奈良教育大学学術リポジトリNEAR
異分野間の協働実践における日本語教員の役割―幼 年教育における国際理解教育の協働実践を例として
―
著者 和泉元 千春
雑誌名 奈良教育大学国文 : 研究と教育
巻 40
ページ 111‑98
発行年 2017‑03‑30
URL http://hdl.handle.net/10105/00013008
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性への対応力といった、言語及び言語の教授に関する知識・能力に焦点が当てられている。
日本語教育という分野がまだ世の中に認知されていない時代背景から、「日本語話者と日 本語教員の境界に焦点が当たっていた」(金田2009)と言える。その後、1990年代に入 ると、入管法改正に伴い日本国内で多文化共生社会の実現が認識されるようになったのを 受け、日本語教員の資質・能力にも変化が求められるようになる。例えば西口(2001)
は状況的学習論(Lave & Wenger 1991)の立場から、日本語教員の役割を「プログラ ム・コーディネーター」と「授業担当教師」に分けて提示している。特に「プログラム・
コーディネーター」として、教師はより有能な他者の介添え(scaffolding)や他者との協 働によって遂行しうる、次の段階の能力発達の潜在的な領域(最近接発達領域,zone of p roximal development, ZPD,ヴィゴツキー1962)を開示するような活動を計画するこ とに加えて、教室内(および教室外)で行われる諸活動を社会、個人と協調関係に基づく 共同体構築の活動になるよう計画することを重要な役割として担っていると捉えた。また、
「授業担当教師」の役割として、言語能力を含む知的能力に非対称性がある共同体参加者 間の認知的、情意的介添えを担うことを挙げている。この2つの役割は、教室内、教室外 の社会(共同体)において多文化共生の言語環境を調整し、協働的相互活動の実現を触媒 し、参加者の立場を代弁するという日本語教員の役割の拡大を示していると言える(岡崎 2001)。さらに近年では、日本語教育と社会との繋がりや貢献のあり方や必要性が強く認 識されるようになり、「多言語と異文化に関わる知識と経験を有する専門職」として、「多 様な分野との連携体制を構築していく要」(宮島他2016)としての役割を積極的に果たし ていくべきだという提言も見られるようになった。
上記のように、日本語教員に必要な能力・資質に関する提言の変遷からは、日本語教員 の役割の拡大と同時に日本語教員としての役割を支える専門性の揺らぎが見て取れると言 える。
2.2 大学所属の日本語教員の立ち位置
大学における日本語教員は大学付設の語学教育施設、いわゆる留学生センターに所属し ている場合や特定の学部に所属している場合など多様である。また専任職、非常勤の別だ けでなく、専任職でも役職や肩書きの違いによって大学組織上の立ち位置は異なっている が、昨今の大学のグローバル化志向によって、日本語教員に対する期待やその業務は拡大 化、多様化していると言われている。倉地(2016)は日本国内の大学に勤務する専任の 日本語教員を対象とし、自らの日本語プログラムや日本語教員としての立ち位置について,
どのような変化を感じとっているかを調査した。その結果、留学生の受け入れが増加して いるにも関わらず、「日本語を教えるという本来の業務(それ自体,留学生の増加や多様 化の一方で,教員増が見込まれない中,負担増となっているが)に加えて,各種事務職,
アドバイジング,カウンセリング,英語の授業,日本人学生の海外引率,多文化間教育に
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異分野間の協働実践における日本語教員の役割
―幼年教育における国際理解教育の協働実践を例として―
和 泉 元 千 春
1.はじめに
日本国内の学校教育現場では、国際化、グローバル人材育成の方略の一つとして、いわ ゆる「外国人」をゲストスピーカーに招き交流を図ることによって国際理解教育を行う実 践が古くから行われている。近年は日本国内に在住する外国人や外国ルーツの児童生徒の 増加など日本の社会及び学校教育現場の状況変化が著しく、従来の国際理解教育のあり方 や教育的実践への具現化の方略も変化が期待されていると言える。本学でも、多様な文化 的・言語的背景を持つ留学生を受け入れていることから近隣の学校教育現場からの留学生 派遣の依頼が年々増えているが、依然として留学生の出身国紹介や留学生への日本文化紹 介といった交流の要望が中心であることが多く、交流を通じて「外国人(留学生)対日本 人」という二項対立を助長してしまうことも懸念されている。また、留学生教育の観点か らも留学生にとって「教材」となる経験のみが意識化され、そこでの多様な無意識的な学 びが可視化されにくいという問題があった。そこで、本学では、学校教育現場からの留学 生派遣という要望に国内学生との協働を取り入れ、交流に伴う活動(準備作業や振り返り を含む)を通して、留学生、国内学生(本学の正規課程で学ぶ主に国内学生)、児童生徒 が、「外国人対日本人」という二項対立を超えた主体的な学びの共同体を構築していくプ ロセスを可視化することを目指した実践を行っている。その教育実践は、日本語教員だけ でなく、学校教育現場の教員(幼小中学校教諭)、大学正規課程の担当教員、国内学生、
留学生によって計画、実行される異分野間の協働実践の場であると言える。そこで本稿で は、学校教育における国際理解教育という実践の場での異分野間の協働がどのように行わ れたのかを大学で留学生教育に携わる日本語教員の視点から観察し、そこでの日本語教員 の役割を考察したいと思う。
2.日本語教師の役割
2.1 日本語教員に必要な資質・能力に関する議論
