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ホタテ貝殻礁の浄化効果と実用化の取組み

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Academic year: 2022

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(1)

ホタテ貝殻礁の浄化効果と実用化の取組み

Effects of Artificial Reefs of Scallop Shell and approach of practical use

(独)土木研究所寒地土木研究所 福田 光男(Mitsuo Fukuda) ○正 員 岡本健太郎(Kentaro Okamoto) 北海道開発局函館開発建設部(前(独)土木研究所寒地土木研究所) 小川 渉 (Wataru Ogawa)

1.はじめに

港湾・漁港の閉鎖性水域では、近年、泊地等を利用し た水産物の蓄養が行われており、蓄養物の排泄物や残餌 などの有機物が海底に堆積し、底質悪化が問題となって いる。一方、北海道では、毎年20万tのホタテ貝殻が 水産廃棄物として発生しており、その対処法に苦慮して いる。このような背景から、著者らはホタテ貝殻を利用 した閉鎖性水域の水質・底質浄化手法として「ホタテ貝 殻礁(以下、貝殻礁)」を提案している。

本研究は、港内泊地で蓄養が行われている道東の落石 漁港での試験用の貝殻礁(以下、試験礁)を用いた水 質・底質浄化効果の調査結果と、蓄養施設が計画されて いる道南の江良漁港での実用化に向けて、製作・据付作 業を考慮したホタテ貝殻礁を用いた調査の取組みについ て紹介する。

2.落石漁港での試験礁を用いた基礎調査

貝殻礁は、金網カゴにホタテ貝殻を充填したもので、

海底に設置し底質浄化を図るものである。その機構は、

海底に設置した貝殻礁が周辺の生物が高密度に生息する 新たな生息場を形成し、蝟集した生物の摂餌により底質 に含まれる有機物を同化し、底質浄化をするものである

(図-1)。

落石漁港での基礎調査は、サンプリング可能な試験礁

(0.2m×0.2m×0.5m(写真-1))10基を2006年11月に 海底に設置した。試験礁は、スピオ科の1種などの底生 生物とコノハエビなどの水棲生物の蝟集を明確にするた

め、高さ0.2m分を地中に埋没させ、残り0.3m分を海

底面上に露出するように設置した。試験礁には、沈下防

止として網目状のストッパーを取り付けた(写真-2)。

また、セジメントトラップを設置し、試験礁付近の有機 物負荷量の測定をした。

試験礁には多種多様の蝟集生物が確認され、地中では スピオ科の1種(写真-3左)などの堆積物食者である 環形動物が最大3,400個体の蝟集が確認され、海底面上 ではコノハエビ(写真-3右)やミナソコミジンコなど の懸濁態食者である節足動物が最大48,000個体の蝟集 が確認したことを著者らは報告1)している。蝟集した 環形動物の優占種であるスピオ科の1種の1g当りの有 機物浄化能力は、室内試験より炭素4.07mg/day、窒素

1.13mg/dayであることを確認した。節足動物の優占種で

ある、ヨコエビ1g当りの有機物浄化能力は、佐藤2に よる室内実験より炭素20.0mg/day、窒素0.33mg/dayが 確認されている。また、セジメントトラップによる有機 物負荷量は、炭素0.351mg/day/cm2、窒素

0.0666mg/day/cmであることを確認した。

この知見をもとに、試験礁における蝟集生物の有機物 浄化量(浄化能力×生物重量)と有機物負荷量の比を浄 化率とし整理した(図-2)。炭素の浄化率は、設置後7 ヶ月経過した07年6月に約170%に達し、その後は変 動があるが概ね80~120%を推移し、炭素負荷量を概ね 浄化可能な値が確認された。また、窒素の浄化率も炭素 と同様の傾向が確認された。これより、試験礁に蝟集し た生物の摂餌行動による底質浄化効果が確認された。

また、実用化に向けて、サンプリングが可能な中型の 貝殻礁(以下、中型試験礁、0.5m×0.5m×0.5m)を2007

写真-3 試験礁に蝟集した

スピオ科の1種(左側)とヨコエビ類(右側)

図-1 ホタテ貝殻礁による底質浄化のイメージ

写真-1 試験礁 写真-2 試験礁の設置状況

平成21年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第66号

B-39

(2)

