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博士(歯学)半田 薫 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)半田   薫 学位論文題名

日常生活における口唇閉鎖状態の新しい評価法と応用 学位論文内容の要旨

【緒言】

  不正咬合の成因については、口唇の閉鎖や舌の動きといった機能的な要因の関与が示さ れている。このうち口唇については閉鎖の有無を評価する方法として肉眼的観察など様々 な方法があるが、いずれの方法も口唇閉鎖を直接的に評価していない。また日常生活にお ける睡眠をはじめ、口唇を積極的に活動していない状況下での持続的な口唇閉鎖状態の観 察に関しての報告はこれまでに見られない。

  そこで今回、経時的に長時間、口唇閉鎖時間を記録することを目的として口唇閉鎖状態 連続記録装置を開発し、有用性を検討した。また、これを用いて日常生活で営まれる様々 な状態の中から(1)知的作業時(2)音楽鑑賞時(3)睡眠時を代表として再現し、これらの状 況 下 に お け る 口 唇 閉 鎖 状 態 を 直 接 的 か つ 客 観 的 に 測 定 し て 評 価 し た 。 ,

【対象および方法】

く実験1>口唇閉鎖状態連続記録装置の開発

  鼻呼吸の異常が自覚的・他覚的に認められない者で、個性正常咬合を有すると判断した 成人11名(男性8名、女性3名)を被験者として選択した。

  口唇閉鎖の状態を測定するために新たに作製した口唇閉鎖状態連続記録装置を装着した。

本装置 で口唇の閉鎖状態を感知するセンサ部は、大きさ約3mmx3mm、厚さ約10011であ る。センサは、上唇中央部に設置し、上下の口唇を閉じた時に下唇がセンサ部の中央に接 触するようにした。本装置は、人体の持っている静電エネルギーをセンサで感知し、その 生体信号をもとに接触の有無を記録するものである。上唇が下唇と接触している時にON、 離開 し て い る 時 にOFFとた るよ うに 設定 し、出 力信 号を コン ピュー タに 記録 した。

  実験に際してはまず被験者に、本実験は口唇を最もりラックスした状態での計測である ことを説明し、条件(A)としてあらかじめ口唇を閉鎖させた状態、条件(B)としてあらかじ め口唇を離開させた状態の2通りから実験を開始し、5秒経過した後から10分間の計測を     ―728―

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行 った 。こ の測 定を 被験 者に 対し て(A)、(B)の条件で各々3回ずつ合計6回行った。なお、

同 日内 に条 件(A)、(B)を 行っ たが 、同 一条件 の実験は日を替えて行った。さらに、本記録 データから全測定時間に対する口唇の閉鎖している時間を口唇閉鎖時間率゛(ロ唇閉鎖時間

/測定時間xioo%)として算出した。

く実験2>睡眠時と覚醒時における口唇閉鎖状態について

  鼻呼 吸の 異常 が自 覚的 ・他 覚的 に認 められ ない者で、個性正常咬合を有すると判断した 成人男性25名を被験者として選択した。

  我々 が新 たに 開発 した 装置 と同 時に 睡眠状 態を確認するために睡眠ポリグラフィーを装 着 して 両者 の連 続同 時記 録を 以下 の条 件下で 行い、口唇閉鎖状態を経時的に長時間観察し た 。(1)知 的 作 業 時 の計 測 : 計 算 ソ フ ト を 用 い てPC上で15分問 、連 続的 に計 算す る作 業 を 行 わ せ た 。(2)音 楽鑑 賞 時 の 計 測 : 市 販 の 音 楽CDを安静 ・覚 醒・ 閉眼 状態 でス ピー カ ー にて15分 問鑑 賞さ せた 。(3)睡眠 時の 計測 :消 灯、 遮光 した 実験 室に置 いたベッド上で 仰臥位で120分間の睡眠をとらせた。

