幼児の再生に及ぼす文章化と提示法の効果
著者 藤田 正
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 30
号 1
ページ 233‑242
発行年 1981‑11‑25
その他のタイトル The Effects of Sentence Instructions and Presentation Methods upon Recall in
Kindergarten Children
URL http://hdl.handle.net/10105/2406
奈良教育大学紀要 第30き 第1号(人文・社会)昭和56年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol. 30, No. 1 (cult. & soc). 1981
幼児の再生に及ぼす文章化と提示法の効果
藤 田 正 (奈良教育大学心理学教室)
(昭和56年4月30日受理)
幾つかの概念カテゴリーに属する項目から成るT)ストを用いた自由再生において、幼児が年長 児ほど大きな再生量を示さないことが多い。その理由として、 (1)記銘時にリストのカテゴリー化 された性質に気づかない、 (2)項目をカテゴリーごとにまとめて記銘できない、 (3)再生時にカテゴ
リー名を手がかりとして用いることができないなどの点が挙げられている。これまでにも多くの 研究で、これらの欠如要因を取除くための訓練や方法が検討されてきた。例えば、記銘の際のカ テゴリー分類(藤田、 1980a ;藤田・川田、 1976;森・宮崎・加来、 1976)、カテゴリーごとの ブロック提示(藤嶋、 1979 ;Furth & Milgram, 1973; Kobasigawa & Orr, 1973; Moely &
Shapiro, 1971;森・宮崎、 1975)、再生時のカテゴリー名の提示(Eysenck & Baron, 1974;藤 田、 1979;菊野、 1977)などである。
Kobasigawa and Or (1973)は、幼稚園児を用い、記銘時のカテゴリー発見とその利用を促 すために、項目の属するカテゴリーに関連した事物や場所の桧(開運画)を手がかりにして項目 といっしょに提示した.この方法では、以前の研究でよく用いられていたカテゴリー名の場合と 異なり、手がかりが具体的であるので、手がかりと項目の連合がなされやすいと考えられる。し かし、実験の結果は、関連画による促進効果はみられなかった。彼等はこのような結果に対して 関連画が効果をもたらすためには、関連画と項目の関係についての言語的な結びつきを与えるこ
とが必要であると述べている。
藤田(1980b)は、この点に注目して記銘時に項目を提示する際に、 "おさら(開運画)にリ ンゴ(項目)があります。"のような関連画と項目の関係を文章化する条件と、 "これはリンゴで す。"のように文章化のない条件を設け、制限再生と自由再生において文章化の効果を検討した。
その結果、記銘時の手がかりとして関連画が提示されるだけでは促進効果はみられなかったが, 開運画と項目の関係を文章化することにより促進効果がみられた。また、関連画の効果は記銘時 よりも再生時に大きく、この効果は文章化がなされていた時の方が大きくなる傾向がみられた。
以上の結果から、文章化の操作は開運画と項目の関連づけを明確にし、両者の連合を強めたこと により同一の手がかりに達合する項目間の連合を促進したものと解釈した。
ところで、先の研究(藤田、 1980b)では記銘時の項目の提示は、同一のカテゴリーに属する 項目が連続しないようなランダム提示のもとでなされた。従って、この提示法では同一のカテゴ リ‑に属する項目をまとめておぼえるという点では不十分さがあったことも考えられる。この点 は、これまでの研究で明らかにされているように、項目がカテゴリーにまとめられているブロッ ク提示の方が、そうでないランダム提示よりも成績がよかったという結果(藤嶋、 1979; Koba・
sigawa & Orr, 1973; Moely & Shapiro, 1971森・宮崎、 1975)からも裏づけることができる。
それ故、幼児でもブロック提示条件では、関連画と項目、および項目間の田係性がより明確にな りやすいので、それぞれの連合もなされやすいものと考えられる。このように考えた場合、記銘
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時の文章化の促進効果は、ランダム提示に比べてブロック提示条件では小さいことが予想される。
これを検討することが本研究の主な目的である。また、文章化の操作やブロック提示法などが、
手かかりの自発的使用をどの程度促進するものであるかという点についても併わせて検討するこ とにした。
方 法
