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家畜衛生学雑誌43-1表14.ai

K

家畜衛生学雑誌 家畜衛生学雑誌

Vol.43  No.1 2017. MAY

日 本 家 畜 衛 生 学 会

The  Japanese  Society  of Animal  Hygiene

The Japanese Journal of Animal Hygiene

家畜衛生学雑誌

  第 43巻第 1号        二〇一七年五月 日本家畜衛生学会

(2)

複写される方へ

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家 畜 衛 生 学 雑 誌

日本家畜衛生学会 発行

President :  Junsuke SHIRAI( )

Vice President :  Shigeru MIYAZAKI( )

Editor-in-Chief :  Shigeru MIYAZAKI( )

Editorial Board  :  Masuo SUEYOSHI( ) Shinji TAKAI ( )

    Makoto NAGAI( )

Sadao NOGAMI( )

Hideto FUKUSHI( )

"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""

The Japanese Journal of Animal Hygiene

Published by the Japanese Society of Animal Hygiene

理 事 長 :白井淳資 副理事長 :宮﨑 茂 編集委員長 :宮﨑 茂

編集委員 :末吉益雄・髙井伸二・長井 誠

     野上貞雄・福士秀人

(3)

会員の皆様におかれましては,ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.

ここに,「家畜衛生学雑誌」第43巻第 1 号を刊行する運びとなりました.本学会は1974年に創立され,本年は創立 43年目となります.本号は学会創立43年目の最初の号となりますが,依然として投稿論文が少なく,編集委員会が苦 慮しております.日本家畜衛生学会では,昨年度より投稿された論文の中から優秀論文賞を選出し,夏の研究会で論 文内容を講演していただくことにしております.2016年度は第42巻 4 号に掲載された北海道十勝家保の「ヨーネ病が 牛飼養農場に与える損失の評価」が選出されました.このように家畜衛生学雑誌は,畜産現場で役に立つことを主体 に掲載している雑誌で,広く家畜衛生に貢献できる原稿を受け付けております.

「家畜衛生学雑誌」は効率の良い審査を行い,出来るだけ迅速な掲載を目指しております.「家畜衛生学雑誌」の更 なる充実のため,学会役員一同,努力や工夫をして行きたいと思いますが,何よりも会員の皆様のご支援が重要です ので,何とぞよろしくお願い致します.

日本家畜衛生学会理事長  白井淳資 家畜衛生学雑誌編集委員長 宮﨑 茂

(日本家畜衛生学会副理事長)     

日本家畜衛生学会・学会費納入のお願い

 ご承知のように,学会は会員の皆様からの会費をもって運営されています.学会の運営を円滑に運ぶために,所定 の会費を納入していただきますようお願いします.

*会費は,正会員5,000円,学生会員2,000円です.

*平成27年度までの未納分をお支払いいただく場合,正会員年会費は4,000円です.

日本家畜衛生学会 理事長 白井淳資

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裏面の注意事項をお読みください。

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(消費税込み)

日本家畜衛生学会

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4 3 1 7 1 3 0 0 2 4 0 3 4 3 1 7 1

日本家畜衛生学会

平成 25 26 27 28 29 年度

       (      )         計       円

(4)

る際は、枠内にはっきりと記入し てください。

 また、本票を汚したり、折り曲 げたりしないでください。

・この払込請求書を郵便局の派遣 員にお預けになるときは、引換え に預り証を必ずお受け取りください。

 この受領証は、郵便振替の払込 みの証拠となるものですから大切

に保存してください。 この払込取扱票の裏面には、何も記載しないでください。

(5)

家畜衛生学雑誌

第43巻 第 1 号 2 0 1 7

 

目  次

〈総 説〉

牛乳房炎用医薬品の臨床試験 ─適切かつ効率的な試験実施の手引き─

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・清水裕仁・能田 健・平山紀夫・小沼 操・

明石博臣・林 智人・河合一洋 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1〜20

〈原 著〉

Gas chromatography-mass spectrometry analysis of propoxur residue level in cattle tissue  during withdrawal period after liquid spraying administration

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Kouko Hamamoto, Ryoko Akama, Kenji Kinoshita, Yasuharu Mizuno ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21〜26

会員へのおしらせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27〜29 家畜衛生学雑誌投稿規程  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30〜31 日本家畜衛生学会会則  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32〜33

家 畜 衛 生 学 雑 誌

(6)

Vol. 43 No. 1 2 0 1 7

 

Contents

〈Review〉

Clinical Trials for Veterinary Medicinal Products on Bovine Mastitis Control  ─ Guidance and Strategy for the Streamlined Study Designing ─

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Yasuhito Shimizu et al. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1〜20

〈Original report〉

Gas chromatography-mass spectrometry analysis of propoxur residue level in cattle tissue  during withdrawal period after liquid spraying administration

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Kouko Hamamoto et al. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21〜26

Information for Members ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27〜29 Instruction for Authors ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30〜31 The Regulations of The Japanese Society of Animal Hygiene ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32〜33

Jpn. J. Anim. Hyg.

(7)

Ⅰ.本手引きの位置付けと目的 1 .目的

牛の乳房炎疾患に対する抗菌剤療法が一定の有効性を 示し,臨床現場においてその有用性が認められているの は周知のとおりである.しかしながら,乳房炎の発生率 は決して減少しているとはいえない1 ).そのような中,

平成18年度のポジティブリスト制度の施行及び使用基準 の改正により,動物用医薬品の食品残留に対する規制が 厳格化された2 - 4 ).さらに,耐性菌発生の問題から抗菌 剤の適正使用,慎重使用が推奨されている5 ).このよう な家畜衛生の現場の変化により,サイトカインをはじめ とするいわゆるバイオ医薬品や実用化が遅れている乳房 炎用ワクチン等,新たな作用機序の医薬品開発が望まれ ており,その基礎研究が研究所,大学,企業等で精力的 に進められている6 , 7 ).これまでのところ,乳房炎疾患

牛乳房炎用医薬品の臨床試験

─適切かつ効率的な試験実施の手引き─

清水裕仁

1 )

・能田 健

2 )

・平山紀夫

3 ,4 )

・小沼 操

3 ,5 )

・明石博臣

6 )

・林 智人

7 )

・河合一洋

8 )*

Clinical Trials for Veterinary Medicinal Products on Bovine Mastitis Control

─ Guidance and Strategy for the Streamlined Study Designing ─

Yasuhito Shimizu

1)

, Ken Noda

2)

, Norio Hirayama

3, 4)

, Misao Onuma

3, 5)

, Hiroomi Akashi

6)

, Tomohito Hayashi

7)

and Kazuhiro Kawai

8) *

1) Chubu Veterinary Clinical Center, Hidaka Branch, NOSAI MINAMI, Niikappu 059-2403, Japan.

2) National Veterinary Assay Laboratory, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Tokyo 185-8511, Japan.

3) The Japanese Society for Animal Vaccine and Biomedical Research, Sagamihara 252-0132, Japan.

4) Visiting Professor, Azabu University, Sagamihara 252-5201, Japan.

5) Professor Emeritus, Hokkaido University, Sapporo 060-0808, Japan.

