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順向干渉からの解除における検索の下位過程の検討

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

順向干渉からの解除における検索の下位過程の検討

著者 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 46

号 1

ページ 289‑297

発行年 1997‑11‑10

その他のタイトル Examination of Sub‑processes of Retrieval

Phase in Release from Proactive Interference

URL http://hdl.handle.net/10105/1552

(2)

蝣蝣:l"i熊fr L 蝣<ftl'」 ‑ft‑If.& ‑Ti1 、と・子¥ ‑v t‑ht!】蝣r‑

Bull. Nara Univ. Echic., V>l.46. No.1 (Cult. &Soc). 1997

順向干渉からの解除における検索の下位過程の検討

藤田正

(奈良教育大学心理学教室) (平成9年4月18日受理)

短期記憶における忘却にも干渉(Interference)が関係していることをKeppelandUnderwood

(1962)が、Brown‑Petersonパラダイムを用いて報告して以来、順向干渉(ProactiveInterference) の形成や順向干渉からの解除(ReleasefromPI)に影響する要因や、その生起メカニズムに関す る数多くの研究が行われてきた(藤田,1996;Underwood,1982;Wickens,1972),

これまでのところ、順向干渉が生起する原因は、主に検索手掛りの弁別機能の低下や検索時の 項目間弁別困難にあるとする結果が数多く報告されている(藤田,1985,1991;Gardiner,etal..

1972;菊野,1983;Mori,1979;Underwood,1982;Watkins&Watkins,1975;Wickens,1972)。

また、検索時の手掛りの弁別機能の低下の問題は、再生における検索の下位過程(候補項目の産 IllIII標的項目の弁別:Atkinson&Shiffrin,1968)での処理と関連づとナて検討され、検索手掛り の弁別機能の低下により候補項目を産Ill

IIIすることが困難になるのか、それとも産出された候補項

目の中から標的項目を弁別することが凶難になるのかという点を明らかにするための実験的検討 が行われてきた(Dillon&Bittner,1976;藤田,1994,1995;Gardiner,etal.,1972;Mori,

1979)。

藤田(1994)は、順向十渉の形成の原因が検索手掛りの弁別機能の低下による項目産出の困難 さによるものか、あるいは現試行項目と先行試行項目との弁別凶難さによるものかを検討した。

記銘リストには、各試行が楽器の下位カテゴリーで構成された3語対(例:第1試行:オルガ ン・ハーモニカ・ピアニカ;第2試行:ドラム・シンバル・ティンパニ;第3試行:チェロ・バ イオリン・ハープ;第4試行:フルート・ホルン・オーボエ)を用いてBrown‑Peterson法を4 試行行った。2試行目以降の検索時に弁別手掛り(第2試行:打楽器;第3試行:弦楽器;第4 試行:管楽器)を提示して再生させる弁別手掛り条件、直前の試行の3項目(例:第2試行オル ガン・ハーモニカ・ピアニカ)を提示して再生させる項目手掛り条件、何ら手掛りを提示せずに 再生させる統制条件の3条件が設けられた。その結果、弁別手掛り条件では試行に伴う再生率の 減少は見られず、順向1‑‑渉は形成されなかったが、項目手掛り条件と統制条件では試行に伴う同 程度の再生率の減少が見られ、順向日歩が形成された。また、第4試行では、項目手掛り条件の 再生率が大きく低下しなかったのに対して、統別条件ではさらに再生率が低下した。これらの結 果から、順向干渉の形成が項目間弁別の困難性によるよりも、むしろ検索手掛りを使用して項目 を産tfiすることの国難さによるものであることを明らかにした。

この研究では、2試行目以降の検索時に手掛りを与える方法が用いられたが、この方法では、

3試行目からは記銘時にもリストの下位カテゴ1)一に注目する可能性があり、純粋に検索手掛り の効果を検討したとは言い切れない。続く藤田(1995)では、この点を考慮して順向干渉が形成 された後の解除試行において手掛りを提示する手続きを用いた。手掛り条件には、藤田(1994) と同様に、弁別的な項目産出を促進する弁別手掛り条件と、直前試行の全項目を提示し項目弁別 の困難さを軽減する項目手掛り条件とを設け、両条件での解除の大きさを比較することにより、

289

(3)

