第4章 シェルコンクリート
4.8 シェルコンクリートのRC部材としての力学性能
83
84 載荷板
非付着領域 付着領域 4.8.2 付着強度試験
JSCE-G503「引抜き試験による鉄筋とコンクリートとの付着強度試験方法」に従い,鉄筋 とコンクリートとの付着性能を確認した.供試体は一辺の長さ150mmの立方形とし,D19の 鉄筋を使用した.載荷端側の鉄筋とコンクリートとの非付着長は75mmとし,鉄筋の5mm程度 を自由端側に突出させ,自由端側での変位測定と引張荷重を測定した.図-4.37に供試体の 概要図を示す.なお,供試体は1配合当り3本とし,打込みの翌日脱型後,材齢28日まで20℃
の水中養生を行った.供試体作製時に同時に作製した圧縮強度用供試体による,材齢28日 におけるコンクリート圧縮強度結果を表-4.15に,シェルサンド置換率とすべり量0.002Dに おける付着応力度との関係,またシェルサンド置換率と最大付着応力度との関係を図-4.38,
図-4.39にそれぞれ示す.
すべり量が0.002Dにおける付着応力度は,シェルサンド置換率50%で増加している.この 原因としては,貝殻の扁平な形状が関係しているものと考えられるが,最大付着応力度に ついては,シェルサンド置換率50%で低下する傾向がみられた.しかし,これらの差は試験 誤差の範囲と考えられ,シェルコンクリートの付着強度は普通コンクリートと同等の性能 を有していると判断できる.
図-4.37 引き抜き試験用の供試体概要図
85 0
5 10 15
0 25 50
最大付着応力度(N/mm2)
シェルサンド置換率(%)
0 5 10 15
0 25 50
付着応力度(N/mm2)
シェルサンド置換率(%)
表-4.15 圧縮強度試験結果
SS(%) 圧縮強度(N/mm2) 0 47.7 25 48.9 50 47.4
図-4.38 シェルサンド置換率とすべり量0.002Dにおける付着応力度との関係
図-4.39 シェルサンド置換率と最大付着応力度との関係
86
D13
14@150=2,100 50
50
2,200
100 900 200 900 100
D13
14@150=2,100 50
50
2,200
100 900 200 900 100
140
200
30 30
2501903030
D13 D19
D10 140
200
30 30
2501903030
D13 D19
D10
4.8.3 梁部材の曲げ載荷試験
鉄筋コンクリート梁の曲げ載荷試験を実施した.曲げ載荷試験体の寸法は,全長2,200mm,
高さ250mm,幅200mmとした.鉄筋はSD295を使用し,引張側鉄筋はD19を2本,圧縮側鉄筋は D13を2本,引張鉄筋比は1.30%とした.また,帯鉄筋はD10を150mm間隔,鉄筋のかぶりは30mm とした.載荷試験は容量200MNの油圧ジャッキを使用して,梁中央で鉛直方向に静的な単調 載荷で行った.載荷は2点載荷,2点支持条件で行い,せん断スパン比は4.09とした.図-4.40 に試験体の概要図を示す.図-4.41と図-4.42には,はり中央部の鉛直変位と載荷荷重との 関係と,はり中央部の曲げスパン内に取付けたパイ型ゲージによって計測したひび割れ幅 と載荷荷重との関係をそれぞれ示す.また,図-4.43~図-4.44には,シェルサンド置換率 0%とシェルサンド置換率100%について,曲げ載荷試験の最終段階でのひび割れ発生状況を それぞれ示す.
シェルサンド置換率 100%のシェルコンクリートについても通常のコンクリートと同様に,
はり中央部から曲げひび割れが生じ,載荷荷重の増加とともに上方に進展しながら分散し,
引張側の鉄筋が降伏後,上方でコンクリートが破壊して終局に至る典型的な曲げ破壊を示 した.また,シェルコンクリートの曲げ載荷試験による力学性能は,普通コンクリートと 比べて大きな差は認められなかった.
