博士(農学)浅野眞一郎 学位論文題名
PCR 法に よるBacill ひs とたひring む ens むscry 遺伝子同定法 の確立と新規B .とんひring むens えs 菌株の発見
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本 論 文 は、 総 頁数85頁、 表13、 図19か ら なる 和 文 論文 で、他に 参考論文13 編 が添 え ら れて い る。
Bacillusth uringiensisは、土壌に生息する芽胞形成菌で、近縁な種であるB. cereusと は 芽 胞 形 成 時 に殺 虫 性結 晶 夕 ンパ ク 質(ICP) を産 生 する と ぃ う点 で区別されている。B, thuringiensisは、近年、環境に優しい微!J三物農薬として 特に注目をあびている害虫防除剤である。B. thuringiensisは迎常、鞭毛抗原型 (H‑serotype)に よって分 類されて いるが、 同一H‑serotypeの菌株 において も異 な る 特 異 的 殺 虫 活 性 を示 す 場合 が 報 告さ れ てい る 。 近年 のICP遺 伝 子 解析 に より 、B. thuringiensis菌 株の示す 特異的殺 虫活性は、 菌株の有 するICP遺伝 子 の 種 類 に 依 存 す る こと が 明ら か と なっ て きた 。 現 在、ICP遺伝 子 は 、鱗 翅 目に 殺 虫 活性 を 有す るcryj、 双翅 目 と鱗翅 目に殺虫 活性を有 するcryロ、 鞘翅 目に 殺 虫活 性を有す るcげ皿、 双翅目に殺 虫活性を 有するcryル 各遺伝子 に分類 されている。
本 研究 で は まず 、B. thuringiensis菌株が有 する各種cry遺伝子をPCR法 に よっ て 同定す ることに よって、 それらの 菌株の有す る殺虫活 性スベク トラムを 簡便かつ迅 述に推定 する技術 の確立をE|的とし た。次に 、この乎法を川いて各 地の土壌ならびに死亡幼虫から新しく分離したB.曲uringiensis菌株についてcry 遺伝 子 を解 析 し 、新 規 有用 菌 株 の検 索 を試みた。 以下、2項 目に大別 して要旨 を述べる。
1. PCR法 に よ るBacillus曲uringiensis cry遺 伝 子 同 定 法 の 確 立
(1)cryエ遺伝子(鱗翅目殺虫活性遺伝子)同定法の確立
鱗 翅 目 昆虫 に 対す る 各cryJ遺伝 子の特異 的殺虫活 性がすで に明らか にさ れている。即ち、cryJ A(a)カミカイコに対して、cry工A倒がコナガに対して、
cryJCが ハ スモ ン ヨト ウ に 対し て 殺虫 活 性 を有 し てい る 。 最近 、こ れらの cげエ 遺 伝 子に つ いて 特 異 的殺 虫 活性 に 関 与す る 領域 が 明 らか と なった 。そ こ で、 そ れら の 領 域を 指 標 にそ れぞ れのcryJ遺伝 子に特異 的なプラ イマー
を 作 成 し 、PCR法 に よ る 各cryj遺 伝 子の 同 定 法 を 確 立 し た 。 さ ら に そ の 手 法 の妥 当性 は、cryJ遺伝 子特 異的プ ロー ブを 用い たサ ザン ハイ ブリ ダイ
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セ ー ソ ヨ ン に よ っ て 確 認 し た 。
( 2)cryロ 遺 伝 子 ( 鱗 翅 日 ・ 双 翅 目 殺 虫 活 性 遺 伝 子 ) 同 定 法 の 確 立 鱗 翅 目 な ら びに 双翅 目昆 虫に 対す るcry̲U遺 伝子 の特 異的 殺虫 活性 がす で に 明ら かに され てい る。 即ち 、鱗 翅日・ 双翅 目昆 虫に 殺虫 活性を有するのが cryロA遺伝 子で あり 、鱗 翅目 昆虫 にのみ 殺虫 活性 を有 する のがcryロB遺伝子 で ある 。ま た、cryロA遺 伝子 上の 双翅目 昆虫 に対 する 特異 的殺虫活性領域も 明 らか とな った 。こ こで は、 両cry II遺 伝子 に共 通す る領 域に対するプライ マ ー を デ ザ イ ン し 、PCR法 に よ りcryロ 遺 伝 子 を 増 幅 し た 後 、増 幅 領 域 内 に お け る 制 限 酵素 認識 部位 の違 いに よっ て両cryロ 遺伝 子を 区別 ・同 定す る 方 法を 硼! 立し た。
