家畜衛生学雑誌43-2表14.ai
K
199p DIC
ISSN 1347−6602
昭和62年6月9日学術刊行物認可家畜衛生学雑誌 家畜衛生学雑誌
Vol.43 No.2 2017. JUL.
日 本 家 畜 衛 生 学 会
The Japanese Society of Animal Hygiene
The Japanese Journal of Animal Hygiene
家畜衛生学雑誌
第 43巻第 2号 二〇一七年七月 日本家畜衛生学会
( 附 ) 日本家畜衛生学会第86回大会 要旨集
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家 畜 衛 生 学 雑 誌
日本家畜衛生学会 発行
President : Junsuke SHIRAI( )
Vice President : Shigeru MIYAZAKI( )
Editor-in-Chief : Shigeru MIYAZAKI( )
Editorial Board : Masuo SUEYOSHI( ) Shinji TAKAI ( )
Makoto NAGAI( )
Sadao NOGAMI( )
Hideto FUKUSHI( )
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家畜衛生学雑誌43-2表23.ai
The Japanese Journal of Animal Hygiene
Published by the Japanese Society of Animal Hygiene
理 事 長 :白井淳資 副理事長 :宮﨑 茂 編集委員長 :宮﨑 茂
編集委員 :末吉益雄・髙井伸二・長井 誠
野上貞雄・福士秀人
「家畜衛生学雑誌」第43巻第 2 号の送付にあたって
会員の皆様におかれましては,ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.ここに,「家畜衛生学雑誌」第43巻 第 2 号を刊行する運びとなりました.
本号では,原著論文 1 編と第86回大会の講演要旨を掲載しています.
第86回大会では,一般演題 5 題のご発表のほか,教育講演及び平成28年度家畜衛生学雑誌論文賞受賞講演もござい ますので,ご参加の皆様の積極的なご討論をお願いいたします.また,「家畜衛生フォーラム2017」の開催を予定し ている12月15日の午前中には第87回大会を開催いたしますので,こちらでの一般講演発表についても積極的なエント リーをお願いいたします.
なお,家畜衛生学雑誌では,原著論文・短報以外にも,総説,数ページ程度のミニレビュー,技術資料等の原稿を 受け付けておりますので,会員の皆様の積極的なご投稿をよろしくお願い致します.ご不明な点は遠慮なく編集委員 会事務局へお問い合わせください.
日本家畜衛生学会理事長 白井淳資 家畜衛生学雑誌編集委員長 宮﨑 茂
(日本家畜衛生学会副理事長)
日本家畜衛生学会・学会費納入のお願い
ご承知のように,学会は会員の皆様からの会費をもって運営されています.学会の運営を円滑に運ぶために,所定 の会費を納入していただきますようお願いします.
*会費は,正会員5,000円,学生会員2,000円です.
*平成27年度までの未納分をお支払いいただく場合,正会員年会費は4,000円です.
日本家畜衛生学会 理事長 白井淳資
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口座記号 口座番号(右詰めで記入) 金額料金 特殊
取扱
千 百 十 万 千 百 十 円
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加入者名通信欄ご依頼人 受付局日附印
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(電話番号 − − ) おところ(郵便番号 − )
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口座記号番号加入者名金額料金特殊取扱ご依頼人
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千 百 十 万 千 百 十 円
おなまえ
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記載事項を訂正した場合は︑その箇所に訂正印を押してください︒切り取らないで郵便局にお出しください︒
各票の※印欄は︑ご依頼人において記載してください︒
裏面の注意事項をお読みください。
これより下部には何も記入しないでください。
(消費税込み)
様
様
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4 3 1 7 1 3 0 0 2 4 0 3 4 3 1 7 1
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平成 25 26 27 28 29 年度
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この受領証は、郵便振替の払込 みの証拠となるものですから大切
に保存してください。 この払込取扱票の裏面には、何も記載しないでください。
家畜衛生学雑誌
第43巻 第 2 号 2 0 1 7
目 次
〈原著〉散気式オゾン水生成装置により生成されたオゾン水の生活環境に存在するカビに対する消毒効果の検討
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二階堂啓吾・高鳥浩介・宮﨑朋美・篠原みなみ・
釜瀬幸広・黒松 久・櫻井美栄・白井淳資 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39〜47
〈第86回大会一般講演要旨〉
北海道の公共牧場における消化管内線虫の浸潤状況
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・北野菜奈・福本真一郎・髙橋俊彦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52〜53 1 公共放牧場の消化管内線虫駆虫効果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・髙橋俊彦・北野菜奈・福本真一郎 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54〜55 家畜暴露量を指標とした抗菌剤使用量評価法の検討
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・松田真理・杉浦勝明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56〜57 天然ケーシングの品質に及ぼすリン酸塩の効果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小林祥子・木下由貴・尹 赫一・竹田志郎・坂田亮一 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58〜59 家畜生体の輸入リスクとリスクコミュニケーションについて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・阿久澤義德・立和名剛司 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60〜61
〈平成28年度家畜衛生学雑誌論文賞受賞講演要旨〉
「ヨーネ病が牛飼養農場に与える損失の評価」の平成28年度家畜衛生学雑誌論文賞受賞にあたって
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・榊原伸一・菅野 宏・立花 智 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
〈第86回大会教育講演要旨〉
狂犬病ワクチン接種の必要性について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・杉浦勝明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65〜67
会員へのおしらせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69〜71 家畜衛生学雑誌投稿規程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72〜73 日本家畜衛生学会会則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74〜75
家 畜 衛 生 学 雑 誌
The Japanese Journal of Animal Hygiene Vol. 43 No. 2 2 0 1 7
Contents
〈Original report〉
Evaluation of fungicidal effects of ozone water produced by the bubbling micro ozone gas mixture ozone water generator
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Keigo Nikaido et al. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39〜47
〈Abstracts of oral presentations on 86th academic meeting〉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49〜61
〈Abstract of JJAH award lecture on 86th academic meeting〉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
〈Abstract of the educational lecture on 86th academic meeting〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65〜67
Information for Members ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69〜71 Instruction for Authors ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72〜73 The Regulations of The Japanese Society of Animal Hygiene ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74〜75
Jpn. J. Anim. Hyg.
