博 士 ( 工 学 ) 武 山 真 弓
学 位 論 文 題 名
シリコン集積回路におけるオーム性接触界面の高信頼化の研究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本研 究は 、シ ルコ ン集 積回 路に おいて 高い 信頼 性を 有する高安定なオーム性 接 触 界 面 を 得 る た め に 、
Al
及 びCu
配 線コ ンタ クト 系に おけ る拡 散パ リヤ のあ り 方 を そ れ ぞ れ の 材 料 固 有 の 特 質 を 考慮 して 検討 を行 った もの であ る。Al
配 線 系 で はAl
と バ リ ヤ と の 界 面 反 応 の 抑制 を界 面固 相反 応の 観点 から 検討 し、ま た
Cu
配 線 系 で は 反 応 よ り は む し ろ 粒界 拡散 の要 因を 低減 でき るバ リヤ 材料 の あり 方を 検討 し、 それ らを とり まとめ て、 コン タク ト系を設計する上でのバ リ ヤ 材 料 の有 効な あり 方に つい て基 礎的 な検 討を 行っ たもの であ り、7
章 より 構 成さ れて いる 。第
1
章 は 序 論 で あり 、Si‑LSI
が 【C
からULSI
へと 変遷 を遂 げ、 微細 化・ 高集 積 化の 進展 を遂 げて きた 背景 とそ れに伴 う配 線材 料の 移り変わりについて述ぺ て いる 。更 に、 集積 度の 向上 に伴 って拡 散バ リヤ を含 めた金属/半導体コンタ ク ト界 面に 顕在 化し て来 た問 題点 及び現 状に つい てそ の概要を述ペ、それらを 踏 まえ た上 で、 本研 究の 目的 につ いて言 及し てい る。第
2
章 では 、本 研究 に関 連した 従来 の研 究に つい て現 在ま での 進捗 を記 述し て い る 。 ま ず 、Al
配 線 系 の バ リ ヤ 材 料に つい ての 主な 研究 を概 観し 、こ れら を 比較 検討 する こと で、 どの よう なバリ ヤ材 料を 用い てもAl/パリヤ界面で生 じ る 反 応 を 本 質 的 に は 抑 制 で き な い こと を指 摘し てい る。 一方 、Cu配線 系の バ リヤ 材料 は、 材料 を変 えた 多く の研究 の集 積の 中か ら、界面反応よりはむし ろCu
の 速 い 拡 散 の 防 止 が 安 定 な コ ン タク トを 得る 上で の重 要な 要因 とな って い るこ との 理解 が得 られ た段 階で あり、 高安 定な コン タクトを実現でき、かつ よ り 低 抵 抗 な パ リ ヤ 材 料 が 切 望 さ れ て い る こ と を 指 摘 し て い る 。第
3
章 で は 、 本 研究 で 用 い たAl
及 びCu
配 線 コ ン タ ク ト 系 の 作 製 方 法、 熱処 理 方法 及び オー ジェ 電子 分光 、X線 光電 子分 光、X
線回 折、透過型電子顕微鏡、2
次 イ オ ン質 量分 析な どを 用いた 、コ ンタ クト 系の 構造 変化 と界 面で の拡 散・反応の挙動を評価する方法を述ベ、本論文中で行った実験方法をまとめている。
第
4
章 で は 、 現 在ま で 配 線 材 料 の 主 流 と な っ て い るAl
配 線 に お け る従 来の 報 告 を 統 括 し 、 安 定 なAl
配 線 コ ン タ クト の構 成の あり 方と して 、コ ンタ クト 系 の界 面に 擬似 的な 化学 平衡 状態 を実現 する とぃ う筆 者の新たな提案を述ベ、そ れ に 基 づ ぃ た 拡 散 パ ル ヤ 材 料 の あ り方 を検 討し てい る。 すな わち 、Alとバ リ ヤと の界 面で 生起 する 反応 生成 物に着 目し 、そ の反 応生成物である金属間化
ー 192一
合物をむしろ積極的に
Al
とバリヤとの界面に介在させることによって、Al/金 属間化合物及び金属間化合物/バリヤの両界面を既に反応の終了した熱力学的 に安定な界面とすることが可能となるものと考え、介在させる金属間化合物の 材料選択を、物理的化学的側面から詳細に検討し、その要件を提示した。この 要件を満 足する材料としてW
及びTa
を選定し、それらを用いてコンタクトを 構成した 結果、Alの融点直下の600
℃まで安定なコンタクト系が得られるこ とが示され、このことから、先の提案がAl
配線コンタクト系の高信頼化にと って有用であることを実験的に明らかとしている。第5章 では、
Cu
配線コンタクトの崩壊要因のーつであるバリヤの結晶粒界 を介して起こるCu
