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学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 農 学 ) 実 山 学 位 論 文 題 名

野菜類遺伝資源凍結保存の基礎としての糖外与 による組織・細胞耐凍性の向上に関する研究

学位論文内容の要旨

堂.

  野菜遺伝資源の長期保存を目的として、野菜組織 細胞の超低温保存が行われるが、本研究 は、その技術の重要な構成要素のーつである凍結前糖外与処理の効果について、組織・細胞の 生 理 ・ 形 態 的 変 化 に 着 目 し て 検 討 し た も の で、 内 容 は次 の よ うに 要 約 さ れる 。 1.数種野菜組織における糖外与処理と生存性および耐凍性の変化

  キャベツ(Brassica oleraceaL)(品種・アーIjーボール)の葉柄組織、アスパラガス(

Asparagus of ficinalisL.)(品種・メリーワシントン500W)の若茎頭部小側枝茎頂および タマネギ(Allium cepaL.)(品種・札幌黄)の鱗葉組織などは、糖外与処理を行わない場合、

いずれもLTso=―3℃前後の耐凍性を示した(アスバラガス茎頂の頂端分裂組織では、‑5℃>

LT50>―7.5℃)。しかし、0.8Mソルピトール溶液浸漬による糖外与処理開始直後から、キャ ベツ葉柄組織およびアスバラガス茎頂の頂端分裂組織の耐凍性は急激に増大し、その最大耐凍 性はキャベツ葉柄組織ではLT50 ー13℃となり、アスバラガス茎頂の頂端分裂組織ではLT印 ー30℃に達した。夕マネギ鱗葉組織では、耐凍性はほとんど変化しなかったが、糖外与処理お よびその後の復水処理が、組織生存率を急激に低下させたことから、組織自体が脱水および浸 透価の変化に対して弱いことが理由のーっと考えられる。

2. 数種 野 菜 組織 に お ける 糖 外 与処 理 と 組 織内への 糖の取込 みおよ び耐凍性 の変化   キャベツ(品種・アーリーボール)の葉柄組織およびアスパラガス(品種・メルーワシント ン500W)の若茎頭部小側枝茎頂を用い、0.8Mソルビトール溶液浸涜による糖外与処理を行っ た場合の細胞質への糖の取込みにっいて、lucifer yellow carbohydrazide  (LYCH)をトレー サーとして共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ、糖外与処理開始数分後から、細胞の 原形質分離およびfluid―phase endocytosisによる小胞形成が観察されるとともに、小胞内へ の糖の取込みが確認された。

  っぎに、糖の取込み様式と凍害防御効果の発現との関連について検討したところ、(1) fluid―phase endocytosisによって生じた小胞は原形質分離復帰後でも細胞質内に残存し、凍 結・融解後には、組織生存率が向上しているにもかかわらず小胞は消失しなかったことから、

fluicl―phase endocytosisによって取り込まれた糖は、凍害防御効果の発現にほとんど関与し ていないこと、(2)糖輸送阻害剤pーchloromercuribenzene sulfonic acid (PCMBS)で処 理すると、糖外与処理による組織内糖含量の増加および耐凍性の増大が抑制されたこと、なら びに、この場合にもfluid−phase endocytosisによる糖の取込みは起きていることなどの事実 が確認されたことにより、糖の取込みには、少なくとも2種の様式があり、このうち、糖輸送 体 に よ る 取 込 み が 凍 害 防 御 効 果 の 発 現 に 関 与 し て い る も の と 推 測 さ れ る 。

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3. 糖 外 与 野 菜 組 織 に お け る 糖 含 量 お よ び 耐 凍 性 の 変 動 と 細 胞 構 造 の 変 化   キャ ベツ ( 品種 ・ゴ ール ド サワ ー)の葉肉組織に 対して1.OMグルコース溶液浸 潰による10 分 問か ら3時間 の糖 外 与処 理を 行う と、 最 大の 凍害 防御 効 果を示したが、この場 合、10分間 処 理し たも のの耐凍性お よび組織内グルコース含量は 、水洗により減少し、3時間 処理したも の では 水洗 後 もほ とん ど低 下 しな かった。このこと から、短時間(10分間)糖外 与処理によ る耐凍性 増大効果が、細胞質中に取 り込まれていない細胞外の糖 (細胞間中層ならびに細胞壁 と細胞膜 の間に存在する糖)の効果 であることが明らかになった 。