39
散気式オゾン水生成装置により生成された
オゾン水の生活環境に存在するカビに対する消毒効果の検討
二階堂啓吾1 )・高鳥浩介2 )・宮﨑朋美1 )・篠原みなみ1 )・釜瀬幸広3 )・ 黒松 久4 )・櫻井美栄5 )・白井淳資1 )*
Evaluation of fungicidal effects of ozone water produced by the bubbling micro ozone gas mixture ozone water generator
Keigo Nikaido 1), Takatori Kosuke 2), Tomomi Miyazaki 1), Minami Shinohara 1), Yukihiro Kamase 3), Hisashi Kuromatsu 4), Miei Sakurai 5) and Junsuke Shirai 1)*
(1) Tokyo University of Agriculture and Technology, Laboratory of Epizootiology, Cooperative Department of Veterinary Medicine, Faculty of Agriculture,
3-5-8, Saiwai-cho, Fichu, Tokyo, 183-8509, Japan
2) NPO Corporation, Consultation Center of Fungi, 13-1, Otsuka-cho, Yukigaya, Oota-ku, Tokyo, 145-0067, Japan
3) IHI Shibaura Machinery Corporation Matsumoto Factory, 1-1-1, Ishishiba, Matsumoto, Nagano, Japan
4) IHI Corporation Technology Management Group, Monozukuri Magement Department, Toyosu IHI Building, 1-1, Toyosu 3-chome, Koto-ku, Tokyo 135-8710, Japan
5) IHI Corporation Chemical Engineering Department, Products Development Center, 1, Shin-Nakahara-Cho, Isogo-ku, Yokohama 235-8501, Japan
*Corresponding author: Junsuke Shirai ([email protected]))
(2016. 12. 28 受付/2017. 5. 2 受理)
Summary
Fungi often contaminate the food and provoke food poisoning to human and animals. When we disinfect the fungi to prevent food and environmental contamination, the chemical disinfectants would induce the hazard effects for environment. Ozone water is composed of oxygen and water, and easily changes into original materials, therefore it doesn’t remain in environment. From these points, we studied the antifungal effect of ozone water as a useful disinfectant. One mL of spore specimen was mixed with 200 mL of ozone water, and reacted after 1 min, 5 min, 15 min, and 30 min, 0.1 mL of samples were collected. The samples were reacted at 10℃, 20℃ and 35℃, ozone concentration in ozone water was adjusted on 0.5 ppm, 1 ppm or 2 ppm for susceptible species of fungi and on 3 ppm, 4 ppm, 5 ppm, 6 ppm, 7 ppm, or 8 ppm for resistant species of fungi. Susceptible species of fungi
原 著
1 )
東京農工大学農学部共同獣医学科獣医伝染病学研究室 〒183−8509 東京都府中市幸町 3 − 5 − 8
2 )
NPO法人 カビ相談センター
〒145−0067 東京都大田区雪谷大塚町13− 1
3 )
株式会社IHI シバウラ機械事業本部開発部環境・制御機 器開発グループ
〒390−8714 長野県松本市石芝 1 − 1 − 1
4 )
株式会社IHI 産業・ロジスティックセクター ものづく り統括部 技術管理グループ
〒135−8710 東京都江東区豊洲三丁目 1 番 1 号豊洲IHIビル
5 )
株式会社IHI 総合開発センター 化学システム開発部 〒235−8501 横浜市磯子区新中原町 1 番地
*
連絡著者:白井淳資(jshirai@cc.tuat.ac.jp)
40
家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)序 文
人の生活や動物の飼育において,食の安全や環境衛生 の管理は重要であり,特にカビによって引き起こされる 食中毒は大きな問題となる.食品に生育するカビそのも のが異物として食中毒を引き起こすばかりでなく,生育 過程においてカビが産生するマイコトキシンは,生体に 重大な傷害を生じさせる危険性が高い.このようなカビ による汚染を防止するためには,食品の生産や流通の場 における徹底した衛生管理が重要である.徹底した衛生 管理のためには,カビの侵入防止や消滅のための徹底し た消毒作業が必須となる.しかし,現在使用されている 一般消毒薬の多くは環境中に残留し,環境を汚染する可 能性が高い.また消毒薬購入によるコスト増加も問題と なる.全ての病原体に対して優れた効果を示す一般消毒 薬はほとんどなく,消毒の対象となる病原体に対して最 も有効な薬剤を選択しなければならず,人および動物に 対する安全性,消毒対象物に及ぼす影響などを考慮する 必要がある.また使用に際しては,発癌性・胚子奇形誘 発性の有無などの人への影響も考慮しなければならな い.これらのことから環境中に残留せず,人や家畜に対 する安全性が高い消毒方法の必要性から,オゾンと水か らなるオゾン水に着目した.
オゾン(O3)は 3 酸素原子から成る三原子分子で不安 定であり,半減期が短く,分解してO2になり8 ),金属に 対する腐食性の低い強力な酸化剤である.またO3とO2の 混合ガスは人へのオゾン治療で使用されており5 ),腹腔 や肺胞のマクロファージなどの食細胞の活性を調整し,
免疫機構に影響を及ぼすことが知られている3 , 4 ).低濃 度のオゾンガスに極度な毒性はないが,高濃度のオゾン ガスは人や動物に対し障害性があり,吸入すると呼吸器 系を傷害される2 ).このようにオゾンは気体の状態では 危険で,使用方法が限られるが,オゾンを水に溶かした 状態であるオゾン水であれば,有効性や安全性が高く安 心して使用できる.オゾン水はオゾンガスよりも半減期 が短く23),分解すると酸素と水になる.オゾン水のオゾ
ン濃度はオゾン水中に溶け込むオゾンガスの濃度で,オ ゾン水として生成された後は,酸素として散気されるの で,生成段階でオゾンガスが機外に多量に漏れることが なければ危険ではない.オゾン水には殺菌・殺ウイル ス・殺カビ効果があり22,25,19),グラム陽性菌,グラム陰 性菌および芽胞などの細菌に対して効果があることが報 告されている9 ,10,16,22).オゾンはベネズエラ馬脳炎ウイ ルス,A型肝炎ウイルス,水疱性口炎ウイルスなど様々 な種類のウイルスに効果を示す1 , 6 , 7 ,13−15,17,24,27).オ ゾンガスは人に対して毒性があり,作業環境の基準は 0.1 ppm とされているが,オゾン水はその安全性や細 菌,ウイルスのいずれにも高い効果があるため,食品産 業で消毒資材として使用されている12).オゾンは微生物 汚染を防ぐだけでなく,残留農薬の除去や生鮮食品の貯 蔵期間を延長させる効果も報告されている11).オゾンは 生物活性炭とともに飲料水の処理に使用されているが,
これは殺菌効果に加えて,臭気を除去する効果があるた めである21).
このようにオゾンはその有効性の高さから,様々な分 野で使用されている.しかし,オゾン水の安全性への不 安や,有効濃度・温度の不明確さなどの課題が残されて いる.オゾン水の生成方法には電解法,循環式法,散気 式法などがあるが,電解法や循環式法で得られたオゾン 水の殺菌・殺ウイルス・殺カビ効果は報告ごとに異なり 安定した成績が得られていないのが現状である.そこ で,本研究では散気式オゾン水生成実験装置を用いてオ ゾン水を生成し,オゾン水のカビに対する詳細で正確な 消毒条件を検討した.