  (1)〜(3)それぞれの条件における全測定時間に対する口唇閉鎖の時間を口唇閉鎖時間率

(口唇閉鎖時間/測定時間xi00%)として算出した。

【結果】

く実験1>

  各被 験者 問で 条件(A)、(B)のデ ータ のばら っきには差がないことが示され、また、それ ぞ れの 平均 値間 にお いて も差 がな いこ とが認 められた。さらに、口唇閉鎖時間率という観 点 から 被験 者を 分類 する と閉 鎖率 の高 いグル ープ と低 いグ ルー プの 大き く2っのグループ に分類された。

く実験2>

  知的 作業 時、 音楽 鑑賞 時お よび 睡眠 時の3つの 条件 下に おけ る口 唇閉鎖 時間率の分布は 実 験条 件に より 異な り、 音楽 鑑賞 時の 平均値 は75.7%と実験を行った条件の中で最も高い 値を示した。この値は知的作業時およぴ睡眠時と比較して有意に大きい値であった。なお、

知的作業時と睡眠時と.の間に有意な差は認められなかった。

  また 、個 人の 中に おい ても 与え られ る条件 により口唇閉鎖の状態が異なることが示され た 。そ こで3つの 条件 下に おけ る口 唇閉 鎖時 間率 の間 に類 似性 があ るかを 調べるために階 層 クラ スタ ー分 析を 行っ た結 果、4っの グル ープ が抽 出さ れた 。こ れら各 グループ内での 知 的作 業時 、音 楽鑑 賞時 およ ぴ睡 眠時 の平均 値よ ルグ ルー プAでは 条件に 関わらず口唇閉

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鎖時間率は高いものの、睡眠時に比して知的作業時において有意に大きい値を示した。ま たグループBでは知的作業時に比して音楽鑑賞時およぴ睡眠時において有意に大きい値を 示し、グループDでは知的作業時およぴ睡眠時に比して音楽鑑賞時において有意に大きい 値を示した。一方、グループC内では各条件下で口唇閉鎖時間率が低い値を示し、有意差 はみられなかった。さらに知的作業時、音楽鑑賞時、および睡眠時に分けて各グループに おける平均値およびその差を検討したところ知的作業時ではグループAはグループB、C、 Dに比 して有意に 大きい値を 示し、音楽 鑑賞時では グループA、B、DはグループCに比 して有意に大きい値を示した。さらに睡眠時ではグループA、BそれぞれはグループC、 Dに比して有意に大きい値を示した。

【考察】

く実験1>

  今回は全11例合計66回の測定を行ったが、個人内における計測結果のばらっきが小さ く測定上の問題はないと判断されたことから、本装置の有用性が示された。さらに条件(A)、 (B)の計測に有意な差は見られなかったことより、口唇を閉鎖させた状態から開始しても、

離開させた状態から開始しても、安静時における口唇閉鎖時間率は個人の持つ固有の状態 に落ち着いていることが示唆された。さらに、口唇閉鎖時間率という観点から被験者を分 類すると閉鎖率の高いグループと低いグループの大きく2っのグループに分類されたこと より、個性正常咬合者においても安静時にはすべてが常時口唇を閉鎖しているわけではな いことが示された。

く実験2>

  音楽鑑賞時において口唇閉鎖時間率が比較的高かったものの知的作業時および睡眠時に おいてはともに低い値を示した。この結果から、口唇閉鎖は個性正常咬合を有する被験者 においても個人差が存在することが確認された。

  さらに、階層クラスター分析の結果から被験者を大きく4つのグループに分けることが できた。このグループ内およぴグループ間での検討をしたところ、口唇は知的作業時の条 件下で最も離開しやすく、次いで睡眠時、音楽鑑賞時の条件の順であることが示された。

また、少なくとも音楽鑑賞時の条件下で口唇閉鎖時間率が低い者については他の条件でも 低いこと、音楽鑑賞時およぴ知的作業時の両方において口唇閉鎖時間率が高い者にっいて は、睡眠時の条件でも口唇閉鎖の程度は比較的高いことが示唆された。一般に、歯科治療 に際して睡眠中における状態を直接検査することは困難を伴うことが多い。本研究結果か

