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家畜衛生学雑誌43-3表14.ai

K

家畜衛生学雑誌 家畜衛生学雑誌

Vol.43 No.3 2017. DEC.

日 本 家 畜 衛 生 学 会

The Japanese Society of Animal Hygiene

The Japanese Journal of Animal Hygiene

家畜衛生学雑誌 第

43巻第

3号       二〇一七年十二月日本家畜衛生学会

家畜衛生フォーラム2017 要旨集

)        日本家畜衛生学会第87回大会 要旨集

(2)

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家 畜 衛 生 学 雑 誌

日本家畜衛生学会 発行

President : Junsuke SHIRAI(Tokyo Univ. of Agric. and Technol.)

Vice President : Shigeru MIYAZAKI(Res. Inst. for Anim. Sci. in Biochem. and Toxicol.)

Editor-in-Chief : Shigeru MIYAZAKI(Res. Inst. for Anim. Sci. in Biochem. and Toxicol.)

Editorial Board : Masuo SUEYOSHI(Miyazaki Univ.)

Shinji TAKAI (Kitasato Univ.)

Makoto NAGAI(Ishikawa Pref. Univ.)

Sadao NOGAMI(Nihon Univ.)

Hideto FUKUSHI(Gifu Univ.)

"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""

The Japanese Journal of Animal Hygiene

Published by the Japanese Society of Animal Hygiene

理 事 長 :白井淳資 副理事長 :宮﨑 茂 編集委員長 :宮﨑 茂

編集委員 :末吉益雄・髙井伸二・長井 誠

     野上貞雄・福士秀人

(3)

会員の皆様におかれましては,ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.ここに,「家畜衛生学雑誌」第43巻 第 3 号を刊行する運びとなりました.

本号では,ミニレビュー 1 編の他,「家畜衛生フォーラム2017」講演要旨及び「第87回大会講演要旨」を掲載して います.

「家畜衛生フォーラム2017」では,「抗菌剤に頼らない新しい家畜疾病の制御法」をテーマに, 5 人の先生方からご 講演をいただきますので,ご参加の皆様の積極的なご討論をお願い致します.

家畜衛生学雑誌では,原著論文・短報以外にも,総説,数ページ程度のミニレビュー,技術資料等の原稿を受け付 けておりますが,今回初めて「ミニレビュー」をご投稿いただき,掲載の運びとなりました.原著論文はもちろんで ございますが,ミニレビューや技術資料も含め,会員の皆様の積極的なご投稿をよろしくお願い致します.ご不明な 点はご遠慮なく編集委員会事務局へお問い合わせください.

日本家畜衛生学会理事長  白井淳資 家畜衛生学雑誌編集委員長 宮﨑 茂

(日本家畜衛生学会副理事長)     

日本家畜衛生学会・学会費納入のお願い

 ご承知のように,学会は会員の皆様からの会費をもって運営されております.学会の運営を円滑に運ぶために,所 定の会費を納入していただきますようお願い致します.

*会費は,正会員5,000円,学生会員2,000円です.

*平成27年度までの未納分をお支払いいただく場合,正会員年会費は4,000円です.

日本家畜衛生学会 理事長 白井淳資

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日本家畜衛生学会

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日本家畜衛生学会

平成 25 26 27 28 29 年度

       (      )         計       円

(4)

る際は、枠内にはっきりと記入し てください。

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 この受領証は、郵便振替の払込 みの証拠となるものですから大切

に保存してください。 この払込取扱票の裏面には、何も記載しないでください。

(5)

家畜衛生学雑誌

第43巻 第 3 号 2 0 1 7

 

目  次

〈ミニレビュー〉

非定型BSE及び飼料規制実施後に発生するBSEの現状

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小野寺節・杉浦勝明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81〜88

〈家畜衛生フォーラム2017要旨集〉

座長の言葉

 抗菌剤に頼らない新しい家畜疾病の制御法

  ─モデルとしての難治性・慢性疾病克服のための研究─ ・・・・・・・・・・・・・・・・・杉浦勝明・大石弘司 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 イントロダクション

 日本及び欧州における薬剤耐性対策状況

  ─動向調査から普及啓発まで─ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木島まゆみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93〜96 生理活性タンパク質の応用研究からのアプローチ

 牛乳房炎の予防と治療への可能性 非特異性生理活性物質:ラクトフェリン ・・・・・・・・河合一洋 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97〜99 免疫研究からのアプローチ

 牛の免疫応答を利用した難治性疾病の新規制御法開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今内 覚 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101〜103 免疫遺伝学研究によるアプローチ

 主要組織適合抗原MHCをマーカーとした新しい牛乳房炎および牛白血病制圧戦略について

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間 陽子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105〜108 抗病性育種研究からのアプローチ

 豚の抗病性育種によってマイコプラズマなどの病気にかからない豚を作る ・・・・・・・・・・・鈴木啓一 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109〜112

〈第87回大会講演要旨集〉

ビタミンK類がウシの免疫担当細胞の機能発現に及ぼす影響

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・西 航司・森 千尋・権平 智・岩野英知・樋口豪紀・永幡 肇 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116〜117 豚胸膜肺炎ワクチン免疫血清中の抗体価測定のためのELISA法の検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手島香保・TOHO・堤 信幸・鎌田 崇・小玉敏明

近藤朋美・眞柄 麗・岩崎紗枝・渋谷一元 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118〜119 子牛のマイコプラズマ関節炎罹患牛における免疫学的応答性

・・・・・・・・・・・・津田尚樹・笹川操緒・西 航司・岡本真理子・田中貴大・権平 智・根布貴則

大塚浩通・小岩政照・松田一哉・岩野英知・樋口豪紀・永幡 肇 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120〜121 競走用馬の感染性とみられる皮膚炎からの細菌・真菌の分離同定と薬剤感受性調査

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・牛屋重人・上塚浩司 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122〜123 養豚農家および養豚管理獣医師の抗菌剤使用削減意志に影響する意識要因の分析

