第4章 シェルコンクリート
4.2 シェルサンド置換率がモルタル性状に与える影響
4.2.1 試験概要
シェルサンドを細骨材として活用することによる,コンクリートのフレッシュ性状や硬 化性状に及ぼす影響を確認するため,コンクリート試験に先立ち,シェルサンド置換率を 変化させたモルタル試験を実施した.
モルタル試験は JIS R 5201 に準拠して行い,フレッシュ性状に関する確認試験として,
15 打フロー試験,およびモルタルエアメーターを用いた空気量試験を行った.また,レオ ロジー的性質を評価する目的として,外筒回転粘度計によるトルク値の測定から,塑性粘 度および降伏値を算定した.
硬化性状の確認試験としては,材齢 7 日,28 日の圧縮強度試験を行った.なお,強度試 験用供試体は 1 材齢につき 3 本とし,打込みの翌日脱型後,所定の材齢まで 20℃の水中養 生を行った.
4.2.2 使用材料およびモルタル配合
セメントは高炉セメント B 種(C:密度 3.04g/m3)を,普通細骨材は川砂(S: 表乾密度 2.58g/m3,吸水率 2.19%,粗粒率 2.70)を,シェルサンド(SS: 表乾密度 2.59g/m3,吸水率 1.60%,粗粒率 3.35)はバーの回転数 1,200rpm,破砕量 12t/hr の仕様により破砕したもの を使用した.また,混和剤にはリグニンスルホン酸化合物とポリオール複合体を主成分と する AE 減水剤(Ad:C×0.3%)を使用した.
川砂(SS0%)とシェルサンドの粒度分布を図-4.1 に示す.同図には,川砂をシェルサン ドで 50%置換(SS50%)した粒度分布も併せて示す.本試験で使用した中間的な粒度標準内 の粒度に属する川砂を使用した場合,シェルサンド置換後の粒度を粒度標準内に収めるた めのシェルサンドの最大置換率は 50%となる.
配合は水セメント比を50%,砂セメント比を2.8とし,シェルサンド置換率は0~62.5%の 範囲で12.5%毎に変化させた.モルタル配合を表-4.1に示す.
44 0
20 40 60 80 100
0.1 1 10 100
ふるい目の開き (mm)
通過質量百分率 (%)
川砂(SSO%)
SS 50%
シェルサンド 粒度標準
図-4.1 川砂およびシェルサンドの粒度分布
表-4.1 モルタルの配合
SS (%)
W/C
(%) S/C 絶対容積(L/L)
W C S SS 0
50 2.8 0.261 0.172
0.567 0 12.5 0.496 0.071
25 0.425 0.142
37.5 0.354 0.213
50 0.283 0.283
62.5 0.213 0.354
45 100
120 140 160 180 200
0 25 50 75
シェルサンド置換率(%)
15打フロー値(mm)
4.2.3 フレッシュ性状に与える影響 1) 15 打フロー試験および空気量試験結果
モルタルの15打ブロー試験および空気量試験の結果を表-4.2に,シェルサンド置換率と 15打フロー値の関係を図-4.2に示す.写真-4.1~写真4.5には,シェルサンド置換率毎のモ ルタルの15打フロー状況を示す.
シェルサンド置換率の増加に伴い,モルタルの15打フロー値は顕著に減少し,フレッシ ュ性状に影響を与えていることが分かる.写真からも置換率増加に伴ってフローコーンの 形が中央部に残っていくことが分かるが,置換率50%までのモルタルフローの状態は良好で あった.空気量については,シェルサンド置換率の増加に伴い,若干の空気量の増加がみ られたが,それほど顕著ものではなかった.
