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レール締結装置の性能照査に用いる荷重条件の算定 法に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

レール締結装置の性能照査に用いる荷重条件の算定 法に関する研究

弟子丸, 将

https://doi.org/10.15017/2534435

出版情報:九州大学, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

レール締結装置の性能照査に用いる荷重条件の算定法に関する研究

弟子丸 将

(3)

1

目 次

第1章 はじめに... 3

1.1 研究の背景 ... 3

1.2 本論文の構成 ... 4

第2章 基本的事項 ... 6

2.1 鉄道分野の専門用語 ... 6

2.2 略 称 ... 12

第3章 日本のレール締結装置の概要 ... 14

3.1 レール締結装置の性能・機能と分類 ... 14

3.2 レール締結装置に用いる材料 ... 16

3.2.1 締結ばね ... 16

3.2.2 締結ボルト ... 16

3.2.3 軌道パッド ... 16

3.2.4 横圧受け部材 ... 17

3.3 レール締結装置の変遷 ... 17

第4章 レール締結装置の性能確認試験と設計・性能照査法 ... 25

4.1 レール締結装置の性能確認試験 ... 25

4.1.1 日本における性能確認試験 ... 25

4.1.2 欧州における性能確認試験 ... 30

4.1.3 性能確認試験に関する日欧の差異 ... 30

4.2 レール締結装置の設計・性能照査 ... 32

4.2.1 レール締結装置の要求性能 ... 32

4.2.2 レール締結装置の基本性能と設計の留意点 ... 33

4.2.3 レール締結装置の照査 ... 35

4.2.4 疲労破壊に関する安全性の照査手順... 36

4.3 性能確認試験および性能照査を巡る国際動向 ... 41

第5章 レール小返り解析モデルの低弾性支持レール締結装置への適用 ... 43

5.1 課題と目的 ... 43

5.2 レール小返り解析モデルの概要と妥当性の検証 ... 45

5.2.1 解析モデル概要 ... 45

5.2.2 試験軌道による載荷試験 ... 47

5.2.3 試験結果による解析モデルの妥当性検証 ... 48

5.3 レール小返り解析モデルの低弾性締結装置への適用性の検証 ... 49

5.3.1 レール小返り解析モデルを用いた二方向載荷試験の荷重条件算定 ... 50

5.3.2 レール小返りモデルを用いた二方向載荷試験の荷重条件の算定 ... 51

(4)

2

5.3.3 考 察 ... 52

5.3.4 レール小返り角に対する摩擦の影響の検証 ... 54

5.4 載荷試験に関する日欧の試験方法の比較 ... 58

5.4.1 検討内容 ... 59

5.4.2 結果と考察 ... 61

5.5 まとめ ... 63

第6章 FEMレール小返り解析モデルの拡張と変動輪重係数への影響 ... 65

6.1 FEMレール小返り解析モデルとその拡張 ... 66

6.2 試験軌道の載荷試験 ... 67

6.2.1 試験の概要 ... 67

6.2.2 試験結果と考察 ... 69

6.3 拡張モデルの妥当性検証 ... 71

6.4 拡張モデルを用いた軌道支持状態のレール圧力への影響評価 ... 73

6.4.1 浮きの分布の影響 ... 73

6.4.2 浮き量の影響 ... 79

6.4.3 レール締結間隔の影響 ... 80

6.4.4 適正支持されたまくらぎの両側が浮きまくらぎ状態の場合の影響 ... 83

6.5 浮き量の実測値を導入したケーススタディ ... 84

6.6 考 察 ... 85

6.7 まとめ ... 86

第7章 研究のまとめと今後の展望 ... 88

7.1 結 論 ... 88

7.2 今後の展望 ... 89

7.3 公開論文等 ... 90

謝 辞 ... 93

(5)

3

第 1 章 はじめに

1.1 研究の背景

鉄道構造物等設計標準 軌道構造(以下,「軌道設計標準」)に準拠した日本のレール締結装置 の設計では,レール締結装置の要求性能として疲労破壊に関する安全性と電気絶縁に関する使用 性の2つを設定し,これを照査することとしている.このうち,疲労破壊に関する安全性の照査 では,レール締結装置の種別に応じて定まる設計作用に対する設計応答値を算定し,設計限界値 との比較によりその性能を照査することとなっている.

ここで,設計作用に対する設計応答値は,レール締結装置一組もしくは試験軌道に対して二方 向からの載荷試験を実施し算定する.このうち,締結装置一組に対する二方向からの載荷試験の 荷重条件は,従来,弾性支承上の梁の理論と過去に提案されたレール小返り理論を用いて一組の 締結装置に作用する分散荷重とレール小返り角の実用解を算定し,そのつり合いや試験用レール の形状を考慮して決定してきた.しかし,本手法では締結装置周りの各種ばね特性を線形と仮定 しており,照査対象が非線形性の影響が強く変位量が大きい低弾性支持のレール締結装置の場合,

レール小返り角の実用解と載荷試験で得られる結果に乖離が生じる問題が指摘されていた.この 課題に対し,従来手法に代わる算定精度を向上したレール小返り角および荷重分散の算定方法と して,複数のレール締結装置から構成され,締結装置周りの各種ばね特性を非線形で設定できる FEMレール小返り解析モデルが提案された.この解析モデルについては,比較的レールが剛に支 持されているバラスト軌道用レール締結装置のばね特性を考慮した場合については妥当性が検証 されているが,レールを低弾性に支持した締結装置のばね特性を適用した場合については未検証 であり,レール小返り解析モデルを用いて二方向載荷の荷重条件算定を行う手法がレール締結装 置一般を対象として汎用的に適用可能か検討されていなかった.

また,作用の特性値に変動輪重係数を乗じて求まる設計作用の鉛直方向成分に対し,締結装置 一組に作用する鉛直方向の分散荷重(レール圧力)を算定する際,従来手法とレール小返り解析 モデルによる方法のいずれを用いた場合も,レール圧力は全てのまくらぎが均一かつ適正に支持 された状態を前提としている.一方,実際の軌道ではまくらぎが適正に支持されていない等,軌 道支持状態が無視できず,適正支持状態と比較して大きなレール圧力が生じる可能性がある.し かし,軌道支持状態とレール圧力の関係についてこれまで検証されておらず,設計や性能照査の 上で考慮されていなかった.

これらの背景を踏まえ,低弾性支持のレール締結装置の特性を設定したレール小返り解析モデ ルを用いて解析を実施し,解析と同じ条件を設定した室内試験で得られた応答値との比較により 解析モデルの妥当性を確認した.また,締結装置一組に対する二方向載荷試験の荷重条件を従来 手法と解析モデルによる手法の二種類を用いて算定し,それぞれの荷重条件で実施した二方向載 荷試験の応答値と試験軌道に直接設計作用を載荷して得られた応答値を比較・検証し,解析モデ ルを適用した場合により試験軌道で得られた結果に近い結果が得られた.この結果より,締結装

(6)

4

置の性能照査において当該解析モデルを二方向載荷の荷重条件算定に用いることが妥当であるこ とを確認した.

また,レール小返り解析モデルのレール支承体下ばね特性に任意の軌道支持状態を反映する拡 張を行い,室内試験の結果を用いて拡張モデルの妥当性を確認した.この拡張モデルを用いて様々 な軌道支持状態を条件とするパラメトリックスタディを実施し,締結装置一組に作用するレール 圧力に対して軌道支持状態が及ぼす影響を検証した.さらに,軌道支持状態に関する実測値を拡 張モデルに適用したケーススタディにより実軌道上で生じるレール圧力を推定し,適正支持され た軌道支持条件下のレール圧力との比率であるレール圧力比を算定した.これらの結果に基づき,

軌道支持状態に応じたレール圧力の割増について検証を行った.