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・礒村れん・松田真理・杉浦勝明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124〜125 乳清および鶏卵由来タンパク質酵素分解物の食肉加工における有効利用

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・梅津敬多朗・竹田志郎・坂田亮一 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126〜127 野生獣肉に関する研究

 ─ジビエの生理活性機能について─ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金子桜子・竹田志郎・坂田亮一 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128〜129 北海道で発生した高病原性鳥インフルエンザ(H5N6亜型)発症鶏の病性鑑定成績と他症例との比較

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中薗将友・川島悠登 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130〜131 牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)ワクチン製造のための増殖効率の高い細胞株の選択

・・・・・・・・・・・・・・・中川健斗・池田凡子・小川美聡・安田奏平・宮崎朋美・長井 誠・白井淳資 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 132〜133 会員へのおしらせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135〜141 書評 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142〜143 家畜衛生学雑誌投稿規程  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144〜145 日本家畜衛生学会会則  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146〜147

家 畜 衛 生 学 雑 誌

(6)

Vol. 43 No. 3 2 0 1 7

 

Contents

〈Mini Review〉

Review of atypical BSE and BSE of cattle born after the reinforced feed ban (BARB)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Takashi Onodera et al. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81〜88

〈Abstracts of Animal Hygiene Forum 2017〉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89〜112

〈Abstracts of oral presentations on 87th academic meeting〉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113〜133

Information for Members ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135〜141 Book Review ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142〜143 Instruction for Authors ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144〜145 The Regulations of The Japanese Society of Animal Hygiene ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146〜147

Jpn. J. Anim. Hyg.

(7)

序  文

畜産副産物である肉骨粉の飼料原料としての利用は,

過去40年以上にわたって行われてきた.特に牛海綿状脳 症(bovine spongiform encephalopathy, BSE) 発 生 以 前は,牛肉,製品に利用されない内臓の化製処理は世界 中で一般的に用いられていた.BSEプリオンのルーツに ついては未だ不明であるが,脳脊髄や回腸末端部等が含 まれた牛内臓が化製処理により濃縮され,飼料として牛 に与えられるというプロセスが繰り返えされることによ り増幅されたことは疑いない.牛肉骨粉の飼料利用が禁 止されたことにより,世界中より BSE の発生は急激に 減少した.しかしながら,21世紀初頭より欧米,日本に おいて死亡牛及び食用牛検査におけるアクティブ・サー

ベイランス(牛延髄部分を取り出し,ELISA などによ り一斉にスクリーニング検査する方法)により非定型 BSE が散見されるようになった.非定型 BSE の野外例 は古典型 BSE のような運動失調・行動異常を示さない ために,アクティブ・サーベイランスによってのみ検出 可能である.また,非定型 BSE は一般に 8 歳以上の老 齢牛にのみ観察される.このため,BSE全体の症例数は 激減したにも関わらず,BSE検査継続の根拠となってい る.この論文では,未だ不明なところが多いが,現時点 で明らかになっている非定型 BSE の研究経過について 概説したい.

1 .非定型BSEの発生

欧州では2001年より非定型 BSE の存在していたこと が報告されている1 , 2 )(表 1 ).2015年までのEU委員会 統計では,累積症例が約100例となっている(表 2 ).古 典型 BSE はプリオンに汚染された飼料あるいは実験感 染により伝達され,英国及び他の国に発生した BSE は

非定型BSE及び飼料規制実施後に発生するBSEの現状

小野寺節

1 )

・杉浦勝明

1 )*

Review of atypical BSE and BSE of cattle born after the reinforced feed ban (BARB)

Takashi Onodera

1)

and Katsuaki Sugiura

1)*

1)Graduate School of Agricultural and Life Sciences, the University of Tokyo)

(2017.8.29 受付/2017.10.10 受理)

Summary

It has been postulated that BSE was a strain of sheep that crossed the species barrier to cattle via animal feed.

In the UK whilst the use of BSE-contaminated meat and bone meal in animal feed has been recognized as the means, by which the disease was disseminated and sustained as an epidemic within the cattle population in the early 1990s, the origin of the disease, including the born after the reinforced feed ban (BARB) cases, has remained unclear. Efforts are made by scientists all over the world to generate knowledge on atypical BSE to minimize the risk to human and animal health. The potential threat of new type of BSE and BARB necessitates continued research and surveillance testing.

Key words: Atypical BSE, Born after the reinforced feed ban (BARB), Surveillance

家畜衛生学雑誌 43,81〜88(2017)

1 ) 東京大学大学院農学生命科学研究科 〒113-8657 東京都文京区弥生 1 - 1 - 1

連絡著者:杉浦勝明([email protected]

(8)

表 1  非定型BSEの歴史的背景 2001 Biacabeら,フランスでH-型BSEを報告2 )

2002 Casaloneら,イタリアでL-型BSEを報告 (欧州プリオン学会) 1) . 2003 Yamakawaら,日本で23か月齢BSEを報告34)

2006 日本厚生労働省研究班,日本で169か月齢の和牛においてL-型BSEを報告35). 2007 Jacobsら, 欧州全体の非定型BSEを報告12)

2008 Biacabeら, フランスの非定型BSEはBSE対策と無関係に発生していると報告6 ). Nicholsonら,米国でプリオン遺伝子変異によるBSEを報告8 )

2011 Baronら,H型BSEプリオンをマウスで継代すると古典型BSEプリオンが出現すると報告7 )

2012 EU委員会,非定型BSEについて従来の古典型BSEのサーベイランスで検出可能と報告15, 16). Seuberlichら,スイスでH型でもL型でもない別の非定型BSEを報告27)

2016

舛甚ら,H型BSEプリオンをウシ型プリオン遺伝子組み換えマウスで継代することにより,新たなBSEプリ オン株を分離したと報告32)

EU委員会 非定型BSEの出生時期が古典型BSEと変わらないと報告30)

