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博士(農学)鄭 雨舷 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)鄭   雨舷 学位論文題名

高デンプンダイズの探索・同定および その育種的利用に関する研究

学位論文内容の要旨

  ダイズ(Gl ycine max (L.)Merr.)はタンパク質含量が約40%、脂質含量が約20%と高い。

この両成分を多く含み、根粒菌との共生 により窒素の供給が安易であるため、安価で生産 できることがダイズの特徴であり、他の作物には認められなぃ。このため、ダイズは食用、

油脂用、タンパク用、飼料用からバイオ ディーゼル、ダイズインクなどの工業利用まで用 途が非常に広く、他の作物より生産量の 伸びが高い。一方、韓国や日本を含む東南アジア 諸国において、ダイズは昔から「畑の肉 」と呼ばれ、豆腐、納豆、枝豆、煮豆、味噌など の伝統的な食品として利用されることで良質 なタンパク質供給を担ってきた。このため、

日本ではこれらの用途別に優れた適性を 持っ品種改良が行われてきた。また、ダイズは栄 養性および食品加工特性に優れた作物で あり、加えて機能性成分の宝庫といわれるほどに 種々の生理機能性成分を含む。一方、ダ イズ種子の貯蔵成分の1っで あるデンプンに関し ては、開花後約40日ごろ最大20.%ほど蓄積されるが以後急激に減少することが知られてい る。また、完熟したダイズ種子には1%程のデンプン含量が含まれることが知られている以 外その知見は乏しく、高デンプン含量ダイズに関する育種はまったく行われてしヽ.ない。本 研究は、我々の食生活と密接な関係にあ るダイズの種子成分の中で、煮豆や味噌など発酵 食品の加工適性や食味に変化をもたらす 可能性があるデンプン含量に着目し、ダイズ種子 の デ ン プ ン 含 量 を 高 め ら れ る 可 能 性 に つ い て 遺 伝 育 種 学 的 な 点 か ら 論 究 し た 。   第1章では 、ダイズの起源や成分育種のこれまでの研究経緯および最近の進展を概説し、

ダ イ ズ に お け る デ ン プ ン 含 量 の 育 種 改 良 の 重 要 性 お よ び 可 能 性 に つ い て 論 じ た 。   第2章では 、ダイズ遺伝資源6,002品種・系統を対象として、デン プン・ヨード反応を 用いてスクリーニングした。呈色程度で1から4(無反応から濃紫)にスコアリングし、3お よび4と判定 した34品種・系統を選抜した。しかし、デンプン・ヨー ド反応だけでは正確 なデンプン含量を把握することが難しい ため、一般的なデンプン含量定量法であるグルコ オキシダーゼ(GOD)法に比べ、より簡便かつ迅速なデンプン含量定量法であるジニトロサリ シリック酸(DNS)法を開発した。24サンプルのデンプン含量を定量する場合、DNS法は約70 分を 必要とする がGOD法では約120分所要されることが判明し、所要時間 が約半分に短縮

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さ れ る こ と が 確 認 さ れ た 。 こ のDNS法 を 用 い て選 抜 し た34品 種 ・系 統 の デ ンプ ン 含 量 を定 量 し た 。 そ の 結 果 、 デ ン プ ン ・ ヨ ー ド 反 応 で3お よ び4と 判 定 し た34品 種 ・系 統 の す べて が 高デ ン プ ン 含量 を 示 す ので は な く 、15品 種 ・系 統 の みが4.28f‑6.86% と一般 的なデ ンプ ン含量と知られている1%よりも高い値を示した。

