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家畜衛生学雑誌41-3表14.ai

K

家畜衛生学雑誌 家畜衛生学雑誌

Vol.41  No.3 2015. Dec.

日 本 家 畜 衛 生 学 会

The  Japanese  Society  of Animal  Hygiene

The Japanese Journal of Animal Hygiene

家畜衛生学雑誌 第

41巻第 3号        二〇一五年十二月 日本家畜衛生学会

家畜衛生フォーラム2015 要旨集

日本家畜衛生学会第83回大会 要旨集

(2)

複写される方へ

 日本家畜衛生学会は有限責任中間法人 学術著作権協会(学著協)に複写に関する権利委託をしていますので,本誌に掲 載された著作物を複写したい方は,学著協より許諾を受けて複写して下さい.但し,社団法人日本複写権センター(学著協 より複写に関する権利を再委託)と包括複写許諾契約を締結されている企業の社員による社内利用目的の複写はその必要は ありません.(※社外頒布用の複写は許諾が必要です.)

  権利委託先: 有限責任中間法人 学術著作権協会

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注意:複写以外の許諾(著作物の転載・翻訳等)は,学著協では扱っていませんので,直接日本家畜衛生学会へご連絡下 さい.[電話:042−367−5935(042−367−5780)]

 また,アメリカ合衆国において本書を複写したい場合は,次の団体に連絡して下さい.

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家 畜 衛 生 学 雑 誌

日本家畜衛生学会 発行

President :  Junsuke SHIRAI( )

Vice President :  Shigeru MIYAZAKI ( )

Editor-in-Chief :  Shigeru MIYAZAKI( )

Editorial Board  :  Norihide KAKIICHI( )

Shinji TAKAI( )

    Hajime NAGAHATA( )

Sadao NOGAMI ( )

Tsuguaki FUKUYASU ( )

Tadao WATANABE( )

"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""

The Japanese Journal of Animal Hygiene

Published by the Japanese Society of Animal Hygiene

理 事 長 :白井淳資 副理事長 :宮﨑 茂 編集委員長 :宮﨑 茂

編集委員 :柿市徳英・高井伸二・永幡 肇

     野上貞雄・福安嗣昭・渡邊忠男

(3)

 会員の皆様におかれましては,ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.

 ここに,「家畜衛生学雑誌」第41巻第 3 号を刊行する運びとなりました.本号は「家畜衛生フォーラム2015」およ び「第83回大会」の講演要旨号です.

 「家畜衛生フォーラム2015」では,「家畜疾病の診断法の新しい潮流」をテーマに, 4 人の先生方に家畜感染症の診 断法に関する最新の成果をご紹介いただくとともに,診断法の精度管理に関する話題もあわせて企画しました.家畜 の生産阻害要因を効率的に排除するためには,迅速で正確な感染症の診断が重要です.この企画が,家畜衛生現場で 活躍されている会員の皆様のお役に立てば幸いです.

 毎回お願いしていることですが,「家畜衛生学雑誌」への積極的なご投稿をよろしくお願い致します.「家畜衛生学 雑誌」は効率の良い審査を行い,出来るだけ迅速な掲載を目指しております.「家畜衛生学雑誌」の更なる充実のた め,学会役員一同,努力や工夫をしていきたいと思いますが,何よりも会員の皆様のご支援が重要ですので,よろし くお願い致します.

日本家畜衛生学会理事長  白井淳資 家畜衛生学雑誌編集委員長 宮﨑 茂

(日本家畜衛生学会副理事長)     

日本家畜衛生学会・学会費納入のお願い

 ご承知のように学会は会員の皆様からの会費をもって運営されています.学会の運営を円滑に運ぶために速やか に,所定の会費の納入をお願い申し上げます.

*学会費は正会員4,000円,学生会員2,000円となっています.

*平成28年度から,正会員会費は5,000円となります.

日本家畜衛生学会 理事長 白井淳資

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裏面の注意事項をお読みください。

これより下部には何も記入しないでください。

(消費税込み)

日本家畜衛生学会

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4 3 1 7 1 3 0 0 2 4 0 3 4 3 1 7 1

日本家畜衛生学会

平成 23 24 25 26 27 年度

       (      )         計       円

(4)

る際は、枠内にはっきりと記入し てください。

 また、本票を汚したり、折り曲 げたりしないでください。

・この払込請求書を郵便局の派遣 員にお預けになるときは、引換え に預り証を必ずお受け取りください。

 この受領証は、郵便振替の払込 みの証拠となるものですから大切

に保存してください。 この払込取扱票の裏面には、何も記載しないでください。

(5)

家畜衛生学雑誌

第41巻 第 3 号 2 0 1 5

目  次

〈家畜衛生フォーラム2015要旨集〉

 座長のことば「家畜疾病の診断法の新しい潮流」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・明石博臣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53〜54  大腸菌の全血清型を遺伝学的に判定するPCR法の開発

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・井口 純 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55〜59  遺伝子組換え抗原を用いたヨーネ病の迅速・高感度診断法の開発

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・永田礼子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61〜64  口腔液を用いたPRRSウイルス抗体および遺伝子の検出

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・會田恒彦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65〜68  次世代シークエンス技術の微生物感染症診断への応用

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黒田 誠 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69〜73  家畜疾病の診断における検査精度の管理(検査の信頼性確保に向けて)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・福田苗美 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75〜77

〈第83回大会講演要旨集〉

 βヒドロキシ酪酸はウシ好中球の化学発光(CL)を抑制しアルギニンはCLを高める

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・山城良介・澄川莉那・三上貴史・樋口豪紀・永幡 肇 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82〜83  牛乳房炎分房へのBifidobacterium breveおよびラクトフェリン分解産物注入に伴う

  乳腺の反応性とサイトカイン産生への影響

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・澤田知佳・丸山久美子・浅井友紀子・國分千尋

権平 智・河合一洋・樋口豪紀・永幡 肇 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84〜85  微酸性電解水が乳房炎由来菌株産生バイオフィルムに及ぼす影響

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・湯浅麗子・河合一洋・篠塚康典・松山公喜・天羽由知 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86〜87  食肉の赤色化における一酸化炭素の特性

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三木 優・和賀正洋・竹田志郎・猪股智夫・押田敏雄・坂田亮一 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88〜89  「エアシャワー」における抗菌剤(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を用いた

  エアロゾル噴霧による抗菌効果試験

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・野崎雄幸・今野幸浩・白井淳資・宮地洋二郎 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90〜91  卵黄抗体製剤の初乳効果の検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・磯日出夫・原田宗範・北山しおり・内山史一・野村茂之 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92〜93

会員へのおしらせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95〜106 家畜衛生学雑誌投稿規程  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107〜108 日本家畜衛生学会会則  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109〜110

家 畜 衛 生 学 雑 誌

(6)

Vol. 41 No. 3  2 0 1 5

 

Contents

〈Abstracts of Animal Hygiene Forum 2015〉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51〜77

〈Abstracts of oral presentations on 83rd academic meeting〉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79〜93

Information for Members ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95〜106 Instruction for Authors ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107〜108 The Regulations of The Japanese Society of Animal Hygiene ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109〜110

Jpn. J. Anim. Hyg.