2017 岡田ら,日本において,L-型BSEプリオンの牛経口感染により,末梢神経を含む全身神経組織におけるプリ オン感染を報告23)

表 2  世界の非定型BSEの発生頭数

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

オーストリア 0/1 1/1

チェコ 1/0

デンマーク 0/1 0/1 1/0 1/1

スペイン 1/0 1/0 0/1 1/1 2/2 1/0 1/2 0/1 0/1

フランス 1/0 2/1 3/1 0/1 0/1 0/2 1/1 2/3 2/2 2/1 0/1 2/0 1/2

アイルランド 1/0 1/0 1/0 1/0

イタリア 0/1 0/1 0/1 0/1 0/1

オランダ 1/0 0/1 0/1 0/1

ポーランド 0/1 0/2 0/2 1/1 0/2 1/0 0/1 0/2  0/1

ポルトガル 1/0 2/0 1/0 2/0 1/0

ルーマニア 0/2

スロベニア 1/0 1/0

英国 1/1 0/1 2/2 0/2 1/0 0/1 1/1 0/1 1/0 1/0

ブラジル 1/0

ノルウェー 1/0

スイス 1/0

米国 1/0 1/0 0/1

注:各セルの数字は非定型BSE牛の報告頭数(H型/L型)を示す.

*:ポーランドでは2013年にH型とL型の識別がなされなかった非定型BSEの発生が 1 頭あった.

出典:EFSA Journal 14:4643, 2016.

(9)

イツフェルト・ヤコブ病の発症に関与している9 ).この E211K 牛に古典型 BSE,あるいは L 型 BSE 株を脳内接 種して経過観察が行われている10).さらにE211Kに病原 体非接種の状態で長期飼育し,BSEが発生するか否かの 観察が行われている.非定型 BSE に何らかの遺伝子変 異が存在するのか否かについては,今後の牛ゲノム計画 等,さらなる研究の進展が必要とされる.

表 2 においてはEFSA(欧州食品安全機関)の報告書 における世界の非定型 BSE 発生例が示してある.2001 年にフランス,オランダで H 型が報告されてから約100 例となっている.2002年にベルギーでもL型が報告され たが,後にこの症例は古典型 BSE に再分類された.ブ ラジル,ノルウエーでは古典型 BSE は発生せず非定型 BSE のみが発生している.おそらく非定型 BSE の方が 何らかの原因(環境から除染し難い等)で撲滅が困難と 考えられている.今後とも疫学調査が必要とされる.

2 .非定型BSEプリオン株の生化学的性状 現在BSEは古典型 1 種,非定型 2 種(L型,H型)に 分類されている.古典型 BSE プリオンは,プロテアー ゼ消化に非常に抵抗性である,それに対し,非定型BSE プリオンはプロテアーゼ消化に対し,易消化性で,酵素 の濃度を高めると消失する11).BSE蛋白をウエスタンブ ロット解析すると三種のバンドに分けられる(図 1 ).

飼料に添加された肉骨粉が原因と考えられているのに対 し3 ),非定型BSEについては飼料との関連性が証明され ていない.多くの非定型 BSE は老齢牛で見られるが,

感染経路は明らかにされていない4 ).一部の論文では老 齢によって,正常プリオン蛋白の品質保証機構(ABC カセット等)が疲労して,散発的(sporadic)に異常プ リオン蛋白が蓄積するのではないかとの仮説を立ててい

5 , 6 ).非定型 BSE 散発説のもう一つの根拠は,飼料

規制の前後でその発生率があまり変わっていない点であ るが6 ),さらなるデータの蓄積が必要である.

Baron等の報告では,非定型BSE株を実験動物体内で 継代すると,古典型 BSE と同様のウエスタンブロット 型となるので,この株が古典型 BSE の元株とする説も 有る7 ).しかし,このマウスで見られたのと同じ現象が 牛でも再現されるのであろうか.一方,昔から羊スクレ イピー病原体が肉骨粉を通じて牛に感染し,BSE化した とする説も根強く,その為に,非定型L型BSE株,ある いは非定型 H 型 BSE 株を羊に感染させ,経過観察が行 われている7 )

また,遺伝的変異による BSE 発生の可能性は大方否 定されているが,米国の例のみが遺伝的変異の結果とし て報告されている8 ).この牛ではプリオン蛋白211番の アミノ酸がグルタミン酸よりリジンに変化している

(E211K).ヒトにおいても同じ型の変異が,家族型クロ

図 1  非定型BSEの特徴 Dr. Zanusso, G.(Verona大学)提供

(10)

プロテアーゼ抵抗性の BSE プリオンは PrPRESとも記載 されるが,SDS- ポリアクリルアミドゲルの電気泳動に より三本のバンドに分けられる.このバンド(糖蛋白 群)は,特徴的な分子量を持ち,BSEの種類によりその 分子量と三本のバンド蛋白量の比率が異なる.したがっ て,分子量と比率により BSE プリオン株が識別され る.古典型 BSE 株は,60%の二本糖鎖バンド,28%の 一本糖鎖バンド,12%の無糖鎖バンドで構成される.分 子量はそれぞれ28,22,18kDaである12,13).H型BSE株 は二本鎖バンド,一本鎖バンド,無糖鎖バンドの位置が それぞれ30,24,20kDaである2 ,13).各バンドの比率は 古典型 BSE 株と同様である.L 型 BSE 株は45%の二本 鎖バンド,35%の一本鎖バンド,20%の無糖鎖バンドで,

分子量はそれぞれ27,21,17kDaである1 ,13).これらの 分子量,蛋白比率を組み合わせた BSE 型分類は世界的 に認められている14)

