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雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

元素分析による古代土器の産地推定の実例(2)大 連寺窯跡(仙台市)出土須恵器

著者 三辻 利一, 児島 玉貴, 岸山 藤彦, 津本 恵史, 竹

内 静香

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 29

号 2

ページ 23‑28

発行年 1980‑11‑25

その他のタイトル Sourcing of Ancient Potsherds Excavated from Sites (Part 2) On the Sue‑ware sherds from the Dairenji kiln site in Sendai city (Miyagi

prefecture)

URL http://hdl.handle.net/10105/2410

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奈良教育大学紀要 第29巻 第2号(自然)昭和55年

Bull. Nara Univ. Educ‥ Vol. 29, No.2 (Nat.), 1980

元素分析による古代土器の産地推定の実例(2)

大連寺窯跡(仙台市)出土須恵器

三辻利一・児島玉貴・岸山藤彦・津本恵史・竹内静香

(化学教室) (昭和55年4月30日受理)

Sourcing of Ancient Potsherds Excavated from Sites (Part 2) On the Sue‑ware sherds from the Dairenji kiln site

in Sendai city (Miyagi prefecture)

Toshikazu MITSUJI, Tamaki KOJIMA, Fujihiko KISHIYAMA, Keiji TSUMOTO and Sizuka TAKEUCHI

{Laboγatory of Chemistry, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received April 30, 1980)

Both neutron were made on

site in Sendai sherds showed in Sendai city.

Abstract

activation analysis and X‑ray fluorescence spectrometry some Sue‑ware sherds excavated from the Dairenji kiln city (Miyagi prefecture). The chemical features of these that these were made from the clay which was collected

1.は し が き

東北地方にも,古代におけるいくつかの大窯業生産地がある.岩手県江刺市,山形県酒田市, 宮城県古川市をf^jOとした地域である.この他にも,青森県五所川原市や,秋田県内の各地でも, 須恵器は生産された.しかし,いずれも操業時期は新しく,大阪陶邑のように古墳時代の5世紀 末に操業した窯跡はないと言われた.ところが,数年前,仙台市育英高校の渡辺泰伸氏によって 発掘された大連寺窯跡は考古学会での大議論の末, 5世紀末に操業していたと推定される,東北 地方の最古の窯跡であることが認められるようになって釆た.本報告では,その大連寺窯跡出土 の須恵器胎土が陸前産であることを確認した結果について報告する.

2.実  験  法

前報と同じであるので省略する.

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24 三辻利‑・児島玉貴・岸山藤彦・津本恵史・竹内静香

3.結     果

最初に,東北地方各地の窯跡出土須恵器の特性について述べる.使用した地域特性因子は,け い光Ⅹ線分析によるRb, Sr,および,放射化分析によるNa/Kである.東北地方産出須恵器のFe 量は比較的多い方で,東北地方内の各地域の相互識別には役立たないので省略した.

地質学上の大構造線であるフォッサマグナを挟んで東側の東北日本の窯跡出土須恵器には, Rb 含有量が全国平均より少ないという一般的傾向がある1).図1には,本州最北限の窯跡である青 森県五所川原市前田目窯出土須恵器の分布領域を(Rb‑Sr)分布図上で示してある.中央に引か

0.5 Sr Sr

図1五所川原市前田目窯跡出土須恵器のRb ‑ Sr分布  図2 江刺市周辺の窯跡出土須恵器のRb ‑ Sr分布

0.5 Sr Sr

国3 秋田県内の窯跡出土須恵器のRb ‑ Sr分布    図4 酒田市周辺の窯跡出土須恵器のRb ‑ Sr分布

(4)

元素分析による古代土器の産地推定の実例( 2) 25

れた新座横軸は,これまで分析された約3,000個の全国の窯跡出土須恵器の平均値である. Rb量 が全国平均より,やや少なく, Sr量は平均値並みというのが青森県の窯跡出土須恵器の特徴であ る.図2には,岩手県江刺市の窯跡出土須恵器の分布領域を示してある.図1, 2から,青森県 と岩手県の窯跡出土須恵器は, (Rb‑Sr)分布図上では全く相互識別出釆ないことがわかる.図3 と図4には,各々,秋田県内各地,および,山形県酒田市周辺の窯跡(城輪窯,泉谷地2, 16号 窯,願瀬1号窯)出土須恵器の分布領域を示してある.秋田県内のものは,県北部から南部まで, 広い地域にわたる12窯跡(上新城窯,手形山1, 2号窯,葛法窯,海老沢3, B号窯,長根窯,

FTb

I..

..

..

l

0.5 Sr Sr

国5 山形市小松原票出土須恵器のRb ‑ Sr分布    図6 寒河江市平野山窯出土須恵器のRb ‑ Sr分布

ME Sr Sr

図7 日ノ出山窯出土須恵器のRb‑ Sr分布    図8 仙台市富沢金山窯出土須恵器のRb ‑ Sr分布

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26 三辻利一・児島玉貴・岸山藤彦・津本意史・竹内静香

上成沢1, 2, 3号窯,物見窯,郷土館窯)から出土したもので,ばらつきの範囲も広い.酒田 市周辺のものは小地域の窯に限定されているので比較的よくまとまっている.酒田市周辺の須恵 器は,青森・江刺グループに比較してSr量が,やや,少ないのが特徴であり,秋田県のものの分 布領域は,青森・江刺グループと酒田グループの両方にまたがって分布している.これは,秋田 県内の窯跡分布が県北部から,県南部まで,広範囲にわたっているためと考えられる.同じ山形 県でも,酒田市から離れた山形市小松原窯跡と寒河江市平野山窯跡出土須恵器では,分布領域も 少し異なる.図5, 6に,その分布領域を示す.