図-4.40 曲げ載荷試験体の概要図
87
図-4.41 はり中央部の鉛直変位と載荷荷重との関係
図-4.42 ひび割れ幅と載荷荷重との関係
88
図-4.43 曲げ載荷試験の最終段階でのひび割れ発生状況(SS0%)
図-4.44 曲げ載荷試験の最終段階でのひび割れ発生状況(SS100%)
89
6@150=900 100
1,100
100
100 350 200 350 100
6@150=900 100
1,100
100
100 350 200 350 100
140
200
30 30
250
1903030
D13 D19
D10 140
200
30 30
250
1903030
D13 D19
D10
4.8.4 梁部材のせん断載荷試験
鉄筋コンクリート梁のせん断載荷試験を実施した.せん断載荷試験体の寸法は,全長 1,100mm,高さ250mm,幅200mmとした.配筋状況などは4.8.3の曲げ載荷試験体と同じとし た.載荷試験は容量200MNの油圧ジャッキを使用して,はり中央で鉛直方向に静的な単調載 荷で行った.載荷は2点載荷,2点支持条件で行い,せん断スパン比は1.59とした.図-4.45 に試験体の概要図を示す.図-4.46には,はり中央部の鉛直変位と載荷荷重との関係を示す.
また,図-4.47には,シェルサンド置換率100%について,せん断載荷試験の最終段階でのひ び割れ発生状況を示す.
シェルコンクリートは普通コンクリートと同様に,載荷荷重を増加させるとはり中央部 から曲げひび割れが発生して,上方に進展するとともに,支点近傍から斜め方向にひび割 れが発生し,終局時は載荷点近傍のコンクリートが圧壊した.曲げ損傷からせん断破壊に 移行しており,曲げせん断破壊に近い結果であったものの,図-4.46に示すように,シェル コンクリートのせん断載荷試験による力学性能については,普通コンクリートと比べて大 きな差は認められなかった.
図-4.45 せん断載荷試験体の概要図
90
図-4.46 はり中央部の鉛直変位と載荷荷重との関係
図-4.47 せん断載荷試験の最終段階でのひび割れ発生状況(SS100%)
91
4.9 まとめ
① シェルサンドがフレッシュ性状や硬化性状に与える影響
シェルサンド置換率の増加に伴い,モルタルの 15 打フロー値は顕著に減少し,塑性粘度 と降伏値は共に増加した.塑性粘度は置換率 50%において大きな変化がみられた.モルタル の空気量については,シェルサンド置換率の増加に伴い,若干の空気量の増加がみられた が,それほど顕著ものではなかった.
一方,モルタルの硬化性状への影響については,置換率 62.5%までの範囲で,シェルサン ドを置換していないモルタルの圧縮強度を下回る傾向はみられなく,逆に若干の強度の向 上がみられた.
普通細骨材は粒径 5~2.5mm の割合が少ない方がワーカブルなコンクリートが得られると されている4.9)が,シェルサンドはその範囲の粒径の占める割合が若干多いため,その粒度 構成自体が,モルタルのフレッシュ性状,特に流動性に影響を及ぼしている可能性が考え られた.そこで,粒径 10~5mm,5~2.5mm,2.5~1.2mm,75μm~0mm の占める割合に着目 して,その割合を増減させたシェルサンドを用いて,置換率 25%のモルタル試験を実施した 結果,シェルサンドの粒度構成の違いによるフレッシュ性状への影響はみられなかった.
つまり,シェルサンドが流動性に影響を及ぼす原因としては,シェルサンド自体の扁平な 薄片や棒状といった形状そのものである可能性が高いと判断された.
② シェルサンド置換率の上限値
シェルサンドによるフレッシュ性状への影響については,置換率の増加に伴い,流動性 に顕著に現れた.特に,塑性粘度は置換率50%からその影響が大きく現れた.しかし,置換 率50%までのモルタルフローの状態は良好であり,粒度標準内の中間的な粒度に属する普通 骨材を使用する場合,混合後の粒度分布は,置換率50%まではコンクリート用細骨材として の粒度の要求品質を満足できることから,シェルサンド置換率の上限値は50%を原則とした.