BSE サーベイランスでは,ELISA 法でプロテアーゼ 耐性蛋白を検出し,確定検査で免疫組織化学,ウエスタ ンブロット解析を行っている.この方法は古典型 BSE 株を用いて行われたが,古典的 BSE 株に比べて非定型 BSE株はプロテアーゼ易消化性であることから,非定型 BSE株に対して有効か否かについては疑問がある.現在 用いられている ELISA 検査キットでは,非定型 BSE 株 は偽陰性を示す可能性がある.ただ,現在のEFSAの基 準では,非定型 BSE も現状の古典的 BSE 株を用いた方 法で検査してよいとしている15,16)

3 .非定型BSE株の伝達性

BSEの株が異なると伝達性も異なる.したがって,各 BSE 株を用いてリスク評価が行われている.古典型 BSE株は0.15 gのBSE牛脳の経口摂取により,50%以上 の牛に伝達する17).古典型BSE株の経口感染は,カニク

イザル18,19),羊・山羊20,21)においても可能である.古

典型 BSE においては,小腸末端パイエル板,網膜,中 枢神経系に高濃度の病原体分布があり,これらの部位が 特定危険部位とされている22).これらのデータを用い て,肉骨粉の規制や特定危険部位の定義を定めることに より,BSEの撲滅に役立てている.

非定型 BSE は OIE 基準による clinical suspect(臨床 疑い例)の牛では全く見られない.世界的に積極監視が 2000年に開始されて初めて非定型 BSE の存在が明らか にされた.その後,牛脳内接種により病原体及び病気の 伝達が成功した.したがって,実験感染例でのみその症 状が報告されている(表 3 ).病理組織学的には,古典 型(C型)BSEでは神経細胞質(特にシナプス周囲)に 病原体が染色され,グリア細胞質にも病原体が染色され る.L型BSEでは脳内にアミロイド斑が観察されるが1 ), 日本の老齢L型ではむしろ神経細胞質内に病原体が観察 された23).H型BSEとC型BSEの間に病理組織学的には 大きな差異が認められなかった.Casalone らによれ ば,L型BSEの組織像はヒト孤発性クロイツフェルト・

ヤコブ病脳組織の 2 型に類似している1 )(図 1 ).

非定型 BSE の伝達様式は極めて異なっている.これ らの病原体は脳内接種により伝達可能であるが24),経口 感染は困難である.CFIA(カナダ食品検査庁)の研究 によると,100 gのH型,あるいはL型BSEの脳を経口 投与しても, 6 年以上無発症である.これは古典型BSE 株と大きく異なる点である25).しかしながら,日本で分 離された L 型 BSE 株を経口感染した際は,経口感染で 88ヶ月後に発症した23).非定型BSE株脳内接種では,

14〜21か月後に発症する26−28).古典型 BSE 株を用いた 脳内接種では約24か月後に発症し,非定型 BSE 株より 遅めである10,29)

一方,非定型 BSE の出生年を調べると古典型 BSE と それほど大きな差は見られない(図 2 )30).したがっ て,非定型 BSE も古典型 BSE も同じ時期に感染したと

表 3  非定型BSE実験感染例及び古典型BSE野外感染例・実験感染例の表現型のまとめ

性状 H型BSE 古典(C)型BSE L型BSE

発症年齢 全てが 8 歳以上 大部分が 5 歳以上 全てが 8 歳以上

臨床症状 C型BSEと同様 運動失調,行動異常等 一定でない

PrPScの型 H型 C型 L型

PrPScの 沈着様式

微細顆粒状 グリア細胞内 細胞内外沈着

顆粒状 グリア細胞内 細胞質外沈着

アミロイド斑 細胞質内沈着

(11)

り,別の BSE 型のプリオンが出現することがウエスタ ンブロット解析により証明されている32).スクレイピー ではいくつかの株の動物体内混在が証明されているの で,BSEでも同様の混在が有るのかもしれない.

5 .BSE対策終了後の新たなBSEの出現 BARB (Born after the reinforced feed ban ま た は Born after the reinforced ban)とは,英国で動物蛋白 を牛飼料に用いることを禁止した1996年 8 月以降に出生 した牛に見られる BSE のことである33).2001年以来,

EU で60例が報告されている.英国で28例,アイルラン ド12例,スペイン 7 例,フランス 3 例,ドイツ 2 例,

ポーランド 2 例,ポルトガル 2 例,チェコ 1 例,イタリ ア 1 例,ルクセンブルク 1 例,オランダ 1 例である.

OIE 基準では,最後の BSE が生まれてから11年以上が 経過した国は BSE 清浄国(negligible risk)と認定して いる.しかしながら,2016年にフランスにおいて2011年 生まれの牛 1 頭が古典型 BSE であることが確認され 考えられる.すなわち,最初に英国で BSE が発生した

時期に非定型 BSE プリオンも牛群に感染し,病原体の 増幅も行われたと考えられる.このような考え方から,

2008年のBiacabeの非定型BSE散発説6 )は,その大部分 の症例について否定されつつある.古典的 BSE 中に存 在する亜型から,非定型 BSE が生じた可能性が示唆さ れている.英国における古典的 BSE 初発例のルーツは 未だ不明である.

4 .その他の非定型BSE

すでに 3 種類の BSE が報告されているが,その他の BSE型の存在の可能性も報告されている.それらの新型 BSEのリスク研究もされなければならない.スイスにお いては別の型の BSE が報告されている31).しかしなが ら,それらの脳材料がトランスジェニックマウスや牛に 実験伝達が可能かは明らかにされなければならない.さ らに,H型BSE株を牛正常プリオン蛋白質が発現するト ランスジェニックマウス脳に何代か継代することによ

図 2  古典型BSE,H-型BSE,L-型BSE牛の生年別の分布 古典型と非定型との間で分布に大きな違いは見られない28)

出典: EFSA Journal 14:4643, 2016.

(12)

た.また,2015年には,アイルランドにおいて2010年生 まれの牛 2 頭が古典型 BSE であることが確認された.

これらの国は,国際獣疫事務局(OIE)の陸生動物衛生 コードに基づきステータスが格下げとなり,BSE準清浄 国(controlled risk) と な っ て い る.2017年 に な り EFSA は 緊 急 に BARB 対 策 委 員 会 を 開 催 し て い る.

