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雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

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Academic year: 2021

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

金属クペロン錯体のDMF中に於けるポーラログラフ ィー

著者 村上 光博

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 19

号 2

ページ 41‑49

発行年 1970‑11‑30

その他のタイトル Polarography of Metal Cupferrate Chelates in DMF

URL http://hdl.handle.net/10105/3025

(2)

奈良教育大打撃 第19巻 第2号(自然)昭和45年 Bull. Nara U. Educ, Vol. 19, No.2, (Nat.), 1970

金属クペロン錯体のDMF中に於けるポーラログラフイ←

村  上  光  博 (奈良教育大学化学教室) (昭和45年5月30日受理)

Polarography of Metal Cupferrate Chelates in DMF Mitsuhiro MuRAKAMI

(Department of Chemistry, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received May 30, 1970)

Most of metal cupferrate chelates dissolve easily in DMF. Polarography of these solutions were studied, adding tetraethylammoniumperchlorate as the supporting electrolyte. Among

these 17 chelates, Al (‑1.39V vs SCE), Bi (‑1.67V〝), Fed) (4.22V〝), Cr(ffl)

(‑1.02V〝), Sn(BO (‑1.26V〝), Mo(VI) (‑1.48V〝), In e2.00V〝), Cd (‑2.08V〝), Ni (‑2.12

V〝), Zn (‑蝣2.14V〝) gave considerably well defined waves, and each Al, Bi, Fe(ni), Sn(]V)

had a calibration curve of good linearity over the range of 0.2 ‑2.0 mM!1 concentration.

1.緒    言

βジケトンやオキシソのように,金属イオンと分子内錯塩を生成する有機キレート試薬は,水 溶液中の微量金属イオンの沈殿試薬や抽出試薬として広く用いられている.生成した金属錯体は 有機溶媒に易溶なものが多く,この溶液が特異な皇色を示す時には比色法に依る微量定量も可 能である.しかし,一般にこれら金属錯体は互いによく似た水溶液条件(温度, pH等)から 生成し,また有機溶媒中での吸収も相似た領域に起ることが多いので,多数の金属イオン種が共 存する場合にはそれらを完全に分離することは極めて困難で,相互間の妨害,干渉に対する顧慮 は大きな問題である.一方ポーラログラフィー分析法は,錯体の電気化学的性質の差異を利用し てこれを定量する方法であるから,金属錯体の生成と併用すれば,ある程度分離不充分の場合に も定量可能な組合せがあり得ると考えられる.この観点から金属錯体のポ‑ラログラムを検討し ているが,今回はクペロンに依るそれについて報告する.

2.試薬お よ び装置

クペロン(ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム C6H902N3)は市販特級試

薬を6%水溶液として用い,これを常温で種々の金属イオン水溶液に加え,酢酸,酢酸アンモニ ウム等を添加して沈殿最適pHに調節,金属錯体沈殿を得る.沈殿はNo.4ガラス炉器に.炉し取 り,微量クベロソ含水,酢酸アンモニウム含水,冷水等で洗浄して過剰のクペロンを除き, 50o

w

(3)

42 村  上  光  博

‑60‑Cで一夜乾燥したものを金属錯体試料とする.殆ど凡てのクべロン金属錯体はDMF (ジ メチルフォルムアミド)に極めて易潜で,各金属錯体をImM/1溶液とし,テトラエチルアソモ ニクムパークロレートを支持塩として0.1M/1に加えて置く。

ポ‑ラログラフは柳本製P‑8型,三極液抵抗補償回路付,強制滴下式を用いたが,拡散電 流定数Iの測定には自然滴下 t ‑4.81秒 m‑1.38mg/秒に依った.実験中温度は250±0.1oC

に調節する.

