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シェルコンクリートの基本性質

第4章 シェルコンクリート

4.5 シェルコンクリートの基本性質

シェルコンクリートのフレッシュ性状および硬化性状に関する基本性質を確認するため,

各種試験を実施した.

4.5.1 試験概要

フレッシュ性状については JIS A 1101 に準拠したスランプ試験,また JIS A 1128 に準 拠した空気量試験を行った.硬化性状については JIS A 1132「コンクリートの強度試験用 供試体の作り方」により供試体を作製し,材齢 7 日,28 日の圧縮強度試験(JIS A 1108)

および静弾性係数試験(JIS A 1149),また材齢 28 日においての(割裂)引張強度試験(JIS A 1113)および曲げ強度試験(JIS A 1106)を行った.圧縮強度および引張強度はφ10×

20cm の円柱供試体を,曲げ強度試験は 10×10×40cm の角柱供試体を作製し,各種強度試験 用の供試体は 1 材齢につき 3 本とし,打込みの翌日脱型後,所定の材齢まで 20℃の水中養 生を行った.

58 4.5.2 使用材料およびコンクリート配合

シェルサンド(SS)は表乾密度2.63g/m3,吸水率0.86%,粗粒率3.54のものを,粗骨材(G)

は表乾密度2.66g/m3,吸水率1.06%の2005砕石を使用した.普通細骨材(S)およびAE減水剤

(Ad)については4.2.2に示したものと同じとした.

シェルコンクリートはスランプ 8cm,空気量 4.5%を配合条件とし,水セメント比 40%,50%,

60%の普通コンクリート(SS0%)に対して,スランプ±1.5 cm,空気量±1.0 %が得られる ように単位水量,および AE 剤による調整を行った.単位粗骨材かさ容積および AE 減水剤 量は普通コンクリートと同一とした.なお,セメントは普通ポルトランドセメント(C:密 度 3.16g/m3)を使用し,水セメント比 50%については,高炉セメント B 種(C:密度 3.04g/m3) を使用した場合についても実施した.コンクリート配合を表-4.6に示す.

コンクリートの練混ぜには,容量 55 リットルのパン型強制ミキサーを使用し,1 バッチ の練り量は 40 リットルとした.練混ぜ方法は空練り 30 秒,本練りを 90 秒とした.

表-4.6 コンクリート配合

セメントの 種類

W/C (%)

SS (%)

単位量(kg/m3) C×(%) W C S SS G Ad AE剤*

N

40 0 164 410 712 0

1025 0.38 2.4A 25 179 448 482 164 1.0A

50

0 157 314 808 0

1025 0.25

2.4A 25 172 344 559 190 1.0A 50 188 376 339 346 0.5A 60 0 157 262 851 0

1025 0.25 2.4A 25 172 287 594 202 1.0A

BB 50

0 155 310 806 0

1025 0.25

2.9A 25 170 340 557 190 2.2A 50 186 372 337 344 1.2A

*1A=0.001%

59 4.5.3 フレッシュ性状

モルタル試験結果に示したように,シェルサンドは置換率の増加に伴い流動性に影響を 与えた.そのため,表-4.6 のコンクリート配合に示すように,目標スランプを得るのに必 要な単位水量は,普通コンクリート(SS0%)に比べて増える傾向となった.しかし,各配 合において良好なワーカビリティーが得られており,また供試体作製時に骨材の分離は見 られず,締固めおよび表面仕上げも容易であった.シェルサンド置換率 50%までは,コンク リート用細骨材として十分に活用できることが確認された.空気量については,シェルサ ンド置換率の増加に伴い若干の増加がみられたため,AE 剤による調整を行った.

高炉セメント B 種を使用した場合について,シェルサンド置換率毎のスランプ状況を写 真-4.8に示す.

写真-4.8 スランプ試験状況

(高炉セメントB種 W/C=50%)

SS0%

SS25% SS50%

60 4.5.4 硬化性状

それぞれのセメントについて,水セメント比 50%のシェルサンド置換率と各材齢の圧縮強 度,また静弾性係数との関係を図-4.13,4.14にそれぞれ示す.