実験計画 実験計画は2 ×2 ×2の要因計画であった。第1の要因は文章化の条件で、記銘 時に関連画手がかりと項目の関係を文章化する条件としない条件であった。第2の要因は記銘時 の項目の提示法で、カテゴリーごとに項目がまとめて提示されるブロック提示とそうでないラン ダム提示であった。第3の要因は再生条件で、再生時に手がかりが与えられる制限再生条件と手 がかりのない自由再生条件であった。なお、第1と第2の要因は被験者問の要因であり、第3の 要因は被験者内の要因であった。
被験者 被験者は幼稚園児60名(男児30名、女児30名)で、その平均年齢は6歳0か月(範 囲5歳4か月から6歳3か月)であった。これらの被験者は、文章化・ブロック条件、統制・ブ ロック条件、文章化・ランダム条件、統制・ランダム条件の各条件に15名ずつ割りあてられた。
材料 記銘材料として杉村と市川(1975)の幼児用の概念カテゴリー規準表を参考にして
"果物、虫、乗物、花、動物、はき物"の6カテゴリーに属する項目を各々3個ずつ、合計18個 を選んだ(Table l参照)。各項目は4cmX4cm の大きさの薄青色をしたカードに黒の線画で 描かれているO これらの絵カードは18cmx34.5cmの大きさの白い厚紙3枚に6項目ずつ、一定
の間隔でのり付けされていた。
なお、すべての絵カードには、それぞれの項目が属するカテゴリーに関連する事物や場所を示 す絵(関連画)が手がかりとして貼りつけられていた。関連画は6cmX8cmの白色カードに黒 の線画で描かれている。関連画の選考に際しては、幼児向けの絵本などで、項目と手がかりがい っしょに描かれているようなものを参考にした。それぞれの関連画の内容はTablelに示すとお りである。
また、これとは別に練習用リストとして、"タマゴ、カギ、タイコ、チョコレ‑ト、フォーク、
エンピツ"の6項目を用いた。それぞれの項目は本課題と同様、 4cmX4cmの薄青色のカード
Table l 実験で用いた項目と関連画 カテゴリー 関連画 項 目
果 物 お 皿 リ ン ゴ ミ カ ン バ ナ ナ 虫 虫かご カブトムシ ト ン ボ チ ョ ウ 乗 物 線 路 シンカンセン デンシャ キ シ ャ
花 植木鉢 バ ラ チューリップ ヒマワl) 動 物 お り ラ イオン キ リ ン ゾ ウ はき物 げた箱 ナガグッ ゾ ウ リ ク ツ
幼児の再生に及ぼす文章化と提示法の効果
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に黒の線画で描かれ、 18cmx34.5cmの大きさの白い厚紙に、一定の間隔で2列に分けて貼りつ けられていた。さらに、関連画のない練習課題から開運画のある本課題への移行を容易にするた めに、本課題と同様に薄青色のカードに黒の線画で描かれた"キンギョ''と関連画として白色カ ードに黒の線画で描かれた…金魚鉢''が12.5cmx18cmの大きさの白い厚紙に貼りつけられてい た。なお、制限再生の際の再生手がかりとして用いる関連画は、 12.5cmx18cmの大きさの白い 厚紙6枚にそれぞれ1カテゴリーずつ貼りつけられていた。
手続き 実験は被験者の所属する幼稚園の一室で個別に実施された。それぞれの被験者は、
最初に練習課題を行い、その後で本課題を行った。 「いろいろな絵を見せますから、青いカード の絵をよく見ておぼえて下さい。あとで何があったかを尋ねます。まず、この絵を見て下さい。」
と言って、課題説明用のカードを提示し、絵を指さしながら、 「白い大きな絵と青い小さな絵が こんなふうにいっしょに出てきます。今度は、下の青い絵をよくおぼえて下さい。」と言ってカ ードを見せ、その直後にカードを隠し、再生を求めた。このような説明を行ったあとで本課題を 開始した。
文章化条件では、全体教示に続いて最初の提示カードを被験者の前に置き、 「お皿(開運画) にリンゴ(項目)があります。虫かごにトンボがあります。 ‑‑‑・・」のように、 1項目ずつ関連 画と項目を含む文章化教示を与えながら記銘させた。 Table 2は使用したカテゴリーと文章化教 示の例である。他方、文責化教示の与えられない統制条件では、 6項目を貼った提示用カードを 被験者の前に置き、 1項目ずつ指さしながら「これはリンゴです。これはトンボです。 ‑・‑」の
のように項目名を1つずつ読みあげながら記銘させた。
Table 2 実験で用いた文章化教示の一例 カテゴリー 文 章 化 教 示
果 物 虫 乗 物
花 動 物 1*I2
去星に且之王があります。
虫かごにトンボがいます。
+ ヽ、ノヽ‑′lu′.・.ノヽ‑′
塵埠に£乙之よがありますO 植木鉢にチューリップがあり
おりにライオンがいます。ヽノヽノヽJ'\ノヽ.ノ、‑〜
堕車重に之之があります。
mg
