ホタテ貝殻を細骨材として用いた コンクリートの実用化に関する研究
Study on Utilization of Concrete Using Scallop Shell as Fine Aggregate
2016 年 2 月
早稲田大学大学院 創造理工学研究科
山内 匡
Tadashi YAMAUCHI
目 次
第1章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.1 研究の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2 既往の研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.3 本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
第2章 発生するホタテ貝殻について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2.2 青森県におけるホタテ貝殻処理の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 2.3 青森県におけるコンクリート用細骨材の流通現状 ・・・・・・・・・・・・・18 2.4 ホタテ貝殻の利用上の関係法令との関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・20 2.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
第3章 シェルサンド ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 3.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 3.2 シェルサンドのコンクリート用細骨材としての要求品質 ・・・・・・・・・・26 3.2.1 粒度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 3.2.2 各種物性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 3.3 ホタテ貝殻の破砕方法の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 3.4 破砕性能試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 3.4.1 事前試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 3.4.2 破砕機の改良 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 3.4.3 バーの回転数の決定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 3.4.4 破砕量の決定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 3.5 シェルサンドの性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3.5.1 外観および形状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3.5.2 各種物性試験結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 1) 密度および吸水率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 2) 有機不純物・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 3) 塩化物量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 3.6 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
第4章 シェルコンクリート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 4.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 4.2 シェルサンド置換率がモルタル性状に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・43 4.2.1 試験概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 4.2.2 使用材料およびモルタル配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 4.2.3 フレッシュ性状に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 1) 15 打フロー試験および空気量試験結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・45 2) 塑性粘度およぼ降伏値の算定結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4.2.4 硬化性状に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 4.3 シェルサンドの粒度構成がモルタル性状に与える影響 ・・・・・・・・・・・51 4.3.1 試験概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 4.3.2 フレッシュ性状に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 4.3.3 硬化性状に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55 4.4 シェルサンド置換率の上限値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56 4.5 シェルコンクリートの基本性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 4.5.1 試験概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 4.5.2 使用材料およびコンクリート配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・58 4.5.3 フレッシュ性状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59 4.5.4 硬化性状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 4.5.5 圧縮強度の向上する原因について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
1) 微粒分による影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 2) 粉末 X 線回折による反応生成物の特定 ・・・・・・・・・・・・・・・・66 4.6 シェルコンクリートの耐久性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 4.6.1 使用材料およびコンクリート配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 4.6.2 凍結融解抵抗性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 4.6.3 塩分浸透性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 4.6.4 長期圧縮強度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73 4.7 シェルコンクリートの配合手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75 4.7.1 コンクリート材料の違いによる配合への影響 ・・・・・・・・・・・・・76 4.7.2 単位水量とスランプの関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 4.7.3 細骨材率とスランプの関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79 4.7.4 単位水量の増加によるコンクリートへの影響 ・・・・・・・・・・・・・80
1) ブリーディング ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80 2) 凝結時間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81 3) 乾燥収縮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82 4.8 シェルコンクリートの RC 部材としての力学性能 ・・・・・・・・・・・・・83 4.8.1 使用材料およびコンクリート配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・83 4.8.2 付着強度試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84 4.8.3 梁部材の曲げ載荷試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86 4.8.4 梁部材のせん断載荷試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 4.9 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93
第5章 シェルコンクリートの実証試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94 5.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94 5.2 ケーソン根固ブロックへの適用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 5.2.1 実証試験の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 5.2.2 使用材料およびコンクリート配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・96 5.2.3 施工性および品質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97 5.2.4 材料分離抵抗性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98 5.2.5 コアによる長期圧縮強度の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99 5.2.6 状況写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 5.3 ケーソン蓋コンクリートへの適用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102 5.3.1 実証試験の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102 5.3.2 使用材料およびコンクリート配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・103 5.3.3 施工性および品質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・104 5.3.4 状況写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 5.4 ケーソン模擬供試体の製作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 5.4.1 実証試験の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 5.4.2 使用材料およびコンクリート配合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・107 5.4.3 施工性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 5.4.4 打継ぎ性状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109 5.4.5 状況写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 5.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
第6章 青森港防波堤消波工事におけるシェルコンクリート活用調査結果 ・・・・・・113 6.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 6.2 シェルサンドの品質調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114
6.2.1 各種物性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114 6.2.2 粒度分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・117 6.3 シェルコンクリートの品質調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121 6.3.1 品質の日変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・123 6.3.2 品質の時間変動および経時変化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 6.4 シェルコンクリート消波ブロックの出来型調査結果 ・・・・・・・・・・・・127 6.4.1 消波ブロックの外観調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 6.4.2 コア採取による調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131 6.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133
第7章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137
参考資料・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139
謝辞・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・145
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第1章 序論
1.1 研究の背景と目的
わが国で生産されているホタテ貝は,北海道や青森県を中心に年間約50万トン(平成16 年度~23年度の実績)1.1)であり,その約50%(質量比)を貝殻が占めている.ホタテ貝の選 別作業によって水産加工工場などから排出される貝殻の多くは動植物残渣として適正に廃 棄処分されなければならないが,一部では重機などによって粗破砕を施された後,長期間 集積された状態にされ,悪臭や汚水の発生,また景観を損ねる場合も出てきている.また,
近年では,漁業関係者が約2トンのホタテ貝殻を,廃棄処分にかかる手間や費用が惜しかっ たとの動機によって,海上に不法投棄し,海洋汚染防止法違反の疑いで海上保安部に書類 送検された事件1.2)も起きている.
循環型社会への転換を図るため,2000年6月より「循環型社会形成推進基本法」が施工さ れ,様々な廃棄物のリサイクルへの取組みが行われ,ホタテ貝殻についても肥料や飼料の 添加材など,多方面において,有効活用に対する関心は高まっている.しかし,リサイク ル率は上昇傾向をみせているものの,本格的なリサイクルまでには至っていないのが現状 である.
ホタテ貝殻を建設資材,特にコンクリート用骨材として活用する研究は,その主成分が 石灰岩と同じ炭酸カルシウムである1.3)ことや,ホタテ貝殻自体が緻密で強度が高く3),また 大量にリサイクルできる可能性があることから,これまでにも多数実施4)~16)されてきた.し かし,ホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として適用可能な大きさまで破砕することは,
その技術やコスト面での問題から難しいため,破砕は建設重機などによる粗破砕までとな り,細骨材としてではなく粗骨材としての活用が主となっている.また,貝殻は扁平であ るため,コンクリート用粗骨材として活用する場合でも,通常のコンクリートと同様な性 状を得ることは難しく,その用途と量は限定されている.コンクリート用骨材としてホタ テ貝殻を積極的に活用していくためには,細破砕を施し,コンクリート用細骨材として,
一般的なコンクリート用途に適用できることが必要である.