2itO 藤 間   正

検索の下位過程における国難性の問題を検討した。

その結果、試行に伴う正再生率の変化をみると、第1試行から第3試行にかけて3つの条件で 同じように順向干渉が形成された。主な関心である第3試行から第4試行にかけての再生率では、

3つの手掛り条件に顕著な違いが見られた。弁別手掛り条件では、再生率が有意に上昇し、 l二渉 からの解除が生じた。また、項目手掛り条件では、有意ではなかったが、わずかに再生率の上昇 が見られた。それに対して、統制条件においては、さらに再生率が低下した。

藤田(1994, 1995)の結果は、順向日歩の形成には項目間弁別の困難性がある程度関係してい ることが示唆された。しかしながら、 2つの実験結果が示すように、単に項目弁別の困難性を取 り除く要素だけでは大きな解除は起こらなかったので、項目弁別の困難性よりも、それに先行す る項目を弁別的に産IIIする検索手掛りの機能の低下の方が順向:r渉の形成や解除に大きく影響す ると結論できる。

ところで、これまでの検索の下位過程の国難性を検討した研究は、必ずしも検索の下位過程モ デルである再生の2段階説(Anderson & Bower, 1972 ; Kintsch, 1970)や再生の2重経路説Jones, 1978)との関連で積極的に検討されることはなかった。 2段階説では、再生の検索過程は「探索 過程と決定過程」から成り、候補項目を再生する段階、その中からの標的項目を弁別する段階と いう2つの段階があると仮定している。また、 2重経路説では、再生の検索過程には2つの経路 があると仮定している。 1つは手掛りから直接に標的項目を弁別し再生する経路である。もう1 つは「探索過程と決定過程」から成る経路であり、候補項目を産出し、その中から標的項目を弁 別し再生する経路である。

藤間(1994, 1995)の結果を再生における検索過程モデルに関連づけて考察した場合、検索手 掛りの弁別機能の低下は、弁別的に項目戸紺、を行うことを困難にしていることは一貫して支持さ れるが、項目手掛りによる促進効果が顕著に見られなかった結果から候補項目の産出一標的項目 の弁別という2段階の処理が行われている可能性は比較的小さいことを示している。したがっ て、 Anderson&Bower (1972)やKintsch (1970)の2段階モデルのように、常に2段階の処 理過程のみが存在すると考えるよりも、 Jones (1978)の再生の2重経路説で考えることの方が 妥当であるといえる。,すなわち、手掛りの弁別機能が効果的に機能している場合には、直接のア

クセス、すなわち弁別的な項目検索が行われ産出されるが、手掛りの弁別機能が低下してくると 弁別的な項目検索が不可能になり、順向日歩が形成される。また、一部には手掛りの弁別機能が 低下すると、先に候補項目を産ILr‖ノ、その中から標的項目を弁別する際に国難が生じ十渉が形成

される場合が存在するというものである。

ところで藤田(1995)では、弁別的な項日産Illを促進する弁別手掛り条件と項目間弁別を促進 する項目手掛り条件を設け、独立した条件間での解除の大きさを比較する方法を用いた。しかし、

検索の下位過程は、項目産出段階一項自弁別段階と連続したものとしてモデル化されている。本 研究では新たに、解除試行において検索の下位過程に対応した手掛りの種類(項目産出を促進す る手掛り‑項目弁別を促進する手掛り)を連続して提示する手続きを用いて、手掛りの弁別機能 と検索の下位過程の関係についていずれの検索モデルの枠組みの中で解釈するのが妥当であるの かを検討することを目的とした。

なお、検索手掛りの弁別機能が項目産出に影響していることをより明確にするために、手掛り の弁別機能が効果的に働く弁別手掛りを提示する弁別手掛り条件と、手掛りの弁別機能が低下し た状態にある非弁別手掛りを提示する非弁別手掛り条件を設けて比較検討することにした。

(4)

順向十渉からの解除における検索の下位過程の検討

291

方     法

実験計画 実験計画は、 2 (検索手掛り条件) ×4 (試行)の要因計画であった。第1の要 因は検索手掛りの条件で、 [弁別的検索手掛り‑項目手掛り]の順に手掛りが提示される弁別手 掛り条件と、 [非弁別的検索手掛り‑項目手掛り]の順に手掛りが提示される非弁別手掛り条件 であり、被験者間要因であった。第2の要因は試行で、第1試行から第4試行であり、被験者内 の要因であった。第4試行は手掛りを提示して解除を起こす解除試行とした。