1.2 本論文の構成

第1章では,現在行われているレール締結装置の設計および性能照査について概略を説明し,

レール小返り角や分散荷重算定法の精度や設計作用算定に用いる変動係数に関する課題を含む背 景と研究の目的について述べる.

第2章では,本論文において用いた鉄道の軌道分野の専門用語および略語について技術的背景 を含めて概説する.

第3章では,日本のレール締結装置の基本となる性能や機能,分類といった基本事項,および 組立部材であるレール締結装置の構成材料について説明する.また,鉄道システム黎明期から今 日に至るまでの日本のレール締結装置の変遷について,技術的な側面から説明する.

第4章では,日本のレール締結装置の性能照査において,疲労破壊に関する安全性および電気 絶縁に関する使用性の照査を目的に実施されている各種の性能確認試験の目的と試験方法を説明 する.また,現在レール締結装置の性能確認試験の国際規格原案となっている欧州規格の概要と レール締結装置の性能確認試験に関する日欧の差異を整理する.さらに,疲労破壊に関する安全 性の照査手順を説明し,現在締結装置の性能照査を巡り課題となっている点について整理する.

第5章では,低弾性支持のレール締結装置の特性を設定したレール小返り解析モデルによる解 析と,同じレール締結装置を用いて実施した試験軌道に対する載荷試験の結果を比較し,解析モ デルの妥当性を検証した結果について述べる.さらに,従来手法と解析モデルによる手法の両方 で算定した二方向載荷の荷重条件を適用して実施した締結装置一組の載荷試験,および試験軌道 に対する載荷試験で得られた応答値を比較し,解析モデルを用いて決定した荷重条件の妥当性を 確認する.この結果を踏まえて,レール小返り解析モデルがレール締結装置一般を対象として汎 用的に二方向載荷試験の荷重条件算定に用いることが可能であるか検証する.

第6章では,レール小返り解析モデルの支承体下ばね特性に軌道支持状態を反映する拡張を行

(7)

5

い,まくらぎの浮きの分布や浮き量といった浮きまくらぎ状態を設定して設計作用を載荷する解 析を実施する.また,解析と同じ軌道条件を設定した試験軌道に対して設計作用を載荷する試験 を実施し,まくらぎ鉛直変位の比較により拡張モデルの妥当性を検証する.この拡張モデルを用 いて軌道支持状態を条件とするパラメトリックスタディを行い,レール圧力と浮きの分布および 浮き量といった軌道支持状態の関係を検証する.さらに,まくらぎの浮き量に関する実測値を解 析モデルに反映して設計作用を載荷するケーススタディを行い,各まくらぎに生じるレール圧力 およびレール圧力比を算定し,レール圧力比と静止輪重に対する輪重変動の増加割合を乗じて得 られる見かけ上の変動輪重係数,および現行の変動輪重係数の関係について検証する.

第7章では,本研究で得られた結論を記し,今後の展望について述べ,本論文の結論とする.

(8)

6

第 2 章 基本的事項

2.1 鉄道分野の専門用語

本論文では,以下に述べる鉄道分野の技術用語を用いる.

2.1.1 軌 道

列車または車両を走らせるための通路のこと.軌道及びこれを支持するために必要な路盤,構 造物を包含している地帯(線路)のうち,施工基面上の道床および軌きょう(レールとまくらぎ を組み立てたもの,またはこれに類するもの)と,直接これに付帯する設備のこと(図2-1).

2.1.2 軌道部材

軌道を構成する部材の総称.レール,レール締結装置,まくらぎ,軌道スラブ,道床,路盤等 がある.

2.1.3 レール

鉄道軌道において,車輪を直接支持し,誘導する機能を持つ軌道部材のこと.日本ではその 断面形状が日本工業規格(JIS)に規定されている.代表的なレール断面としてJIS 50kgNレ

ールやJIS 60kgレールがある(図2-2).一般に日本では長さ25mのレールを定尺レールとい

い,これより短いものを短尺レール,長いものを長尺レールという.また,レール間を溶接し て150m以上連続した一本のレールとしたものをロングレールという.

2.1.4 (レールの)小返り

車両からレールに力が作用した際,レールが傾斜してねじれる.この傾斜とねじれを合わせ たレールの挙動のことを小返りといい,その際のレールの傾斜角度のことをレール小返り角と いう.

図 2-1 軌道の概要(バラスト軌道の例)

レール まくらぎ

道床 施工基面

路 盤

軌きょう

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7 2.1.5 レール締結装置

レールをまくらぎ等に締結し,軌間を保持する機能を持つ軌道部材のこと.要求性能に応じ て金属,ゴム材料,樹脂材料等の様々な材料から成り立つ組立部材である.

2.1.6 輪 重

鉄道車両が線路上を走行する際にレール・車輪間に作用する力のうち,レールに対して垂直 な面内にある上下方向成分の分力のこと.車両の重量を支える力としての静的輪重と,車両の運 動に伴い発生する変動分の和で表される(図2-3).

2.1.7 輪重変動

車両の静止状態における1車輪当りの荷重を静止輪重というのに対し,走行することにより 発生する動的輪重から静止輪重を差し引いた変動分の荷重のこと.

2.1.8 横 圧

車輪・レール間に作用する力のうち,レール長手方向に対して垂直な平面内にある左右方向 成分の分力のこと(図2-3).

2.1.9 レール圧力

輪重がレールを介して伝達する際,レール締結装置一組に作用する鉛直方向の分散荷重のこ と.圧力と称されているが,一般の圧力と異なり力の次元をもつ.レールの鉛直曲げ剛性およ び軌道の弾性により隣接するレール締結装置へ荷重が分散するため,輪重そのものより小さく なる(図2-4).一般に,軌道の総合ばね定数(レール下のばね特性およびレール支承体下ばね

図 2-2 JIS 50kgN レールおよび 60kg レールの断面形状 (単位:mm)

(a) JIS 50kgN レール (a) JIS 60kg レール

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8

特性の合成値)が小さくなるほど,荷重が広範囲に分散し載荷点直下のレール締結装置一組に 作用するレール圧力も小さくなる傾向にある.

輪重

横圧

(軌間内側) (軌間外側)

図 2-3 輪重と横圧の関係 レール 車輪

レール小返り角

レール圧力

輪重の作用位置

レール圧力分布

(ばね定数が大の場合)

レール圧力分布

(ばね定数が小の場合)

軌道パッド まくらぎ

レール

図 2-4 輪重とレール圧力の関係

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9 2.1.10 (軌道構造の)設計

要求される性能を念頭において計画された軌道構造または軌道部材の形を創造し,性能を照 査し,設計図を作製するまでの一連の作業のこと.

2.1.11 (軌道構造の)照査

軌道構造や軌道部材が,要求性能を満たしているか否か,適切な供試体による確認実験や,

経験的かつ理論的確証のある解析,経験的に定められ実証されている仕様に基づく方法により 判定する行為のこと.

2.1.12 (レール締結装置の)設計作用

設計対象の軌道構造または軌道部材に働く作用のことで,作用の特性値に作用係数を乗じた 値として定義される.ここで,レール締結装置の疲労破壊に関する安全性の照査に用いる作用 の特性値は,各種の作用のうち列車走行に伴う荷重とし,かつ静的輪重に変動輪重係数や変動 横圧係数を乗じて定常分と変動分の和として算定する.