3.実験結果お よ び考察

3.1クベロソ金属錯体のポ‑ラログラム

得られた10余種のポ‑ラログラムを次に示す.クベロソ自身は. (Fig.1)のようにOVolt (vs S.C.E.)付近の酸化波と, ‑1.42Vの第一波とそれに連続する小波と, ‑2.4V付近より立ち上 る大きな第二波とを示すが,これは安達氏(1)等がDMSO中で得たものとよく対応し,第一渡 のIは1.84, log‑plotの勾配は75.9 mVで良い直線となる.このものはクペpンの酸型分子の 還元波である.第二波は滴下が乱れて解析は困難であるが,大約のIは13以上となり,クぺロ ン陰イオンの還元波と考えられる. ‑般にクペロンの金属錯体では,波高の低い緩傾斜の波の一 つ二つと,特徴的な高い比較的良い形の波(主波)と,最終に近いこのクペpl/イオンに依る高 い乱れ勝な波,とを示すものである.

1 1

2.0 ‑VM.S.C.E 1)アルミニウム,ビスマス,鉄CI) (Fig.2)

これらはクペロン錯体の沈殿が極めて得易く,ポーラログラムも比較的良好で,特徴となる主 波は波高と濃度との直線性も良く,分析化学的応用の可能なものである. Alは‑1.34V B蝣y2の 主波とそれに続く小波と,大きな波(主波の3倍波高位)が終末渡の前に出ているが,第‑波 (主渡)が最も形が良い.インジゥムもよく似た形の波を示すが, Inの場合は前に出る第‑波,

(4)

金属クベロソ錯体のDMF中に於けるポーラpグラフイ‑ 43

第二波が綬傾斜の小波で,第三波が最も形も良く大きい波(主波)となっている.同様のことが Alと1nのオキシン錯体に於ても観察できる. Biは‑0.5V, ‑1.0V付近の小起伏と‑1.67

V Ey2の主波とから成り,この主波は極めて良好な解析結果を示し(I ‑5.54, log‑plot勾配 50.0mV).‑2.4V以降にクペロンイオンに依る立ち上りが続く. Fe(I)もオキシソ塩の場合と 同型で, ‑0.22V E%の第一波が良い形になっており, ‑2.12V Ey2の第二波の約2倍波高,

と最終のクペロンイオソの立ち上りとから成り,第一波,第二波共に良好な解析結果を与える.

第一渡はFe(ffl)‑Fe(II),第二波はFe川)‑Fe(O)の還元と見られ 同様の波は銅(I)の場 合にも見られたが,この場合はCud)‑Cu(I)の第一波は極大を伴なV、良い波ではなかった.

(Fig.4).またコバルトCD,マンガン(HI)のオキシソ塩にも同型の波が得られている.

2)クロ‑ム(班)スズ(]V) (Fig.3)

スズはSn(]I)からも Sn(lV)からもクベロソ錯体の沈殿は極めて得易いのであるが DMF 静液からのポ‑ラpグラムは同一のものが得られ これは沈殿生成の重量関係からSn(flOのも

のと考えられる.これはCr(H)のものと極めて簸似の形で,共に‑1.0V付近の第一波が良好 な解析値を与え,濃度依存性も艮いが,低い第二波は不完全である. Or(刀)はクぺロン錯体が 弱酸にも易溶で,沈殿生成は余り完全ではないがFe(HI)やAlの共存の下ではかなりよく共沈 することが観察し得たが,詳細は末だ検討していない.

3)アンチモ蝣/(!),鉛,モ1)ブデン(VI) (Fig. 4)

これらは ‑1.0‑1.5V の間に主波を生ずるが,この主波の前に緩傾斜の立ち上りを伴ってい る. Mo(VI)については,主渡は良い解析値を得るが, sb(in)のそれでは単一の波ではないら

(5)
(6)

金属クペロン錯体のDMF中に於けるポ‑ラログラフイ‑ 43

しく, log‑plotはS字状の折線形のものが得られる. Pb(丑), Mo(YI)では主波の前に前駆的に 現われる緩傾斜の前波がSb(U)に於ては集約されて主波と一連になったかのような観を与えて いる.これらの中Sb(打), Mo(VI)のクペロン錯体は沈殿として得易いが, Pb(fl)のクぺロン 錯体は酸可溶で,沈殿生成は不完全になり易いものである.

