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博士(工学)伊藤裕康 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)伊藤裕康 学位論文題名

定在波 分布測定 によるLINAC 電子ビーム微細構造      パ ルス幅計 測の研究

学位論文内容の要旨

  近年、電子線形加速器は、高工ネルギー物理現象の解明や、物質科学や光化学反応、医 学治療などのさまざまな分野で利用されており、安定かつ高品位な電子ピームが要求され ている。そのためには、ピーム位置やェミッタンス、パルス形状、工ネルギー分布等を測 定するさまざまな種類のモ二夕が必要であり、これまで多くの研究がなされてきたが、最 近の加速器自体の性能の向上に対応して、より精度の良い、また容易に測定できるピーム モ二夕の重要性が高まっている。

  電子線形加速器で加速された電子ピームは、微細構造パルス列をなすが、そのバルス時 間幅を測定する場合、ストリークカメラを用いた光計測がよく用いられているが、光の伝 搬によルパルス幅が広がり、実際の時間分解能は劣化する。同時に電子ピームを物質中に 衝突させる方法であるため、他の実験との併用測定が難しい。一方、非接触型として電子 ピームの放射電界を直接測定する方法も試みられているが、微細構造バルスの時間幅が非 常に短く、測定器に数十GHzの広帯域が要求されるため、オシ口スコープにより直接測定 することは容易ではない。

  本研究は、この微細構造パルス幅を非接触に計測する方法として、電子ピームのパルス 列によって作られる電界の局所定在波分布からパルス時間幅を計測する方法を提案し、検 討をおこなったものである。定在波分布は、ピーム進行軸に垂直に導体板を配置すること で、放射電界である入射波と反射板からの反射波の干渉によって形成させることができる。

また、この測定においては、各干渉位置で電界を検波して、そのピーク出カのみ測定すれ ば よ い の で 、 広 帯 域 の 測 定 器 は 必 ず し も 必 要 と さ れ ず 、 測 定 が 容 易 に 行 え る 。   本 論 文 は 、 全8章 よ り 構 成 さ れ て い る 。 各 章 の 要 旨 は 以 下 の 通 り で あ る 。   第1章は序論であり、線形加速器(LINAC)の電子ピーム計測における本研究の位置付け と各章の概要について述べた。

  第2章では、LINACの概要と微細構造パルス列について述べた。また、Lienard・Wiechert ポテンシャルを用いると、自由空間中を進行する相対論的電子ピームの放射電界が、遠方 界 に お い て は ピ ー ム 進 行 方向 の1次元 伝搬 問題 とし て扱 える こと につ いて 述べた 。   第3章では、微細構造パルスのパルス幅計測に現在使用されている代表的なピームモ二 夕を挙げ、測定原理やその問題点についてまとめた。

  第4章では、LINACピームラインヘのピームモ二夕の配置を目的として、円筒導波管内 に2枚の導体板を配置した定在波分布の測定について述べた。測定結果をフーリ工変換し

(2)

て波数スベクトルを求め、導波管内の電磁界モードをTMoiとして周波数スペクトルに変 換した。この結果から、加速周波数の各高調波成分が検出されることを示したが、導体板 にあけるピーム通過孔の大きさや測定位置等の条件によってスベクトル特性が異なること を明らかにした。

  第5章で は、 第4章 の実 験体 系に対応させ、有限差分時間領域(FD‑TD)法を使用して 電磁界の数値解析を行った。2枚の導体板を配置した円筒導波管内に形成される定在波分 布は高次のTMOnモードまでの周波数分散を考慮して、第4章で測定結果から求めたスベ クトルの場合と同様に、定在波分布から加速周波数およびその高調波成分を正しく求めら れることを示した。次に、孔あき導体板を1枚だけ配置した円筒導波管内において、電子 ピームが導体板の近傍を通過するときに導体板から反射される放射電界と、開口部から発 生する輻射波の伝搬過程を解析し、ピーム上流側に戻るそれら2つの波と後続の微細構造 パルス列の放射電界との干渉について検討した。その結果、反射波と輻射波がそれぞれ異 なる位置で入射波と干渉することを明らかにした。

  第6章では、分散関係がパルス幅推定に影響することを避けるため、自由空間中を進行 する電子ピームが進行軸に垂直な導体板の近傍を通過する場合について解析した。局所定 在波分布が場所ごとに異なる波との干渉で得られることに注目して、1次元解析モデルで微 細構造パルス幅と定在波分布の関係を解析した。放射電界であるパルス状の入射波と導体 板からの反射波によって局在した定在波分布が作られ、干渉による出カの落ち込みfディツ プ)が一定間隔に形成されることを示した。また、入射波が一定振幅のパルス列の場合、定 在波比1の定在波分布において、ディップ幅が微細構造パルス幅に比例することを示した。

更に、振幅がガウス分布で与えられる微細構造パルス列とした場合は、定在波比とディツ プ幅はディップ毎に変化するが、この場合にもディップ幅と定在波比が比例することを初め て見出した。このことより、定在波比が1に相当するディップ幅を推定できることから、微 細構造パルス幅を求める方法を新たに提案した。また、定在波分布のディップには、検波 器やオシロスコープ等測定系の周波数特性が影響を与えるが、それ等の影響も考慮して正 しいバルス幅を推定できることを示した。