レール締結装置の設計では,A 荷重(極まれに発生する極大荷重)に区分される変動係数を 乗じて得られた設計作用のことを「設計A荷重」,B荷重(しばしば発生する最大荷重)に区分 される変動係数を乗じて得られた設計作用のことを「設計B荷重」といい,鉛直方向成分と水 平方向成分がそれぞれ算定される.

2.1.13 (レール締結装置の)変動係数

設計作用を算定する際,作用の特性値に乗じる係数のこと.その作用方向によって変動輪重 係数と変動横圧係数に分類される.設計A荷重と設計B荷重それぞれに対応する変動係数が設 定されている.また,変動係数は新幹線と在来線で異なる値が設定されており,在来線につい ては曲線半径によって更に3種類に区分される.

2.1.14 締結ばね

レール締結装置の構成部材のうち,レールを直接もしくは間接的に押さえ,レールの小返り を抑制し,2本のレール間の間隔(軌間)の拡大を防止するための部材のこと.

2.1.15 軌道パッド

レールとまくらぎ,タイプレートまたはスラブなどの支承体の間に挿入する緩衝用の板状の 部材のこと.木まくらぎと犬くぎによる一般締結のレールとレール支承体間や,タイプレート とレール支承体間に挿入してまくらぎへの食込み防止を目的とするものを第一種軌道パッド,

二重弾性レール締結装置を構成し,衝撃荷重の緩和と必要なレールふく進抵抗力の調整を目的 としたものを第二種軌道パッドという.PCまくらぎや軌道スラブ上で使用される場合,その表 面を保護する機能およびレールとレール支承体間を電気的に絶縁する機能もある.

(12)

10 2.1.16 レール支承体

レールやレール締結装置と軌道の下部構造の道床や路盤の間に設置され,鉄道車両走行時に 車輪からレールに伝達した輪重および横圧を下部構造に伝達する部材のこと.バラスト軌道で はまくらぎ,直結系軌道では軌道スラブや弾性まくらぎ,縦まくらぎがこれに相当する.

2.1.17 まくらぎ

レールを固定し軌間を正確に保持するとともに,レールから伝達される列車荷重を広く道床 に分散させるため,レールと道床の間に設置される軌道の重要な構成部材.従来は木材を素材 としていたことから「枕木」と表記していたが,現在ではコンクリート,鉄鋼,合成樹脂など の材料が使用されているため「まくらぎ」と表記する,

2.1.18 バラスト軌道

鉄道線路に敷設される一般的な軌道構造で,主に道床バラスト(砕石),まくらぎ,レールお よびレール締結装置から構成される(図2-5).建設コストが安価で施工速度も速く,補修も容 易であることから今日まで広く採用されてきている.しかし,列車荷重が繰返し作用すること により,道床バラストが沈下を生じて軌道変位が漸進するため,定期的な補修を繰返しながら 維持管理する必要がある.

2.1.19 直結系軌道

軌道の維持管理の省力化を図るために開発された軌道の一種で,道床バラストを介さずにレ ール支承体を路盤に直接設置する軌道のこと.日本で用いられている代表的な直結系軌道とし て,コンクリートなどの路盤上に直接軌道スラブを据え付け,路盤との隙間調整と弾性付加の

図 2-5 バラスト軌道の概要

PC まくらぎ レール

バラスト道床

レール締結装置

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ためセメントアスファルトモルタルを注入して固定した後,レール締結装置を介してレールを 締結したスラブ軌道がある(図2-6).また,弾性まくらぎをコンクリート路盤に直接設置する 弾性まくらぎ直結軌道は,高架橋上における振動および騒音対策のために使用されている.土 構造物に対しては,アスファルト路盤に直接まくらぎを設置するアスファルト路盤直結軌道が ある.

2.1.20 レール押え力

締結ばねがレールを押える際,一つの締結ばねがレールを押える力の鉛直方向成分のこと.

レール押え力が高いほどレールの小返り抵抗が高く,レールの小返りが低減される.一方,レ ール長手方向にレールが移動する現象であるレールのふく進に抵抗し,レール・締結ばね間お よびレール・軌道パッド間に生じる摩擦力の和であるレールふく進抵抗力は一般に増加する.

2.1.21 レール締結間隔

レールがレール締結装置によって離散支持される場合,レール長手方向に敷設されたレール 締結装置の設置間隔のこと.線路の重要度によってまくらぎ本数が定まる時,一般に定尺レー ルの長さ 25m を敷設されるレール締結装置もしくはまくらぎの数量で除した長さに相当する.

2.1.22 レール長手方向,レール直角方向,レール鉛直方向

軌道の分野では,構造物の橋軸方向にあたる方向をレール長手方向(レール長さ方向)と定 義する.一方,レール長手方向と直交するレール断面において,水平方向の軸をレール直角方 向,上下方向の軸をレール鉛直方向と定義する(図2-7).

なお,軌道変位の観点から,レール水平方向の軌道変位を通り変位,レール鉛直方向の軌道 変位を高低変位という.

図 2-6 直結系軌道(スラブ軌道)の概要 レール締結装置

レール

軌道スラブ

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2.2 略 称

2.2.1 ISO

一般に国際規格と呼ばれる規格を開発する組織のうち,電気・電子システムに関連する規格 を取り扱うIEC(International Electrotechnical Commission,国際電気標準会議)および電 気通信関連規格を取り扱う ITU(International Telecommunication Union,国際電気通信連 合)を除く分野の国際規格を取り扱う非政府組織のこと.International Organization for

Standardizationの略である.

1947年に,活動停止状態にあった万国規格統一協会(ISA)を発展させて設立され,日本は 1952年に経済産業省に設置された審議会である日本工業標準調査会(JISC)が加盟した.本部 はスイスのジュネーブに置かれている.

2.2.2 EN

ヨーロッパの地域規格である欧州規格(European Norm)の略.欧州標準化委員会(Comité Européen de Normalisation,CEN)および欧州電気標準化委員会(Comité Européen de

Normalisation Electrotechnique,CENELEC)によって開発されており,国際規格とは ISO

とCENが,IECとCENELECがそれぞれ対応する.

参考文献

[2-1] 公益財団法人鉄道総合技術研究所,公益社団法人日本鉄道施設協会:わかりやすい鉄道技

術 1.鉄道概論・土木編,2003.5.

[2-2] 日本工業規格 JIS E1101:2001 鉄道―線路用語

レール鉛直方向

レール直角方向 レール長手方向

図 2-7 レール長手・直角・鉛直方向 レール

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13

[2-3] 公益財団法人 鉄道総合技術研究所編:第3版 鉄道技術用語辞典,2016.12.

[2-4] 国土交通省鉄道局監修・鉄道総合技術研究所編:鉄道構造物等設計標準・同解説 軌道構

造,2012.1.

[2-5] 日本工業標準調査会(JISC)ホームページ,https://www.jisc.go.jp/international/

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第 3 章 日本のレール締結装置の概要

鉄道システムは車両や構造物,軌道,信号・情報,電気等,様々な要素が複合的・有機的に組み 合わされて成立する,高度に統合されたシステムである.このうち,レール締結装置は鉄道シス テムの中で鉄道特有の軌道を構成する要素のうち,2本のレールをまくらぎ等のレール支承体に 締結し,軌間と呼ばれる2本のレール間の距離が拡大もしくは縮小し車両の走行安全性に支障の ないよう保持すると共に,車両走行時に車輪を介して軌道に伝達される種々の荷重や振動に抵抗 し,これらを下部構造のレール支承体に伝達する装置全体のことを指す.その主な構成はレール を締結する締結ばね,レールに作用する水平方向の荷重を支持する横圧受部材および鉛直方向の 荷重を支持する軌道パッド等である.