  キャ ベツ 葉肉組織の凍 結挙動をCryo−SEMを用いて 調べたところ、糖外与処理を 行ってない 試料の細 胞は、凍結により著しく収 縮し、変形した細胞壁間で原形質膜同士が密着していたが、

短時間糖 外与処理を行った試料では 、細胞壁と原形質膜の間に糖 溶液が存在し、原形質膜同士 が密着し ている箇所はみられなかっ た。この細胞の原形質膜破断面をフリーズ・フラクチャー・

レ プリ カ法 により観察し たところ、生体膜同士の異常 接近に起因するaparticulate clomains (ADs)お よびそれに伴うfracture‑jump lesions (FJLs)などの構造変化が、未処理言式料ならび に糖外与 処理後に水洗した試料に比 べて抑制されたことから、短 時間糖外与処理による耐凍性 増大効果 の発現は、原形質分離が、 凍結時に細胞壁が原形質膜を 押圧することを緩和し、生体 膜同士の 異常接近の機会を減少させ 、凍結傷害の発生を抑制することに起因すると考えられる。

4. 野 菜 茎 頂 の 凍 結 前 糖 外 与 処 理 ( 糖 前 培 養 ) と 含 水 卒 、 糖 含 量 お よ び 耐 凍 性 の 変 動 ならびに 細胞内小器官および原形貿 膜超微細構造の変化

  アス パラ ガ ス( 品種 ・メ リ ーワ シン トン500W)の 若茎 頭 部小 側枝 茎頂 は、O.5Mグ ルコー ス 添加 培地 を用いた2日間 の培養による糖外与処理を 行うと、緩速予備凍結法によ る凍結保存 が可能に なった。この場合における 含水率、可溶性糖含量、デン プン含量、細胞内微細構造お よび耐凍 性に及ぼす糖外与処理の影 響について調べたところ、含 水率の低下、可溶性糖含量お よびデン プン含量の増加、数種の細 胞内小器官の増加が認められ るとともに耐凍性が著しく増 加したこ とから、糖外与処理に伴う 浸透価の上昇(含水率の低下 および糖含量の増加)および 細胞内小 器官の変化が耐凍性増大に 関与していると推測される。

  糖外与 処理後に凍結したアスパラ ガス茎頂の頂端分裂組織細胞 における原形質膜破断面をフ ル ーズ ・フ ラ クチ ャー ・レ プ リカ 法に より 観察 し たと ころ 、凍結に伴うADsおよ びFJLsなど の構造変 化が抑制されていたことか ら、この糖外与処理の凍害防 御効果の発現は、細胞質内に 取り込ま れた糖が生体膜間のスベー サーとして働き、凍結時における原形質膜同士の異常千妾近 を回避さ せ、凍結傷害を抑制するこ とに起因すると考えられる。

5. 培 養 細 胞 に 対 す る 塘 外 与 処 理 ま た は 低 温 処 理 と 耐 凍 性 ・ 糖 含 量 お よび タン パ ク質 の 変化

  アス パラ ガ ス( 品種 ・メ リ ーワ シン トン500W)由 来のembryogenic callusに 対し てO.8M スク口一 ス添加培地を用いた培養に よる糖外与処理を行い、耐凍 性の変化について調べたとこ ろ 、耐 凍性 は 、糖 外与 処理 開 始2日 後から8日後まで 最大(LTr,o ー23℃前後)と なったのち 低 下す るこ と が明 らか にな っ た。 アスパラガスembryogenic callus内の可溶性糖 含量は、粘 外 与処 理開 始1日後 か ら2週 間 後ま で高い値を維持す ることが明らかになり、組織 内糖含量と 耐凍性と の問に密接な関連のあるこ とがわかった。

  また 、糖 外 与処 理は 、ア ス パラ ガスembryogenic callus内のタンバク質含量、 特に、可溶 性 夕ン バク 質含量を増加 させることが明らかになった 。7種の可溶性夕ンパク質が 糖外与処理 中 に増 加し 、 その うち の4種の 熱安 定性夕ンパク質に ついては、LEA夕ンバク質( 植物の耐凍 性 獲得 に関 与 する と考 えら れ る) のーつであるdehydrinに対する抗体と反応した ことから、