モルタル試験結果と同様に,シェルコンクリートの圧縮強度は,セメントの種類に関係 なく,普通コンクリートを下回る傾向はみられなく,シェルサンド置換率 25%で若干の向上 がみられた.一方,静弾性係数については,シェルサンド置換率の増加に伴い,若干低下 する傾向がみられた.図-4.15,4.16には,それぞれのセメントについて,シェルサンド置 換率毎の各材齢と静弾性係数の関係を,次式に示す圧縮強度から推定した静弾性係数 4.10)

と併せて示す.本試験で対象とした普通コンクリートの静弾性係数自体が,圧縮強度から 推定される静弾性係数に比べて低下しているものの,シェルサンド置換率の増加に伴い,

セメントの種類に関係なく,静弾性係数は若干低下する傾向が認められた.

Ee(t)=Φ(t)×4.7×103√f´c(t)

ここに,Ee(t):材齢(t)における有効ヤング係数(N/mm2

Φ(t):温度上昇時におけるクリープの影響が大きいことによる補正値 材齢 3 日まで Φ=0.73

材齢 5 日以降 Φ=1.0

材齢 3 日から 5 までは直線補正 f´c(t):材齢 t 日の圧縮強度(N/mm2

図-4.17,4.18には,普通ポルトランドセメントを使用した場合の,材齢 28 日の圧縮強 度と引張強度,また曲げ強度との関係をそれぞれ示す.各図には,既往の文献 4.11)から,

圧縮強度と引張強度との関係比 1/10~1/13 を,圧縮強度と曲げ強度との関係比 1/5~1/8 の範囲を実線でそれぞれ併せて示す.これらの図に示すように,シェルコンクリートの引 張強度および曲げ強度は,シェルサンド置換率 50%までの範囲で,普通コンクリートと同等 の強度特性を有しているといえる.しかし,水セメント比 50%の試験結果のみであるが,シ ェルサンド置換率 50%の引張強度については,圧縮強度に比べて若干の向上がみられた.

なお,シェルコンクリートの脱型後の供試体は,表面気泡や砂すじなど,普通コンクリ ートにも見られる程度のものであり,問題のない状態であった.

61 10

20 30 40 50 60

0 25 50

シェルサンド置換率(%) 圧縮強度(N/mm2 )

σ7 σ28

   N    BB

15 20 25 30 35

0 25 50

シェルサンド置換率(%) 静弾性係数(kN/mm2 )

σ7 σ28

   N    BB

図-4.13 シェルサンド置換率と圧縮強度の関係(W/C=50%)

図-4.14 シェルサンド置換率と静弾性係数の関係(W/C=50%)

62

図-4.15 各材齢と静弾性係数の関係(普通ポルトランドセメント・W/C=50%)

図-4.16 各材齢と静弾性係数の関係(高炉セメント B 種・W/C=50%)

圧縮強度から推定した値

圧縮強度から推定した値

63 1/10

1/13

1/5

1/8

図-4.17 圧縮強度と引張強度(普通ポルトランドセメント)

図-4.18 圧縮強度と曲げ強度(普通ポルトランドセメント)

64 4.5.5 圧縮強度の向上する原因について

4.2.4 では,コンクリート用細骨材として活用した事例 4.2)において,普通細骨材へのホ タテ貝殻の置換率の増加に伴い圧縮強度が低下する傾向の原因として,本事例で使用され たホタテ貝殻はシェルサンドに比べて細かい粒度が少ないことが要因に考えられた.しか し,4.3ではモルタル試験ではあるが,シェルサンドの粒度構成自体がモルタルの硬化性状 へ影響を及ぼしていることは確認されなかった.

一方,シェルサンドと同じようにカルサイトを主体とする石灰石微粉末をコンクリート 用細骨材の一部に置換えた場合には,微粉末効果による初期水和の促進と,炭酸カルシウ ムと各種カルシウムアルミネートとの反応によって初期強度は向上する4.12)とされている.

