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順向干渉の形成に及ぼす記銘時・検索時の弁別手掛 り提示の効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

順向干渉の形成に及ぼす記銘時・検索時の弁別手掛 り提示の効果

著者 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 40

号 1

ページ 213‑221

発行年 1991‑11‑25

その他のタイトル The Effects of Encoding or Retrieval Cues upon the Buildup of Proactive Interference

URL http://hdl.handle.net/10105/1801

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奈良教育大学紀要 第40巻第1号(人文・社会)平成3年

Nara Univ. Educ, Vol. 40, No. 1 (Cult. & Soc.),1991

順向干渉の形成に及ぼす記銘時・検索時の 弁別手掛り提示の効果

藤 田   正 (奈良教育大学心理学教室)

(平成3年4月30日受理)

Keppel and Underwood (1962)が、 Brown‑Petersonパラダイムを用いて短期記憶における忘 却に干渉が関係していることを兄いだして以来、順向干渉(Proactive Interference)、または順 向抑制(Proactive Inhibition)の研究を中心に、干渉の形成や解除に影響する要因や、その生起 メカニズムを検討する多くの研究が行われてきた(Crowder, 1976; Wickens, 1972)。しかしなが ら、理論的な検討がなされてきたにもかかわらず、まだ十分な答が出ていない問題は、順向干渉 の形成の原因が記銘時にあるのか、検索時にあるのかという内容に関するものである。すなわち、

記銘時の手掛りの機能の低下を考える立場は、同一の手掛りを用いた符号化を行うために弁別的 な符号化が行えなくなり、それが順向干渉を形成したと考える。他方、検索時の手掛りの機能の 低下を考える立場は、同一の手掛りを利用した検索を行わねばならないため、手掛りを用いた弁

別的な検索ができなくなり、それが順向干渉を形成したと考える。

筆者は、これまでにも順向干渉は記銘時、及び検索時に利用される手掛りの弁別機能が低下し ていく結果として形成されることを実験的に検討してきた(藤田、 1985a、 b、 1986、 1989)c し たがって、これをさらに理論的に発展させるために、順向干渉形成の原因位置の問題と関連づけ て検討することが必要になってきた。

この問題にアプローチする方法のひとつは、 Brown‑Peterson試行が終わった後、それまでに 記憶した項目を再生させる最終自由再生(FinalFreeRecall)テストを行わせる方法である。記 銘時説では、試行を重ねるにつれて先行試行の影響を受けて記銘が困難になり、貯蔵される量も 減少すると考えている。したがって、最終自由再生においても成績は、試行に伴い減少し、

Brown‑Peterson試行の成績と類似の再生パターンを示すことが前提となる。他方、検索時説では、

項目は貯蔵されていても、試行を重ねるにつれて検索時に現試行で再生すべき項目と先行試行に あった項目との弁別が困難になると考えている。しかし、最終自由再生では再生時の弁別の困難 さはない。したがって、 Brown‑Peterson試行の再生のパターンとは異なり、試行に伴う減少を 示さないことが前提となる。この方法により得られた結果は、記銘時説を支持するもの(Radtke

& Grove, 1977; Radtke, Grove & Talasli, 1982)、検索時説を支持するもの(藤田、 1985a; Loftus

& Patterson, 1975; Watkins & Watkins, 1975)と結果が一貫しておらず、不安定である。また、

間接的にしか原因の位置を確かめることができないという欠点がある。

もうひとつの方法は、記銘時または検索時に弁別的な手掛りを提示し、順向干渉の形成や解除 に及ぼす効果を検討するものである。この方法は、手掛り提示の時期を直接操作することができ るので最終自由再生による方法よりも優れている Gardiner,Craik and Birtwistle (1972)は、

順向干渉が形成された後の解除試行で、リスト項目を「庭の花」から「野生の花」の下位カテゴ リーの項目に変化させ、記銘時または検索時に下位カテゴリー名を手掛りとして提示する条件を

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214

藤 田   正

設け、手掛りを提示しない統制条件の成績と比較した。順向干渉からの解除(Release from PI) は、統制条件では生じなかったが、記銘時手掛り条件と検索時手掛り条件では、同程度の顕著な 解除が生じた。ただし、順向干渉形成の原因の位置についての彼らの結論は、統制条件と検索条 件の比較のみでなされた。つまり、両条件は検索時までは同じ符号化の条件であったので、その 違いは検索時にあるというものであった。しかし、同様に解除の見られた記銘時手掛り条件につ いてはなんら触れられていない。また、手掛り提示の操作は解除試行においてのみなされたもの であり、この方法では順向干渉が形成されていく過程そのものを検討できない。

