• 検索結果がありません。

博 士 ( 農 学 ) 黒 田 治 之

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 農 学 ) 黒 田 治 之"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 黒 田 治 之

学 位 論 文 題 名

果 樹 の 耐 凍 性 と 凍 害 に 関 す る 生 理 ・ 生 化 学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 論 文 は , 総 頁数197で 和文 で記 され ,図55, 表19を含 み, 内 容は 結諭 ,本 論,

摘要 ,弓 |用 文献255か らな り, 末尾 に英 文要 約が付されている。また,別に参考論 文19編が 添え ちれ てい る。

  果 樹は 永年 性作 物で ,果 実生 産が 目的 であ り ,所 期の 目的 を達 成す るためには樹 体の 越冬 が必 要で ある .し たが って ,寒 冷地 で は果 樹の 寒冷 適応 機構 の解明が障害 的寒 冷害 及び 凍害 を克 服し ,安 定生 産を 図る 上 で重 要な 課題 とな って いる。植物の 寒冷 適応 現釁 に関 して は生 化学 領域 から 超微 形 態学 まで 多分 野に わた って検討され て い る が , ま だ そ れ ら の 機 構 を 根 本 的 に 理 解 で き る 段 階 に は 至 っ て い な い 。   本 論文 は, 果樹 の寒 冷適 応機 構に 関与 する 要 因と して 過酸 化物 代謝 と細胞構造に 着目 し, リン ゴの 枝, 花芽 及ぴ りン ゴ培 養カ ル スを 用い て, 耐凍 性と 過酸化物分解 機能 の関 係, 種間 の耐 凍性 差及 ぴ耐 凍性 変動 と 過酸 化物 代謝 の関 係, 耐凍性と細胞 内微 細構 造の 関係 ,凍 害と 活性 酸素 の関 係及 び 耐凍 性の 培養 細胞 にお ける発現につ いて 検討 を行 い, その 成果 をと りま とめ たも の であ る。

  1章 では ,リ ン ゴの 枝及 ぴ花 芽に おけ る耐 凍性 とグ ルタ チオ ン(GSH)とアスコ ル ビ ン 酸 を 基 質 と す る 過 酸 化 物 分 解 機 能 ― グル コー ス‑6−リ ン 酸脱 水素 酵素 (G6 PDH), デヒ ドロ ア スコ ルピ ン酸 還元 酵素 (DHARD) ,ア スコ ルピ ン酸 ベルオキシダ ー ゼ (AsAPOD) 及び グル コー ス‑6ー リン 酸(G6P)等 を含 むー と の関 係に つい て述 べて いる 。花 芽と 枝の 皮層 部及 び木 部に おぃ て ,過 酸化 物分 解機 能は 耐凍性の大き さと 平行 して 変動 する こと ,さ らに ,遇 酸化 物 分解 機能 は霜 によ って 誘導され,そ の後 に耐 凍性 が高 まる こと を認 め, 過酸 化物 分 解機 能の 高進 が耐 凍性 増大の原因で ある こと を論 述し てい る。 また ,培 養カ ルス を 用い た実 験に おい ても ,過酸化物分 解機 能は 耐凍 性増 大と 平行 して 変動 する こと を 見い だし ,過 酸化 物分 解機能が耐凍 性増 大に 重要 な役 割を 果し てい るこ とを 示し て いる 。

  2章 で は , リ ンゴ の枝 及び 花芽 にお ける 過酸 化物 の生 成系 で ある プラ スチ ド,

ミ ト コ ン ド リ ア 及び ミク ロソ ーム に おけ る電 子伝 達系 のNADH−Cytc還元 酵素 (NAD HCcR) とCytc酸 化 酵 素 (Cc0) 活 性 の 季 節 変化 を調 ベ, これ らの2っの 酵素 活性 は花 芽, 枝の 皮層 部及 ぴ木 部の いず れに おい て も冬 季に 高く ,越 冬中 の細胞では低 温下 でも 活性 酸素 が生 成す るこ とを 推論 して い る。 また ,過 酸化 物の 生成系と過酸 化物 分解 機能 は耐 凍性 増大 期に は均 衡し てい る が, 耐凍 性減 少期 には 不均衡状態に なる こと から ,耐 凍性 変動 が過 酸化 物代 謝に 伴 う酸 化的 スト レス と関 係している可 能性 を示 唆し てい る。