被験者 被験者は、この種の実験に末経験な大学生24名 い平均年齢19歳9か月:範囲18歳4か 月から23歳1か月)であった。‑,,これらの被験者は各条件ごとに12名ずつ割り当てられた。

記銘リストおよび装置 記銘リストには、藤間・亀井(1988)と小川(1975 を参考にして選 択した楽器と花のカテゴリーのrTlから、 3‑5音節の名詞24語を用いた,,表1は、実験で用いた

リスト項目の‑・例である。各カテゴリーは、 4つの下位カテゴ1)‑ (楽器‑T)‑ド楽器、打楽器、

弦楽器、管楽器;花一春の花、夏の花、秋の花、冬の花)から成っており、各々の下位カテゴリー から3項目ずつ選ばれたrJl

表1本実験で用いた記銘リストの 一例

試   行

4

オルガン     ドラム      チェロ       フルート 項  目    ハーモニカ   シンバル    バイオリン    ホルン

ピア二カ     ティンパ二   ハーフ       オーボエ

弁別手掛り    鍵盤楽器    打楽器     弦楽器     管楽器

lリストは3項目から成り、リスト間の、打力出現頻度、音節数、熟知度ができるだけ等しくな るように考慮した。項目は邦文タイプで片仮名に打ったものをスライドにした。 1枚のスライド には3つの項目名が等間隔で右下がりに配列されている,̲、なお、各リストともリスト内の項目配 列位置と提′」珊再二の異なるリストを3種類ずつ用意した。これとは別に、それぞれのリストに合 わせて練習課題用1)ストを2試行分作成した,,このリストは、本課題とは異なるカテゴリーの項

目で構成されているo

KodakEktagraphicSlideProjectol・を用いてスライドを提示し、項目提示時間、リスト間間隔 などの時間制御にはサンワ製Digital Time Regulatorを用いたU把持l巧潤、再生時間及び試行閃 間隔の測定にはストップウオッチを用いた(、

手続き 実験は個別に行われたし.最終の試行で手掛l)の提示を行う改訂Brown‑PetげSOn手続 きが、 1つのリストについて4試行繰り返された。第1試行から第3試行までは、順向 日歩形成 段階である。,杵射ヒの仕方を揃えるため、記銘時にはスライド・プロジェクターにより『これか ら覚えるのは楽器の名前です。』のスライドが2.0秒間提示され、全員に上位カテゴT)一名を知ら せた後、 3項「1を同時に2.0秒間提示して記銘させた,続いて20秒間のリハーサル妨害課題(3 桁の整数からの減算課題)を行わせた後に、 10秒間の口答再生を行わせた。,この手続きが3試行 繰り返されたリ

(5)

292

藤 田   正

第4試行は、手掛り提示の手続きが導入された解除試行である。リハーサル妨害課題までは第 3試行までと同じ手続きで行われたが、再生時には2つの異なる検索手掛り条件が用いられた。

図1は、解除試行の手続きの概要を示したものであるO 弁別手掛り条件の前半では、弁別手掛り として下位カテゴリ一名(例えば、打楽器)がスライドにより与えられ、 10秒間の口答再生を行 わせた。後半では、直前試行(第3試行)の3項目を印刷した手掛りカード(縦15crn X横21cm) を与え、 「これは直前の試行の単語です。これを参考にして、今さっき覚えた単語を思い出して、

言って下さい。」と教示し、再び10秒間の口答再垂を行わせた。

[H己銘項目提′J<] [リハーサル妨害課題] [再生 揃半)       再t. (後半) ]

・弁 別    3項目      減算課題      弁別手掛り提示    ‑項目手掛り提示・再牛 手掛り条件 MB寺提'];      「今覚えたものは      値前試行の

管楽器です。思い       3項H) MILて言って卜さい」

非弁別    3項口      減算課題 手掛り条件 同時提示

J│蝣蝣蝣サ!・別r‑損;月't′」1  ‑‑ ‑Jl.=1手掛Iift‑こ・日日:

「今覚えたものは     (面前J拓‑‑の 楽器です。思い        3項目) 日日ノて言って下さい」

図1第4(解除)試行で用いた実験手続き

それに対して、非弁別手掛り条件の前半では、非弁別的な手掛りとして上位カテゴリ一名博Ej えば、楽器)がスライドにより与えられ、10秒間の口答再生を行わせたo後半では、w.前試行(第 3試行)の3項目を印刷した手掛りカードを与え、「これは直前の試行の単語です。これを参考 にして、今さっき覚えた単語を思いIlll

lll[ノて、言って下さい。」と教示し、再び10秒間の[」答再生

を行わせた。2つの条件とも、このような手続きが2つの種類のリストについて実施された。な お、リスト1からリスト2へのリスト間間隔は2分であった。また、リストの提示は、半数ずつ 順序が入れ換えられた。

結果

2種類のリストで同じ傾向が見られたので、結果の処理に際しては2種類のリストの再生成績 を平均した僻を用いた。

(1)正再生率:提示順序に関係なく正しく再生された項目に基づき、各条件における正再生 率の平均値を図示したのが図2である。,個人のiK再生率を角変換した僻の平均値を用いて以下の ような3つの分散分析を行った。

①第1試行から第3試行(順向日歩の形成段階)についての分析:2(手掛り条件)×3(読 行)の分散分析を行った結果、試行(F‑76.0,d/=2/44,♪<.Ol)の主効果のみが有意であったO

②第3試行から第4試行(解除試行前半)についての分析:2(手掛り条件)×2(試行) の分散分析を行った結果、手掛り条件(F=27.27,d/=l/22,p<.0¥)と試行(F二8.10,df=1/22,

♪<.Ol)の、主効果および手掛り条件×試行(F=26.79,〝=1/22,♪<.Ol)の交亙作用が、そ れぞれ有意であった。

(6)

順uy¥二渉からの解除における検索の下位過程の検討

T       前.半' (級.辛)

4    試 行

図2 各条件の平均正再生率

293

交互作用が有意になったので誤差項(MS<?=99.57)を用いて、単純効果の検定を行った。最初 に、条件毎に試行間の差について月食定を行った結果、弁別手掛り条件では第3試行と第4試行 (H22)=5.68, p<.001)の間に有意差があったが、非弁別手掛り条件では第3試行と第4試行 (H22)‑1.65)の間には有意差がなかった。次に、試行毎の手掛り条件間の差について合成した 誤差項(A/SE=107.67)を用いて月食定を行った結果、第3試行では両手掛り条件間に有意差は なかったが、第4試行では両手掛り条件間 a(44)=7.35, p<.001)に有意差があった。

③第4試行(解除試行前半)から(解除試行後半)についての分析: 2 (手掛り条件) ×2 (試行:前‑f一 後‑f‑)の分散分析を行った結果、手掛り条件(F=31.21, df=l/22, p<.Ol)の 主効果のみ有意であった。

考     察

本研究では、手掛り提示の条件を検索の下位過程(候補項目の産出一標的項目の弁別)モデル に厳密に対応させるため、解除試行において検索の下位過程に対応した手掛りの種類(項目産,'U を促進する手掛り一項目弁別を促進する手掛り)を連続して提示する手続きを採用した。さらに、

検索手掛りの弁別機能が項目産出に影響していることをより明確にするために、手掛りの弁別機 能が効果的に働く弁別手掛り(下位カテゴ.)一名)を提示する弁別手掛り条件と、手掛りの弁別 機能が低下した状態にある非弁別手掛り(上位カテゴリ一名)を提示する非弁別手掛り条件を設 けて、手掛りの弁別機能と検索の下位過程の関係を検討し、再生の2段階説(Kintsch, 1970 ; Anderson & Bower, 1972)、及び再生の2重経路説(Jones, 1978)との関係を明らかにした。

本研究の主な関心であった解除試行の結果は、次の通りであった。弁別手掛り条件では、弁別 手掛りの提示のみで顕著な再生率の上昇が生じたが、続いて直前試行項目が提示された場合には、

巾生率が増加しなかった。それに対して、非弁別手掛り条件では、非弁別的手掛りの提示によっ ては再生率の上昇は見られなかったが、続いて直前試行項目が提示された場合には、有意ではな

(7)