  第3章で は 、 高 デン プ ン 含 量形 質 の 遺 伝的 構 造 と 栽培 地 域 に よる 影 響 を 理解 す るため に、

札 幌 市 と っ く ば 市 で 育 成 し た 田 螺 ダ イ ズXTー106のRIL (F6世代 ) 集 団 (以 後 、Pop.1お よ びPop.2と 表 記 ) を 用 い て デ ン プ ン 含 量 に 関 す るQTL解 析 を 行 っ た 。 第2章で 開 発 し たDNS 法 を 用 い てPop.1お よ びPop.2両 集 団 の デ ン プ ン 含 量 を 定 量 し た 結 果 、Pop.1の デ ン プ ン含 量は1. 11―5.32% の範囲 で平均 値が1.95%であ り、Pop.2は1.04一1.93%の範囲で平 均 値は1. 47% で あ った 。 ま た 、P2で あ るTー106は 札 幌市 およびっ くば市 と異な る地域 で育 成 さ れ た に も 関 わ ら ず 約1% と 一 定 な デ ン プ ン 含量 を 示 し たの に 対 し て、Plで ある 田 螺 ダ イ ズ は 札 幌 市 の 方 が っ く ば 市 に 比 べ て 約2倍 以 上高 い 値 を 示し た 。 こ の結 果 か ら ツル マ メ で あるT―106の デ ン プン 含 量 は 栽培 環 境 の 影響 を 受 け にくく 安定だ が、田螺 ダイズ はT―106 に 比 べ 栽 培 環 境に 敏 感 で ある こ と が 示唆 さ れ た 。田 螺 ダ イ ズの よ う に 栽培 環 境 に 敏感 な 品 種 ・ 系 統 は 他 に も3品 種 が 確 認 さ れ 、 早 生 ダ イ ズ の3品 種 も 高 デ ン プン 含 量 を 示す こ と が 明 ら か に な っ た。 高 デ ン プン ダ イ ズ を育 種 の 目 的と す る 場 合、 上 述 し た早 生 の 品 種・ 系 統 を 利 用 す る こ とで 栽 培 地 域の 選 択 幅 が拡 大 す る 可能 性 が 考 えら れ る 。 また 、 早 生 でも 晩 生 で も 高 デ ン プ ン含 量 を 示 す品 種 ・ 系 統が 認 め ら れた 結 果 は 、高 デ ン プ ン含 量 形 質 に関 わ る 要 因が 異 な る こと を 示 唆 して い る 。 これ ら の 別 種の 要 因に 関する 知見を 積み重 ねるこ とで、

デンプンの蓄積を支配する要因の主な役割を確認できると考えられる。

  MQM法 を 用 い てQTL解 析 し た 結 果 、Pop.1で は3つ の QTLを 、Pop.2で は5つ のQTLを 同 定 す る こ と が で き た 。Pop.2で 同 定 し たQTLsは い ず れ も 効 果 が 小 さ か っ た が 、Pop.1 で は 寄 与 率 が39.2% と 非 常 に 効 果 の 大 き いQTLを 同定 す る こ とが で き た 。両 集 団 で 共通 に 検 出 さ れ たQTLはChromosome7 (LGM) に座 乗 し て おり 、 開 花 期に 関 す るQTL解析 の 結 果 の一 部 と 一 致 す る 部 分 で も あ っ た 。 デ ン プ ン 含量 と 開 花 期の 両 形 質 で同 じChromosome7(LGM) に 同 定 し たQTLの寄 与 率 は 非常 に 低 い が、QTLの 位 置が 比 較 的 近い こ と か ら、 デ ン プ ン含 量 と 開 花 期 と の 間 で 何 ら か の 関 連 性 が あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。Pop.1の タ ン パ ク 質 含 量 23. 90ー49. 28%の範囲で平均値は39. 70%、脂質含量は5.46―19. 99%の範囲で平均値は12. 70% で あり 、Pop.2の タ ン パ ク質 含 量は24. 49ー52. 32%の範囲 で平均 値は37. 98%、脂 質含量 は 8. 28−23. 95%の 範囲で 平均値は15. 07%で あった。デンプン含量とタンパク質含量では相関 関 係 が 認 め ら れな か っ た が、 脂 質 含 量と で は 弱 い正 の 相 関 関係 が 認 め られ た 。 加 えて 、 デ ン プ ン 含 量 に おけ る 登 熟 期の 温 度 の 影響 を 調 べ るた め 、 高 デン プ ン ダ イズ 品 種 で ある 田 螺 ダ イズ と 対 照 個体 の い ち ひめ を 人 工 気象 室 に て 高温 区(28℃ )およぴ 低温区(22℃) で育成し た 。 デ ン プ ン 含量 定 量 の 結果 、 両 品 種共 に 低 温 区が 高 温 区 に比 べ 約1.7倍 高 い こと が 確 認 さ れ た 。 こ の 結果 は 、 デ ンプ ン 含 量 は開 花 後 の 温度 に よ る 影響 を 受 け 、ダ イ ズ の 栽培 に 適

