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博士(歯学)児玉高有 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)児玉高有 学位論文題名

唾液中ストレスマーカーの動態分析 学位論文内容の要旨

【目的j

  生体にストレスが加わったときに放出される生化学物質は血圧や心拍数,血糖 値を上昇させる等,生体がストレスに対処で出来るよう作用する.これらの生化 学物質はストレスマーカーとも呼ばれており,近年,唾液中のアミラーゼ,コル チゾール,クロモグラニンAをストレスマーカーとして用いることが注目されて しヽる‐

  ストレスの研究分野では検査試料として血液を用いてカテコールアミンやコル チゾールを定量したストレス評価も行われているが,採血にともなう疼痛がスト レスマーカーに影響を与える可能性がある,また唾液中ストレスマーカーにっい て,ストレスに対する個人ごとの感受性や反応速度の違いがあり,その変動の詳 細は不明な点が多い.したがって,ストレスマーカーを用いたストレス評価は臨 床的に確立されたものではなく,まだ研究途上の段階にあると著者らは考えてい る.

  本研究では,採血時の唾液中アミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAの 動態を明らかにするとともに,歯科治療時のこれらのストレスマーカーの変動を 治療内容や受診回数といった条件で比較分析し,歯科治療の術中や予後の評価法 と して 用 い る こ と が 出 来 る か どう か に つ い て 検 討す るこ とを 目的と した .

【方法】

1)採血をストレッサーとする実験

  被験者は外科的,内科的疾患を有したい健康な成人男性で,定期健康診断時に 採血を 予定 する 者(30名, 年齢 は24歳か ら43歳 ,平 均年 齢34.2歳)とした.

採血は座位にて肘正中静脈あるいは橈側静脈から行われた.採血日以前の唾液と して健 康診 断の1―3日前に 採取し,以後,採血直前,採血5分後,10分後,15 分後に連続的に全唾液を採取した.

2)歯科診療をストレッサーとする実験

  被験者は歯科受診希望者で外科的,内科的疾患を有しない健康な成人男性(31 名,年 齢は20歳 から48歳, 平均年齢36.8歳)とした.治療内容は抜歯5名,抜

(2)

歯を伴わない一般的な歯科治療26名であった.初診日、再診1日目、再診2日目 に お い て 、 診 療 の 直 前 お よ び 直 後 に 分 泌 さ れ た 全 唾 液 を 採 取 し た .   データ解析

  唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンA濃度には個人差がある ため,採血日以前に採取した唾液中の各ストレスマーカー濃度ならびに歯科初診 日診療 前の 各ストレスマーカー濃度を1として正規化し,変動比を算出した.

  得られたデータは統計解析ソフトSPSS for WrNDOWSを用いてpaired t‑testを お こ な い , 有 意 水 準5% 未 満 を 統 計 学 的 有 意 差 が あ る と 判 定 と し た .

【結果】

1)採血前後の唾液中アミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンA濃度の変化   アミラーゼ濃度の変動比は採血直前,採血5,10,15分後において非採血日と 比較して有意な上昇を示した・コルチゾール濃度の変動比は採血10,15分後にお いて非採血日と比較して有意な上昇を示した.クロモグラニンA濃度の変動比は 採血直前,採血5,10,15分後において非採血日と比較して有意な上昇を示した.

  非採血日の時点でのアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンA濃度が測定 平均値より高い被験者を高濃度群,低い被験者を低濃度群と分類した.低濃度群 では各ストレスマーカー濃度の変動比は採血直前から採血15分後にかけて非採 血日と比較して有意な上昇を示したが,高濃度群では有意な上昇を示さなかった.

2)歯科診療初診日から再診2日目までの唾液中アミラーゼ,コルチゾール,クロ モグラニンA濃度の変化

  歯科治療を受けたすべての被験者(31名)における唾液中アミラーゼ,コルチ ゾール,クロモグラニンA濃度を診療日ごとに比較した′ところ,再診2日目の診 療前後にアミラーゼおよびコルチゾール濃度の変動比が初診日診療前と比較して 有意な低下を示した,

  抜歯を受けた被験者(5名)において,抜歯直前にはコルチゾール濃度が,抜 歯直後にはアミラーゼおよぴコルチゾール濃度が初診日診療前と比較して変動比 の有意な上昇を示した,一方,抜歯翌日にはコルチゾールおよびクロモグラニン A濃 度 が 初 診 日 診 療 前 と 比 較 し て 変 動 比 の 有 意 な 低 下 を 示 し た .   TBI,PMTCを 初診 日か ら3回に わた り受け た被験者(7名)において,1回目 治療前(初診日診療前)と比較して,1回目治療後から3回目治療後にかけて各 マーカー濃度の変動比の有意な低下が散見された.