③ シェルコンクリートの基本性質
シェルサンドは置換率の増加に伴い流動性に影響を与えるため,目標スランプを得るの に必要な単位水量は,普通コンクリートに比べて増える傾向となるものの,各配合におい て良好なワーカビリティーが得られており,シェルサンド置換率 50%までは,コンクリート 用細骨材として十分に活用できることが確認された.また,空気量については,シェルサ ンド置換率の増加に伴い若干の増加がみられた.
シェルコンクリートの圧縮強度は普通コンクリートを下回る傾向はみられなく,シェル サンド置換率 25%で若干の向上がみられた.また,シェルコンクリートの引張強度および曲 げ強度は,シェルサンド置換率 50%までの範囲で,普通コンクリートと同等の強度特性を有 していることが確認された.一方,静弾性係数については,シェルサンド置換率の増加に 伴い,若干低下する傾向がみられた. シェルサンドを細骨材として置換したことによる圧
92
縮強度の向上については,石灰石微粉末と同等以上の比表面積を持つシェルサンドの微粒 分が影響しているものと考えられる.
④ シェルコンクリートの耐久性
ホタテ貝殻の生産量は北海道や青森県が占める4.13).そのため,地産地消の観点から,シ ェルサンドがコンクリート用細骨材として活用されるこれらの地域の構造物に対して,特 に要求される事項として凍結融解抵抗性が挙げられる.シェルサンド置換率の増加に伴い,
目標空気量を得るための AE 剤添加量の調整が必要となるが,シェルコンクリートは普通コ ンクリートと同程度の凍結融解抵抗性を有していることが確認された.
シェルコンクリートの塩分浸透性は,普通ポルトランドセメントを使用した場合,材齢 2 年におけるコンクリート表面からの深さと全塩化物イオン量の関係は普通コンクリートと 同様な分布を示しているものの,塩化物イオンの見掛けの拡散係数はシェルサンド置換率 の増加に伴い,若干ではあるが増加する傾向がみられた.一方,高炉セメント B 種を使用 した場合は,シェルサンド置換率に増加に伴い,反対に塩化物イオンの見掛けの拡散係数 は減少する傾向を示すことから,シェルコンクリートを RC 構造物へ適用する場合には,高 炉セメント B 種の使用が耐塩害対策として挙げられる.
シェルコンクリートの長期圧縮強度については,標準養生(20℃の水中養生)および海中 暴露を行った材齢 2 年までの圧縮強度試験結果からは,材齢 28 日から材齢 1 年までの強度 の伸びは普通コンクリートと同程度であり,また材齢 2 年までの圧縮強度の低下,標準養 生と海中暴露の環境条件の違いによる強度の違いもみられなく,普通コンクリートと同等 であることを確認した.
⑤ シェルコンクリートの配合手法
置換する普通細骨材の種類や粒度の違いによって若干の違いはあるが,シェルサンド置 換率の増加に伴い,所要のスランプを得るのに必要な単位水量は普通コンクリートに比べ て増える傾向にあり,特に,乾燥収縮試験(長さ変化試験)結果において,長さ変化率に 影響を与える傾向がみられた.シェルサンドで置換する普通細骨材の種類によっても異な ると思われるが,シェルサンド置換率の増加に伴う,所要のスランプを得るための単位水 量の増加には十分留意し,単位水量をできるだけ少なくするような適切な配合選定が必要 である.また,シェルコンクリートの配合手法としては,スランプを1cm変化させる単位水 量の補正は,シェルサンド置換率25%で1.26%,シェルサンド置換率50%で1.36%となり,土 木学会コンクリート標準示方書「施工編」(2012年制定)4.14)に示されている1.2%と同程度の 割合であった.一般的なコンクリートと同様に,細骨材率が小さくなることにより,スラ ンプは大きくなる傾向にあり,スランプを1cm変化させる細骨材率の補正は2%程度であった.
⑥ シェルコンクリートの RC 部材としての力学性能
シェルコンクリートの RC 部材としての基礎的な力学性能を確認するため,鉄筋とコンク リートとの付着強度試験,また梁部材の曲げ耐力およびせん断耐力について載荷試験を実 施した.RC 部材への適用には,今後も十分な検証が必要となるが,本試験においては,シ