本研究は,上述の背景から,漁業系副産物であるホタテ貝殻をコンクリート用細骨材と して活用し,有効な大量リサイクル方法として確立させることを目的に実施したものであ る.本論では,ホタテ貝殻をJIS A 5308に規定されているレディーミクストコンクリート の細骨材として適用できるための破砕方法の検討や,コンクリートとしての基本性質を把 握するための各種室内試験について述べる.また,ホタテ貝殻のリサイクル土木材料とし ての確立を目指し,特に港湾構造物を対象に,実用化に向けた課題の検証を目的とした各 種実証試験など,一連の研究内容と得られた成果について述べる.
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ホタテ貝殻の粗破砕状況 砂と混合して活用
混合砂の運搬船積込状況 ケーソン中詰材として投入
1.2 既往の研究
ホタテ貝殻を建設資材として活用する研究は,コンクリート用骨材として多種多様な研
究事例1.4)~1.16)がみられる.それ以外ではケーソンの中詰材1.17)や,ケーソンの摩擦増大用
マット1.18)としての活用,またアスファルト用骨材1.19),1.20)や,路面の表示用塗料として活
用1.21)した研究事例などがある.
ホタテ貝殻のケーソン中詰材としての活用(写真-1.2)1.17)は,国土交通省北海道開発局 が「北海道エコ・コンストラクション・イニシアティブの推進」1.22)の取組みとして平成 16 年度より実施されている.粗破砕したホタテ貝殻を漁港防波堤のケーソン中詰材の砂の一 部(21%)として活用することにより,砂を 100%使用した場合と比較して,中詰材に係るコ ストを約 3%縮減できるとしている.
写真-1.2 ホタテ貝殻のケーソン中詰材としての活用事例1.17)
ケーソンの摩擦増大用マットとしての活用(図-1.1)1.18)は,ケーソン底部とマウンド部
(捨石による土台)の摩擦増大用アスファルトにホタテ貝殻を混入して,かみ合わせを増 すことで波への抵抗力を大きくすることによって,ケーソン重量の軽減や製作コスト削減 につながるとしている.その効果については,模型実験で検証されているものの,貝殻の
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組み込み方や大きさなどの検討が必要となり,まだ実際の活用までには至っていない.
図-1.1 ホタテ貝殻のケーソンの摩擦増大用マットとしての活用研究1.18)
ホタテ貝殻のアスファルト用骨材としての活用は,2.36mm 以下に粉末化した状態で,ア スファルト混合物のフィラーとして,一般的に使用されている石灰石粉の代替えとして活 用した事例1.19) 1.20)がある.使用するホタテ貝殻の粉末は,後述するローラーミルなどの破 砕によって土壌改良材などを製造する際に排出されたダスト分である.ホタテ粉末入りア スファルト混合物は,標準の混合物に比べて凍結融解に対する抵抗性がやや高くなる特長 があるものの,粒度範囲の制限から,使用する配合率はアスファルト混合物全体の 3%と低 く,また材料費は石粉より若干割高となっている.
一方,粗割にした状態でのアスファルト用骨材としての活用(写真-1.3)は,平成 21 年 度に青森県において,20mm 以下に粗割にしたホタテ貝殻をアスファルト混合物に 20~30%
で混合した貝殻入りアスファルト舗装1.23)(製品名:エクショル(株式会社佐藤渡辺))とし て実工事に適用され,ホタテ貝殻 50t が活用された事例がある.また,本製品は青森県か ら「青森県リサイクル認定」を受けていた(認定の有効期限:平成 25 年 3 月 31 日まで). ホタテ貝殻はアスファルト用骨材として粗割されたものではなく,他のリサイクル製品を 製造する過程で副次的に発生したものを購入して使用しているのが特長的である.
写真-1.3 ホタテ貝殻のアスファルト用骨材としての活用事例1.23)
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写真-1.5 簡易破砕したホタテ貝殻1.5) ホタテ貝殻の路面表示用塗料としての活用(写真-1.4)1.21)は,ホタテ貝殻の色が石灰石 に比べて白い(白色度:石灰石 79.60,ホタテ貝殻 96.8)1.24)といった特性や,ホタテ貝殻 は粉砕していくと,短軸に対する長軸の比(アスペクト比)が次第に大きくなる1.24)といっ た形状的な特性を利用して,石灰石と差別化しながら活用した事例である.粉砕したホタ テ貝殻を石灰石粉砕物の 30%以下の割合で活用して,従来の塗料に比べて,耐滑走性や反射 輝度などの性能,また耐久性も同等であることが実証されている.
写真-1.4 ホタテ貝殻の路面表示用塗料としての活用事例1.21)
ホタテ貝殻の建設資材として研究事例が多いコンクリート用骨材としての活用は,粗割 にした状態でのコンクリート用粗骨材1.4)1.5)や,ポーラスコンクリートの粗骨材 1.6),1.7),1.8)
としての活用,また 40mm 以下のホタテ貝殻全量を細骨材の一部として活用1.9)した研究事例 がある.
ホタテ貝殻のコンクリート用粗骨材と しての活用は,重機などにより簡易に破 砕したホタテ貝殻(写真-1.5)を粗骨材 容積 50%まで置換して活用した事例 1.4)
1.5)がある.ホタテ貝殻の置換率の増加に 伴い,所定のスランプを得るために必要 となる単位水量は増加することが共に報 告され,圧縮強度については置換率の増 加に伴い低下するといった事例 1.5)が報 告されている.
また,前事例1.5)では,風化したホタテ貝殻を原料として活用したためか,破砕したホタ テ貝殻の密度や吸水率がコンクリート用骨材としての JIS 基準を満足しない場合や,普通 砕石と比較して細かい粒度が多いため,置換後の粗骨材全体の粒度分布がコンクリート用
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簡易破砕したホタテ貝殻 漁礁ブロック
粗骨材としての標準粒度から外れる場合もみられている.これらの理由から,ホタテ貝殻 のコンクリート用粗骨材として活用は,高い強度をあまり必要としない漁礁ブロック等へ の利用に限定されている.
ポーラスコンクリートの粗骨材としての活用は,砕石に対し粗割にしたホタテ貝殻を 70%
まで混合して,河川護岸のポーラスコンクリートとして使用できることが報告1.6)されてい る.また,粗割にしたホタテ貝殻と再生粗骨材と混合して,結合材をセメントではなく,
高炉スラグ微粉末と消石灰を混合して用いることにより,湖沼や小河川の護岸への植栽用 再生ポーラスコンクリートとして検討した事例1.8)もある.しかし,基礎研究の段階にあり,
いずれも実用化には至っていないようである.