以上の諸点を考慮して、藤田(1985b)では、カテゴリー名手掛りを提示しなければリスト内 の共通性に気付きにくい感覚印象カテゴリー(たとえば、 "丸い、赤い、やわらかい"といった カテゴリー)に基づくリストを用いて、順向干渉形成の原因の位置について検討した。弁別的な 手掛りとして、感覚印象カテゴリー名を毎試行、記銘時または検索時に提示した。その結果、手 掛りを提示されなかった株制条件では顕著な順向干渉が見られた。それに対して2つの手掛り条 件では順向干渉がほとんど形成されなかった。しかし、試行の後半においては記銘時手掛り条件 で若干の再生率の低下が見られた。この結果から、順向干渉の形成は記銘時、及び検索時の手掛 りの弁別機能の低下によって生じることが示されたが、特に検索時の弁別機能の影響が大きいこ とが明確にされた。

ところで、藤田(1985b)では、提示された感覚印象カテゴリー名が弁別的な手掛りとして各 試行を区分している。しかも、各試行での手掛りの同士の間には共通する1つの意味による直接 的な関連性が兄いだされないので、手掛りが独立して効果的に利用される可能性は大きく、手掛 りの効果も顕著であったと考えられる。それに対して、概念カテゴリー項目リストの場合を考え てみると、各試行が下位カテゴリー名によって区分されている場合、下位カテゴリー名が手掛り として弁別的に機能しても、その背景には上位概念カテゴリーが存在しているので、その影響が でることが考えられる。この場合には、手掛りの弁別機能の効果は幾分弱められるかも知れない。

手掛りの弁別機能を検討する上において、試行間の手掛りの関連性の影響について検討しておく ことも必要であるが、これまでのところ検討はなされていない。

そこで本研究では、順向干渉の形成における手掛りの弁別機能の低下が、主として記銘時に大 きいのか、それとも検索時に大きいのかを明らかにするため、記銘時あるいは検索時に弁別的な 手掛りとして機能すると考えられる下位カテゴリー名を提示することにより、順向干渉の形成に 及ぼす効果について検討することを目的とした。記銘時の弁別手掛りの提示は、弁別的な符号化

を促進し、検索時の弁別的な手掛りの提示は、弁別的な検索を促進することが予想されるので、

それらの手掛り条件では、統制条件に比べて順向干渉は生じにくいだろう。さらに、記銘時と検 索時の手掛り提示の効果の違いから、順向干渉が形成される原因がいずれの段階で大きく作用す

るのかを明確にするだろう。

方   法

実験計画  3 (手掛り条件) ×3 (試行)の要因計画であった。手掛り条件の要因は、記銘 時に下位カテゴリー名を提示する記銘時手掛り条件、検索時に下位カテゴリー名を提示する検索 時手掛り条件、何ら手掛りを提示しない統制条件の3条件であった。試行の要因は、第1試行か

ら第3試行までであり、被験者内の要因であった。

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順向干渉の形成に及ぼす記銘時・検索時の弁別手掛り提示の効果 :ir‑

被験者  被験者は、大学生54名(平均年齢19歳9カ月、範囲18歳3カ月〜23歳5カ月)であっ た。これらの被験者は、各条件ごとに18名ずつ割り当てられた。

記銘リストおよび装置  記銘リストは、小川(1972)と藤田・亀井1988)を参考にして選 択した楽器と花の2種類の概念カテゴリーの中から、 =管楽器、弦楽器、打楽器、''及び=春に咲 く花、夏に咲く花、秋に咲く花"の下位カテゴリーに属する典型的な項目で、 2‑6文字のもの が、各々の下位カテゴリーから3項目ずつ、計18語が選択された。表1はその一例を示したもの である。 1リストは3項目から成り、リスト間のカテゴリー内出現頻度数、文字数、熟知度がで きるだけ等しくなるように考慮した。項目は邦文タイプで仮名に打ったものをスライドにした。