  3章 で は , リ ンゴ 属植 物の 耐凍 性の 種差 及び 耐凍 性変 動と 過 酸化 物代 謝と の関 係が 述べ られ てい る. まず ,リ ンゴ 属植 物の 耐 凍性 差と 過酸 化物 代謝 との関係を明 ら か に す る た め に , 厳 寒 期 の り ン ゴ 属 植 物9種(3品 種を 含む ) を用 いて ,過 酸化 物分 解系 と過 酸化 物生 成系 の酵 素活 性を 調ベ , 耐凍 性と の関 係を 検討 している.そ

275

(2)

の結果,NADHーCcR/G6PDH比あるい・はCc0/G6PDH比を酸化的ストレスの起こし易さを 表す指標(oxidizability index01)とすると,木部の01値とりンゴ眉植物の耐凍 性との間には高い相関係数が得られ,リンゴ属植物の耐凍性差は木部の酸化的スト レスと密接に関係していることを明らかにした。同様に,春における花芽の耐凍性 減少と01値との間にも高い相関を認め,酎凍性減少が酸化的ストレスの高まりと密 接に関係していることを明らかにしている.

  4章では,リンゴ樹の耐凍性と細胞内微細構造との関係が述べられている。ま ず,.枝の皮層部,木部及ぴ花芽細胞の耐凍性と細胞内微細構造を調ベ,次のような 共通構造の変化が耐凍性変動に伴って起こることを明らかにしている。耐凍性増大 期―液胞の小胞化,デンプン粒の消失,ミ卜コンドリア及びプロティン・リピドポ ディ一数の増加,ER,ボリゾーム,ジクチオゾームなど蛋白質合成に関与するオル ガネラ数の増加,細胞中心部への核の移動と核へのプラスチドの集合。耐凍性減少 期ー液胞の融合,デンプン粒の増加。さらに,耐凍性を異にする3っのりンゴ樹の 花芽を用いて,それらの細胞内微細構造の比較を行っている.その結果,耐凍性増.

大が速いりンゴ樹ほど細胞中心部への核の移動と核へのプラスチドの集合が速く,

プロティン・リピドポディーの数が多く,そしてデンプン粒の消失が遅い傾向を認 めている・

  5章では,凍害は酸化的ス卜レスが関与するという観点から,リンゴ花芽を用 いた検討結果が述ぺられている。凍死温度まで凍結した花芽ではG6PDHDHARD及ぴ AsAPODの失活とG6PとGSHの消失が起こり,過酸化物分解機能が崩壊すること,また,

酸素を遮断してから凍死温度まで凍結した花芽ではG6PとGSH含量の低下が抑制され,

凍害には活性酸素が関与することが示している。さらに,凍死温度まで凍結した花 芽では,H2 02含量が融解後30分以内に急増し,同時にG6PDHAsAPODが失活してG6P とGSHが消失することかち,遇酸化物分解機能の崩壊がH202によることを示唆してい る。このようなことから,植物の凍害発生機構のーっとして,活性酸素が関与して いる可能性を述べている。

  6章では,秋に増加するアミノ酸の中で,アルギニンとセリンの生長抑制効果 を明らかにした上で,これらの耐凍性増大効果について述べている。すなわち,秋 に増加するアルギニン,セリン,プロリン,グルタミン,アスバラギン及びスレオ ニンのうち,リンゴ細胞の増殖はアルギニンとセリンによって抑制された.次に,

リンゴ細胞にアルギニンとセリンを添加して25℃で3日間培養すると,−10℃に耐 えられなかった細胞がそれに耐えられるようになり,その時のアルギニンとセリン の最適濃度はそれぞれlOOmMと200 mMであった.また,液胞における蛋白質分解阻害 剤の3−メチルアデニンとプロピルアミンも耐凍性増大に有効であることを認め,