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ら、覚醒時の知的作業時と音楽鑑賞時の条件下で検査を行うことで、睡眠時の状況をある 程度推察できることが示された。

【結論】

1.新しく開発した口唇閉鎖状態連続記録装置により口唇閉鎖の状況を直接的かつ長時間   記録することが可能となり、本装置の有用性が示された。

2. 本研究 で用 いた(1)知的 作業 時(2)音 楽鑑賞 時(3)睡眠時 の3つの 条件 にお いて口     唇閉鎖の状況は異なっていた。

3.口唇は知的作業時で最も離開しやすく、次いで睡眠時、音楽鑑賞時の順であることが   わかった。

4.本法を用いることで、覚醒時の知的作業時および音楽鑑賞時の口唇閉鎖の状況から睡     眠 時 の 口 唇 閉 鎖 の 状 況 を あ る 程 度 推 測 で き る こ と が わ か っ た 。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   飯田順一郎 副 査    教授    赤池    忠 副査   教授   井上農夫男

学 位 論 文 題 名

日常生活における口唇閉鎖状態の新しい評価法と応用

  審査は審査員全員出席の下で行った。まず申請者に提出論文要旨の説明を求め、その後に提 出論文と関連分野に関する口頭試問の形式で審査した。まず申請者から以下の説明がなされた。

  不正咬合の成因については、口唇の閉鎖や舌の動きといった機能的な要因の関与が示されて いる。このうちロ唇については閉鎖の有無を評価する方法として肉眼的観察など様々な方法が あるが、いずれの方法も口唇閉鎖を直接的に評価していなぃ。また日常生活における睡眠をは じめ、口唇を積極的に活動していない状況下での持続的な口唇閉鎖状態の観察に関しての報告 はこれまでに見られない。

  そこで今回、経時的に長時間、口唇閉鎖時間を記録することを目的として口唇閉鎖状態連続 記録装置を開発し、有用性を検討した。また、これを用いて日常生活で営まれる様々な状態の 中から(1)知的作業時(2)音楽鑑賞時(3)睡眠時を代表として再現し、これらの状況下における 口唇閉鎖状態を直接的かつ客観的に測定して評価した。

【対象およぴ方法】

く実験1冫口唇閉鎖状態連続記録装置の開発

  被 験 者 と し て 個 性 正 常 咬 合 を 有 す る 成 人11名 ( 男 性8名 、 女 性3名 ) を 選 択 し た 。   口唇 閉鎖の状 態を潤定 するた めに新たに作製した口唇閉鎖状態連続記録装置を装着した。

本装置で口唇の閉鎖状態を感知するセンサ部は上唇中央部に設置し、上唇が下唇と接触してい る時にON、離開している時にOFFとなるように設定し、出力信号をコンピュータに記録した。

  実験に際してはまず被験者に、本実験は口唇を最もりラックスした状態での計測であること を説明し、条件(A)としてあらかじめ口唇を閉鎖させた状態、条件田)としてあらかじめ口唇を離 開させ た状態の2通りから実験を開始し、10分間の計測を行った。この測定を被験者に対して (A)、田)の条件で各カ3回ずつ合計6回行った。さらに、本記録データから全測定時間に対する 口唇の閉鎖している時間を口唇閉鎖時間率(口唇閉鎖時間/測定時間x ioo%)として算出した。

く実験2>睡眠時と覚醒時における口唇閉鎖状態について

  被験 者として 個性正常 咬合を 有する成人男性25名を選択した。(1)知的作業時(2)音楽鑑 賞時(3)睡眠 時のそれぞれの状況における口唇閉鎖時間の様相を明らかにするために、我々が 新たに開発した装置と同時に睡眠状態を確認するために睡眠ポリグラフイーを装着して両者の 連続同時記録を行った。(1)〜(3)それぞれの条件における全測定時間に対する口唇閉鎖の時間を 口唇閉鎖時間率(口唇閉鎖時間/測定時間xioo%)として算出した。