(7)

フォーラムテーマ

「家畜疾病の診断法の新しい潮流」

要 旨 集

主催:日 本 家 畜 衛 生 学 会

共催:(一財)生物科学安全研究所

後援:農

(8)

と き:平成27年12月18日(金) 13:00〜17:30 ところ:Meiji Seika ファルマ(株) 本社講堂

座長 明石 博臣(東京大学名誉教授)

13:00〜13:05

 挨拶 日本家畜衛生学会理事長 13:05〜13:10

 今年度の企画について

     明石 博臣(東京大学名誉教授)

13:10〜13:55(うち討論 5 分)

 ( 1 ) 大腸菌の全血清型を遺伝学的に判定するPCR法の開発      井口 純(宮崎大学)

13:55〜14:40(うち討論 5 分)

 ( 2 )  遺伝子組換え抗原を用いたヨーネ病の迅速・高感度診断法の開発      永田 礼子(国立研究開発法人農研機構動物衛生研究所)

14:40〜15:25(うち討論 5 分)

 ( 3 ) 口腔液を用いたPRRSウイルス抗体および遺伝子の検出      會田 恒彦(新潟県)

休憩 15:25〜15:40

15:40〜16:25(うち討論 5 分)

 ( 4 ) 次世代シークエンス技術の微生物感染症診断への応用      黒田 誠(国立感染症研究所)

16:25〜17:10(うち討論 5 分)

 ( 5 ) 家畜疾病の診断における検査精度の管理(検査の信頼性確保に向けて)

     福田 苗美((一財)生物科学安全研究所)

17:10〜17:25

 まとめ

(9)

本年 9 月から10月にかけて新聞紙上を賑わせた話題は 多かったが,その中のいくつかは畜産分野に関連したも のであった.一つは大変おめでたいニュースで,大村智 北里大学特別栄誉教授のノーベル賞受賞である.先生の 発見された数多くの物質の一つにエバーメクチンがあ り,これの誘導体であるイベルメクチンは人用抗寄生虫 薬として新聞で詳しく報道された.人用に比べて話題性 は劣ったが,イベルメクチンを主剤とする牛,豚,馬,

犬,猫の駆虫薬は多くの製薬会社が製品化し,現在でも 畜産現場を含め,動物薬として広く使用されている.も う一つは,環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意に 達したという記事である.畜産関連品は,セーフガード 付きとは言え,段階的に関税が低くなり,特に牛肉では 16年で関税が 1 / 4 以下となるとのことである.TPPが 調印,発効した場合,わが国の畜産に及ぼす影響を現時 点で正確に見積もることは難しいが,新聞等によればマ イナスの影響を与えるのでは無いかという意見が大半で ある.しかし,奇しくもこの二つの報道はポジティブと ネガティブという面で相反しながら,畜産の将来に大き な示唆を含んでいるように思われる.

経済効率から考えると,輸入飼料に依存するわが国の 畜産は大きな制約を課せられている.しかし,確かに飼 料面では大きな改善は難しいのかも知れないが,経済的 に損失として計上される家畜衛生対策費についてはコス トカットが可能では無いかと考えられる.家畜衛生対策 費には,家畜を健康な状態に保つために要する費用,例 えば,畜舎を清浄に保ち,感染の機会を軽減する消毒薬 等の薬剤費やワクチン代等が含まれる.さらに,いった ん疾病が発生した場合,治療に要する費用も大きな割合 を占める.ある疾病に対し,効果的かつそれほど高価で は無い治療薬,冒頭のイベルメクチンは一つの例であろ う,が存在するなら,治療に関わる費用を軽減すること が可能となる.従って,日本発の新しい治療薬やワクチ ンを含む予防薬を開発することが出来れば,日本の畜産 に大きく寄与するのみで無く,外貨獲得にも貢献するで あろう.一方,衛生的に清浄な環境で家畜を飼育するこ とが出来れば,疾病に罹患するリスクを軽減し,ひいて は衛生対策に要する費用を抑えることが可能になる.

TPP の締結を機に,衛生対策費を軽減できるような日 本型畜産モデルを樹立できれば,安心・安全な畜産物を

武器に世界と戦うことも夢では無いかも知れない.

しかし,現実問題として家畜衛生対策費は,農家の支 出において大きな割合を占めているのが現状である.

従って,現時点における最良の方策は,疾病対策にかか る費用をなるべく軽減することであろう.そのために は,もちろん新しい治療薬やワクチンの開発は続けると して,可能な限り早く,正確に病気を診断し,病気にか かった動物に対し適切な治療を行うことが重要となる.

つまり,正確で迅速な診断が無ければ,どれほど有効な 治療薬が存在しようと,病気を制御することは困難であ る.同時に,正確な診断を行うためには,病原体の性状 への深い理解が必要とされる.病原体の性状解明は基礎 研究に属し,診断法の開発は応用研究に含まれる.基礎 研究と応用研究がうまくかみ合ってこそ,適切な予防・

治療を行うことができる訳である.さらに,基礎研究と 応用研究を一人の研究者が行うことができるなら問題は 無いが,別々の研究者が行う場合は,情報交換が大変重 要となる.本フォーラムの意義もそこにあると考えられ る.

本フォーラムでは「家畜疾病の診断法の新しい潮流」

と題し,細菌,ウイルスの新しい診断法や次世代型の診 断法ないしは診断精度の管理法など感染症診断について 最新の知見を 5 名の演者の方々に講演していただく予定 である.まず,宮崎大学の井口氏に大腸菌ゲノムの研究 から血清型が多様なO血清群の型別を簡便に行うことの 出来るマルチプレックス PCR の手法について開発から 応用についてお示しいただく.次に,その病状および菌 の性状ゆえに診断の難しいヨーネ病について,動物衛生 研究所の永田礼子氏に現行診断法の問題点をまとめてお 話しいただくと共に,新しい早期,高感度診断法につい ても成果をご紹介いただく.さらに,新潟県畜産課の會 田恒彦氏には豚繁殖・呼吸障害症候群の診断に血清の代 わりとして口腔液が使用可能であり,実際に口腔液を用 いた血清学的,遺伝学的診断の野外応用についての成果 をご説明いただく.これら個別の疾病診断法紹介に続 き,感染症研究所の黒田誠氏には次世代シークエンサー を用いた網羅的遺伝子解析から,個々の微生物をどの様 に同定し,感染症の診断につなげていくか,実例を交え て解説していただく.最後に,生物科学安全研究所の福

家畜衛生フォーラム2015 「家畜疾病の診断法の新しい潮流」

東京大学名誉教授  

明 石 博 臣

(10)

田苗美氏には正確な診断を行うために必要とされる人,

器具,施設等の精度管理についてまとめていただくと共 に,農林水産省の「平成27年度家畜疾病診断精度管理向 上事業」についてもご紹介いただく予定である.