1枚のスライドには3つの項目名が等間隔で右下がりに配列されている。なお、各リストともリ スト内の項目配列位置と提示順序の異なるリストを3種類ずつ用意した。これとは別に、それぞ れのリストに合わせて練習課題用リストを2試行分作成した。このリストは、本課題とは異なる カテゴリーの項目で構成されている。

表丁 本研究で用いた記銘リストと手掛りの一例

試     行

1         2

ホルン    バイオリン    シンバル 項目名  トランペット    チェロ    カスタネット

フルート     ビオラ      タイコ 手掛り名   管楽器     弦楽器     打楽器

Kodak Ektagraphic Slide Projectorを用いてスライドを提示し、項目提示時間、リスト間間隔 などの時間制御には、サンワ製Digital Time Regulatorを用いた。把持時間、再生時間、及び試 行間間隔の測定にはストノブウオッチを用いた。

手続き  実験は個別に行われた。課題についての標準的な教示を与えた後、タイムレギュレー ターのスイッチを入れ、プロジェクターを作動させ、練習を2試行行った。なお、手続きは本課 題と同じであるので、本課題のものを取り上げることにした。準備の合図用のスライドが2秒間 提示された。続いて記銘時手掛り条件では、 『今から覚えるものは、 00です。』といった下位カ テゴリー名が、また残りの2条件では、 『*』が2秒間提示された。次に、 3項目が同時に2秒 間提示され、記銘が求められた。続いて、リハーサル妨害課題用の3桁の整数のスライドが20秒 間提示され、声に出して3ずつ小さい方へ減算することが求められた。その直後に、検索手掛り 条件では『今覚えたものは、 ○○です。思いだして言ってください。』のような下位カテゴリー 名を含む手掛り用のスライドが、残り2条件では『今覚えたものを思い出して言ってください。』

と言う、再生用スライドが提示され、それぞれ10秒間に口頭で再生することが求められた。この ような手続きで第1試行が行われ、同様にして3試行が繰り返された。以上のような手続きが、

カテゴリーの異なる2種類のリストについて行われた。

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21ts

田 m^^na

結   果

結果の処理に際しては、 2種類のリストの成績を平均した値を用いた。

正再生率  項目の提示順序に関係なく正しく再生された項目の再生率を求め、条件別に試行 毎の再生率の平均を図示したのが図1である。個人の再生率を角変換し、その平均値を用いて3 (手掛り条件) × 3 (試行)の分散分析を行った。その結果、手掛り条件(F‑10.51,df‑2/54.

/サ<.001)、と試行(F‑24.80,df‑2/102,p<.001)の主効果がそれぞれ有意であった。

また、手掛り条件×試行の交互作用(F‑1.89,d/‑4/102)が有意な傾向に近い債を示した ので、念のために単純効果の検定を行った。まず、手掛り条件毎に試行に伴う再生率の変化を見 るために分散分析の誤差項(MSe(u))‑174.26)を用いたt検定を行った。その結果、記銘時手掛 り条件では、第1試行と第2試行(*(153)‑3.74,/><.001)、第1試行と第3試行U(153)‑

4.24,♪<.001との間にそれぞれ有意な差が見られた。しかし、第2試行と第3試行の間には 有意な差は見られなかった。検索時手掛り条件では、第1試行と第3試行U(153)‑2.10,/><.05) にのみ有意差が見られた。統制条件では、第1試行と第2試行(t(153)‑4.78,/><.001)、第1 試行と第3試行(f(153)‑4.88,/><.001)との間に、それぞれ有意な差が見られた。しかし、

第2試行と第3試行との間には有意な差は見られなかった。

次に、試行毎に手掛り条件間の差について合成した誤差項(MSe ‑191.3)を用いたt検定を行っ た。その結果、第1試行では全ての条件間に有意差は見られなかった。第2試行では、記銘時手 掛り条件と検索時手掛り条件(Kl02)‑‑2.41,/><.05)、記銘時手掛り条件と統制条件(K102)

‑1.85,/><.10)及び検索時手掛り条件と統制条件U(101)‑4.27,/><.001)の間に有意な差が 見られた。また第3試行では、記銘時手掛り条件と検索時手掛り条件(Kl02)‑‑2.03,/><.05)、

及び検索時手掛り条件と統制条件(ul02)‑3.51,/><.001)との間に有意な差が見られた。し かし、記銘時手掛り条件と株制条件との間には有意な差は見られなかった。