BARBの原因について,プリオン遺伝子の変異,あるい は飼養管理のミス等様々な方面から調査がなされている が,今のところ原因不明である.

6 .まとめ

牛肉骨粉の飼料利用が禁止されたことにより,世界中 より BSE の発生は急激に減少したが,2001年に非定型 BSEが最初に報告され,15年が過ぎようとしている.そ の間 BSE の元のプリオンに様々な亜型が混在している ことが明らかにされつつある.非定型 BSE の出生年を 調べると古典型 BSE とそれほど大きな差は見られな い.したがって,非定型 BSE も古典型 BSE も同じ時期 に感染したと考えられる.最初の英国 BSE が発生した 時期に非定型 BSE プリオンも牛群に感染し,病原体の 増幅も行われたと考えられる.全世界で非定型 BSE は 100例を超えるが,発生数は減少しており,その大部分 は肉骨粉飼料に由来する増幅された病原体によると考え られ,今後とも重層的な BSE 対策を継続する必要があ る.

引 用 文 献

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要  旨

BSEは1980年代に一般的には羊のスクレイピー病原体 に汚染された肉骨粉が含まれる飼料を通じ,種を超えて 牛に伝達したと考えられている.しかし,英国では,汚 染の原因となる肉骨粉が禁止された後も少数の BSE が 発生しており(BARB 例の発生),BSE の初発例の原因 については未だに不明である.また,2001年以降世界各 地で古典型 BSE と生化学的性状などが異なる BSE(非 定型 BSE)の発生が報告されている.最初の英国 BSE が発生した時期に非定型 BSE プリオンも牛群に感染 16) Meloni, D., Davidse, A., Langeveld, J.P.M. et al.

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(14)

し,病原体の増幅も行われたと考えられる.このことに よって,2008年のBiacabeの非定型BSE散発説はその大 部分の症例については否定されつつある.古典的 BSE 中に存在する亜型から,非定型 BSE が生じた可能性が 示唆されている.英国における古典的 BSE 初発例の ルーツは未だに不明である.BSEサーベイランスの下で

BSE牛が引き続き確認される中,世界中の科学者が非定 型 BSE や BARB の発生機構を明らかにしようとしてい る.

キーワード:非定型BSE,BARB,サーベイランス

(15)

フォーラムテーマ

「抗菌剤に頼らない新しい家畜疾病の制御法

─モデルとしての難治性・慢性疾病克服の ための研究─」

要 旨 集

主催:日 本 家 畜 衛 生 学 会

共催:(一財)生物科学安全研究所

後援:農

(16)

と き:平成29年12月15日(金) 13:00〜17:30 ところ:Meiji Seika ファルマ(株) 本社講堂

座長 杉浦勝明(東京大学),大石弘司(動物医薬品検査所)

13:00〜13:10

 挨拶 日本家畜衛生学会理事長,(一財)生物科学安全研究所理事長 13:10〜13:15

 今年度の企画について

     伊藤 博哉(農研機構・動物衛生研究部門)

13:15〜13:45(うち討論 5 分)

 ( 1 ) イントロダクション

    日本及び欧州における薬剤耐性対策状況     ─動向調査から普及啓発まで─

     木島まゆみ(動物医薬品検査所)

13:45〜14:35(うち討論 5 分)

 ( 2 ) 生理活性タンパク質の応用研究からのアプローチ

    ─牛乳房炎の予防と治療への可能性 非特異性生理活性物質:ラクトフェリン─

     河合 一洋(麻布大学)

14:35〜15:25(うち討論 5 分)

 ( 3 ) 免疫研究からのアプローチ

    ─牛の免疫応答を利用した難治性疾病の新規制御法開発─

     今内  覚(北海道大学)

休憩 15:25〜15:35

15:35〜16:25(うち討論 5 分)

 ( 4 ) 免疫遺伝学研究によるアプローチ

    ─主要組織適合抗原MHCをマーカーとした新しい牛乳房炎および牛白血病制圧戦略について─

     間  陽子(理化学研究所)

16:25〜17:15(うち討論 5 分)

 ( 5 ) 抗病性育種研究からのアプローチ

    ─豚の抗病性育種によってマイコプラズマなどの病気にかからない豚を作る─

     鈴木 啓一(東北大学)

17:15〜17:30

 総合討論

(17)

薬剤(抗菌剤)耐性菌は医療及び獣医療現場で世界的 に増加しているが,あらたな抗菌剤の開発は減少傾向に あり,薬剤耐性菌対策は国際的に大きな課題となってい る.2015年 5 月,世界保健機関(WHO)の第68回世界 保健総会において,AMR に関するグローバル・アク ションプランが採択された.このプランでは,医療,獣 医療等の関連部門の一体的な取組み(ワンヘルス・アプ ローチ)の重要性が改めて示され,各国が 2 年以内にナ ショナル・アクションプランを策定することを求めてい る.我が国においては,関係府省が連携して取りまとめ た初めての総合的なAMR対策として,2016年 4 月にナ ショナル・アクションプランが取りまとめられた.この アクションプランでは,AMRの現状と課題をわかり易 く整理したうえで, 6 分野の目標と戦略を示し,また各 戦略には,対応方針,執るべき取組,その成果の評価指 標等が具体的に示されている.

6 分野の目標を概略すると, 1 )医療,獣医療等の関 係者を中心とした国民の知識と理解の増進を図りつつ,

2 )AMRの発生状況や抗微生物剤の使用実態の動向調 査・監視(サーベイランス・モニタリング)とリスク評 価を行い, 3 )適切な感染予防・管理及び 4 )抗微生物 剤の適正(慎重)使用を徹底する.また, 5 )その基礎 となる薬剤耐性の発生や伝播のメカニズム,新たな診 断・予防・治療手段の研究・実用化を推進する.そし て,6 )アジア地域において,AMR対策のリーダーシッ プを発揮していくというものである.