材料および方法
( 1 )散気式オゾン水生成実験装置
散気式オゾン水生成実験装置はオゾン発生装置(オゾ ナイザー),オゾン濃度計,排気乾燥装置,窒素吸収装 置,酸素発生器(PSA:Pressure Swing Adsorption),
および温度調節のための恒温水槽から組み立てられてい る.装置は株式会社IHIシバウラ(長野県松本市石芝 1 showed high susceptibility to ozone water in 0.5 ppm 〜 2 ppm ozone concentration reacted at 10℃, 20℃ and 35℃
on reaction time 1 to 5 min. Resistant species of fungi showed strong resistance against ozone water, however 3 to 8 ppm concentration ozone water killed fungi spore reacted at 10℃, 20℃ and 35℃ on reaction time 15 to 30 min.
Contrastively the case of bacteria and virus, the fungicidal effect of ozone water is influenced strongly by reaction time than temperature.
Key words: Ozone water, Fungi, Reaction time
家畜衛生学雑誌 43,39〜47(2017)
二階堂ら:オゾン水のカビに対する消毒効果
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( 3 )カビ胞子液作製
Tween80生理食塩液1.8 mL 中に,パスツールピペッ トを用いて PDA 培地で培養したカビを懸濁させ,胞子 液を作製した.懸濁は100回以上のピペッティングによ り胞子が十分に分散するよう行った.胞子数は顕微鏡下 での計測で1.5〜4.6×106/mLに調整した.
( 4 )殺カビ効果の測定
滅菌精製水原料として散気式オゾン水生成装置により 生成したオゾン水200 mL 中に,胞子液1 mL を加えス ターラーで撹拌した. 1 分後, 5 分後,15分後,30分後 に試料を0.1 mL ずつ採取し,0.2%ペプトン水で10倍段 階希釈し,PDA 培地に各希釈液を0.2 mL ずつ接種し,
25℃で 7 〜14日間培養した後コロニー数を算定した.コ ロニー数の算定は,コロニーどうしの境界がもっとも明 瞭である培養 2 〜 3 日目に行い,その後の培養で菌種の 確認を行った.温度条件はオゾン水のオゾン濃度との調 整 関 係 か ら, 恒 温 水 槽 で オ ゾ ン 水 の 温 度 を 低 温
(10℃),中温(20℃)および高温(35℃)となるように 設定した. 消毒薬等に対し感受性の高い A.niger,P.
waksmanii,および C.sphaerospermum についてはオゾ
− 1 − 1 )で実験用に使用されていたものを用いた.(図 1 )
( 2 )カビおよび培地
カ ビ は,Aspergillus niger(A.niger),Penicillium w a k s m a n i i ( P . w a k s m a n i i ), C l a d o s p o r i u m sphaerospermum(C.sphaerospermum),Alternaria alternata(A.alternata),Chaetomium globosum
(C.globosum) の 5 種 類 を 使 用 し た.A.niger と P.waksmanii,C.sphaerospermum は環境中に一般的に 存在し,頻繁に食品を汚染するカビの代表として使用し た.Aspergillus 属 は 穀 類 や 飼 料,Penicillium 属 は 果 物,野菜や穀類,Cladosporium 属は飼料や乾燥穀類を 汚染する.また,A.alternata は紫外線など物理的な感 作 に 抵 抗 性 の 高 い カ ビ の 代 表 と し て 使 用 し,
C.globosum は子嚢菌の代表として使用した.Altenaria 属 は 米 や 豆 類,Chaetomium 属 は 乾 草 な ど を 汚 染 す る26). す べ て の カ ビ は ポ テ ト デ キ ス ト ロ ー ス 寒 天
(PDA)培地を用いて25℃で 7 〜14日間培養し,胞子液 を作製した.
図 1 .散気式オゾン水生成実験装置
オゾン水の効果を調べるために実験用に組まれた装置であり,オゾン発生装置(オゾナイザー),オゾン濃度計,排気乾燥装置,窒素吸収 装置,酸素発生器(PSA:Pressure Swing Adsorption),および温度調節のための恒温水槽から組み立てられている.装置は株式会社 IHIシバウラ(長野県松本市石芝 1 − 1 − 1 )で実験用に使用されていた機器により組み立てられた.
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家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)設定したすべてのオゾン水温度において 1 分以上の感作 時間で殺カビ効果を示した.(図 3 )
( 3 )C.sphaerospermumに対する殺カビ効果
オゾン濃度 0.5 ppmでは,すべての温度において 5 分 以下の感作では殺カビ効果を示さなかったが,15分以上 の感作時間で効果を示した.オゾン濃度 1 ppm では,
すべての温度で 1 分の感作では十分な効果を示さなかっ たが, 5 分以上の感作時間で効果を示した.2 ppmでは すべての温度で 1 分以上の感作時間で効果を示した.
(図 4 )
( 4 )A.alternataに対する殺カビ効果
オゾン濃度 3 ppm では,10℃において 5 分以下の感 作では殺カビ効果を示さなかったが,15分以上の感作時 間で効果を示した.20℃において 1 分の感作では効果を 示さなかったが, 5 分以上の感作時間で効果を示した.
35℃において 5 分以下の感作では効果を示さなかった が,15分以上の感作時間で効果を示した.オゾン濃度 4 ppm では,10℃および20℃において 1 分の感作では効 果を示さなかったが, 5 分以上の感作時間で効果を示し た.35℃において 5 分以下の感作では効果を示さなかっ たが,15分以上の感作時間で効果を示した.オゾン濃度 5 ppmでは,10℃において 1 分の感作では効果を示さな ン水のオゾン濃度を最低設定濃度の0.5 ppm,1 ppm,2
ppm に,抵抗性の高い A.alternata,C.globosum につい て は オ ゾ ン 濃 度 を 高 濃 度 で あ る3 ppm,4 ppm,5 ppm,6 ppm,7 ppm,8 ppmに設定し実験を行った.
なお,8 ppmは散気式オゾン水生成装置で調整できる最 高濃度に近い.