一方,40mm以下に簡易的に破砕したホタテ貝殻全量を細骨材容積の15~30%まで置換した 活用研究1.9)は,専用流動化剤を併用してコンクリート混和材として製品化(製品名:マッ シェル(太平洋マテリアル株式会社))されている.平成18年度から22年度には,北海道の 道南2支庁において,水産基盤整備事業(漁場)として,漁礁ブロックへの実工事に試験的 に適用1.2)され,21年度には3,782t,これまでの累計で9,916tが使用された実績がある.沈 設12ヶ月後には魚類の蝟集効果の調査が実施され,魚礁ブロックの中に大量のクロソイや キツネメバルが確認されている.
写真-1.6 40mm以下に簡易破砕したホタテ貝殻全量の漁礁ブロックへの適用事例1.9)
コンクリート用粗骨材として活用する場合でも,通常のコンクリートと同様な性状を得 ることは難しく,その用途と量は限定されている.コンクリート用骨材としてホタテ貝殻 を積極的に活用していくためには,コンクリート用細骨材として,一般的なコンクリート 用途に適用できることが望まれる.
なお,ホタテ貝殻を 5mm 以下までに細破砕を施した状態で,コンクリート用骨材として 活用した研究事例はこれまでにも多数ある.ポーラスコンクリートの細骨材1.10)や,セメン ト系歩道舗装の骨材 1.11),またコンクリート用細骨材 1.5),1.12),1.13)としての活用がある.更 に,1.3mm 以下に粉砕したホタテ貝殻を原料に炭酸カルシウム球状化粒子に製造してコンク
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リート用混和材 1.14)として活用する研究や,0.5mm 以下まで粉砕したホタテ貝殻の結合材
1.15),1.16)として活用できる可能性について研究した事例もある.
しかし,ホタテ貝殻を 5mm 以下に適用可能な大きさまで破砕することは技術面から難し いため,これらの研究成果は室内試験結果に留まっており,実工事までには至っていない のが現状である.
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1.3 本論文の構成
本論では,漁業系副産物であるホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用し,有効 な大量リサイクル方法として確立させることを目的に実施した一連の研究成果について述 べる.
第1章では,ホタテ貝殻を建設資材として活用したこれまでの既往の研究事例を挙げ,
各事例の詳細や現状の問題点を述べる.
第2章では,本研究のサンプルとして採上げた青森県で発生するホタテ貝殻について,
その処理の現状を述べる.リサイクルされず仮置き状態にされるホタテ貝殻は毎年 20,000t 程度と概算され,青森県農林水産部水産局水産振興課へのヒヤリング結果によれば,毎年 度集積(仮置き)された推定総数量は 20 年度末で累計 442,485t と見積もられている.こ うして発生し続けているホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用していく上での,
青森県のコンクリート用細骨材の流通の現状,また関係法令との関連について述べる.
第3章では,破砕を施したホタテ貝殻(シェルサンド)のコンクリート用細骨材として 活用するための要求品質や,要求される粒度を満足するための破砕方法の検討,またシェ ルサンドの性質について述べる.
ホタテ貝は貝殻が10数cmまで成長した段階で水揚げ出荷される大型貝と,貝殻が6~12cm 程度で水揚げ・出荷される半成貝および成貝に大別される.大型貝の多くは貝殻の付いた 状態で販売店,飲食店などへ出荷されるため,廃棄される貝殻の量自体は少ないものの,
塩化物や有機物などの付着がある.一方,半成貝や成貝の多くは加工処理を経てボイルホ タテや冷凍貝柱として販売されるが,その過程において洗浄,およびボイルを施された後 に脱殻し,屋外に大量に集積されるため,貝殻に塩化物や有機物などの付着が少なく,洗浄 などの前処理を必要としない有利さがある.以上の理由から,コンクリート用細骨材とし て活用する原材料のホタテ貝殻は,ホタテ貝の加工過程において洗浄,およびボイル処理 を施された半成貝および成貝を対象とした.
ホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用していくには,破砕が不十分で細骨材と して大きな貝殻が多く含まれる場合は,フレッシュコンクリートのワーカビリティーを低 下させ,生コン工場の骨材ビンを閉塞させる恐れがある.また,粒の大きさがそろってい る場合や,細粒分が多い場合でも所要のフレッシュ性状を満足させることが難しい.そこ で,破砕を施したホタテ貝殻(以下,シェルサンドと略)の要求品質として,シェルサン ドの粒度は一般的なコンクリート用骨材と同様に,砕砂や山砂などの細骨材(以下,普通 細骨材と略)と混合した粒度が細骨材の粒度標準内(JIS A 5005)に収まることを条件と した.
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ホタテ貝殻のコンクリート用骨材の活用として,これまでに提案されてきたホタテ貝殻 の破砕方法は,マカダムローダーなどの建設重機によるものや,砕石工場などで使用され ているジョークラッシャによるものが殆どであり,これらでホタテ貝殻を破砕した場合,
コンクリート用細骨材としての粒度要求品質を満足させる場合には,粒度調整のために別 途ふるい分けが必要となり,一般砂より大きなコストアップとなる.そこで,ホタテ貝殻 の破砕には,建物解体などの破砕機として実績がある回転式破砕機を採り上げた.これは 鋼製の円筒,中心の軸,軸に取り付けられているバーで構成されている.ベルトコンベア により上部から貝殻を投入すると,円筒内でモータ駆動によって高速回転する複数のバー の打撃力で貝殻を瞬時に細かく破砕し,下方から排出する機械である.またインバータを 用いてバーの回転数や,破砕量の仕様を変えることによって粒度調整が可能である.
事前に実施した破砕性能試験では,ホタテ貝殻自体は緻密で強度が高く,また破砕され た貝殻は扁平であるため,その一部がバーの先端と円筒内壁の隙間を通過してしまい,シ ェルサンドの粒度は粗く,細骨材の粒度標準を大きく外れた.そのため,ホタテ貝殻の破 砕にあたっては,内部構造の改良を行った回転式破砕機を使用した.
第4章では,シェルサンドを細骨材として活用した場合のコンクリート(以下,シェル コンクリートと略)について,シェルサンドがフレッシュ性状や硬化性状に与える影響や,
また通常のコンクリートと同様な性状を得ることのできるシェルサンド置換率の上限値を 述べるとともに,シェルコンクリートの基本性質や配合手法について述べる.
コンクリート試験に先立ち,シェルサンド置換率を変化させた各種モルタル試験を実施 した.シェルサンドはコンクリート用細骨材としての粒度などの各種要求品質を満足して いるものの,その形状は扁平な薄片や棒状である.そのため,シェルサンドによる硬化性 状への影響はみられなかったものの,フレッシュ性状への影響については,置換率の増加 に伴い,流動性に顕著に現れ,特に塑性粘度については置換率 50%(容積比)からその影響 が大きく現れた.しかし,置換率 50%までのモルタルフローの状態は良好であり,粒度標準 内の中間的な粒度に属する普通骨材を使用する場合,混合後の粒度分布は,置換率 50%まで はコンクリート用細骨材としての粒度要求品質を満足できることから,本研究では,シェ ルサンド置換率の上限値は 50%を原則とした.
