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博 士 ( 農 学 ) 山 岸 和 敏

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 山 岸 和 敏

学 位 論 文 題 名

バ レ イ シ ョ の 塊 茎 形 成 過 程 に 伴 う ク ニ ッ ツ 型

プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー 遺 伝 子 の 発 現 制 御 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    バレイショは食糧生産上世界的に重要な作物 に位置づけられる。  その塊茎は匐枝

(ス卜口ン)の茎頂次長部分裂組織細胞の分裂、膨大生長により形成され、同時に澱粉、

蛋白質の蓄積を伴って肥大する。塊茎形成は季節学的には低温短日条件で誘導されるが、

この情報伝達に塊茎形成誘導因子としてジャスモ ン酸誘導体の関与が提起されている。

また 、塊 茎形 成過 程の 指標 蛋白 質と して パタチンとプロテアーゼインヒビターI、Hが 報告されている。本研究は新たな生化学的指標蛋 白質の検索のため、バレイショ塊茎に 特異的に発現するmRNAのcDNAの単離を目的とした 。

    バレイショ植物の培養および塊茎形成誘導を 組織培養の手法を用いておこなった。

塊 茎 の 生重 は誘 導後10日〜2週 間の 間に 急増 し、14C標 識ア ミノ 酸の 取り 込み は2〜3 週間後に極大値を示した。可溶性蛋白質の電気泳 動法による分析では、塊茎特異的蛋白 質 が40、24、23、22 kDaに 存 在 し た 。14C標 識 蛋 白 質 お よ び ポ リ(A)゛RNAの 翻 訳 産 物 の 組成 は塊 茎の 可 溶性 蛋白 質組 成と 多少 異な り、 前駆 蛋白 質の 存在 とmRNA発現 時期の違いが推測された。

    無 菌 培 養 し た バ レ イ シ ョ に 形 成 し た 塊 茎 のmRNAか ら 作 製 し たcDNAラ イ ブ ラ リ ― を デ ィ フ ァ レ ン シ ャ ル ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ― シ ョ ン 法 に よ り 選抜 し、pTlとpT2の 2つ のcDNAク ロ ー ン を 得 た 。pTlのcDNAと 相 補 的 なmRNAは 約900塩 基 で 、 塊茎 に特 異的 な発 現が 確認 され た。 .塩 基 配列 の解 析に より 、pTl cDNAは796塩基対

( ポ リA鎖 を 除 く ) で 、222残 基 の アミ ノ酸 配列 か ら成 る24.7 kDaの蛋 白質 を 完全 に コ ― ドす る領 域を 含 むと 判定 され た。 ポリA鎖 付 加シ グナ ル(AATAAA)が 、ポ リA鎖 の 上 流26塩 基 と86塩 基 に 存 在 し た 。特 に前 者は 、2つ の付 加シ グナ ルが 重な っ てい た。 推定 され るア ミ丿 酸配 列は バレ イシ ョ塊茎のKunitz型プロテアーゼインヒビター

(PKPI) のN末 端 配 列 と 一 致 し た 。PKPIは20〜24KDaの 多 型 性 を 有 し 、 塊 茎 主 要 貯 蔵 蛋 白 質 の10% を 構 成 す る 。cDNAのN末 端領 域は 精製 蛋白 質に は存 在せ ず 、か つ高い疎水性を示すことからシグナルペプチドを 含むと予想された。蛋白質のプロセッ シ ン グ の通 例で はア ラ ニン(22)とア ルギ ニン(23)の間 に切 断が 予想 され たが 、 精製 蛋 白 質 のN末 端ア ミノ 酸は ロイ シン(43)であ り、2段階 のプ ロセ ッシ ング が予 想 され る 。 ゲ ノ ムDNAの サ ザ ン ブ ロ ツ 卜 ハ イ ブ リ ダ イ ゼ イ シ ョ ン 解 析 か ら 、PKPI( 即 ち pTl)は少数多重遺伝 子族を構成すると示唆された。

    PT2に 相 補 的 なmRNAは 約1.6kbで、 塊茎 と葉 身で 多少 高い 発現 でを 示し た 。こ のcDNAは857bpで 、120ア ミ ノ 酸 残 基 の コ ― ド が 可 能 で あ っ た が 、 相 補 的mRNA

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長の半分であった。塩基配列の相同性検索で類似した遺伝子は存在しなかった。ゲノム DNAにはハプ口イド当たり1コピー存在すると予想された。

