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博 士 ( 歯 学 ) 武 井 章 夫 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 武 井 章 夫

学 位 論 文 題 名

ラ ッ ト 歯 根 膜 の 再 生 過 程 に 関 す る 形 態学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

緒  言

  損傷に対する歯周組織の修復カは,歯周病等の歯周組織の疾患の治療の際にも重要な意義を有 しているが,修復機転の詳細にっいては,今なお不明な点が少なくない。今回,著者は歯周組織 の修復の過程を明らかにする目的で,ラットを用いて歯周組織に外傷性の障害を惹起し,感染等 が加わらない壊死巣を出現させ,その後の修復過程をそれに関与する細胞を中心として形態学的 に検索した。、

材料と方法

1.組織学的検索: 体重約130gのWistar系雄ラッ ト80匹を用いた。右上顎第1,第2臼歯歯   間部に厚さ約l mmの矯正用ゴムバンドを挿入した。挿入24時間後にゴムバンドを除去し,除去   直後 ,6時間 後 ,1,2,3,4,5,6,7,14,21,28,35日後にエーテル の吸入により   屠殺し,右側上顎骨を取り出し,中性ホルマリンにて固定,脱灰後,通法に従い,パラフアン   に包埋した。近遠心的に厚さ約4 pmの連続切片を作製し,第1臼歯根問中隔部の歯周組織を中   心に検索した。

2.免疫組織化学的検索:組織学的検索と同様の方法で歯周組織に障害を与え,ゴムバンド除去   直 後 ,6時 間 後 ,1,2,3,4,5,7,14日後 に 屠殺 した 。屠 殺1時間 前に5―bromo   ―2′‑ deoxyuridine(BrdU)を25mg/kgの割合 で腹腔内に投与し,抗BrdUモノクローナ   ル抗体を用いたABC法による免疫染色を施し,修復過程に関与する細胞の増殖活性を検索し   た。

3.電子顕微鏡的検索:組織学的検索と同様の方法で処理を加えたWistar系ラット34匹を用い,

  ゴムバンド除去直 後,6時間後,1,2,3,4,5,7,14,35日後に屠殺し た。屠殺後た   だ ちに4%グルタールアルデヒドで前固定,1%Os0。で後固定し,通法に従い,工ポン812   に包 埋 し, 超薄 切片 作 製後,酢酸ウラニル・ クエン酸鉛二重染色を施し て検索した。

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結  果

1.組織 学的検 索:ゴ ムバ ンド挿入24時間後には,歯牙の移動により,遠心根と歯槽骨Iま密着し,

  歯根 膜の 圧縮と 壊死が みられ た。 ゴムバ ンド除 去後6時間 目には ,圧迫 部の 歯根膜 腔には 広範   囲な 無細 胞領域 が観察 された 。ゴ ムバン ド除去 後1日目に は,歯 牙は復 位し ,圧迫 側の歯 根膜   腔は 牽引 側の巾 径とほ ぼ等し くな ってい たが, 細胞成 分のほ とん どみられない絮状の壊死組織   が依 然と して広 範囲に みられ ,壊 死組織 中には 好中球 や食細 胞が 認められた。ゴムバンド除去   後2日目 には, 周囲 の健常 部より の毛細 血管 の伸長 に伴い 間葉系 細胞が 活発 に増生 し,こ れに   伴う 壊死 組織の 器質化 が観察 され ,壊死 部は縮 小する 傾向を 示し た。ゴ ムバン ド除去 後3日目   には ,壊 死組織 はほと んど認 めら れなく なり, 幼若な 肉芽様 組織 により置換されていた。ゴム   バン ド除 去後4日目 には, 新生さ れた線 維芽 細胞が 束状に 配列す る傾向 を示 し,周 囲には 不規

.則 な方向 性を 示す幼 若な線 維が観 察され た。5日目 には 線維の 走行に 一致し た細 長い線 維芽細   胞が 観察 され, 歯根膜 線維は やや 鬆疎な がら機 能的配 列を示 して いた。 ゴムバ ンド除 去後7日   目に は線 維芽細 胞によ る線維 の産 生が進 み,機 能的な 配列傾 向が 強まり,明るい細胞質をもつ   大型 の線 維芽細 胞も観 察され た。 ゴムバ ンド除 去後14日目に なると 線維形成に伴う歯根膜線維   の機 能的 配列と 再付着 が明瞭 に観 察され た。大 型の線 維芽細 胞が 規則正しく配列し,線維はセ   メン ト芽 細胞, 骨芽細 胞によ り産 生され た基質 内に封 入され ,歯 根膜の機能的構造がほぼ回復   され てい た。