コンクリートとしての基本性質を把握するための各種室内試験を実施した.その結果,
目標スランプを得るのに必要なシェルコンクリートの単位水量は,シェルサンドを細骨材 として活用しないコンクリート(以下,普通コンクリートに略)に比べて増える傾向とな るものの,シェルサンド置換率 50%までは,良好なワーカビリティーが得られており,コン クリート用細骨材として十分に活用できることが確認された.シェルコンクリートの強度 特性については,静弾性係数にシェルサンド置換率の増加に伴い,若干低下する傾向がみ られるが,圧縮強度,引張強度,曲げ強度を含め,普通コンクリートと同等の強度特性を 有しているといえる.ホタテ貝殻の地産地消の観点から,シェルサンドがコンクリート用
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細骨材として活用される北海道や青森県の構造物に対して,特に要求される事項として凍 結融解抵抗性が挙げられるが,塩分浸透性(高炉セメント B 種使用),また長期圧縮強度な ども含め,シェルコンクリートの各種耐久性についても普通コンクリートと同等であるこ とが確認された.しかし,シェルサンド置換率の増加に伴う,所要のスランプを得るのに 必要な単位水量の増加は,ブリーディング,凝結時間,乾燥収縮に影響を与えるため,配 合設計においては,混和剤による調整や,また所要のワーカビリティーが得られる範囲内 で,単位水量をできるだけ小さくなるような細骨材率の選定が重要となる.
第5章では,シェルコンクリートの実用化に向け,無筋コンクリートおよび鉄筋コンク リートについて,特定した港湾構造物を対象に実施した実証試験の結果について述べる.
シェルコンクリートの品質のばらつきや運搬による経時変化,またバケットやポンプ車に よるコンクリート打設・締固めなどの施工性は,普通コンクリートにもみられる程度のも のであり,シェルコンクリートを使用することによる,普通コンクリート以上の品質や施 工性についての配慮事項は特に見られなかった.
第6章では,各種実証試験結果を踏まえ,平成 22 年の青森港防波堤消波工事において,
大量に製造(破砕)したシェルサンドや,大量に製造されたシェルコンクリートの品質の 変動,またその出来型について調査した結果を述べる.品質変動は普通細骨材や普通コン クリートと同程度であり,施工性や出来型についても問題はなく,シェルコンクリートは 十分に消波ブロックに適用できることが確認された.
第7章では,これらの研究成果の結論について述べる.
参考資料としては,実証試験結果および青森港防波堤消波工事における調査結果をもと に,国土交通省東北地方整備局仙台港湾空港技術調査事務所および(財)沿岸技術研究セ ンターから報告された「港湾構造物へのシェルコンクリート適用ガイドライン(案)」につ いて述べる.
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参考文献
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1.12) 橋本篤志,菅田紀之:ホタテ貝殻のコンクリート用骨材としての利用に関する基礎的 研究,土木学会第 63 回年次学術講演会,5-402,2008.
1.13) 西崎到,新田弘之,明嵐政司:他産業リサイクル材料の有効利用技術に関する研究,
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1.14) 澤村秀治,橋本紳一郎,小林淳哉:ホタテ貝殻球状化粒子がモルタルのフレッシュ性 状に及ぼす影響,土木学会第 62 回年次学術講演会,5-400,2007.
1.15) 吉崎友里子,岡村武士,岡村成子,岡隼人,高根沢美佳,町田裕,松原壮馬,吉田悟 史:自然素材の構造物への応用に関する基礎的研究 その1 ホタテ貝殻の結合材として の評価,日本大学理工学部学術講演会論文集,Ba22,2001.
1.16) 近藤祭子,吉崎友里子,岡村武士,菊池靖彦,岡村成子,長村貞治,柴田麻衣,杉本 龍生,高木和美,米嶋隆彦:自然素材の構造物への応用に関する基礎的研究 その2 ホ タテ貝殻コンクリートの評価,日本大学理工学部学術講演会論文集,Ba23,2001.
1.17) 木口輝:水産系副産物のリサイクルの推進~ホタテ貝殻のケーソン中詰材としての活
11
用可能性~,建設リサイクル,Vol.33,pp.10-13,2005.
1.18) 河村昌益,南將人:ホタテ貝殻を用いた摩擦増大用マットに関する実験的研究,海洋 開発論文集,Vol.21,pp.867-872,2005.
1.19) 吉井昭博,安倍隆二,内山智幸:ホタテ貝殻粉末のアスファルト舗装材としての適用 性,北海道開発土木研究所月報,第 598 号,pp.48-55,2003.
1.20) 辻雅章,加藤智彦,小野晋也:ホタテ貝殻粉末のアスファルト舗装用骨材としての活 用検討について,第 54 回(平成 22 年度)北海道開発技術研究発表会
1.21) 山岸暢,可児浩,吉田昌充,内山智幸,長野伸泰,蓑嶋裕典,和田欣也,庄子庸二:
ホタテ貝殻を利用した溶融型路面標示用塗料の開発,北海道立工業試験場報告,305 号,
pp.87-93,2006.
1.22) 北海道エコ・コンストラクション・インシアティブの推進,国土交通省 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kke/1-b_20120828.pdf
1.23) (株)佐藤渡辺(ホームページ)
http://www.watanabesato.co.jp/_product/asphalt/exshell/01.htm
1.24) 作田庸一:水産系廃棄物の有効利用に関する研究開発,日本環境測定分析協会・北海 道支部,2007.
12
第2章 発生するホタテ貝殻について
2.1 はじめに
平成 12 年度から 23 年度(8 年間)までの,ホタテ貝の全国の生産量2.1)を表-2.1に示す.
生産量の殆どを占めているのは北海道と青森県である.その出荷形態はそれぞれの生産地 によって異なっており,北海道の場合は,約 2 割がホタテ貝を鮮貝としてそのまま出荷す る形態である.一方,青森県の場合には,表-2.2 に示すように,水産加工工場などで貝殻 から身を外して,ボイルホタテや冷凍貝柱などの加工品として出荷する形態が 9 割以上を 占めている2.1).
本研究のサンプルとして採上げた青森県のホタテ貝殻について,16 年度から 20 年度まで の発生量2.2)を表-2.3に示す.ここに示すホタテ貝殻の発生量は,平成 21 年度に青森県農 林水産部水産局水産振興課が主体となって催された「ホタテ貝殻利活用情報交換会議」の 資料からの抜粋である.発生量は表-2.1に示す青森県のホタテ貝生産量から「×0.5」で算 出された値を,そのままホタテ貝殻の発生量とみなしたものである.
