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博 士 ( 理 学 ) 北 村 一 樹 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 理 学 ) 北 村 一 樹

学 位 論 文 題 名

ラ ッ ト 1 型 プ 口 テ イ ン ホ ス フ ァ ス タ ー ゼ イ ソ ホ ー ム PP1 ロ の 遺 伝 子 発 現 に お け る 癌 性変 異 と そ の意 義 の 解 析

学 位 論 文 内容 の 要 旨

  正常細胞 が癌化し てゆく過 程で,多 くの遺伝 子変異が生じる。これら遺伝子のおD くは細胞 増殖を促 進する遺伝子や細胞増殖の抑制に関与する遺伝子である。前者を癌 遺伝子と いい後者 を癌抑制遺伝子という。発癌に必要な遺伝子変異のいくつかは,癌 遺伝子の 活性化お よぴ癌抑制遺伝子の失活をもたらす。こうした遺伝子変異の結果,

その遺伝 子産物の 機能は本来のものから逸脱し,これにより正常細胞を癌細胞に至ら しめる。ところで癌遺伝子産物の多くはプロ予インキナ ーゼ活性を有し,種々の蛋白 をりン酸化し情報を核へ伝え遺伝子発現べと導く。それ故,専らフ.口テインキナーセ が癌研究の標的とされてきた。  しかし我々えま,プ口テインホス.ファターゼがプ□子イ ンキナー ゼと相対 崎する反応を触媒することから,本酵素遺伝子が癌抑制遺伝子にな り得ると いう可能 性を推定し,ラット肝癌細胞を用いて酵素学的および遺伝子レベル で解析を 行い,そ の可能性について検索して塞た。本研究では,これまでの酵素学的 研究結果 を背景に ラット肝発癌過程,原発性肝癌,移植性腹水肝癌および再生肝での 増殖にお けるセリ ンノスレオニン残基プロテイ冫ホスファターゼの意義を解析する目 的で,本酪素を分子生物学的立場から解析した。

1.ラ ッ 卜1型 プ ロ テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ イ ソ ホ ームPPlacDNAの 分子 ク 口 ーニ ン グ す でにP.T.Id.Cohenらに より報告さ れている ウサギPPlacDNAのからー部のオリゴヌク レオチドを合成し,  それをブローブにしてうット腎cDNAライブラリーより1型ブ口うニイ ンホスファターゼ触媒サブュニットcDNAを単離した。  このcDNAは全長1415 bpからなる。

5 側は68bpのGC配 列に富む非 コーディング領域があり,69番目の開始コトンでコーデ イ ング領域 が始まり,1060番目の終止コド冫でそれが終わり,そしてポリAで終る。こ

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の 塩 基 配 列 はmRNAの 特 徴 を よ く 備 え て い る 。 こ のcONAの コ ー デ ィ ン グ 領 域 は990 tjp ら な り ,330ア ミ ノ 酸 残 基 か ら な る 蛋 白 を コ ー ド し て い る と 推 定 さ れ る 。  こ れ か ら 算 出

される分子量はウサギ骨格筋から精製ぎれたPP1蛋白のSDS‑PAGEから得られる値37

kDaと 一 致 し た 。 こ のcDNAの 塩 基 配 列 を ウ サ ギPPlaと 比 較 し た と こ ろ 全 体 で85X  二 ユ ー デ ィ ン グ 領 域 で88Xの 相 同 性 を し め し た が , 両 者 の ア ミ ノ 酸 配 列 は 完 全 に ・ 一 致 し た 。   た が っ て , こ の cDNAは ラ ッ トPPlacDNAと 結 論 さ れ , 本 酵 素 の ア ミ ノ 酸 配 列 が 種 を 越 え て 保 存 き れ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。  さ ら に ラ ッ ト PPlaの ア ミ ノ 酸 配 列 を ラ ・ ソ 2A型 プ ロ テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ イ ソ ホ ー ムPP2Aaお よ びPP2Aロ の そ れ と 比 較 ず る と そ れ ぞ れ49Xお よ び50X一 致 し た 。  し た が っ て こ の 相 同 性 は ,  ウ サ ギ の み な ら ず う ッ ト に お い て も 保 存 さ れ て い た 。

2  ラ ッ ト 肝 発 癌 過 程 , 原 発 性 肝 癌 , 移 植 性 腹 水 肝 癌 お よ び 再 生 肝 に お け る ー ノ . 口 テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ ,PPlaPP2Aaお よ びPP2Caの 遺 伝 子 発 現