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切 な 温 度 よ り も 若 干 低 い 温 度 で 増 加 す る こ と を 示 唆 し て い る 。   第4章では、本研究の成果から示されたダイズの高デンプン化育種の可能性を総合的に 考察し、今後の研究の進展にっいて見解を述べた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教授 教授 准教授 助教

喜多村啓介 三 上 哲 夫 阿 部    純 山 田 哲 也

学 位 論 文 題 名

高 デ ン プ ン ダ イ ズ の 探 索 ・ 同 定 お よ び そ の 育 種 的 利 用 に関 す る 研 究

  本論 文は4章84頁 から な る和 文論 文で あり 、図6、 表8を 含む 。

  韓国 や日 本を 含む 東南 アジ ア諸 国において、ダイズは昔 から「畑の肉」と呼ばれ、豆腐、

納 豆、 枝豆 、煮 豆、 味噌 など の伝 統的 な食 品と して 利 用さ れる こと で良 質な タン パク 質供 給 を担 って きた 。本 研究 は、 我々 の食 生活 と密 接な 関 係に ある ダイ ズの 種子 成分 の中 で、

煮 豆や 味噌 など 発酵 食品 の加 工適 性や 食味 に変 化を も たら す可 能性 があ るデ ンプ ン含 量に 着 目し 、ダ イズ 種子 のデ ンプ ン含 量を 高め られ る可 能 性に つい て遺 伝育 種学 的な 点か ら論 究 した 。

1. 簡 便 か っ 迅 速 な デ ン プ ン 含 量 定 量 法 の 確 立 韜 よ び 高 デ ン プ ン ダ イ ズ の 探 索 ・ 同 定   ダ イズ 遺伝 資源6,002品 種 ・系 統を 対象 にデ ンプ ン・ ヨー ド反 応を 用い てス クリ ー ニン グし た結 果、 高デ ンプ ン含 量 を示 すと 予測 され る34品種 ・系 統を 選抜 した 。ま た、 既 存の 一 般 的 な デ ン プ ン 含 量 定 量法 であ るGOD法に 比べ 、よ り簡 便か つ迅 速な デン プン 含 量定 量 が 可 能 なDNS法 の 開 発 に 成 功 し た 。 こ のDNS法 を 用 い て34品種 ・系 統の デン プン 含 量を 定 量 し た 結 果 、2〜6% と 一 般的 なダ イズ 種子 のデ ンプ ン 含量 であ る1%に 比べ 、2か ら6倍 高 い品 種・ 系統 を同 定し た。

2. 高 デ ン プ ン 含 量 形 質 に 関 す るQTL解 析

  ダイ ズ品 種田 螺ダ イズ とツ ルマ メ系 統Tー106由来 のRIL Fs種 子を 札幌 市と っく ば市 でそ れ ぞ れ 播 種 し 、 後 代 のF6種 子 を得 た。 札幌 市で 生産 され た集 団をPop.1、っ くば 市で 生産 さ れ た 集 団 をPop.2と し 、DNS法 を 用 い て 集 団 別 の デ ン プ ン含 量を 定量 した 。こ の実 測値

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と、 共同 研究 とし て農 業生 物資 源研 究所 の原 田久 也 博士 およ ぴ渡 辺啓 史博 士か ら提供され た 遺 伝 子 型 に 関 す る 情 報 を 基 に 連 鎖 地 図 を 作 製し 、MQM法を 用い てQTL解析 を行 った 。そ の 結 果 、Pop.1で はLGM、A2お よ びFに デ ン プ ン 含 量 に 関 す るQTLを 同 定 し た 。Pop.2 で はLGN、M、0、Eおよ びIに 同定 した 。ま た、 共同 研究 とし てっ くば 市 で生 産さ れたPop.