極めて有効な治療薬や治療法が存在したとしても,疾 病を正しく診断できなければ,その有効性が半減するこ とは先に書いた通りである.人や動物が異常を示した

時,その原因を正確に把握することは疾病対策の最初の 一歩である.診断法は,個々の疾病に対しても,診断法 そのものに対しても日々進化しており,また進化せねば ならない.しかし,時として立ち止まり,現状を正しく かつ深く認識することによって,次の一歩を効率よく踏 み出すことが出来ることも明らかである.本日のフォー ラムが診断法向上のための道しるべとなり,日本の畜産 の将来が明るいことを期待して緒言としたい.

(11)

1 .はじめに

病原細菌の分類・同定には,グラム染色による形態観 察をはじめ,代謝能や薬剤感受性の多様性を利用した選 択培地や生化学的試験が工夫され,細菌学としての体系 的な分類基準が構築されてきた.さらに同種内での細分 類には菌体表層に発現する構造物の免疫学的(または構 造的)な多様性に注目した血清型分類法が考案され,疫 学調査や特定集団の識別に用いられてきた.このような 表現型による分類手法は,現在においても細菌検査の現 場では欠かすことが出来ない手法である.一方で分子生 物学やゲノム科学の進展により,遺伝子型や塩基配列型 に基づく分類手法も数多く開発され,再現性や分解能の 面で優れていることから研究や検査で多用されるように なった.今回のフォーラムでは,大腸菌のゲノム研究か ら発展した,大腸菌O血清群の遺伝学的判定法の開発と その実用例について紹介したい.

2 .開発に取りかかるまでの背景 1 )大腸菌のO血清群

大腸菌の血清型は,菌体表層に発現するリポ多糖体の 糖鎖部分(O抗原)を標的とした「O血清群」と,鞭毛 タンパクを標的とした「H 型」の組み合わせ(例えば O157:H7)によって表される(図 1 ).分離株間で血清型 が同一であった場合,それらは同一起源から派生した菌 株群である可能性が高いと考えられる.そのような特徴 を利用して,感染事例の調査や国や地域における特定菌 群の流行調査に血清型別は用いられている.H型の判定

には培養を含めて数日間を要することや,一部の分離株 では鞭毛を発現しておらずH型をあてがうことができな いことから,検査現場ではO血清群の判定が先行して行 われる.大腸菌のO血清群はデンマーク国立血清学研究 所(Statens Serum Institut: SSI)(兼WHO Collaborating Centre for Reference and Research on Escherichia and Klebsiella)により現在のところ O1から O188までが定 められており〔 3 種類の亜型(O18ab/ac,O28ab/ac,

O112ab/ac)と 6 種類の欠番(O31,O47,O67,O72,

O94,O122)が含まれる〕,大腸菌を細分類する上での 国際的な指標となっている.SSIからはすべてのO血清 群に対する抗血清試薬が販売されているが, 1 種類あた り数万円と高価であることから各検査機関で全種類を揃 えることは経済的に難しい.国内メーカーからは病原大 腸菌の主要な50種類に対しての抗血清試薬が販売されて おり,多くの検査現場で用いられている.

2 )腸管出血性大腸菌にみられるO血清群の多様化 腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic Escherichia coli: EHEC)はヒトに対して下痢症や腹痛,出血性大腸 炎などを引き起こし,患者の一部は溶血性尿毒症症候群

(HUS)や脳症を併発して死に至ることもある.EHEC 感染症は感染症法において 3 類に区分され,診断した医 師の全数届出が義務付けられている.病原微生物検出情 報によると,2014年には4,153例のEHEC感染者報告(無 症状保菌者を含む)があり,地方衛生研究所から報告さ れた2,289例についてみると,上位から O157(59%),

O26(22%),O145(4.1%),O103(4.1%),O111(3.4%),

O121(2.9%)となり1 ),これら 6 種類は特に注意が必 要なO血清群として位置付けられている.一方で,その 他の O 血清群に属する EHEC の感染も年間100例程度

(全体の 3 〜 4 %)が報告されている.2007年から2011 年にかけて調べると,上記 6 種類以外で少なくとも80種 類のO血清群に属するEHECが確認されており,その一 部は血便や HUS を呈した重症患者から分離されている ことから,稀なO血清群に対する検査法も必要となる場合 がある.2011年にはドイツを中心としたEHEC O104:H4 による大規模な集団事例が発生し,50名以上の死者を出 した2 ).事例発生直後から旅行者などを介した本菌の我 が国への侵入も警戒されたが,O104は稀な O 血清群で あったことから,国内メーカーが販売する抗血清試薬の

大腸菌の全血清型を遺伝学的に判定するPCR法の開発

宮崎大学農学部畜産草地科学科 

井 口   純

図 1 .血清型別の標的となるO抗原とH抗原の模式図

(12)

中に O104は含まれておらず,遺伝学的な検出法も確立 されていなかった.「EHEC O104が猛威をふるってい る」という情報が世界を駆け巡る中で,国内検査機関の 多くは疑いのある分離株を O104と特定する術が無い状 況であった.結果として本菌の我が国への侵入は確認さ れなかったが,この事例は広域なO血清群に対する検査 体制の必要性を示す一件となった.

3 )O抗原コード領域

O 抗原の合成には 3 種類の機能〔①構成単糖の合成 系,②糖鎖合成(糖転移),③糖鎖輸送と O 抗原の組み 立て〕を担う10から20個程度の遺伝子が必要となる.こ れらの遺伝子は染色体上の特定遺伝子座にクラスター

(O抗原コード領域)を形成して存在する(図 2 ).私が 本研究に取りかかった2011年当時,病原大腸菌と関連が あるものを中心に約90種類のO血清群株についてO抗原 コード領域の塩基配列が報告されていた3 ).さらに,遺 伝子構成や塩基配列の比較などから糖転移や糖鎖輸送に 関わる遺伝子の塩基配列が各血清群にユニークであるこ とも知られており3 ),それらの配列を標的とした遺伝学 的な O 血清群判定法(主に PCR 法)も,約60種類の O 血清群について発表されていた3 ).しかし,稀なO血清 群をカバーした網羅的な遺伝学的判定手法は存在しな かった.

4 )開発にとりかかるまでの私的な背景

2007年から2009年までの 3 年間,私は宮崎大学医学部 微生物学教室で博士研究員をしていた.当時の研究室で は病原細菌を中心に,世界をリードするゲノム研究が進 められていた.そして EHEC O26,O111,O103と腸管 病原性大腸菌 E2348/69株の全ゲノム解析プロジェクト に私も参加することとなった.あるときは病原遺伝子領 域の有無に注目して,またあるときは一遺伝子上の一塩 基の違いに注目して,病原大腸菌がどのように病原性を 獲得し,進化してきたのかを明らかにしていった.その 後,2010年に宮崎大学の若手研究者を育成する制度に よって自身の研究室を立ち上げることになった私は,こ

れまでに培ってきたゲノム解析技術を用いて大腸菌O抗 原の多様性に注目した研究をスタートさせた.特に注目 したのはO抗原多様化の遺伝学的なメカニズムと糖鎖構 造の多様性がもたらす環境適応性であった.多様化のメ カニズムを明らかにする糸口を掴むために,様々なO抗 原コード領域を比較することにした私は,既に塩基配列 データベースで公開されていた情報の収集から始めた.