【結果および考察】

く実験l>各被験者聞で条件(A)、(B)のデータのばらっきには差がないこと、またそれぞれの平     ―732

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均値聞においても差がない ことより本装置の有用性が示された。さらに口唇閉鎖時間率という 観点から被験者を分類する と、閉鎖率の高いグループと低いグループの大きく2っのグループ に分類された。以上より個 性正常咬合者においても安静時にはすべてが常時口唇を閉鎖してい るわけではないことが示さ れた。

く実験2>音楽鑑賞時におい て口唇閉鎖時間率が比較的高かったものの知的作業時および睡眠 時においてはともに低い値 を示した。この結果から、ロ唇閉鎖は個性正常咬合を有する被験者 においても個人差が存在す ることが確認された。

  さらに、階層クラスター 分析の結果から被験者を大きく4つのグループに分けることができ た。このグループ内およぴ グループ間での検討をしたところ、口唇は知的作業時の条件下で最 も離開しやすく、次いで睡 眠時、音楽鑑賞時の条件の順であることが示された。また、少なく とも音楽鑑賞時の条件下で 口唇閉鎖時間率が低い者については他の条件でも低いこと、音楽鑑 賞時および知的作業時の両 方において口唇閉鎖時間率が高い者については、睡眠時の条件でも 口唇閉鎖の程度は比較的高 いことが示唆された。一般に、歯科治療に際して睡眠中における状 態を直接検査することは困 難を伴うことが多い。本研究結果から、覚醒時の知的作業時と音楽 鑑賞時の条件下で検査を行 うことで、睡眠時の状況をある程度推察できることが示された。一 般に、歯科治療に際して睡 眠中における状態を直接検査することは困難を伴うことが多い。本 研究結果から、覚醒時の知 的作業時と音楽鑑賞時の条件下で検査を行うことで、睡眠時の状況 をある程度推察できること が示された。

【結論】

・新しく開発したロ唇閉鎖 状態連続記録装置により口唇閉鎖の状況を直接的かつ長時間記録す   ることが可能となり、本 装置の有用性が示された。

・ 本研 究で 用い た(1) 知 的作 業時(2)音楽鑑賞時(3)睡眠時の3つの条件に おいて口唇閉鎖   の状況は異なっていた。

・口唇は知的作業時で最も 離開しやすく、次いで睡眠時、音楽鑑賞時の順であることがわかっ   た。

・本法を用いることで、覚 醒時の知的作業時およぴ音楽鑑賞時の口唇閉鎖の状況から睡眠時の   口唇閉鎖の状況をある程 度推測できることがわかった。

以 上 の 説 明 の 後 に 以 下 の 試 問 を し た 。 1.センサーの信頼度について

2.実 験条件の設定の理由

3.視診、問診と実験結果の整合性について 4.口 唇 閉 鎖 状 態の 臨 床上 の意 味に つい て 5.今 後の展開に関して

  本論文は、歯の位置の保持あるいは歯周組織の健康維持のために臨床上重要と考えられる口 唇の閉鎖に関して、一日を通した日常生活の中における口唇の状態をできるだけ容易に、また 客観的に検査する方法を開発しようとしたものである。本研究により、睡眠中における口唇閉 鎖状態が覚醒時の2つの条件下における計測により、ある程度推測できることが明らかにされ た。この成果は歯科矯正臨床における保定、あるいは適切な診断法の確立に向けて重要な情報 を与えるだけでなく、歯周病学の臨床においても貴重な検査法となることが考えられ、歯科医 学の発展に寄与するところが大きい研究成果であるものと高く評価できる。加えて、試問の結 果から、申請者は本研究に直接関係する事項のみならず、関連分野における基礎的、臨床的な 広い学識を有していると認められた。よって、申請者は博士(歯学)の学位を授与される資格 を有するものと認めた。

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参照

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