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博士(医学)田原たづ 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)田原たづ 学位論文題名

家 兎硫酸基 転移酵素SULT281 のクローニングと      ●

     特異性 の解析

学位論文内容の要旨

  硫酸抱合は、硫酸基転移酵素と共基質である3 ‑phosphoadenosine5 ―phosphosulfate (PAPS)により起こる反応である。硫酸抱合により生体内物質や生体異物の生化学的活性な らびに物理学的特性が変化することが知られている。硫酸基転移酵素は細胞質型硫酸基転 移酵素と膜結合型硫酸基転移酵素の2っに分類されるが、細胞質型硫酸基転移酵素はSULT と呼ばれ、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、カテコラミンなどのホルモンや胆汁酸 といった比較的分子量の小さな生体内物質や薬物などを基質とする酵素である。硫酸抱合 によルホルモンの不活性化、疎水性物質の親水性物質への変換、薬物の解毒が起こる。SULT は複数の遺伝子ファミリーで構成され、さらにサプファミリーに分類される。SULT2のう ち サ ブ フ ん ミ リ ー であ るSULT281は 主 にdehydroepiandros terone( 以 下DHEA), choles terol,pregnenoloneを基質として持つ酵素である。

  DHEAは、近年抗老化ホルモンとして注目されており、多岐にわたる作用が報告されてい るが、今回我々は特に抗動脈硬化作用に着目した。DHEA―sulfate(以下DHEA‑S)の低下に より心血管疾患のりスクが増加するという報告やDHEA―Sは加齢とともに低下すると報告 されている。一方DHEAについても血管内皮細胞、マク口ファージ、中膜平滑筋細胞に対し て動脈硬化症抑制作用に関して多数報告がなされている。しかし、DHEAおよびDHEA‑Sに ついては、作用機序は不明であるため、どちらが動脈硬化症抑制作用を持つのか一定の見 解は得られていない。したがってDHEAを基質とするSULT281の発現の検討はDHEAあるい はDHEA―Sの 作 用 を 明 ら か に す る た め 重 要 な 知 見 を 与 え る も の と 考 え ら れ る 。   また、脂質代謝がヒトと近似しているため、従来より動脈硬化研究にウサギが頻用され てきたが、ウサギのSULT281遺伝子はいまだ単離・報告されていない。よってDHEAならび にDHEA―Sの動脈硬化症への関与を明らかにする目的の一環としてウサギのSULT281遺伝子 の ク 口 ー ニ ン グ と そ の 発 現 部 位 、 基 質 特 異 性 、 酵 素 活 性 の 検 討 を 行 っ た 。   日本白色ウサギの皮膚より、RNAを抽出しRACE法によってウサギSULT281遺伝子をク口 ーニングした。また、各臓器でのSULT281の発現をRT―PCR法を用いて検討した。さらに大 腸菌を用いてりコンビナント蛋白を作製し、放射性同位元素を用い、薄層クロマトグラフ イーにより酵素動態解析を行った。同時に、ペプチド抗体を作製しウエスタンブ口ット法、

免疫組織染色により動脈でのSULT281の発現について検討した。

以下に結果の要約を示す。

  1)得られたク口ーンは、330アミノ酸で構成されており予測される分子量は37. 3kDaで

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あった。既報のヒトならびにマウスSULT2A1およびSULT281とアミノ酸配列の相同性につ いて検討したところ、マウスSULT281と73.7%であり、得られたク口ーンは、ウサギSULT281 と考えられた。

  2) ウ サ ギSULT281は 、 腎 、 大 腸 、 皮 膚 、 動 脈 、 静 脈 に 発 現 を 認 め た 。  ,   3)リコンピナントSULT281の酵素動態解析では、Kml.5piMと基質親和性はcholesterol で高く、代謝回転はkcat/Km 64. lM‑lsec‑l'でありpregnenoloneで速いと推測された。

  4)ウエスタンプ口ット法よりSULT281は動脈で発現しており、免疫組織染色から特に動 脈内皮細胞に発現していることが明らかになった。

  ウサギSULT281はヒトやマウスのこれまでの報告と同様に、腎臓、大腸、皮膚で発現し ていた。さらに、ウサギSULT281は、動脈においてmRNAならびに蛋白レベルで発現してい ることを初めて明らかにした。RT―PCR法の検討より動脈においてSULT281と共通の基質を 持つSULT2A1の発現を認めなかったことより、DHEA,pregnenolone.ch01esterolの脈管 系における硫酸抱合反応はSULT281が担っていることが推測された。動脈硬化症抑制作用 について、DHEAによるものかDHEA一Sによるものかはいまだ未解決の問題である。現在特 異的受容体が同定されておらず、作用機序の解明には受容体単離が必須である。今回我々 は動脈硬化症発症の重要な構成因子である血管内皮細胞におけるSULT281の発現を同定し た。これは、動脈硬化症の発症・進展における贓`およびDHEA―Sの役割を解明する上で 非常に興味深いと考えられた。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

