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第4章 シェルコンクリート

4.6 シェルコンクリートの耐久性

4.5の「シェルコンクリートの基本性質」で示した試験結果では,シェルコンクリートの 空気量はシェルサンド置換率の増加に伴い増える傾向にあったため,目標とする空気量を 得るために,AE剤の添加量を低減させる必要があった.その結果,計画的にコンクリート 中に均等に分布させる微小な独立した直径25~250μmのエントレインドエアが少なくな り,硬化したシェルコンクリート中の気泡分布は,気泡径の大きい側へシフトし,凍結融 解抵抗性の劣ることが懸念された.

そこで,表-4.6に示すコンクリート配合のうち,普通ポルトランドセメントを用いた場 合の水セメント比(W/C)50%,シェルサンド置換率0%,25%,50%のそれぞれのコンクリー トについて,リニアトラバース法によって気泡分布の測定を行った.

その結果,図-4.21に示すように,シェルサンドを増加した場合においても,置換率0%と 比べて,直径25~250μmの微細な気泡の分布は,大きい側へシフトする傾向はみられなか った.更に,表-3.3に示したように,シェルサンドは耐久的なコンクリートにするための,

骨材としての要求品質である安定性の項目(JIS A 1122)を十分に満足していることから,

凍結融解抵抗性についての問題はないと考えられる.

しかし,表-2.1で示したように,ホタテ貝殻の生産量は北海道や青森県が占める4.13).そ のため,地産地消の観点から,シェルサンドがコンクリート用細骨材として活用されるこ れらの地域の構造物に対して,凍結融解抵抗性は特に要求される事項として挙げられる.

そこで,シェルコンクリートの凍結融解抵抗性について再検討を行うと共に,海岸に近い 場所での使用を想定し,シェルコンクリートの塩分浸透性,また長期圧縮強度について,

各種耐久性試験を実施した.

図-4.21 リニアトラバース法による気泡分布測定結果

68 4.6.1 使用材料およびコンクリート配合

シェルサンド(SS)は表乾密度2.63g/m3,吸水率1.02%,粗粒率3.69のものを使用した.

その他の材料の種類および物性値を表-4.7に示す.

シェルコンクリートはスランプ 8cm,空気量 4.5%を配合条件とし,水セメント比 65%の普 通コンクリート(SS0%)に対して,スランプ±1.5cm(JIS A 1101),空気量±1.0%(JIS A 1128)が得られるように単位水量,および AE 剤による調整を行った.単位粗骨材かさ容積 および AE 減水剤量は普通コンクリートと同一とした.なお,本試験は後述するシェルコン クリートの実証試験のうち 5.2 の「ケーソン根固ブロックへの適用」にあたり事前室内試 験のひとつとして実施したものである.そのため,対象となった生コンプラントが,通常,

普通コンクリートとして出荷している細骨材の山砂と砕砂の混合比が 65:35 であるのに対 して,シェルコンクリートの場合には,生コンプラントにある貯蔵ビン数を考慮し,山砂 のみの使用とした.コンクリート配合を表-4.8に示す.

コンクリートの練混ぜには,容量 55 リットルのパン型強制ミキサーを使用し,1 バッチ の練り量は 40 リットルとした.練混ぜ方法は空練り 30 秒,本練りを 90 秒とした.

これまでと同様に,シェルサンド置換率の増加に伴い,目標スランプを得るのに必要な 単位水量は増える傾向にあり,また空気量は増える傾向にあったため,AE 剤の添加量を低 減させて空気量を調整した

表-4.7 使用材料の種類および物性値

使用材料 種類 主な物性値

セメント(C) 普通ポルトランドセメント(N) 密度:3.15g/cm3

細骨材(S) ①上北郡六ヶ所村 山砂(65%) 表乾密度:2.62g/cm3,吸水率:2.10%

②八戸市松館 砕砂(35%) 表乾密度:2.66g/cm3,吸水率:1.08%

粗骨材(G) ①八戸市松館 砕石 2505 (55%) 表乾密度:2.70g/cm3,吸水率:0.34%

②八戸市島守 砕石 4020(45%) 表乾密度:2.93g/cm3,吸水率:0.33%

AE 減水剤(Ad) フローリック SV リグニンスルホン酸塩およびオキシカルボン酸塩系

表-4.8 コンクリート配合

W/C (%)

SS (%)

単位量(kg/m3) C×(%) W C S① S② SS G① G② Ad AE 剤

65

0 149 229 534 292 0

623 553 0.8

3.0A 25 160 246 584 0 195 2.0A 50 172 265 366 0 367 1.3A

*1A=0.003%

69 60

70 80 90 100

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 サイクル数

相対動弾性係数(%)

SS 0%

SS25%

SS50%

4.6.2 凍結融解抵抗性

シェルサンド置換率 0%,25%,50%のそれぞれのコンクリートについて,JIS A 1148 の A 法に準拠した凍結融解試験によるサイクル数と相対動弾性係数の関係を図-4.22に示す.な お,供試体は 1 配合につき 3 本とし,打込みの翌日脱型後,材齢 28 日まで 20℃の水中養生 を行った.

凍結および融解の 1 サイクルを 300 回繰り返し,相対動弾性係数の低下の度合いによっ て求める耐久性指数は一般に 60%以上が必要とされるが,いずれの結果も目標値を十分に満 足しており,シェルコンクリートは普通コンクリート(SS0%)と同程度の凍結融解抵抗性を 有しているものと判断できる.また,シェルサンド置換率の増加に伴い,目標空気量を得 るための AE 剤添加量の調整が必要であったが,それによる凍結融解抵抗性への影響はない と考えられる.