( 3) cry皿 遺 伝 子 ( 鞘 翅 目 殺 虫 活 性 遺 伝 子 ) 同 定 法 の 確 立 鞘翅 目昆 虫に対 して 特異 的殺虫活性を有するcry lIl遺伝子は、cry皿Aから cr yltlD遺伝子まで報告されており、特にハムシ科の昆虫に対して強い殺虫活 性 を 宥 し て いる 。こ こで は、 それ ぞれ のcry皿遺 伝子 の特 異的 な領 域に 対し て プ ラ イ マ ー を デ ザ イ ン し 、PCR法 に よ っ て 各cry皿 遺 伝 子 の 特 異 的 増 幅 が 可能 な系 を確立 した 。
( 4) cryIV遺 伝 子 ( 双 翅 日 殺 虫 活 性 遺 伝 子 ) 同 定 法 の 確 立 双翅 目昆 虫に 対して 特異 的殺 虫活 性を示すcrylV遺伝子は、cry IVAからcry IVD遺 伝 子ま で4種 類 報 告 さ れ て い る 。ま ず 、 そ れ ぞ れの 特異 的領 域を 選ん で デ ザ イ ン し た プ ラ イ マ ー を 作 成 し 、PCR法 に よ っ て 各cr yIV遺 伝 子 の 増 幅 を 可 能 に し た 。 ま た 、 各 プ ラ イ マ ー の 特 異 性 は 、PCR産 物 を ア ガ ロ ー ス ゲ ル 上 で 電 気 泳 動 し た後 、各cげル 遺伝 子プ ロー プを 用い たサ ザン ハイ ブリ ダ イゼ ーシ ョン により 確認 した 。
2.新規8.舶uringiensis菌株の発見
1. に お い て 確 立 し たPCR法 に よ る 同 定 法 を 用 い て 、 様 々 なB. 舶uringiensis分 離菌 株の 有するcry遺伝子を同定し、その菌株の殺虫活性ス ベ クト ラム の推 定を行 うと ともに、生物検定を行った。その結果、cry IA倒 遺伝子を有するsubsp. japonensis N141株が、難防除害虫であるドウガネブイ ブイに殺虫活性を有することが明らかとなった。cry工A仏カ宣伝子は、鱗翅目 昆 虫 に のみ 殺 虫活 性を 示す こと が知ら れて いる こと から 、N141株 は新 規の cry遺伝子を有することが推定された。そこでN141株の結晶タンノヾク質の抗 体 を作 成し 、スgtllを 用い て作成したゲノムライブラリーのスクリーニング を行ったところ、新規のcr遺伝子(c′.JWヱ4ヱ)が分離された。cげM4i遺伝 子 の 塩 基 配列 を 決定 した 結果 、Nl.41株 同様 ドウ ガネ ブイ ブイ に強 い殺 虫活 性を有するsubsp.Japonens括Buibui株のりy遺伝子(cr.問 j6 j)にアミノ酸レ ベ ル に お いて 約60% の 相 同 性 を 示 し た 。 ま た、 他のcry遺 伝子 と比 較し た結 果、鱗翅日昆虫であるハチミッガに対して殺虫活性を有するc′yエ〔ヽ′i盥伝子に
対して高 い相同性 が認められ 、アミノ 酸レベル において 約70%の相 同性を有 すること が明らか となった。 この値は ドウガネ ブイブイ に対し殺 虫活性を有 するcryB uibui遺伝子との相同性よりも高い値であった。cryN14ヱ遺伝子の特 異 的 殺 虫 活 性 を 確 認 す る 目 的 で 、 結 晶 夕 ン ノ ヾ ク 質 を 産 生 し な いB. 曲uringiensis菌 株(BT51)に お け るcryN141タ ン パク 質 の 大量 発 現 を試 み た。cryN14ヱ遺 伝子をエ レクトロポ レーショ ンにより 導入したBT51株では、
結 晶 タ ン パ ク 質 の 形 成 が 認 め ら れ 、 走 査電 子 顕 微鏡 に よ る観 察 の結 果 、 N141株と 同 様の 形 態 が確 認 され た 。 この こ と は、 改め てN141株の結 晶夕ン バク質が 本遺伝子 にコードさ れている ことを示 すもので あり、本 遺伝予のド ウガネブ イブイに 対する殺虫 活性を示 唆してい る。
本研究では、微生物農薬として近年注目をあびているB. thuringiensisについ て 、 PCR法 あ る い は PCR法 に よ り 新 た に 作 成 し たDNAプ ロ ー ブ を 用 い て、各B. thuringiensisの有するcryjL伝子を同定する方法を確立した。これによ り 、新しく 分離され たB.thuringiensis菌株の殺虫活性スペクトラムを簡便かつ 迅 速 に推定 すること が可能と なった。明 らかに本 手法は、 新規優良 微生物農 薬 の 開 発にも 効果的で あり、事 実、本実験 の過程で 難防除害 虫である コガネム シ 類に殺虫活性を有するB. thuringiensis subsp. japonensis N141が発見された。以 上 、 本研究 の成果は 学術面の みならず実 用面でも 多大に貢 献したこ とは明ら か である。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