生 理 的 手 段 に よ り 植 物 の 耐 凍 性 を 高 め 得 る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。   最後に,本論文の内容を総合的に考察している。

  以上のとおり,本研究は植物の寒冷への適応機構及ぴ凍害発生機構を解明する上 での学術上重要な知見を加えたばかりでなく,生理的手法による凍害予防の可能性 を示し,応用面におぃても高く評価される。

276

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査 . 教 授    匂 坂 勝 之 助 副 査    教 授    千 葉 誠 哉 副 査    教 授    原 田    隆

学 位 論 文 題 名

果樹 の耐 凍性 と凍 害に 関する生理・生化学的研究

  

本 論 文 は , 総 頁 数

197

で 和 文で 記さ れ, 図55 , 表19 を含 み, 内容 は緒 論, 本論 , 摘 要, 弓| 用文献

255

から なり ,末 尾に 英文要 約が 付されている。また,別に参考論 文

19

編 が添 えられ てい る。

  

植物 の寒 冷適応 機構 の解 明は ,障 害的 寒冷 害及 び凍 害を 克服 し, 農作物 の安 定生 産 を図 る上 で重要 であ る。 植物 の寒 冷適 応現 象に 関し ては 生化 学領 域から 超微 形態 学 まで 多分 野にわ たっ て検 討さ れて いる が, まだ それ らの 機構 を根 本的に 理解 でき る 段階 には 至って いな い。

  

本論 文は ,果樹 の寒 冷適 応機 構に 関与 する 要因 とし て過 酸化 物代 謝と細 胞構 造に 着 目し ,リ ンゴ樹 及び りン ゴ培 養カ ルス を用 いて ,耐 凍性 と過 酸化 物分解 機能 の関 係 ,種 間の 耐凍性 差及 び耐 凍性 変動 と過 酸化 物代 謝の 関係 ,耐 凍性 と細胞 内微 細構 造 の関 係, 凍害と 活性 酸素 の関 係及 び耐 凍性 の培 養細 胞に おけ る発 現につ いて 検討 を 行い ,そ の成果 をと りま とめ たも ので ある 。

  

第1 章 では ,耐 凍性 とグ ルタ チオ ン(

GSH

) とア スコ ルビ ン酸 を基 質とす る過 酸化 物 分解 機能 一グル コー スー

6

― リン 酸脱 水素酵 素(

G6PDH

) ,デ ヒド ロアス コル ピン 酸 還元 酵素 (DHARD ) ,ア スコ ルビ ン酸 ペルオ キシ ダーゼ(AsAPOD )及びグルコース

6

−リ ン酸 (G6P )等 を含 む― との 関係 にっ いて 述べ てい る。 花芽 と枝の 皮層 部及 び 木部 にお いて, 過酸 化物 分解 機能 は耐 凍性 の大 きさ と平 行し て変 動する こと ,更 に ,過 酸化 物分解 機能 は霜 によ って 誘導 され ,そ の後 に耐 凍性 が高 まるこ とを 明ら か にし てい る。ま た, 培養 カル スを 用い た実 験に おい ても ,過 酸化 物分解 機能 は耐 凍 性増 大と 平行し て変 動す るこ とを 見い だし ,過 酸化 物分 解機 能が 耐凍性 増大 に重 要 な役 割を 果して いる こと を明 らか にし てい る。

  

2

章で は , 過 酸 化 物 の 生 成系 であ るプ ラスチ ド, ミト コン ドリ ア及 びミ クロ ソ

ー ム に お け る 電 子 伝 達 系 の

NADH

Cytc

還 元 酵 素 (

NADH

CcR

)と

Cytc

酸化酵 素(

C c0

) 活 性 の 季 節 変 化 を 調 ベ, これ らの

2

っ の酵素 活性 は花 芽, 枝の 皮層 部及 び木 部

の いず れに おいて も冬 季に 高く ,越 冬中 の細 胞で は低 温下 でも 活性 酸素が 生成 する

(4)

ことを推論している。また,過酸化物の生成系と過酸化物分解機能は耐凍性増大期 には均衡しているが,耐凍性減少期には不均衡状態になることから,耐凍性変動が 過酸 化 物 代 謝 に 伴 う 酸化的 スト レス と関 係して いる 可能 性を示 唆し てい る。