6) Professor Emeritus, The University of Tokyo, Tokyo 113-8654, Japan.

7) National Institute of Animal Health, NARO, Hokkaido Research Station, Sapporo 062-0045, Japan.

8) School of Veterinary Medicine, Azabu University, Sagamihara 252-5201, Japan

Corresponding Author: Kazuhiro Kawai([email protected]))

(2017. 4. 17 受付/2017. 5. 1 受理)

キーワード: 牛乳房炎,動物用医薬品,臨床試験,手引き

家畜衛生学雑誌 43, 1 〜20(2017)

1 ) みなみ北海道農業共済組合日高支所中部家畜診療センター 〒059-2403 新冠郡新冠町字北星町 8 -71

2 ) 農林水産省動物医薬品検査所

〒185-8511 国分寺市戸倉 1 -15- 1

3 ) 動物用ワクチン・バイオ医薬品研究会 〒252-0132 相模原市緑区橋本台 3 - 7 -11

4 ) 麻布大学客員教授

〒252-5201 相模原市中央区淵野辺 1 -17-71

5 ) 北海道大学名誉教授

〒060-0808 札幌市北区北 8 条西 5 丁目

6 ) 東京大学名誉教授

〒113-8654 文京区本郷 7 - 3 - 1

7 ) 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構動物

衛生研究部門北海道研究拠点 〒062-0045 札幌市豊平区羊ケ丘 4

8 ) 麻布大学獣医学部

〒252-5201 相模原市中央区淵野辺 1 -17-71

連絡著者:河合一洋(kawai@azabu-u.ac.jp)

(8)

領域で使用される抗菌剤など直接的な抗微生物活性・抗 菌スペクトルを示す製剤では,その作用機序を鑑みた臨 床試験の設計の概念が確立されてきたが8 , 9 ),病原体に 直接作用せず,生体の免疫機能の調整等により効果を発 揮するバイオ医薬品やワクチン等に関する臨床試験の設 計概念はいまだ定着していない.そこで,乳房炎疾患領 域を改めて見直し,より多くの臨床試験がスムーズに進 められ,有効性及び安全性が担保された新薬が少しでも 早く畜産現場に届けられることを目的として本手引きを 作成した.

2 .構成

本手引きは,乳房炎薬の臨床的な有効性及び安全性評 価に関する考え方を提供するものであり,臨床試験設計 や開発手順において重要な内容を含んでいる.個別の事 例に関しては製剤毎の特性を加味してデザインされるべ きであるため,サイトカイン及びワクチン等については それぞれガイドラインが必要となる.抗菌活性物質に関 しては抗菌剤研究会のガイドラインがある8 ).本手引き は,それら各論的ガイドラインの背景となる総論的な概 念を提供するため,乳房炎の臨床試験を新たに見直し,

乳房炎に関する臨床試験全体の概念を提供するよう構成 した.また乳房炎疾患における基礎研究,臨床研究及び 新薬開発を推進するため,既存の一般的な臨床試験ガイ ドラインでは触れられていない乳牛の臨床試験の考え 方,臨床試験設計に必要な基礎試験,そして,リスクベ ネフィットバランスの検討という,これまであまり重要 視されてこなかった考え方についても言及した.

3 .期待される効果

臨床試験実施の基本的枠組みは,動物用医薬品承認申 請資料となる GCP に対応する臨床試験の法令10)に定め られており,本手引きはその中で行われる試験のガイド となることが期待される.他方,各研究所,大学,獣医 診療施設及び家畜保健衛生所等に勤務する研究者,獣医 師等による臨床研究においても,この手引きを役立てて いただければ幸いである.このような臨床研究がエビデ ンス性の高いものとなれば,該当する効能の承認申請時 における牛を供した薬理試験の参考資料となる可能性が ある.

本手引きにより,臨床試験設計につながる基礎研究の 在り方(どのような基礎研究が必要か),臨床研究にお いてどのような評価方法を用いるべきか(必要な評価方 法の蓄積),新薬開発をサポートするエビデンスになり 得る事象とはなにかについての大きな方向性が共有され ることを期待する.

本手引きは,臨床試験及び臨床研究を推進するととも に,質の良い獣医学的なエビデンスを効率よく集積し,

牛の乳房炎疾患領域に対する国内治療指針の作成に貢献 することが期待される.

Ⅱ.臨床試験とは

臨床試験とは,臨床現場におけるある製剤の有効性及 び安全性を評価するための試験である(一般に「臨床試 験」と「治験」は同義に用いられる).この試験は統計 学的な手順をとることが主流の考え方であり,獣医学分 野においても軽視することはできない.一方,開発コス トや実施可能性,希少疾病,動物福祉等を勘案すると,

必ずしも統計学的に成立する試験設計ができない場合も ある.したがって,この手引きでは,統計学的原則と試 験の実施可能性の 2 つの観点から,開発者が考慮するべ き事項を整理し,実際の試験設計では個別にそのバラン スをとった試験が実施されることを推奨する.

臨床試験は,「有効性の検証」すなわち予定している

「効能又は効果」の有無を確認するという承認申請資料 として最も重要な試験であり,その試験成績は臨床現場 に直接もたらされる効果に関する重要な情報が多く含ま れている.また,臨床試験実施前には,原薬及び製剤に 関わる情報と動物福祉,畜産経営,取扱者の安全,家畜 衛生及び公衆衛生上のリスクに関しても十分配慮されて いなければならない.したがって,臨床試験開始前に完 了すべき物理的化学的生物学的試験,毒性試験,対象動 物安全性試験,薬効薬理試験,一般薬理試験,対象動物 を供した薬理及び薬物動態試験並びに残留試験が適切に 実施されている必要がある.また,有効性を検証するた めの臨床試験プロトコールは,対象動物を供した安全 性,薬理及び薬物動態試験結果に基づいて,あらかじめ 十分に検討することが大切である.この場合は,統計学 的な原則や実施可能性も十分配慮する.さらに,「効能 又は効果」や「用法及び用量」も試験設計上重要なポイ ントである.予定する「効能又は効果」を評価するため の評価指標を薬理試験等から適切に設定する必要があ る.一方,「用法及び用量」は事前の試験で設定するこ ともあるが,臨床試験の中で異なる用量又は用法を複数 群設定することもある.ただし,多重性の観点からは,

無意味に多数となる群を設定することは推奨されない.

1 .開発の手順

以下に臨床試験開始前の状態である新薬開発の一般的 手順の例を示す.

(9)

れるべきであるのかを示しており,それに準じることで 新薬開発の意義を開発者以外の者にわかりやすく説明す ることが可能となる.

2 .乳牛を供する試験

1 )乳牛の臨床試験に至る開発の相

臨床試験といっても,はじめから効果を検証する臨床 試験が実施されるわけではない.その臨床試験を実施す るための準備として,対象動物である乳牛を供する各種 試験がある.それらの試験は,各目的からいろいろな相 で実施される(図 2 - 1 ).それらは一般的に,対象動 物安全性試験,作用機序検討等のための薬効薬理試験,

薬物動態(PK),薬物動力学(PK/PD)・バイオマーカー 探索等試験,用法用量設定のための薬効薬理試験,代謝 残留試験,そしてそれらを総合的に勘案して実施される 臨床試験となっている(各試験の詳細を後述する).な お,この手引きでの in vivo という用語は,特段他の動 物種の記載がない限り,乳牛を示している.