PCR 法による Bacillu,s とたuringiensisc り遺伝子同定法
の確立と新規B .とたひring むens むs 菌株の発見
本論文は、総頁数85頁、表13、凶19からなるKii文論文で、他に参考INIU・文13 編が添えられている。
Bacillus曲uring馴sJsは、土壌に生息する芽胞形成菌で、芽胞形成時に殺虫性 結晶 タンバク質 (ICP)を産生する。B.cカwfn劉印sJsは、近」′F、環境に優し い 微 生 物 農 薬 と し て 特 に 注 目 を あ び て い る 害 虫 防 除 剤 で あ る 。 本研 究 で はま ず 、B. thuringiensis菌株が有 する各種cryul伝子をPCR法 に よ って同定す ることに よって、 それらの 菌株の有 する殺虫 活性スベク トラムを 簡 便かつ迅速 に推定す る技術の 確立を目 的とした 。次に、 この手法を 用いて各 地の土壌ならびに死亡幼虫から新しく分離したB. thurinbuiensis菌株についてcry 遺 伝 子を 解 析 し、 新 規有 用 菌 株の検索 を試みた 。以下、2項目に大別 して要旨 を述べる。
1.PCR法 に よ るBacillus thuringiensis cry遺 伝 子 |id定 法 の 伽 ! 立
( 1) cr'yI遺 伝 子 ( 鱗 翅 日 殺 虫 活 性 遺 伝 子 ) 同 定 法 の 碓 立 鱗 翅 目昆虫に 対する各cryI遺 伝子の特 異的殺虫 活性がす でに1刀ら かにさ れて いる。pDち 、cryIA(a)がカイコに対して、cryfA矧カミコナガに対して、
cr'yfCがハ スモンヨ トウに対 して殺虫 活性を有し ている。そこで、それぞれ のcryI遺 伝 子に 特 異 的な プ ラ イマ ー を作 成 し 、PCR法 によ る 各ci'yエ遺 伝 子の 同 定法を 確立した。 さらにそ の手法の 妥当性は 、cげ工遺 伝子特異 的プ ロ ー ブ を 用 い た サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン に よ っ て 確 認 し た 。
(2)cry〃 遺 伝 子 ( 鱗 翅 目 ・ 双 翅 目 殺 虫 活 性 遺 伝 子 ) 同 定 法 の 確 立 鱗 翅 目な ら び に双 翅 目昆 虫 に 対す るcげ ロ遺伝 子の特異 的殺虫活 性がすで に明 ら か にさ れて いる。即ち 、鱗翅目 ・双翅目 昆虫に殺 虫活性を 有するの が cryロA遺 伝 子 であり、 鱗翅目昆虫 にのみ殺 虫活性を 有するの がcry HB遺伝子
彦 郎
夫 徳
敏 一
哲 久
塚 田
上 戸
飯 上
三 伴
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
で あ ろ 。 そ こ で 、 両cryロ 遺 伝 子 に 共 通 す る 領 域 に 対 す る プ ラ イ マ ー を デ ザ イ ン し 、PCR法 に よ りcryロ 遣 伝 子 を 増 幅 し た 後 、 増 幅 領 域 内 に お け る 制 限 酵 素 認 識 部 位 の 違 い に よ っ て 両cryロ 遺 伝 子 を 同 定 す る 方 法 を 確 立 し た 。
( 3) cry川 遺 r云 子 (キ 尚 翅 日 殺 虫 活 性 遺 伝 子 ) 同 定 法 の 稀 ! 立 y出 翅l三1昆 虫 に対 し て 特興 的 殺 虫活 性 を 有 するcl'y册 遺 伝子 は 、cry川Aか ら cr ylH D遺 伝 予 ま で 報 告 さ れ て お り 、 特 にハ ム シ 科の 昆 虫 に対 し て 強い 殺 虫 活 性 を 有 し て い る 。 こ こ で は 、 そ れ ぞ れ のcry皿 遺 伝 子 の 特 異 的 な 領 域 に 対 し て ブ ラ イ マ ー を デ ザ イ ン し 、PCR法 に よ っ て 各cry皿 遺 伝 子 の 特 異 的 増 幅 が 可 能 な 系 を 確 立 し た 。
(4)cryIV遺 伝子(双 翅目殺 虫活性遺 伝子) 同定法の 確I立
