第 6 章 FEM レール小返り解析モデルの拡張と変動輪重係数への影響
6.2 試験軌道の載荷試験
軌道の支持状態を考慮するため拡張されたレール小返り解析モデル(以下,「拡張モデル」)の 妥当性を検証する目的で,浮きまくらぎを設定した試験軌道を構築して実施した室内載荷試験の 結果[6-1]より,レール締結装置およびまくらぎの応答値に着目して分析を行った.
6.2.1 試験の概要
図6-2および表 6-1に構築した試験軌道の概要と諸元を示す.長さ5mのレールの下にPCま くらぎ(長さ半分)9本を締結間隔610 mmとなるように設置し,同数のレール締結装置(6号9 改形)を締結間隔610 mmとなるように固定して半分の軌きょうを構築した.また,試験機の定 盤と各まくらぎの下面の間隔には,道床ばねに相当する弾性材(支承体下ゴムパッド,荷重区間
10~50 kN時の静的鉛直ばね特性は41.3 MN/m)を設置し,バラスト軌道の軌道支持状態を模擬
した.一方,レール締結装置の設計において道床のレール直角方向のばね特性を考慮せず,レー ル締結装置の横方向ばね特性のみを考慮することから,まくらぎの側面も治具を設置し水平方向 の移動を拘束した.
図 6-2 試験軌道の概要
支承体下 ゴムパッド 支承体
(PC まくらぎ)
50kgN レール
(長さ 5m)
荷重
(0~100kN)
9 形締結 装置
支承体間隔 610mm×8 等間隔 固定用
治具
(a)側面図 この範囲のまくらぎ下に 浮きまくらぎを設定 アクチュエータ
レール 載荷角度
(b)試験状況
まくらぎ 固定用治具
荷重(0~100kN)
(c)載荷イメージ 載荷点高さ
148mm 載荷角度θ
(45~65 度)
50kgN レール
68
この試験軌道に対し,表6-2に示す浮きまくらぎの無い適正な軌道支持状態(以下,「浮き無し」) とまくらぎ下面と支承体下パッド間に浮きまくらぎ状態を設定する場合(以下,「浮き有り」)で 4つの軌道支持条件を設定し,表6-3および図6-3に示すように軌間内側よりレール高さ148 mm の位置のレール頭側面に対して45度から5度刻みで65度までの単軸載荷(荷重100 kNまでの 3往復載荷)を実施し,まくらぎの鉛直方向変位,レール小返り角およびレール頭部変位を整理し た.なお,まくらぎの鉛直方向変位は鉛直下向きを正,レール小返り角は載荷時のレールの回転 方向を正とした.ここで,試験に用いたまくらぎはまくらぎ下面の2点で弾性支持する構造とし たため,載荷条件によってはまくらぎの回転が生じる可能性がある.このため,まくらぎ上のレ ール中心から等間隔にある軌間内外の2点でのまくらぎ鉛直変位の測定値の平均をレール底部中 央直下におけるまくらぎの鉛直方向変位として評価した.また,レール小返り角およびレール頭 部変位はまくらぎ上面を基準として整理した.したがって,測定結果にはまくらぎの変位や回転 の影響が含まれない.
表 6-1 試験軌道の諸元
項 目 詳 細
レール種別 JIS 50kgN 普通レール(長さ:5m)
レール支承体 6 号 PC まくらぎ(半分)×9 本 締結間隔 610mm (25m あたり 41 本換算)
レール締結装置 9 形改レール締結装置 50kgN レール用 軌道パッド SBR 製 (公称ばね定数:110MN/m)
支承体下パッド 41.3MN/m
表 6-2 軌道支持条件
条件 支持条件 備 考 浮き量
A 浮き無し 標準締結状態 ― B
浮き有り
浮きまくらぎ 1 本
3mm
(一律)
C 浮きまくらぎ 3 本
D 浮きまくらぎ 5 本
表 6-3 載荷条件
項 目 条 件
荷 重 0kN → 100kN → 0kN (完全除荷まで)
軌道条件・角度毎に 3 回ずつ
載荷角度
45 度(Q/P=1.00 相当), 50 度(Q/P=0.84 相当),
55 度(Q/P=0.70 相当), 60 度(Q/P=0.58 相当),
および 65 度 (Q/P=0.47 相当)
計:5 パターン
69 6.2.2 試験結果と考察
図6-4に載荷3回目における100 kN載荷時の載荷点直下の試験条件別のまくらぎの鉛直方向 変位およびレール小返り角を示す.なお,レール小返り角は軌間外側への小返りを正(+)とし て整理した.
図 6-6(a)より,いずれの軌道支持条件でも,載荷角度が増加するにつれてまくらぎ鉛直変位が
増加する傾向が認められた.浮き有りの場合,条件B(浮きまくらぎ1本)ではいずれの載荷角 度でもまくらぎ下面が支承体下パッドと接触しなかったが,条件C(浮きまくらぎ3本)および
条件D(浮きまくらぎ5本)では,すべての載荷角度でまくらぎ鉛直変位が浮き量3 mmを超過
しており,まくらぎ下面が支承体下パッドと接触していた.なお,条件CおよびDでまくらぎ鉛 直変位に大きな差は認められなかったが,これは載荷時にまくらぎ下面が支承体下パッドに接触 し浮きまくらぎが解消した結果,軌道支持状態に差がなくなったことが原因であると推察される.
また,図 6-6(b)に載荷点直下の試験条件別のレールの小返り角を示す.なお,レール小返り角
については複数回載荷するとレール締結装置のなじみによると考えられる残留小返りが認められ たことから,残留レール小返り角を考慮した結果を示した.いずれの軌道支持条件でも,載荷角 度が増加するとともに載荷した荷重の水平方向成分が減少し,レール小返り角も減少するという 傾向が認められた.ここで,軌道支持状態の差の影響に着目すると,載荷角度が45度の場合は浮 きまくらぎの本数が増加するにつれ小返り角が減少したものの,載荷角度が 50 度以上の場合は 傾向が異なり,浮きまくらぎ1本の場合にレール小返り角が最も大きくなる傾向が認められた.
その原因については浮きまくらぎ状態の影響がレール小返り角に寄与していることが考えられる が特定に至らなかった.また,レール小返り角と密接な関係のあるレール頭部変位についても同 様の傾向が認められた(図6-6(c)).
以上の結果より,以降は軌道の支持状態と強い相関があると考えられるまくらぎの鉛直変位に 着目して拡張モデルの妥当性検証を実施することとした.
図 6-3 載荷位置とまくらぎ鉛直変位
(軌間内側) (軌間外側)
レールの小返り 測定間隔:680mm 載荷点高さ
148mm 載荷角度θ
(45~65度)
荷重(0~100kN)
70
(b) レール小返り角(残留考慮)
-5 -4 -3 -2 -1 0
45度 50度 55度 60度 65度
まくらぎ変位[mm]
載荷角度
浮きまくらぎ無し 浮きまくらぎ 1本 浮きまくらぎ 3本 浮きまくらぎ 5本
(a) まくらぎ鉛直変位
(c) レール頭部変位(残留考慮)
0.00 0.01 0.02 0.03
45度 50度 55度 60度 65度
レール小返り角[rad.]
載荷角度
浮きまくらぎ無し 浮きまくらぎ1本 浮きまくらぎ3本 浮きまくらぎ5本
図 6-4 室内載荷試験結果 0
1 2 3 4
45度 50度 55度 60度 65度
レール頭部変位[mm]
載荷角度
浮きまくらぎ無し 浮きまくらぎ1本 浮きまくらぎ3本 浮きまくらぎ5本
71