高圧処理による二枚貝の開殻・脱殻

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(1)高圧バイオサイエンスとバイオテクノロジー 第 15 回生物関連高圧研究会 20 周年記念シンポジウム抄録集 Vol. 2, 190–194, 2008. 190. 高圧処理による二枚貝の開殻・脱殻. 山本和貴*1、中山真一郎 2、村関尚志 2、中山勝夫 2、顧暁曄 1 、小関 成樹 1 1. 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 つくば市観音台 2-1-12 2 中山環境エンジ株式会社 つくば市上郷 1266-2 *E-mail: kazutaka@affrc.go.jp 第 15 回生物関連高圧研究会 20 周年記念シンポジウム抄録集 2008 年 4 月 8 日受付/2008 年 4 月 15 日受理. 要旨 カキが高圧処理によって開殻し、脱殻が容易になることは既に知られ、日本、米 国では加工用カキの開殻・脱殻操作として実用化されている。しかし、カキ以外 の二枚貝の開殻・脱殻可能性については、十分に検討されていない。そこで本研 究では、カキ以外の二枚貝を用いて、高圧開殻・脱殻の可能性を検討した。. キーワード:二枚貝、高圧、開殻、脱殻. 1. はじめに 高圧処理の食品産業への利用は、主に殺菌目的で開発が進められ、一次殺菌、二次殺菌と して幾つかの食品に高圧処理が利用されている。殺菌目的以外での高圧処理の実用化事例と しては、無菌米飯の水浸漬に高圧液体含浸工程を活用した事例の他に、カキの開殻・脱殻が ある。日本における実用化例としては、処理温度を 40℃に上げて 80 MPa で処理する工程が、 加工用カキの開殻・脱殻操作として採用され、人件費の大幅な削減、消費者からのクレーム として問題となるカキ殻片の混入低減などが達成されている。米国でも、高圧処理で開殻・ 脱殻したカキが好評を得ており、実績を上げている。 カキを含む二枚貝の開殻・脱殻については、日本で特許が公開されているが[1, 2]、いずれ の特許も二枚貝の全てに高圧開殻・脱殻が適用可能であるような記載がなされている。しか し、カキ以外の二枚貝の開殻・脱殻可能性については、学術的なデータの公開も殆どなく、 十分に検討されているとは言い難い。そこで本研究では、カキ以外の二枚貝を用いて、高圧 処理による開殻・脱殻の可能性を検討した。. 2. 材料と方法 2.1. 高圧処理.

(2) 191. 二枚貝(アサリ、シジミ、アカガイ、ホタテ、カキ)は魚市場から取り寄せた新鮮かつ生 きているものを用いた。レトルト用ポリ袋に二枚貝を入れ、水道水を加え、空気を出来る限 り除き、熱シールにより密封した。密封試料を大型高圧処理装置(JSW 社製:max. 200 MPa, 57L)により、最大 200 MPa で最大 10 分間、室温で処理した。二枚貝をポリ袋から取り出し、 その開殻の有無を目視により判定して開殻率を求め、開殻した貝については、身を手で貝か ら剥離して脱殻の容易さを判定した。. 3. 結果 3.1. 二枚貝の開殻・脱殻 200MPa、10 分間の高圧処理により、シジミ以外の二枚貝(アサリ、アカガイ、ホタテ、カ キ)は全てが開殻した(Table 1)。また、開殻した二枚貝の身は、カキでは完全に脱殻してお り、貝を振るだけで開殻した殻の隙間から身が滑り落ち、他のシジミ以外の二枚貝において は、貝柱が貝殻に残らない程度にまで、手で容易に脱殻できた。アサリにおいては、処理時 間を 1 分間あるいは 5 分間にしても、開殻率はほぼ 100%を示したことから、効率的な開殻・ 脱殻が可能であることが示唆された。 シジミについては、二割程度しか開殻しなかったが、開殻したものについては比較的容易 に手で脱殻できた。また、処理圧力(50 MPa、100 MPa、200 MPa) 、処理時間(1、5、10 分 間) 、処理回数(1 回、2 回)などを変えても、シジミの開殻率は最大でも五割以下であり、 処理圧力が低い程低下した。しかも、実験毎の開殻率の変動が大きかった。 Table 1 Shucking and flesh detaching of bivalves assisted by high hydrostatic pressure treatment (200 MPa) at ambient temperature for 10min 開殻のしやすさ Easiness of shucking. 脱殻のしやすさ Easiness of detaching flesh. アカガイ ◎ ○ bloody clam シジミ △ ○ Japanese littleneck アサリ ◎ ○ freshwater clam ホタテ ◎ ○ scallop カキ ◎ ◎ oyster Shells were opened or flesh was detached: ◎, automatically; ○, easily with slight hand assistance; △, hardly with some shells ; ×, impossible.