最初の提示カ‑ドの6項目を記銘させると、次の提示カードをその右側に並べてそれぞれの条 件にあった仕方で記銘させ、続いて3枚目の提示カードも同様な仕方で記銘させていった。なお 記銘はすべての条件において1項目につき約4秒の速さで行わせた。すべての項目の提示が終っ た後、 「もう1度、自分でよく見て覚えて下さい。」と言って、約30秒間カードをそのままにして 見せていた。なお、文章化条件と統制条件のうち半数の者にはブロック提示用のカードが、残り 半数の者にはランダム提示用のカードが与えられた。
再生テストは、同一の被験者が自由再生、制限再生の順に行った。被験者の前からすべての項 目が取り除かれ、 「今見た絵の中で、青い絵にはどんなものがありましたか、どんな順番でもい いですから全部言って下さい。」と教示し、約2分間の自由再生が行われた。自由再生が終ると直 ちに制限再生を行わせた。最初に関連画カードの1つを被験者の前に置き「この絵といっしょに
あった青い絵には何がありましたか。どんな順番でもいいから全部言って下さい。」と教示し、
1カテゴリーごとに再生を求めた。 1つの関連画についての再生が終わると別のカテゴT)‑の関 連画を提示し再生を行わせるというように、 6つのカテゴリーすべてについて同様な手続きで制 限再生を行わせた。なお、 1つの関連画あたり最大20秒の再生時間が許された。
結 果
正再生数 Table 3は各条件の自由再生と制限再生における正再生数の平均と標準偏差の値 を示したものである。平均値に基づいて2 (文章化) ×2 (提示法) ×2 (再生条件)の分散分 析を行った。その結果、文章化(F‑4.78, df‑1と56, P<.05)、提示法(F‑5.29, df‑lと 56, P<.05)、および再生条件(F‑110.78, df‑ 1と56, P<.01)の主効果がそれぞれ有意にな った。また、文章化×再生条件(F‑14.94, df‑1と56, P<.01)および文章化×提示法×再生 条件(F‑18.ll, df‑1と56, P<.01)の交互作用もそれぞれ有意になった。交互作用が有意に なったので単純効果の検定を行った。まず、文章化×再生条件の交互作用については、自由再生 では文章化の効果はみられなかったが、制限再生では文章化の効果がみられた(*‑2.83, #‑112, P<.01){ 次に、文章化×提示法×再生条件の交互作用については、自由再生ではブロック提 示でも、ランダム提示でも文章化条件と統制条件の問に有意な差はみられなかった。しかし、
制限再生では、ブロック提示で文章化条件が統制条件よりも有意に成績がよかった 0‑3.60, rf/‑112,P<.001)。また、ランダム提示でも文章化条件が統制条件よりも有意に成績がよかった
(」‑2.06, df‑112, P<.05)。なお、文章化の効果はランダム提示よりもブロック提示の場合に 大きかった。
Table 3 各条件の正再生数の平均値と標準偏差
文章化 提示法 再 生 条 件 自由再生 制限再生 文章化
統 制
ブロック 8.33(2.72) ランダム 6.20(2.24) ブロック 8.00(2.30) ランダム 7.13(2.10)
14.07(2. 87)
12. 03(3.42)
10. 47(3. 34)
10. 07(3. 33)
( )内の数値は標準偏差
自由再生から制限再生への再生内容の変化 正しく再生された項目数を次の3種に分けて分 析することにより、文章化と提示法が自由再生と制限再生におよぼす効果の程度を別の観点から 検討した。その内容は次のとおりである。 ①自由再生で再生され、制限再生でも再生された項目 数、 ②自由再生では再生されたが、制限再生では再生されなかった項目数、 ③自由再生では再生
されなかったが、制限再生で再生された項目数。
Table 4は、 ①、 ②、 ③のそれぞれの平均値と標準偏差を条件別に示したものである。それぞ れの平均値について2 (文章化) ×2 (提示法)の分散分析を行った。その結果、 ②の自由再生 では再生されたが、制限再生では再生されなかった項目数について文章化(F‑9.23, df‑ ¥と
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56, P <.Ol)の主効果が、また③の自由再生では再生されなかったが、制限再生では再生され た項目数についても文章化(f‑6.32, df‑lと56, P<.05)の主効果がそれぞれ有意になった。
しかしながら、交互作用はいずれも有意ではなかった。 ①の自由再生でも制限再生でも再生され た項目数については、いずれの主効果、交互作用も有意でなかった。
Table 4 自由再生から制限再生への再生内容の変化
‑平均値および標準偏差‑
文章化提示法急告宗孟再生自由再生のみ制限再生のみ 文章化
統 制
ブロック 7.87(3.05) 0.47(0.88) 6.20(3.06) ランダム 5.47(2.55) 0.73(1.12) 6.60(2.70) ブロック 5.67(2.77) 2.33(2.21) 4.73(1.77) ランダム 5.55(2.63) 1.47(1.47) 4.60(2.03)