う ッ トPPIa  PP2Aaお よ び2C型 イ ソ ホ ー ムPP2CacDNAを プ 口 ー ブ に し てSolt

Farberモデルによる実験的肝癌発生過程,原発性肝癌,移植性腹水肝癌および再生iif でのmRNAレベルをノザンプロットにより検索した。肝発癌過程において前癌状態であ る過形成結節でPPld,PP2AaおよびPP2Ca  mRNAレベルは正常肝に比しそれぞれ8,2 9および13倍の上昇を認めた。ところが過形成結節を経た後発生した原発性肝癌におい てはPPla.PP2AaおよびPP2CaのmRNAレベルは正常肝と同程度にまで減少した。同じ サンプルにおいて,腫癌マーカーであるラット胎盤由来のグルタチオン‑S‑トランスフ

ェ う ー ゼmRNAの 高 発 現 が 認 め ら れ ′ こ た め , こ の 減 少 は 発 現 の 減 少 で あ る と 考 え ら れ る 。 他 の2種 の 原 発 性 肝 癌 に お い て も 前 癌 状 態 で あ る 遇 形 成 拮 節 で の 発 現 よ り 明 ら か に 低 か

った。一方原発性肝癌より悪性な低分化型のラット移植性腹水肝癌においては,PPld mRNAレベルが正常肝に比し10倍以上に上昇し,PP2AamRNAレベルは正常肝よりも減 少し,PP2CamRNAレベルは正常肝と同程度かま′こはそれ以下であった。正常増殖過程

に あ る ラ ッ ト 再 生 肝 に お い て はDNA合 成 の 最 盛 期 に あ た る 術 後24時 間 でPPlaPP2An お よ びPP2CamRNAレ ベ ル は そ れ ぞ れ514お よ び10倍 の 上 昇 を 認 め た 。 以 上 よ り 発 癌 過 程 お よ び 再 生 肝 で は ,3分 子 種 のmRNAレ ベ ル が 上 昇 し 原 発 性 肝 癌 で は そ れ ら す べ て が 滅 少 し , 移 植 性 腹 水 肝 癌 で はPPlamRNAレ ベ ル の み が 上 昇 し , 発 癌 ブ 口 モ ー シ ョ ン お

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よ び プ ロ グ レ ッ シ ョ ン の 両 過 程 で 各 分 子 種 の 遺 伝 子 発 現 パ ッ ー ン に 差 異 由 { 認 め ら れ た 。 また移植 性腹水肝癌 でのPPla  mRNAレベ ルの高発現から,PPlaがブ口グレッション過 程 で 悪 性 形 貿 の 発 現 の 上 で 重 要 な 役 割 を 果 し て い る こ と が 示 唆 ぎ れ た 。

3  ラ ッ トPPIaジ ェ ノ ミ ッ クONAの 解 析

フ . ロ グ レ ッ シ ョ ン 過 程 に お け るPPIamRNAレ ベ ル の 特 異 的 上 昇 の 分 子 機 構 を 明 ら か に す る 目 的 でPPlaジ ェ ノ ミ ッ クONAを 解 析 し た 。 サ ザ ン ブ 口 ッ ト の 結 果 ,  Iロ グ レ ゛ ッ シ ヨ ン 過 程 に お け るPPIaの 遺 伝 子 増 幅 お よ び 転 座 は 認 め ら れ ず ,  ブ 口 グ レ ッ シ ョ ン 過 程 に おけるPPlamRNAレ ベルの高 発現は転 写回転の 上昇による可能性が強く示唆された。

し たがって .PPla遺伝子 の転写機 構を明ら かにするために5 上流の分子0□ーニ冫グ を おこなっ た。  ラッ トジェノミックDNAライブラリーよりPPlacDNAうイブうりーよル スクリーニ冫グをおこない,5 上流1.1 kbpを単離した。その結果このプ口モーター領 域には,CAATボックスおよびTATAボ`ンクスが存在しないGC配列に富んた.ハウスキービ ング 遺伝子であることが明らかとなっ′こ。A丁G開始コドンを+1とすると‑78番にCCGCAA という癌遺伝子産物ets結合配列が,また‑97番,.111番,‑125番および‑146番にCGCi. GGと いうSP1結合 配列が存在した。ラットPP2Aaのプロモーター領域にもSP1結合配列か 存 在し,PPlaと 同じ転写 因子を共 有するに もかかわらず移植性腹水肝癌で遺伝子発現 バ ター冫が ことなる 。今回初 めて明ら かにされ たPPld遺伝子のブロモーター領域に癌 遺 伝子産物 であるets蛋 白の結合 配列が存 在することから,ets蛋白がブログレッショ ン 過程にお けるPPlaの転 写回転の 上昇に重 要な役割を果していることが示唆ぎれた。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   菊池九二三 副 査    教 授    東    市 郎 副 査    教 授    杉本 和則 副 査    教 授    西    信 三