本章では,青森県で発生するホタテ貝殻の処理の現状や,青森県内のコンクリート用細 骨材の流通現状,またホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用していく上での関係 法令との関連について述べる.
表-2.1 ホタテ貝の全国の生産量
年度 生産量(t)
総数 北海道 青森県 岩手 宮城 16 501,578 387,049
(77.1%)
95,119 (19.0%)
7,413 (1.5%)
11,997 (2.4%) 17 458,163 358,561
(78.3%)
83,287 (18.2%)
5,209 (1.1%)
11,106 (2.4%) 18 474,210 388,801
(82.0%)
65,450 (13.8%)
6,927 (1.5%)
13,032 (2.7%) 19 484,359 375,016
(77.4%)
91,462 (18.9%)
7,260 (1.5%)
10,62 (2.2%) 20 531,190 433,617
(81.6%)
77,815 (14.6%)
7,127 (1.3%)
12,631 (2.4%) 21 531,742 429,776
(80.8%)
82,800 (15.6%)
6,089 (1.1%)
13,077 (2.5%) 22 495,532 410,710
(82.9%)
69,446 (14.0%)
5,647 (1.1%)
9,729 (2.0%) 23 422,400 388,345
(91.9%)
34,027 (8.1%)
21 (0%)
7 (0%)
13
表-2.2 青森県におけるホタテ貝の種類別数量
年度 総数(t) 鮮貝(t) 加工品
冷凍(t) 干貝柱(t) 缶詰(t) ボイル(t) 16 95,119 1,384
(1.5%)
7,625 (8.0%)
1,741 (1.8%)
7,306 (7.7%)
77,063 (81.0%) 17 83,287 1,123
(1.4%)
6,939 (8.3%)
1,655 (2.0%)
7,763 (9.3%)
65,807 (79.0%) 18 65,450 1,104
(1.7%)
9,102 (13.9%)
1,222 (1.9%)
4,369 (6.7%)
49,653 (75.8%) 19 91,462 5,575
(6.1%)
13,975 (15.3%)
1,452 (1.6%)
6,778 (7.4%)
63,682 (69.6%) 20 77,815 6,027
(7.7%)
6,397 (8.2%)
766 (1.0%)
3,144 (4.0%)
61,511 (79.1%) 21 82,800 4,066
(5.0%)
13,408 (16.2%)
1,885 (2.3%)
2,661 (3.2%)
60,780 (73.3%) 22 69,446 2,718
(4.0%)
6,341 (9.1%)
977 (1.4%)
1,492 (2.1%)
57,918 (83.4%) 23 34,027 2,258
(6.7%)
4,015 (11.8%)
636 (1.9%)
448 (1.3%)
26,670 (78.4%)
表-2.3 青森県におけるホタテ貝殻発生量
16 年度 17 年度 18 年度 19 年度 20 年度 ホタテ貝殻の発生量(t) 47,560 41,644 32,725 45,731 38,908
14
2.2 青森県におけるホタテ貝殻処理の現状
青森県で発生するホタテ貝殻の 16 年度から 20 年度までのリサイクル状況2.2)を表-2.4に 示す.牡蠣養殖用彩苗器(写真-2.1)2.3)や肥料(写真-2.2)2.4)などで安定的にリサイクル されているのは民間主体によるものである.牡蠣養殖用彩苗器としての利用は,ホタテ貝 殻への牡蠣稚貝の付着性が良く,特に牡蠣の養殖が盛んな広島県からの引き合いが多い.
建設資材として直接的に或は簡易的に加工して活用した埋立材・路盤材,漁業造成用資材
(写真-2.3)2.5),また凍結防止剤などの貝殻粉末製品2.6)は官庁主体によって,大量に,ま た突発的にリサイクルされている.一方,暗渠疎水材については,民間および官庁主体に よって,安定的にリサイクルされていること分かる.
同表に示すリサイクル率は,表-2.3 に示す年度毎のホタテ貝殻の発生量に対するリサイ クル量の占める割合である.青森県のホタテ貝殻のリサイクル率は,概ね 50%前後で推移 しているものの,100%には至っていない.水産加工工場などから排出される貝殻の多くは 動植物残渣として適正に廃棄処分されなければならないが,一部では重機などによって粗 破砕を施された後,写真-2.4,写真 2.5 に示すように長期間集積(仮置き)された状態に ある.一部では悪臭や汚水の発生,また景観を損ねる場合も出てきている.青森県農林水 産部水産局水産振興課へのヒヤリング結果によれば,20 年度末では,仮置き推定総数量は 累計 442,485t と見積もられている.加工工場の近くなどで小規模に仮置きしている場所は 不明であるが,まとまった量が仮置きされている場所について,その住所と所有者・管理 者,また仮置量(20 年度末)を表-2.5に示す.図-2.1には,その仮置き場所を地図上に示 すが,仮置き場所が青森県全域に及んでいることが分かる.
表-2.4 ホタテ貝殻のリサイクル状況
用 途 リサイクル量(t)
16 年度 17 年度 18 年度 19 年度 20 年度 主体
牡蠣養殖用彩苗器 3,740 3,375 3,892 5,831 2,353 民間 水質浄化剤(中和剤) 0 0 0 2 0 - 暗渠疎水材 5,809 2,523 3,318 2,715 746 官庁/民間 肥料(土壌改良材) 210 82 803 1,019 2,223 民間 埋立材・路盤材 14,670 1,633 1,472 2,510 2,944 官庁
骨材 0 0 0 0 4 官庁
漁業造成用資材
2,132 5,258 4,631 5,439 942 官庁
その他 885 官庁
貝殻粉末製品 0 0 1,375 8,282 4,578 官庁 合計 26,561 12,871 15,491 25,798 14,675
リサイクル率(%) 56 31 47 56 38
15
写真-2.1 牡蠣養殖用彩苗器の製作,および牡蠣の幼生付着(黒点)状況2.3)
写真-2.2 ホタテ貝殻肥料2.4)
写真-2.3 漁業造成用(漁礁)資材にホタテ貝殻を 活用した事例2.5)
16
表-2.5 仮置場所の住所とその所有者および管理者
仮置場所(住所) 所有者/ 管理者 仮置量(t)
① 東津軽郡平内町清水川地内 平内ホタテ貝殻処理協同組合/(株)長慶 約 130,000
② 上北郡野辺地町向田地内 ほたて貝殻有効利用協同組合 約 50,000
③ 青森市野沢地内 不明
④ 青森市合子沢地内 成邦商事
⑤ 青森市羽白字野木和地内 山神・ともや
⑥ 北津軽郡中泊町佐藤産業敷地 佐藤産業
⑦ むつ市大畑鳥谷場水産加工団地内 不明
⑧ 東津軽郡外ヶ浜町平舘根岸字湯ノ沢地内 不明
⑨ 東津軽郡外ヶ浜町小国地内 不明
(青森県農林水産部水産局水産振興課・ヒヤリング結果より)
図-2.1 地図上での仮置場所
⑥
⑧
⑨
⑦
① ②
③
⑤
④
17
写真-2.4 ホタテ貝殻の仮置き状況①
写真-2.5 ホタテ貝殻の仮置き状況②
18
2.3 青森県におけるコンクリート用細骨材の流通現状
青森県における平成 10 年度と平成 24 年度の砂の種別採取量2.7)を表-2.6に示す.平成 24 年度の砂全体の採取量が平成 10 年度の実績に対して約 35%に減少しているなか,各年度に おける砂全体の採取量に対する山砂および陸砂の割合は共に減少し,代わって砕砂の割合 が 0.6%から 24.4%に増大している.