本章ではこのレール締結装置について,その主たる要求性能や機能,分類といった基本事項に ついて述べたうえで,日本の鉄道システムの黎明期から今日に至るまでのレール締結装置の変遷 を概説する.

3.1 レール締結装置の性能・機能と分類

レール締結装置に求められる性能・機能は,そのレール支承体の種類や信号等の保安システム の条件等により異なる.表 3-1に主な機能を列挙する.ここに示した機能の全てを一組のレール 締結装置で満足することが理想であるが,軌間を保持するといった基本的なものの他の機能の中 には相反するものもあることから,対象となる軌道の設計条件を勘案し取捨選択していくつかの 機能に限定して具備するよう,レール締結装置を設計するのが実際である.

なお,レール締結装置においてレール鉛直方向およびレール直角方向のレール位置の調節を行 うという発想は,旧来よりきめ細かな軌道保守を行ってきた日本の伝統であり貴重な技術である.

この調節性は世界をリードする新幹線においてスラブ軌道を可能にした重要なファクターであり,

特に直結系軌道での必須条件となっている.したがって,設計段階で軌道構造や支承体下部の施 工精度,沈下特性等を考慮し,実用上の調整量を検討し設計に反映させることが重要である.

レール締結装置の分類については,軌道構造,レール形式,線級別,線形条件,締結構造等,

様々な分類方法があるが,一例として軌道構造の種別で分類した場合はバラスト軌道用と直結系 軌道用に分類され,レール支承体の特徴によっては木まくらぎ用,コンクリートまくらぎ用,ス ラブ軌道用,鋼橋直結軌道用の4種類に分類することができる(図3-1).

また,レール締結装置に使用されている部材の種別も多岐にわたるため,現在 JR 各社で使用 しているものだけでも100種類以上の形式があり,公営交通および民鉄で使用されているものを 含めると200種類程度に達する.これは,対象となる軌道構造の部材・形状・種別に基づく物理 的な制約やレール締結装置に要求される機能の多様化,具体的には安全性は勿論のこと,製作性,

施工性,保守性および経済性などの各要素が複雑に関連しているためである.

(17)

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表 3-1 レール締結装置に求められる機能

項 目 具体的な機能

軌間の保持 支承体上にレールを固定(締結)する.

支承体の保護 レールから伝わる衝撃力を緩和する.

荷重分散効果 車両からレールに伝わる上下および横方向力を適度 に分散させる.

横圧強度 レールから伝わる水平力に抵抗する.

耐小返り性能 レールの小返りに抵抗する.

軌きょう剛性 レールの水平面内回転に抵抗する.

調節性 レール面の高低および通り方向の調節を可能にする.

レール押さえ力

ふく進抵抗力 一定条件下でレールを支承体上で滑動させる.

電気絶縁抵抗性 レールと支承体の間を電気的に絶縁する.

調達性・汎用性 大量生産が可能で安価である.

振動低減性能 レールから支承体に伝わる振動を低減する.

図 3-1 レール支承体によるレール締結装置の分類

(a)バラスト軌道用

(b)直結系軌道用

i) 木まくらぎ用(F 形) ii) コンクリートまくらぎ用(9 形)

i) 軌道スラブ用(直結 8 形) ii) 鋼橋用(鋼直 5 形)

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16

3.2 レール締結装置に用いる材料

レール締結装置は多種の部材から構成される組立部材であり,用いられる部材の種別はレール 締結装置の構造に応じて異なる.構成する部材の材料は,JIS(日本工業規格)のうち,JIS E 1118

「PCまくらぎ用レール締結装置」やJIS E 1117「緩衝用軌道パッド」で規定する以外は,所用 のJIS規格に基づく強度や耐久性が保証されているものとする.

一般に,締結ばねやボルトには強度の高い金属材料が,軌道パッドにはゴム系材料が,電気絶 縁性の確保にはプラスチック材料が用いられている.このうち,金属材料については,JIS にお いて種々の材質の特性が規格化されているが,その他の材料は原料の配合状態により種々の性能 が得られる.以下に主な構成部材の材料特性とその留意点を示す.

3.2.1 締結ばね

レール締結装置の一般的な締結ばねの材料として,JIS 規格のばね鋼材が用いられている.

このばね鋼に発生する応力および耐久性の評価については次章以降に詳説するが,材料により 定まる耐久限度線図(修正 Goodman線図)が示されており,これを用いて評価を行うことが 可能である.具体的には,耐久限度線図に締結ばねに生じた平均応力と変動応力の関係をプロ ットし,その点が限度線図中のどの位置にプロットされるかによって評価を行う.

なお,締結ばねはその形状から板状のばね鋼材を曲げ加工した板ばねと棒鋼を曲げ加工した 線ばねに分類できるが,板ばね形式の場合はその湾曲部の内側に発生する圧縮の応力について は,曲がり梁に対する補正により引張の応力に変換する必要がある.また,締結ばねが横圧受 け部材を兼ねている場合は,横圧受け部材に発生する応力を平均応力および変動応力に加算す る必要がある.

3.2.2 締結ボルト

締結ばねの締結にボルトを用いる場合,そのボルトの所要の性能として,永久変形を起こさ せない,あるいは折損をさせないことが軌道構造設計標準のレール締結装置に用いる材料の所 用の性能として示されているが,一般にはボルトの安全率を3としており,使用材料の引張強 さの三分の一を所要の性能としている.例えば,ボルトの材質がJISに定めるSS400の場合は 引張強さが400N/mm2以上であるから,求められる強度は133N/mm2以上となる.ボルトに生 じる引張応力はこの所要性能を満足する必要がある.

3.2.3 軌道パッド

一般にSBR(スチレン・ブタジエン共重合ゴム)製の軌道パッドに求められる所要の性能は,

①常時受ける荷重に対して平均圧縮応力が2 N/mm2以下,②軌道パッドの端部での最大圧縮応

力が4 N/mm2以下,および③平均ひずみが10%以下,の各項目である.なお,近年では軌道パ

ッドにSBR以外の材料(ウレタン,EPDM,等)も使用されるようになっており,これらの材 料を使用する場合は,その材料特性を十分考慮し所用の性能を個別に設定する必要がある.

(19)

17 3.2.4 横圧受け部材

横圧受け部材とは,レール締結装置の中でレールに作用する横圧が直接負荷され伝達する部 材のことであり,図 3-2 に示すようにその横圧受け方式によって材料は様々であるが,主に金 属材料や樹脂材料が用いられる.

横圧受け部材に金属材料が用いられ,かつレールの小返りによる影響を受けない場合には,

締結ばねと同様に耐久限度線図で強度を評価する.樹脂材料が用いられる場合には,その材料 の圧縮強さの半分を所要の性能とし,応答値が所要の強度以内であることを評価する.また,

横圧受け部材としてタイプレートを用いた場合は,タイプレートの締結力やタイプレートと絶 縁板の摩擦係数を考慮し,レール横圧力に対してタイプレートが滑動を生じないことを評価す る.