( 1 ) GLP(Good Laboratory Practice)準拠対象動 物安全性試験

この試験の目的は,開発する薬が健常な乳牛に対し て,どのような忍容性を有するかを目的として実施さ れる.したがって,安全性に関する検査項目を網羅的 に設定し試験が実施される.このとき,泌乳期,乾乳 期などの使用時期は,効能又は効果から考えて適切な 時期にすべきである.また,その試験期間及び剖検す る時期についても,重要な所見が検出できるように設 定すべきであろう.さらに,症例数及び用量に関して は, 動 物 福 祉 や3R(Replacement,Reduction,

Refinement)の観点から,無用な再試験が行われな いよう十分考慮して設計するべきである(詳細は所長

〈Step 1〉. 開発の意義(現場ニーズ,ベネフィット として),対象疾患領域,開発薬の臨床 的位置づけを調べる

〈Step 2〉. 対象動物安全性試験,薬効及び安全性薬 理試験並びに罹患動物を用いた薬理試験 結果から,適切な用法及び用量,試験期 間等を設定する

〈Step 3〉. 期待する薬効を評価するための,有効性 評価項目及び安全性評価項目を十分吟味 する

〈Step 4〉. 統計学的な観点から,適切な試験設計を する

〈Step 5〉. 治験届提出の数カ月以上前に,農林水産 省動物医薬品検査所に承認相談をする

(注)

〈Step 6〉. 同意を得た方法において,臨床試験の治 験届を提出する

 (注) サイトカイン製剤等は有効成分,標榜する 効能・効果によって評価基準が異なると考 えられることから,治験届けを提出する前に 試験設計について相談することが望ましい。

各試験の結果が適切な申請資料として反映されるため には,農林水産省動物医薬品検査所長から発出されてい る関連通知(以下,「所長通知」という)の別添 2 「動 物用医薬品等の承認申請資料のためのガイドライン等」

及び別添 3 「動物用医薬品(体外診断用医薬品を除く)

の承認販売申請書に添付する概要書の作成要領につい て」11)の一部を踏まえる必要がある.とくに,概要書 の作成要領は,申請時に必要な情報がどのように提示さ

図 2 - 1  乳牛の臨床試験に至る開発の相のイメージ

(10)

通知別添 2 の10,10- 1 及び10- 2 項を参照する).

再試験になる可能性としては,最終的な臨床用量や投 与期間を下回る試験が実施された場合等がある.この ときの用量設定根拠は非 GLP の牛を供した薬効薬理 試験結果が参考になる場合もある.

さらに,乳牛において最も重要な安全性の 1 つに健 常胎子の正常な分娩がある.新規作用機序の製剤が,

牛の胎子発生にどのような影響をするかについて,薬 理作用の延長上から懸念される場合には,牛の生殖発 生毒性を実施する必要がある.これは齧歯類やウサギ を用いた毒性試験において,生殖発生毒性試験結果が 陰性であったとしても,牛に対する生物活性が大きく 異なる場合にはとくに重要となる.懸念される毒性と しては,胚早期死滅,催奇形性,異常胎子,流産,早 産等である.また,仮にこのような毒性があったとし ても,胎子発生の時期から投薬を制限することにより 異常産等が起きないことが確認されれば,使用上の制 限の下で,臨床上有益であると判断されることもあ る.

これらの試験結果のもっとも有益な情報は,臨床試 験設計に関わる用法及び用量だけではなく,新薬投与 により起こりうる罹患乳牛に対するリスクの予測に役 立つという点である.当然ながら,健康牛と乳房炎罹 患牛との病態の違いを考慮したリスクを,安全性試験 結果から検討する知識及び技術が必要であることは言 うまでもない.

( 2 ) 薬効薬理試験Ⅰ:作用機序検討・評価項目探索 等

乳牛を供する薬効薬理試験は,対象動物安全性試験 のための用量設定,乳房炎罹患牛における①作用機序 検討,②有効性及び安全性評価項目の探索,③薬力学

(PD)の確認,④バイオマーカーの検討,⑤対象疾患 の検討など,臨床試験実施のための基礎データ収集を 目的としている.

これらの薬効薬理試験は,対象乳房炎を誘発した乳 牛を供した試験を実施し,用量反応関係や用法及び用 量など治療期間の基礎データを作るために,実施され るべき試験である.とくに抗菌剤以外の免疫調整剤 は,直接病原体に抗微生物作用を示すわけではなく,

生体内の免疫系を誘導もしくは抑制することにより,

結果として間接的に乳房炎に作用するという作用機序 に関する根拠をこの相の試験で示さなくてはならな い.このためには,乳房炎モデルの成立条件が重要と なる.

さらに,泌乳期に用いなくてはならない繁殖用薬,

消毒薬等や,乾乳期では,乳熱予防用薬の影響につい

てもこの相・段階で検討しておく必要がある.

乳房炎疾患に対する作用機序検討とは,ある薬がど のように病原微生物に作用し,全身・乳房組織の炎症 が治まっていくかを検討することが第一歩である.

ⅰ) 直接的な抗病原微生物活性を有する製剤におい ては,この説明は in vitro の抗菌スペクトル検 索等に基づいて,in vivo試験においての微生物 病巣における薬剤到達の検出と当該微生物の死 滅等(抗微生物活性)を確認し,炎症所見が消 えることを臨床的に確かめられれば,作用機序 が説明可能になったということになる.

ⅱ) 抗微生物活性ではなく,炎症そのものを対象に し,生体内の受容体,酵素,それ以外の炎症組 織等に作用することで,抗炎症効果を示す製剤 については,in vitro の抗炎症効果に基づい て,in vivo試験においての薬理学的作用点への 薬剤到達の検出及び炎症所見が消失することを 臨床的に確かめられれば,作用機序が説明可能 になったということになる.ただし,免疫抑制 による微生物病巣の活発化なども確認すること が後の相の試験で重要となる.

ⅲ) 特異的な抗病原微生物免疫(獲得免疫)を誘導 するワクチンにおいては,微生物体分解物等 が,液性免疫及び細胞性免疫を誘導することを in vivo試験において確認し,その免疫誘導を臨 床的な炎症抑制,場合によっては抗微生物活性 と結び付けることができれば,作用機序が説明 可能になったということになる.とくに乳房炎 に関しては,乳汁中や血液中の特異的な抗体が 必ずしも臨床所見上の治癒に結びつかない場合 もあるため,治癒に関連する適切な免疫応答 マーカーを見出すことが重要である.

ⅳ) 自然免疫系の内因性物質に関しては,in vitro の薬理作用を十分検討した上で,in vivo試験に おいてその作用を確認し,臨床的な炎症抑制や 場合によっては抗微生物活性と結び付けること ができれば,作用機序が説明可能になったとい うことになる.