しかし,上述したように約90種類の配列情報しか公開さ れておらず,その中には不完全なものも多く含まれてい た.そこで国立感染症研究所にも協力していただきなが らSSIが提供する全種類の大腸菌O血清群参考株を収集 し,未発表および不完全なものから順にO抗原コード領 域の塩基配列を自分の研究室で決定することにした.研 究開始から 1 年と数ヶ月が経ち,すべての参考株の収集 が終わり,新たに20種類近くのO抗原コード領域の塩基 配列が決まった頃,ドイツでEHEC O104による事例が 勃発した.我々が既に得ていた全参考株と配列情報は,

O104をはじめとするO血清群を見分ける遺伝学的手法の 開発には欠かせない情報だった.そのような状況の中,

国立感染症研究所の先生からお声がかかり,厚生労働省 による EHEC 研究グループで,「大腸菌 O 血清群の網羅 的な遺伝学的検査法の開発」を担当することとなった.

3 .大腸菌の O 血清群を網羅的に判定できる PCR 法の開発

1 )O抗原コード領域の配列情報の収集と比較解析 まずはO1からO187までの大腸菌O血清群(計184種類)

について,O抗原コード領域の塩基配列情報を収集した.

コード領域のサイズ(共通遺伝子galFとgndで挟まれた 領域)は,最小で4.5 kbp( 4 遺伝子を含む,O155),最 大で19.5 kbp(18遺伝子を含むO108)であった.全コー ド領域について遺伝子予測と機能予測を行ったところ,

O14とO57はO抗原の合成に必要な遺伝子を含んでおら ず,糖鎖解析などからO抗原を発現していないことが確 認された.既に Jensen と Reeves4) は,O14は O 抗原を 発現せず,Rコア糖鎖が抗原となっていることを報告し ている.領域レベルでの相同性比較の結果,35種類のO 血清群は相同または類似したO抗原コード領域を共有す る15グループにまとめられた.O血清群とO抗原コード 領域の関係を整理すると,図 3 で示すように全184種類 の O 血清型のうち, 2 種類(O14と O57)はコード領域 を持たず,35種類は相同な15グループにまとめられ,残 る147種類はユニークな領域を保有することが明らかと なった.我々はこのように区分されO抗原コード領域の 遺伝学的な分類を『O-genotype』として定めることに した5 )

図 2 .O抗原コード領域の模式図

(13)

O 抗原の合成には糖鎖を輸送して連結する必要があ り,そのステップをコードした 2 種類のペア遺伝子

(wzx/wzy または wzm/wzt)が大腸菌では知られてい る.O抗原コード領域には必ずどちらか一方のペア遺伝 子が含まれる.上記 4 遺伝子の配列はO血清群間で多様 であることが知られており,多くの研究者たちがこれら の遺伝子をO血清群判定の遺伝子マーカーとして用いて きた3 ).本研究ではすべての wzx/wzy および wzm/wzt 遺伝子の詳細な比較解析を行った.その結果,グループ

化された O-genotype 内ではそれぞれ97%以上の塩基配 列相同性を保ち,一方で,ほぼすべての O-genotype 間 では最も似ているものであっても70%以下の相同性であ ることが確認された(図 4 ).つまり,O-genotype は wzx/wzy または wzm/wzt の塩基配列に基づいて明確に 識別できることが確認された5 )

2 )各O血清群を判定するPCRプライマーのデザイン O血清群を遺伝学的に判定する方法としては,リアル タイム PCR 法や LAMP 法,マイクロアレイなどのハイ ブリダイゼーション法が候補として挙がったが,結局は 広域な検査現場での実用性と使用者のコスト負担を考慮 して,単純な PCR 法を採用することとなった.あとの 作業はシンプルで,PCR プライマーを wzx/wzy または wzm/wzt のいずれかの遺伝子上にデザインし,PCR 反 応によって対象とするO血清群株のみで増幅することを 確認した.この作業を162種類すべてのO-genotypeにつ いて行った.デザインする上で工夫したのは,プライ マーの Tm 値( 2 本鎖 DNA が解離して 1 本鎖になる温 度)を58℃付近で揃えることと,増幅産物サイズを階段 状にすることだった.後述するように計画当初から最終 的にはマルチプレックス PCR による反応系の作製を目 指しており,PCR 反応条件を単一化するためには上記 の条件をクリアする必要があった.そして,すべての O-genotypeを識別出来る162種類のプライマーセットが 完成した(図 5 ).

3 )効率的な検査系(マルチプレックスPCR)の開発 検出したいO血清群の種類が明らかな場合は,それに 対応する単独プライマーセットを用いて確認すればよい が,O血清群が不明な場合は162本のPCR反応チューブ を用いたフルスクリーニングが必要となる.この操作は コストや手間の面で大きな負担が生じる.そこで,全 162種類のプライマーセットを詰め込んだ20種類のマル チプレックスPCR反応系をデザインした(図 6 ).それ ぞれの反応チューブには増幅産物のサイズが明らかに異 なる 6 から 9 種類のプライマーセットを組み合わせ,こ れにより20反応チューブによるフルスクリーニングが可 図 3 .O血清群とその遺伝子型(O-genotype)の対応

図 4 .WzxとWzyの相同性解析

グループ(Gp)内の遺伝子間は97%以上の塩基配列相同性を示し た.一方で,それ以外の遺伝子間は70%以下の相同性を示した.

図 5 .O-genotypeが判別できる162種類のプライマーセットから得られた PCR産物の泳動像

(14)

能となった(図 7 ).マルチプレックス化した状態でも 特異性が失われないことを確認した.さらにテンプレー トDNAは培養液を単純にボイルしたものでも良好な結 果が得られることを確認した.

我々は,20種類のマルチプレックス PCR から成る O-genotype の フ ル ス ク リ ー ニ ン グ 法 を『E. coli O-genotyping PCR(ECOG-PCR)』と名付けた.本法は 単離コロニーまたは純粋培養液が準備された状態からス タートして 3 時間以内で判定結果が得られ, 1 検体あた りに要する消耗品のコストは1,000円を下回る.全プラ イマーの配列を含め,本法を実施する上で必要なすべて の情報は論文6 )および研究室HPで公開している.さら に,各自でのプライマー調整は大変な作業となるため,

調整済みプライマーミックスの有償提供も行っている

( 詳 し く は 研 究 室 HP を ご 覧 下 さ い.http://www.

cc.miyazaki-u.ac.jp/iguchi).

4 )E. coliO-genotypingPCRの妥当性

ECOG-PCRは再現性やコストの面で優れており,O血 清群判定に準ずる遺伝学的手法としてその実用性が期待 されている.全参考株を用いた評価では O 血清群と O-genotype は100%(182/182株)で対応することを確

認している.一方で,174種類の O 血清群に属する野生 株を用いた評価では,90.8%(522/575株)の対応率であっ た.対応しなかった理由としては,不一致が13株,PCR 産物が得られない場合が35株, 2 種類の PCR 産物が得 られた場合が 5 株であった6 ).これらについてはゲノム 解析などによりその原因を追及中である.さらに,交差 反応によってO血清群の判定が難しい菌株や,いずれの 抗血清にも凝集しない菌株などを集めて ECOG-PCR を 実施したところ,71.1%(81/114株)でO-genotypeが決 定した.このように,強い交差反応を示す菌株や,何ら かの原因によってO抗原の発現が失われた菌株に対して は,ECOG-PCRは特に有効であることが示された.

