能はlacZ遺伝子導入前とほぼ同等であった.PLS3012細胞をマウスの静脈内に移 植した結果,肺における微小転移巣は,X―Gal染色により特異的,かつ高感度に血wv0で 検出可能であった.画像解析の結果,マウスの静脈内への移植後,PLS3012細胞の肺におけ る転移巣のほとんどは移植後7日目までに消失し,個々の転移巣の大きさは移植後4日目以 降増加し始めることが明らかとなった.X−Gal−BrdU二重染色の結果,PLS3012細胞の肺転 移巣における細胞増殖率は,移植後2日目に一時的に減少し,4日目以降あらたな増殖が開 始されることが示された. IV型コラーゲン免疫染色の結果,肺転移巣が異所性増殖を開始 した移植後4日目において,これらの転移巣は血管基底膜に囲まれて存在していた.超微形 態学的観察では,移植後2日目では転移細胞のほとんどが肺毛細血管内で変性ないし壊死性 の変化を示しており,移植後4日目では微小転移巣が血管基底膜と直接接して血管内で増殖 している像が観察された.これらの結果から,PLS3012細胞は,肺において血管外への脱

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出に先立って,管内性に増殖を開始することが明らかとなった.また,PLS3012細胞は前立 腺痲の 転移形成過 程の初J切段階を解析するうえで有用なモデルであると考えられる.

  第2章では,マウス肺癌細胞を用いて,第1章同様に微小転移モデルを作出し(4A1ー1細 胞),同細胞の肺における転移巣の形成過程,すなわち血液循環への遊離,肺毛細血管への 定着,血管外脱出および肺における初期増殖を詳細に解析した.病理組織学的観察の結果,

静脈内移植後,肺に達した4A1―1細胞は数時間内に速やかに血管外に脱出するものの,大 半がその後2ないし3日の間に血管外で死滅することが明らかになった.これらの所見は移 植後2日目における転移巣のBrdU標識率の低下と,画像解析により示された肺転移巣数の 急激な減少と一致した.移植後4日目以降,残存した肺転移巣の面積とBrdU標識率が増加 を開始した. IV型コラーゲン免疫染色の結果,微小転移巣の増大に伴って,転移巣周囲の 基底膜の部分的な消失が認められた.4A1―1細胞をマウスの皮下に移植した結果,同細胞は 移植後10日目より血 中に単一細 胞として認められ,移植2週間後より1個ないし2個の細 胞から構成される微小転移巣が肺に観察された.これらの結果から,Lewis肺癌細胞は単一 細胞での血中への遊離,肺への定着と速やかな血管外脱出,大半の細胞の死滅,血管外にお ける残存細胞の新たな増殖という一連の過程を経て二次臓器における転移巣を形成すると考 えられる.

  第3章では,微小転移巣の抗癌剤l‑(2‑tetrahydrofuryl) ‑5 ‑fluorouracilとuracilの合剤 であるUFTに対する感受性を,第2章で作出したマウス肺癌微小転移モデルを用いて評価 した.4A1‑1細胞を皮下に移植されたマウスの肺における肉眼的転移巣の数は,UFTを移 植後14日 目より35日目ま で(早期投 与群)15 ‑20 mg/kgの用量で経口投与することに より有意に抑制されたが,移植後21日目(後期投与群)からの投与では転移巣数の減少は 認められなかった.一方,実体顕微鏡による微小転移巣の観察では,早期投与群において,

より低 用量(10 mg/kg)か ら転移抑制効果が認められ,後期投与群(20 mg/kg)において もUFT処置による 転移巣数の 有意な減少が認められた.皮下の原発巣の増殖は,15およ び20 mg/kg群にお いてのみ有 意に抑制された.4A1‑1細胞を静脈内に移植されたマウス の肺に おける転移 巣の数なら びに面積は ,移植後4日目より12日目までUFTを20 mg/kg の用量で経口投与することにより有意に減少したが,8日目からの投与では転移巣の数に影 響は認められず,面積のみが減少していた.4A1‑1細胞の移植に先立ってUFTを投与した 結果,実験的肺転移巣の数に影響は認められなかった.以上の結果は,癌転移巣の形成過程 初期における高い抗癌剤感受性を示すとともに,低用量の抗癌剤による肺転移の有効治療の 可能性を示唆している.

