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雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

貝割れ大根の生育および貯蔵中のビタミンC含量の 消長

著者 櫛部 政久, 船橋 昭子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 38

号 2

ページ 21‑26

発行年 1989‑11‑25

その他のタイトル Changes in Vitamin C Contens during Growth and Storage of Raphanus sativus L. var.

acanthiformis Makino

URL http://hdl.handle.net/10105/1968

(2)

貝割れ大根の生育および貯蔵中のビタミンC含量の消長

櫛 部 政 久・船 橋 昭 子*

(奈良教育大学栄養学教室) (平成元年4月28日受理)

Changes in Vitamin C Contens during Growth

and Storage of Raphanus sativus L. var. acanthiformis Makino

Masahisa KUSHIBE and Akiko HUNAHASHI

(Laboratory of Nutrition, Nara University of Education, Nara 630, fapan ) (Received April 28, 1989)

Abstract

Rhaphanus sativus L. var. acanthiformis Makino was cultivated by water culture (mean daily temperature: 20‑25‑C). After seeding, the plant height reached a maximum (ll ±lcm) at the 6th day. and its weight reached a maximum (240士22mg) at the 8th day.

Changes in vitamin C contents during growth and storage were investigated. The content of total vitamin C in seed was small in quantity (11±2mg/lOOg), but it increased rapidly at the 3rd day after seeding. The content reached a maximum (55±lOmg/lOOg) at the 6th day and then decreased gradually. The content in the cotyledon, in which photosynthesis was active, was more than that in the hypocotyl.

The samples cultivated for seven days were stored at 4 and 20‑C. In twelve days, the rates of total vitamin C degradation were 13% and 36%, respectively. The activity of AsA oxidase was very low. It seems, therefore, that the degradation was due to non‑enzymatic oxidation.

緒     言

近年,貝割れ大根(Raphanus sativus L. var. acanthiformis Makino)は市場に広く出回っている 清浄野菜である.特有の辛味が好まれ,広く調理に利用されている.しかも生育期間は7‑10日 間で,家庭の室内で水耕によっても容易に栽培できる.そこで栄養成分の一つであるビタミンC につき,水耕栽培による生育過程および貯蔵中の含量の消長を追求し,低温貯蔵による分解は著

しく少なく,その給源としても有効であることが認められた.

実 験 方 法 1.試  料

市販の貝割れ大根の種子(タキイ種苗株式会社製)を使用した.

21

*)現在の所属:大阪府立交野養護学校

(3)

22 櫛 部 政 久・船 橋 昭 子

2.栽培方法

種子を2‑3時間水に浸漬後,貝割れ大根用栽培容器(新和プラスチック株式会社製)を使用 して室内の明るい場所で水耕栽培した.栽培期間中の日平均気温は20‑25‑Cであった.なお肥 料は使用しなかった.

3.貯蔵方法

播種後, 7日目の試料をサランラップで包み,さらに硝子容器中に密封し, 4。および20‑Cに 貯蔵した.

4.ビタミンCの定量法

1) DNP法: 3%メタ燐酸で抽出し,遠心分離(15,000rpm, 20分間)級,上澄みを波過 して試料とした.貯蔵中のビタミンCは常法にしたがって2,4‑Dinitorophenylhydrazine (DNP) 法1)で定量した.種子および生育中の試料は生成したオザゾンを硝子フィルター(直径: 1cm, 孔径:io‑i6!Jm)で吸引漣過し,約1mlの冷水で3回洗浄した.次いで, 85%硫酸5mlを加 えて溶解後,冷却しながら冷水5mlを加えて希釈後比色した.

2 )蛍光法: AsA (Ascorbic acid)を2,6‑Dichloroindophenolで酸化し,次いで0 ‑Phen‑

ylenediamineを反応させた.生成した蛍光を分光蛍光光度計FP‑550A 日本分光製)を使用し て励起波長350nm,蛍光波長425nmで測定した2).

5. AsA oxidase活性

通常5gの試料に, GelationO.1%を含む SorensenのPhosphate buffer (pH6.0) 5mlと適量 の海砂を加えて磨砕し,さらに同緩衝液を10ml加えて混合後,遠心分離(15,000rpm, 10分間)し, 上澄みを漉過して粗酵素液を調製した.租酵素液5mlにAsAを含む 5mg/ml)上記緩衝液 0.5mlを加えて37‑Cに放置した.経時的に一定量を取り10%メタ燐酸を1滴加えて反応を停止 させ,インドフェノール法4)で残存するAsAを定量した.試料1gが1分間に分解するAsAの

〃g数をAsA oxidase活性とした.

結果 と考察

1.生育状況: 播種後の草丈および個体当りの重量(根部を除去した)の変化を図1に示し た.その結果,草丈は6日目に最高(11±1cm)に達した.他方,個体当りの重量は2日遅れ て8日目に最高(240±22mg)になり,その後生育が停止して徐々に減少した.