こうしたコンクリート用石灰石微粉末の品質規格(案)では,水和発熱低減等を目的として,

セメントなどと同様な細かさを有する粉体として,比表面積は 2,500cm2/g 以上と下限値が 規定されている.シェルサンドの微粒分の比表面積は JIS R 5201 のセメントの物理試験に 準拠して行った結果では 3,980cm2/g であり,これらの規格値を十分に満足している.

このことから,シェルサンドを細骨材として置換したことによるコンクリート圧縮強度 の低下傾向がみられないことはもちろん,逆に若干の向上が認められる場合があることは,

石灰石微粉末と同等の比表面積を持つシェルサンドの微粒分がやはり影響しているものと 考えられる.

しかし,本試験で使用したシェルサンドの微粒分量は JIS A 5005 の微粒分量の規格値で ある 7.0%以下に対して 8.9%と大きいものの,シェルサンド置換率 25%の場合,1m3当たりの 微粒分量としては 17kg 程度(シェルサンドの単位量;190kg/m3)と少ない.そこで,1m3 当たり 17kg 程度の微粒分が圧縮強度に与える影響を確認するとともに,シェルサンドを置 換したことによって生成される反応生成物の特定を粉末 X 線回折によって実施した.

65 80

90 100 110 120

なし 原材料 原材料+ 洗い材料

圧縮強度比(%)

σ7 σ28

洗い材料 置換率0%       置換率25%

1) 微粒分による影響

シェルサンドの微粒分による圧縮強度への影響を確認するため,微粒分を75μmの網ふる いで洗い落としたシェルサンド(洗い材料)を用いて追加試験を行った.試験ケースは,

シェルサンド置換率0%と,「原材料(洗い前)」,「洗い材料」,「原材料(洗い前)+洗い材 料(50:50)」のそれぞれのシェルサンドで細骨材の25%を置換した場合の4ケースとした.

つまり,1m3当たりでは「原材料(洗い前)」には17kg程度の微粒分が,「原材料(洗い前)

+洗い材料(50:50)」には8.5 kg程度の微粒分が含まれていることになる.

コンクリート配合は表-4.6に示す水セメント比(W/C)50%,セメントの種類は普通ポル トランドセメントとした.各ケースにおける置換率0%に対するそれぞれの圧縮強度比を図 -4.19に示す.

シェルサンド置換率 0%に比べて,「洗い材料」を用いた置換率 25%でも,圧縮強度の向上 はみられるものの,「原材料(洗い前)」や「原材料(洗い前)+洗い材料(50:50)」に比 べて,その強度比は低下している.このことから,シェルサンドの微粒分は圧縮強度の向 上に少なからず影響を与えているとものと考えられる.

図-4.19 微粒分による圧縮強度への影響

66

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

回折角度(2θ)

 ヘミカーボネー

モノカーボネート

SS 0%

SS25%

SS50%

2) 粉末 X 線回折による反応生成物の特定

シェルサンドを細骨材として置換したことによる反応生成物の特定を粉末 X 線回折によ って実施した.

石灰石微粉末は各種カルシウムアルミネートと反応して,モノカーボネートやヘミカー ボネートを生成する 4.12)といわれている.そのため,粉末 X 線回折で使用するコンクリー ト試料は,表-4.6 に示すコンクリート配合のうち,各種カルシウムアルミネートの生成が しやすい高炉セメント B 種を用いたコンクリートを対象にして,水セメント比(W/C)50%,

シェルサンド置換率 0%,25%,50%のそれぞれについて実施した.試料は材齢 28 日における コンクリート圧縮強度試験後の供試体より採取したモルタル部分をアルミナ乳鉢の中でア セトンに浸して軽く摩砕し,懸濁液に浮遊する部分をろ過し,常温で真空乾燥したものを 用いた.

図-4.20の粉末 X 線回折図に示すように,シェルサンド置換率の増加に伴い石灰石微粉末 を混和した場合と同様のモノカーボネートやヘミカーボネートの反応生成物が確認された.

このことから,シェルサンドを細骨材として置換したことによる圧縮強度の向上には,石 灰石微粉末と同様な水和反応が影響を与えていることが考えられる.

図-4.20 粉末X線回折による反応生成物の特定