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主査教授梅村孝司 副査教授岩永敏彦 副査教授藤永    徹

副査教授土井邦雄(東京大溺

学 位 論 文 題 名

IacZ 遺伝子導入腫瘍細胞を用いた微小転移モデルの作出と 微小転移巣の抗癌剤感受陸に関する研究

  癌 の 転移 に は各 種 の 接着 因 子 ,マ トリク ス分解酵 素,宿主 の増殖因 子など多 くの因 子が 関 与 する こ とが 明 ら かに さ れつ っあ る。しか し,癌転 移の初期 段階にお ける細胞 動態 を 詳 細に 検 討し た 報 告は 乏 しい 。本 研究では ,ラット 前立腺癌 細胞株と マウス肺 癌細胞株 に,大腸 菌由来のp‑galactosidase (lacZ)遺伝子を 導入して微小転移モデルを 作出し, 以下の実 験を行っ た。

  最 初 に, 分 化型 ラ ッ ト前 立 腺 癌細 胞株にlacZ遺伝子を 導入して 微小転移 モデルを 作 出し た 。 前立 腺 癌細 胞 の 形態 学 的特 徴, 増殖速度 ,転移能 はlacZ遺伝子 導入前と ほぽ 同等であ った。前 立腺癌細 胞をヌー ドマウスの静脈内に移植し、X‑Gal−BrdU二重染色、

画像 解 析 、超 微 形態 学 的 検査 、IV型 コラー ゲン免疫 染色など の方法を 用いて経 時的に 検査 し た 結果 、 前立 腺 癌 細胞 は ,肺 にお ける血管 外への脱 出に先立 って,管 内性に増 殖するこ とが明ら かとなっ た。

  次 に ,Le wisマウ ス 肺 癌細 胞 を 用いて 微小転移 モデルを 作出し, 同細胞の 肺におけ る転 移 巣 の形 成 過程 を 詳 細に 解 析し た。 その結果 、肺癌細 胞は単一 細胞での 血中への 遊離 , 肺 への 定 着と 速 や かな 血 管外 脱出 ,大半の 細胞の死 滅,血管 外におけ る残存細 胞の 新 た な増 殖 とい う 一 連の 過 程を 経て 二次臓器 における 転移巣を 形成する ことが分 かった。

  最 後 に , 微 小 転 移 巣 の 抗 癌 剤UFTに 対 す る 感 受性 を , 先に 作 出し た 肺 癌細 胞 を 用 いて評価 した。肺 癌細胞を 皮下に移 植されたマ ウスの肺 における 肉眼的転移巣の数は,

UFTを 移 植 後14日 目 よ り35日 目 ま で ( 早 期 投 与群 ) 経 口投 与 す るこ と によ り 有 意に 抑制 さ れ たが , 移植 後21日 目 ( 後期 投与群 )からの 投与では 転移巣数 の減少は 認めら れな か っ た。 一 方, 早 期 投与 群 にお い て ,よ り 低 用量 (10 mg/kg)から転移 抑制効果 が認 め ら れた 。 この 実 験 によ り 、癌 転移 巣の形成 過程初期 には高い 抗癌剤感 受性があ り 、 低 用 量 の 抗 癌 剤 に よ っ て 肺 転 移 を 有 効 治 療 で き る 可 能 性 が 示 さ れ た 。   以 上 の成 果 は、 転 移 初期 に お ける 癌細胞 の生体内 動態の理 解に大き く貢献す る。よ っ て 、 審 査 員一 同 は 、小 林 潔氏 が 博 士( 獣 医学 ) の 学位 を 受 ける の に十 分 な 資格 を 有するも のと認め た。

参照

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