誤反応 (1)侵入エラー数:リスト外侵入エラー(リストに含まれていない項目の侵入エ ラー)及び、リスト内侵入エラー(先行試行からの侵入エラー)について算出した。表2は、手 掛り条件毎に各々のエラーの総数の内訳を示したものである。出現した侵入エラー数が少なかっ

たので統計的処理は行わなかった。表からも明らかなように、試行に伴う一貫した変化、及び手 掛り条件間にも明確な差は見られなかった。

(2)無再生エラー率:図2は、手掛り条件毎の無再生エラー(omissionerror)率の平均値に ついて図示したものである。個人の無再生率を角変換した値の平均値について3 (手掛り条件)

×3 (試行)の分散分析を行った。その結果、手掛り条件(F‑13.18,df‑2/51,p<.001)と、

試行(F ‑25.07,df‑2/102,/) <.001)の主効果がそれぞれ有意であった。

また、手掛り条件×試行の交互作用(F‑1.76,d/‑4/102)が有意な傾向に近い値が見られ たので、念のために単純効果の検定を行った。まず、手掛り条件毎に試行に伴う出現率の変化を 見るために、分散分析の誤差項(MSe(w)‑173.28)を用いたt検定を行った。その結果、記銘時 手掛り条件では、第1試行と第2試行(f(153)‑‑3.61,/j<.001)、及び第1試行と第3試行(t (153)‑‑4.56,♪<.001)との間にそれぞれ有意な差が見られた。しかし、第2試行と第3試行 の間には有意な差が見られなかった。検索時手掛り条件では、第1試行と第3試行(f(153 ‑‑

2.ll,♪<.05)の間に有意な差が見られた。しかし、第1試行と第2試行、及び第2試行と第3

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順向干渉の形成に及ぼす記銘時・検索時の弁別手掛り提示の効果

I       ..       3   試行

図1 Brown‑Peterson試行における 平均正再生率

表2 誤反応数の内訳

リスト外侵入エラー   リスト内侵入エラー

1   2    3   1   2    3

記銘時手掛り条件 検索時手掛り条件 統制条件

試行の間には、それぞれ有意な差は見られなかった。統制条件では、第1試行と第2試行(K153)

‑‑4.50,6<.001)、第1試行と第3試行(f(153)‑‑4.90,/>く.001)との間にそれぞれ有意な 差が見られた。しかし、第2試行と第3試行との間には有意な差は見られなかった。

次に、試行毎に手掛り条件間の差について、合成した誤差項(MSe ‑184.40)用いたt検定を 行った。その結果、第1試行では、記銘時手掛り条件と統制条件a(102)‑‑1.18,/><.10)、

検索時手掛り条件と統制条件U(102)‑‑1.18,♪<.10)との問にそれぞれ有意な傾向が見られ た。しかし、記銘時手掛り条件と検索時手掛り条件との間には有意な差は見られなかった。第2 試行では、記銘時手掛り条件と検索時手掛り条件U(102)‑‑2.33,/><.05)、記銘時手掛り条 件と統制条件(f(102)‑‑2.03,/> <.05)、及び検索時手掛り条件と統制条件(KIO2)‑‑4.36,p

<.001)との間にそれぞれ有意な差が見られた。また、第3試行では、記銘時手掛り条件と検索 時手掛り条件(KIO2)‑‑2.37,/><.05)及び検索手掛り条件と統制条件U(102)‑‑4.13,*<

.001との間にそれぞれ有意な差が見られた。しかし、記銘時手掛り条件と統制条件との間には 有意な差は見られなかった。

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218

藤 田   正

考   察

本研究では、順向干渉の形成が記銘時、または検索時のいずれにおける手掛りの弁別機能の低 下により生じるかについて検討することを目的とした。この目的のために記銘時、または検索時 の弁別的な手掛りの提示が順向干渉の形成に及ぼす効果について調べられた。

主な結果は、次の通りであった。統制条件では、試行に伴い正再生率が低下し、順向干渉が形 成された。正再生率の低下は、第1試行から第2試行にかけて顕著で、その後は一定であった。