4 .E. coliO-genotypingPCRを用いた調査・研究 上述したように,大腸菌分離株のO血清群判定は,病 原タイプ別や分離源別でどのような系統集団が流行して いるのかを調査するのに有効である.そして,その情報 を得るための方法として ECOG-PCR の利用が期待され る.ヒトから分離されるEHECについては臨床的な重要 性から詳細なO血清群解析が行われており,国立感染症 研究所ではその一次スクリーニング法として ECOG- PCR が既に用いられている.さらに,抗血清の価格的 な問題などから網羅的なO血清群判定の情報がこれまで 乏しかった(または無かった)タイプの大腸菌について も ECOG-PCR を用いた解析を進めており,これまでに 4,000株以上の結果を得ている.例えば,大阪府立公衆 衛生研究所とは海外渡航者や国内事例から分離された腸 管 毒 素 原 性 大 腸 菌 と 腸 管 凝 集 付 着 性 大 腸 菌 の O-genotype を判定し,海外流行株との比較を行ってい る.動物衛生研究所とはブタの下痢症や浮腫病からの分 離株について(図 8 ),国立病院機構・大阪南医療セン ターとは尿路感染症や敗血症患者からの分離株につい て,大阪市立環境科学研究所とは健康なヒトの糞便から の分離株について(図 9 )の解析を進めており,それぞ れの特徴が徐々に明らかとなってきている.さらに各菌 株の進化系統タイプ,薬剤耐性能,保有する病原性関連 遺伝子などの解析も併せて進めている.これらの結果を 踏まえた将来的な計画として,① O-genotype の照会に より付随する情報が得られるデータベースの構築と,② 目的別(病原タイプ別や宿主別)の簡易検査キットの開 発に取り組む予定である.EHECについては,主要なO 血清群と病原遺伝子を 1 反応で判定できる検査キット

〔EHEC (O antigens) PCR Typing Kit〕をタカラバイオ との共同研究により開発し,既に販売を開始している.

大腸菌は多様な病気を引き起こす原因菌となり,その 宿主域や汚染域は広い.我々の研究グループでは病原大 図 6 .マルチプレックスPCRのプライマーの組み合わせ

図 7 . 各マルチプレックス PCR で得られるすべての PCR産物パターンの泳動像

(15)

腸菌の横断的な調査結果を基に,食の安全や家畜衛生,

国民の健康に寄与できる包括的なネットワークを構築し ていきたいと考えている.

5 .参考文献

1 ) 国立感染症研究所感染症情報センター:腸管出血性 大腸菌感染症 2015年 4 月現在 36:84-86(2015)

2 ) Buchholz U, Bernard H,Werber D, et al. German outbreak of Escherichia coli O104:H4 associated with sprouts, N Engl J Med., 365:1763–70 (2011) 3 ) DebRoy C, Roberts E. Fratamico PM. Detection of

O-antigens in Escherichia coli, Anim Health Res Rev, 12:169–85 (2011)

4 ) Jensen SO. Reeves PR. Deletion of the Escherichia coli O14:K7 O antigen gene cluster, Can J Microbiol, 50:299–302 (2004)

5 ) Iguchi A, Iyoda S, Kikuchi T, Ogura Y, Katsura K, Ohnishi M, Hayashi T, Thomson NR. A complete view of the genetic diversity of the Escherichia coli O-antigen biosynthesis gene cluster. DNA Res, 22:101-7 (2015)

6 ) Iguchi A, Iyoda S, Seto K, Morita-Ishihara T, S c h e u t z F , O h n i s h i M . E s c h e r i c h i a c o l i O-Genotyping PCR: a comprehensive and practical platform for molecular O serogrouping. J Clin Microbiol, 53:2427-32 (2015)

図 8 . 下痢症のブタから分離された大腸菌のO-genotype の分布

(Kusumoto M et al, unpublished data)

図 9 . 健 康 な ヒ ト の 糞 便 か ら 分 離 さ れ た 大 腸 菌 の O-genotypeの分布

(Iguchi A et al, unpublished data)

(16)
(17)

1 .はじめに

ヨーネ病はヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp.

paratuberculosis)の経口感染により起こるウシ,ヤギ,

ヒツジ等の反芻獣の慢性消化器感染症として古くから知 られている感染症であり,長い潜伏期間(半年〜数年)

の後,持続性の下痢,栄養状態の悪化による削痩等を起 こし,やがて死に至る.感染しても多くのものは発症せ ず,無症状に経過するが,無症状の時期においても,糞 便中にはヨーネ菌が排菌されることがある.診断も困難 であるため,現在世界中に蔓延している.特にヨーロッ パ諸国やカナダ,米国等ではヨーネ病の感染率が極めて 高く,50〜70%の農場に感染が広がっているとの報告も ある.これに対して,我が国ではヨーネ病を家畜伝染病 予防法における,いわゆる「撲滅対象疾病」として診 断・淘汰による防疫対策を実施しているため,諸外国に 比べるとヨーネ病感染率は極めて低いレベルに保たれて いる.しかし,現在でも年間数百頭がヨーネ病として摘 発されているため,本病の撲滅に向けて,2013年 4 月か らリアルタイム PCR 検査による糞便の遺伝子検査が法 定検査に加わり,より迅速な診断が可能となった.検査 を繰り返すことでヨーネ病感染牛をできるだけ早期に発 見することが防疫対策上重要であるが,ヨーネ病感染牛 群の氷山現象(図 1 )1 )から,現行の診断法では摘発さ れない多くの感染牛がいることが懸念される.そのた め,早期診断法の開発,診断法の改良,高度化が望まれ

ている.諸外国においても,特異的なヨーネ菌成分の同 定,遺伝子組換体を用いる診断法の開発が行われてきた が,ヨーネ菌全ゲノムが公開されてから10年経過した現 在でも,実用化された診断法はない.ここでは,現行診 断法の問題点と遺伝子組換え抗原を用いた新たな診断法 の開発について述べたい.

2 .現行診断法と問題点 2 − 1 .培養検査

ヨーネ病の最も重要な検査法の一つはヨーネ菌を分離 することだが,菌の発育が遅いためコロニーを確認する ためには寒天培地で 2 〜 5 ヵ月間の培養期間を必要とす る.一方,液体培地では通常 2 〜10週間以内にヨーネ菌 の増殖を確認することが可能である.特に,ヒツジ型 ヨーネ菌のように寒天培地での分離が難しい株は,液体 培養法が必須である.また,寒天培養法と比較して液体 培養法の方が検出感度も高い2 ).病性鑑定指針改訂版に は,液体培地によるヨーネ菌培養法も併記されている.