ⅴ) 免疫系を誘導するサイトカイン・ケモカインに 関しては,in vitro の薬理作用を十分検討した 上で,in vivo 試験において何らかの免疫誘導 マーカーの変動を確認し,臨床的な炎症抑制及 び,場合によっては抗微生物活性と結び付ける ことができれば,作用機序が説明可能になった ということになる.

ⅵ) その他の作用機序が想定されるものに関して

(11)

的レベルを考慮する.全身投与と乳房炎内投与におい て,Cmax となる時間(Tmax)が血中(血漿中)及 び乳汁中で異なると想定されるため,有効性としては 乳汁中,安全性としては血中(血漿中)などのように どちらの評価にも対応できるようにする必要がある.

( 4 ) 薬 動 力 学 PK/Pharmacodynamics(PD) 試 験 及びバイオマーカー探索試験

用量と薬力学の関係を明らかにし,用量反応関係を 明確にし,用法及び用量の設定試験や検証的臨床試験 実施の基礎データとする.ここでの薬力学とは,作用 機序を明らかにし,生体内免疫系(サイトカイン,ケ モカイン類及び免疫系細胞),抗微生物効果及び臨床 所見等の用量との相関について検討することである.

PK/PD 試験は,①薬物濃度測定による体内へ薬物 移行性,②随伴バイオマーカーの検出による薬物のシ グナルの体内での伝達,③臨床評価項目を評価するこ とで,実際に目的となる薬効を示したかを各々確認で きる.これらは,乳房炎原因微生物に対する直接作用 ではなく,間接的な作用を示す製剤には特に有効であ ることが特徴である.

牛乳房炎において,有効性バイオマーカーの発見が 当疾患領域の治療方法を発展させる糸口となる可能性 がある.これにより,現在の疾患分類(表 3 - 3 )だ けではわからない,乳房炎の病態の違いが,治療の反 応性を左右していることが想定されるからである.ま た,サイトカインなどの免疫誘導をするような物質に 関しては,マーカーの変動が激しいと想定されるた め,複数マーカーの選択も十分考慮される(図 2 -

2 ).

は,in vitro の薬理作用を十分検討した上で,

その薬理作用の特性を踏まえた in vivo 薬理試 験を設計し,試験結果から何らかのバイオマー カーの変動を確認し,臨床的な炎症抑制や場合 によっては抗微生物活性と結び付けることがで きれば,作用機序が説明可能になったというこ とになる.このとき,薬理作用から想定される 毒性と,毒性試験結果から得られた毒性を踏ま えて,安全性に関わる情報をこの時点で探索す ることで,後の相の試験設計において重要とな ることに留意したい.

( 3 )薬物動態試験(PK)

乳牛を供する薬物動態試験においては,薬物の吸 収,全身及び乳汁中への分布,代謝,排泄を検討する ために実施される.とくに,薬物の体内動態を評価す ることにより,適切な用法及び用量を設定するために 重要な基礎データである.この試験結果に基づいて,

PK/PD試験が実施される.

採材部位としては,血液,血漿及び乳汁を基本と し,必要な場合には他の部位も対象となる.サンプリ ングポイントは吸収及び排泄速度が十分評価できるよ うに設定すべきである.また,事前に,もしくはこの 試験で,有効成分の血球/血漿の分配比や血漿タンパ ク質結合率,乳汁タンパク質結合率を評価する必要が ある.

投与されたサイトカイン製剤の薬物動態が,内因性 のサイトカインと異なる場合には,両者を識別できる 測定系を開発しバリデーションする必要がある.一 方,同一の場合には投与前後の違いで確認し,生理学

図 2 - 2  サイトカイン投与後に変動する生体内のバイオマーカー等や治療効果(太線)のイメージ

(12)

この有効性バイオマーカー探索は,臨床獣医師と研 究者が,乳房炎治療戦略や有効性評価に最も貢献でき る研究分野の 1 つである.

( 5 ) 薬効薬理試験Ⅱ:乳房炎罹患乳牛を供する用法 及び用量設定試験

PK/PD 試験を実施して,in vivo 用量反応関係を調 べて,適切なバイオマーカーや臨床評価項目が決まれ ば,臨床試験実施のための用法及び用量並びに試験期 間の検討を目的とした当該試験を実施すべきである.

この相では,臨床試験の結果を大きく左右する評価項 目並びに用法及び用量の設定に関わるため,ある程度 の規模の例数での試験が推奨される.

この試験においても用法及び用量が決定されない場 合には,臨床試験で複数群を設定することも可能であ るが,症例数は 1 群30例以上として,多重性の観点か ら 3 群を超えない程度にするべきである.なお,臨床 試験以外において,用量設定試験を実施する場合に は,探索目的から群数の設定にはとくに制限はない.

試験期間設定に関しては,PK/PD 試験結果等を踏 まえて,PD が持続する期間を十分考慮に入れるべき である.とくに,免疫誘導や抑制をする薬の場合に は,PD に何を設定するかにより,試験期間設定が大 きく異なると考えられる.そのため,試験終了後に乳 牛及び生産者に不利益が生じないように,事後の観察 期間を十分長く設定し,臨床症状,乳や繁殖成績,胎 子,新生子牛等に関する動物の安全性や生産性に関わ る有害事象を見逃さないようにすべきである.

( 6 )GLP代謝残留試験

この試験は,承認予定の用法及び用量における休薬 期間を設定するための試験である.詳細は所長通知別 添 2 の14項を参照する.また,この試験は,乳牛を供 する薬物動態試験とは別の目的で臨床試験及び市販後 の休薬期間の設定根拠のために,GLP試験として実施 しなくてはならない.なお,この試験は公衆衛生上の 食品の安全性確保のために特化した重要な試験である が,効果を検証する目的の臨床試験設定には直接関係 しないため,この手引きでは触れないこととする.

( 7 )GCP(Good Clinical Practice)準拠臨床試験 目的とする効能又は効果を検証するための臨床試験 は,少なくとも 1 か所以上日本国内で実施しなければ ならない.ただし,日本・米国・欧州の GCP 基準に したがって実施した試験であれば,市販後調査に関す る条件付きで,国内試験を代替できる(生物学的製剤 等を除く)。この場合も,乳牛の飼養環境は国や地域 で大きく異なることから,日本の畜産現場及び獣医療 の実態の中で,実際にどのようにその薬が使用される

かを確かめた上で,国内外の飼養実態を詳細に比較分 析して試験設計を行う必要がある.したがって,臨床 試験の設計の元となる各試験については,国内外で異 なる要因がある場合には,( 1 )〜( 6 )までの試験 も国内施設で実施した方が,臨床試験設計が適切とな る可能性が高い.日本の現状とかけ離れた飼養状況の 下で実施された海外試験は評価資料にはならず,諸外 国の状況として参考資料として取り扱われる場合があ る.臨床試験が,( 1 )〜( 6 )までの試験と大きく 異なる点は,管理された実験的環境ではなく,実際の 生産現場及び獣医臨床現場の試験である点である.そ のため,ばらつきや結果に影響する要因が多くなるた め,詳細は,Ⅲ章以降で述べる.

また,臨床試験の大きな特徴は,事前に設定したプ ロトコール以外の解析による後付け解釈は一切認めら れない点である.そのような場合は,当該試験を探索 的試験結果として位置づけ,再度検証的な臨床試験を 実施しなくてはならない.