294 藤 間   正

かったが、再生率に若十の上昇が見られたL,ノ

弁別手掛り条件において検索時に弁別手掛りが提示された段階で顕著な解除が生じたという結 果は、先の藤田(1994, 1995)の弁別手掛り条件の結果と‑弓女するものであって、検索手掛りを 利用して項目を弁別的に直接検索していることを示している̲、すなわち、先行試行項[圧の弁別

した項目検索が行われにくい貯蔵状況にあっても、 1柑J相性をもった検束手掛りが利用できる場 合、限定された項目検束を行うことができるため、正しく弁別された項Hが直接産出されるので 順向日歩からの解除が生じたのであるu Lたがって、項[日用Uを促進する項目手掛りを与えて再 度再/上を求めても、それ以上の再生の増加が見られなかったと解釈できる。,

他方、非弁別手掛り条件では、候補項目のM/iiを助ける上位カテゴリ一名提示では解除効果は 現れなかったが、項目手掛りを提示した時点で初めて着トの解除効果が見られた。,したがって、

例え候補項目が産出されていても、直前試行と現試行との項tは用Uを日用巨にする手掛りとして直 前試てT項「1が提示されないと、順向1‑'{歩からの解除は生じないことが男らかである,〕この結果は、

藤出(1994, 1995)の項目手掛り条件の結果と‑一致するものであった。‑ この条件で解除効果が顕 著でなかった結果は、 一般にいわれている検索の下位過程(項目産出一項目弁別)のうち項目弁 別の因難さが関与している可能性は、ごく小さいことを示唆しているr.

本研究の結果と藤田(1994, 1995)の結果を総合すると、順向一十渉の形成は、主として検索手 掛りの弁別機能の低トにより弁別的な項目検索と産出が不可能になっていく結果として生じる,、

また、順向1‑‑渉からの解除は、検索手掛りの弁別機能が回復し、弁別的な項目検索と産出が可能 になった結果として生じるといえる。

次に、本研究の目的のひとつである手掛りの弁別機能と検索の下位過程の関係に関して、これ までに提唱されている再生モデルとの関係について考察する。言年生における検索過程モデルに関 連づ1ナた場合、 Anderson&Bower (1972)、 Kintsch (1970)の2段階モデルのように、 ′削二2 段階の処理過程が存在すると考えるよりも、 J()lles (1978)の主唱する再生の2重経路説の枠組

みの中で考えることの方が妥当であるといえる,この説では、再生の検索過程には2つの経路が あると仮定している。 1つは手掛りから直接的な検索の経路であり、もう1つは「探索過程と決 定過程」から成る再生の経路である,このモデルに細心づけて考察すると、手掛りの弁別機能が 効果的に機能している場合には、直接のアクセス、すなわち1柑J的な項目検束が行われ産出され るが、手掛りの弁別機能が低下してくると弁別的な項目検束が不可能になり、順向fA・渉が形成さ れるのである。また、一部には手掛りの弁別機能が低卜すると、取り敢えず候補項目を産出し、

その中から標的項目を弁別Lm二する処理が行われる過程で1‑‑渉が形成される場合があるL⊃

本研究も含めて、藤田(1994、 1995)の一連の結果は、 Jones (1978)の再生の2重経路説に おける直接アクセス処理に相当するものが顕著であったo また、顕著ではなかったが、候補項目 の産出一項Hの弁別という2段階処理も存在した、〕したがって、順向1‑・渉の形成と解除における 手掛りの弁別機能と検索の下位過程に関しては、必ずしも従来、再生の2段l翫見(Kintsch,

1970.' Anderson & Bower, 1972)に基づいて考えられていたような候補項目の産Lllト標的項目 の弁別、再生といった2段階処理のみが強く働いているのではないことが明らかにされた。

IH^^^^^^^Eifl

本研究では、手掛りの弁別機能と検索の下位過程を構成する項目戸紺ト項目弁別との関連につ

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順向十渉からの解除における検索の下位過程の検討 29!S

いて検討した。検索の下位過程に対応した実験的検討を行うため、項目産出を促進する手掛(ら 項目弁別を促進する手掛りを連続して与える手掛り条件を新たに考案し実験した。手掛りは全て 解除試行の検索時に提示され、解除の大きさが比較された。弁別手掛り条件では、下位カテゴリー 名が提示され、続いて直前試行の項目が提示された。なお、候補項目の産出を操作するために非 弁別手掛り(上位カテゴリ一名)を提示し、続いて直前試行項目を提示する非弁別手掛り条件を 設けた。,