しかし,牛糞便希釈液を抗菌剤で処理する過程におい て,生菌が1/10程度に減少してしまうという問題点があ る.従って,菌数の少ない検体や菌の活性が低下してい る場合,培養検査で検出されない可能性もある.

2 − 2 .遺伝子検査(リアルタイムPCR検査)

培養検査の結果が出るまでの間,罹患牛が排菌を続け て感染拡大の怖れがあるため,現行の培養法に代わる迅 速な診断法としての遺伝子検査は,ヨーネ病防疫対策上 有用な検査法である.平成25年 4 月からリアルタイム PCR による糞便の遺伝子検査が法定検査に加わり,

ヨーネ病検査体制が大きく変わった.本検査法の特異性 は高く,精度は糞便培養と同程度とされ,糞便1g 中に ヨーネ菌数十個から検出可能である.さらに,本検査の 優れている点は,ヨーネ菌DNA量も測定することがで きるため,罹患牛の排菌が大量か少量なのかを迅速に判 定することも可能である.0.001pg/2.5ml 以上を定量陽 性とし,法律上患畜と診断する3 ).本検査は感度,特異 度共に優れているが,技術的に煩雑なこと,費用がかか ることから,現状では多頭飼育農場において,個体診断 を遺伝子検査のみで行うことが難しい場合もある.

遺伝子組換え抗原を用いたヨーネ病の迅速・高感度診断法の開発

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所  

永 田 礼 子

図 1 .ヨーネ菌感染牛群の氷山現象

(2013 Magombedze G et al.)

(18)

2 − 3 .抗体検査

罹患牛は排菌を繰り返し,やがて抗体が検出されるよ うになる.抗体上昇は感染後期に起こるため,抗体検査 は簡便かつ安価で一度に多数検体を検査する点で優れて いるが,抗体検査のみで診断する方法では排菌牛を見逃 してしまう可能性がある.ヨーネ病抗体検査法はいくつ か開発されてきたが,現在は ELISA が最も利用されて いる.平成25年 4 月からヨーネ病の抗体検査をスクリー ング検査として位置づけ,抗体検査陽性牛の確定検査を リアルタイム PCR 検査で行う現在の検査体系に組み込 まれている.現行の ELISA は,抗原が全菌体の抽出産 物であり,抗酸菌共通抗原物質を含むため,交差抗体に よる非特異反応が問題となる.通常はフレイ菌吸収によ り交差抗体を除くことが可能である.しかし,数年前か ら ELISA 抗体陽性であるが,病変が認められず,菌分 離や遺伝子検査も陰性である事例が確認されている.

2 − 4 .細胞性免疫を指標とする検査

検査法としてはヨーニン皮内反応,インターフェロ ン・ガンマ(IFN-γ)検査があり,感染早期の診断法と して有用である.IFN-γは種々の機能を有するサイトカ インであり,マクロファージ機能を活性化する作用によ り,感染症の防御に重要な役割を担うサイトカインの一

つとされている.IFN-γは,抗原提示細胞から抗原提示 を受けた活性化T細胞から主に産生されることから,病 原体由来の抗原で末梢血単核球等を刺激し,一定時間培 養後の上清中IFN-γ濃度を測定することにより,その抗 原に対する宿主の細胞性免疫の状態を知ることが可能で ある.感染から発症までの経過に個体差はあるが,感染 後 2 〜 6 ヵ月くらいから免疫細胞がヨーネ菌抗原を認識 して,細胞性免疫応答を引き起こす.しかし,ここで使 用されるヨーネ菌抗原は抗酸菌共通抗原を含むため,宿 主の細胞性免疫応答はヨーネ菌特異的でない可能性が残 る.

3 .遺伝子組換え抗原を用いた診断法の開発 3 − 1 .抗酸菌増殖促進物質を利用したヨーネ菌培養法

我々は,非感染牛と比較して,ヨーネ菌感染牛回腸粘膜 固有層の上皮細胞及び粘液産生細胞にウシRegenerating islet-derived 3 gamma(RegIIIγ)遺伝子が高発現して いることを発見した.RegIIIγは腸管に発現する C 型レ クチンであり,ヒトやマウスの腸管レクチン RegIIIγ は,自然免疫に役立つことが知られており,近年では抗 菌活性も報告されている.遺伝子組換えウシRegIIIγを 作製し,ヨーネ菌との相互作用を調べたところ,ヨーネ 菌体表面にウシRegIIIγは強く結合した.ヨーネ菌にウ シ RegIIIγを添加し,37℃ 2 時間感作させた後に培地へ 接種することで,ウシRegIIIγを添加しない従来の培養 法と比較して,菌検出までの日数が短縮され(図 2 ),

生菌数が多く検出された.このウシRegIIIγ前処理法に よる増殖促進作用は,ヨーネ菌だけではなく,抗酸菌に 共通して認められたが,一般細菌に対しては認められな かった(図 3 )4 , 5 ).さらに,ヨーネ病診断法の培養検 査として応用するため,牛糞便希釈液を抗菌剤で前処理 した後,抗生物質とウシRegIIIγで前処理する方法によ り,従来法に比べて早期且つ高感度にヨーネ菌の検出が 図 2 .ウシRegIIIγ前処理培養におけるヨーネ菌検出の

早期化

図 3 .抗酸菌及び一般細菌のウシRegIIIγ前処理培養による菌数の比較

(19)

可能であった.本方法は菌数が少ない検体や従来の培養 法 で は 検 出 で き な か っ た, い わ ゆ る viable but non- culturable(VNC)菌の検出に有用であることが示唆さ れた.

3 − 2 .免疫応答を指標とする早期診断法

我々は,ヨーネ菌遺伝子発現ライブラリーを作製し,

IFN-γ産生を指標としたスクリーニングを行い,ヨーネ 菌感染早期に宿主細胞性免疫応答を誘導する抗原遺伝子 Map41を同定した.Map41抗原はIFN-γ産生誘導すると 同時に,免疫抑制性サイトカインであるインターロイキ ン10(IL-10)を強く産生誘導した6 ).また,ヨーネ菌遺 伝子発現ライブラリーから,抗体価の高いヨーネ病発症 牛血清を用いて,免疫原性の強い抗原遺伝子Map-echA

(enoyl coenzyme A hydratase)を同定した7 ).これら

の遺伝子組換え抗原を作製し,宿主免疫応答を調べた.

実験感染牛の血液を経時的に採取し,血液細胞をヨー ネ菌PPD(purified protein derivative)抗原で刺激する と,早くて感染後 2 ヵ月から IFN-γが産生誘導される が,これに先駆けて血液細胞を Map41抗原で刺激する ことで,感染 2 週後から IL-10産生が誘導された(図 4A).IL-10は活性化T細胞からのIFN-γ産生誘導を抑制 することが知られている.Map41抗原刺激により主にマ クロファージから IL-10産生が誘導され,ヨーネ菌及び 種々の抗酸菌感染牛の血液細胞を Map41抗原で刺激し たときに産生される IL-10量を比較したところ,ヨーネ 菌感染特異的な応答であることが示唆された(図 5 ).