2. 免疫 組 織 化 学 的 検索 :BrdU陽 性 細 胞 は, ゴ ム バ ン ド除 去 後1日目 になっ て, 主とし て根尖   側に 出現 し,2日目 にはセ メント 質側を 中心 として その数 を増し ,壊死 部に も観察 された 。ゴ   ムバ ン ド 除 去 後3日 目 に は ,BrdU陽 性細 胞 は減 少する 傾向を 示して いたが ,セ メント 芽細胞   の 一 部 にBrdU陽 性 細 胞 が 観 察 さ れ ,4日 目 に は 幼 若 な骨 芽 細 胞 に もBrdU陽性 細 胞 が 認 め   られ た。 陽性細 胞はゴ ムバン ド除 去後7日目 には対 照群と ほぼ同 様に散 見さ れる程 度にな って   いた 。

3.電子 顕微鏡 的検索 :壊 死部歯 根膜中 には, 細胞の さま ざまな 崩壊像 が認め られ た。比 較的早 期 か ら 不規 則 な 突 起 を伸 長 し , 変 性物 を 取 り囲 んでい る食細 胞が 観察さ れた。2日 目頃に は無 細 胞 領 域に , 血 管 が みられ ,その 周囲の 小型 の間藁 系細胞 には層 板状に 配列 した粗 面小胞 体を   もっ もの も観察 され, 膠原小 線維 の産生 も認め られた 。7日目以 降には ,細 胞小器 官の発 達し   た大 型 の 線 維 芽細 胞 の 周 囲 に ,方 向 性 を も った 膠 原 小 線 維束 が 観察 される ように なった 。

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考  察

  歯間 部への ゴムバ ンド の挿入 により ,24時 間後に は圧迫 側の歯 周組織 に壊死巣が出現したが,

ゴム バンド の除去 後,壊 死部の 歯周 組織は 比較的 速やか に修 復され ,14日以降には歯根膜線維の 再 付着 と 機 能 的 配 列が 観 察され た。ゴ ムバン ドの 除去後1〜2日後 には 壊死巣 の周囲 組織に 分裂 像 を伴 う 細 胞 の 増 生が み ら れ た が, こ の 時 期 には こ の よ う な部 位 に 多数のBrdU陽性 細胞 が観 察さ れたこ とから ,壊死 巣の修 復に は周囲 組織の 細胞の 増殖 と分化 が重要 な役割を演じているこ とが 示唆さ れた。

  壊死 組織の 貧食に は, 複雑な 多数の 突起を もつ, 食細 胞が主 体を成 しており,壊死組織がほと んど 認めら れない 幼若な 線維性 組織 中にも しばし ば観察 され たこと から, 組織の修復機構にも関 与し ている 可能性 が推測 された 。

  組織 の修復 には, 主と して血 管の増 生に伴 い増殖 した 幼若な 間葉系 細胞が関与しており,一部 には 胎生期 の細胞 にみら れる特 徴的 な所見 も観察 された 。経 時的に 間葉系 細胞は分化の傾向を強 め, 線維芽 細胞 、骨芽 細胞, セメン ト芽 細胞に より, 組織の 再構成 が行 われ,7日 目以降 には多 数の 方向性 をもっ た膠原 小線維 束が 観察さ れた。 このよ うな 所見か ら,線 維の方向性を含め,組 織の 再構築 には分 化した 細胞の 関与 が考え られた 。

結  論

  本実験 の結果 ,一 旦変性 した歯 周組織 も, その後 ,感染 等が加 わらな い条件下では,比較的速 やかに 修復さ れ,歯 根膜 線維の 再付着 と機能 的配列 が起 こるこ とが明 らかと なったが,このよう な修復 過程に おいて ,周 囲組織 から増殖分化した細胞が重要ナょ役割を演じていることが示唆され