結 果
( 1 )A.nigerに対する殺カビ効果
オゾン濃度 0.5 ppmでは,設定したすべての温度にお いて 1 分の感作では殺カビ効果を示さなかったが 5 分以 上の感作時間で効果を示した.オゾン濃度 1 ppm で は,10℃においては 1 分の感作では効果を示さなかった が 5 分以上の感作時間で殺カビ効果を示し,20℃および 35℃では 1 分以上の感作時間で効果を示した.オゾン濃 度2 ppmでは,すべての温度において 1 分以上の感作時 間で殺カビ効果を示した.(図 2 )
( 2 )P.waksmaniiに対する殺カビ効果
オゾン濃度 0.5 ppmでは,10℃および20℃において 1 分の感作では殺カビ効果を示さなかったが, 5 分以上の 感作時間で効果を示し,35℃では 1 分以上の感作時間で 効果を示した.オゾン濃度 1 ppm および2 ppm では,
図 2 .A.nigerに対するオゾン水の殺カビ効果
A.nigerは穀類や飼料をはじめとして環境中に幅広く存在するカビであり,一般的なカビの代表として使用した.コロニーの形態は粉状 平坦な黒色の中〜大集落である.装置により生成したオゾン水200 mLに胞子液を1 mL(胞子数3.5〜4.6×106/mL)加えて感作を行い, 1 分後,5 分後,15分後,30分後に0.1 mLずつ試料を採取した.試料は0.2%ペプトン水で10倍段階希釈し,PDA培地に0.2 mLずつ接種し,
コロニー数を算定した(縦軸).感作温度条件はオゾン水を恒温水槽で10℃,20℃,35℃になるよう設定し,各温度においてオゾン水のオ ゾン濃度を0.5 ppm,1 ppm,2 ppm(横軸)に調整した.
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
10℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
20℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
35℃
1 min 5 min 15 min 30 min log10CFU/mL
log10CFU/mL
log10CFU/mL
二階堂ら:オゾン水のカビに対する消毒効果
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図 4 .C.sphaerospermumに対するオゾン水の殺カビ効果
C.sphaerospermumは飼料や乾燥穀類などを汚染し,環境中に広く存在するカビであり,一般的な環境カビの代表として使用した.コロ ニーの形態はビロード状平坦なオリーブ色の小集落である.装置により生成したオゾン水200 mLに胞子液を1 mL(胞子数2.3〜3.0×106/ mL)加えて感作し, 1 分後, 5 分後,15分後,30分後に0.1 mLずつ試料を採取した.試料は0.2%ペプトン水で10倍段階希釈し,PDA培 地に0.2 mLずつ接種し,コロニー数を算定した(縦軸).感作温度条件はオゾン水を恒温水槽で10℃,20℃,35℃になるように設定し,
各温度においてオゾン水のオゾン濃度を0.5 ppm,1 ppm,2 ppm(横軸)に調整した.
log10CFU/mL
log10CFU/mL
log10CFU/mL
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
10℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
20℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
35℃
1 min 5 min 15 min 30 min
図 3 .P.waksmaniiに対するオゾン水の殺カビ効果
P.waksmaniiは野菜,果物など食品を頻繁に汚染するカビであり,一般的かつ汚染が問題となるカビの代表として使用した.コロニーの 形態はビロード状平坦な淡黄緑色の中集落である.装置により生成したオゾン水200 mLに胞子液を1 mL(胞子数3.5〜4.2×106/mL)加え て感作し, 1 分後, 5 分後,15分後,30分後に0.1 mL ずつ試料を採取した.試料は0.2%ペプトン水で10倍段階希釈し,PDA 培地に0.2 mLずつ接種し,コロニー数を算定した(縦軸).感作温度条件はオゾン水を恒温水槽で10℃,20℃,35℃になるよう設定し,各温度にお いてオゾン水のオゾン濃度を0.5 ppm,1 ppm,2 ppm(横軸)に調整した.
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
10℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
20℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 0.5 ppm 1 ppm 2 ppm オゾン濃度
35℃
1 min 5 min 15 min 30 min log10CFU/mL
log10CFU/mL
log10CFU/mL
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家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)た.(図 6 )
考 察
カビは大気や土壌などの環境中に広く存在しており,
人と動物の生活環境中に容易に侵入する.カビによる食 品や衛生環境の汚染により引き起こされる食中毒や疾病 を防ぐためには,適切な消毒による対策が必要である.
衛生管理に利用される消毒薬の理想的な条件として①細 菌,ウイルス,真菌,寄生虫卵など広範囲の病原体に対 して消毒効果があること,②環境中への残留や汚染がな いこと,③家畜や人に対して毒性がないこと,④金属腐 食性がなく車両や畜舎に対してダメージがないこと,⑤ 発癌性や胚子奇形誘発性のないこと,⑥地下水や大気を 汚染しないことなどが挙げられる18).
オゾン水はグラム陽性菌,グラム陰性菌,芽胞,ウイ ルス,カビなど様々な病原体に対して効果がある消毒資
材で9 ,10,12,16,22,20),オゾン水に対する耐性菌は出現し
ないという利点がある.また半減期が短く,時間ととも に酸素と水に分解するために環境中に残留しないことか ら,環境汚染が問題にならない.オゾンは気相では呼吸 器系を傷害するが,液相では安全性が高いことが明らか になっている12,23).このようなことからオゾン水が塩素 かったが, 5 分以上の感作時間で効果を示した.20℃お
よび35℃において 1 分以上の感作時間で効果を示した.
オゾン濃度 6 ppm では,すべての温度において 1 分以 上の感作時間で効果を示した.オゾン濃度 7 ppm で は,10℃において 1 分の感作では効果を示さなかった が, 5 分以上の感作時間で効果を示した.20℃および 35℃において 1 分以上の感作時間で効果を示した.オゾ ン濃度 8 ppm では,すべての温度において 1 分以上の 感作時間で効果を示した.(図 5 )
( 5 )C.globosumに対する殺カビ効果
オゾン濃度 3 ppm では,すべての温度において30分 以下の感作時間では殺カビ効果を示さなかった.4 ppm では,10℃において30分以下の感作時間では効果を示さ なかった.20℃では15分以下の感作では効果を示さな かったが,30分の感作時間で効果を示した.35℃におい ては, 5 分以下の感作では効果を示さなかったが,15分 以上の感作時間で効果を示した.オゾン濃度 5 〜 8 ppm では,10℃において15分以下の感作では効果を示 さなかったが,30分の感作時間で効果を示した.20℃で は 5 分以下の感作時間では効果を示さなかったが,15分 以上で効果を示した.35℃において 1 分の感作では効果 を示さなかったが, 5 分以上の感作時間で効果を示し
図 5 .A.alternataに対するオゾン水の殺カビ効果
A.alternataは豆類や米を汚染し,紫外線のような物理的刺激に抵抗性の高いカビの代表として使用した.コロニーの形態は綿状の黒褐色 の大型コロニーである.装置により生成したオゾン水200 mLに胞子液を1 mL(胞子数2.3〜3.0×106/mL)加えて感作し,1 分後,5 分後,
15分後,30分後に0.1 mLずつ試料を採取した.試料は0.2%ペプトン水で10倍段階希釈し,PDA培地に0.2 mLずつ接種し,コロニー数を 算定した(縦軸).感作温度条件はオゾン水を恒温水槽で10℃,20℃,35℃になるように設定し,各温度においてオゾン水のオゾン濃度を 3 ppm,4 ppm,5 ppm,6 ppm,7 ppm,8 ppm(横軸)に調整した.