本フォーラムでは,上記 6 分野のうち 2 ), 3 ), 4 )の 分野に関連する話題として,「日本及び欧州における薬 剤耐性対策状況」について,動物薬分野のAMR対策の 中心的役割をつとめる動物医薬品検査所の木島まゆみ先

生にお話しいただく.

その後, 6 分野中最も難問であろうと考えられる 5 ) の分野に関連する話題として,「抗菌剤に頼らない家畜 の感染疾病の制御法に関する研究」について 4 人の専門 家の方々に紹介していただく.まずは,難治性・慢性疾 病の代表である乳房炎の予防薬・治療薬として期待され る非特異性生理活性物質・ラクトフェリンの可能性につ いて,麻布大学の河合一洋先生にご紹介頂く.さらに,

免疫療法の最前線とも言える免疫チェックポイントを標 的とした抗体医薬品の牛疾病への応用について,北海道 大学の今内覚先生にお話し頂く.理化学研究所の間陽子 先生には,免疫遺伝学研究によるアプローチから,「主 要組織適合抗原MHCをマーカーとした新しい牛乳房炎 および牛白血病制圧戦略について」ご教授願い,また,

東北大学の鈴木啓一先生には,抗病性育種研究からのア プローチとして,「豚の抗病性育種によってマイコプラ ズマなどの病気にかからない豚を作る」をテーマにご講 演頂く.

畜産現場における抗菌剤使用量の削減は,ワクチンプ ログラムの実施,バイオセキュリティ水準の向上,アニ マルウェルフェアの確保,抗病性品種の使用,畜舎の改 善,代替物の使用などを含む適切な衛生管理プランの 下,家畜の健康に影響を及ぼす様々な要因をバランスよ くコントロールしつつ,飼養管理を進めることにより初 めて可能となる.本フォーラムの演題である非特異性生 理活性物質・ラクトフェリンが抗菌剤の代替となる可能 性,抗病性育種の使用による抗菌剤使用量の削減の可能 性を含め,我が国のAMR対策の活性化に資するよう参 加者の皆様からの活発なご議論を期待したい.

座長の言葉

抗菌剤に頼らない新しい家畜疾病の制御法

─モデルとしての難治性・慢性疾病克服のための研究─

東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 

杉浦 勝明

農林水産省動物医薬品検査所 部長 

大石 弘司

(18)
(19)

2015年 の 総 会 で Global action plan on antimicrobial resistance(薬剤耐性に関するグローバルアクションプ ラン)を採択した.WHOのアクションプランは,薬剤 耐性対策のための各国における行動計画の枠組みを示し たもので,これに基づいて,日本においても,2016年 4 月に,冒頭のアクションプランが取りまとめられた.

アクションプランには, 1 )普及啓発・教育, 2 )動 向調査・監視, 3 )感染予防・管理, 4 )抗菌剤の適正 使用, 5 )研究開発・創薬, 6 )国際協力という 6 つの 分野の目標と戦略が示されている.例えば,戦略2.3「畜 水産,獣医療等における動向調査・監視の強化」の取り 組みとしては,JVARMの体制強化,愛玩動物における 薬剤耐性の動向調査・監視体制の確立等が掲げられてい る.また,戦略3.2「感染予防・管理の推進」には,ワ クチンの開発・使用の推進,飼養衛生管理基準の遵守の 徹底等が,戦略5.4「新たな予防・診断・治療法等の開 発に資する研究及び産学官連携の推進」には,感染症に 対する抗微生物薬とは異なる非伝統的な治療法として,

例えば,ファージ治療,抗体を含む免疫療法等の研究開 発の推進が,実施すべき取り組みとして掲げられている.

また,アクションプランには,「ヒト」及び「動物」

の各々の分野における2020に向けた「成果指標」や,戦 略毎の「評価指標」が設定されている.関係閣僚会議の 枠組みの下で,毎年,評価が行われることとなってお り,2017年10月に「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報

図 1 .人体用抗菌剤の開発の歴史 1 .はじめに

2016年 4 月に「国際的に脅威となる感染症対策関係閣 僚会議」において,「薬剤耐性(AMR)対策アクション プラン(2016−2020)」(以下,「アクションプラン」と いう.)が取りまとめられた.その中には,ヒト・動物 といった垣根を超えたワンヘルス・アプローチの重要性 が唱えられており,内閣官房,内閣府食品安全委員会,

文部科学省,厚生労働省及び農林水産省が協同して「薬 剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」や「薬剤耐性

(AMR)対策推進月間(11月)の取り組み」等を行って いる(内閣官房HP;https://www.cas.go.jp/jp/houdou/

161004amr.html).

また,アクションプランに基づき,獣医療分野におい ても,多方面からの取り組みが進められているところで ある.そこで,今回,日本と欧州における薬剤耐性対策 の取り組みについて,デンマークの取り組みと日本の動 物 由 来 薬 剤 耐 性 モ ニ タ リ ン グ(Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring;JVARM) の 事 例を中心に紹介する.

2 . 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン策定の 背景と取り組み目標

ゴールドマンサックスの元チーフエコノミストである ジム・オニール氏は,英国の依頼により,2014年に「薬 剤耐性(Antimicrobial Resistance;AMR)に関するレ ビュー」を取りまとめた1 ).このレビューには,「AMR に起因する死亡者数は,2013年時点で低く見積もって70 万人で,何も対策を取らない場合には,2050年には1,000 万人を超えるであろう」と記載されている.この数字 は,人医療分野において,非常に大きな衝撃をもたら し,経済協力開発機(OECD)が2015年の G7の厚生大 臣会合に提出した資料2 )をはじめ,薬剤耐性菌の脅威 を示す資料として世界で広く引用されている.また,

2015年の OECD の資料には,抗菌剤の開発後,耐性菌 が確認されるまでの期間が非常に短くなっていること,

及び人体用の新規抗菌剤の開発数が急激に低下している ことについても言及されている(図 1 ).