(3) 192. bloody clam. freshwater clam. open. close. Japanese littleneck. Fig.1. Shucking of bivalves by high hydrostatic pressure treatment at 200 MPa and ambient temperature for 10min: bloody clam (top); freshwater clam (middle); Japanese littleneck (bottom). left, before treatment; right, after treatment.. 3.2. 3.3. 開殻・脱殻した二枚貝の外観 高圧処理後に開殻・脱殻したアカガイ、シジミ、アサリ、カキの身には、少なくとも外観 上の変化は見られなかったが、密閉容器の水道水はいずれも若干白濁し、細胞破壊によるエ キスの溶出が示唆された。一方、高圧処理後のホタテの可食部(貝柱)は若干白濁した(Fig. 2) ことから、その生食用としての商品価値が低下することが示唆された。. scallop HHP-shucked and peeled ligament hinge. HHP-shucked. Fig.2. Shucked scallop by high hydrostatic pressure treatment at 200 MPa and ambient temperature for 10min. 4. 考察 シジミの高圧脱殻は実用化には不向きであると考えられたが、アサリ、アカガイ、ホタテ、 カキについては、加工用素材として高圧開殻・脱殻の実用化の可能性が示唆された。水産加.

(4) 193. 工業において、アサリの剥き身は、茹でて開殻したアサリをかごの中で激しく振ることによ って脱殻されているが、高圧処理を用いれば、茹でることなく開殻・脱殻可能で、アサリの エキスを茹で汁に逃すことなく、剥き身がえられることが期待される。 ホタテの高圧脱殻では、可食部が若干白濁することが明らかとなった。ホタテの可食部は、 今回用いた他の二枚貝と異なり、殆どが貝柱である。貝柱の肉は繊維状の構造が、高圧処理 により何らかの変化を起こし、特に部分的な変性が起こった可能性がある。 また、これら二枚貝の開殻・脱殻の機構は不明であるが、圧縮率の高い身が高圧下で収縮 し、圧縮率が低い貝殻から剥がれて脱殻した可能性がある。しかし、開殻については、二枚 貝のヒンジ部分のタンパク質が高圧処理の影響を受ける等の可能性があるものの、現時点で はその詳細は不明である。シジミの開殻率のみが低い原因は不明であるが、シジミの殻は、 他の二枚貝、特に開殻しやすいカキと比べると、密に閉じているが故に高圧処理の影響を受 けにくいことも想定される。いずれにせよ、高圧開殻・脱殻は、二枚貝の種類によって効果 が異なるので、全ての二枚貝に効率的に適用できるとは限らない。. 謝辞 本研究は、農林水産省の先端技術を活用した農林水産研究高度化事業における「高品質食品 製造のための汎用型中高圧加工装置及び利用技術の開発」の支援を受けた。ここに謝意を表 する。. 参考文献 [1] 特許登録第3630571号 (2004) 二枚貝の開殻方法 [2] 特許登録第2989034号 (1999) 加工貝の製造法.

(5) 194. Shucking of Bivalves by High Hydrostatic Pressure Treatment Kazutaka Yamamoto 1, Shinichiro Nakayama 2, Takashi Murazeki 2 , Katsuo Nakayama 2 Xiaye Gu1, Shigenobu Koseki1 1. National Food Research Institute, 2-1-12 Kannondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8642, Japan 2 Nakayama Environmental Engineering Co., Ltd., 1266-2 Kamigo, Tsukuba 300-2645, Japan *E-mail: kazutaka@affrc.go.jp. Proceedings of the 15th Symposium for Japanese Research Group of High Pressure Bioscience and Biotechnology Received 8 April 2008/Accepted 15 April 2008. Abstract It has been known that bivalves can be shucked and the flesh can be detached after high hydrostatic pressure (HHP) treatment. In this regard, some patents have been issued. In Japan, one commercial scale shucking of oyster is realized by treating the bivalve at 80 MPa and 40˚C. HHP shucking of oyster contributes to reducing the labor cost and the claims from consumers on the contaminated hard shell pieces. In the USA, HHP-shucked oysters receive a good reputation. However, applicability of HHP shucking to other bivalves has not been sufficiently studied and scientific publications of the relevant data have been quite limited. In this study, bivalves other than oyster were subjected to HHP treatment for shucking and flesh detaching. Keywords:bivalve, high pressure, shucking, flesh detaching.

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Table 1  Shucking and flesh detaching of bivalves assisted by high hydrostatic pressure treatment  (200 MPa) at ambient temperature for 10min

Table 1

Shucking and flesh detaching of bivalves assisted by high hydrostatic pressure treatment (200 MPa) at ambient temperature for 10min p.2

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