0 1 2 3 4 5 6 7
control 3 ppm 4 ppm 5 ppm 6 ppm 7 ppm 8 ppm オゾン濃度
10℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6
control 3 ppm 4 ppm 5 ppm 6 ppm 7 ppm 8 ppm オゾン濃度
20℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6 7
control 3 ppm 4 ppm 5 ppm 6 ppm 7 ppm 8 ppm オゾン濃度
35℃
1 min 5 min 15 min 30 min log10CFU/mL
log10CFU/mL
log10CFU/mL
二階堂ら:オゾン水のカビに対する消毒効果
45
一方 A.alternata および C.globosum は比較的抵抗性が 高く,A.alternataに対して, 1 分の感作時間で90%以上 の胞子を殺滅する効果を示したのは,20℃および35℃に おいて 5 ppm,10℃においては 6 ppmであった.また 5 分 の 感 作 時 間 で 効 果 を 示 し た の は20℃ に お い て 3 ppm,10℃において 4 ppm で,10℃および35℃にお ける 3 ppm のオゾン水では15分以上の感作時間を要し た.C.globosum に対して, 1 分の感作時間ではすべて の温度条件において 8 ppm でも効果を示さず, 5 分の 感作では35℃において 5 ppm で効果を示した.15分の 感 作 時 間 で は20℃ に お い て5 ppm で,35℃ に お い て 3 ppmで効果を示し,30分の感作時間では10℃において 5 ppm,20℃において 4 ppmで効果を示した.これらの ことから,一部のカビはオゾン水に対して抵抗性を示し,
とくにChaetomium属が属する子嚢菌類は抵抗性が高い ことが示唆された.A.alternata が中程度の抵抗性を示 したのは,紫外線抵抗性があることから,物理的に強固 な構造を持っているためであると考えられる.また,
C.globosum は子実体を持ち,真菌の中でも比較的構造 が複雑な菌種であり,Chaetomium属をはじめとした子 嚢菌の中でも特に抵抗性が高いと考えられる.本実験の 結果では,A.niger,P.waksmanii,C.sphaerospermum,
A.alternata の 4 種に対して20℃の温度条件において最 系・ヨウ素系・アルコール消毒薬など従来の消毒薬に代
わる消毒資材として食品に関連する環境衛生の管理に有 用であると考えその有効性を検討した.
オゾン水 1 分の感作では,P.waksmaniiに対して35℃
においてオゾン水のオゾン濃度0.5ppm で90%以上の胞 子を殺滅する消毒効果を示し,10℃および20℃において はオゾン濃度1ppm で効果を示したが,A.niger に対し ては10℃においてオゾン濃度が 2 ppm 必要であり,
C.sphaerospermumに対してはすべての温度条件におい てオゾン濃度が 2 ppm 必要であった.また 5 分の感作 時間では,A.niger,P.waksmanii に対してはすべての 温 度 条 件 に お い て 0.5 ppm で 効 果 を 示 し た が,
C.sphaerospermumに対してはすべての温度条件におい てオゾン濃度が 1 ppm 必要であった.これらの結果か ら, 1 分程度の感作時間とする使用条件においては,オ ゾン濃度を 2 ppm に設定することでより多くのカビを 消毒することが可能であり, 5 分以上の感作時間が確保 出来る場合にはオゾン水のオゾン濃度を 1 ppm に設定 することで十分な消毒効果を得ることができると考えら れる.オゾン濃度 0.5 ppmに設定する場合は, 5 分の感 作時間では感受性の高いカビに対しては消毒効果を示す が一部のカビは抵抗性を示すため,感作時間を長くする あるいは短時間で効果を向上させる工夫が必要である.
図 6 .C.globosumに対するオゾン水の殺カビ効果
C.globosumは主に環境の汚染が問題となり,飼料なども汚染するカビであり,子嚢菌類の代表として使用した.コロニーの形態は綿状平 坦なオリーブ灰色の中集落である.装置により生成したオゾン水200 mLに胞子液を1 mL(胞子数2.0〜3.4×106/mL)加えて感作し, 1 分 後, 5 分後,15分後,30分後に0.1 mLずつ試料を採取した.試料は0.2%ペプトン水で10倍段階希釈し,PDA培地に0.2 mLずつ接種し,
コロニー数を算定した(縦軸).感作温度条件はオゾン水を恒温水槽で10℃,20℃,35℃になるように設定し,各温度においてオゾン水の オゾン濃度を3 ppm,4 ppm,5 ppm,6 ppm,7 ppm,8 ppm(横軸)に調整した.
0 1 2 3 4 5 6 7 8
control 3 ppm 4 ppm 5 ppm 6 ppm 7 ppm 8 ppm オゾン濃度
10℃ 1 min
5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6 7
control 3 ppm 4 ppm 5 ppm 6 ppm 7 ppm 8 ppm オゾン濃度
20℃
1 min 5 min 15 min 30 min
0 1 2 3 4 5 6 7
control 3 ppm 4 ppm 5 ppm 6 ppm 7 ppm 8 ppm オゾン濃度
35℃
1 min 5 min 15 min 30 min log10CFU/mL
log10CFU/mL
log10CFU/mL
46
家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)本研究は株式会社IHIとの共同研究により行った.
引 用 文 献
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13) Hall, R.M., Sobsey, M.D. (1993) Inactivation of hepatitis A virus and MS2 by ozone and ozone もオゾン水の効果が高く,C.globosum に対して35℃の
温度条件において最も効果が高かった.従ってオゾン水 をカビの消毒に用いる際には,常温での使用により多種 類の菌種を殺滅することが可能であり,温度調節の必要 性が低いことも使用に際しての利点だと考えられる.本 研究室では,細菌,ウイルスに対してはオゾン水のオゾ ン濃度および温度条件によって 1 分の感作時間で十分な 消毒効果が得られることを先の研究で明らかにしたが,
本研究では,カビに対するオゾン水の消毒効果が感作時 間の長さによって大きく感作されることが明らかとな り,濃度を維持しながら感作時間を確保することができ れば,カビに対してより高い消毒効果が期待できる.感 作温度の設定に関して,オゾン水のオゾン濃度調整の関 係から低温として恒温水槽の温度を10℃しか設定できな かったが,オゾン水は低温であるほどオゾン濃度を高く することが出来るので,10℃以下の低温でも同様の結果 を示すと考えられる.また,高温にした場合はオゾン水 中のオゾンガスが蒸発する時間が早くなり効果が減少す ると考えられるが,感作時間が短い場合は問題ないと思 われる.