2 )試験数の最少化と動物福祉

Ⅱの 2 .の 1 )「乳牛の臨床試験に至る開発の相」で示 した各試験のうち,GLP 及び GCP 試験以外は, 1 つの 試験で 2 つ以上の目的により実施することが試験動物の 3Rや動物福祉の観点から重要である.in vivo薬理試験 においても,クロスオーバー試験なども検討し,試験に 供する乳牛の数を減らすことも十分受入れられる.ま た,用量反応関係やバイオマーカー探索は,部分的に安 全性試験の中に組み入れることも可能である.その場合 は,所長通知別添 2 の10,10- 1 及び10- 2 項の要求事 項に適切な試験項目を追加することになる.

3 )公知の文献の利用について

Ⅱの 2 .の 1 )で示したGLP及びGCP試験以外は,乳 牛を供した公表文献にて代替することも可能な場合があ る.例えば,当該申請に係る事項が薬学又は獣医学上公 知である場合がそれに該当する12).また,用量設定の予 備試験の代わりに文献を用いた場合,それらを根拠にし た本試験がそのまま成功すれば十分な根拠となる.

4 )承認相談の利用

新規の効能又は効果,新たな作用機序の臨床試験実施 前には,30日前の届出よりも数カ月以上前に,農林水産 省動物医薬品検査所への承認相談などにおいて開発計画 の概要や臨床試験プロトコールについて審査当局と相談 することが望ましい.

(13)

1 )疾病の定義

( 1 ) 乳房炎とは,牛の乳腺組織の炎症による疾患で ある.炎症は様々な原因,誘因,要因によって 起こるが,乳房炎の原因の多くは乳房内に侵入 し,増殖する病原性微生物である.乳房炎か否 かは,乳房毎の臨床症状の有無,乳汁の体細胞 数スコア又は色調スコア,乳房炎原因微生物の 検出等で総合的に診断する.

( 2 ) 「乳房炎と診断された牛」とは,乳房炎と診断 された乳房を 1 つ以上保有する牛をいう.

2 )乳房炎の病態

( 1 ) 乳房又は乳頭の異常

( 2 ) 乳汁性状の肉眼的な異常,体細胞数の上昇等

( 3 ) 食欲減退,体温上昇などの全身症状 3 )乳房炎の分類

( 1 )泌乳ステージによる分類

泌乳期と乾乳期に分けられるが,泌乳期の乳房炎を

Ⅲ.臨床試験設計の概要

臨床試験成功の鍵は,事前の準備であり,計画の元と なる乳牛を供した薬理試験等の試験成績の質が重要なこ とは既に述べている.ここでは,適切な事前の薬理試験 結果を踏まえて,どのように臨床試験を設計すべきかに ついて述べる.以下に,乳房炎の病態と分類,効能又は 効果の総論的考え方,乳牛の臨床試験のための統計学的 原則,そしてそれらを考慮して設定される評価項目につ いて示す.

1 .乳房炎の病態と分類

対象疾患を明確にし,組入れ基準及び除外基準を的確 に設定することが大切である.そのためには,乳房炎の 病態を踏まえて分類をし,各診断方法を明確にすること で,予定する効能又は効果に適切な症例を集めることが できる.

表 3 - 1  一般的な乳房炎の分類と病態との関係

目的 泌乳ステージ 臨床

型別

病態 伝染性 環境性

全身性又は

乳房局所 経過 A B C D K L M N O P

治療 又は 予防

泌乳期乳房炎 臨床型

全身 甚急性 △ △ △ △ △

急性 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

局所 急性 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

慢性 △ △ △ △ △ △ 〇 〇

潜在性 局所 ── 〇 〇 〇 〇 △ 〇 〇 〇 〇 〇

乾乳期乳房炎 臨床型

全身 甚急性

急性

局所 急性

慢性 △

潜在性 局所 ── △ △ △ △ △ △

〇:よく見られる  △:稀に見られる 伝染性

 グループA:黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus  グループB:無乳連鎖球菌Streptococcus agalactiae  グループC:コリネバクテリウムCorynebacterium bovis  グループD:マイコプラズマMycoplasma spp.

環境性

 グループK:大腸菌群;Escherichia coli,Klebsiella spp.

 グループL:その他のグラム陰性菌,;Pseudomonas aeruginosa  グループM:環境性連鎖球菌

 グループN:黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌

 グループO:真菌性乳房炎,;酵母:Candida spp.,糸状菌:Aspergillus fumigatus  グループP:プロトセカ;Prototheca zopfii

(14)

乾乳期から治療する場合も考えられる.また,泌乳期 は,フェーズフィーディングの考えにより乳量が異な る場合には,層別因子に入れることも考慮すべきかも しれない.

( 2 )臨床症状による分類

発熱等の全身症状があり,かつ乳房・乳頭・乳所見 に症状があれば,全身性の臨床型乳房炎である.全身 症状がないが,乳房・乳頭・乳所見に症状があれば,

局所性の臨床型乳房炎である.全身及び乳房局所の臨 床症状がなく,乳汁も肉眼的に正常であるが,乳汁中 の体細胞数の上昇,乳房炎原因微生物の分離のいずれ か或いは両方を示すものは,潜在性乳房炎となる.

( 3 )症状の経過による分類

症状の経過が0.5〜 1 日で甚急性, 2 〜 3 日で急性,

及び 1 週間以上で慢性の乳房炎に分類される.

( 4 )原因による分類 ア)伝染性乳房炎

・ 黄 色 ブ ド ウ 球 菌;Staphylococcus aureus

(SA)

・無乳性連鎖球菌;Streptococcus agalactiae

・ コリネバクテリウム;Corynebacterium bovis

・ マ イ コ プ ラ ズ マ 性 乳 房 炎;Mycoplasma bovis,M. californicum,M. bovigenitalium,

M. canadenseなど イ)環境性乳房炎

・ 大 腸 菌 群 Coliforms(CO);Escherichia coli,Klebsiella spp. Enterobacter spp.など

・ 環境性連鎖球菌Streptococcus agalactiae以外

(OS);Streptococcus uberis,S. dysagalactiae,

Aerococcus viridians,Enterococcus faecalis など

・ 黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌Coagulase- n e g a t i v e s t a p h y l o c o c c i ( C N S );

Staphylococcus chromogenes,S. hyicus,S.

epidermidis,S. hominis,S. xylosus,S.

simulansなど

・ そ の 他 の グ ラ ム 陰 性 菌;Pseudomonas aeruginosa

・ その他のグラム陽性菌;Bacillus cereusなど ウ)環境性の難治性乳房炎

・ 真菌性乳房炎,;酵母:Candida spp.,糸状 菌:Aspergillus fumigatus

・プロトセカ乳房炎;Prototheca zopfii 4 )乳房炎の診断方法

全身症状,乳房及び乳頭症状,乳所見(乳汁性状,乳 量及び体細胞数),泌乳ステージ・産暦等並びに微生物

学的検査から,乳房炎診断を実施する.