【考察】

  ストレス過多が生体ヘ及ばす悪影響を回避するためには,正確なストレス評価 を行うことが必要であると考えられるが,これまで多く用いられてきた質問表に よるストレス評価は主観的要素の影響を受けやすく,より客観的な評価を行うこ とが望まれる.生体の内因性物質をストレスマーカーとして測定することは客観

(3)

的なストレス評価方法として期待されるところである.採血のように疼痛や恐怖 を伴う採取方法を用いるとストレスを過大に評価してしまう危険性があることが 示唆され,採取時にストレスを与えにくい唾液を用いることによって正確なスト レス評価法が確立出来ると考えられる.

  唾液中アミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAには採血によるストレス に対して固有の反応速度があることが明らかとなったことから,より正確なスト レス評価を実現するためには,断面的ではなく連続的な採取を行うことが望まし いと考えられる.

  唾液中ストレスマーカー基準値が高値である被験者はストレスマーカー濃度の 変動が少ないことが示され,少なくとも慢性ストレスあるいは恒常的なストレス マーカー濃度の違いそのものが生体の急性ストレスに対するアミラーゼ,コルチ ゾール,クロモグラニンA濃度の変動に,個人差を生じる要因の1つであると考 えられる.

  歯科治療に韜いては,患者に対し快適さを与える口腔清掃等の処置は,それ自 体にストレス軽減効果があると考えられる,唾液中ストレスマーカー濃度測定に よルストレス軽減効果を数値化することが可能であると考えられ,近年重要視さ れつっあるメンタルヘルスの観点からも歯科医療の新しい役割が生まれる可能性 がある.

  初診時の不安や恐怖が再診時には緩和されると考えられる.また,抜歯は強い ストレスとして作用していることが示唆されたことから,唾液中ストレスマーカ ー濃度測定により,抜歯など侵襲が高い治療においてどの程度のストレスを患者 に与えたかを評価可能であると考えられ,インフオームド・コンセントの質やス ト レ ス を 与 え に く い 治 療 環 境 の 追 求 が 可 能 に な る と 考 え ら れ る .   今後,慢性ストレスによる唾液中ストレスマーカー濃度の特性を明らかにする ことで,ストレス関連疾患の診断や予後の評価にも応用可能であると思われ,唾 液 中 ス ト レ ス マ ー カ ー濃 度 測 定 の 臨 床 的 意義 は大 きいも のと 考え られ る.

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

唾液中ストレスマーカーの動態分析

  審査 は,主 査,副査 全員の出 席の下 に,先ず申請者が提出論文の概要の説明を行った 後に ,その内 容およぴ関連したp‑‑l目にっいて口頭試問により行われた.審査論文の概 要は 以下のと おりで ある.

  近年,人 間のス トレスを 客観的 に評価す るためのストレスマーカーとして,唾液中の アミラー ゼ,コ ルチゾール,クロモグラニンAを用いることの有ゑ舟陸がいくっもの研究 成果とし て報告 され,血 液中の ストレス マーカーの定量と比較して検体採取が簡便であ ることも 相まっ てその有 用性が 注目され ている。しかし,様々なストレスに対するこれ ら唾液中 微量成 分の変動にっいては不明な点が多くある。そこで本研究では,1)通常の 注身オ針を用いた採血はそれ自体ストレスになる可育旨陸があるが,実際に唾液中のアミラ ーゼ , コ ルチ ゾール ,クロモ グラニンAの 動態はど のよう に変化す るのか,2) 歯科治 療の内容 および 受診回数 によっ てストレ スマーカーはどのように変動するのか,につい て明らか にする ために実 験を行 った.ま た,唾液中ストレスマーカーの動態を解析し,

歯科治療 中の患 者の状態 や予後 の評価法 としてこれらのストレスマーカーを用いること ができるかどうかについて考察した.

  まず,定 期健康 診断時に 採曲す る予定の 健康な成人男性30名について,採血日の1―3 日前,採 血直前 ,採血51015分後に全 唾液を 採取し分 析した, アミラーゼ濃度は採 血直前, 採血5,10,15分 後にお いて,コ ルチゾ ール濃度 は採血1015分後に船いて,

クロ モ グ ラニ ンA濃 度は採 血直前, 採血5,10,15分 後にお いて非採 血日と 比較して 有 意な上昇 を示し た.また ,被験 者の中に 各ストレスマーカー濃度が,採血日の13日前 において 既に高 値を示す 例があ り,これ らを高濃度群とし,その他を低濃度群と分類し て,各ス トレス マーカー 濃度を 比較した ところ,低濃度群においては採血直前から採血 15分後にか けての 全てのス トレス マーカー 濃度が採血日の1―3日前と比較して有意を上 昇を示したが,高濃度群では有意を変化を認めなかった.