た 。

学位論文審査の要旨 主査   教

副査   教 副査   教

授   雨宮 授   加藤 授   脇田

王蠧

種 々の障 害に対 する歯 周組織 の修 復カは ,歯周 病等の 歯周 組織の 疾患の治療の際にも重要な意

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義を有しているが,修復機構の詳細にっいてtま,今なお不明な点が少なくない。今回,本論文提 出者は歯周組織の修復,特に歯根膜の再生過程を明らかにする目的で,ラットを用いて歯周組織 に外傷性の障害を惹起し,感染等が加わらない壊死巣を出現させ,その後の修復過程をそれに関 与する細胞を中心として形態学的に検索した。

  実験には体重約130gのWistar系雄ラット177匹を用いた。実験方法として,ラットの右上顎 第1,第2臼歯歯間部に厚さ約1 mmの矯正用ゴムバンドを挿入した。ゴムバンドを24時間挿入し た状態,24時間後に ゴムバンドを除去し,6時間 後,1,2,3,4,5,6,7,14,21,28, 35日後に工―テルの吸入により屠殺し,通法により,パラフィン連続切片を作製した。歯周組織 の修復過程の経時的変化を組織学的に検索すると共に,再生過程に出現する細胞の増殖活性を検 索するために5―bromo―2′―deoxyuridine(BrdU)を用いて免疫組織化学的に検索した。

ま立,修復過程に出 現する細胞の微細構造を明らかにするために電顕的検索を行っている。

  歯間部へのゴムバンドの挿入により,24時間後には圧迫側の歯周組織に壊死巣が出現したが,

ゴムバンドの除去後,壊死部の歯周組織は比較的速やかに修復され,14日目以降には歯根膜線維 の再付着と機能的配列が観察された。この過程で,ゴムバンドの除去後1〜2日後には壊死巣の 周囲組織に分裂像を伴う細胞の増生がみられたが,この時期にはこのような部位に多数のBrdU 陽性細胞が観察されたことから,壊死巣の修復には周囲組織の細胞の増殖と分化が重要な役割 を演じているものと考察している。

  壊死組織の貧食には,多数の複雑な突起をもつ,食細胞が主体を成しており,壊死組織がほと んど認められない幼若な線維性組織中にもしばしば観察されたことから,このような食細胞が壊 死組織の貧食によってのみではなく,より積極的に組織の修復機構に関与している可能性を示唆 している。

  組織の修復には,主として血管の増生に伴い増殖した幼若な間葉系細胞が関与しており,一部 には胎生期の細胞にみられる特徴的な所見も観察された。経時的に間葉系細胞は分化の傾向を強 め,線維芽細胞,骨芽細胞,セメント芽細胞により,組織の再構成が行われ,7日目以降には多 数の方向性をもった膠原小線維束が観察された。このような所見から,線維の方向性を含め,組 織の再構築には分化した細胞が関与しているものと考察している。

  以上の結果から,一旦変性壊死した歯周組織も,その後,感染等が加わらない条件下では,比 較的速やかに修復され,歯根膜線維の再付着と機能的配列が起こることが明らかにされたが,こ のような修復過程において,周囲組織から増殖分化した細胞が重要な役割を演じているものと結 諭している。

(5)

  論文の審査は,審査員全員によル口頭で行われた。論文提出者による要旨の説明後,主査及び 副査より論文の内容及び関連事項にっいての質問がなされたが,いずれの質問にも明快な解答が 得られた。

  障害を受けた歯周組織の修復に関する研究は,歯周病の治療に際して重要な意義をもっている が,従来の研究の多くは組織学的検索を主体としたものであり,その修復機構の詳細にっいては 不明な点が少なくなかったが,本研究では組織学的検索に加えて,BrdUを用いた免疫組織化学 的手法を用いて,歯周組織の修復に関与する細胞の増殖活性を明らかにし,さらにこれらの細胞 の微細構造を観察することにより,歯周組織の修復過程を詳細に検討し,歯根膜の再生過程の一 端を明らかにしたことが高く評価された。

  また本研究において,感染等の加わらない外傷性壊死巣を惹起し,その修復過程を明らかにし たことは,歯周病の発症機構やその修復機転を検討する際にも,重要な示唆を与えるものと評価 された。

  以上のような本研究の成果は,口腔病理学の分野はもとより,関連領域にも寄与するところが 大であり,博士(歯学)の学位授与に価するものと認められた。

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参照

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