また,図-4.23 には参考として,後述する表-4.12 に示す生コン工場 A の材料を用いて,

表-4.13に示す水セメント比 50%のシェルサンド置換率 0%,25%,50%のそれぞれのコンク リートについて, JIS A 1148 の A 法に準拠して同様に実施した凍結融解試験によるサイク ル数と相対動弾性係数の関係を示す.水セメント比 65%の結果と同様に,シェルコンクリ ートは普通コンクリート(SS0%)と同程度の凍結融解抵抗性を有していることがわかる.

図-4.22 サイクル数と相対動弾性係数の関係

(W/C=65%)

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図-4.23 サイクル数と相対動弾性係数の関係

(W/C=50%)

71 4.6.3 塩分浸透性

塩分浸透性の検討は,打込み側の1面のみを残し,他面をエポキシ樹脂塗料で被覆して作 製した供試体(JSCE-G 572に準拠)を用いて,材齢28日まで標準養生(20℃水中)を行っ た後,神奈川県横須賀市にある自然海水を貯留した水槽中において浸漬(海中暴露(写真 -4.9))させて行った.シェルサンド置換率0%,25%,50%のそれぞれのコンクリートについ て,材齢2年におけるコンクリート表面からの深さと全塩化物イオン量の関係を図-4.24に,

また表-4.9には,Fickの拡散方程式を用い最小二乗近似により算出した塩化物イオンの見 掛けの拡散係数を示す.なお,供試体は1配合につき1本とした.

全塩化物イオン量は全て同様な分布を示しているものの,塩化物イオンの見掛けの拡散 係数はシェルサンド置換率の増加に伴い,若干ではあるが増加する傾向がみられる.

一方,図-4.25および表-4.10には,事前室内試験において,予備的に行った高炉セメン ト B 種を使用したシェルサンド置換率 0%,25%,50%のそれぞれについて,材齢 2 年におけ るコンクリート表面からの深さと全塩化物イオン量の関係と,同様に算出した塩化物イオ ンの見掛けの拡散係数を示す.なお,使用材料およびコンクリート配合は同じである.

全塩化物イオン量は全て同様な分布を示しているものの,高炉セメント B 種を使用した 場合は,シェルサンド置換率に増加に伴い,塩化物イオンの見掛けの拡散係数は減少する 傾向を示し,シェルサンドによるコンクリートの緻密化が生じている可能性が考えられる.

凍結によりコンクリート中の塩分は内部へ移動し,その結果,鉄筋位置での塩分濃度は 高くなり塩害が生じる危険性がある.シェルコンクリートの海岸に近い場所での使用,特 に RC 構造物へ適用する場合には,高炉セメント B 種の使用が耐塩害対策のひとつとして挙 げられる.

図-4.24 コンクリート表面からの深さと全塩化物イオン量の関係

(普通ポルトランドセメント)

72

表-4.9 塩化物イオンの見掛けの拡散係数

(普通ポルトランドセメント)

SS(%) 塩化物イオンの見掛けの拡散係数 Dap(cm2/y)

0 1.904 25 2.313 50 2.386

図-4.25 コンクリート表面からの深さと全塩化物イオン量の関係

(高炉セメントB種)

表-4.10 塩化物イオンの見掛けの拡散係数

(高炉セメントB種)

SS(%) 塩化物イオンの見掛けの拡散係数 Dap(cm2/y)

0 0.437 25 0.397 50 0.366

73 4.6.4 長期圧縮強度

標準養生(20℃の水中養生)および海中暴露を行った材齢 2 年までの圧縮強度試験結果

(φ125×250mm)を表-4.11 と図-4.25~4.27 に示す.海中暴露は材齢 28 日まで標準養生

(20℃水中養生)を行った後,神奈川県横須賀市にある自然海水を貯留した水槽に移動し 浸漬(海中暴露(写真-4.9))させた.なお,供試体は 1 材齢につき 3 本とした.

シェルコンクリートの材齢 28 日から材齢 1 年までの強度の伸びは普通コンクリート (SS0%)と同程度であり,また材齢 2 年までの圧縮強度の低下もみられなかった.標準養生 および海中暴露の環境条件の違いによる強度の違いもみられなく,シェルコンクリートの 長期圧縮強度は普通コンクリートと同等であるものと判断できる.

表-4.11 長期圧縮強度試験結果

SS

(%) 環境条件 圧縮強度(N/mm2) σ28d σ1y σ2y 0 標準養生 29.3 35.5 36.0 海中暴露 - 36.3 34.3 25 標準養生 26.9 34.4 33.3 海中暴露 - 35.1 34.2 50 標準養生 28.2 36.7 37.7 海中暴露 - 35.6 37.3

写真-4.9 供試体の海中暴露開始状況

74 SS0%

0 10 20 30 40 50

28日 1年 2年

材齢 圧縮強度(N/mm2

標準養生 海中養生

SS25%

0 10 20 30 40 50

28日 1年 2年

材齢 圧縮強度(N/mm2

標準養生 海中養生

SS50%

0 10 20 30 40 50

28日 1年 2年

材齢 圧縮強度(N/mm2

標準養生 海中養生

図-4.26 長期圧縮強度試験結果(SS0%)

図-4.27 長期圧縮強度試験結果(SS25%)

図-4.28 長期圧縮強度試験結果(SS50%)

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