大学生24名を被験者として、改善したBr(川,∩‑Peterson手続きを用いて、個別実験を行った。

記銘リストには、各試行があるカテゴリーの下位カテゴリーで変化するような(例:楽器一打楽 器・弦楽器・管楽器・リード楽器)リストを用いた。

主な結果は次の通りであった‖全ての条件で第1試行から第3試行にかけて条件間に差を生じ ることなくiH再生率は低卜し、順向干渉が形成された0 第3試行から第4試行・前半にかけて弁 別手掛り条件では急激な正再生率の上昇が起こり、順向干渉からの解除が見られたが、続く項目 名手掛りの提示によっては、それ以上の再生の増加はみられなかった。それに対して、非弁別手 掛り条件では非弁別手掛り(上位カテゴリ一名)提示による止再生率の上狛ま起こらず、続いて 与えられた項目名手掛り提示によっても顕著な再生率の上狛ま見られなかった。

以Lの結果から、桐油J干渉の形成と解除に関しての手掛りの弁別機能と結びついた検索の下位 過程のメカニズムは、再生の2段階説(Kintsch, 1970: Anderson&Bower, 1972)よりも、

Jones (1978)の再生の2重経路説の枠組みの中で扱う方が適切であると結論された。

引 用 文 献

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296 藤 rTl   正

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[付記]本研究での実験の実施と資料の分析に際して浜間美香さんの協力を得たO記して厚くお礼申し上げ imm

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Examination of Sub‑processes of Retrieval Phase

in Release from Proactive Interference

Tadashi Fujita

(D̀,paγrment of Psychol岬‑ Nam Unii‑̀,γsity of Education, Nara 630, Japan) (Received April 18, 1997)

The purpose of this experiment was to examine whether the buildup of proactive interference (PI) was attributed to difficulty to generate discriminative items by using retrieval cues or diffi‑

culty to discriminate between present trial items and previous trial items in retrieval phase. For this purpose, a new procedure was provided w,ith successive 2 stages in retrieval phase on PI re‑

lease trial. The first stage was required to recall items by using discriminative or non‑discri‑

minative cues. The second stage was required to recall by using item cues under the both cue conditions.

A 2×4 factorial design was used. which incorporated retrieval cue conditions (discriminative and nondiscriminativP cue conditions) and number of trials (from 1 to 4). The subjects were 24 students with a mean age of 19 vr. and 9 mO. and were given three Brown‑Peterson trials and one release trial, each of which had three names of musical instrument (eg. organ, harmonica, pianica;

drum, cymbal, tympany; cello, violin, harp; flute, horn, oboe).

On release trial, the subjects who were assigned to the discriminative cue condition were re‑

quired to recall items by using category name (eg. keyboard instrument; percussion instrument;

stringed instrument; wind instrument) as a discriminative cue during retrieval phase, the remain‑

ing subjects who were assinged to the non‑discriminative cue condition were required to recall items by using superordinate category name (musical instrument) as a non‑discriminative cue dur‑

ing retrieval phase.

The main results were as follows. The con・ect recalled items decreased from trial 1 to 3 under three conditions, and that is, PI were built up as a function of trials. The performance dif‑

ferences were found among two conditions on the first half of 4th release trial. Under the discri‑

minative cue condition, large PI release was produced by discriminative cue. Under the non‑dis‑

criminative cue, PI release was not produced by non‑discriminative cue. On the next half of re‑

lease trial, the subjects in both conditions were given 3 items as cues which were presented the immediate previous trial. Under the discriminative cue condition, amounts of recall didnt in‑

crease further more. while under the non‑discriminative cue condition, the performance of recall

tended to increase bv the it(さm cues.

These results suggested that the buildup of PI and the release from PI were interpreted by difficulty to generate discriminated correct items by using retrieval cues rather than difficulty to discriminate between the present trial and previous trial items. The findings are assumed to fit the 「Dual routes process theory of recall」 (Jones, 1978) better than the 「Two‑stage theory of recall」 (Anderson & Bower, 1972, 1974; Kintsch, 1970).

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