( )内の数値は標準偏差
考 察
本研究では、記銘時に関連画手がかりと項目の関係について文章化教示を与えることが自由再 生と制限再生におよぼす効果がブロック提示とランダム提示のもとで比較検討された。
主な結果は次のとおりであった。 (1)自由再生では、ブロック提示がランダム提示よりも再生成 績がよかった。しかしながら、文章化の促進効果はみられなかった。
(2)制限再生では、文章化による促進効果がみられた。この効果は、ランダム提示よりもブロッ ク提示で大きかった。
(3)すべての条件で自由再生から制限再生‑と成績は促進した。
自由再生において、ブロック提示がランダム提示よりも促進効果をもったという結果は、幼児 を用いた藤嶋(1979)、 Kobasigawa and Orr (1973)、 Moely and Shapiro (1971)、森と宮崎 (1975)らの結果と一致するものであった。これはブロック提示の場合、項目がカテゴリーごと にまとめて提示されるので、カテゴリー利用が促進されたことによるものである。
ところで、自由再生のランダム提示条件において文章化による促進効果がみられなかった結果 は、先の研究(藤田、 1980b)と一致しないものであった。これについては、両方の研究での手 続きの相違が考えられる。藤田(1980b)では、リストは24項目(8カテゴリー・各3項目)か ら成り、また再生は全項目の提示直後になされていた。それに対して本研究では、リストは18項 冒(6カテゴリ‑・各3項目)から成り、全ての項目の提示が終った後、全項目が30秒間、被験 者の前に並べられ、 "もう1度よく見ておぼえるように"と言われていた。従って、両研究を比 較してみた場合、本研究の方が項目数が少なくおぼえやすかった上に、さらに記銘時間が長かっ
たことが、文章化の効果よりもブロック提示の効果を強めたと考えることができる。
制限再生では、文章化の効果がみられた。この効果はランダム提示よりもブロック提示で大き かった。ランダム提示条件で文章化の効果がみられた結果は、先の研究(藤田、 1980 b)と一致 した。しかし、文章化の効果がランダム提示よりもブロック提示で大きかった結果は、最初の予
憩とは逆のものであった。これに関しては、次のように考えられる。文章化により関連画手がか りと項目の連合が強められたが、項目間の連合については、幼児ではカテゴリーごとに自発的にま とめて記銘することがむつかしかったのであろう。それ故、ブロック提示のように同一のカテゴ リーに属するものがまとめて提示される条件の方が文章化の効果が大きくなったものと思われる。
本研究では、自由再生に続いて関連画が再生手がかりとして与えられる制限再生が行われた。
次に、自由再生から制限再生への再生内容の変化についての分析結果から文章化の操作がどのよ うに影響しているか考察してみる。自由再生で再生され、制限再生でも再生された項目(①)は 全体では6.14項目、文章化条件6.67項目、統制条件5.61項目で、両者には統計的に有意な差はみ られなかった。次に、自由再生では再生されていたが、制限再生では再生されなかった項目(②) は、全体では1.25項目とわずかであったが、文章化条件(0.60項目)よりも統制条件(1.90項目) で有意に大きかった。逆に、自由再生では再生されなかったが、制限再生で再生された項目(③) は、全体で5.53項目で、文章化条件(6.40項目)の方が統制条件(4.67項目)よりも有意に大き かった。全体の正再生数でみられた文章化の効果は、このように自由再生から制限再生への再生
内容の変化による分析結果からも明らかである。 ③の結果からわかるように文章化の操作は、関 連画手がかりと項目の連合を強めたことを裏づけていると思われる。
先の研究(藤田、 1980 b)では、文章化の操作は関連画と項目の連合を促進すると剛寺に、同 一の手がかり(関連画)に結びつく項目間の連合も促進すると結論したが、本研究の結果から考 えると、この結論は次のように修正する必要があるだろう。つまり、文章化の操作は関連画手が かりと項目との連合を強めるだけで、項目間の連合までも積極的に強めるほどの効果はもたらさ
ないという結論である。
ところで、すべての条件において自由再生よりも制限再生の成績がよかった。この結果は、
Eysenck and Baron (1974)、藤田(1979)、菊野(1977)、森・宮崎・加来(1976)と一致する ものであった。制限再生のように再生手がかりを強制的に使用させることにより関連画手がかり や文章化の効果が生じるという結果は、 Kobasigawa (1977)でも指摘されているように、幼児 は記銘時に手がかりを利用して記銘、貯蔵していても、再生の段階で手がかりを自発的に利用し て再生することが困難であることを示している。
要 約