4)細en),ニッケルen),亜鉛,カドミウム (Fig.5)

これら丑価の遷移金属のクベロソ錯体のポ‑ラログラムはオキシン塩のそれと相似な形である.

Cu錯体はオキシソ塩の場合も‑1.0V以前に極大を伴った波を生じ, ‑2.0V以降にやゝ低い 第二波を示したが,クペロン錯体の場合も全く同形である. Ni(E)は ‑l.5‑2.OV にかけて 緩るい立ち上り, ‑2.1V 付近に主波がある Zn. Cdの場合は前駆の立ち上りは更に緩るやか で, ‑2.1V 以降の主披ほ比較的良い形になっていてそれぞれよい解析倍と濃度依存性を示すが, Cu以外クペロン錯体の沈殿生成反応は完全とは云い難いものである.

2.0 ‑V...S.C.E

5)イ'/ジゥム,スカンジゥム,ランタン,セリゥム(班) (Fig.6)

インジゥム,およびⅢ価の希土類のクベロソ錯体のポーラログラムは類似の形で,いづれも余 り良い波ではない ‑1.5‑2.OVの間に第一波がNi,Zn,Cdの場合より顕著に立上り,第二波 の主渡は更に高く,かつ,歪んだ形になっている. Inの場合‑2.OVの主波は良い解析値で,濃 度依存性も良好であった.オキシン塩の場合はInはAlと相似の形であったが,クペロン錯体 ではAlは第一波が, Inは第三波が完全な波となっているように見える. (何れも‑1.5‑2.OV の間に3つの波を持つが, Alの第三波は極大を伴って乱れ易く, Inの第‑,第二波は緩傾斜の 立上りである).これらのクべロン錯体は,現殿生成も完全で,得易いものである.

(7)

5E 村  上  光  博

6)チタン(Ⅳ)バナジン(V) (Fig.7)

両者共にクベロソ錯体は沈殿生成は完全で あるが,ポーラログラムは終始緩るやかに 上昇する不明瞭な波の連続で艮形ではなか

aa

以上のポ‑ラログラムのE与る,Iを一括して 右に示す.波形の良好なものについてはIog‑

plot勾配も求めてある. (良好でない波のEy2 ほ一段右にずらせて記してある.)

1.0

c.M!昌

E 与るC V vs . S .C .E ) I 0 g ‑p lo t 勾 配 fm V ) (1 H (C u p )

(2 ) A l C 3

(3 B i C 3

4) F e C 3

5 C r C 3

(6) S n . C 4

7 S b C 3

0 .0

‑ 1 .4 2 5

‑ 2 .5 5

‑ 1 .3 9 ー1 .8 5 ー0 .4 7

‑ 1 .0 3

‑ 1 .6 7

(酸 化 波 ) 1 .8 4 1 3 以 上 3 .2 8 極 大 0 .2 8 1 .1 5 .5 4

7 5 .9

5 3 .6

5 0 .0

ー0 .2 2 2 .3 5 6 7 .3

‑ 2 .1 2 5 .1 9 1 2 8 .0

‑ 1 .0 2 7 .4 5 5 1 .7

‑ 1 .5 6 6 .3 7 6 8 .5

‑ 1 .2 6

‑ 1 .6 6

‑ 1 .1 4

6 .6 3 3 .0 0 4 .9 6

9 5 .5

7 2 .3 8 P b C 2

(9) M o O 3 C

(1ゆ C d C 2

W N i C 2

(18 Z n C 2

0 頚 C e C ,

‑ 0 .7 8

‑ 1 .0 3 ー1 .2 6

‑ 1 .4

数段 の前 駆 波

‑ 1 . 12 ー 2 .C

3 .2 2 1 .7 3 7

0 .6 3 .6 3

ー 1 .7 8 2 .0 2

‑ 2 .1 2 ー1 .6 2

‑ 2 .14 ー2 .0 3

3 .8 5 1 .1 3 . 17 5 .3 1

9 4 .0

7 2 .3

6 1 .3 (1⑩ L a C 3 ‑ 2 .0 7 4 .1 3

姻 S c C 3

In C 3

ー 1 .69

‑ 2 .14

‑ 1 .4 ー 1 .5 5

‑ 2 .0 0

1 .5 8 7 .0 7

5 .4 2

(8)