また,現行の ELISA 抗原は菌体破砕物を用いており 抗酸菌共通抗原を多く含むが,単一の遺伝子組換え抗原

図 5 .各種抗酸菌接種子牛血液細胞におけるMap41抗原刺激によるIL-10産生応答の特異性 図 4 .ヨーネ菌実験感染牛における各種検査法の比較

(20)

Map-echA を 用 い る「Map-echA ELISA」 は, 従 来 の ELISA と比較して感度,特異度がともに高く,特に非 特異反応が疑われる血清に対する反応性が低く,排菌量 の少ない罹患牛血清では高い陽性率を示す点が優れてい た(表 1 ).さらにヨーネ菌実験感染牛において,従来 のELISAで陽性となる時期より 2 〜 7 ヵ月早期にMap- echA 抗原に対する抗体上昇が有意に認められた(図 4D).

これら遺伝子組換え抗原を用いる新しい検査法は,遺 伝子組換え抗原の安定した大量生産と精製方法を確立す る必要があり,今後民間メーカー等との共同研究等が必 須である.

4 .おわりに

現行の診断法では全ての感染牛を摘発することは出来 ないため,新しい高感度且つ特異度の高い診断法の開発 に向けて尽力する必要がある.同時に,ヨーネ病対策は 長い時間と労力,また摘発・淘汰による生産者の苦痛を 伴うが,ヨーネ病の特性をよく理解し,防疫対策に取り 組むことが極めて大切である.早期発見のための検査と 摘発・淘汰を繰り返すことによりヨーネ病感染牛群の氷 山(図 1 )を小さくしていくことがヨーネ病撲滅につな がる.

参考文献

1 ) Magombedze G et al. Evalution of the “Iceberg Phenomenon” in Johne’s Disease through Mathematical Modelling. PlosOne (2013) 8:10:e76636 2 ) 川治聡子ら 液体培地を用いたヨーネ菌分離・同定

法の確立 畜産技術(2015)718: 7 -11

3 ) 川治聡子 ヨーネ病清浄化への新戦略 家畜衛生学 雑誌(2013)39:103-106

4 ) 永田礼子ら 抗酸菌の増殖促進剤,これを添加して 培養する抗酸菌の培養方法,及び,これを含有する 抗酸菌の培地用培地 特許第5515104号(2014)

5 ) 永田礼子 第 5 回 農研機構 新技術説明会(2015)

http://shingi.jst.go.jp/abst/2014/naro.affrc/program.

html

6 ) Nagata R et al. A specific induction of interleukin-10 by the Map41 recombinant PPE antigen of Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis. Vet.

Immunol. Immunopathol. (2010) 135:71-78

7 ) Nagata R et al. Use of enoyl coenzyme A hydratase of Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis for the serological diagnosis of Johne’s disease. Vet.

Immunol. Immunopathol. (2013) 155:253-258 表 1 .ROC解析による各ELISAのAUC,感度,特異度

(21)

1 .はじめに

豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は豚の呼吸障害や 流死産を主徴とし,国内の養豚場における発生被害額は 年間約280億円と試算されるなど,その被害が極めて大 きく,重要視されているウイルス性疾病である.養豚場 においては,飼養環境の改善による豚のストレス低減,

オールインオールアウト,母豚の免疫安定化等の複合的 な対策が実施されるが,対策の立案と効果判定には豚の 感染状況を把握する必要があるため,抗体検査や遺伝子 検査が多くの農場で行われている.

口腔液とは唾液の他に口腔粘膜からの浸出液が混ざっ た液体のことで,人や豚で各種病原体やそれらの抗体が 検出されることが知られている.PRRSウイルスについ ても口腔液から抗体および遺伝子が検出され,近年アメ リカでは口腔液を用いたPRRSウイルスの研究や検査が 数多く実施されている.

一方,国内でのPRRSウイルス検査には一般的に血清 が用いられており,これまでに多くの知見が蓄積されて きた.しかし,豚の採血は技術修得が必要なほか,豚の 保定に労力を要し,時に危険も伴う.また,個体数が多 い場合は検査コストも増加することなどから,定期的な 検査の実施が難しくなる場合も考えられる.口腔液の採

材は誰にでも容易に出来るほか,採材時に豚にストレス がかからないこと,複数の個体から採集されるため群単 位でのウイルス検出が可能であることなど検査材料とし て有用な面がある.このため,農場の状況に応じて利用 することで豚群のPRRSウイルス感染状況を把握しやす くなると考えられる.最近では国内でも口腔液を用いた 検査が行われ始めているが,新潟県においても平成23年 より口腔液を用いたPRRSウイルス抗体および遺伝子検 査を行っており,今回はそれらの内容を中心に口腔液関 連の知見について紹介する.

2 .豚の口腔液採材方法

豚の口腔液は無漂白の綿ロープ(直径 9 mm)を用い て採集する.口腔液が浸み込み易いように端をほどいた ロープを複数本束ね,それを,豚が咬みやすいように床 からの高さを調節して豚房の柵等に結紮する.豚の頭数 が多い場合などは,なるべく多くの豚が咬めるように ロープを 2 〜 3 か所に取り付ける.約20分間放置後,ア ルコール綿で拭いた鋏でロープを切り取ってフリーザー バック等に回収し,浸み込んだ口腔液をバック内に絞り 出し,さらに,滅菌チューブ等に移して検査に供するま で−20℃以下で保存する(図 1 , 2 ).得られた口腔液

口腔液を用いたPRRSウイルス抗体および遺伝子の検出

新潟県農林水産部畜産課  

會 田 恒 彦

図 1

(22)

は著しく懸濁しているため,検査では遠心分離した上清 を用いた.

なお,保存温度については,10℃, 4 ℃,−20℃では いずれも10日間以上,qRT-PCR および ELISA キットの 平均S/P比の結果がほとんど変わらないこと,20℃以上 では検出率が低下するため不適当であることが報告され ている(Prickettら2010).

3 .口腔液を用いたPRRSウイルス抗体および遺伝 子の検出方法の検討

口腔液からの PRRS ウイルス抗体が間接蛍光抗体法

(IFAT)及び血清用の市販ELISAキット(PRRSエリー ザキット)で検出可能かどうか検討した.

IFAT用プレートは,MARC-145細胞にPRRSV EDRD- 1 株を接種し,80%アセトンで固定したものを用いた.

口腔液の IgG 濃度は 5 検体の平均値が0.018mg/ml で,

同一群の血清の平均値10.83mg/ml と比較すると極めて 微量であった.このため,口腔液を3,000rpm で 5 分間 遠心分離した上清を希釈せずにプレートに加え,感作時 間を延長して 4 ℃で一晩(17時間)反応させ,通常の 2 倍濃度の20倍希釈の二次抗体と37℃で40分間反応後に蛍 光顕微鏡による観察を行った.その結果,PRRSウイル ス感染細胞に特異的な蛍光が観察された(図 3 ).

ELISA については,口腔液の上清原液をプレートに 加え 4 ℃で一晩(17時間)反応させ,以降は添付マニュ アルに従って実施し,血清と同様にS/P比≥0.4を陽性と 判定した.なお, 陽性及び陰性指示血清は原液を用いた

ものと,添付の検体希釈液で 4 倍に希釈したものの 2 種 類を用いて S/P比を算出した.

