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雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

Al‑Zn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究 −破断 寿命に及ぼす試験片形状の影響について−

著者 岡 俊博, 今井 学

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 44

号 2

ページ 37‑48

発行年 1995‑11‑24

その他のタイトル A Study of Corrosion Cracking in Al‑Zn‑Mg Alloy −Influence of Specimen's Shape on the Failure Time−

URL http://hdl.handle.net/10105/1616

(2)

奈良教育大学紀要 第44巻 第2号(自然)平成7fF Bull. Nara Univ. Educ., Vol. 44, No. 2 (Nat. , 1995

Al‑Zn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究

一破断寿命に及ぼす試験片形状の影響について‑

岡  俊 博 ・ 今 井  学'

(奈良教育大学技術教室) (平成7年4月28口受理)

A Study of Corrosion Cracking in Al‑Zn‑Mg Alloy

‑ Influence of Specimen s Shape on the Failure Time ‑

Toshihiro Oka and Manabu Imai

(Department of Technology, Nara University of Education, Nara 630 , Ja妙)

(Received April 28, 1995)

Abstract

Al‑5.91wt.%Zn‑1.96wt.%Mg‑0.16wt.*Fe alloy specimens with a thickness of lira were prepared five different shapes named H‑shape, I‑shape,V‑shape,0‑shape,and U‑shape by a fraise‑machine, a drill machine, and a hand‑saw. They were heated in the condition of aging at 120℃ for 24 hours, after solidification at 450℃ for 30 minute and quenching into water at 0℃. Nineteen tes卜specimens with the same shape were tested in order to measure failure times of the stress corrosion cracking under three constant applied stresses (80%,60%,40* of 0.2% flow stress, a,) in 3.5% NaCl + 0.2% H202 water solution of pH 5.2. Nineteen failure times measured were plotted on the Weibull s probability paper which is widely used in the reliability engineering.

Cumulative probability distributions of failure time were found to be described as the single Weibull's distribution. The shape parameters (m) of the Weibull s distribution

of failure time were found to lie between 3 t0 8. The scale parameters (わof the

weibull s distribution were obtained. The average failure times ( 〟 ) were calculated by the values of m and り. The failure probability density function f(t) vs. time (t) curves were plotted in order to compare the effect of the applied stresses in the same shape, and the cumulative failure distribution function F(t) vs. time (t) curves were plotted in order to compare the effect of the five specimen s shapes under the same applied stress. Notch‑effects in their shapes to the stress‑concentration were calculated by the finite element method and displayed on the computer. The mechanisms of failure which occur with the intergranular cracking and the transgranular cracking were discussed on specimen s shapes and applied stresses by the above mentioned results.

*現在 奈良教育大学大学院教育学研究科修士課程

37

(3)

38 岡  俊 博 ・ 今 井  学

1.緒   R

AトZn‑Mg合金は超々ジュラルミソと呼ばれ,アルミニウム合金の中では巌も強度が高く,義 近では航空機,電車,自動車,金属バット,テニスラケットなどの軽くて強い材料を必要とする 部分に使用されている.しかし,この有川なアルミニウム合金は応力と腐食が同時に作用して起 きる金属材料特有の破壊現象,即ち応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking,以FSCCと略 す)を起こし易いことが欠点である.

AトZn‑Mg合金のSCC発生の機構は次のようである.即ち, 「割れに敏感な経路」は結晶粒界に 限定されており,初期の局部選択腐食を考えると,結晶粒界での陽極的な析出物の選択的溶解は, 応力を負荷することにより加速され, secの核となる腐食孔が形成される.この腐食孔‑さらに 応力が集中して,腐食により脆くなった結晶粒界に沿って割れが発生する.この割れは,最も簡 単に割れるような経路を通って進行し,ついに試料全体におよび,破断に至るとされている】,2)