この糖外 与処理の耐凍性増大効果に は、細胞質に取り込まれた糖 の効果に加え、浸透圧ストレ

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ス に よ っ て 誘 導 さ れ た タ ン パ ク 質 の 補 助 的 な 効 果 が あ る も の と 推 測 さ れ る 。   以上のように、野菜 組織・細胞に糖外与処理を行 った場合の凍害防御効果としては、従来考 えられていた細胞質に 取り込まれた糖による直接的な効果のほかに、高浸透価によって壽秀起さ れる原形質分離による 効果、ならびに浸透圧ス卜レスによって誘導されるタンバク質による打ti 助 的 効 果 が 考 え ら れ 、 こ れ ら が 複 合 的 に 試 料 の 耐 凍 性 を 高 め る も の と 考 え ら れ る 。   本研究において明ら かになった事象および得られ た知見は、野菜遺伝資源の凍結保存技術を 確 立 し 発 展 さ せ る た め の 基 礎 と し て 、 重 要 な 役 割 を 果 た す も の と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    原田    隆 副査    教授    千葉誠哉 副査   助教授   藤川清三

学 位 論 文 題 名

野菜類遺伝資源凍結保存の基礎としての糖外与 による組織・細胞耐凍性の向上に関する研究

   本論 文は 、緒 論、 本章 6 章、 摘要 、引 用文 献133 、図 67 を 含む 177 頁の 和文 論文で、

別に参考論文4 編が添えられている。

   野菜 類の 組織 ・細 胞を 凍結 保存 し、 必要 に応 じて融解し培養することにより植物体 を再生させる方法は、野菜類遺伝資源の長期・安定的保存に有効である。この場合、凍 結前の保存用試料に糖外与処理を行うことにより、耐凍性が高くなり、凍害防御効果に より凍結傷害が軽減される場合があるが、この糖外与処理による凍害防御効果の詳細に ついては未だ明らかになっていない。

   本研 究は 、野 菜類 遺伝 資源 の保 存を 目的 とす る組織・細胞の凍結保存技術の効率と 安定性を向上させるため、その技術の重要を構成要素のーつである凍結前における糖外 与 処 理 の 条 件 と 効 果 に つい て 検 討 し た も の で 、 内 容 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。

( 1 ) 数 種 野 菜 組 織 に お け る 糖 外 与 処 理 と 生 存 性 お よ ぴ 耐 凍 性 の 変 化    高濃 度( 0 .8M )ソ ルピ トー ル溶 液に よる 糖外与 処理 (3 〜 10 時 間) を行 った場合、

組織の耐凍性(LTso) が向上したのは、キャペツ(Brassica oleracea .L .)葉柄組織(

‑3 ℃→ ‑13 ℃ )お よぴ アス パラ ガス (Asparagus of ficinalis L.) 若茎頭部小側枝茎頂

( ‑3 ℃ →‑30 ℃) で、 より 低い 温度 での 凍結 にも耐 えら れる よう にを った が、タマネ ギ (Allium cepa L.) 鱗葉組織ではー3 ℃からほとんど変化しをかった。このように糖外 与 処 理 効 果 は 、 野 菜 の 種 類 ま た は 組 織 の 種 類 に よ っ て 異 な る こ と が わ か っ た 。 (2) 数 種野 菜 組 織 に お け る 糖 外 与 処 理 と 組 織 内 への 糖の 取込 みお よぴ 耐凍 性の 変化    糖外 与処 理によ る耐 凍性 向上 効果 の認 められたキャベツ葉柄組織およびアスパラガ ス 若茎 頭部 小側枝 茎頂 を用 いて 、高 濃度 (0.8M )ソ ルピ トー ル溶 液に よる糖外与処理

( 1 時間 )を 行い、糖の取込み様式と凍害防御効果の発現との関連について検討した。

その結果、少なくとも、2 種の糖の取込み様式すなわちfluid‑phase endocytosis による取

込み(原形質分離の際に原形質膜から生ずる小胞内に取り込む)と糖輸送体による取込

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みとがあり、このうちの糖輸送体によって取り込まれた糖が凍害防御効果の発現に関与 していることが示唆された。