( 1 )全身症状

・ 体 温, 食 欲, 脱 水, 活 力, 下 痢, 起 伏 状 態,

ショック症状

( 2 )分房毎の乳房症状

・熱感,冷感,色調,腫脹,硬結,疼痛,損傷

( 3 )分房毎の乳頭症状

・乳頭口スコア,損傷

( 4 )乳所見

・ 乳汁性状;色調,凝塊(ブツ),カリフォルニア マスタイティステスト(CMT)

・乳量

・体細胞数

( 5 )泌乳ステージ・産暦等

・ フェーズフィーディングに従ったステージ,経産数

( 6 )微生物学的検査

・個別の菌種に関しては上述参照.

5 )乳房炎罹患牛の背景因子

( 1 ) 環境の背景因子;牧場の疾病発生率,乳房炎発 生率,バルク乳データ,牛舎環境,飼養環境

( 2 ) 被験動物の背景因子:品種,年齢,体重,産暦

(初産もしくは経産・産次数),ディピング方 法, 1 日の搾乳回数,年間泌乳量及び繁殖成績

(経産牛),牛体管理,ボディコンディションス コア(BCS),削蹄,搾乳形態,病歴(乳房炎 並びにその他の主要な既往症,併発症)及び治 療歴,ワクチン投与歴など

6 )検査項目

効果を裏付ける基礎試験,用量設定試験及び安全性試 験から適切に設定する.

( 1 ) 上記の診断方法に関する臨床スコア(全身症 状,乳房症状,乳汁性状)

( 2 )( 1 )以外の要因となる項目

 ストレス指標としてのロコモーションスコ ア,農場の乳房炎発生率,乳量,体細胞数,微 生物学的検査(原因菌の分離同定,菌数),免 疫応答等について調査する.それを各々有効性 及び安全性評価項目として設定する.

( 3 ) 分房毎の評価方法

 全身投与もしくは局所投与においても他の分 房に影響する製剤に関しては, 1 頭に 2 分房以 上の乳房炎罹患乳房が存在したときには,分房 毎に評価し,罹患分房の平均を算出すること で,その個体の乳房炎所見とすることが 1 案で ある.このときも群割付で同じくらいの数にな ることが望ましい.

(15)

現在の科学的な根拠においては,乳房に対する何らか の刺激が,乳房における炎症を誘発し乳房炎となる.そ の要因となる刺激の多くは微生物感染である13).微生物 感染の結果,毒素やその菌体成分により生体側が免疫反 応を引き起こし,それが炎症となって現れる14,15).これ に対する治療又は予防のメカニズムは,「抗微生物作用 の結果や種々の免疫誘導などにより,乳房炎の炎症を押 さえる」というものである.抗微生物作用を有する医薬 品の候補としては,抗菌剤のような特異的な抗菌スペク トルを有する薬剤,ワクチンのような特異的な免疫誘導 剤,ラクトフェリンのような自然免疫物質である非特異 的な抗菌活性剤,そしてサイトカインのような非特異的 な免疫誘導剤が考えられる.非特異的な抗炎症剤の単剤 療法は,その製剤自体に抗微生物活性がない場合には,

一時的には炎症を抑えても,すぐに再発し悪化すること が想定され,そのような製剤には,炎症抑制を評価する 時点を慎重に設定する必要がある.したがって,乳房炎 治療の機序が,「抗微生物作用の結果としての乳房炎の 炎症抑制」という原則を踏まえ,「製剤による炎症抑制 効果を評価する」ことが乳房炎臨床試験には最も適切な 方法であると考えられる.

現在,日本国内で承認されているほとんどの乳房炎治 療薬は,特異的な抗菌スペクトルをもつ抗菌剤(抗生物 質及び合成抗菌薬)であり,効能又は効果は「乳房炎の 治療」である.抗菌剤療法は乳房炎治療のスタンダード であり,一定の有効性が確認されている.しかしなが ら,それでも治癒しない乳房炎もあり,抗菌剤療法では 乳量は改善しない場合も多い.したがって,生産現場や 臨床現場では乳房炎治療の最終目的「乳房炎による乳質 及び乳量低下からの回復」を満たすための新薬開発が望 まれている.国内では,ワクチン,ラクトフェリン,サ イトカイン等の検討が行われている16).これらの新薬は 病原微生物に対する直接的な又は強い作用を有するもの ではなく,生体免疫機能の活性化等によって効能を示す 製剤であることから,投与後短時間で劇的な作用発現は 期待されないと考えられる.そのような状況下で,既承 認の抗菌剤を実薬対照として臨床試験を実施すること で,異なる作用機序を有する製剤の可能性を十分検証で きない懸念がある.そこで,効能又は効果の評価方法は 新たなる観点から検討されるべきである.以下に,治療 と予防に大別して考える.

( 1 )牛乳房炎の治療に対する評価方法

前述のとおり,乳房炎の治療目的は「乳房炎による 乳質及び乳量低下からの回復」であることから,それ を達成するまでの途中の効果も補助療法として効能又 は効果を与えることが可能と考えられる.

2 .効能又は効果の考え方

治験時に予定する効能又は効果を設定し,治験計画書 を作成するが,事前の臨床薬理試験等を踏まえて,探索 的に得られた効果を十分検証するための試験デザインに する必要がある.また,その効能を評価するための項目 として,主要評価項目及び副次評価項目を設定する.こ の有効性に関する主要評価項目は,臨床的に意味のある 項目を設定すべきであり,副次評価項目は,主要評価項 目と相関を示す項目,または,作用機序検討試験で見出 されるバイオマーカーなども含まれる.予定する効能又 は効果を設定したが,期待どおりの結果が得られなかっ た場合がよくある.こういった場合に備えて,評価項目 の達成度をクラス分類し,a 以上で効能又は効果 A,b 以上 a 未満では効能又は効果 B,b 未満では効果なしと いう評価基準をあらかじめ臨床試験プロトコールに入れ ることで, 1 つの臨床試験から解釈できる情報を増やす ことも可能である.このとき,効能又は効果は臨床的に 意味のあるものでなくてはならず,プラセボ効果と同等 の効能又は効果は認められない.

また,評価項目には,畜主の満足度なども設定するこ とで,被験薬の効果判定の参考になるかもしれない.

1 )乳房炎疾患と効能又は効果

臨床試験では,予定している効能又は効果を検証する 試験であることは先に述べた.乳房炎疾患における治療 又は予防の最終目的について踏まえた上で,臨床現場で の意義を考慮した効能又は効果を考えなくてはならな い.

酪農業が,「質の高い乳を多く生産すること」は,高 品質乳が評価され,農場の収益が向上することや,ヒト に良質乳を提供することでヒトに対する良質なタンパク 質源を確保するという点において重要な食品需要に対応 している.したがって,酪農業の根本的な目的が,「良 質乳を多く生産すること」であると規定できる.その目 的を達成させるための酪農経営及びそのための獣医療の 目的は,「良質乳を多く生産する乳牛の健康維持」であ る.そこに現れる乳房炎は,乳質の低下及び乳量の低下 による収益の低下と,ときに症状の悪化においては,動 物福祉の観点から乳牛に対する健康危害そのものであ る.そのような状況で求められる獣医療は,乳牛の快適 性及び安全性を担保するための治療や予防行為であり,

その結果期待されるものは,乳質及び乳量の改善であ る.このようなことから,乳房炎の治療目的は「乳房炎 による乳質及び乳量低下からの回復」であり,予防内容 は「乳質及び乳量低下を伴う乳房炎発生の防止」であ る.では乳房炎の発現機序から,どのように治療又は予 防行為について考えるべきであろうか.