2.ビタミンC定量法の検討: 種子についてDNP法を適用すると,盲検債がビタミンC区 分の比色債の約2倍になった.また抽出液にAsAを20‑30!′gに添加しても全く回収されなかっ た.そこで種子中のAsAの存否を追求するため, DNP法により生成した黄色の沈殿物を硝子フィ ルターで集め,水洗後, Ethylacetateに溶解した.次いで薄層用シリカゲル60F254板(メルク社製) を用い, Toluene‑Acet。ne‑5%Aceticacid (2‑ト1);で展開した.その結果(図2),種子中に もAsAの存在が確認された.他方,岩井ら6)は中国野菜についてDNP法による定量の際,盲検 値が高くなることを酸性白土で防止している.しかし種子の抽出液に酸性白土を1‑2%添加し

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150盲

‑    0.5

EB 頃 佃月 一oo

YO yo yo iO v.コ LYC) LYO

LY O YC) LVO LVO

yC) yC) y O C) oO o> 09 (>・ 09>

LYC) LYC) YOQ

1   2    3    4    5    6

図2. DNP法によるAsAai量に影響する 化合物の薄層クロマトグラム

1 :ヒドラジン, 2 :AsA, 3:種子の抽出物, 図1.生育による草丈および重量の変化    4, 5, 6二生育2, 4, 9日目の試札

●‑●:草丈, ○‑○:重量      o :桃色,Y:黄色,LY:赤黄色,Yo:黄桃色

ても盲検値はほとんど改善されなかった.次にオザゾンを漉過,水洗後硫酸に溶解して比色した.

その結果,盲検値はほとんど0になり,しかも抽出液に添加したAsAも完全に回収された.そ こで生育中のビタミンCはオザゾンを漣過後硫酸に洛解して比色定量した.なお生育5日目以 後の試料については骨法との値がほとんど等しくなった.すなわち,種子中に比色を妨害する因 子が多量に含まれ,それは生育するにつれて消失することが認められた.

他方,種子抽出液について蛍光法を試みると,蛍光借が盲検値とほぼ等しくなった また AsAを10/Jg添加しても全く回収されなかった.すなわち, DNP法と同様妨害因子が多量に含

まれていた.しかしDNP法と同様生育5日目以後の試料では妨害因子がほぼ完全に消失した.

3.生育中のビタミンC含量: 種子および生育中の試料(根部を除去した)の酸化型ビタ ミンCは著しく少なく,多い試料でも総ビタミンCの3%以下であった.したがって,主とし て総ビタミンCについて検討した̲

生育中の試料のビタミンC含量の変化を図3に示した.すなわち,種子IOOg中の総ビタミン Cは11±2mgであったが,生育が活発になる3日目頃からビタミンCの合成も旺盛になり6日 目に最高(55±lOmg)に達し,その後減少した.従って,食用に適する物は播種後約1週間日 頃の物と考えられる.

他方,子葉部と旺軸部にわけて個体当りの総ビタミンCの分布を検討した.その結果(図4),

両部とも生育するにつれてほぼ同様の経過をたどり子葉部は7日目に,旺軸部は8日目に最高に

達し,その後減少した.しかし駈軸部より子葉部の含量が多く,しかも生育初期程子葉部の占め

る比率が高かった.すなわち4日目の試料は子葉部に1個体中の総ビタミンCの約70%を占め

(5)

24

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櫛 部 政 久・船 橋 昭 子

たが,その比率は生育するにつれて急速に減少し, 8日目に59%になり,その後徐々に減少した.

なお酸化型は著しく少なく,特に子葉部より腫軸部の方が若干少ない傾向であった.

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3

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4        6        8      10 i: a a it

図4.生育による部位別総ビタミンC含量 (佃体当り)の変化

●‑●:子葉都, 0‑0:粧軸部, 図3.生育による総ビタミンC含量の変化    ●一一一一一●:子葉部が占める比率

0     2     4      6     8    10    12 貯 蔵 日 数

図5.貯蔵による総ビタミンC含量の消長

●‑●:4"C貯蔵, ○‑○:20‑C貯蔵

I   i   V ' i   < f   W   I U   U S 邸 +

o

hY

また別に,光りが全く当らない暗所 で同様に栽培した.明所栽培とほぼ同 様の傾向で重量および草丈が増加した が,明所栽培よりも細長かった.総ビ

タミンCについては,生育6日目に 最高(37±7mg/lOOg)に達した.し かし明所栽培と比較して約33%少な かった.このことは,光合成とAsA 合成との相関を示している.

菅原7)はAsAは光合成産物から二 次的に合成されると述べている.鯨 ら8)はホウレン草を自然光および遮光 して栽培し,クロロフィル含量と AsA含量との間に有意な正の相関を 認め,遮光して栽培するとAsA含量 が少ないと報告している.また,北川9) は根菜類の根部におけるビタミンC の分布を検討し,上部は葉の光合成作 用の影響を受けて棄のっけねに近いほ

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ど多く,また下部は細胞分裂が盛んな先端部ほど多いと述べている.これらのことは,明所栽培 した試料にビタミンCが多かった結果と一致する.また子葉部に多いことは,光合成作用によ る影響がより大であったことを示唆している.