の拡散に着目し、そのような拡散を抑制できるようなバリ ヤをその構造の面から検討している。まず、(110)面に高配向成長を示すW膜 のバリヤ特性を配向性の劣る比較的微結晶なW
バリヤと比較検討することで、粒界の要因を低減できる高配向成長バリヤの有用性を明らかとしている。この 系は、こ れまでWシリサイド形成以前に
Cu
の粒界拡散により崩壊することが 報告されていたが、バルヤを高配向膜とすることで、W/Si
界面でのシリサイ ド反応をも均一な反応とすることができ、このことより、Wバリヤがシリサイ ド反応に よって消費され尽くす温度まで(690
℃)Cuの拡散を効果的に抑制 できることを実証している。次に、2つの遷移金属からなるCu‑Zrアモルファ ス合金膜のパリヤ特性を検討している。Siとの界面にZrN膜を付加的なパリヤ として用いることにより、Cu‑Zr
アモルフんス合金の結晶化温度以上(600℃)まで安定なコンタクトが得られることを示し、アモルファスバリヤはその結晶 化温度より低温で劣化するとぃう従来の報告に対し、コンタクト構成上の考慮 により、本来のバリヤ特性が得られることを明らかとしている。このことから、
バリヤ材料をその構造の面から検討することにより、パリヤに用いた材料が本 来有している´ヾリヤ特性を引き出すことが可能であることを指摘している。
第6章 では、
Cu
のパ リヤとしてCu
と化合物を形成しないW
及ぴTa
を安定な 窒化物とすることで、更に高温まで安定なコンタクト系の実現を検討している。これらの窒化物は、その粒界を窒素が占有することによりCuの拡散を抑制す るばかりでなく、バリヤ自身が化合物として熱的に安定で、高温熱処理に伴う 構造変化を起こさないとぃう優れた特質を有することから、750〜
800
℃の熱 処理に耐え得るコンタクトを実現できることが実証された。これら窒化物膜は、その抵抗率も金属バルヤと同程度であることから、高安定でかつより低抵抗な
Cu
配線コンタクトの実現にとって有用であることを実験的に明らかとしてい る。第
7
章は結論であり、本論文を総括し、本研究で明らかとされた結果をまと めている。― 193―
学 位 論 文 審 査 の要 旨
主 査 副 査 副 査 副 査 副 査
教授 教授 教授 教授 助教授
長 谷川 池 田 雨 宮 福 井 橋 詰
学 位 論 文 題 名
英機 正幸 好仁 孝志 保
シリコン集積回路におけるオーム性接触界面の高信頼化の研究
近年の著しい技術革新を支えてきたのは、 シリコン大規模集積回路(LSI)であり、来たるべきマ ルチメデイア情報化社会の実現にとって、微細化技術を極限まで進めるシリコンLSIの超集積化が不可 欠な要素である。このような超高密度集積回路においては、要素デバイスの特性もさることながら、配 線の性能と信頼性が、集積回路の性能と信頼性を決定する重要な要因となる可能性が高くなる。例えば すでに、LSIのスケールダウンに伴って、金属/シリコン界面におけるわずかな固相反応現象が、デ バイスの動作不良をもたらす要因となることが知られている。したがって、金属/シリコン界面の特性 を良く理解し、本質的な界面制御に基づき、高信頼度の界面を実現することが、超高密度集積回路の信 頼化の鍵となる。
本論文は、このような背景のもとで、シリコンLSIにおいて高い信頼性を有するオーム性接触界面 を得るために、AlおよびCu配線コンタクト系を界面固相反応の観点から検討し、界面反応を抑制するた めの拡散バリヤ材料が満たすべき新しい構造や条件、および実際に試作された配線金属/バリヤ金属/
シリコン界面の構造や化学的組成の評価に関する一連の研究結果をまとめたものである。本論文は7章 から構成されている。以下に各章の概要を示す。
第1章では、研究の背景、集積度の向上に伴って金属/半導体コンタクト界面に顕在化して来た問題点 及び本論文の目的について述べている。
第2章では、配線系の安定化に関連する従来の研究結果を比較し、シリコンLSI配線系の高信頼化 を実現する上で未解決な点をまとめている。まず、Al配線系のバリヤ材料についての主な研究を整理 し、従来の界面構造では、どのようなバリヤ材料を用いてもAl/バリヤ金属界面で生じる反応を本質的に は抑制できていないことを指摘している。一方、Al配線系よりも高安定な系として期待されているCu配 線系においては、界面反応よりはむしろCuの速い拡散の防止が安定なコンタクトを得る上で、重要な要 因であることを示し、より低抵抗でかつ安定なCu7バリヤ構造の実現が、この系の実用化に不可欠であ ることを指摘している。