3.3 レール締結装置の変遷

日本では鉄道の黎明期よりレールの締結方法として木まくらぎに犬くぎもしくはねじくぎを用 いてレールを締結する一般締結,いわゆるレールをレール支承体に剛に締結する方式が用いられ てきた(図3-3(a)).しかし,この方式ではレール締結装置の機能のうち単純な軌間保持が主であ り,横圧に対する抵抗やレール小返りの抑制に対してはタイプレート(金属製の床板)やチョッ ク(レール小返りの抑制を目的にレール腹部に設置される部材)の併用,レールのふく進に対し てはアンチクリーパー(まくらぎとレールの間に装着し,レールのふく進抵抗力を向上させる軌 道部材の一種)の適用等のように一部の機能を他の軌道部材と併用することによって実現させる 必要があった.また,列車の高速化,車両重量の増加,輸送量の増加により増大する軌道破壊に 対処するために進められた軌道の強化策である PC まくらぎ化,レール断面の大型化およびロン グレール化に対し,一般締結方式のレール締結装置を適用した軌道の保守が困難となっていた.

そこで,レール締結装置の機能向上を目的として開発が進められたのが弾性締結である.その 主な特徴は次のとおりである.

○ 列車走行によるレール変位に追随でき,レール押え力の安定性が得られる.

○ レールとまくらぎが常に密着した状態で使用されることから,両者間の衝撃力が生じない.

図 3-2 横圧受け部材による横圧受け方式の分類

(a) 支承体ショルダー (b) 埋込部材 (c) タイプレートショルダー ばね受け台 締結ばね

ショルダー

タイプレート

埋込カラー アンカーボルト タイプレートショルダー

(20)

18

○ 軌道パッドの緩衝効果や振動減衰効果によりレールに生じる動的振動のまくらぎおよび道床 への伝達が軽減され,道床沈下等の道床破壊を抑制できる.

○ 弾性的にレールを支持することから列車荷重を分散させ,レール締結装置一組に作用する鉛 直方向荷重を軽減できる.

○ レールの水平方向にも弾性を付与可能であり,横圧を分散させてレール締結装置一組に作用 する水平方向荷重を軽減できる.

○ 軌道パッド等の構成部材によりレール締結装置に必要となる電気絶縁抵抗性が得られる.

弾性締結方式のうち,二重弾性締結方式(図 3-3(b))はレールを上下二方向からばねで弾性支 持する構造であり,日本国内で開発されたレール締結装置の主流であると共に多くの利点を有し ている.ここで,二重弾性締結では弾性変形を利用しているため,一般締結と比較して各部材の 変位や発生応力が大きくなる.このため,設計・性能照査において荷重の検討と変位や応力とい った応答値の照査が必要となる.また,実用化に際して疲労耐久性の確認が必須である.

歴史的にみると,1960年代には軌道強化の一環で在来線用の3号まくらぎ,さらに新幹線用の 3Tまくらぎ等,現在に至るまで使用されているPCまくらぎが相次いで開発され主要線区に敷設 されたが,これと併せてこれらの PC まくらぎに適用する弾性締結方式のレール締結装置が開発 された.例えば,新幹線用に開発された3Tまくらぎ用として採用され,以降のPCまくらぎ用レ ール締結装置の基本形式となったレール締結装置(102形,図3-4)では,この二重弾性締結方式 を採用しており,東海道新幹線における210km/h走行を実現した重要な技術の一つとなった.ま た,二重弾性締結方式はその後日本のみならず欧州をはじめとする世界の高速鉄道の軌道におい て主流の方式となって広く採用されている.

さらに 1970 年代に入ると,世界に先駆けて国産の省力化軌道であるスラブ軌道が開発され,

そのレール支承体である軌道スラブに対応したレール締結装置として,直結4形,直結5形,直 図 3-3 一般締結と二重弾性締結の概念図

(b)二重弾性締結

(a)一般締結 レール

犬くぎ等

レール支承体 レール支承体

レール

締結ばね

軌道パッド

(21)

19

結7形が開発された.さらに,1978年には直結5形の改良版として直結8形レール締結装置(図

3-5)が旧国鉄の社内規格であるJRS(Japan Railway Standard)にて規格化された.これらの

レール締結装置では二重弾性締結方式が採用されたほか,設計段階から直結系軌道で特に必要と なるレール鉛直方向およびレール直角方向のレール位置の調節量が十分考慮され,きめ細やかな 保守管理を実現すると共に,レールの温度伸縮に伴い生じレール締結装置を介して鉄道構造物に 作用する荷重を制限する目的で,レール長さ方向に一定以上の力が作用した場合にレール締結装 置上でレールが滑動する機能を具備している.特に,直結8形については開発から30年以上経っ た現在でも,締結ばねの形状・寸法やタイプレートの固定方法等,種々のマイナーチェンジを経 て,完成度の高い多機能なレール締結装置として新幹線をはじめとするスラブ軌道等の直結系軌 道で多く使用されており,日本のレール締結装置を巡る技術の集大成となっている.

図 3-4 新幹線用 102 形レール締結装置 レール

締結ばね

軌道パッド

ばね受け台

(横圧受け装置)

締結ボルト

埋込栓

図 3-5 直結 8 形レール締結装置 レール

締結ばね

軌道パッド 絶縁板

タイプレート

(横圧受け装置)

締結ボルト・ナット

可変パッド

アンカーボルト

(22)

20

また,1970年代後半になるとPCまくらぎおよびレール締結装置の損傷劣化が急増したことか ら,在来線用の既存の各種PCまくらぎ用5形,9形,10形レール締結装置の改良設計が行われ た.具体的には板ばねを主とした改良であり,従来の板ばねと比較してレール押え力の安定化を 図るために締結ばねの先端ばね定数を低減したほか,締結ばねのボルト穴部の応力緩和と調和を 図る目的で,それまで2枚の板ばねを組み合わせて使用してきた締結ばねを一体化し,一枚のば ねを湾曲させ,締結すると上側と下側のばねが接触する二重ばね形式化が推し進められた(図3- 6).以降の締結ばねについては,このように一枚ばねを組み合わせた二枚ばね形式から二重ばね 形式に移行し,現在主流となっている.

このように弾性締結化,そしてレール支承体の進化と共に発展してきた日本のレール締結装置 であるが,近年海外,特に欧州で開発されたレール締結装置の普及が進んでおり(図3-7),特に 英国・Pandrol 社製のレール締結装置のように締結ボルトを用いずにレールを線ばねクリップで 締結する,いわゆる無螺締式のレール締結装置については,締結ボルトのトルクや締結状態の管 理が不要となり保守性の向上が期待できることからその使用が拡大している.

図 3-6 締結ばねの変遷(5 形レール締結装置の例)

(a)旧 5 形レール締結装置

(b)5 形レール締結装置

(c)5N 形レール締結装置

・二重ばね化

・ゲージブロック改良

・締結ばね改良に伴う ゲージブロックの省略

・板ばねの下側で横圧 に抵抗

締結ばね

ゲージブロック 受栓

(23)

21

図 3-7 海外で開発されたレール締結装置の例

(a) Pandrol 社製 e2009 形(線ばね方式,無螺締)

(b)Nabla 形(板ばね方式,螺締)

(c) Vossloh 社製 SKL21 形(線ばね方式,螺締)

線ばねクリップ インシュレーター

ショルダー

軌道パッド

絶縁ブロック 板ばね

軌道パッド 締結ボルト

締結ばね インシュレーター

締結ボルト

軌道パッド

(24)

22

また,近年では軌間拡大の防止といった安全性に関わる基本かつ重要な機能を具備しているこ とは勿論,更なる付加機能が求められるようになっている.例えば,鉄道沿線の環境問題への対 応のニーズが高まっていることから,振動や騒音の低減に寄与することが期待できる構造・機能 を有するレール締結装置が開発され,既に実軌道に敷設されている(図3-8)[3-9].また,軌道と 密接な関係にある構造物側の施工上の要求性能に対応して,一部の機能(調整性)に特化して性 能を向上させたレール締結装置も開発されている(図3-9)[3-10].

