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疲労破壊に関する安全性の照査手順

第 4 章 レール締結装置の性能確認試験と設計・性能照査法

4.2 レール締結装置の設計・性能照査

4.2.4 疲労破壊に関する安全性の照査手順

疲労破壊に関する安全性の照査を行う場合,レール締結装置一組での静的載荷試験もしくは複 数のレール締結装置により構成される試験軌道での静的載荷試験のいずれかを実施して応答値を 取得する.

ここで,レール締結装置一組で二方向載荷試験実施して応答値を取得する際の荷重条件の算定 方法は,締結装置一組に作用する分散荷重とレール小返り角を算定する段階,およびこれらの結 果を二方向からの同時載荷の荷重条件に変換する段階の 2つのフェーズから成る.以下にその具

表 4-4 変動輪重係数・変動横圧係数

線別 荷重種別 線 形 変動係数

A 荷重 B 荷重 新幹線 輪重

直線・曲線 1.3 1.15

横圧 0.8 0.4

在来線

輪重 直線・曲線 1.3 1.15

横圧

直線, R>800m 0.8 0.4 600≦R<800m 0.6 0.3 R<600m 0.4 0.2 図 4-8 レール締結装置の疲労破壊に関する安全性の照査の流れ

Start 作用の設定 部材の選択 応答値の算定

End

締結ばねの応力およびレール 変位が限度値以下か?

動的載荷による確認試験で 締結ばねや構成部材に異状が 認められないか?

NO

NO YES

YES

37 体的な手順を示す.

a) レール締結装置一組作用する分散荷重およびレール小返り角の算定(従来手法)

レール締結装置一組での試験を実施する場合は,従来,弾性支承上の梁の理論[4-7]とばね定数 試験で得られた各種ばね定数から計算されるレール締結装置一組に対して作用する分散荷重(レ ール圧力とレール横圧力)と佐藤らが誘導したレール小返り理論により求まるレール小返り角を 算定してきた[4-8~4-12].

まず,等間隔に支持された軌道において,載荷点直下のレール締結装置一組に作用する分散荷 重は,弾性支承上の梁の理論を用いて次式で算定される.

レール圧力 W = {1 − 𝑒𝑎2𝛽𝑣∙ cos (𝑎

2𝛽𝑣)} ∙ 𝑊′ …(4.1) レール横圧力 H = {1 − 𝑒𝑎2𝛽∙ cos (𝑎

2𝛽)} ∙ 𝐻′ …(4.2) ここに,𝑊′:設計作用の鉛直方向成分(輪重)

𝐻′:設計作用の水平方向成分(横圧)

𝑎:レール締結間隔 である.

また,𝛽𝑣 = √4𝐸𝐼𝐷𝑎

𝑥

4 𝛽= √

𝐾

𝑎 4𝐸𝐼𝑦 4

D:(軌道の鉛直方向)総合ばね定数 𝐾:レール締結装置全体の横方向ばね定数 E:レール鋼のヤング率

𝐼:レールの断面二次モーメント(強軸周り)

𝐼𝑦:レールの断面二次モーメント(弱軸周り)

である.特に,(4.1)式の波括弧内の項は輪重に対するレール締結装置一組あたりに作用するレー ル圧力の比を表すパラメータであり,輪重の分散係数という.また,(4.2)式の波括弧内の項は横 圧に対するレール締結装置一組あたりに作用するレール横圧力の比を表すパラメータであり,横 圧の分散係数という.

次に,載荷点直下のレール締結装置におけるレール小返り角は,レール小返り理論を用いて次 式で算定される.

小返り抵抗係数 K′ = 1

12(𝐾1𝑏12+ 6𝐾2𝑏22) …(4.3)

(ただし,レール端部が軌道パッドより浮かず,締結力が初期締結力を超えない場合)

第3軌道係数 λ =𝐾′𝑎

𝐶 …(4.4)

載荷点直下のレール傾斜係数 𝑡0 𝜆 = 5+20𝜆+21𝜆2+8𝜆3+𝜆4

2+25𝜆+50𝜆2+35𝜆3+10𝜆4+𝜆5 …(4.5) 設計作用適用時のレール小返り角 𝜃0 = 𝑡0 𝜆 𝑀𝑇∙𝑎

𝐶 …(4.6)