第3章では、本研究で用いたAl及びCu配線コンタクト試料の作製方法と熱処理方法を説明し、また、
オ ージ ェ 電 子分 光(AES)、X線 光 電 子分 光(XPS) 、X線 回 折(XD)、 透 過 型 電子 顕微鏡(TEM)、 2次イオン質量分析(SIMS)等による、コンタクト系の構造変化と界面での拡散・反応の挙動を評価す る方法を述べ、実験方法をまとめている。
第4章では、安定なAl配線コンタクト系の実現に対して、コンタクト界面に擬似的な化学平衡状態を 実現するとぃう新しい界面構造を提案し、それに基づぃた拡散バリヤ材料の検討結果を述べている。特
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に、Alと バリ ヤ材 料 界面で生起する反応生成物 に着目し、その反応生成物 である金属間化合物の特性を 評価 した 結果 、そ の 金属間化合物を積極的にAlとバリヤとの界面に介在さ せることによって、熱力学的 に安 定なAI/ 金属 間 化合物/バリヤ材料/シリ コン界面構造の実現が可能 であることを示している。詳 細な 解析 ・評 価よ り 、介 在さ せる 金 属間 化合 物材料の物性条件を明らかに し、具体的材料としてW及び Taを選定し、それらを用い てコンタクトを構成した結果 、Alの融点直下の600℃まで 安定なコンタクト構 造が 保存 され るこ と を示した。これらの結果か ら、新しい界面構造がAl配 線コンタクト系の高信頼化に 有用であることを実験的に 明らかにしている。
第5章で は 、Cu配線 コン タ クト 系に おけるCu原子の拡散機構について検 討を加え、この拡散現象を抑 制す るバ リヤ 材料 を 提案 して いる 。ま ず、バ リヤ材料としてW膜を検討し た。このW/Cu構造は、これま でWシ リサ イ ド形 成以 前に 、Wの粒 界を 介 したCu原 子の 拡 散に より構造崩 壊が生じると報告されてきた が、(110)面 に高配 向成長させたW膜を用いるこ とで、Cu原子の拡散を低減 できることを明らかにした。
バリ ヤを 高配 向膜 とすることで、W/Si界面での シリサイド反応をも均一化 することが可能となり、高温 領域(690℃) まで 、Cuの 拡散 を効 果的 に 抑制 でき るこ と を実 証し た。 次に 、2つの 遷 移金属からなる Cu‑Zrアモ ル フんス 合金膜のバリヤ特性を検討 した。シリコンとの界面にZrN膜を付加的なバリヤとして 用い るこ とに より 、Cu ‑Zrアモルフんス合金の 結晶化温度以上(600℃)ま で安定なコンタクト構造が得 られ るこ とを 示し 、アモルフんスバリヤ材料は その結晶化温度より低温で 劣化するとぃう従来の報告を 覆す 、材 料本 来の バ リヤ 特性 が得 られ る 可能 性を 指摘 し た。
第6章で は、 バリヤ材料としてW及ひ、Ta窒化物を利用することに より、更に高温まで安定なCuコンタ ク ト系 が実 現 できることを示している。 これらの窒化物は、その粒 界を窒素が占有することによ りCuの 拡 散を 抑制 す るばかりでなく、バリヤ材 料自身が化合物として熱的 に安定で、高温熱処理に伴う 構造変 化 を起 こさ な いとぃう優れた特質を有す ることから、750〜800℃の 熱処理に耐え得るコンタクト を実現 で きる こと が 実証された。また、窒化物 そのものの抵抗率も金属バ リヤと同程度であることから 、高安 定 でか つ低 抵 抗なCu配 線コ ン タク トの 実現 にと っ て有 用な バリヤ 材料であることを実験的に明 らにし た 。
第7章では、本研究の 成果を総括している。
こ れを 要 する に、著者は、金属 /シリコンオーム性接触界面 の高信頼化を目的として、AlおよびCu配 線コ ンタ ク ト系 における拡散バリ ヤ材料および配線金属/バリ ヤ金属/シリコン界面につ いて、詳細な 特性評価とそれに基づ く界面制御を行い、600℃以 上の高温領域まで安定な新し い配線構造を提案し、シ リコ ンLSI配 線の 高信 頼 化に 関し て有 益 な方 向性 を見 いだ し たも ので あり 、半 導 体工 学の 進歩に寄与 するところ大である。
よ って、著者は、北海道大学 博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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