2集 団 の 開 花 期 に お け るQTL解 析 が 行 わ れ た 結 果、LG Cl、M、0、H、Jおよ びLに 計7つ(LG Jは2つ ) のQTLを 同 定 し た 。 デ ン プ ン 含 量 に 関 す るQTLと 開 花 期 に 関 す るQTLはLGMで 共 通 的 に 検 出 さ れ た。 共通 的に 検出 され た デン プン 含量 およ び開 花期 に関 するQTLは8.5 cM離 れて おり 、比 較的 近い こと から デン プン 含量 は 小さ いな がら も開 花期 によ る影響を受 けて いる こと が示 唆さ れた 。

3. デン プン 含量 にお け る開 花後 の温 度の 影響

  QTL解 析 の た め 、Pop.1韜 よ びPop.2の デ ン プ ン 含 量 をDNS法 に よ り 定 量 し た 結 果 、 両 集 団 の 平 均 デ ン プン 含量 に差 異が 認め ら れた 。こ の原 因の1っ とし て 登熟 期に おけ る温 度 の影 響を 調査 する ため 、北 海道 農業 研究 セン ター の 人工 気象 室に て高 デン プン ダイズ品種 であ る田 螺ダ イズ と対 照個 体と して 用い たい ちひ め を育 成し 、そ れぞ れの デン プン含量を 定量 した 。そ の結 果、 両品 種共 に高 温処 理区 に比 べ 低温 処理 区の 方が 約1.7倍 高いデンプ ン含 量を 示し た。 この 結果 は、 ダイ ズの 登熟 期の 温 度が 若干 低い 方が 、ダ イズ 種子により 多く のデ ンプ ンが 蓄積 され るこ とを 示唆 して いる 。

4.デンプン 含量とタンパク質含量および脂質含量との関係

  Pop.1お よ びPop.2両 集 団 の デ ン プ ン 含 量 と タ ン パ ク 質 含 量 お よ び 脂 質 含 量 と の 関 係 を調 査し た。Pop.1のタ ンパ ク質 含量 は23. 90―49. 28%の範囲で平均値は39. 70%、脂質 含量は5. 46―19. 99%の範囲で平均値は12. 70%であった。一方、Pop.2のタンパク質含量 は24. 49―52. 32%の範囲で平均値は37. 98%、脂質含量は8.28ー23. 95%の範囲で平均値は 15. 07% で あ っ た 。タ ンパ ク質 含量 は両 集 団の 間で ほと んど 差は なく 、脂 質含 量はPop.2 がPop.1よ り も わ ず か に 高 い こ と が 示 さ れ た 。 デ ン プ ン 含 量 と タ ン パ ク 質 含量 の関 係は Pop.1とPop.2でそれぞれ相関係数がr二ニ0. 038とr二ニ0.022で両成分の間で相関関係が全 く 認 め ら れ な か っ た。 一方 、デ ンプ ン含 量 と脂 質含 量で はPop.1がrニ ニ0.239、Pop.2が r=0. 117と弱 い正の相関関係(5%水準で 有意)が認められた。ダイズ種子においてデンプン 含 量 と 脂 質 含 量 の 間 に 正 の 相 関 関 係 を 認 め た 例 は 本 研 究 が 初 め て で あ る 。

  本研 究は 、高 デン プンダイズの探索・同定、簡便か っ迅速なデンプン含量定量法の開発、

ダ イズ 種子 のデ ンプ ン含 量に 関 するQTL解析 、デンプ ン含量における開花後の温度の影響、

韜 よび 他成 分と の関 係を 明ら か にす るな ど、 成分 育種 への 応用 に重 要な 道筋を立てるもの

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であり、学術的に高く評価できる。

  よって、審査員一同は、Wo Hyeun Jeongが博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を 有するものと認めた。

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参照

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