(16)

( 2 )牛乳房炎の予防に対する評価方法

予防に関しては,抗体価上昇や細胞性免疫の誘導が 乳房炎の治癒と直接的に結びついているときは,それ らを免疫応答マーカーとしてもよいが,副次評価項目 とすべきであろう.主要評価項目は,対照群に比べた 臨床スコアの改善,乳房炎治療をするまでの期間又は 発症までの期間延長等を評価する方法が妥当かもしれ ない.

( 3 )主要評価項目と副次評価項目

一つの効能又は効果に対しては,一つの主要評価項 目を設定すべきである.臨床試験設計前には,様々な 試験(対象動物安全性試験,探索的な薬理試験,薬物 動態試験等)の結果が得られている.これらの試験結 果から,開発している製剤が乳房炎に対してどのよう な用法及び用量で,どのような効能又は効果があるか について,おおよその見当がついているはずであり,

臨床試験ではその見当が正しいのかを検証するために 実施される.そのため,効果を検証するべき一つの効 能又は効果に対しては,少なくとも一つの評価項目が 規定されるはずである.ただし,治療の及ぼす効果の 範囲を一つ一つの評価項目が包含するような,複数の 評価項目を用いることが望ましいと考えられる場合に は,複数の評価項目で行う妥当性を十分説明する必要 がある.またその場合,検証的試験において確かめる べき有効性が,複数の評価項目のいずれかに対する効

果であるのか,あるいは設定したすべての複数評価項 目に対する効果であるのかを明らかにするべきであ る.

2 )効能又は効果の例示

現在報告されている乳房炎は,おおまかにⅢの 1 .の 3 )「乳房炎の分類」に示されているとおりである(表 3 - 1 ).効能又は効果に関しては,表 3 - 2 を参照.

( 1 )泌乳期乳房炎の治療効果に関して ア) 臨床型乳房炎の治療

イ) 臨床型乳房炎の症状緩和

ウ) 潜在性乳房炎における体細胞数低下若しくは乳 汁性状の向上

エ) 臨床型乳房炎における免疫細胞の活性化による 抗菌剤療法の効果向上

オ) 甚急性乳房炎における免疫反応誘導による蘇生 率の向上

カ) その他

( 2 )乾乳期乳房炎の治療効果に関して ア) 乾乳期乳房炎の治療

イ) 臨床型乳房炎における免疫細胞の活性化による 抗菌剤療法の効果向上

ウ) その他

( 3 )泌乳期乳房炎の予防効果に関して ア) 細菌性乳房炎の抗菌剤治療後の再発防止 イ) その他

表 3 - 2  現在想定される乳房炎領域の効能又は効果の概要

目的 単剤

併用・

臨床型・ 潜在性

ステージ

泌乳期 乾乳期

初期 中期 後期

治療 要素

単剤 臨床型 治療 治療 治療 治療

単剤 臨床型 症状緩和 症状緩和 症状緩和

単剤 潜在性 体細胞数低下もしくは 乳汁性状の向上

体細胞数低下もしくは 乳汁性状の向上

体細胞数低下もしくは 乳汁性状の向上 併用 臨床型 免疫細胞の活性化による

抗菌剤療法の効果向上

免疫細胞の活性化による 抗菌剤療法の効果向上

免疫細胞の活性化による 抗菌剤療法の効果向上

免疫細胞の活性化による 抗菌剤療法の効果向上 併用 臨床型 甚急性乳房炎の治療 甚急性乳房炎の治療 甚急性乳房炎の治療

予防 要素

単剤 臨床型 乾乳期治療による泌乳

期乳房炎の発症予防 予防

単剤 臨床型 予防 予防 予防 予防

単剤 潜在性 予防 予防 予防 予防

併用 臨床型 抗菌剤療法の効果向上 抗菌剤療法の効果向上 抗菌剤療法の効果向上 抗菌剤療法の効果向上

併用 臨床型

黄色ブドウ球菌性乳房 炎の抗菌剤治療後の再 発防止

黄色ブドウ球菌性乳房 炎の抗菌剤治療後の再 発防止

黄色ブドウ球菌性乳房 炎の抗菌剤治療後の再 発防止

(17)

すべきである.また,それ以外の乳房内投与で あっても血流を介して全身に分布する場合に も,同様に考えるべきであろう.

( 2 ) この60頭以上とは,試験群が 2 群のときであ り,少なくとも30頭以上は承認予定の用法及び 用量で投薬される使用経験が必要であると解釈 されている.したがって,用量設定を含む臨床 試験を実施する場合には,この症例数では少な く,適切ではない.また,必要以上に試験群を 設定することも多重性の観点から推奨されな い.

( 3 ) 乳牛に対する既承認の動物用医薬品の効能追加 の開発・申請において,乳房炎の中でも,非常 に症例数が集めにくい乳房炎を対象とする場合 には,実施可能性の観点から,症例数を設定し てもよい.この場合には,その希少性を十分に 説明でき,当該医薬品が有する他の効能におい て日本国内での使用実績が一定数以上存在する 場合に限られる.たとえば,甚急性乳房炎の治 療に関しては,ショック状態の乳牛を組み入れ ることが非常に困難である場合などが想定され る.

2 )偏りを回避するための計画上の技法

臨床試験での偏りを回避するための最も重要な計画上 の技法は,盲検化(遮蔽化)及び無作為化である.

( 1 )盲検化(遮蔽化)

盲検化(遮蔽化)は,臨床試験の実施及び解釈にお ける意識的,無意識的な偏りの発生を制限するために 行われる.産業動物獣医療の臨床試験においては,盲 検化(遮蔽化)すべき対象となるのは,罹患動物,畜 主,投薬獣医師,臨床評価獣医師,その他の治験関係 者及び開発者である.ここで投薬の対象となる罹患動 物を挙げた理由として,治療するためには,捕獲,保 定等が必要になる場合も多く,治験に組み入れられる ことにより通常とは異なる生活パターンになることが あり,その環境変化が動物自身になんらかのストレス や影響を与え,それが試験結果に影響する可能性があ るためである.したがって,プラセボ対照に割付けら れた乳牛に何の処置もしないこと自体が,乳牛に遮蔽 化が担保されていないことになる.実薬対照の場合に は,投薬の処置がなされるが,被験薬と投与経路が異 なる場合には,ダブルダミー法などを採用することも 一案かもしれない.