  第7章では、本推定法の有効性を検証するため、LINACピーム取り出し窓周囲に電波吸 収材を配置した周囲境界からの反射を抑えた体系で、1枚の導体板を用いて定在波分布を 形成し、測定した。測定結果は、1次元解析モデルによって求められた定在波分布のディツ プと同様の周期分布が実験においても測定され、入射波と導体板からの反射波により定在 波分布が形成されると仮定した1次元解析の妥当性が確認された。一方、1次元解析では 考慮から除いた輻射波の影響もディップ位置からわずかにずれた位置で現れており、放射 電界である入射波と同相で干渉するためにその位置の出カは大きく極大値をっくり、複雑 な分布が観測された。しかし、導体板近傍における輻射波の影響が、各ディップから導体 板側にずれた位置に現れていることから、反射波に較べて輻射波の到達に時間遅れがある こと、分離できることを実験的に確認した。輻射波の影響は、ピームと導体板までの距離 や、ピームと測定用アンテナまでの距離によって変化するが、輻射波の影響の異趣る種々 の測定結果に対し、本研究で提案したパルス幅推定法を適用した結果、輻射波の影響が変 化しても推定値がよく一致することを確認した。推定結果は、実験に用いた北海道大学45 MeV電 子LINACにおい て予 想さ れているパルス幅とほぼ一致し、本推定法の有用性を確 認した。

  第8章 は 結 論 で あ り 、 本 論 文 で 得 ら れ た 成 果 に つ い て 総 括 し て い る 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

定在波分布測定による LINAC 電子ビーム微細構造      パ ルス 幅計測 の研 究

近 年 、 電 子 線 形 加 速 器(LII¥ AC)の 高品 位化 に関 する 研究 が盛 んに 行 われ てい る。 その 多く はビ ーム の短 ノく ルス 化と 高輝 度 化を目的としており、フウムト秒の時間スケールや ナ ノメ ート ル の空 間ス ケー ルで の電 子ビ ーム の安 定供 給お よび その 計 測方 法の 確立 は未 開拓 の分 野で 、今 後の 発展 が待 たれ て いる 状況 にあ る。

  本 論 文 は 、 こ の よ う な 状 況 に あ るLINAC電 子 ビ ー ム 計 測 に つ い て 、 放 射 電 界 に よ っ て作 られ る定 在波 分布 を用 いて 、時 間 パルス幅と干渉波形(ディップ)の関係に関して解 析 的お よび 実 験的 に研 究し 、時 間パ ルス 幅計 測モ ニタ の開 発お よび こ の定 在波 分布 測定 法 の有 効性 の 確認 を目 的と した もの であ り、 その 主要 な成 果は 次の よ うに 要約 され る。

  電子 ビー ム 微細 構造 パル ス列 の放 射電 界に よる 定在 波分 布の 形成 は 、ビ ーム に垂 直な 導 体板 を配 置 する こと で容 易に 形成 可能 であ り、 さら に各 測定 位置 に おい てピ ーク 出カ を 求め るだ け であ るこ とか ら、 ピコ 秒オ ーダ ーの パル ス時 間幅 に対 応 した 広帯 域の 測定 器は 必要 なく 、測 定法 自体 も容 易で あ るこ とを 説明 して いる 。

  ただ し、 ビ ーム 近傍 に導 体板 を配 置す るこ とに より 、ビ ーム 中心 と 導体 板端 との 相互 作 用に よる 輻 射波 の発 生が 問題 とな るが 、有 限差 分時 間領 域法 を用 い た円 筒導 波管 内の 電 磁界 過渡 解 析よ り、 ビー ム進 行方 向に 垂直 に配 置し た孔 あき 導体 板 によ りビ ーム 上流 側 へ反 射さ れ る反 射波 と、 導体 板開 口部 から 発生 する 輻射 波が それ ぞ れ異 なる 位置 ・時 間 で入 射波 と 干渉 する こと を明 らか にし 、入 射波 と反 射波 によ って 形 成さ れる 定在 波分 布 に 対 し 輻 射 波 の 影 響 を 空 間 的 に 分 離 可 能 で あ る こ と を 示 し て い る 。   こ の 結 果 か ら 、 輻 射 波 の 影 響を 除去 し た1次元 解析 モデ ルに より 定 在波 分布 を求 め、

電 子ビ ーム 微 細構 造パ ルス 列が マク 口パ ルス の場 合に 得ら れる ディ ッ プ幅 と定 在波 比が 比 例 関 係 に あ り 、 定 在 波 比1に 相当 する ディ ップ 幅か ら直 接に パル ス 幅を 求め られ るこ

揚 明

邦 史

武 友

正 貞

戸 野

田 村

榎 日

成 沢

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

とを明らかにレている。

  また、実測時に使用する検波器等の測定系の定在波分布に対する影響は、定数倍によっ て補正できることを明らかにしている。

  さらに、定在波分布のスベクトル解析を行い、定在波分布全体よりも特定のディップ に対する短区間フーリェ変換によるスペクトルの周波数成分の比からノくルス幅を推定す る方法が有効であることを見出している。

  このことから、LIXAC・電子ビーム微細構造パルス幅の新レぃ測定法として、干渉波 形(ディップ)の幅から直接推定する方法と、ディップに対する短区間フーリ工変換によ るスペクトル解析による推定法を提案している。

  さらに本推定法の有効性を検証するために、自由空間中でLI¥AC電子ビームの作る 定在波分布を実測し、本推定法を適用した結果、輻射波の影響が変化してもパルス幅推 定結果が変わらないことから、本推定法の有効性が確認している。また、特定のディツ プに対し短区間フーリェ変換によるスペクトル解析を試み、パルス幅について解析・実 験に良い一致が得られることを明らかにしている。

  これを要するに、著者は、電子ビーム微細構造パルス列によって形成された局在した 定在波分布について、干渉波形とパルス幅との関係の新知見を得たものであり、さらに、

それを用いて、LIXAC:電子ビームの短時間ノベルス幅計測への有効性を示しており、加 速器工学の進歩に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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