本研究の結果から,オゾン水を用いてカビを網羅的に 消毒するためには温度条件を室温〜高温に設定し,
5 ppm以上の高濃度で 5 分以上感作させるといった限定 的 な 使 用 条 件 が 必 要 と な る. し か し, A.alternata や C.globosum による食品汚染が問題となることは多くな く,これらの菌種は A.niger や P.waksmanii と比較する と胞子の飛散も起こりにくい.したがって実際の使用に 際しては Aspergillus,Penicillium,Cladosporium のよ うな食品汚染が問題となる一般的なカビに有効な条件に 設定し,オゾン水消毒に抵抗性が高い菌種の存在がわ かっている場合などにおいて,オゾン濃度・感作時間を 適切な条件に設定し使用するか,あるいはその菌種に有 効な消毒薬と併用するのが効率的であると考えられる.
しかし,本研究で使用したカビは数多く存在する菌種の うちのごく一部であり,オゾン水に抵抗性を有しかつ食 品汚染を頻繁に起こすカビが他に存在する可能性があ る.今後の研究においてより幅広い菌種に関する有効性 の検討および消毒効果を向上させる方法の探索が必要で ある.
本研究では適切なオゾン水のオゾン濃度および温度条 件に加え,感作時間に関する詳細な検討を行い,オゾン 水が細菌,ウイルス,芽胞の他にも,カビに対しても有 効であることを示した.オゾン水は残留・環境汚染や生 体への毒性がなく,金属を腐食しないなどの利点があ り,様々な微生物に対して効果を持つことから,従来の 消毒資材よりも優れた消毒資材であると考えられる.
二階堂ら:オゾン水のカビに対する消毒効果
47
Comparative inactivation of six enteroviruses by ozone. Journal of American Water Works Association. 74, 660-664.
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26) 高鳥浩介 監修(2002)「かび検査マニュアルカ ラー図譜」263頁,289頁,301頁,325頁,447-453頁,
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要 旨
カビによる食品汚染の対策として徹底した衛生管理が 重要だが,毒性が低く環境汚染がない消毒資材の探索が 求められている.オゾン水は酸素と水が主原料であり,
環境中の残留がなく,人体に対する安全性も確認されて いる.本研究では食品衛生管理に有用な消毒資材として オゾン水の殺カビ効果を検討した.試料として食品汚染 カビ 5 菌種を用い,オゾン水と胞子液を混合し, 1 分,
5 分,15分,30分後に試料を採取し,10倍段階希釈して,
25℃で 7 〜14日間培養しコロニー数を算定した.温度条 件はオゾン水濃度調整の関係から10℃,20℃,35℃に設 定し,感受性カビに対してオゾン水のオゾン濃度を 0.5 ppm,1 ppm,2 ppm に調整し,抵抗性カビに対し て 3 ppm,4 ppm,5 ppm,6 ppm,7 ppm,8 ppmに 調整した.Aspergillus niger等は高感受性を示し,10℃
において,2 ppm 1 分,0.5 ppm 5 分以上の感作で殺カ ビ効果を示し,20℃および35℃では,1 ppm 1 分,0.5 ppm 5 分 以 上 の 感 作 で 効 果 を 示 し た.Chaetomium globosumは強い抵抗性を示し,10℃において 8 ppm 30 分の感作で効果を示し,20℃では,5 ppm 15分,4 ppm 30分で効果を示した.35℃では,5 ppm 5 分,3 ppm 15分以上の感作で効果を示した.本研究の結果より,オ ゾン水に対して一部のカビは抵抗性を示すが,多くの菌 種は低濃度でも高い感受性を示し,5 ppmのオゾン濃度 1 分の感作で十分な殺カビ効果を示すことが明らかと なった.また,カビに対するオゾン水の消毒効果は感作 時間の影響が大きいことが示された.
キーワード:オゾン水,カビ,感作時間 hydrogen peroxide in buffered water. Water
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14) Helmer, R.D., Finch, G.R. (1993) Use of MS2 coliphages as a surrogate for enteric viruses in surface waters disinfected with ozone. Ozone Science and Engineering. 15, 279-293
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日本家畜衛生学会 第86回大会
講演要旨集
主 催: 日本家畜衛生学会
日本家畜衛生学会第86回大会
と き:平成29年 7 月 8 日(土) 発表会13:30〜17:00 (総 会13:00〜13:30)
ところ:東京農工大学農学部( 2 号館,21番教室)
一般講演 13:30〜14:45
座長 野上貞雄(前日本大学)
13:30〜13:45
1 .北海道の公共牧場における消化管内線虫の浸潤状況 ○北野菜奈・福本真一郎・髙橋俊彦
13:45〜14:00
2 . 1 公共放牧場の消化管内線虫駆虫効果 ○髙橋俊彦・北野菜奈・福本真一郎
座長 牧江弘孝(日本動物用医薬品協会)
14:00〜14:15
3 .家畜暴露量を指標とした抗菌剤使用量評価法の検討 ○松田真理・杉浦勝明
座長 柿市徳英(前日本獣医生命科学大学)
14:15〜14:30
4 .天然ケーシングの品質に及ぼすリン酸塩の効果 ○小林祥子・木下由貴・尹 赫一・竹田志郎・坂田亮一
座長 杉浦勝明(東京大学)
14:30〜14:45
5 .家畜生体の輸入リスクとリスクコミュニケーションについて ○阿久澤義德・立和名剛司
休憩 14:45〜15:00
家畜衛生学雑誌論文賞受賞講演 15:00〜15:30
座長 宮﨑 茂(生物科学安全研究所)
「ヨーネ病が牛飼養農場に与える損失の評価」の平成28年度家畜衛生学雑誌論文 賞受賞にあたって
榊原 伸一 先生 休憩 15:30〜15:40
教育講演 15:40〜16:30 座長 平山紀夫(麻布大学)狂犬病ワクチン接種の必要性について
杉浦 勝明 先生
52
家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)【はじめに】
牧野衛生のプログラムに消化管内線虫の駆虫が組み込まれてから約15年が経過し,現在では様々な駆虫薬が使用さ れている.また,プアオン式の駆虫剤が使用されてから20年が経過するが効果の再検討や,全国各地の公共牧場で疫 学調査の報告はない.そこで本研究では,北海道内の公共牧場における消化管内線虫の浸潤状況・駆虫対策の実態を 明らかにすることを目的とし,調査を実施した.