年11月、縦・横に各5列に設置した(写真-4)。設置後 1年8月経過した2009年7月に設置位置が外側(隅角 部で側面2面が海水と接する)と内側(海水と接する側 面がない)の調査を行った。蝟集生物数は、外側が内側 に比べ環形動物で1.8倍、節足動物で1.7倍であった

(表-1)。これより貝殻礁は、海水と接する表面積を大 きくすることが重要であることが分かった。

3.江良漁港での実用化に向けた実証試験

江良漁港では計画されている蓄養施設において懸念さ れる水質・底質悪化の中・長期的な保全策として、著者 らは実用的な貝殻礁を開発し、それを現地に設置して保 全策としての効果の検証を行っている。

実用型貝 殻 礁(以下 、実 用礁)は 、既 製の石カゴ

(2.0m×3.0m×0.5m)を用い、網目からの貝殻の抜けだ し防止に内側にネットを取り付けた。さらに海水と接す る表面積を大きくする工夫として貝殻を詰めない通水孔

(直径 0.3m の筒)を配置した。通水孔の配置は、中型 試験礁を単体で設置した場合と同じ効果を期待し、

0.5m 間隔に2m 幅に3列(4分割)、3m幅に5列(6 分割)の 15 孔を配置した(写真-6)。また、通水孔の 効果を確認するため、2m 幅に通水孔を連続した「通水 路型」と、通水孔2孔の実用礁も製作した(写真-5)。

実用礁の現地での製作据付は、①工場でネットを取り 付け済みの本体金網をコイル鉄線で連結組み立て、これ に工場製作のネット付通水孔金網をコイル鉄線で固定、

②貝殻投入、③本体金網の上蓋をコイル鉄線で取り付け、

上蓋と通水孔をコイル鉄線で連結し完成、④作業船によ る実用礁の海底据付、の作業手順となる(写真-6)。本

調査では、実用礁 6個(通水孔15孔が 4個、2孔が1 個、通水路が1個)とサンプル回収のための中型試験礁 9個を2009年8月に設置した。調査は、2011 年3月ま で予定しており、中型試験礁を定期的に回収し、生物蝟 集状況と底質浄化能力を検討及び実用礁の目視観察を行 っている。さらに、流速や水温等の物理環境と水質・底 質調査を行う。今年9月と11 月に調査を実施し、現在、

調査結果の解析を進め、貝殻礁による浄化効果の検証を 行っている。また、江良漁港には、堆積物食者で底質浄 化がある水産有用種のナマコが自生しており、貝殻礁の ナマコ蝟集効果の検証も行っている。

4.おわりに

今回は、落石漁港での試験用貝殻礁を用いた調査と室 内試験からホタテ貝殻礁の水質・底質浄化効果と、江良 漁港での蓄養水域の水質・底質保全策としての貝殻礁の 実用化の取り組みを紹介した。

今後は、実用型貝殻礁へのナマコを含む蝟集生物の現 地調査及びナマコの浄化能力も考慮した水質・底質浄化 効果について報告したい。

参考文献

1)岡本健太郎,山本 潤,牧野昌史:ホタテ貝殻礁に蝟

集した生物の遷移と浄化効果について,海洋開発論文集 第25巻,pp.419-424,2009.

2)佐藤朱美,足立久美子:貝殻礁に蝟集したヨコエビ 群による有機物除去能力の試算,平成 17 年度日本水産 工学会,pp.107-108,2005.

写真-4 実用化に向けた貝殻礁全体と設置状況

① 本体金網の組立 ②ホタテ貝殻の投入

③実用型貝殻礁の完成 ④実用型貝殻礁の据付状況 写真-6 実用型貝殻礁(通水孔15孔)の製作・据付

0 % 5 0 % 1 0 0 % 1 5 0 % 2 0 0 %

0 6 / 1 1 0 6 / 1 2 0 7 / 1 0 7 / 2 0 7 / 6 0 7 / 9 0 7 / 1 1 0 8 / 1 0 8 / 8 0 8 / 9 炭素浄化率 窒素浄化率

図-2 蝟集生物による炭素・窒素浄化率

表-1 貝殻礁の海水との接触面と蝟集生物個体数 貝殻礁

(内側)

貝殻礁

(外側)

環形動物 365 654

節足動物 343 584

写真-5 実用型貝殻礁

(左側:通水路型 右側:通水孔2孔)

平成21年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第66号

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