全国と東北地方,また青森県における平成 24 年度のコンクリート用細骨材の種別使用量
2.8)を表-2.7に示す.全国的に比べて,東北地方全体において,コンクリート用細骨材の使 用は山砂および陸砂に依存している.青森県に関しても,山砂および陸砂の占める割合が 約 70%と,同様な傾向がみられるが,表-2.6 に示す砕砂の採取割合からも,青森県におけ る砕砂の使用量は,東北地方のなかでは高いことが特徴的である.表-2.8 には,全国と東 北地方,また青森県における平成 24 年度の生コンクリートの需要先別出荷数量を示す.全 国的に比べて,青森県を含め東北地方全体で土木工事への需要が高いことが分かる.また,
表-2.9には,青森県における平成 24 年度の生コンクリートの工種先別出荷数量を示す.
青森県のコンクリート用細骨材の年間使用量は約 913 千 t である.青森県で発生するホ タテ貝殻をコンクリート用細骨材として約 50%使用できると仮定した場合には約 456 千t,
土木工事(青森県工事全体の 61.7%)のうち,更に適用工種を港湾・空港(青森県土木工事 全体の 30.1%)に限定した場合には,約 85 千 t の潜在的市場が見込まれることになる.
一方,近年の青森県のホタテ貝生産量の実績(表-2.2)から,年間生産量を 80 千 t と仮 定した場合,ホタテ貝殻の発生量は「×0.5」で算出される 40 千 t となる.また,青森県 のホタテ貝殻のリサイクル率を近年の実績(表-2.4)から 50%と仮定した場合には,リサ イクルされず仮置き状態にされるホタテ貝殻は 20 千 t 程度になると概算できる.
以上から,青森県港湾・空港土木工事全体の約 24%(20 千 t/85 千 t×100)にホタテ貝殻 をコンクリート用細骨材として活用できれば,リサイクル率は 100%に至り,ホタテ貝殻の 有効な大量リサイクル方法として確立できるものと考えられる.
表-2.6 青森県における砂の種別採取量
年度 砂の種別採取量(千m3)
河川砂 山砂 陸砂 海砂 砕砂 計 10 年 47
(1.3%)
1,946 (52.4%)
1,698 (45.7%)
0 (0%)
22
(0.6%) 3,713 24 年 0
(0%)
489 (37.4%)
500 (38.2%)
0 (0%)
320
(24.4%) 1,309
19
表-2.7 24 年度のコンクリート用細骨材の種別使用量
コンクリート用細骨材の種別使用量(千 t)
河川砂 山陸砂 海砂 砕砂 その他
(含再生砂) 計 全国計 6,563
(13.1%)
20,013 (39.8%)
6,066 (12.1%)
17,171 (34.2%)
409
(0.8%) 50,222 東北計 512
(12.6%)
3,349 (82.6%)
0 (0%)
179 (4.4%)
15
(0.4%) 4,055 青森計 13
(1.4%)
643 (70.4%)
0 (0%)
249 (27.3%)
8
(0.9%) 913 表-2.8 24 年度の生コンクリートの需要先別出荷数量
需要先別出荷数量(千 m3)
土木 建築 計
全国計 22,521 (38.7%)
35,616
(61.3%) 58,137 東北計 3,663
(55.0%)
2,991
(45.0%) 6,654 青森計 671
(61.7%)
417
(38.3%) 1,088 表-2.9 24 年度の青森県の生コンクリート工種先別出荷数量
工種先別出荷数量(千 m3)
鉄道・電力 港湾・空港 道路 その他 計 235.7
(35.2%)
202.1
(30.1%)
35.7
(5.3%)
49.3
(29.4%) 671
20
2.4 ホタテ貝殻の利用上の関係法令との関係
廃棄物として取扱われるホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用していく上で,
関連する法令の体系を図-2.2 に示す.廃棄物処理に関してもっとも重要な法律は図中④の
「廃棄物の処理および清掃に関する法律」(以下,廃棄物処理法)である.廃棄物処理法上 において「廃棄物」とは,ごみ,粗大ごみ,燃え殻,汚泥,ふん尿,廃油,廃酸,廃アル カリ,動物の死体その他の汚物又は不要物であって,固形状又は液状のものをいう.
なお,図中⑤から⑦に示す各個別リサイクル法については,ホタテ貝殻をコンクリート 用細骨材として積極的に利用させるための法令であり,そのためには本研究手法がホタテ 貝殻の発生抑制に寄与することができ,有効な大量リサイクル方法であることを示してい くことが必要となる.
図-2.2 廃棄物処理に関連する法令の体系
21
「廃棄物」であるホタテ貝殻は,排出者によって一般廃棄物にも産業廃棄物にもなる.
水産加工工場などから大量に発生するホタテ貝殻は,図-2.3の廃棄物の分類に示すように,
特定の事業活動に伴い発生する産業廃棄物のうちの動植物残渣としての取扱いとなる.
一方,「不要物」とは,「占有者が自ら,利用し,又は他人に有償で売却することができ ないために不要に成った物」との解釈が厚生省(当時)環境衛生局環境整備課長通知
(H12.7.24 付)によって示されており,「有価物」であれば「廃棄物」ではないと判断され ている.そのため,ホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用していく場合には,廃 棄物処理法上で,ホタテ貝殻が「廃棄物」なのか「有価物」なのか適正に判断することが 必要となる.
ホタテ貝殻の取引形態と廃棄物処理法との関係を表-2.10に示す.ホタテ貝殻を利用する 取引形態としては「自ら利用」および「有償売却」,「廃棄物処理」の 3 パターンとなる.