一方, secに影響を及ぼす因子は大別して, ①負荷応ノ), ②腐食環境, ③金属組織等が挙げら れている. (彰の負荷応力は下限があり,かなり小さな場合にはSCCは起こらない.しかし,残留 応力がある場合でもSCCが起こることがある.実験室的には,降伏応力の40‑  の弾性歪が起 こる程度の負荷をかける場合が多い.負荷応力と破断寿命との関係は破断寿命の対数と負荷応力 との関係が直線的であることが求められている3). (塾の腐食環境については,温度,湿度,塩素 イオン濃度, pH値等が関係する4‑7) ③の金属組織については,純金属を除いてほとんどの実用 金属材料でSCCは起こり,合金組成,熱処理,加I二度,結晶粒径8,9)などが関係する.また,粒界 腐食を伴う水素脆性が破壊機構の原因であるとする研究報告が数多く見受けられる10‑13)これら が複雑に作用してSCCが起こるため,その寿命は同一‑の試験条什下においても大きなバラツキを 示す.そこで,そのバラツキを少数の試料で統計学的に処理を行うことができ,信頼性r二学でよ く用いられているワイプル確率分布1ト25)を用いた定量解析を行うことにした.

また,測定時間を短縮するためと割れ伝播の顕微鏡観察個所が限定できるため,従来からノッ チの入った形状の試験片が用いられてきたが,平滑試験片との併用試験が望まれている26,27)そ こで,本研究ではAトZn‑Mg合金試料素材で数種類の形状の試験片を作りその破断寿命値を測定

し,その得られた実験データより平均寿命値を求め,試験片の形状が破断寿命に及ぼす影響を調 べた. 一方,有限要素法により28‑30)これらの形状の応力分布をコソビュータで計算して求め, 応力集中の影響を考察に役立てるようにした.これらの結果を以下に報告する.

2.実験方法

2.1試験片

本研究で使用したAl‑Zn‑Mg合金は, ㈱神r製鋼中央研究所で製作を依頼したもので,試験片 素材はAト5.91wt.KZn‑1.96wt.KMgに結晶粒径を小さくするために0.16wt.KFeを配合した4元 合金で, lKgの合金イソゴットを最終1mmの厚さに圧延し, 450℃で30分間溶体化処理後,水 焼き入れを施したものである.試験片は圧延材の圧延方向を試験片の引張り方向と平行にして, 幅10mm,長さ100mmに切断し,合計450本を得た. 30本を・租とし15種類の実験を行うことに

した. 1組30本の中から5本をJIS6弓弓「張り試験片に準拠した形状に什しげ,残りの25本は試 験片中央部の両側に糸鋸で深さ(長さ) 3mmで 1mm幅のノッチを入れた形状(I形状) ,

(4)

AトZn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究

39

試験片の中央部の両側にフライス盤で5mm幅のカッターで深さ3mmのノッチを入れた形状 (U形状) ,試験片の中央部の両側に深さ3mmで,モジュールピッチが1.5, N0.2のイソポリュー トカッターで加工した形状(Ⅴ形状) ,ボール盤で試験片の中央部に¢5.8の穴をあけた形状

(O形壮) , ∬S6号引張り試験片に準拠した 形状(H形状)の計5種類のSCC試験片に仕し げた.各々のSCC試験片の形状を図1に示す.

形状を加工後,これらの試験片を, 120℃で24 時間の時効処理を行った.試験片の機械的性質 を調べるため,各形状ごとに2mm/minの引 張り速度で引張り試験を行い5本の平均値を取 り,降伏応力a, (0.2%歪の流れ応力‑耐力) を求めた.標準であるH形状の試験片では,辛 均結晶粒径は50ォmで,降伏応力はa‑y‑45kg/mnf で.11<J.

i n;‑・扶  ¥im状  0月,=拭  ∪形状  HWA大

l⊥l] m 二= = I夏

a‑ ,

‑ … [

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4 I

, I 1

‑ I i I

‑ H

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‑ J I I

I ,

‑ A

田 m il〃" 〟 ー 「 71

工 ∴ ふ し̲、」  J 図1 試験片の形状(単位mm) 2.2 腐食液

本試験に使用した腐食液は, Al‑Zn‑Mg合金のSCC試験に最もよく使われている3卜34,36)海水中 の食塩の平均濃度を考慮した3.5%NaCl水溶液である.これに酸化剤として0.2%のH202を加えた

ものを使用した.この時のpH値は5.2であった.また,腐食液の温度は,背後よりニクロムヒ‑

クーで加熱して熱電対で測定し,温度制御器で33±1℃に保つようにした.