    塊茎に特異的発現を示したPKPI(p′1`1)は、無菌培養法で形成される塊茎の mRNA蓄積 が塊 茎形 成誘 導後5日目から認められ、塊茎の肥大に伴い増加した。こ のことはPKPIが塊茎形成誘導の生化学指標として適当であると考察される。圃場 に 栽 培 さ れ たバ レ イ シ ョ を 収 穫 後 、4℃に1ケ月 貯蔵 した 塊茎 にもmRNAは存在 し、1年貯蔵した塊茎でtま著しく減少していたが存在した。また、収穫後25℃に貯蔵 した 場合 は1ケ 月で 既に 消失 した。一方、貯蔵塊茎中のパタチンmRNA蓄積量は痕 跡程度であった。さらに面白いことは、4℃に貯蔵した塊茎を25℃で48時間処理する と、PKPIおよ びパ タチ ンmRNAの発 現量 が増 加し た。 低温 貯蔵塊茎は塊茎形成の 誘導過程での生合成活性を維持しており、低温抑制状態からの温度条件の解放により 一時的に転写活性を回復したと推測される。さらに、塊茎形成過程の貯蔵蛋白質の蓄積 は低温からの温度上昇時、っまり夜間から日中へかけての温度較差が大きぃ時に促進さ れると考えられる。

    4゜Cに2ケ 月 あ る い は1年2ケ 月 貯 蔵 し た 塊 茎 のPKPImRNAは 組 織 切 片 の 調製時の傷害により消失した。原因は傷害によって誘導されるRNase活性の増加と考 察さ れる が、2ケ月 貯蔵 塊茎 でも傷害48時間後に再び発現したmRNA蓄積は、PKPI 遺伝子の構成発現を暗示する。PKPIは塊茎に常時存在し、静的抵抗性の役割を担う と考 えら れる 。一 方、 貯蔵塊 茎で痕跡程度であったパタチンmRNAは、4°C2ケ月 貯蔵した塊茎の組織切片を25°C6時間保温後に蓄積量の増加が認められた。この現象 は4°Cに 貯 蔵 し た 塊 茎 に 限 ら れ 、 前 述 の 温 度 誘 導 の 影 響 が 示 唆 さ れ る 。     PKPIとパ タチ ンmRNAの蓄 積に 及ぼ す生 長調 節物 質の 影響を検討した。供試 化 合 物 中 、 塊茎 切 片 にPKPImRNAを 誘 導 した のは ジャ スモ ン酸 だけ であ った。

誘導に要する濃度および時間は1uM、24時間で、100ロMでは阻害された。葉組織切片 では12時間で誘導が確認された。一方、バタチンmRNAの誘導は観察されなかった。

塊茎形成物質とされるジャスモン酸は、塊茎貯蔵蛋白質遺伝子の一部を誘導する可能性 が示唆された。

    転流同化産物のショ糖は塊茎の貯蔵澱粉合成に必須で、さらに茎節片培養による側 芽の塊茎形成を誘導する作用も有する。トランスジェニックタバコ植物でのPKPエ プロモーターの発現は維管束組織に特異的で、葉身組織切片での発現はショ糖濃度に依 存した。PKPI遺伝子の発現はプ口モ―タ―上のショ糖刺激感受領域により制御され る可能性が高い。

    バレイショ塊茎の蛋白質集積機構の解明は同化産物の効率的利用および遺伝子発現 の器官特異性の理解に有益である。本研究では、新たな塊茎指標蛋白質PKPIの遺伝 子構造および発現特性を明らかにした。塊茎誘導に影響する低温、ジャスモン酸および ショ糖が、PKPI遺伝子の発現誘導に密接に関係する事実は、両者に共通な制御機構 を示唆する。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

バレイショの塊茎形成過程に伴うクニッツ型

プロテアーゼインヒビター遺伝子の発現制御に関する研究

    バ レイ ショ は 食糧 生産 上世 界的に重要な作物に位置づけられる。その塊茎は 匐枝

(ス卜ロ ン)の茎頂次長部分裂組織細胞の分裂、膨大生長により形成され、同時に澱粉、

蛋白質の 蓄積を伴って肥大する。塊茎形成は季節学的には低温短日条件で誘導されるが、

この情報 伝達に塊茎形成誘導因子としてジャスモン酸誘導体の関 与が提起されている。

ま た、 塊茎形成においてパタチンとプロテアーゼイン ヒビタ−I、IIの貯蔵蛋白質 が、

報告され ている。本研究は新たな生化学的指標蛋白質の検索のた め、バレイショ塊茎に 特異的に 発現するmRNAのcDNAの単離を目的とした。

    バレ イショ植物の培養および塊茎形成誘導を組織培養の手法 を用いておこなった。

塊 茎 の生 重は 誘導 後10日〜2週間 の間 に急 増し 、14C標識 アミ 丿酸 の取 り込 みは2〜3 週間後に 極大値を示した。可溶性蛋白質の電気泳動法による分析 では、塊茎特異的蛋白 質が40、24、23、22 kDaに存在した。