本研究の目的は、記銘時に提示する開運画手がかりと項目の関係についての文章化が自由再生 と制限再生に及ぼす効果をブロック提示とランダム提示のもとで比較検討することであった。文 章化の効果は、ブロック提示よりもランダム提示で大きいということが予想された。
2×2×2の要因計画が用いられた。第1の要因は文章化の条件(文章化の有・無)であり、
第2の要因は提示法の条件(ブロック提示・ランダム提示)であり、第3の要因は再生条件(自 由再生・制限再生)であった。なお、第3の要因は被験者内の要因であった。従って、第1と第 2の要因の組み合わせにより次の4群が設けられた(文章化・ブロック群、文章化・ランダム群、
統制・ブロック群、統制・ランダム群)。被験者は幼稚園児(平均年齢6歳0か月) 60名であっ た。記銘リストはTable lに示されるように"果物、虫、乗物、花、動物、はき物"の6つの 概念カテゴリーに属する18項目の線画カードであった。なお、各項目は関連画手がかり(Table
l参照)といっしょに提示された。
幼児の再生に及ぼす文章化と提示法の効果
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実験は個別に行われた。文章化条件の者には、記銘時に"お皿にリンゴがあります。"のよう な教示が各項目に与えられた(Table 2参照)。文章化のない条件では、 "これはリンゴです。"
のような教示が与えられた。なお、半数の被験者は項目がカテゴリーごとにブロック提示される 条件に、残り半数の被験者はランダム提示条件に割りあてられた。すべての項目が提示されたあ と、 30秒間 全項目は被験者の前に並べられていた。項目の提示に続いて自由再生、制限再生の 順に再生が行われた。制限再生では、関連画が再生手がかりとして被験者に与えられた。
主な結果は次のとおりである(Table 3参照)。
(1)自由再生では、ブロック提示がランダム提示よりも再生成績がよかった。しかし、文章化の 促進効果はみられなかった。
(2)制限再生では、文章化による促進効果がみられた。この効果は、ランダム提示よりもブロッ ク提示で大きかった。
(3)すべての条件で自由再生から制限再生へと成績は促進した。
これらの結果は必ずしも我々の予想と一致しなかったが、次の点が明らかになった。 (a)幼児に おけるカテゴリ‑利用の欠如は、記銘時よりも再生時に大きいこと、 (b)文章化は関連画手がかり
と項目の連合を強めるだけで、同一手がかりに運合する項目間の結合までも強めるほどの効果は もたらさないことである。
引 虹 Rォ^^^lir'A^
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〔付記〕 本論文を作成するにあたり御助言いただきました杉村健教授、データ‑の蒐集と分 析に際し御協力下さいました五百瀬小学校天羽吾路氏に厚く感謝致します。また、実験を行うに あたり快く御協力下さいました奈良教育大学附属幼稚園の諸先生方、園児の皆様に厚く細孔申し 上げます。
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The Effects of Sentence Instructions and Presentation Methods upon Recall in Kindergarten Children
Tadashi Fujita
Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan (Received April 30, 1981)
The present study was designed to investigate the effects of sentence instructions upon children's free and constrained recalls under category blocked and random presentation conditions. It was hypothesized that the facilitative effect of sentences was greater for the random presentation than for the blocked presentation.
A 2×2×2 factorial design was used, which incorporated the sentence conditions (sentence and control), the presentation methods (blocked and random), and the recall conditions (free and constrained recall). The last factor was a within variable. The Su‑