2.3 実験装置

実験装置は40:1の椋杵式定荷重引張り試験機を使用した,実験装置は図2で示す.試験片の伸 びは栢杵の先に直流作動トランスのコアを取り

付け,試験片のわずかな伸びをX‑tレコ‑ダ で250倍に拡大して記録するようにした.また, 別に並列接続した‑イブリッドレコ‑ダでは, 試験片の伸び,腐食液の温度,ならびに室温を 記録するようにした.さらに,試験中に試験片 の伸びや腐食液の温度などのデ‑タをGP‑IBイ ンタフェースを介してコソビュータに取り込み, モニターで監視できるようにした.また,試験 片の破断時間を知るために,破断時に栢杵が大 きくトがるのを利用して,電源が切れるデジタ ルタイマにより試験片の破断寿命を測定した.

測定の誤差は1分以内である.

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S P o c m a n G l a s s T u b e

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図2 実験装置

2.4 実験方法

SCC試験は次の手順で行った.先ず,試験片の表面を3%HF水溶液で30秒洗浄してから,十 分水洗いし,メチルアルコールをかけてから冷風乾燥した.その後,工具顕微鏡でノッチ部の寸

(5)

40 岡  俊 博 今 井  学

法を0.01mm単位で測定した.次に, 2つに割ったシリコソゴム栓に試験片をはさみ,腐食液が 約15cc入るガラス管内に入れ,試験機の上下両チャックに取り付けた.次に,降伏応力α,の80

%, 60%または40%の引張り応力を負荷した.荷重は試験片のノッチを入れた部分の幅を計算し て求め 40: 1の板杵の先に必要荷重の1gの精度で負荷した.その後,腐食液をガラス管内に 約15cc入れた後,測定・制御機器を作動させた.破断寿命は,実験開始時刻を明記し破断終了時 刻をタイマから読み取り,その時間差とした.破断後の試験片の破面は,メチルアルコールで 1‑

分洗浄して乾燥し保存した.

2.5 ワイプルプロット

各形状の試験片において,負荷応力を6,の80%, 60%, 40%にしてそれぞれSCC試験を行い 求めた破断寿命時間tはバラツキが大きいので,統計学的に処理するためにワイプル確率分布を 利用した.同一の試験条件で得られた測定個数N‑19個とし,それらの値を大きい値から小さな 値に並べ替え順序統計量とした.従って,それらのn番目の累積確率F(t)はF(t)‑n/(1+N によって与えられる.即ち, 10番目であれば, F(t)‑10/(l+19)‑0.5(50%)である.測定したt の値を秒単位に直し,それに対応する累積確率F(t)をワイブル確率紙18)にプロットした.

ワイプル確率分布の累積確率分布関数F (t)は,

F (t) ‑l‑exp[‑{ (t‑γ)/の     ‑(1)

によって表される.ここで, tは時間, γは位置パラメータ, mは分布の形状を表す形状パラメー タで,この値が小さいほど測定値のバラツキが大きいことを示す.りは尺度パラメータ(特件寿 命値)である.先ず,ここでは位置パラメータγ‑0とした2母数ワイブル分布による統計処理 法にてデ‑タ解析を行った.

3.実験結果

各形状ごとに,負荷応力を降伏応力αyの80%, 60%, 40%にしてそれぞれSCC試験を行い, 各条件につき19個の値を大きな値から小さな値に並べ替えワイブル確率紙にプロットした累積確 率分布関数F(t)の結果を,図3 (H形状) ,