これらの諸情勢を背景に,世界保健機関(WHO)は,

イントロダクション

日本及び欧州における薬剤耐性対策状況

─動向調査から普及啓発まで─

農林水産省 動物医薬品検査所 総括上席研究官 

木島 まゆみ

(20)

告書2017年」が取りまとめられた.

3 .国際機関の動向

薬剤耐性菌に関する国際機関の取り組みとしては,

WHOがヒトの健康の観点から,国際獣疫事務局(OIE)

が動物衛生の観点から,コーデックス委員会(Codex)

が食品の国際規格等の観点から,薬剤耐性関連ガイドラ インの策定・見直し等を行っている.直近では,Codex がフードチェーン全体を視野に入れた慎重使用のガイド ラインの見直しや耐性菌モニタリングガイドラインの原 案を作成しており,2017年11月末に,韓国で薬剤耐性に 関する特別部会が開催される予定である.

4 .ヨーロッパにおける薬剤耐性対策

ヨーロッパの各国は,薬剤耐性対策を積極的に進めて いる.その中でも,特に先進的な取り組みを行っている デンマークの事例を紹介する.

デンマークには,DANMAP(The Danish Integrated Antimicrobial Resistance Monitoring and Research Programme)という抗菌剤の使用量と耐性動向をモニ タリングする制度がある.図 2 は,DANMAP(2015年)

におけるヒト及び動物用抗菌剤の使用量の推移を示した ものである3 ).デンマークでは,2010年にʻYellow Card Initiative’ という制度が導入された.これは,農場毎の 抗菌剤の使用量が閾値を超えた農家に対して,イエロー カードと言われる指導書を出し,規制値以下に下がるま で「第三者の獣医師のアドバイス」や「規制当局の無通 告の査察」を受けるというもので,これにより,2011年 に動物用抗菌剤の使用量が低下した.さらに,2013年に は,「ヒトの医療上重要な抗菌剤は10.8%,ワクチンは 無課税」といった,動物薬の区分毎に異なる消費税が導

入され,2014年以降の抗菌剤の使用量も低下している.

なお,デンマークでは,過去10年間に豚のワクチン接種 量が増加しており,ワクチン接種の増加も抗菌剤の使用 量減少に寄与している可能性が示唆されている.

5 .日本における取り組み(JVARMの成績を中心に)

薬剤耐性菌をコントロールするには, 1 )薬剤耐性菌 の動向調査・監視, 2 )薬剤耐性に関するリスク評価,

3 )抗菌剤の適正使用・慎重使用, 4 )普及啓発・専門 家教育の 4 つのステップが考えられる.耐性菌を低減す るためには,普及啓発・専門家教育等を通じて,抗菌剤 の使用者に現状以上の適正使用・慎重使用を実施しても らうことが必要で,それが最終目標と考えられるが,そ のためには,科学的根拠に基づいた 1 )から 3 )の取り 組みが重要である.

このうち, 1 )に該当するのが,JVARMで,動物医 薬品検査所(動薬検)が基幹検査機関として,農林水産 消費安全技術センター,全国の家畜保健衛生所,その他 の多くの機関と連携し,1999年から継続して実施してい る.JVARMの調査は, 1 )動物用抗菌剤の販売高, 2 ) 健康動物及び 3 )病気動物由来細菌の薬剤感受性の 3 つ に分けられ,これまで食用動物由来の細菌を対象とした 薬剤感受性成績等を取りまとめてきた(図 3 ).また,

今年度,アクションプランの取り組み目標を受け,新た に,愛玩動物(イヌ及びネコ)由来の細菌を収集するこ ととした(図 4 ).なお,愛玩動物由来の耐性菌のモニ タリングは,諸外国においても殆ど実施されていないこ とから,昨年度,動薬検に「愛玩動物薬剤耐性(AMR)

調査に関するワーキンググループ」を設置し,モニタリ ング体制に関する意見取りまとめを依頼した.(動物医 薬 品 検 査 所 HP;http://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/

yakuzai _ p3.html).今年度は,この検討結果に基づい

図 2 . デンマーク;人と動物における抗菌薬の 使用量推移

図 3 .動物由来細菌の薬剤耐性モニタリング:JVARM

(Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring: 1999〜)

(21)

て,大腸菌等, 6 菌種を対象とした調査を行う予定であ る.

なお,JVARMの成績は,食品安全委員会が実施して いるリスク評価の資料として活用されている.また,農 林水産省では,このリスク評価結果に基づいて,リスク 管理措置を策定・実施しており,「第二次選択薬(第一 次選択薬として投与された抗菌剤が無効の場合のみに使 用する薬)」としての位置づけや,モニタリング調査の 強化等の対策を行っている.さらに,動物用抗菌剤の慎 重使用のガイドライン,牛呼吸器病(BRDC)における 抗菌剤治療ガイドブック等の作成を通じて,抗菌剤の適 正使用・慎重使用の喚起を行っている.

6 .おわりに

前述のように,アクションプランにおける戦略の一つ には「感染予防・管理の推進」がある.獣医療分野で は,従来から,ワクチンや飼養衛生管理による感染予防 に努めているが,これらの取り組みは,抗菌剤の使用の 低減につながることから,薬剤耐性対策上,極めて基本 的かつ重要な取り組みである.1990年代に海水魚のワク チンが開発された際には,魚病被害額及び抗菌剤の使用 量が急激に減少したという事例も残されている(図 5 ).

「新たな予防・診断・治療法等の開発に資する研究及 び産学官連携の推進」の戦略を含めて,今後,薬剤耐性

菌対策の観点からも,感染防御に関する多方面の取り組 みが重要と考えられる.