二重盲検の方法として,被験薬と偽薬(プラセボ 薬)の場合には,両者が同一の剤形かつ投与経路であ る必要がある.また,プラセボ薬は見た目が被験薬と

( 4 )乾乳期乳房炎の予防効果に関して ア) 乾乳期乳房炎の予防

イ) その他

( 5 )未経産牛乳房炎の治療効果に関して ア) 細菌性乳房炎の抗菌剤治療後の再発防止 イ) その他

( 6 )未経産牛乳房炎の予防効果に関して ア) 未経産乳房炎の予防

イ) その他

3 ) 現在の科学的水準から想定されうる乳房炎領域の新 薬

現在の科学的水準から想定できる乳房炎領域の新薬と して,タンパク質製剤としてサイトカイン製剤,抗体医 薬(Fab 断片も含む),酵素,ペプチドワクチン,微生 物体タンパク質を抗原としたワクチン,乳房内フローラ を改善するためのプロバイオティクス,DNA ワクチ ン,アプタマー,核酸アンチセンス,抗炎症性の低分子 化合物等が可能性としては挙げられる.どのような種類 の開発においても,その薬物の特性を踏まえた試験設計 がなされるべきである.

3 .臨床試験のための統計学的原則

現代の臨床試験においては,統計学的な検討を欠くこ とはできない.また,臨床試験の統計学的な原則は,獣 医学の基礎研究で用いられるものとは一線を画した厳格 な考え方が求められるべきである.

臨床試験において最も重要なことは,偏り(バイア ス,Bias)を最小にすることである.ここでの偏りは,

統計学的及び臨床試験運営上の偏りを意味している.

臨床試験における最も一般的な試験デザインとして,

無作為化対照試験と並行群間比較試験,クロスオーバー 比較試験である.症例数の設定,バイアスの最小化の方 法,治験実施施設の考え方,比較試験の方法について紹 介する.

1 )症例数

原則60症例以上とする.ただし,検出力を確保するた めに,事前の用量設定に関わる薬理試験結果等に基づい て,統計学的な観点からサンプルサイズを検討し,症例 数を増やすことも推奨される.以下に注意事項を示す.

( 1 ) 現行の「動物用医薬品の臨床評価に関する一般 指針」17)では乳房炎の治療を目的とする注入剤 等の場合には,40頭60分房(症例)以上となっ ているが,乳房注入剤であっても,免疫系を誘 導又は抑制する製剤等,効果が投与された分房 に限局されず,全身又は他の分房の治療効果に 影響を与える可能性が高い場合は,60頭以上と

(18)

すぐにわからないように,評価に影響しないような添 加剤などを含めることで,懸濁性や色を合わせた製剤 にすることも重要である.また,畜主の利益及び動物 福祉の観点から,不要な添加剤を投薬することが困難 な場合には,シャム(sham;擬似的処置)による方 法が重要である.ただし,このときは,投薬獣医師の みがその割付けを知り,畜主,臨床評価獣医師等には その情報が知り得ないようにすることが必須である.

さらに,対照がプラセボではなく実薬対照の場合に は,その実薬にラベルをし,被験薬と区別がつかない ようにするべきである.ただし,包装容器,剤形や投 与経路が明らかに異なる場合には,投薬獣医師のみが その割付けを知ることで,有効性及び安全性評価に影 響しないような努力が必要である.

( 2 )無作為化

既知及び未知の予後因子の分布が類似した試験グ ループを設定でき,乳房炎罹患牛の割付に,選択的な 偏りを回避できる.

( 3 )割付と因子

割付は,偏り(bias)を最小化するように実施する ことが原則である.その実現のためには,盲検化(遮 蔽化)が重要である.

( 4 )予後因子の種類

有効性評価に影響を与える予後因子を挙げる.大き な影響を与える場合には,層別因子として割り付ける 必要がある.

 ア)環境要因;地域,牧場,診療施設,季節  イ)個体の要因;臨床スコアの重症度,産次数,泌

乳ステージ(フェーズフィーディング),病 歴,繁殖成績,BCS,ロコモーションスコア   注) 環境要因として,地域は国内においても地形

や気候,牧場は農業経営形態,飼養形態や搾 乳形態など被験動物所有者の経営方針が大き く表れる要因であり,診療施設は獣医師グ ループの診療体制や方針が個別に異なる要因 であると考えられる.同一診療施設内の獣医 師間の変動を少なくするように,臨床試験時 には診断,評価方法等その他の手技にばらつ きが生じないように工夫する必要がある.

3 )牛の乳房炎の治験実施施設の考え方

牛の乳房炎の治験実施施設の 1 単位として,①動物飼 育施設(牧場),②診療施設が担当する複数牧場を含む 地域,及び③複数の診療施設を含んだ地域等が考えられ る.

( 1 )治験実施施設の単位(図 3 - 1 )  ア)動物飼育施設(牧場)

     1 つの牧場を 1 単位とする場合は,ある乳房 炎の発生率が高い場合には症例数が確保できる が,そうでなければ実施は難しいかもしれな い.予防を効能とした場合や,潜在性乳房炎の 治療の場合には,十分な症例数を確保できるこ とが想定されるため,同一牧場内での割付けが 可能であるならば,実施意義は十分あるが,一 般化可能性の観点からは,実施施設を通常より 多く設定することが推奨される.

 イ)診療施設が担当する複数牧場を含む地域     乳牛の獣医療は往診によるものがほとんどで

あると想定されるため,「診療施設」という表 現よりは,「診療施設が担当する複数牧場を含 む地域」と設定する方が妥当であろう.牛の乳 房炎の治験実施施設の 1 単位として最もスタン ダードな考え方であり,症例を集めるためにも 効率的と考えられる.牧場毎に効果に違いがあ る可能性が考えられるが,牧場を層別因子とし て割り付けることで,牧場間による差を軽減す ることが可能となる.この治験実施施設を複数 設定することで,一般化可能性が高くなると考 えられる.

  注) 実際には, 1 診療所の 1 獣医師グループを 1 治験実施施設と定義し, 1 群10例以上で実施 する.ここでいう 1 獣医師グループとは,同 一の診療所内で同じ農場に交代で往診してい る複数の獣医師からなるチームであって,か つ当該治験において評価すべき臨床評価項目 その他,診断及び治療において,同じ基準で 実施され,かつ意思疎通可能な集団を示す.

ただし,投薬担当獣医師は,臨床評価獣医師 にその内容を漏らしてはならない.

 ウ)複数の診療施設を含んだ地域

    大規模な臨床試験では想定される単位であ る.イ)のような診療施設が複数あり,この 1 単位は,地域間の差を一般化するときに用いら れるかもしれない.層別因子としては,地域,

診療施設,牧場の順になる.この場合は,診断 方法,投薬方法,評価方法に関して,診療施設 間のばらつきを限りなく小さくすることが重要 である.

( 2 )治験実施施設数と 1 施設あたりの症例数 治験実施施設数は,( 1 )のイ)又はウ)を 1 単位 とした場合には, 2 実施施設以上とし, 1 施設あたり

Table 1.  Recovery and precision of the method for the determination of propoxur in cattle muscle, fat, liver, kidney,  and intestine by GC-MS (n =3)
Table 2.  Residual  propoxur  (PHC)  concentrations  in  the  muscles,  intestines,  fats,  livers  and  kidneys  at  4–day  withdrawal period after liquid spraying administration of 3 L/ cattle as 0.25% PHC solution (n=3).

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