38 ここに,𝐾1:軌道パッドのばね定数

𝑏1:軌道パッド幅

𝐾2:先端ばね定数(鉛直下向き)

𝑏2:レール押え点間隔 C:レールのねじり剛性

である.また,これらの式が成立する際,締結装置一組への作用であるレール小返りモーメント は,小返り抵抗係数とレール小返り角の積,すなわち𝐾′ ∙ 𝜃0として算定することができる.

b) 二方向載荷試験の荷重条件の算定

分散荷重とレール小返り角が得られた後,レール締結装置一組に対する二方向載荷の荷重条件 を算定する.ここで,図 4-9にレール締結装置一組に対して実施する二方向載荷試験時の力のつ り合いを示す.

ここに,𝐿𝐴 :設計A荷重相当の荷重作用時のレール圧力とレール横圧力の合力 𝐿𝐵 :設計B荷重相当の荷重作用時のレール圧力とレール横圧力の合力 𝐿0 :対側アクチュエータの最小荷重

θ𝐴 :軌間内側からの載荷角度 θ𝐵 :軌間外側からの載荷角度 h :試験用レールの載荷点高さ

e :試験用レール中央から載荷点までの水平方向距離 である.

A荷重作用時とB荷重作用時の荷重条件が同時に成立する場合,次式が成立する.

レール圧力(A荷重作用時) 𝑊𝐴= 𝐿𝐴sin 𝜃𝐴+ 𝐿0sin 𝜃𝐵 …(4.7) レール横圧力(A荷重作用時) 𝐻𝐴= 𝐿𝐴cos 𝜃𝐴− 𝐿0cos 𝜃𝐵 …(4.8) レール圧力(B荷重作用時) 𝑊𝐵= 𝐿𝐵sin 𝜃𝐵+ 𝐿0sin 𝜃𝐴 …(4.9) レール横圧力(B荷重作用時) 𝐻𝐵= 𝐿𝐵cos 𝜃𝐵− 𝐿0cos 𝜃𝐴 …(4.10)

また,レール底部中央を回転中心とする設計A荷重相当荷重作用時の小返りモーメント𝑀𝐴と設

軌間内側 軌間外側 軌間内側 軌間外側

LA

θA

h

e e

θB

L0 L0

θA

h

e e

θB

LB

図 4-9 二方向載荷の荷重条件

(a)A 荷重作用時 (b)B 荷重作用時

39 計B荷重相当荷重作用時の小返りモーメント𝑀𝐵

𝑀𝐴= ℎ 𝐿𝐴cos 𝜃𝐴− 𝐿0cos 𝜃𝐵 − e 𝐿𝐴sin 𝜃𝐴− 𝐿0sin 𝜃𝐵 …(4.11) 𝑀𝐵= ℎ 𝐿𝐵cos 𝜃𝐵− 𝐿0cos 𝜃𝐴 − e 𝐿𝐵sin 𝜃𝐵− 𝐿0sin 𝜃𝐴 …(4.12) となる.ここで,𝑀𝐴は時計回り,𝑀𝐵は反時計周りを正とする.

(4.11)式は,(4.7)式および(4.8)式を用いると,𝑀𝐴= ℎ𝐻𝐴− e 𝑊𝐴− 2𝐿0sin 𝜃𝐵 よって,h =𝑀𝐴+𝑒 𝑊𝐴−2𝐿0sin 𝜃𝐵

𝐻𝐴 …(4.13) が得られる.

また,式(4.12)は,(4.9)式および(4.10)式を用いると,𝑀𝐵= ℎ𝐻𝐵− e 𝑊𝐵− 2𝐿0sin 𝜃𝐴 よって,h =𝑀𝐵+𝑒 𝑊𝐵−2𝐿0sin 𝜃𝐴

𝐻𝐵 …(4.14) が得られる.

載荷角度については,

θ𝐴= tan−1(𝑊𝐴−𝐿0sin 𝜃𝐵

𝐻𝐴+𝐿0cos 𝜃𝐵) …(4.15), θ𝐵 = tan−1(𝑊𝐵−𝐿0sin 𝜃𝐴

𝐻𝐵+𝐿0cos 𝜃𝐴) …(4.16) が成立する.