図-2.3 廃棄物の分類
22
表-2.10 ホタテ貝殻の取引形態と廃棄物処理法との関係
取引形態 自ら利用 有償売却 産廃処分
概要
ホタテ貝の加工会社が 自ら貝殻を破砕して,
シェルサンドを製造 し,製品として生コン 工場他へ販売する.
シェルサンドの製造者 がホタテ貝殻処理組合 からシェルサンドの材 料として有価で購入 し,シェルサンドを製 造後,生コン工場等へ 販売する.
ホタテ貝殻処理組合が シェルサンドの製造者 に処分費を支払い,ホ タテ貝殻の処分を依頼 する.シェルサンド製 造者は廃棄物中間処理 業としてホタテ貝殻を 破砕し再資源化し,生 コン工場等へ販売す る.
シ ェ ル サ ン ド 製 造 業 の 位 置 付け
材料販売業 骨材製造業
骨材製造業 廃棄物中間処理業
廃棄物処理法 有価物(適用外) 有価物(適用外) 廃棄物(適用)
留意点
ホタテ貝殻が有償で売 却できる性状のものを 自ら使用することでな ければ該当しない.な お,有償売却できる性 状のものとは利用用途 に照らして有価物に相 当する品質を有するも のをいう.
販売価格が社会通念 上,逆有償と見なされ ない値段に設定されて いる必要がある.
シェルサンドの製造業 者が廃棄物中間処理業 の資格を有しているこ とを確認する必要があ る.
23
2.5 まとめ
ホタテ貝殻と同様に大量に発生する牡蠣殻は,貝殻の構造上の特性から外表面に付着物 等が付着しやすいことに加え,脱殻時にボイルしないことから,仮置き時に貝殻の内外面 に付着している有機物によって悪臭を発生する原因になりやすい.そのため,長期間集積 されることは控えられており,またホタテ貝殻と比較した場合,牡蠣殻は軟らかいことか ら,粉砕加工が容易となり,肥料や飼料2.9)などとして大量にリサイクルすることができて いるようである.
ホタテ貝殻をリサイクルする方法としては,暗渠疎水材や埋立材などのように貝殻を主 に建設資材として直接的に或は簡易的に加工して製品や部品としてそのまま利用する場合 と,肥料2.4)や貝殻粉末製品2.6)などのように,貝殻を原材料として加工してから利用する場 合に大別される.暗渠疎水材などは大量に貝殻をリサイクルできる方法であるが,公共工 事の実施状況に左右される面がある.一方,貝殻粉末製品2.6)などは,ホタテ貝殻ならでは の付加価値(抗菌作用等)を生かしたものであるが,加工費の占める割合が大きくなるた め,販売費は高くなり,貝殻を大量にリサイクルすることはできないという欠点がある.
青森県の港湾・空港土木工事に限定した場合,ホタテ貝殻をコンクリート用細骨材とし て活用できる潜在的市場は約 85 千 t2.7),2.8)が見込まれる.また,青森県の近年における実 績からは,リサイクルされず仮置き状態にされるホタテ貝殻は 20 千 t 程度2.1),2.2)になると 概算できる.青森県の港湾・空港土木工事全体の約 24%にホタテ貝殻をコンクリート用細骨 材として活用できれば,リサイクル率は 100%に至り,ホタテ貝殻の有効な大量リサイクル 方法として確立できるものと考えられる.
上述の背景から,本研究では,漁業系副産物であるホタテ貝殻をコンクリート用細骨材 として活用し,有効な大量リサイクル方法であることを示していくことが必要となる.
これらにもっとも関連する重要な法律は「廃棄物処理法」であり,その取引形態は廃棄 物処理法上「廃棄物」である「産廃処理」と,「有価物」である「有償売却」および「自ら 利用」に分けられ,ホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用していく場合には,廃棄 物処理法上で,ホタテ貝殻を「廃棄物」なのか「有価物」なのか適正に判断することが重 要となる.
24
参考文献
2.1) 年度別全国ほたてがい水揚げ実績表(H16~23),青森県ほたて流通振興協会(ホーム ページ)http://www.aomori-hotate.com/01/01_06.html
2.2) 平成 21 年度ホタテ貝殻利活用情報交換会議資料「ホタテ貝殻リサイクルの現状」,青 森県農林水産部水産局水産振興課,2009.
2.3) (株)オオノ(ホームページ)http://www.oonosuisan.com/guide/process1.html 2.4) (株)エム・エー興業(ホームページ)http://hiryou-magic.com/nh_ramical.html 2.5) 神鋼建材工業(株)(ホームページ)
http://www.shinkokenzai.co.jp/product/reef/fish_reef/kk21/
2.6) 青森エコサイクル産業協同組合(ホームページ)
http://www.aomori-eco.or.jp/subpage/products06.html#anc1
2.7) 砂利採取業務状況報告書集計表,経済産業省製造産業局住宅産業窯業建材課/国土交 通省水管理・国土保全局水政課
2.8) 生コンクリート流通統計調査結果,経済産業省
2.9) (株)グリーンマン(ホームページ)http://www.greenman.co.jp/index.shtml
25 原
料 受 入
製 品 出 荷 ボ
イ ル
脱
殻
冷
却
サ イ ズ 選 別
洗
浄
凍 結
・ チ ル ド
金 属 探 知 機 計
量
・ 包 装 原
貝 洗 浄
貝殻置場へ
図-3.2 ボイルホタテ(凍結・チルド)の製造加工フロー
第3章 シェルサンド
3.1 はじめに
青森県においては,ホタテ貝は貝殻が10数cmまで成長した段階で水揚げ出荷される大型 貝と,貝殻が6~12cm程度で水揚げ・出荷される半成貝(新貝とも呼ばれる)および成貝に 大別される(図-3.13.1)).大型貝の多くは貝殻の付いた状態で鮮貝として販売店,飲食店な どへ出荷されるため,廃棄される貝殻の量自体は多くないが,一部は野積み状態で放置さ れ,有機物等の付着や,規定値を越える塩化物量がある場合がある.一方,半成貝や成貝 の多くは加工処理を経てボイルホタテ(凍結・チルド)や冷凍貝柱などの加工品として販 売され,全体生産量の9割以上を占めている3.1).ホタテ貝は,その過程において,洗浄およ びスチーマと呼ばれる蒸気でボイルされた後に脱殻され,屋外に大量に集積される.その ため,貝殻の回収が容易なこと,また貝殻に塩化物や有機物などの付着が少なく,洗浄など の前処理を必要としない有利さがある.ボイルホタテの製造加工フローを図-3.2に示す.
以上の理由から,コンクリート用細骨材として活用する原材料のホタテ貝殻は,ホタテ 貝の加工過程において洗浄,およびボイル処理を施された半成貝および成貝を対象とした.