  

3

章では,過酸化物の分解系と生成系活性を示す酵素としてそれそれG6PDH とN

ADH

CcR

あるいはCc0 を選び,それらの比,すなわちNADH −CcR7 G6PDH 比あるいはCc0

/G6PDH 比を酸化的ストレスの起こし易さを表す指標(oxidizabilitY index; OI ) として,この01 値と耐凍性の種差並びに春の耐凍性減少との関係が述べられている。

01

値と耐凍性差及び耐凍性変動との間には高い相関係数が得られ,耐凍性は酸化的 ス卜レスと密接に関係していることを明らかにしている。

  

4

章では,耐凍性と細胞内微細構造との関係が述ぺられている。機能及び耐凍 性を異にする細胞を用いて,耐凍性と細胞内微細構造を調ベ,次のような共通構造 の変化が耐凍性変動に伴って起こることを明らかにしている。耐凍性増大期―液胞 の小胞化,デンプン粒の消失,ミトコンドリア及びプロテイン・リピドポディー数 の増加,ER ,ボリゾーム,ジクチオゾームなど蛋白質合成に関与するオルガネラ数 の増加,細胞中心部への核の移動と核へのプラスチドの集合。耐凍性減少期一液胞 の融合,デンプン粒の増加。

  

5

章では,凍害は酸化的ストレスが関与するという観点から,リンゴ花芽を用 いた検討結果が述べられている。凍死温度まで凍結した花芽ではG6PDH ,DHARD 及ぴ

AsAPOD

の失活とG6P とGSH の消失が起こり,過酸化物分解機能が崩壊すること,また,

酸素を遮断してから凍死温度まで凍結した花芽ではG6P とGSH 含量の低下が抑制され,

凍害には活性酸素が関与することが示唆されている。更に,凍死温度まで凍結した 花芽では,H202 含量が融解後30 分以内に急増し,同時にG6PDH とAsAPOD が失活してG

6P

とGSH が消失することから,過酸化物分解機能の崩壊がH2 02 によることを明らかに している。このようなことから,植物の凍害発生機構のーっとして,活性酸素が関 与している可能性を述べている。

  

6

章では,秋に増加するアミノ酸の中で,アルギニンとセリンの生長抑制効果 を明らかにした上で,これらの耐凍性増大効果について述ぺている。また,液胞に おける蛋白質分解阻害剤の3 −メチルアデニンとプロピルアミンも耐凍性増大に有 効であることを認め,生理的手段により植物の耐凍性を高め得る可能性が示唆され ている。

  

最後に,本論文の内容を総合的に考察している。

  

以上のとおり,本研究は植物の寒冷への適応機構及び凍害発生機構を解明する上 での学術上重要な知見を加えたばかりでなく,生理的手法による凍害予防の可能性 を示し,応用面においても高く評価される。

  

よって審査員一同は,別に行った学力確認試験の結果と合わせて,本論文の提出

者黒田治之は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

参照

関連したドキュメント

  

 ヒトを取り巻く環境中の有機化学物質に由来する肝障害の発生に,化学物質の代

   最 後に、富 栄養化が 水生植 物群落の 種多様 性に与えた影響にっいて明らかにするため に、 群落間 で種多様 性を比 較し、沈

4

て、セリン、スレオニン、アラニンを有し、主要キノン型はメナキノン9 ‑(H2) で、主 要脂肪酸としてアンテイソ分岐鎖脂肪酸

コ ラ― ゲン の 熱変 性温 度 はク 口ム 鞣 製に よっ て 顕著 に上昇し た。 同―ク□ム含量の 場合、硫酸ク口ムや

5 .秋 播 小麦 のク ラウ ン 組織 を一 酸化 窒素 (NO) 及び過酸化 水素 (H20z) によって処理す    る こと によ り ,2 種 の 低温 誘導 性夕 ンパ ク質(Cl

(HILDA モデルのみ)において海洋の生物ポンプを強化すると、大気中二酸化炭素分圧は堆積過程 を 考慮しな い系で