PRRSウイルス遺伝子の検出は,Christopherら(1995)

の方法によるRT nested PCR法により行った.

平成23年度,新潟県内の14農場の 2 〜 8 か月齢の豚を 対象に,一豚房内の豚を一群として,50群の口腔液を用 いて上述した方法により抗体および遺伝子検査を行っ た.併せて,同群から 2 〜10頭(平均4.6頭)ずつ計233 頭の血清を採材し,個体別または群でプールして血清で の常法により検査を行い,口腔液の成績と比較した.そ の結果,口腔液は,IFATおよび指示血清を 4 倍希釈し た場合の ELISA 成績がいずれも血清と一致率96%を示 図 2

図 3 .口腔液を用いたIFAT

PRRS ウイルス感染細胞の特異的な蛍光(矢印)

が認められた(×100)

(23)

した(表 1 ).なお,エライザキットについては平成26 年に後継の PRRS X3エリーザキットが販売されたこと から,その後は IFAT および旧キットでの成績と比較 し,Kittawornratら(2012)の方法を一部変更(指示血 清の希釈を30倍ではなく10倍)し検査を実施している.

PRRSウイルス遺伝子の検出は,プール血清で陽性18 群,陰性32群で,口腔液では陽性15群,陰性35群であっ た.両者の判定は45群で(陽性14群,陰性31群)一致 し,一致率は90%であった(表 2 ).その後,平成24年 度に80群について遺伝子検査を実施したところ,プール 血清と口腔液の判定一致は59群(陽性13群,陰性46群)

で,一致率は73.8%に低下した.このため,平成25年度 はChittickら(2011)を参考に口腔液のRT-PCRの酵素 を倍量添加して実施したところ,血清と口腔液の判定は 76群中66群(陽性 9 群,陰性57群)で一致し,一致率は 86.8%となった.個体の感染実験では,血清と口腔液か らPRRSウイルス遺伝子が検出される時期はほぼ一致す ることが報告されている(Kittawornrat ら 2010)こと から,血清をプールする頭数,プライマーの種類,添加 する試薬の種類および濃度等の条件検討を行うことによ り血清と口腔液の遺伝子検査の判定一致率を上げること は可能と思われる.

4 .口腔液を用いたPRRSウイルス検査の対象豚群 について

平成23年度は 2 か月齢以上を検査対象月齢とし,血清 と口腔液で抗体検査の判定が良く一致することを確認し た.その後,離乳後の 1 か月齢以降の豚も対象にしたと ころ,血清と口腔液の ELISA 判定が一致しない群が増 え,一致率が70%台に低下したことからその原因を検討 した.平成25年度の11農場22群の 1 〜 2 か月齢未満につ いてみると,血清の陽性群は 4 群であったが,口腔液の 陽性群は血清陽性の 4 群を含む16群であった.血清と口 腔液で判定が一致した群は22群中10群(陽性 4 群,陰性

6 群)で,判定一致率は45.4%と低い値を示した.

当該月齢群の飼料には豚の血しょう蛋白質が含まれて いる場合があるが,採材した口腔液には口腔内の飼料の 混入が確認された.このため,血しょう蛋白質由来の PRRSウイルス抗体が検出され,血清の成績との不一致 が増加した可能性が考えられたことから,血しょう蛋白 質を含有する豚飼料からPRRSウイルス抗体が検出され るかについて検討を行った.口腔液を採材した農場とは 異なるが, 4 農場から採材した哺乳豚用飼料(代用乳)

4 検体について IFAT を実施したところ,いずれも640 倍以上の抗体価を示し,特異的な蛍光が観察された(図 4 ).一般的に血しょう蛋白質は代用乳と前期の人工乳 に含まれることから,口腔液を用いたPRRSウイルス検 表 1 .IFAT及びELISAによるPRRSウイルス抗体検査成績(平成23年度)

表 2 .PRRSウイルス遺伝子の検出成績(平成23年度)

(24)

査の対象月齢は,それらの飼料が切り替わり一定期間が 経った 2 か月齢以降が適当と思われた.

5 .口腔液を用いた検査の利用状況

血清の検査成績との比較から,豚群のPRRSウイルス 感染を調査する際の材料として口腔液の利用は可能と判 断されたことから,新潟県では一部の農場で口腔液を用 いたPRRSウイルスモニタリング検査とその成績に基づ いた衛生対策指導を実施している.具体例として,感染

陽転ステージの現状確認,洗浄消毒を行ったオールアウ ト後の豚舎に豚を導入した際の感染有無の確認,ワクチ ン接種後の抗体陽転確認などがあげられる.また,

PRRS ウイルス ORF5遺伝子領域のシーケンスにおいて も,口腔液から得られた塩基配列は血清や病性鑑定の肺 由来のものと一致したことから,利用が可能と考えられ た.

今回はPRRSウイルスについての検査成績を紹介した が,豚インフルエンザウイルス,豚サーコウイルス 2 型,豚流行性下痢ウイルス,マイコプラズマ等の病原体 についても口腔液から検出可能であることが報告されて おり,それらを対象にした検査が既に実施されている.

複数の病原体をモニタリングすることで,口腔液の検査 材料としての有用性はより高まるものと思われる.

家畜衛生の現場では,従来から血清,糞便および病性 鑑定の臓器等が検査材料として用いられてきており,そ れらの検査方法や得られたデータの活用方法については 多くの知見が積み重ねられている.口腔液の利用につい てはまだ一般的ではないものの,材料としての特性を理 解し,調査の目的に応じて利用すれば,省力的に有用な データが得られるものと思われる.今後,検査材料の一 つとして利用が進むことを期待したい.

図 4 .哺乳豚用の飼料(代用乳)を用いたIFAT PRRSウイルス感染細胞の特異的な蛍光が認めら

れた(×100)

図 8 . 下痢症のブタから分離された大腸菌のO-genotype の分布
図 4 . デングウイルス配列(1943−2014年:70年間)の分離国・地域と血清型および遺伝型データベース(図では血 清型 2 の遺伝型分布のみ表示).大陸・地域に特化した遺伝型が優位に検出されていることが伺える.
図 1 .アルギニンの添加による好中球化学発光能の変化 アルギニン(0.2〜0.8mM);mean±SE(n= 4 )*:p<0.05,**:p<0.01 図 2 .β-ヒドロキシ酪酸の添加による好中球化学発光能の変化 β-ヒドロキシ酪酸;mean±SE(n= 6 )*:p<0.05) 図 3 .β- ヒドロキシ酪酸およびアルギニン添加による 好中球化学発光能の変化     β-ヒドロキシ酪酸( 0 〜 4 mM);     アルギニン溶液(0.8mM)     mean±SE(n= 6
図 1 .B. breveおよびLFH併用注入に伴う分房乳の体細胞数の推移 0 日:投与前  1 〜21日:投与後.Mean±SE(n= 6 ) 分子/分母:検出分房群/注入分房群 図 2 .B
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参照

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