    無 菌 培 養 し た 塊 茎 のmRNAか ら 作 製 し たcDNAラ イ ブ ラ リ ー を デ ィ フ ァ レ ン シ ャ ル ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 に よ り 選 抜 し 、pTlとpT2の2つ のcDNAク 口 一 ン を 得 た 。pTlのcDNAと 相 補 的 なmRNAは 約900塩 基 で 、 塊 茎 に 特 異 的 な 蓄 積が 塊茎形成誘導後5日 目から確認され、塊茎の肥大に伴い増加した。塩基配列 の解 析 に よ り 、 こ のcDNAは796塩 基 対 で 、222残 基 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら 成 る24. 7kDa 蛋 白 質を 完全 にコ ード する 領域 を含 み、 ポリA鎖付 加シ グナ ル(AATAAA)が 、 ポリA鎖 の 上 流26塩 基 と86塩 基 に 存 在 し た 。 こ の ア ミ 丿 酸 配 列 は バ レイ ショ のKunitz型プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ― (PKPI) のN末 端 配 列 と 一 致 し た 。PKPエ は20〜24 k Daの 多 型 性 を 有 し 、 塊 茎 主 要 貯 蔵 蛋 白 質 の10% を 構 成 す る。 しか しこ のcDNAの N末 端領域は精製蛋白質に は存在せず、かつ高い疎水性を示すことからシグナルベ プチ ドを含む と予想された。

    圃 場 に 栽 培 さ れ た バ レ イ シ ョを 収穫 後、4°C,に1ケ月 貯蔵 した 塊茎 にもmRNA は 存在 し、1年貯 蔵し た塊 茎で は著しく減少していた が存在した。また、収穫後25゜C

郎 大 明 失 嘉 郁     哲 田 村 越 上 久 喜 木 生 一

‐ 一 授 授 授 授 敦 敦 敦 教 査

主 副

副 副

(4)

に貯蔵した場合は1ケ月で消失した。一方、貯蔵塊茎中のパタチンmRNA蓄積量は痕 跡程度であった。さらに面白いことは、4°Cに貯蔵した塊茎を25°Cで48時間保温す ると、PKPIお よびパタ チンmRNAの発 現量が増 加した。 低温貯蔵塊茎は塊茎形成 の誘導過程での生合成活性を維持しており、低温抑制状態からの温度条件の解放により 一時的に転写活性を回復したと推測される。さらに、塊茎形成過程の貯蔵蛋白質の蓄積 は低温からの温度上昇時、っまり夜間から日中へかけての温度較差が大きい時に促進さ れると考えられる。

    低 温 に2ケ 月 あ る い は1年2ケ 月 貯 蔵 し た 塊 茎 のPKPImRNAは組 織 切 片の 調製時の傷害により消失した。原因は傷害によって誘導されるR Nase活性の増加と考 察される が、傷害48時間後に 再び発現 したmRNA蓄積 は、PKPI遺伝子の構成発現 を暗示する。PKPIは塊茎に常時存在し、静的抵抗性の役割を担うと考えられる。

    PKPIとパタチ ンmRNAの蓄積 に及ぼす 生長調節 物質の影 響を検討した。供試 化合 物 中 、塊 茎 切片 にPKPImRNAを 誘導 し たのはジ ャスモン 酸だけで あった。

塊茎形成物質とされるジャスモン酸は、塊茎貯蔵蛋白質遺伝子の一部を誘導する可能性 が示唆された。

    転流同化産物のショ糖は塊茎の貯蔵澱粉合成に必須で、さらに茎節片培養による側 芽の塊茎形成を誘導する作用も有する。卜ランスジェニックタバコ植物でのPKPI プロモ―ターの発現は維管東組織に特異的で、葉身組織切片での発現はショ糖濃度に依 存した。P聡PI遺伝子の発現はプロモ―ター上のショ糖刺激感受領域により制御され る可能性が高い。

    バレイショ塊茎の蛋白質集積機構の解明は同化産物の効率的利用およぴ遺伝子発現 の器官特異性の理解に有益である。本研究では、新たな塊茎指標蛋白質PKPIの遺伝 子構造および発現特性を明らかにした。塊茎誘導に影響する低温、ジャスモン酸および ショ糖が、PKPI遺伝子の発現誘導に密接に関係する事実は、両者に共通な制御機構 を示唆する。

    よって審査員一同は、最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者山岸和敏は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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