なお,これらの貝殻についても,重機などによって粗破砕を施された後,長期間集積され た状態にあるものは,腐敗が進行していることから対象外とした.
本章では,以上の条件を満足したホタテ貝殻を対象に,破砕を施したホタテ貝殻(以下,
シェルサンドと略[記号:SS])のコンクリート用細骨材として活用するための要求品質や,
要求される粒度を満足すべき破砕方法の検討,またシェルサンドの性質について述べる.
図-3.1 ホタテ貝の成長図3.1) 写真-3.1 半成貝(1~2 年)
26 0
20 40 60 80 100
0.1 1 10
ふるい目の開き(mm)
通過質量百分率(%)
SS 25%
SS 50%
SS 75%
SS100%(粒度標準)
3.2 シェルサンドのコンクリート用細骨材としての要求品質
3.2.1 粒度
破砕が不十分で細骨材として大きな貝殻が多く含まれる場合は,フレッシュコンクリー トのワーカビリティーを低下させ,生コン工場の骨材ビンを閉塞させる恐れがある.また,
粒の大きさが均一な場合や,細粒分が多い場合でも所要のフレッシュ性状を満足させるこ とが難しい.そこで,シェルサンドの粒度要求品質は,一般的なコンクリート用骨材と同 様に,砕砂や山砂などの細骨材(以下,普通細骨材と略)と混合した粒度が,「コンクリー ト用砕石及び砕砂」(JIS A 5005)に示す細骨材の粒度標準内にあることを条件とした.
粒度標準内の最細粒および最粗粒の粒度分布をもつそれぞれの普通細骨材を,シェルサ ンドで置換(置換率25%,50%,75%,100%)した場合について,混合後の粒度が粒度標準内に 入るために,シェルサンドに要求される粒度分布範囲を置換率毎に図-3.3に示す.なお,
置換率は普通細骨材のうちのシェルサンドが占める容積割合を表したものである.
同図に示すように,シェルサンドの粒度分布が粒度標準を大きく外れる場合には,混合 後の粒度の要求品質を満足させることのできるシェルサンド置換率は必然的に小さくなる ことが分かる.つまり,ホタテ貝殻を大量にリサイクルするためには,シェルサンドの粒 度は粒度標準内にできる限り近づけることが必要となる.
図-3.3 混合後の粒度が粒度標準範囲内に入るための シェルサンド要求粒度分布範囲(置換率 25%~100%)
27 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
20 25 30 35 40
回折角度(2θ)
回折強度(cps)
カルサイト 3.2.2 各種物性
シェルサンドの各種物性の要求品質は,表-3.1に示す JIS A 5308 の附属書1「レディー ミクストコンクリート用骨材」に規定された数値を基準とした.
なお,ホタテ貝殻は石灰石と同様に,炭酸カルシウム(95%以上)を主成分3.2)としている.
炭酸カルシウムは結晶構造の違いによりカルサイト,アラゴナイトおよびバテライトの3種 に分類3.3)され,カルサイトは石灰石,アラゴナイトはアラレ石などとして天然に産し,バ テライトは炭酸化したコンクリート中などに生成する場合がある3.4)とされている.図-3.4 には,シェルサンドの粉末X線回折装置による分析結果を示すが,シェルサンドはコンクリ ートの流動性改善,水和発熱低減などを目的として用いられている,石灰石を粉砕したコ ンクリート用石灰石微粉末の主体「カルサイト」3.4)と同様な回析強度のピークを示してい る.
以上から,シェルサンドの微粒分については石灰石微粉末と同様の混和材とみなして,
コンクリート用細骨材としての微粒分量の規定(7.0%以下;「コンクリート用砕石及び砕砂」
JIS A 5005)の適用については除外した.
表-3.1 シェルサンドの各種物性の要求品質
項目 要求品質 試験方法
絶乾密度(g/cm3) 2.5以上 JIS A 1109 吸水率(%) 3.5以下 JIS A 1109 有機不純物 標準色液又は
色見本より淡い JIS A 1105 塩化物量(%) 0.04以下 JIS A 5002の5.5 安定性(%) 10以下 JIS A 1122
図-3.4 ホタテ貝殻の粉末X線回折結果
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3.3 ホタテ貝殻の破砕方法の検討
ホタテ貝殻のコンクリート用骨材の活用として,これまで提案されてきたホタテ貝殻の 破砕方法は,ブルドーザ,およびマカダムローダーなどの建設重機3.5),3.6)によるものや,砕 石工場などで使用されているジョークラッシャによるものがある.これらでホタテ貝殻を 破砕した場合,破砕後の粒径は前者で数cmから10cm程度,後者でも数mmから20mmの範囲で ある.コンクリート用細骨材としての要求品質を満足させる場合には,粒度調整のために 別途ふるい分けが必要となり,一般砂より大きなコストアップとなる.各種機械によるホ タテ貝殻の破砕方法を表-3.2に示す.
表-3.2 各種機械によるホタテ貝殻の破砕方法
建設重機(マカダローダー) ジョークラシャー
概要図
破砕方法
建設重機(マカダムローダー等)の 重量車両をホタテ貝殻上を走行さ せて圧縮破砕する.
一端を支持した可動板(スイングジョ ー)を固定板に向けて前後揺動させる ことによって,固定板との間でホタテ 貝殻を圧縮破砕する.
破砕後の 寸法
破砕後の寸法は数 cm から 10cm 程 度.
破砕後の寸法は数mm から 20mm 程度.
粒度の
調整 別途,ふるい分けが必要. 別途,ふるい分けが必要.
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ホタテ ホタテ貝殻の 貝殻の破砕 破砕 ホタテ ホタテ貝殻の 貝殻の破砕 破砕
そこで,ホタテ貝殻の破砕(シェルサンドの製造)には,建物解体などの工事実績3.7),3.8) があり,機械の仕様を変えることによって破砕材の粒度調整が可能な回転式破砕機を採り 上げた.これは鋼製の円筒(直径1,000mm),中心の回転軸,回転軸に取り付けられている バー(上段・中段・下段の3段に各8本)で構成されている.ベルトコンベアにより上部か ら貝殻を投入すると,円筒内でモータ駆動によって高速回転(回転数:最大1,200rpm程度)
する複数のバーの打撃力で貝殻を瞬時に細かく破砕し,下方から排出する機械である.ま た,インバータを用いてバーの回転数や,ベルトスケールによって破砕量の仕様を変える ことにより粒度調整が可能となる.
回転式破砕機の概念図を図-3.5 に示す.なお,この回転式破砕機はベルトコンベアなど の一連の機材と共に,トラックに載せて簡易に移動できる車載型であり,貝殻の集積場所 で容易に破砕できるという特長がある.
図-3.5 回転式破砕機の概念図