金属クペロン錯体のDMF中に於けるポーラログラフィー 47

3. 2 ポーラログラムに依る検量線と実分析例

比較的良好なポーラログラフ波を示し,かつ,クベロソ錯体の沈殿生成反応の完全なFe(I), Bi, Al, Sn(]V)について濃度,波高の依存性を測り, Fig. 8に示す.いづれも0.2‑2.0mM/l

の範囲で良好な検量線を得た.これはそれぞれの金属イオンの,各濃度の水溶液10mlからクペ ロンに依り沈殿を待,ガラス炉器に折取,洗浄,竜燥後,折器上より10mlのDMFを繰返し注 いで沈殿を完全に溶解したもののポーラログラム波高を測ったものである.各試料とも,金属イ オン濃度0.05mM/lに於ても,クペロンに依る沈殿生成は確認し得るが,熟成時間を長くかけ られず(酸性溶液ではクペロンは余り安定でなく,分解するので,短時間の問に常温以下の温度 で反応させなければならない)沈殿生成の反応の進行の不完全なことや,中性溶液に於てすら各 錯体はある程度の溶解度がある(例えばBi‑クベロソ錯体は18‑Cで8.4mg/l ‑ 0.013mM/lの 溶解度を有する(2X3X4))こと等で測定はかなり過小に出て検量線から外れる.

Bi含有の実試料として,奈良県下特産の売薬の胃腸薬の一品の錠剤を採り,分析を行なった.

錠剤6錠(一回分の服用量, 1157mgであった)を約40mlの濃硫酸と,硫酸カリウム結晶若干 を加えてキ‑ルダール瓶中に沸騰,砕解せしめ,淡黄色透明となった溶液を250mlメスフラス コに希釈し,この溶液5.0ml又は10.OmlからBi‑クペロンを析出せしめ, 10mlのDMFに 解溶してポーラログラムをとったのである,

(9)

48 村  上  光  博

測 定   (1)10ml (2)5.0ml

BトクべロンOA) 6.66  3.31

(3) 5.0ml (4) 5.0ml

錠剤1回服用分当りBi含量は1.67×豊‑ 83.5mgこの錠剤は1回服用分当り次硝酸ビ

マス((Bi203)エ(N205):y nH20) lOOmg含有としてあるものであった.

4.結    語

通常の操作で得られる金属のクペロン錯体は,一般にDMFに極めて易溶である.この溶液 中でこれら錯体のポーラpグラムを検討した, Al, Bi Fe(I) Sn(]V)については比較的良好な 波が得られ 0.2‑2.0mM/1の範囲で良い検量線を得たが,他のものについては特徴となる主波 の前に不明の小起伏を伴なうことが多く,余り良い波は得られなかった. Cr(I),Mo(Vl),In(I), Zn, Cdはその中でも主波の波形の良いものであるが錯体生成の沈殿反応は必ずしも完全でない ので分析化学的応用ほ望めなかった.

この研究中,終始適切な助言と援助を賜った本学井上竹子教官,協力して頂いた学生諸君に改 めて輝く感謝致します.         (昭和44年第15回ポーラログラフ討論会講演)

(10)

金属クペロン錯体のDMF中に於けるポーラログラフィー

文    献

(1)安達武雄,藤永太一郎,伊豆津公佑 ;第14回ポーラログラフ討論会 (2) A.Pinkus, F.Martin      ; C.A 21 3575 (1927) (3) G.E.F. Lundell, J.I.Hoffman ; ibid 21 3791 (1927) (4)同   上      ibid 21 3926 (1927)

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