家兎 硫酸基転 移酵素SULT281 のクローニングと      特異性の 解析

  硫酸 抱合は、 硫酸基転 移酵素と 共基質である3 ‑phosphoadenosine5 ―phosphosulfate

(PAPS)により起こる反応であり、基質の生化学的活性や物理学的特性が変化することが知ら

れ て い る 。 細 胞 質 型 硫 酸 基 転 移 酵 素 は SULTと 呼 ば れ る が 、 SULT281は 主 に dehydroepiandrosterone (DHEA),cholesterol,pregnenoloneを基質として持つ酵素であ る。DHEAは、近年 抗老化ホ ルモンと して注目 されてい るが、我々は特に抗動脈硬化作用に 着目した。DHEA―sulfate (DHEA―S)の低下により心血管疾患のりスクが増加すると報告され てい る一方、DHEAについて も血管内 皮細胞、 マクロフ ァージ、中膜平滑筋細胞に対して動 脈硬 化症抑制 作用に関 して報告 がなされ ており、DHEAおよびDHEA‑Sについて、どちらが動 脈硬 化症抑制作用を持つのか一定の見解は得られていない。また、動脈硬化研究に頻用され てき たウサギ のSULT281遺伝子 はいまだ単離・報告されていない。よってDHEA/DHEA―Sの動 脈 硬化症へ の関与を 明らかに する目的 の一環と してウサギSULT281遺伝子の クローニ ング と その発現 部位、基 質特異性 、酵素活 性の検討 を行った。 日本白色 ウサギの 皮膚よりRNA を 抽出し、RACE法によっ てウサギSULT281遺伝子を クローニ ングした。 得られた クローン は、330アミノ酸 で構成さ れ予測さ れる分子 量は37.3kDaで あり、マウスSULT281とアミノ 酸配 列の相同性は73.7%で、ウサギSULT281と考えられた。また、RT―PCR法を用いて各臓器 でのSULT281の発現を 検討した ところ、腎、大腸、皮膚、動脈、静脈に発現を認めた。さら にり コンビナント蛋白を作製し、放射性同位元素を用い、薄層クロマトグラフイーにより酵 素 動 態解 析 を 行っ た 。Kml.5pMと基 質親和性 はcholesterolで高く 、代謝回転 はkcat/Km 64. lM‑lsec―1でありpregnenoloneで速いと推測された。同時に、ペプチド抗体を作製し、ウ エス タンブロ ット法を 行い、SULT281は動脈で発現していること、免疫組織染色から特に動 脈 内 皮細 胞 に 発現 し てい る こ とが 明 らか に な った 。RT−PCR法 の検討よ り動脈に おいて SULT281と共通の基質を持つSULT2A1の発現を認めなかったことより、DHEA,pregnenolone, cholesterolの脈 管系にお ける硫酸 抱合反応 はSULT281が担っ ていることが推測された。今 回 我々は動 脈硬化症 発症の重 要な構成 因子であ る血管内皮 細胞にお けるSULT281の発 現を 初め て同定した。質疑応答では,主査から紹介があった後、申請者はスライドを用いながら 約20分 に渡って 学位論文 内容の発 表を行った。その後、副査三輪教授から、1)ウエスタン

夫 一

隆 聡

池 輪

小 三

授 授

教 教

査 査

主 副

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ブロット法において組織から抽出した蛋白とりコンビナントSULT281のバンドの大きさの 差異にっいて、2)リコンビナントSULT281の実際の細織内での活性にっいて、3)ウエスタ ンブロット法において今回示した以外のバンドの有無、4) DHEA/DHEA−Sにっいて細胞内ヘ 入る際の機序および細胞内での硫酸抱合にっいて、5)動脈内皮細胞でのDHEA一Sの細胞外へ の分泌、細胞内での作用にっいての質問があった。次いで副査笠原教授から、1) SULT2Bla の臓器別発現の検討にっいて、2)加齢に伴うSULT281の活性の変化を検討した報告の有無、

3) DHEAからDHEA−Sへの硫酸抱合反応の主となる臓器にっいて、4)sulfataseの臓器別発 現の検討の有無についての質問があった。次いで主査小池教授から、1) DHEA/DHEA−Sのど ちらが抗動脈硬化作用を有すると考えるか、またそのために今後必要と考えている実験につ いて、2) SULT281のモノクローナル抗体の作成にっいて、3)今後SULT281と動脈硬化の関 連を検討するにあたっての実験方針、4) DHEAの経口投与の効果にっいての質問があった。

いずれの質問に対しても、申請者はこれまでの文献的報告および実験結果を引用し、概ね適 切に回答した。

  この論文は、血管内皮細胞におけるSULT281の発現を初めて同定した点で高く評価され、

今後、モデル動物等を用いてSULT281の発現を検討し、動脈硬化症発症・進展におけるDHEA およびDHEA‑Sの役割が解明されることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請者が 博士(医学 )の学位を 受けるのに 充分な資格 を有するも のと判定し た。

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