( 3 ) 糖 外 与 野 菜 組 織 に お け る 糖 含 量 お よ ぴ 耐 凍 性 の 変 動 と 細 胞 構 造 の 変 化      キャ ベツ の葉 肉組織に対して高濃度(1.OM) グルコース溶液による糖外与処理を行 う場 合、 10 分 間〜 3 時間 で凍 害防 御効 果が 現れ るが、 この 効果 は、 長時 間処 理の場合 には、細胞質内に取り込まれた糖によるものであり、短時間処理の場合には、細胞間中 層または細胞壁・原形質膜間の空隙(原形質分離による)に存在する糖によることが明 らかにをった。

   っ ぎに 、細 胞構 造につ いて 調ぺ たと ころ 、無 処理組織の細胞では、凍結過程で生じ た細胞外氷晶により細胞壁が押圧され、それに伴って原形質膜同士が異常に接近したこ とにより凍結傷害が生じたのに対し、短時間処理組織の細胞では、原形質分離が起こり、

このような傷害の発生を防止していることがわかった。

(4) 野菜 茎頂 の凍 結前 糖外 与処理 (糖 前培 養) と含 水率 、糖 含量 およ ぴ耐 凍性 の変動      ならぴに細胞内小器官およぴ原形質膜超微細構造の変化

     高濃度(0 .5M )グルコースを含む寒天培地を用いた2 日間の培養による糖外与処理 を行うと、アスパラガス若茎頭部小側枝茎頂では、可溶性糖含量の増加およぴ含水率の 低下が認められ、浸透価が上昇した結果、耐凍性が増大し、凍結・融解後の組織生存率 が向上することが明らかになった。

   っぎに、この場合の頂端分裂組織の細胞原形質膜の破断面をフリーズ・フラクチャー・

レプリカ法により観察し、異状が認められをかったことから、取り込まれた糖が生体膜 間のスベーサーとして働き、原形質膜同士の異常接近を回避させ、凍結傷害を抑制する ことにより、凍害防御効果が発現することを示した。

(5) 培養細 胞に 対す る糖 外与 処理 また は低 温処 理と 耐凍 性・ 糖含量 およ ぴタ ンパ ク質      の変化

     アスパラガスembryogenic callus に対して高濃度(0 .8M )スク口ース添加培地を用い た培養による糖外与処理を行い、可溶性糖含量の増加と耐凍性の増大との関連について 検討した結果、embryogenic callus においても、両者の間に密接を関連のあることが明 らかにをった。また、この場合、embryogenicI callus 中では、糖含量およぴ耐凍性の増 減に 対応 して 7 種の 可溶 性タ ンパ ク質 の含 量が 増減 し、このうち4 種の熱安定性タンパ ク質 につ いて は、 dehydrin (植物の耐凍性に関与するLEA タンパク質)に対する抗体と 反応したことから、糖外与処理による耐凍性増大効果には、糖による直接的な効果に加 えて、浸透圧ストレスによって誘導されたタンパク質による効果があるものと推測され る。

   以上 のよ うに 、本 研究 は、 これ まで明 らか にを っていなかった野菜類の組織・細胞

における糖外与処理と、耐凍性向上およぴ凍結傷害防止をどの凍害防御効果との関連に

ついて検討したもので、明らかにをった事象およぴ得られた知見は、野菜類遺伝資源の

凍結保存技術の改良に貢献するとともに耐凍性獲得機構の研究にも有効をものとして高

(6)

く評価される。

   よって審査員一同は、実山豊が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有す

るものと認めた。

参照

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   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ申 請 者が博 士(医学 )の学位 を受け るのに十 分な資 格を有す

放 射 線 化学 な らぴ に光 化学 、ビ ーム 工学 の進 歩に 寄与 する とこ ろ大 な るも のが ある 。    よっ て 、著 者は 北海 道大 学博 士(

のような多くの新知見を得ており、学術的並びに実用的に高く評価される。よって審査員一 同は、 南田公子 が博士(

   よっ て、 審査 員一 同は 、岡 本大作が博士(農学 )の学位を受けるのに十分な資格を 有するものと認めた 。.

  

  

   以上の成果は,TAK −029 は血小板

以上より、本審査委員会は 山田