図4 (I形状) ,図5 (Ⅴ形状) ,図6 (0形 秩) ,図7 (U形状)に示す.各形状における ワイプルプロットは一直線上に乗っているのが, いずれの場合にもよく分かる.このγ‑0の2 母数ワイブル分布において,ワイプルプロット が直線に乗らず上に凸形の分布をする場合,長 寿命側と短寿命側とでその分布の勾配が異なる 複合ワイブル分布が考えられる.しかし, try and fail"により(1)式に適切なγ値を代入して, そのプロットが‑直線上に乗るならば,そのγ 値を考慮したワイブル分布を考えるべきだとさ

o   m o o n X U n U O n U 5 n U L D   O

O r

‑ o o c o r

′ 0 5 一 4 3 へ

∠ I C N I

‑  

( S O   ( 1 ) ﹂

Lnt

‑I.0 QO 1.0  20  3JD  4.0 l

H 形状 80% 60%

Ql   0.5 1.0   50 10.0   50 100 t(xlO sec)

図3 H形状の破断寿命のワイブル分布

2.0

1.0

0.0 uL

(6)

Al‑Zn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究

れている20)しかし,今回の結果からγ値を考慮する必要がないと判断した.

tn1

2.0 ‑ 1.0  0.0 1.0  2.0  3.0

9   5 n U O n X U O O ハ U S n U 5   ハ U o   o o c o r

‑ J O 5 一 4 3 へ ノ ラ

(% ) O) d

9   5 0 n U n X U n D o o u i o u n   o

o   o o c o r

‑ ム ー 5 . 4 へ 蝣 n C N C N ( .

% )   C 一 ) A

l

l 馴 犬 6 0 % 6 0 % 4 0 %

. √ ′

. .

I . . .

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. 0.0

‑1.0

‑ 2.0

‑ユ8

0.1   05 1.0 SO 10.0    50 100 日×10 sec)

図4 I形状の破断寿命のワイブル分布

Lnt

20 ‑L QO 1.0  20  3.0  4.0

I l l

D 形 状 6 0 % 4 0 %

.

.

.

l ‑

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.

0   0 0

‑ c o r

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(JO C一)﹂

( ( ) L I L

L ) u I U l

21)

1.0

BK

‑1.0こ

05 1.0    50 10.0    50 100 t(×10'sec)

図6 0形状の破断寿命のワイブル分布

fill

‑ 1.0  0.0 1.0  20

g IV … /80% /60% /40%

00 05 05 0

5 .

l ‑ . . .I .

Ell

E 3 o d

‑1.0

‑2.0

‑ 3.0

Ql    0.5 1.0    50 10.0    50 100 t(×10'sec)

図5 V形状の破断寿命のワイブル分布

Int

2.0 ‑ 1.0  0.0 1.0  2.0  3.0

9   5

∩ U n U n X U n D o o m ' n u 5   n U 0

‑   O O   C O f

^

・ O i r ) 一 4 っ J r Z 1 つ 4

‑    

( % )   ( 1 ) ﹂

l l

U 馴 犬 8 0 % 6 0 % 4 0 % .

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.

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‑ l l

‑1.0

‑2.0

‑ 3.0

Ql    05 1.0    50 IOjD    50 100 1(Xl01sec)

図7 U形状の破断寿命のワイブル分布

( ( 1 )

\ I

>

u l u i

<O )d IL

UI Ul

次に,各形状におけるワイプルプロットに最小2乗法により引いた直線の勾配であるmの値と, この直線にInln (1/トF(t)) ‑0,即ち累積確率分布関数F(t)‑63%に相当する直線(全体の 約63%が故障する時間)との交点から求めた時間(特性寿命値)甲の値を算出した.ここで求め

られた2つのパラメータm,りよりワイプル確率分布の平均寿命値FLを(2)式で求めた.

FL‑野 r (i+i/m) +γ   ‑(2)

ここでrはガンマ関数で, γ‑0である.算出した平均寿命値FLと, 2つのパラメータm,野を 表1に示す.