図 3-8 防振形レール締結装置の例

(VFF 形レール締結装置)

レール

締結ボルト・ナット アンカーボルト

締結ばね

調整パッキン 下タイプレート

上タイプレート 防振タイプレート

図 3-9 本節利用工事桁用レール締結装置(JIS 50kgN レール用,板ばね締結方式)

両ねじボルト レール 板ばね

調整座金

調整用鋼板(厚さ 10mm)

調整座金 タイプレート

組合せにより通りを調整 ナット

(平面図)

(断面図)

高低調整+10mm

通り低調整±20mm

(25)

23

表3-2に日本国内で使用されている代表的なレール締結装置の性能を示す[3-11].海外で開発・

製造されたレール締結装置,すなわちPandrol社製のe2009形やNabla形,Vossloh社製のSKL21 形といったレール締結装置のレール押さえ力は国内製の102形等の2倍の約20kN/組である.こ れは日本と海外で比較して,レール締結装置に求められるレールふく進抵抗力に関する考え方の 違いを端的に表している.具体的には,日本ではレールの温度伸縮に起因して発生するレール軸 力が軌道から構造物側に伝達して構造物を破壊するといった事象を防止するため,一定以上のレ ール軸力が作用した際にレール締結装置でレールが滑動して一定以上の力が構造物側に伝達しな いように設計されており,この設計思想により軌道と構造物が調和した経済的な設計を実現して いる.これに対し,海外では発生するレール軸力が全て構造物に伝達しても構造物側が破壊する といった不具合が生じないよう,十分な強度を予め設計において考慮してあること,および軌道 の保守性を考慮しレールの移動(ふく進)を抑制する観点から,レール締結装置でレールを極力 強く締結するという設計思想に基づき設計されている.

国内開発品および Vossloh SKL21 形では二重ばね方式を採用しており,締結ばねの先端ばね 定数が標準締結状態を境に二段線形を示す.これは,レールが沈下する方向の追随性を示す先端 ばね定数が小さく,レール小返りに抵抗する挙動を示す先端ばね定数が大きいといった特性を有 する.一方,Pandrol社製e2009形については締結ばねが片持ち梁となってレールを押えるため,

その先端ばね特性はほぼ一定の線形特性となっており,同じ設計作用に対し二重ばね方式と比較 してレール小返り角が大きくなる傾向にある.

また,国内開発品で使用される軌道パッドは海外開発品と比較して柔らかく,鉛直ばね定数が 小さいという特徴がある.

表 3-2 主なレール締結装置とその性能諸元

性 能 単 位

国内開発品

海外開発品

在来線用 新幹線用

5 形 9 形 102 形 直結 8 形

Pandrol

e2009 形 Nabla 形 Vossloh SKL21 形 レール押え力 kN/組 5.0×2 5.0×2 6.5×2 3.1×2 12×2 10×2 10×2

ふく進抵抗力 kN/組 12 9 7 3.5 16.5 22 13

先端ばね定数 1 MN/m 0.6 0.3 0.4 0.5 1.2 4 0.8 先端ばね定数 2 MN/m 7 6 4.2 8.5 1.2 4 11 鉛直ばね定数 MN/m 110 110 50 60 1670 150 220

横ばね定数 MN/m 43 35 38 - 130 50 -

ばね定着方式 - ねじ ねじ ねじ ねじ 埋込み材

(ショルダー) ねじ ねじ

高低調節量 mm - - - +30 - - -

通り調節量 mm ±1.5 ±5.0 ±2.0 ±10 - - -

※ 先端ばね定数 1:レール沈下に追随する先端ばね定数

※ 先端ばね定数 2:レール小返りに抵抗する先端ばね定数

(26)

24 参考文献

[3-1] 社団法人日本鉄道施設協会 締結装置研究部ループ編:締結装置便覧(昭和59年改訂),

1985.

[3-2] 豊田昌義:レール締結装置の構造・機能について,鉄道技術研究報告,No.861(施設編

Vol.388),1973.8.

[3-3] 梅田静也,熊崎弘:3号PCまくらぎ用5形改良形レール締結装置の開発,鉄道技術研究

報告,No.1332(施設編Vol.583),1986.9.

[3-4] 弟子丸将:鉄道技術 来し方行く末 レール締結装置,RRR,公益財団法人鉄道総合技術

研究所,Vol.74 No.11,pp.28-31,2017.11

[3-5] 長藤敬晴:軌道を構成する材料(5) レール締結装置-1,日本鉄道施設協会誌,1992.1.

[3-6] 長藤敬晴:軌道を構成する材料(6) レール締結装置-2,日本鉄道施設協会誌,1992.2.

[3-7] 宮本俊光,渡邊偕年:線路,山海堂,1988.8.

[3-8] 佐藤裕:軌道力学,鉄道現業社,1972.8.

[3-9] 阿部則次,長藤敬晴,船田智巳,松川浩和,熊崎弘:防振形レール締結装置の開発,鉄道

総研報告,9巻12号,pp.13-18,1995.12.

[3-10] 弟子丸将,西原敬人,飯田政已,玉川新悟:本設利用工事桁用レール締結装置の開発,

鉄道総研報告,28巻6号,pp.5-10,2014.6.

[3-11] 新版軌道材料編集委員会編:新版 軌道材料,pp.286,鉄道現業社,2011.5.

(27)

25

第 4 章 レール締結装置の性能確認試験と設計・性能照査法

レール締結装置の性能を確認する目的で各種の試験の方法が規定されており,これに基づき試 験が実施されている.本章ではレール締結装置の性能確認試験の概要を説明したうえで,鉄道構 造物等設計標準・同解説 軌道構造(軌道設計標準)で規定する性能照査と各種試験方法の関係 性について概説する.

4.1 レール締結装置の性能確認試験

4.1.1 日本における性能確認試験

日本のレール締結装置の設計および性能確認手法は,旧日本国有鉄道・鉄道技術研究所(鉄道 技研)において,東海道新幹線開業に向けた各種分野での技術開発の過程で確立され,現在まで 適用され続けている.この性能確認のために実施されている試験は主に 6種類あり,その概要は 以下に示す通りである.

a) 組立試験

レール締結装置を構成する部材を用いて実際にレール締結装置を組み立て,レール締結装置が 設計通りに構成でき,かつ適切にレールを締結できることを確認する試験である.試験機を使う ものではなく,例えば螺定式のレール締結装置であれば締結ボルト・ナットを所定の締結トルク で締結した際,設計通りの締結ばねの形状(ばね間の密着状態,等)になるかといった点を確認 するものである.

b) 各種ばね定数試験

ばね定数試験では,図4-1に示すような鉛直,先端,横方向の3種類のレール締結装置周りの ばね特性の試験を実施し,後述するレール締結装置の静的載荷試験および動的載荷試験に用いる 荷重を算定するためのパラメータを取得するために実施する.

このうち,鉛直ばね定数試験は軌道パッドを含めたレール締結装置のレール鉛直方向下向きの ばね特性を取得する目的で実施する.先端ばね定数試験は締結ばねのレール鉛直方向のばね特性 を把握するために実施するものであり,その測定過程でレールの押え力を把握するものである.

また,横方向ばね定数試験についてはレール締結装置のレール直角方向のばね特性を把握するも のである.なお,横方向ばね定数試験では,レール締結装置の横圧受け装置に作用するレール横 圧力に対する抵抗力(横圧強度)を確認する試験を兼ねることがある.