また、記銘時に弁別的な手掛りが提示された記銘時手掛り条件では、第1試行から第2試行にか けて正再生率の低下が見られたが、統制条件に比べると小さいものであった。それに対して、検 索時手掛り条件では、試行に伴う正再生率の低下はごくわずかであった。しかも、第2試行と第 3試行の正再生率は、記銘時手掛り条件や統制条件よりも高かった。以上の結果から、検索時の 弁別手掛り提示は、記銘時の弁別手掛り提示よりも順向干渉の形成を防ぐのに効果的であること が明らかにされた。

なお、記銘時手掛り提示の効果が見られたが、検索時手掛り条件ほど効果的ではなく、第1試 行から第2試行にかけては大きな正再生率の低下が見られた。この結果は、先に引用した藤田 (1985b)で見られた、記銘時手掛り条件で第2試行から第3試行にかけて正再生率の低下を示 した結果と類似している。これは、記銘時の手掛りにより弁別的な符号化ができているにもかか わらず、検索の過程が項目の産出(探索)、項買の弁別といった段階を含む複雑さのために、そ の効果が十分維持されず、弁別的な検索ができにくくなったことにより生じたものと考えられる。

また、エラー分析の結果から明らかになった点は、次の通りである Robinson (1973) (Dillon

&Thomas,1975による)は、リスト内侵入エラーを、検索時の項目間の弁別の困難さを示す指標 として、無再生(omissionerror)エラーを、検索時の項目産出の困難さを示す指標として利用 している。本研究の結果は、リスト内侵入エラーは小さく、しかも条件間でも顕著な差は見られ なかった。これは各条件とも項目弁別の困難差はそれほど問題ではないことを示している。エラー のほとんどは、無再生エラーであり、試行に伴う増加が見られた。また、弁別的な手掛り提示の 効果が見られた検索時手掛り条件や記銘時手掛り条件での無再生エラーは、試行を通して統制条 件よりも低い出現率であった。さらに、検索時手掛り条件は記銘時手掛り条件よりも出現率がは るかに低く、 3条件の中で最も低かった。このような結果は、 Robinson (1973)の考えに基づけ ば、試行間のカテゴリーの類似性により、検索手掛りの弁別機能が十分働かず、検索時において 特に項目産出の機能が低下したことにより順向干渉が形成されたことを裏づける証拠と考えるこ

とができる。

ところで、目的でも述べた試行間の手掛り関連性の影響について調べるために、本研究の結果 と感覚カテゴリー項目リストを用いて、記銘時あるいは検索時に弁別的な手掛りを提示した藤田 (1985b)の結果とを比較してみる。統制条件と比べて、弁別手掛り提示により順向干渉の形成 を減少させた効果は類似していた。しかし、本研究の検索時手掛り条件では、第2試行から第3 試行にかけて若干の正再生率の低下が見られたが、先の研究では、検索時手掛り条件で正再生率 の低下はほとんど見られず、高いレベルで再生率の維持が見られた。また、記銘時手掛り条件で も、本研究の方が正再生率の低下が大きかった。このような結果は、感覚印象カテゴリー項目リ ストの場合の方が、手掛りの弁別機能がより効果的に働いていることを示している。本研究の場

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順向干渉の形成に及ぼす記銘時・検索時の弁別手掛り提示の効果

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合、例えば、楽器という上位カテゴリーを3つの下位カテゴリーに区分した形であり、下位カテ ゴリーが前面にはでるが、上位カテゴリーと共存する形になっている。したがって、下位カテゴ リー名を弁別的に利用する場合にも、上位カテゴリー名の影響は完全に取り除くことはできない。

それが手掛りの弁別機能が十分に働いていない状況を作り出したとも考えられる。それに対して、

感覚印象カテゴリー項目リストの場合は、各試行が別々の感覚印象カテゴリー名に結びついてお り、各試行では手掛りが独立している。したがって、カテゴリー名が手掛りとして提示され、効 果的に利用された結果、明確に、弁別的な符号化と検索が可能になったのであろう。このように 両リストで符号化・検索に利用される手掛りの弁別的な機能が効果的に働く程度に差を生じてい

ることが考えられる。この点が、本研究と先の研究の結果に差を生じたものと思われる。

Radtke andGrove (1977)が指摘しているように、順向干渉形成の原因を記銘時か、検索時か のいずれか一つの段階に限定することには無理があることを十分考慮した上で、次のように結論 した。統制条件では顕著な順向干渉の形成が見られたのに対して、 2つの手掛り条件では、順向 干渉の形成をかなりの程度防ぐことができた。この結果から、順向干渉の形成は記銘時あるいは 検索時に利用される手掛りの弁別機能が効果的でなくなることにより生起するといえる。さらに、