双 翅 目 昆 虫 に 対 し て 特 異 的 殺 虫 活 性 を 示 すcryIV遺 伝 子 は 、cryIVAか らcry IVD遺 伝 子 ま で4種 類 報 告 さ れ て い る 。 ま ず 、 そ れ ぞ れ の 特 異 的 領 域 を 選 ん で デ ザ イ ン し た ブ ラ イ マ ー を 作 成 し 、PCR法 に よ っ て 各 cry彫 遺 伝 子 のwI iliii,を 可 能 に し た 。 ま た 、 各 プ ラ イ マ ー の 特 異 性 は 、PCR産 物 を ア ガ 口 ース ゲ炒.. 亅二でf也気 泳勁し た後、各cry彫遺 伝子プ口ーブを′門いたサザンハイブリ ダイゼー ション により碓 認した 。
2.新規B.舶uringiensis菌株の発見
1. に お い て 確 立 し た PCR法 に よ る 同 定 法 を 用 い て 、 様 々 な B. fカ uringiensis分離 菌 株 の 有す るcryra伝子 を 同 定し 、 そ の菌 株 の 殺虫 活 性 ス ベ ク ト ラ ム の 推 定 を 行 う と と も に 、 生 物 検 定を 行 っ た。 そ の 結果 、cryI A(a) 遺 伝 子 を 有 す るsubsp. japonensis N141株 が 、難 防 除 害虫 で あ るド ウ ガ ネ ブイ ブ イ に 殺 虫 活 性 を 有 す る こ と が 明 ら か と な った 。cryJ A(a)遺伝 子 は 、鱗 翅 目 昆 虫 に の み 殺 虫 活 性 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る こ と か ら 、N141株 は 新 規 の cryvli伝 子 を 有 す る こ と が 推 定 さ れ た 。 そ こ でN141株 の 結 晶 タ ン バク 質 の 抗 体 を 作 成 し 、 スgtllを 用 い て 作 成 し た ゲ ノ ム ラ イ ブ ラ リ ー の ス クリ ー ニ ング を 行 っ た と こ ろ 、 新 規 のcr Y伝 子(cryNヱ4ヱ ) が 分 離 さ れ た 。cグM4ヱ遺 伝 子 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た 結 果 、N141株 同 様 ド ウ ガ ネ ブ イ ブ イ に 強 い 殺 虫 活 性 を 有 するsubsp.japonenslsBuibui株 のc′憾伝子 (cn′Bu|6uj)に アミノ 酸レ ベ ル に お い て 約60% の 梱 同 性 を 示 し た 。cグNヱ4ヱ 遺 伝 子の 特 興 的殺 虫 活 性を 伽!認するll「′、jで、糸キ品タンバク質を産生しないB.とカwjngf飢sjs1肖株(BT51 ) に お け るcl.yN141タ ン バ ク 質 の 大 量 発 現 を 試 み た 。cげNI糾 遺 伝子 を ェ レ ク ト ロ ポ レ ー シ ョ ン に よ り 導 入 し たBT51株 で は 、 結 晶 夕 ン パ ク 質 の 形 成 が 認 め ら れ 、 走 査 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察 の 結 果 、N141株 と 同 様 の 形 態 が 確 認 さ れ た 。 こ の こ と は 、 改 め てN141株 の 結 晶 タ ン ノ ヾ ク 質 が 本 遺 伝子 に コ ード さ れ て い る こ と を 示 す も の で あ り 、 本 遺 伝 子 の ド ウ ガ ネ ブ イ ブ イ に 対す る 殺 虫活性を示唆している。
以 上 の 研 究 結 果 は 、 微 生 物 農 薬 とし て 近 年注 目 を あび て い るB.th urn別ensJ5 に お い て 、 新 し い 方 法 に よ るcry遺 伝 子 同 定 を 行 い 、 各 菌 株 の有 す る 殺虫 活 性 ス ベ ク ト ラ ム を 推 定 す る こ と を 可 能 に し た こ と 、 こ の 方 法 を 利 用 し て 新 規 優 良 微 生 物 の 発 見 を 行 っ た こ と で あ り 、 そ の 成 果 は 高 く 評 価 さ れ る 。
よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて本論文の提 出者浅野眞一郎は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格が有るものと認 定した。