表-4.2 15打フロー試験および空気量試験結果
SS (%)
15打フロー値 (mm)
空気量 (%) 0 177×176 4.7 12.5 171×171 4.6 25 166×162 4.5 37.5 162×159 5.5 50 152×151 5.4 62.5 142×138 4.9
図-4.2 シェルサンド置換率と15打フロー値
46
写真-4.1 SS0%の15打フロー 写真-4.2 SS12.5%の15打フロー
(177×176mm) (171×171mm)
写真-4.3 SS25%の15打フロー 写真-4.4 SS37.5%の15打フロー
(166×162mm) (162×159mm)
写真-4.5 SS62.5%の15打フロー
(142×138mm)
47 2) 塑性粘度および降伏値の算定結果
モルタルの塑性粘度および降伏値は,外筒回転粘度計の回転数を0rpmから100rpmで上昇 させ,次に100rpmから0rpmに下降させて,10rpm毎のトルク値から,下降域のせん断応力(Pa)
とひずみ速度(1/s)を直線回帰して算定した.外筒回転粘度計によるトルク値の測定状況 を写真-4.6に,モルタルの塑性粘度および降伏値の算定結果を表-4.3に,またシェルサン ド置換率と塑性粘度,降伏値との関係をそれぞれ図-4.3と図-4.4に示す.
シェルサンド置換率の増加に伴い,塑性粘度と降伏値はともに増加した.塑性粘度は置 換率50%において大きな変化がみられ,特に,置換率62.5%のモルタルについては表面にざ らざらとした感触が残り,貝殻自体の存在も見た目ではっきりと分かる状態となった.回 転粘度計による測定は難しくなり,逆に内筒とシェルサンドとの間に滑りが発生し,有効 な測定結果を得ることができなかった.これらの原因としては,既述したようにシェルサ ンドの扁平な薄片や棒状の形状が大きく影響しているものと考えられる.
写真-4.6 外筒回転粘度計によるトルク値の測定状況
表-4.3 塑性粘度および降伏値の測定結果
SS (%)
塑性粘度 (Pa・s)
降伏値 (Pa) 0 7.20 1.07 12.5 8.26 1.04 25 9.02 1.10 37.5 10.27 1.36 50 13.79 1.53 62.5 - -
48 0
2 4 6 8 10 12 14 16
0 25 50 75
シェルサンド置換率(%)
塑性粘度(Pa・s)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0 25 50 75
シェルサンド置換率(%)
降伏値(Pa)
図-4.3 シェルサンド置換率と塑性粘度
図-4.4 シェルサンド置換率と降伏値
49 10
20 30 40 50 60
0 25 50 75
シェルサンド置換率(%)
圧縮強度(N/mm2)
材齢28日 材齢 7日 4.2.4 硬化性状に与える影響
ホタテ貝殻をコンクリート用粗骨材として活用した事例には,普通粗骨材への置換率の 増加に伴い圧縮強度は1~3割程度低下するといった報告4.2)がある.
一方,ホタテ貝殻をコンクリート用細骨材として活用した場合に当てはまるが,細骨材 として貝殻を含む海砂を使用した場合では,「特に大きな貝殻片や巻貝が混入したものでな ければ,実用上問題になることはあまりない」4.7)とされており,また「細かい貝殻片が30%
以下ならば,強度への影響は少ない」といわれている4.8).つまり,ホタテ貝殻を細破砕し,
コンクリート用細骨材として活用していく場合には,硬化性状に与える影響は少ないもの と考えられる.
シェルサンド置換率と各材齢の圧縮強度との関係を図-4.5 に示す.本試験においても,
シェルサンドを置換したモルタルの圧縮強度は置換率 62.5%までの範囲で,シェルサンドを 置換しないモルタル(SS0%)の圧縮強度を下回る傾向はみられなく,逆に若干の強度の向 上がみられた.
なお,コンクリート用細骨材として活用した場合でも,普通細骨材への置換率の増加に 伴い圧縮強度は 1 割程度低下する傾向がみられた事例4.2)はある.本事例では,建設重機で 粗破砕したホタテ貝殻を 5mm ふるいでふるい分けし,5mm ふるいを通過した細粒分を細骨材 として活用したものであるが,普通細骨材と比較して細かい粒度が少ないのが本試験で使 用したシェルサンドとの大きな相違点である.既往の文献試料4.2)を写真-4.7に,また既往 の文献4.2)から読み取った試料の粒度分布,およびシェルサンドの粒度分布を図-4.6に併せ て示す.なお,粗粒率は本試験で使用したシェルサンドが 3.35 であるのに対して,既往の 文献試料は 3.68 である.
図-4.5 シェルサンド置換率と圧縮強度
50 粒度標準
写真-4.7 既往の文献試料4.2)
図-4.6 既往の文献4.2)から読み取った試料およびシェルサンドの粒度分布
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