これらの東北地方中央部,および,日本海側の窯跡出土須恵器に対して,太平洋側の窯跡出土 須恵器はどんな特徴をもつのだろうか? 図7には,陸前古川市の日ノ出山古窯祉群(日ノ出山 1, 8号窯)の窯跡出土須恵器の分布領域を示す.また,図8には,仙台市内の金山窯跡出土須 恵器の分布領域を示してある.同じ東北地方の中央部や日本海側のものに比べて, Rb量はさらに 少ないという特徴を示している.また,日ノ出山窯跡のものは金山窯跡のものに比べて, Sr量 が,やや多いという特徴をもつ.

LTb

● 大 連寺 窯 跡 須恵 1

0 富 沢埴 輪

庄 内 . 青森 .. 秋 田 . 江 刺 寒 河 江領

前領 域 山形 領域

0 ●0

● ●

● ●

n

0.5

Sr

囲9 大連寺窯跡出土須恵器および,仙台市富沢出土埴輪のRb ‑ Sr分布

(6)

元素分析による古代土器の産地推定の実例( 2) 27

図1から,図8までを比較すると,東北地方産出須恵器の特徴がわかる.東北三大窯業地の江 刺市の須恵器と酒田市のものでは, Rb量は,ほぼ同じで, Sr量に,やや相違がある.これに対し て,もう一つの大窯業地である陸前古川市のものは, Sr量では,青森・江刺グループと同じであ るが, Rb量が少なく, Rbが陸前グループを他の東北グループから識別する上に有効な因子であ ることがわかる.

全国の窯跡出土須恵器について, KとRbの間に正の相関があることが判明している. (K‑Rb) 相関図上で,陸前グループが酒田グループから識別出釆ることは既に報告した2).また, KとRb 量が東北地方の太平洋側に少なく,日本海側に多いという傾向は,これらの地域の花尚岩の分析 結果からも理解出来る.すなわち,増田は東北地方産出の花園岩の分析結果から,これらの荏尚 岩が2種のマグマから生成したことを指摘している3).須恵器の素材である粘土は岩石が風化さ れて出来た最終生成物である.同一地域の岩石と粘土の分析値が一致するはずはないが,同一地 域の粘土の特性は,その地域の岩石のもつ傾向に支配されることは当然と言えよう.

次に,仙台市内の大連寺窯跡から出土した須恵器のRb‑Sr分布を図9に示してある.各々の地 域の分布領域は,当該地域産出須恵器の全分析値を包含するようにして決められている.陸前領 域は日ノ出山古窯蝕群,および,金山窯の須恵器から決められている.大連寺窯跡出土の須恵器 は5点とも陸前領域に入り,それ以外の東北領域には帰属しないことを示している.

上記の結果を,もう一つの地域特性因子(Na/K)を使って確認した結果を次に示す.放射化分 析によるNa/Kの分布領域は図10にまとめられている.各地域の領域を示す棒線は全分析値を包

Na/K

10   20   30   40   50   60 陸前地方

福島地方

江 刺 市 五所川原市 山 形 市

寒河江市

酒 田 市

大連寺窯跡 富沢の埴輪

図10 東北地方産出須恵器のNa!K分布

合するようにして引かれている. Na/Kの全国平均値は16付近にあり,東北地方の須恵器は,i 般に,大きいNa/Kの値をもつことがわかる.その中でも,酒田グループのNa/K値は低く, 陸前,および,江刺の両グループとも明確に異なる. Na/K因子は,酒田グループ,江刺グルー

プ,陸前グループの東北三大窯業地を相互識別する上に,最も有効な地域特性因子であることが

(7)

28 三辻利一・児島玉貴・岸山藤彦・津本恵史・竹内静香

わかる.大連寺窯跡出土の須恵器は, Na/K因子でも,すべて,陸前領域に入っている.

この結界, Rb, Sr, Na/Kの3因子から,大連寺窯跡の須恵器胎土は在地型であると結論する ことが出来る.

なお,図9, 10には,仙台市富沢から出土した埴輪の分析結果も併記してあり,この胎土も在 地型であることを示している.

最後に,貴重な須恵器片試料を提供して下さった渡辺泰伸(仙台育英学園高校),工藤雅樹(宮 城女子大) ,佐藤頑宏(酒田中央高校) ,小野 忍(酒田市教委) ,小松正夫(秋田市教委) , 新谷 武(青森県教委) ,伊藤博幸(水沢市教委)の諸氏に深謝の意を表します.

4.文     献

1)三村利一(1980) 「胎土分析による古代土器の産地推定」 古文化談義 第7集 223‑235

2)三辻利一・西岡淑江・岡本久美子・若林郁世・円尾好宏・石田志朗(1979) 「火山灰のケイ光Ⅹ線分析 (第1報) ,大阪層群の火山灰(1)」奈良教育大 紀要 28:37‑50

2)増田康之(1979) 「東日本の火山フロント沿いの2種のマグマ‑その量的関係」地球化学会年会講演 要旨 32‑33

参照

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