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Beyond. Economic Issues, Policies and Options for 図 4 .愛玩動物における薬剤耐性菌のモニタリング体制

─専門家ワーキンググループによる推奨体制─

図 5 .ワクチン投与と魚病被害状況

─大分県におけるブリ類の魚病被害額の推移─

(22)

Action. OECD (2015)

3 ) Statens Serum Institut et al: DANMAP 2015 - Use of antimicrobial agents and occurrence of

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(23)

LF 濃度は,正常乳:169(68-419)µg/mL よりも潜在性 乳房炎乳:495(199-1,229µg/mL)が高く,さらに臨床 型乳房炎乳:849(318-2,270)µg/mL が高いことが明ら かとなっている(Kawai et al. 1999).またその他にLF と年齢や体細胞数の関係についても明らかにされている

(Hagiwara et al. 2003).

LFの抗菌活性

LF は静菌活性だけでなく,殺菌および抗真菌活性を 示すことが知られている(Orsi 2004; Jenssen et al. 2009;

Yen et al. 2011).静菌活性はアポラクトフェリンによ る鉄イオンのキレート化(Reiter et al. 1967; Arnold et al. 1980)によるものであるが,LFには細菌増殖を抑制 するいくつかの報告がある.例えば,LPSとの強力な結 合能力(Ellison et al. 1988)は,細菌の表面上のポーリン を閉塞する(Sallmann et al. 1999),細菌バイオフィル ム形成の阻害(Singh et al. 2002; Gomes et al. 2016),

リゾチーム(Suzuki et al. 1989; Ellison et al. 1991)ま たは免疫グロブリン A(IgA)(Watanabe et al. 1984)

との協力などがある.LF は殺菌作用,殺菌および免疫 能の刺激において深く関わっている.LF は,乳腺内で は乳腺上皮(Masson et al. 1966)および好中球の特殊 顆粒に存在し(Baggiolini et al. 1970),病原体の乳房内 侵入にともなって主に好中球の遊走,貪食に続いて特殊 顆粒から遊離(Lash et al. 1988)されることによって作 用を発揮するといわれている.乳房炎原因菌に対する LF の抗菌活性は,1970年代後半から報告されている.

乳房炎由来の細菌は,LF およびペプシンによって生成 されるLF加水分解物,ラクトパーオキシターゼ(LPO)

に対して異なる感受性または耐性を示すことが明らかに された(Kawai et al. 2007; Ishido et al. 2011)(表 1 ).

乳中では,LF だけでなく LPO,免疫グロブリン,リゾ チーム,β- デフェンシンなどが(Thompson-Crispi et al. 2014),細菌を不活性化し,乳腺組織表面への細菌の 付着を防ぎ毒素を中和している.

はじめに

ラクトフェリン(LF)は,トランスフェリンファミ リーのタンパク質に属する鉄結合糖タンパク質である.

従来報告されていたラクトフェリンの生物学的機能は,

主にその静菌活性(Reiter et al. 1967)にあったが,近 年ではラクトフェリンの多くの生物学的機能が発見さ れ,多機能性タンパク質として認識されている.ラクト フェリンの基本的な役割は,生体防御因子として働くこ とであり,乳汁中に分泌されるラクトフェリンは,母牛 と新生子の両方にとって重要な役割を果たしている.乳 中のラクトフェリンは,腸内細菌叢の形成や粘膜免疫,

全身免疫の活性化を助けることによって,新生子および 子牛の健康な成長を促進することが明らかとなっている

(Baldi et al. 2005; Prgomet et al. 2007; Sherman 2010).

一方,牛の乳房炎は乳牛の疾病の 3 割をも占め,量 的,質的に牛乳の生産性を低下させ,大きな経済的損失 をもたらしている.その上,牛の乳房炎は抗菌剤で治療 されるのが一般的であり,その偏重的な使用が耐性菌の 出現を助長しているといわれている.このような背景か ら,抗菌剤に頼らない非特異性生理活性物質による乳房 炎の予防,治療についての研究が盛んに行われるように なってきた.

ミルク中のLF濃度の変動

LF と乳房炎との関係に関する初期の報告は1970年代 頃から存在する.これら初期の研究では,泌乳ステージ において乳中 LF 濃度が変化することが明らかにされ た.初乳の LF 濃度は約2mg / mL までであり,その後 泌乳期のベースライン(0.02〜0.5mg / mL)まで徐々に 低下する(Harmon et al. 1975, 1976; Smith et al. 1977;

Suzuki et al. 1977; Gaunt et al. 1980).LFは,乳牛の乾 乳期に乳汁中濃度が上昇し,乳腺内侵入細菌の増殖を抑 制するなど,乳房炎の感染防御にも重要な役割を果たし ている(Nonnecke et al. 1984; Welty et al. 1976).また 泌乳期においては,分娩直前より乳汁中LF濃度が低下 することから,分娩直後の乳房炎発症に大きく関わって い る も の と 考 え ら れ て い る(McDonald et al. 1981a;

Nonnecke et al. 1984; Welty et al. 1976).泌乳期の乳中

生理活性タンパク質の応用研究からのアプローチ

牛乳房炎の予防と治療への可能性 非特異性生理活性物質:ラクトフェリン

麻布大学獣医学部 

河合 一洋

表 1  非定型BSEの歴史的背景 2001 Biacabeら,フランスでH-型BSEを報告 2 ) . 2002 Casaloneら,イタリアでL-型BSEを報告 (欧州プリオン学会)  1)  . 2003 Yamakawaら,日本で23か月齢BSEを報告 34) . 2006 日本厚生労働省研究班,日本で169か月齢の和牛においてL-型BSEを報告 35) . 2007 Jacobsら, 欧州全体の非定型BSEを報告 12) . 2008 Biacabeら, フランスの非定型BSEはBSE対策と無関係
図 5 .ワクチン投与と魚病被害状況
図 1 . LFH投与後の原因菌別体細胞数の推移(Kawai et  al. 2003)
図 7 . 血中サイトカインIFN-γ(A),IL- 6(B),IL- 4(C),IL-10(D),TGF-β(E)遺伝子発現の変化(La
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参照

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