図3‑7の結果より,負荷応力によって破断寿命値が異なっていることが分かる.図3のH形 状の試験片の場合,負荷応力40%のプロットがないが,これは負荷応力を40%にまで下げるとH 形状では3日間(259.200×103sec)実験を行っても破断しなかったので打ち切り中止した.図

4, 5のI形状とⅤ形状の破断寿命値のワイプルプロットは,等間隔に負荷応力の影響が現れて

(7)

42

岡  俊 博 ・ 今 井  学

表1各形状の試験片について,各負荷応力でSCC試験してワイプルプロットから求めた,形状 母数m,尺度母数り,平均寿命値fL

試 験 片 負 荷 応 力 形 状 母 数 尺 度 母 数 平 均 寿 命 値

の 形 壮 ( q y × % ) m FL ( × 1 03se c ) 〟 ( × 1 0 3se c )

H

8 0 6 . 0 3 4 . 4 6 4 . 1 3

6 0 4 0

3 . 6 9 1 0 . 8 2 9 . 7 6

I

8 0 4 . 8 9 2 . 1 3 1 . 9 5

6 0 3 . 4 3 5 . 6 9 5 . l l

・ 0 2 . 7 9 1 9 . 2 1 7 . 1 6

8 0 3 . 7 2 4 . 4 7 1 . 3 3

6 0 3 . 8 7 4 . 8 5 4 . 3 9

4 0 2 . 8 2 2 0 . 6 6 1 8 . 4 0

0

8 0 . 2 8 2 . 0 3 1 . 9 3

6 0 5 . 2 0 . 8 5 . 1 2

4 0 3 . 3 1 1 6 . 7 7 1 5 . 0 4

U

8 0 8 . 2 5 2 . 5 1 2 . 3

6 0 3 . 5 4 . 1 3 . 7 7

4 0 2 . 8 7 3 6 . 1 7 3 2 . 2 4

いるのに対して,図6の0形状の60%と40%,図7のU形状の80%と60%では非常に破断寿命値 のワイプルプロットが接近して分布していることが分かる.

4.考  察

上記の実験結果から得られた(彰形状パラメータm, ②平均寿命値pと, (郭確率密度曲線f(t)‑t,

④累積確率分布曲線F(t)‑tと, ⑤有限要素法による応力集中を解析して, AトZn‑Mg合金の応力 腐食割れ寿命に及ぼす試験片の形状の影響について考察する.

先ず,表1に示したワイブル分布の形状パラメータmの値を試験片の形状別に負荷応力に対し てプロットしたものを図8に示す.負荷応力が大きいほどmの値が大きい(バラツキが少ない) ことが分かるが, V形状だけは異なっている.一般にmの値が3から4ぐらいの時,ワイブル分 布の形はほぼ正規分布と同じ形になることが知られている18)一番大きな値は0形状で降伏応力 の80%の時, 8.28を示し,一番小さな値はI形状で降伏応力の40%の時, 2.79である.このワイ プル確率分布の形状パラメータmは, m<0の場合初期故障型 m‑1の場合偶発故障型, m>1の場合磨耗故障型のように分類される.本研究で算出したmの値はいずれの場合も, m>1で故障の発生現象は磨耗故障型である.このことは,本研究のSCCによる破断は試験片の 製作方法や試料自体の不良により破断したのではなく,試験片が与えられた応力や腐食環境によ

り磨耗して破断したと判断できる.

SCCによる破断方向は,引張り方向と直角の方向である.従って, secは結晶粒界に沿って脆 性的に破断が進行するとしても,結晶粒界が引張り方向と直角に配列されていることは希である ので,結晶粒内の機械的破壊を伴って起こる31‑33)と考えられる.負荷応力が高い場合は,結晶粒 内の破壊が多数を占めて,寿命値のバラツキを少なくする(mの値が大きい)のに対して,負荷

(8)

Al‑Zn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究

43

応力が低い場合は,結晶粒内の機械的破壊の割合が少なく,結晶粒界に沿った破壊が優先すると 考えられるので寿命値のバラツキが大きくなる(mの値が小さい)と考えられる.従って, Ⅴ形 状の試験片は80%の高応力でもm‑3.72で粒界に沿った破壊が優先したと考える.

次に,表1で示した平均寿命値〃と負荷応力の関係を,図9に示す.負荷応力が大きくなると I形状とⅤ形状はほぼ同じ傾向で平均寿命値が減少しているが,負荷応力60%で折れ曲がってい る.このことから, I形状とV形状は,負荷応力に対してノッチの部分に同じ影響を受けている と考えられる.しかし, U形状では負荷応力60%′での折れ曲がりが著しい. 0形状では,負荷応 力が大きくなるにつれて,平均寿命値は‑1一定に減少し一直線Lになっている.