これらの試験で得られたパラメータは,レール締結装置一組で実施する静的・動的な二方向載 荷試験に用いる荷重条件算定の際,必要となるレール圧力やレール横圧力を算定するのに用いら れる.

(28)

26 c) ふく進抵抗試験

ふく進抵抗試験(図4-2)は,レール締結装置一組で構成した試験体について,レールをレール 長手方向に載荷してレールが滑動する際の荷重であるレールふく進抵抗力を測定するものである.

特に直結系軌道では,レールふく進抵抗力が大きい場合,レールの温度伸縮により生じるレー ル軸力がレール締結装置を介して下部の構造物に伝達し構造物の支承に過度の荷重が作用して最 悪の場合破壊することが懸念される.一方,レールふく進抵抗力が小さい場合は,レールに生じ る引張軸力によりロングレール軌道におけるレール破断時開口量が限界値を超過して安全性に支 障をきたす可能性がある.この理由より,レール締結装置におけるレールふく進抵抗力が制限さ れる.一般に,直結系軌道ではレールふく進抵抗力を 1軌道あたり10kN/m(片側レールあたり

5kN/m)として設計しており,一例としてレール締結間隔が625mmの直結系軌道では,レール

締結装置一組あたり3.13kNがレール締結装置の設計上のふく進抵抗力の目標値となる.

図 4-1 レール締結装置周りのばね特性 レール支承体

先端ばね 横方向ばね

レール下ばね

支承体下ばね レール

締結ばね

横圧受け装置

図 4-2 レールふく進抵抗試験の概要 アクチュエータ

試験供試体

載荷方向

変位計 レール

(29)

27 d) 静的載荷試験(斜角載荷試験)

斜角載荷試験(静的載荷)は,載荷時のレール締結装置の応答値を把握する目的で実施する試 験である.応答値の算定方法は,図 4-3に示す二種類の実験的方法より適切な方法を選定し用い て行うこととなっている.

継目部等を除く,レールが切れ目なく連続している軌道の一般部において,同一のレール締結 装置が連続的に等間隔で敷設されている状況が想定した場合,レール締結装置一組による試験を 選択することができる.レール締結装置一組による実験的方法を採用する場合は,レール締結装 置一組に対して二方向からの静的載荷試験を実施し,レール締結装置の応力値を算定する.なお,

二方向載荷の荷重条件の算定過程については次章で詳細を述べるが,レール締結装置の各種ばね 定数やまくらぎ間隔等の諸条件に基づき,構造解析モデルを用いて得られる設計A荷重および設 計B荷重作用時のレール圧力やレール横圧力,レール小返り角を基に,試験用レールに対して二 方向から同時に載荷した場合のレール底部中央を回転中心とするモーメントのつり合いを考慮し て決定される.

図 4-3 静的載荷試験の実施状況 アクチュエータ

試験供試体

(レール締結装置一組分)

載荷用治具

(a) レール締結装置一組による試験

(b) 試験軌道による試験 アクチュエータ

複数の試験供試体 載荷用治具

(30)

28

一方,レールが不連続で継目遊間があり,かつ途中に継目板による断面が不連続なレール継目 部や,レールが連続していても等間隔に支持されていない箇所に適用されるレール締結装置につ いて性能照査を実施する場合は,軌道の実態を模擬した試験軌道による試験を選択することにな る.具体的には,実物のレールや支承体,レール締結装置等の部材により構成される試験軌道を 構築し,これに直接設計作用を適用した二方向の静的載荷試験を実施してレール締結装置の応答 値を算定する.特に,レール継目部用のレール締結装置の性能照査では,レール継目部の遊間(レ ール間の不連続部)通過時に発生する衝撃荷重を考慮して,設計作用の鉛直方向成分に速度衝撃 率を考慮した割り増しを行うこととしている[4-2].

ここで,静的載荷と動的載荷のいずれについても二方向からの載荷を実施する理由として,急 曲線部を列車が走行する際に発生する横圧が示す特徴が挙げられる.日本の,特に在来線には急 曲線部が多く存在するが,急曲線部では車両の進行方向側の台車に設置された2本の車軸から外 軌に対して軌間外側と軌間内側の両方向向きの横圧が生じることが確認されており,軌間外側向 きに作用する横圧のみを模擬して適用する試験では危険側の評価となる可能性がある.

図4-4に曲線部において実施した地上測定で測定した,外軌に発生した横圧の波形例[4-3]を示 す.当該箇所は狭軌(軌間1067mm)の在来線で,曲線半径160mと急曲線であり,進行方向前 方から順に1軸,…,4軸とした場合,進行方向前方台車の1軸と2軸に着目すると,異なる方 向に横圧が発生していることが確認できる.

←列車進行方向

-20 -10 0 10 20 30

19 20 21 22 23 24 25 26 27

時 間 (sec.)

横 圧 (kN)

1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

軸数

横 圧[kN]

時間(sec.)

図 4-4 地上測定で得られた横圧波形の実例

(外軌,曲線半径 160m,カント 35mm,走行速度 30km/h)

↑軌間外側向き

↓軌間内側向き

1 軸目 2 軸目 3 軸目 4 軸目

(外軌)

(内軌)

列車進行方向

車軸 台車

(31)

29

このように,日本では前側台車の1軸目と2軸目に発生する横圧の傾向を把握しており,この 影響を考慮して二方向載荷試験を実施して応答値を算定してきた.この点が後述する欧州規格を はじめとする他国の試験方法との大きな相違となっている.

e) 動的載荷試験(二軸疲労試験)

静的載荷試験と同じ荷重条件で位相差180度の交互載荷を100万サイクルまで実施し,試験中 および試験終了後のレール締結装置の締結ばねの折損,および樹脂部材や高分子材料といった構 成部材を含めたレール締結装置全体の疲労耐久性を確認するための試験である.なお,載荷周波

数は5.5 Hz を基本としているが,載荷周波数を5.5Hz以下に変更しても応答値に対して影響が

ないことを確認しており,試験中の試験体の温度や状況,載荷時の変位量に応じて変更してよい.

また,アクチュエータで供試体に載荷する際,安定して適切な荷重を試験レールに加え続けらる ことができるよう,最大荷重を載荷するアクチュエータの対側のアクチュエータでは最小荷重で

ある10 kNで載荷することを基本としている.

f) 電気絶縁抵抗試験

軌道回路を構成するうえで,レール締結装置に求められる電気絶縁抵抗性を測定する試験であ る.図 4-5に試験の概要を示す.レール締結装置を組み立てた状態でレール・レール間もしくは レール・アース間に交流10V(周波数0.5,1.0および2.0 kHz)を印加し測定した電気絶縁抵抗 値が設計応答値となる.ここで,試験条件には乾燥状態の他,時間雨量100 mm相当の散水を行 う湿潤状態,レール締結装置が汚損して絶縁抵抗性が低下している状態を模擬する目的で 0.1 % 食塩水を散布する汚損状態等がある.

図 4-5 電気絶縁抵抗試験の概要 レール

レール締結装置

電極(銅板)

絶縁体 まくらぎ

電極 アース

この間で 測定

(a) まくらぎ用レール締結装置の場合 (b) スラブ軌道用レール締結装置の場合 R:校正用抵抗 1,2,5,10,20,50 [kΩ]

被測定体 R(抵抗)

データ 収録機 LCR メータ

周波数 0.5kHz,1kHz,2kHz

(32)

30

なお,単位延長あたりの漏れコンダクタンスの目標値が定められており,新幹線では0.35 S/km 以下,在来線では0.5 S/km以下としている.この値とレールの締結間隔より,レール締結装置一 組あたりに必要な電気絶縁抵抗である設計限界値が算定される.