手掛り提示の効果を比較してみると、記銘時手掛り条件よりも検索時手掛り条件でその効果が顕 著であったことから、検索手掛りによる弁別的な検索ができなくなることが順向干渉の形成によ り大きく影響するものといえる。換言すれば、順向干渉の形成の原因は、主として記銘時よりも 検索時の手掛りの弁別機能の低下によるものであると結論できる。

要   約

本研究では、順向干渉の形成が記銘時、または検索時のいずれにおける手掛りの弁別機能の低 下により生じるのかを検討することを目的とした。この目的のために試行間で下位カテゴリーが 変化する項目リストを用いて、記銘時、または検索時にのみ弁別的な手掛り(下位カテゴリー名) を提示することが順向干渉の形成に及ぼす効果について調べた。

3×3の要因計画であった。第1の要因は手掛り提示条件で、記銘時手掛り条件、検索時手掛 り条件、統制条件であった。第2の要因は試行数で、第1試行から第3試行までであった。

大学生54名が、手掛り条件毎に18名ずつ割り当てられた。記銘リストは、表1に示されるよう な3つの下位カテゴリー(例;楽器:管楽器、弦楽器、打楽器)から成っており、 1リストは、

3項目で構成されていた。

スライドプロジェクターにより3項Elが2秒間同時に提示され、記銘が求められた。続いて、

20秒間のリハーサル妨害課題(減算課題)を行った後、 10秒間の口頭自由再生が行われた。なお、

記銘時手掛り条件では記銘時に手掛りを提示し、検索時手掛り条件では検索時に手掛りを提示し た。統制条件では手掛りは提示されなかった。このような手続きが3試行繰り返された。

主な結果は次の通りであった(図1 )。記銘時手掛り条件では、統別条件よりも再生成績が良かっ たが、第1試行から第2試行にかけて統制条件と類似した再生率の低下が見られた。検索時手掛 り条件では、試行に伴う大きな再生率の低下はみられず、しかも第2試行、第3試行においては 記銘時手掛り条件よりも高い再生率が得られた。統制条件では、試行に伴う再生率の低下がみら れ、順向干渉が形成された。

以上の結果から、順向干渉が記銘時よりも検索過程における検索手掛りの弁別機能の低下によ

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220

藤 田   正

り生じていることが明らかにされた。

m x iil!

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[付記]実験の実施とデーターの分析に際して坪井百合さんの多大な協力を得ました。ここに記して厚く感 謝の意を表します。

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The Effects of Encoding or Retrieval Cues upon the Buildup of Proactive Interference

Tadashi FUJITA

(Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan ) (Received April 30, 1991)

The purpose of this experiment was to examine the effects of presenting discriminative cues in encoding or retrieval phase upon the buildup of Proactive Interference (PI).

A 3 × 3 factorial design was used, which incorporated cue conditions (encoding cue, retnev‑

al cue, and control condition) and number of trials (from 1 to 3). The subjects were 54 students with a mean age of 19 yr. and 9 m0., who were assigned to one of the three cue conditions. In en‑

coding cue condition, Ss were provided subcategory name as a discriminative cue at encoding phase in each trial. In retrieval cue condition, Ss were provided subcategory name as a discri‑

minative cue at retrieval phase in each trial. In control condition, Ss were not given any cue at

encoding and retrieva一 phase in each trial. The list consisted of three subcategory (e.g. windin‑

strumenL stringed instrument, and percussion) from one general category (e.g. musical instruments) (see Table l]

The experiment was conducted individually by Brown‑Peterson paradigm. Three items were presented simultaneously by the slide projector at a 2.0 sec. rate, which was followed by the dis‑

tractor task (20 sec). Then recall test was given for 10 sec. Following the recall test, next trial was introduced until three trials were completed.

The main results were as follows: Under the control condition, PI was built up as a function of trials. By contrast, two cue conditions attenuated the buildup of PI, and the degree of attenua‑

tion of PI was larger under the retrieval cue condition than the encoding cue condition.

These results suggested that the buildup of PI was more due to the decrease of discriminative

function of cue in the phase of retrieval than in the phase of encoding.

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