【材料および方法】
試験期間は2016年 5 から10月に実施し,北海道の公共牧場に委託されたホルスタイン種育成雌牛(14±2.3ヶ月齢)
を330頭供試した(33牧場,各牧場10頭を選出).糞便中の消化管内線虫卵数をウィスコンシン変法にて測定した.ま た,一群管理が可能である放牧頭数200頭を基準とし,消化管内線虫卵数の放牧頭数における規模による比較を行っ た.各牧場において①現在使用している駆虫薬②現在までの駆虫プログラム③現在までの駆虫薬使用期間④夏季放牧 頭数についてアンケート調査を実施した.統計処理はMann-WhitneyのU検定を用いた.
【結果】
33牧場全てにおいて消化管内線虫卵が確認され,北海道全体では94.8%(313/330頭)が陽性であった.地域とし ては道北が最も高値で98.3%,道央が84%で最も低値だった.消化管内線虫卵数は放牧頭数が200頭未満の牧場が200 頭以上の牧場と比較し有意(p<0.001)に低値を示した.
北海道では 6 種類の駆虫薬が使用されており,イベルメクチン製剤が最も多く使用されていた.駆虫回数は 0 〜 5 回で,「入牧時・夏季・退牧時」に 3 回駆虫を行っている牧場が49%で最も多数であった.駆虫歴は 1 〜29年で,
76%の牧場において10年以上継続的に駆虫が行われていた.
【考察およびまとめ】
アンケート調査から北海道内の公共牧場において長期間にわたり継続的に駆虫が行われていることが改めて確認さ れた.長期間継続的に駆虫を行っている牧場が多数を占めているにも関わらず,消化管内線虫卵の陽性率は過去と同 様であった,さらに,放牧頭数が200頭以上の牧場で消化管内線虫卵数が高値を示した.以上のことから地域や規模 を考慮した駆虫プログラムの再考が必要だと考えられた.
北海道の公共牧場における消化管内線虫の浸潤状況
〇北野菜奈1 )・福本真一郎2 )・髙橋俊彦1 )
(1 )酪農学園大学大学院・酪農学・2 )酪農学園大学・獣医学類)
Key word:gastro-intestinal nematodes, public pastures, epidemiological, disinsection, hokkaido
1
「日本家畜衛生学会第86回大会」要旨集
53
0 100 200 300 400
十勝 釧路 根室 渡島 檜山 後志 留萌 石狩 空知 胆振 日高 宗谷 上川 オホーツク
c a
b b
c c c c
c c c
c c
a-b:p<0.05 , a-c:p<0.01
( EPG )
図 1 .地域別の 1 頭当たり消化管内線虫卵数
0 50 100 150 200
小規模牧場 大規模牧場
* :p<0.001
*
*
( EPG )
( 200 頭<) ( 200 頭≧)
図 2 .牧場の規模による 1 頭あたりの消化管内線虫卵数
54
家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)【はじめに】
プアオン式の駆虫薬が使用されてから20年が経過し,現在では多種類の駆虫薬が使用されているが駆虫効果の判定 はされていない.そこで本研究ではプアオン式駆虫薬の効果の再検討を実施した.
【材料および方法】
試験は2016年 5 月から10月に実施した.北海道後志管内の M 公共牧場に預託されたホルスタイン種雌牛78頭か ら, 5 月, 6 月, 7 月, 8 月,10月の 5 回,検査を継続した試験区11頭(11.9±2.5ヶ月齢),対照区 9 頭(12.6±2.9ヶ 月齢)の合計20頭を供用し糞便検査を実施した.また,増体量はその内,入牧時標準体重(日本ホルスタイン登録協 会)を満たしている14頭(試験区 8 頭,対照区 6 頭)を供試した.繁殖成績は繁殖に供用した 9 頭(試験区 4 頭,対 照区 5 頭)を90日NR法にて検討した.統計処理は,虫卵数にMann-WhitneyのU検定,その他はt検定を用いた.
【結果】
消化管内線虫卵数(EPG)は,試験区 5 月:0.3±0.6, 6 月:0.2±0.7, 7 月:125.5±164.0, 8 月1.2±1.3,10月:
17.0±22.7であった.対照区 5 月:1.4±3.4, 6 月:4.2±5.2, 7 月:95.0±85.8, 8 月:43.4±82.6,10月:68.0±100.7 であった.試験区が対照区と比較し, 6 月(p<0.05)と 8 月(p<0.01)が有意に低値を示した.また,試験区にお いて 7 月と比較し 8 月,10月(p<0.01)が有意に低値を示した.
増体重は,試験区入牧時平均体重372±41kg,対照区入牧時平均体重371±50.7kgであった.
試験区 7 月平均体重413.0±48.5kg, 8 月平均体重432.0±44.4kg, 7 月: 8 月(P <0.01), 7 月と 8 月の増体量:
18.3±13.3kg,DG:0.73±0.53であった.
対照区 7 月平均体重415.7±58.4kg, 8 月平均体重428.3±46.8kg, 7 月: 8 月有意な差なし, 7 月と 8 月の増体量:
12.7±18.5kg,DG:0.51±0.74であった.
繁殖成績は,授精回数試験区1.75± 1 回,対照区 1 回,初回授精までの日数試験区464±74日,対照区489±61日で あった.入牧から初回授精までの日数試験区46±18日,対照区58±25日であった.
【考察およびまとめ】
消化管内線虫卵数は 5 月と 6 月は両区共に低値であった.また,試験区が対照区と比較し, 6 月と 8 月で有意に低 値を示した.試験区において 7 月と比較し 8 ,10月で有意に減少したことから,駆虫により消化管内線虫卵数が低下 したと考えられた.増体量についても試験区において 7 月と 8 月において有意に増体した.繁殖成績においては授精 までの日数が短縮する傾向が有った.以上のことから,M公共牧場においてプアオン式のイベルメクチン製剤は有 効であることが示唆された.
1 公共放牧場の消化管内線虫駆虫効果
〇髙橋俊彦1 )・北野菜奈1 )・福本真一郎2 )
(1 )酪農学園大学・循環農学類・2 )酪農学園大学・獣医学類)
Key word:hokkaido, public pastures, gastro-intestinal nematodes, vermicidal effect
2
「日本家畜衛生学会第86回大会」要旨集
55
図 1 .駆虫が線虫卵数及び体重に及ぼす影響
図 2 .駆虫が繁殖成績に及ぼす影響
56
家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)【はじめに】
薬剤耐性菌の増加を抑えるためには抗菌剤の慎重使用が効果的であり,そのためには抗菌薬使用量の把握が重要で ある.家畜に対する抗菌剤の使用量の評価にはいくつかの方法があり,我々は第84回本大会において有効成分重量及 び家畜バイオマス重量で正規化した評価方法による比較について発表した.しかしこれらの方法では抗菌剤の効力が 反映できず,そのため海外ではDefined Daily Dose/Defined Course Dose(DDD/DCD)を用いて評価している国が 多い.今回我々はフランスで用いられている DCD をベースとした家畜の抗菌剤暴露レベル Animal Level of Exposure for Antimicrobials(ALEA)を用いて日本の家畜の抗菌剤使用量の評価を行った.