さらに,載荷荷重については,力のつり合いより次式が成立する.

L𝐴= √ 𝑊𝐴− 𝐿0sin 𝜃𝐵 + 𝐻𝐴− 𝐿0cos 𝜃𝐵 …(4.17) L𝐵= √ 𝑊𝐵− 𝐿0sin 𝜃𝐴 + 𝐻𝐵− 𝐿0cos 𝜃𝐴 …(4.18)

以上の(4.13)式から(4.18)式までを同時に満たす𝐿𝐴,𝐿𝐵,θ𝐴,θ𝐵がレール締結装置一組に対する二 方向載荷の荷重条件となる.

一方,複数のレール締結装置による二方向載荷を実施する場合は,レール,レール締結装置,

まくらぎ等の実物の軌道部材で構成される試験軌道に対して,最小試験荷重を考慮した上で設計 A荷重相当荷重と設計B荷重相当荷重を同時に適用した二方向載荷を実施し,その際のレール締 結装置の応答値を取得する.

また,二方向載荷試験により実施する安全性に関する疲労破壊の照査は,以下に示す二つの段 階で構成される.

第一段階では,レール締結装置一組もしくは試験軌道に対して二方向の静的載荷試験(斜角載 荷試験)を実施し,設計作用に対するレール締結装置の応答値,具体的にはレールの変位と締結 ばねの応力について限界値と比較して照査する.

ここで,締結ばねの発生応力は,ばね鋼の種別に応じて定まる耐久限度線図を用いて疲労耐久 性を照査する.図4-10に締結ばねに発生する応力の概念を,図4-11に日本で締結ばねの発生応 力の照査に使用されている一般的なばね鋼材(SUP 9)の耐久限度線図を示す.縦軸は変動応力,

横軸は平均応力である.ここで,レール締結装置の締結ばねのへたり限度は材料特性から定まり,

第 1へたり限度は材料の弾性限度,第 2へたり限度は材料の降伏点を示す[4-13].また,締結ば ねの材料の時間強度から定まり,第1破壊限度は105回時間強度,第2破壊限度は107回時間強 度をそれぞれ示す.ここで,レール締結装置の締結ばねの時間強度は次に示すばね鋼材のS-N曲 線(破壊確率p=10%)より定まる[4-14, 4-15].

S = − log10𝑁 + 1000 N ≤ 107 …(4.19) S = 300 N > 107

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ここに,S:変動応力 [N/mm2],N:載荷回数 [回]である.

二方向の静的載荷試験により得られた平均応力および変動応力の組み合わせを耐久限度線図上 にプロットし,弾性限度線と疲労限度線で囲まれる領域に収まる場合,設計限界値以下であり性 能を満足すると判定する.なお,近年では締結時に締結ばねの特定の部位で局所的に応力が降伏 点を超える無螺締式のレール締結装置が使用されている.この場合,ばね鋼の耐久限度線図にお いて設計応答値が設計限界値を超過するため性能を満足しないことになるが,実態として実軌道 においてこれまで問題なく使用されている.この矛盾を解消する目的で,降伏点を超えた応力(ひ ずみ)状態に対して塑性域を考慮した新たな耐久限度線図が検討,提案され,性能照査に適用さ れている[4-16].

また,レール変位は,載荷中の最大レール小返り角とレール高さより求まるレール頭部左右変 位が設計応答値となる.また,走行安全性の観点から,新幹線の場合に5.2mm,在来線の場合に

7.0mmを設計限界値として設定しており[4-17],設計応答値と比較して性能を照査する.

これらの性能照査で問題ないことが確認された後,第二段階として静的載荷試験に用いたセッ トアップと荷重条件を用いて動的載荷試験を実施し,載荷中および載荷終了後のレール締結装置 を構成する全ての部材の耐久性を外観観察により検証する.

0 200 400 600

0 500 1000 1500 2000

変動応力(N/mm2)

平均応力 (N/mm2) 第1破壊限度

第2破壊限度

第2へたり限度 第1へたり限度

応 力

締結時応力

変動応力

平均応力

時 間 図 4-10 締結ばねに発生する応力の概念

図 4-11 ばね鋼の耐久限度線図(ばね鋼 SUP 9 の場合)

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