4.貯蔵によるビタミンCの消長: 生育7日目の試料を40および20‑Cに貯蔵し,総ビタ ミンCの消長を測定した(図5). DNP法によると, 4‑Cに貯蔵すると12日後においても約13%

が分解したにすぎなかった.しかし20‑Cでは分解率が増加し, 12日後約36%が分解した.他方 蛍光法による結果も同様の傾向を示したが,含量はDNP法より約10‑20%低い値を示した.蛍 光法ではジケトグロン酸やレダクトン類による影響が少ないと述べられている2).また図2に示 したように, Dehydroascorbic acidのオザゾンの他に発色に影響する物質の存在が認められ,こ れらに起因してDNP法ではより高い値が得られたと考えられる.

なお貯蔵による酸化型ビタミンCの増加は両法ともほとんど認められなかった.すなわち, 低温貯蔵によりAsAの損失は比較的少なく,ビタミンCの給源としても有用である.

5. AsA oxidase活性と貯軌こよるビタミンCの安定性   AsA oxidase活性は播種後2 [=]

に11/Jg/lOOgで,この値は一般の野菜と比較すると著しく小さい.しかも活性は生育するにつ れて次第に減少し, 6日目にはほぼ完全に消失した.そこで貯蔵によるビタミンCの安定性と AsAoxidaseとの関係を広く追求するため,市販の数種の野菜についてこの関係を検討した.そ の結果(表1 ), AsAoxidase活性の弱い野菜が必ずしもビタミンCが安定ではなかった.レタ スおよびホウレン草では急速に分解し、ハクサイ,キャベツおよびピーマンについては残存率が 高かった.しかもキャベツはAsA。xidase活性が最も強かった.山内ら10)は野菜について貯蔵中 のAsAの安定性は, Oxidized ascorbate reductase活性とAsA oxidase活性との相互関係による と報告している.したがって,貯蔵によるビタミンCの安定性はAsAoxidase活性による効莱 のみではない.しかし,貝割れ大根はAsAoxidaseが生育するにつれて消失したため,酵素的分 解はほとんど進行せず,貯蔵による若干の分解は非酵素的酸化によると推論した.

表1.野菜の貯蔵によるビタミンC含量の消長およびAsAoxidase活性

試 料

ビ タ ミ ン C の 残 存 率 ( % ) 貯 蔵 開 始 時 の A sA o x id a se 極 性 4 ーC , 7 日 間 貯 蔵 3 0 ーC , 3 日 間 貯 蔵 総 ビ タ ミ ン C A SA 総 ビ タ ミ ン C A SA

レ タ ス Ih 4 2 5 ± l l

ホ ウ レ ン 草 4 9 2 5 4 士 2 1

某 ネ ギ 7 5 7 9 1 5 s 1 5

パ セ リ . 8 0 7 8 5 1 5 2 5 0

ミ ズ ナ 8 4 8 2 6 7 6 8 6

オ オ ツ カ シ ロ ナ 7 1 6 5 4 0 2 0 2 4

ハ ク サ イ 9 6 9 5 10 0 10 0 1 0

キ ャ ベ ツ * 9 2 8 9 10 0 1 0 0 60

ピ ー マ ン 10 4 1 0 9 9 5 9 8 1 7

*)緑色部

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26 櫛 部 政 久・船 橋 昭 子

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貝割れ大根を室内の明るい場所(日平均気温:20‑25‑C で水耕栽培した.草丈は生育6日 目に最高(11±1cm)に,重量は8日目に最高(240±22mg)に達した.

総ビタミンCは種子中には著しく少なかった(11±2mg/lOOg, 1.8±0.3/Jg/個体)が,生育 3日目境から急速に増加し, 6日目に最高(55±lOmg/lOOg)に達し,その後徐々に減少した.

部位別の分布は旺軸部より光合成の活発な子葉部に多く,その比率は生育初期程大であった.

生育7日目の試料を40および20‑Cで貯蔵した. 12日後の総ビタミンCの分解率は,それぞれ 13%, 36%で,比較的安定であった.この分解は, AsAoxidaseがほとんど存在しないため,非 酵素的と推論した.

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1 )浦田久埠:要説実験栄養化学(いずみ書房), 207 (1966).

2 )日本食品工業学会食品分析法編集委員会編:食品分析法(光琳), 471 (1982).

3 ) Powers, W., Levis, S. and Dawson, C. '/. Gen. Physiol., 27, 167 (1944).

4)浦田久輝 5)藤田秋治, 6)岩井道夫, 7)菅原友太 8)鯨 幸夫, 9)北川雪恵

要説実験栄養化学(いずみ書房), 202 (1966).

広瀬福子,内山由子:ビタミン, 40, 17 (1969).

山本義彦,大鹿淳子:家政誌, 37, 131 (1986).

農,園芸作物のビタミンCに関する研究(養賢堂), 7 (1957).

石黒弘三:栄養と食糧, 37, 239 (1984).

栄養と食糧, 24, 292 (1971).

10)山内直樹,緒方邦安:園学雑, 47, 121 (1978).

参照

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