  次に,歯 科治療 をストレ ッサー とする実 験を行った.被験者は歯科受診希望者で外科 的, 内 科 的疾 患を有 しない成 ^男性31名とした .初診日 ,再診1日目 ,再診2日目 にお

63―

誠 人

   

   

橋 村

舩 田

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

い て , 診 療 の 前 後 に 全 唾 液 を 採 取 し て 分 析 し た . 再 診2日 目 の 診 療 前 後 に ア ミ ラ ー ゼ お よぴコノレチ ゾーッレ濃度が祝驂日診療前と上ヒ較して為 ;慧な低下を示した.抜歯を受けた被 験 者(5名 ) に 韜 い て , 抜 歯 直 前 に は コ ル チ ゾ ー ル 濃 度 が , 抜 歯 直 後 に は ア ミ ラ ー ゼ お よ ぴ コ ノ レ チ ゾ リ レ 濃 度 が 移 ) 診 日 診 療 前 と 上 ヒ 較 し て 有 意 な 上 昇 を 示 し た ‐   こ れ ら の 結 果 か ら , 採 血 は そ れ 自 体 が iRと な ル ス ト レ ス マ ー カ ー 濃 度 を 変 化 さ せ る 原 因 と な る こ と が 明 ら か と な り , 血 液 中 の ス ト レ ス マ ー カ ー を 測 定 す る よ り も , 非 侵 襲 的 に 採 取 で き る 唾 液 に 含 ま れ る 物 質 を ス ト レ ス マ ー カ ー と し て 用 い る こ と の 有 用 性 が 示 さ れた .ま た, I曼陸 ス トレ スあ るい は恒 常 的な スト レス マーカー濃度の違 いそのものが生 体 の 急 性 ス ト レ ス に 対 す る ス ト レ ス マ ー カ ー 濃 度 の 変 動 に 個 人 差 を 生 じ る 要 因 の1っ で あ る と 考 え ら れ た ‐ 唾 液 中 ス ト レ ス マ ー カ ー 濃 度 測 定 に よ り , 歯 科 治 療 に よ る ス ト レ ス i平 価 で き る と 考え ら れ, 今後 ,´ 慢陸 ス トレ スに よる 唾 液中 スト レス マー カ ー濃 度の 特

´ 陸 を 明 ら か に す る こ と で , ス ト レ ス 関 連 疾患 の診 断や 予 後の 評価 にも 応用 可 能で ある と 考えられた.

  口 頭 試 問 の 概 要 は 以 下 の と 韜 り で あ る . 1. 採 血 を 用 い た 理 由 ,

2. 男 性 の み を 被 験 者 に 用 い て い る が 理 由 は あ る の か . 3. 唾 諦 赫 に2種 類 の 方 法 を 使 い 分 け て い る の は な ぜ か ,

4. 高 濃 度 群 と 低 濃 度 群 の2群 に 分 け て い る が そ の 理 由 は な に か , ま た3群 に は な ら た い の か .

5. 各 ス ト レ ス マ ー カ ー 測 定 値 の 個 人 差 に つ い て は ど う か .

6. ア ミ ラ ー ゼ 濃 度 が ス ト レ ス 以 外 で 上 昇 す る こ と は あ る の か , そ れは どの よう な場 合 な の か .

7. 採 血1時 間 後 で は ス ト レ ス マ ー カ ー 濃 度 は ど う な る の か . 8. ス ト レ ス マ ー カ ー 測 定 は 臨 床 的 に 意 義 が あ る の か .

  い ず れ の 質 問 に っ い て も , 申 請 者 か ら 得 ら れ た 回 答 や 説 明 は , 専 門 的 知 識 に 基 づ ぃ た 的 確 な も の で あ っ た . 本 研 究 は 血 液 に 由 来 す る 唾 液 コ ル チ ゾ ー ル 齶 よ び 唾 液 腺 で 固 有 に 分 泌 さ れ る ア ミ ラ ー ゼ と ク ロ モ グ ラ ニ ンAを 直 接 定 量 し , 注 射 に よ る 採 血 自 体 が ス ト レ ス と な り , こ れ ら 唾 掖 中 ス ト レ ス マ ー カ ー の 濃 度 に 変 化 が 生 じ る こ と を 明 ら か に し た も の で , 非 恨 襲 的 に 採 取 で き る 唾 液 を 用 い た ス ト レ ス 評 価 法 の 優 位 性 に 科 学 的 根 拠 を 示 し た こ と が 高 く 評 価 さ れ た . ま た , 簡 便 に 採 取 で き る 唾 液 を 用 い て , 歯 科 治 療 の 過 程 に お け る 患 者 のQOLを 客 観 的 に 評 価 で き る 可 能 性 を 示 し た 点 に っ い て も 高 い 評 価 を 得 た . 本 研 究 の 内 容 は 歯 科 医 学 の 関 連 領 或 の 発 展 に 大 き く貢 献ナ るも の であ り, 申請 者 が博 士( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る に ふ さ わ し い も の と 認 め ら れ た .

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参照

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