4.1.2 欧州における性能確認試験

レール締結装置の性能確認試験の方法は,日本だけでなく海外でも規定されていることが多い.

国際規格に準じる地域規格に相当する欧州規格(EN)では,レール締結装置について主に2つの 規格を開発しており,一つはレール締結装置の一般要求性能(General requirements),もう一つ は要求性能に対応する試験方法を定めるものである.

ここで,欧州で実施しているレール締結装置の性能確認試験については,EN 13146 “Railway Applications – Track – Test Method for Rail fastening systems”で定められている.EN 13146 シリーズの個々のパートについては,以下に示す構成となっている.

EN 13146-1: Determination of longitudinal rail restraint(レールふく進抵抗の規定)

EN 13146-2: Determination of torsional resistance(水平面内回転抵抗の規定)

EN 13146-3: Determination of attenuation of impact loads(衝撃荷重の緩衝の規定)

EN 13146-4: Effect of repeated loading(繰り返し載荷の効果)

EN 13146-5: Determination of electrical resistance(電気絶縁抵抗の規定)

EN 13146-6: Effect of severe environmental conditions(厳しい環境条件の影響)

EN 13146-7: Determination of clamping force(レール押え力の規定)

EN 13146-8: In service testing(営業線での試験)

EN 13146-9: Determination of stiffness(剛性の規定)

EN 13146-10: Proof load test for pull-out resistance(引抜抵抗に関する保証荷重試験)

これらの規格は共通して,主に試験目的,構成要素,試験のセットアップ,試験方法および測 定データ整理方法により構成されており,構成部材の寸法や形状,試験時の載荷条件について規 定されている.

なお,現状国際規格が存在しないレール締結装置の性能確認試験については,現状最上位とな る地域規格である欧州規格の他に,日本や米国と同様,各国で国家規格や基準が規定されている が,多くの場合,特に東南アジアにおいては欧州規格を実質上の国家規格として採用している.

このため,特に近年日本から鉄道技術を含む鉄道システムを輸出する際の制約となっている事 例が認められる.これは,日本が早期に国際標準化に積極関与し自国の技術を国際規格に反映で きていれば回避できたことであるが,現状,日本が鉄道分野で国際標準化に早急に積極的に参加 し,日本の技術を反映した国際規格策定に関与し続けていかねばならない状況にある.

4.1.3 性能確認試験に関する日欧の差異

現在,日本で実施しているレール締結装置の試験方法を欧州規格(EN 13146 シリーズ)に規 定されている試験方法と比較すると,試験項目が概ね対応している一方で,詳細な試験内容につ

(33)

31 いては相違が認められるものもある.

表 4-1 にレール締結装置の試験方法と日欧の対応規格・基準について整理する.日本の試験方 法と欧州規格による試験方法を比較すると,ふく進抵抗試験や繰り返し載荷試験,電気絶縁抵抗 試験は後述する性能照査において必須項目となっているが,レール締結装置の回転抵抗試験や衝 撃に対する減衰効果に関する試験は日本では必須の試験項目ではない.また,試験内容を具体的 に比較すると,ふく進抵抗試験のようによく一致している項目もあるが,両者に大きな隔たりが ある項目もある.

特に差異が顕著なのが,日本の二方向載荷試験(静的・動的)と欧州規格が定める繰り返し載 荷試験である.表 4-2 に両者の差異を示す.日本では前述の理由により,静的・動的載荷試験共 に二方向交互載荷を基本としている一方,欧州規格では斜角の単軸載荷を基本としている.また,

目標繰り返し載荷回数について,日本では100万サイクルと定めているのに対し,欧州規格では 300万サイクルとしている.

表 4-1 レール締結装置の試験方法の比較

試験項目 対応する

欧州規格 対応する日本の規格・基準

レールふく進抵抗力 EN 13146-1 ※対応規格・基準は無し, 鉄道技研にて試験方法を規定 水平面内回転抵抗 EN 13146-2 ※対応規格・基準無し

緩衝性能 EN 13146-3 ※対応規格・基準無し 繰り返し載荷試験 EN 13146-4 鉄道構造物等設計標準(軌道構造)

電気絶縁抵抗試験 EN 13146-5 鉄道構造物等設計標準(軌道構造)

厳しい環境の影響 EN 13146-6 ※対応規格・基準無し レール押え力試験

(先端ばね特性試験) EN 13146-7 ※対応規格・基準は無し,

鉄道技研にて試験方法を規定 営業線試験 EN 13146-8 ※対応規格・基準無し 鉛直ばね定数試験

(軌道パッド単体 or レール締結装置全体)

EN 13146-9 JIS E 1117 [4-4]

埋込栓引抜強度 EN 13146-10 JIS E 1201 [4-5]

JIS E 1202 [4-6]

(34)

32

4.2 レール締結装置の設計・性能照査

日本では 1987 年に旧国鉄が分割民営化するまで,軌道材料についても国鉄の社内規格である JRSが定められていた.その一部は現在,JIS(日本工業規格)として引き継がれているもあるが,

その大半はJIS化が進まずデジュール規格としての効力を失っている.また,JRS・JISともに,

寸法や製作公差,品質管理といった製造上必要な項目を規定するという性質上,要求性能を規定 するものではなかった.

このような背景から,2000年代後半になって国土交通省や鉄道総研を中心に,軌道構造や軌道 を構成する軌道部材について設計・照査を行う際の指針である設計標準を作成する機運が高まり,

約 3年間の議論を経て 2012年に軌道設計標準が発行された.これにより,鉄道事業者の設計者 が軌道や車両の条件に応じて必要な性能を定め,設計・照査が可能になった.

一方,レール締結装置の性能確認試験の方法については,旧国鉄の鉄道技術研究所においてそ の手法が確立され,東海道新幹線向け PC まくらぎ用レール締結装置(102 形)をはじめとする 旧国鉄開発のレール締結装置の性能確認に用いられてきた.しかし,本試験方法については構造 や部材の仕様を決定するJRSには規定されず,国鉄および国鉄の研究開発部門を引き継いだ鉄道 総合技術研究所の社内規定として適用され,公知の情報としてこれまで公表されていなかった.

このため,軌道構造設計標準ではレール締結装置の性能確認試験と性能照査について明文化し,

公知にすることとした.

4.2.1 レール締結装置の要求性能

レール締結装置は,一般構造物と異なり容易に交換を行うことができる特徴と,安全について 一定の確率で破壊を許容する考え方が設計の基本となっている.更に,軌道回路を構成する上で 所用の電気絶縁抵抗が必要となる.これらを踏まえ,レール締結装置の設計に際し必要とされる 性能項目に対する要求性能は,表 4-3に示すように設定される.本章ではこれらの要求性能のう ち,疲労破壊に関する安全性の照査について以下に概説する.なお,電気絶縁性に関する使用性 の照査については,設計対象の軌道構造における軌道回路の有無に応じて実施の可否が決定する.

表 4-2 繰り返し載荷試験の比較

項 目 日 本 欧 州

規格・基準 軌道構造設計標準 EN 13146-4 荷重条件 レール締結装置の

種別ごとに決定

レール締結装置の カテゴリ別に決定

載荷方法 二方向載荷 単軸載荷

載荷回数 100 万サイクル 300 万サイクル 性能照査

の対象

・レール変位

・締結ばね応力 特になし

※日本では静的載荷試験後に動的載荷試験を実施する

参照

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