【材料と方法】
〈材料〉 日本のデータは農林水産省の「各種抗生物質・合成抗菌性物質・駆虫剤・抗原虫剤の販売高と販売量」,「畜 産統計調査」および「畜産物統計調査」から,各抗菌剤の用量については「動物用医薬品医療機器要覧(2014年版)」
より得た.ALEAの算出方法についてはフランス食品安全庁動物医薬品検査所が発表している抗菌剤販売量報告書
(Sales survey of veterinary medicinal products containing antimicrobials in France)に準拠した.
〈方法〉 抗菌剤販売量は薬剤ごとに肉用牛,乳用牛,豚,肉用鶏に分けて計算した.ALEAの算出には,まず各抗 菌剤の投与対象動物及び投与経路ごとにその抗菌剤の認可された用量の最大用量と最大投与日数に基づいてDDD/
DCDを設定した.次に年間の販売重量をDCD値で除してその抗菌剤を投与されたと推定される家畜の重量を算出 し,抗菌剤に暴露された家畜の重量の全体の家畜に対する割合(ALEA)を算出した.
【結果】
2005年〜2015年の日本の系統別抗菌剤販売量(図 1 )ではテトラサイクリン系が最も多く,サルファ剤やペニシリ ン系がそれに次いだ.推移をみるとテトラサイクリン系やサルファ剤は減少傾向,チアンフェニコール系,マクロラ イド系,プレウロムチリン系及びポリミキシン系は増加傾向を示した.ALEAで評価する(図 2 )とテトラサイク リン系が最も多いのは変わらないが,次いでペニシリン系となり,サルファ剤,トリメトプリム(オルメトプリムを 含む),マクロライド系,リンコマイシン系の暴露量が近似していた.人での最重要抗菌剤である第 3 ・第 4 世代セ ファロスポリンは販売量でもALEAでも低かった.
【考察】
本研究では家畜の抗菌剤暴露量の指標であるALEAを用いて日本の抗菌剤使用量を解析したが,ALEAではサル ファ剤とトリメトプリムが近い値を示すなど,実際に投与されている状況をより反映していると考えられた.テトラ サイクリン系の減少傾向が有効成分重量の変化に比べて緩やかなのは用量の小さいドキシサイクリンの使用割合が増 えたためと考えられる.今後は,家畜への抗菌薬の暴露をより正確に把握するとともに,抗菌薬の代替となる方策に ついても併せて検討していきたいと考えている.
家畜暴露量を指標とした抗菌剤使用量評価法の検討
○松田真理・杉浦勝明
(東京大学大学院)
Key word:antimicrobial use, food-producing animals, DDD/DCD, ALEA
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「日本家畜衛生学会第86回大会」要旨集
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図 1 .2005〜2015年度の日本の抗菌剤販売量(有効成分重量)の系統別推移
図 2 . Animal Level of Exposure for Antimicrobials(ALEA)を用いて評価した2005〜2015年度の日本の抗菌剤販 売量(有効成分重量)の系統別推移
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家畜衛生学雑誌 第43巻第 2 号(2017)【目 的】
現在,食肉加工において人工ケーシングの種類は多岐にわたっているが,天然ケーシングの需要は依然として下 がっていない.天然ケーシングは生体時の飼育環境,疾患の有無,加工時における損傷など様々な影響を受けやす く,人工ケーシングに比べその品質にバラつきが顕著である.また,低品質な天然ケーシングを用いて製造された ソーセージは,噛み砕いたときにケーシングの組織のみが口腔内に残るという問題点がある.そのため,ケーシング 品質を向上させる加工技術の開発が望まれている.
リン酸三ナトリウム(Na3PO4)の主用途は食品添加物として一般的である一方,ソーセージ用天然ケーシングへ の Na3PO4の効果として,Houben ら1 )がケーシングの滑り特性およびテクスチャー特性に関する報告を行い,
Na3PO4処理によりソーセージ充填時の滑りが向上し,せん断力値が低下することが示唆されている.また,現在国 内のケーシング処理施設では,Na3PO4を使用してケーシングの滑りの向上を図っている.Nakaeら2 )はアルカリ処 理による羊腸ケーシングの実験を行い, 1 %Na3PO4処理によって有意な軟化効果が認められたと報告している.こ のリン酸処理を行うことは家畜衛生上,豚腸ケーシングにも効果があることが報告されている3 ).そこで本研究で は,豚腸ケーシングの軟化に着目し,Na3PO4の効果を調べることを目的とし,その物性およびケーシング由来微生 物への影響について検討した.
【材料と方法】
実験 1 :最大荷重値と破断歪率の検討
水道水で 1 時間塩抜きした中国産豚腸ケーシング(34/36mm,日本ハム・ソーセージ工業協同組合より)を各 1 mずつカットした後,Na3PO41 %溶液に浸漬し, 1 時間浸漬区と 2 時間浸漬区を調製した.その後,10分水道水 で塩抜きをした.浸漬していない未処理区, 1 時間浸漬区および 2 時間浸漬区の破断特性試験をクリープメータ
(RE2-33005S,山電)で測定し,測定項目として最大荷重値,破断歪率およびその波形を調べた.
破断試験には直径 3 mmの円柱状プランジャーを用い,ケーシングを切り開き外側が上になるように固定台(ス テージ)に設置し,ケーシング表面に垂直に一定速度で荷重を掛け,プランジャーがケーシングを突き破る時に示す 値を各試料で測定した.固定された 1 つの円形表面に対して,円周の内側を 1 ヵ所破断し, 1 サンプルにつき 8 〜10 回測定を行った.
実験 2 :製品中の微生物検査
上記の方法で調製した豚腸ケーシングを用い,ホモジナイズし培養法で一般生菌,大腸菌群,ブドウ球菌,サルモ ネラ属菌,真菌類の 5 項目を測定した.
各使用培地は,標準寒天培地,デソキシコレート培地,マンニット食塩加卵黄培地,MLCB培地,DHL培地およ びPDA寒天培地を用いた.
天然ケーシングの品質に及ぼすリン酸塩の効果
○小林祥子1 )・木下由貴1 ,2 )・尹 赫一3 )・竹田志郎1 )・坂田亮一1 )
(1 )麻布大獣医・2 )大山ハム㈱・3 )新亜細亜貿易㈱)
Key word:natural sausage casings, phosphate, alkali treatment