H形状の試験片では,負荷応力が40%の時の測定は3日間で中止したので不明であるが,負荷 応力60%で折れ曲がること予想できる.

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‑ i ‑ , I

40  50  ム0  70  80 負荷応力(a,×%)

図8 形状パラメータ(m)と負荷応力の関係

n U   0   n U r o   c n          

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‑ 0   I x ) n   I 塘 蝦 空 叶

I l 一 . l

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1 L L ‑ ‑ 、

40  50  60  70  80 負荷応力(.O,×%)

図9 平均寿命値U)と負荷応力の関係 さらに,データ全体の状況を把握するために,ワイブル分布の確率密度曲線を調べることにし た.そこで,確率密度関数f (t)を描くことができるプログラムをMS‑DOS版N88‑BASIC(86) で作成して,普通時間軸(t)で確率密度曲線を描いて図1 0に示す.

ワイブル分布の確率密度関数f (t)は. (1)式の累積確率分布関数F(t)を微分して,

f(t)‑m‑ (t‑γ)‑1/り exp{‑ (t‑γ)m/りm)   ‑(3)

によって表される.ここで, γ‑0である.

すべての曲線が,上に凸の形をしている.各形状とも,負荷応力の値が大きいほどピークが高 い曲線になっていることが分かる. I形状とⅤ形状は,いずれの負荷応力においても確率密度曲 線がよく似た曲線を示していることが分かる. Ⅴ形状で,試験片の負荷応力が降伏応力の80%の

とき,形状パラメ‑タmが他の形状のものよりかなり低い値であったが,特性寿命値である尺度 パラメ‑タりを加味した確率密度関数で曲線を普通時間軸で描くと, I形状と変わらない高いピー クを示している.

次に,各形状の試験片を有限要素法を用いて,応力集中の分布状況を調べた.先ず,解析を行 うのに入力データが必要となる.データには,解析対象の物性値データ,解析対象の寸法・形状 (要素分割データ) ,拘束,荷重条件などが挙げられる.解析対象物の対称性を考慮して,解析 対象物の何分の1かを取り上げる.本研究では,どの形状も実際の1/4のモデルで解析を行うこ

(9)

蝣11

岡  俊 博

H 形携

8 0 %

6 0 %

,‑ Il ・'}'‑

10  20  30  40  50  60  70  80  90 100 t (×1000 sec)

80%

60%

40%

O形

80%

60%

40%

40      60 0      20      40      60 t (×IooO sec)

図10 各形状(H,I,V,O,U)の試験片片における各負荷応ノJでのSCC寿命値の確率密度曲線 とにした.

また,ノッチの入っている部分を中心に0.5mm間隔で:̲角形要素に分割し,ノッチから離れ た部分ほど三角形要素の大きさを大きく分割した.各形状とも同じ手法で要素分割を行った.解 析対象物の寸法は,引張り方向に50mm,横方向に5mm,板厚は1mmでモデル化した.各形 状の総要素数と総節点数は,表2に示す.また, Al‑Zn‑Mg合金の物性値デ‑タは,弾性係数

(ヤソグ率) 7300kg/mf,ポアソン比0.33である35)

このデータを, FORTRAN77言語でプログラミングされた解析プログラムを用いて,実際に 計算を行い,その結果をコソビュータの画面に図形化して出力した.コンピュータの画面には, 図形化された解析対象物が応力表示で出力されている.応力評価は相当応力で行った.その応力 表示された応力分布状態の結果を写真撮影し,トレ‑スして図1 1に示す.これらの図はいずれ もノッチの近辺を拡大したものであり,解析対象物の右上に表示されているバロメータは,応力 の高低を示している.濃く表示した部分は一番応

力が高く,薄く表示した部分ほど応力が低いこと を示している.