学 位 論 文 題 名

ラ ット 1 型プ ロテインホスファスターゼイソホーム PPla の遺伝子発現における癌性変異とその意義の解析

  正常 細胞が癌 化してゆ く過程で ;多くの 遺伝子変異 が生じる 。これら 遺伝子の 多く は細 胞増殖を 促進する 遺伝子や 細胞増殖 の抑制に関 与する遺 伝子であ る。前者 を癌遺 伝子 といい, 後者を癌 抑制遺伝 子という 。発癌は, 癌遺伝子 の活性化 あるいは 癌抑制 遺伝 子の失活 によって 惹塞起こ される。 癌遺伝子産 物の多く はプロテ インキナ ーゼ活 性を 有する。 申請者は ,プロ号 インホス ファターゼ がプロテ インキす ーゼと相 対崎す る反 応を触媒 すること から,本 酵素遺伝 子が癌抑制 遺伝子に なり得る と推定し ,ラッ ト肝 発癌過程 ,原尭性 肝癌,移 植性腹水 肝癌および 再生肝で の種々の 増殖状態 におけ るセリ ンノスレ オニン残 基プロテインホスファターゼの動態を遺伝子レベルで解析し,

肝癌における本酵素の遺伝子発現の特徴を明かにし′こ。研究は以下の3点に要約される。

1.ラ ッ ト1型 プ ロ テ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ イ ソ ホ ー ムPPldcDNAの 分 子 ク ロー ニ ン グ   ラ ッ ト 腎cDNAライ ブ ラ リー よ り1型プ ロ テ イン ホ スフ ァ タ ーゼ 触 媒 サブ ュ ニッ ト cDNAを単離 した。コ ーディン グ領域は990 bpからなり ,330アミノ酸残基からなる蛋白 を コ ー ドす る と推 定 さ れる 。 これ か ら 算出 さ れ る分 子 量は ウ サ ギ骨 格 筋PP1蛋 白 の SDS‑PAGEに より 得 られ る 値37 kDaと 一 致し た 。こ の ラ ットcDNAの塩基 配列をウ サギ PPlaのそれ と比較し たところ 全体で85X,コーディング領域で88Xの相同性を示したが,

両者のアミノ酸配列は完全に一致し′こ。

2. プ ロ デ イ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ , PPla, PP2Aaお よ び PP2Caの 遺 伝 子 発 現     ラットPP1ゼ,PP2Aaおよ びPP2CaのcDNAをプローブにしてSol七‑ Farberモデルによ

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る実験的肝発癌過程,原発性肝癌,,移植性腹水肝癌および再生肝でのmRNAレベルをノ ザンプロットにより解析した。肝発癌過程において前癌状態である過形成結節でPPla PP2AaおよびPP2Ca  mRNAレベルは正常肝に比しそれぞれ8,29および13倍の上昇を認・

めた。ところが過形成結節を経た後発生した原発性肝癌においてはPPla,PP2Aaおよ びPP2CゼのmRNAレベルは正常肝と同程度にまで減少した。これに対し原発性肝癌より 悪性な低分化型のラット移植性腹水肝癌においては,PPlamRNAレベルが正常肝に比 し10倍以 上に上昇し,PP2AamRNAレベルは正常肝よりも減少し,PP2CゼmRNAレベル は正常肝と同程度かまたはそれ以下であった。正常増殖過程にあるラット再生肝にお いてはONA合成の 最盛期にあたる術後24時間でPPla,PP2AaおよびPP2CaのmRNAレベ ルはそれぞれ5,14およぴ10倍の上昇を認めた。すなわち発癌過程および再生JJfでは,

3分子種のmRNAレベルが上昇し原発性肝癌で誼それらすべてが減少し,移植性腹水肝癌 で渡PPlamRNAレベルのみが上昇し,発癌プロモーションおよびプログレッションの 両過程で各分子種の遺伝子発現パターンに差異が認められた。また移植性腹水肝癌で のPPlamRNAレベルの高発現から,PPlaがプログレッショ冫過程で悪性形貿の発現の 上で童要な役割を果していることが示唆ぎれた。

3.  ラットPPldジェノミックDNAの解析

  PPla遺伝子の転写機構を明らかにするためその5 上流域の分子クローニ冫グをおこ     ー

なった。その結果このプロモータ一領域には,CAATボックスお よびTATAボックスが存 在しないGC配列に富んだハウスキーピッグ遺伝子であることが明らかとなった。ATG開 始コドンを+1とすると‑78番にCCGGAAという癌遺伝子,産物ets結合配列が,また‑97番,

‑ 111番,‑125番および‑146番にGGGCGGというSP1結合配列が存在した。PPla遺伝子の プロモー夕一領域に癌遺伝子産物であるets蛋白の結合配列が存在することから,ets 蛋白がプログレッション過程におけるPPlaの転写速度の上昇に重要な役割を果してい ることが示唆された。

  以上の結果は,発癌および癌細胞の形質に関する領域において新しい知見を加える もので,すでに6報にわたり国際学術雑誌に公表され高い評価を得ている。最終試験は 2月15日に行われ可の判定が得られた。以上より申請者は,博士(理学)の学位を取得す るに値するものと判断する。

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参照

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