bjects were 60 kindergarteners with a mean age of 6 years, who were assigned to one of the following four conditions: Sentence‑Block, Sentence‑Random, Control‑Block, and Control‑
Random. The list was composed 18 items of 6 conceptual categories (fruits, insects, ve‑
hides, flowers, animals, and footwears) as is shown in the Table 1. These items were familiar to young children and each of them was presented as a black and white line drawing with its category‑related picture.
The experiment was conducted individually. Under the sentence condition, each item was presented with the sentence instruction which combined the cue (category‑related picture) and the item, "There is an apple on the dish." (see Table 2) Under the control condition, each item was presented with its name, "This is an apple." Half subjets were given the items under category blocked presentation, and the remainders were given random presentation. After all items were presented, subjects were instructed to view all the items during 30 seconds. The subjects were tested by free recall and then constrained recall. In the constrained recall test, the subjects were given category‑related pictures as
the cues 士or retrieval.
The main results were as follows (see Table 3).
(1) In the free recall test, the performance of recall under the blocked presentations were significantly better than that under the random presentations, and the facilitative effect of sentences was not found.
(2) In the constrained recall test, the facilitative effect of sentences was greater for the blocked presentations than for the random presentations.
(3) The performances of all conditions were signi丘cantly better under the constrained recall than under the free recall.
These results did not support our hypothesis and were interpreted to show that (a) the de石ciency of categry utilization in young children was greater at retrieval phase than
at memory phase, and (b) the sentences strengthened only the associates between the cues and the items, but not the associates among items connecting the same cue. These results were discussed with reference to previous related studies.