各形状とも,ノッチの入っている近辺に応力が 集中していることがよく分かる.また, I形状と

Ⅴ形状は非常に類似しているが,よく見るとI形 状の方が2番目に高い応力の部分が多いのが分か る. 0形状は内円の一番細い部分に応力が集中し

表2 各形状の総要素数・総節点数

形状 の

種 類 総 要 素 数 総節 点 数

I 形 状 4 4 4 2 5 8

Ⅴ形 状 4 3 5 2 5 2

O 形 壮 4 0 6 2 3

U 形 状 2 3 4 3 9 6

(10)

AトZn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究

図11有限要素法による各形状の試験片のノッチ部近辺にかかる応力分布状態

ている. U形状ではノッチの角の部分に最大の応力が集中し,その隣接部も2番目に高い応力が 集中分布している.

解析対象物は1/4のモデルであるので,各形状を元の形状と照らし合わせて検討する.先ず, I形状, Ⅴ形状の応力が集中している部分は,ノッチ先端の平行部がI形状では1mmで, Ⅴ形 状では1.72mmで,非常に短いため左右2カ所であると考えた. U形状のノッチの先端部の長さ は5mmで,応力が最大に集中する部分は左右上下の4カ所である.その中間部もかなりの応力 が集中していることが分かる.以上の応力解析より, I形状, Ⅴ形状は一番早く破断し,続いて U形状, 0形状, H形状の順で破断するのではないかと予測した.

(11)

46 岡  俊 博

次に,各負荷応力別に累積確率F (t)‑t曲線 で試験片の形状による寿命値の比較を図12で示 す. secの破壊経路は,合金の結晶粒界や析出 物の存在するところから起こる36)本実験では,

負荷応力は降伏応力の80,60,40%の高,中,低 の3段階で行った,降伏応力の80%の負荷応力 では,破壊の経路は,粒界に沿う破壊だけでは なく粒内も降伏して機械的な破壊が進行する.

つまり,高応力のため粒界,粒内と連続した破 壊が起こりうると考えられる.そのため,ノッ チの形状による応力集中の影響は大きく,破断 寿命値に大きな影響が現れた.

中応力である降伏応力の60%の負荷応力では, 主に粒界で破壊が進むが,その後は粒内破壊も 起きると考えられる.即ち,粒内,粒界混合で 破壊が進んでいく.そのため,負荷応力80%の 時とは異なる結果になったと考えられる.つま

り, 0形状の場合は粒内破壊は少なくなって寿 命時間が伸びている.負荷応力が降伏応力の40

%になると, I, V, Oのような形状ではノッ チの形状の影響は少なくなっている.即ち,負

今 井  学

m & 】

′ VI I (7.x80%

∨ 1 0 fllト U H1

′ ′∫

∫∫ ′

′ /

4  7  8  1 10

/ ♭Y /′

′ ′ /

U,Xb0%

UlJ′V ‑ D /H

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.... /

0  2  1  6  a lo 12 Il 16  <B  20

/ : / /「

UrX40,i

o/i V /

/

/

′ /

0    0   20   3D   40   50   60   7C】  80 t (× 000 sec)

図12 累積確率F (t) ‑t曲線(80,60,40%) 荷応力を40%にまで下げると,破壊は粒界のみ

でしか進行せず,粒内による破壊は少なくなったと考える. H形状の結果は得られなかったが, 各形状における破断の順序に注目すると,負荷応力80%と40%の結果はほぼ似ていることが分か

る.このことは,粒内が優先的に破壊する場合と粒界が優先的に破壊の経路となる場合は同じよ うな結果になることが分かった.

5.ま と め

厚さ1 mmのAl‑5.91wt. %Zn‑l.96wt. %Mg‑0. 16wt. ‰Fe合金圧延材を450℃で30分溶体化処理 を行って,長さ100mm,幅10mmの引張り試験片素材とし,引張り試験片として5種類 (H,I,V,U,O,形状)を設定し, 120℃で24時間時効処理を行った応力腐食割れ試験片について, PH5.2で3.5%NaCl+0.2%fも02の水溶液中で,降伏応力(0.2%の流れ応力‑耐力)の80%, 60

%, 40%の3種類の負荷応力で定荷重引張り試験を行って,応力腐食割れ寿命値におぼす試験片 形状の影響を調べた.

それぞれの破断寿命値は19個測定し,信頼性̲一二学で広く用いられているワイプル確率分布を用 いて統計学的に処理して平均値を求めた.ノッチを入れた試験片については,有限要素法により 応力集中の状態を解析し考察に役立てた.

これらの結果をまとめると,以下のようである.

(1)いずれの試験片においても,破断寿命値をワイプルプロットすると単一一一ワイブル分布に従う

(12)

Al‑Zn‑Mg合金の応力腐食割れに関する研究

47

分布となり,位置パラメータγ‑0の2母数ワイブル分布となった.その分布の勾配(バラツ キ)を表すパラメータmの値は,およそ3から8を示し,磨耗故障型と判定した.

(2)ワイプルプロットからもう一つの尺度パラメータ(特性寿命値)りを求めて,上述の形状パ ラメータmの値とで,平均寿命値〃を求め,これらの値から,試験片の形状が破断寿命値に及 ぼす影響を調べた.その結果,平滑試験片であるH形状の試験片で降伏応力の80,60%のいず れの応力においても最も寿命値が大きくなり,膝伏応力の40%負荷応力では3日間の試験期間 でも破断しなかった.しかし,何れかの形状のノッチを入れて,応力集中をさせた試験片では 40%の負荷応力で破断したが, U形状の試験片では破断時間が最も長かった.破断寿命値の対 数が負荷応力に比例するのは, v,i,uの形状で見られたが, 0形状の試験では,破断寿命値は 負荷応力との関係は直線関係にあった.

(3) I形状とV形状の試験片は,応力集中が最も狭い範囲で両側から起こり,負荷応力が降伏応 力の80%では,粒界に沿う応力腐食割れが最後まで続くのではなく,粒内を破壊経路とする粒 内割れが起こるために破断寿命値も短く,確率密度曲線が高いピ‑クを示した.

(4) U形状の試験片では,角型の四隅に応力の集中する部分があり,負荷応力が80%の時は, I ,

Ⅴ形状よりも少し破断寿命値が長かったのに比べて, 60%の時は予想とは逆に最も短くなった.

このことは負荷応力が60%の時,粒界に沿う破断の経路がLF2カ所あったためと考えられる.

また,負荷応力が最も小さい降伏応力の40%の時, U形状の破断寿命値は大きくなり, H形壮 の平滑試験片に似てくると考えられ,ノッチの効果は少なくなったものと考えられる.

(5)ノッチによる応力集L再現Jj腐食割れ寿命に及ぼす影響は,粒内割れを引き起こす形状で負 荷応力が大きいときに大きく受け,負荷応力が小さくなると粒界に沿って割れが進行するので, ノッチの影響は受けにくくなると考えられる. 0形状の試験片において,負荷応力が最も小さ い降伏応力の40%では破断寿命が他の形状に比べて短かかったのは,両側にある2mm幅のど ちらかの部分が破壊すれば破断するので,他の4mm幅の形状の試験片よりも破断寿命が短く なったと考えられる.

参 考 文 献

)   )  

\ ノ                          

\ 一 ノ

in 1) N CO CJI CSI CO"^ LQ

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馬場義雄:軽金属学会, 田中孝一・'軽金属学会, 砂野豊治朗・高野道典 平野秀朗・高野道典・

砂野豊治朗・高野道典 長岡邦夫・砂野豊治朗 宮木学・村上陽太郎:

fli'fUltリI I.Y,mi汁 ni;

安部睦・大内権‑一郎・

長岡邦夫・東海林恵史 長岡邦夫・砂野豊治朗 馬場義雄・吉間英雄:

"AトZn‑Mg系合金の応力腐食割れ"シンポジウム概要集, (1973),1.

"AトZn‑Mg系合金の応力腐食割れ"シンポジウム概要集, (1973),15.

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(13)

48       岡  俊 博 ・ 今 井  学

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28)三好俊郎: "有限要素法入門" ,培風館, (1987).

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34)平尾桂・・山根寿巳・南埜宣俊・岡俊博:軽金属学会誌, 4ト3(1991),197.

35)軽金属学会編: "軽金属の研究と技術の歩み, (1991).

36)軽金属学会編: "アルミニウムの組織と性質, (1991).

参照

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