語学教員の専門性、備えるべき力量、資質・能力は、これまでも多く議論されてきてい る(1)。日本語教員の資質・能力に関しては、1976年に文化庁日本語教育推進調査会によっ て「日本語教員に必要な資質・能力とその向上策について―日本語教育推進対策調査会報 告―」が示されたのが最初であり、そこでは、国際的な教育者として、言語の教師として、
日本語教育の専門家として、言語や日本語の教授に関する知識や学習者や教育現場の多様
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性への対応力といった、言語及び言語の教授に関する知識・能力に焦点が当てられている。
日本語教育という分野がまだ世の中に認知されていない時代背景から、「日本語話者と日 本語教員の境界に焦点が当たっていた」(金田2009)と言える。その後、1990年代に入 ると、入管法改正に伴い日本国内で多文化共生社会の実現が認識されるようになったのを 受け、日本語教員の資質・能力にも変化が求められるようになる。例えば西口(2001)
は状況的学習論(Lave & Wenger 1991)の立場から、日本語教員の役割を「プログラ ム・コーディネーター」と「授業担当教師」に分けて提示している。特に「プログラム・
コーディネーター」として、教師はより有能な他者の介添え(scaffolding)や他者との協 働によって遂行しうる、次の段階の能力発達の潜在的な領域(最近接発達領域,zone of p roximal development, ZPD,ヴィゴツキー1962)を開示するような活動を計画するこ とに加えて、教室内(および教室外)で行われる諸活動を社会、個人と協調関係に基づく 共同体構築の活動になるよう計画することを重要な役割として担っていると捉えた。また、
「授業担当教師」の役割として、言語能力を含む知的能力に非対称性がある共同体参加者 間の認知的、情意的介添えを担うことを挙げている。この2つの役割は、教室内、教室外 の社会(共同体)において多文化共生の言語環境を調整し、協働的相互活動の実現を触媒 し、参加者の立場を代弁するという日本語教員の役割の拡大を示していると言える(岡崎 2001)。さらに近年では、日本語教育と社会との繋がりや貢献のあり方や必要性が強く認 識されるようになり、「多言語と異文化に関わる知識と経験を有する専門職」として、「多 様な分野との連携体制を構築していく要」(宮島他2016)としての役割を積極的に果たし ていくべきだという提言も見られるようになった。
上記のように、日本語教員に必要な能力・資質に関する提言の変遷からは、日本語教員 の役割の拡大と同時に日本語教員としての役割を支える専門性の揺らぎが見て取れると言 える。
2.2 大学所属の日本語教員の立ち位置
大学における日本語教員は大学付設の語学教育施設、いわゆる留学生センターに所属し ている場合や特定の学部に所属している場合など多様である。また専任職、非常勤の別だ けでなく、専任職でも役職や肩書きの違いによって大学組織上の立ち位置は異なっている が、昨今の大学のグローバル化志向によって、日本語教員に対する期待やその業務は拡大 化、多様化していると言われている。倉地(2016)は日本国内の大学に勤務する専任の 日本語教員を対象とし、自らの日本語プログラムや日本語教員としての立ち位置について,
どのような変化を感じとっているかを調査した。その結果、留学生の受け入れが増加して いるにも関わらず、「日本語を教えるという本来の業務(それ自体,留学生の増加や多様 化の一方で,教員増が見込まれない中,負担増となっているが)に加えて,各種事務職,
アドバイジング,カウンセリング,英語の授業,日本人学生の海外引率,多文化間教育に
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異分野間の協働実践における日本語教員の役割
―幼年教育における国際理解教育の協働実践を例として―
和 泉 元 千 春
1.はじめに
日本国内の学校教育現場では、国際化、グローバル人材育成の方略の一つとして、いわ ゆる「外国人」をゲストスピーカーに招き交流を図ることによって国際理解教育を行う実 践が古くから行われている。近年は日本国内に在住する外国人や外国ルーツの児童生徒の 増加など日本の社会及び学校教育現場の状況変化が著しく、従来の国際理解教育のあり方 や教育的実践への具現化の方略も変化が期待されていると言える。本学でも、多様な文化 的・言語的背景を持つ留学生を受け入れていることから近隣の学校教育現場からの留学生 派遣の依頼が年々増えているが、依然として留学生の出身国紹介や留学生への日本文化紹 介といった交流の要望が中心であることが多く、交流を通じて「外国人(留学生)対日本 人」という二項対立を助長してしまうことも懸念されている。また、留学生教育の観点か らも留学生にとって「教材」となる経験のみが意識化され、そこでの多様な無意識的な学 びが可視化されにくいという問題があった。そこで、本学では、学校教育現場からの留学 生派遣という要望に国内学生との協働を取り入れ、交流に伴う活動(準備作業や振り返り を含む)を通して、留学生、国内学生(本学の正規課程で学ぶ主に国内学生)、児童生徒 が、「外国人対日本人」という二項対立を超えた主体的な学びの共同体を構築していくプ ロセスを可視化することを目指した実践を行っている。その教育実践は、日本語教員だけ でなく、学校教育現場の教員(幼小中学校教諭)、大学正規課程の担当教員、国内学生、
留学生によって計画、実行される異分野間の協働実践の場であると言える。そこで本稿で は、学校教育における国際理解教育という実践の場での異分野間の協働がどのように行わ れたのかを大学で留学生教育に携わる日本語教員の視点から観察し、そこでの日本語教員 の役割を考察したいと思う。
2.日本語教師の役割
2.1 日本語教員に必要な資質・能力に関する議論
語学教員の専門性、備えるべき力量、資質・能力は、これまでも多く議論されてきてい る(1)。日本語教員の資質・能力に関しては、1976年に文化庁日本語教育推進調査会によっ て「日本語教員に必要な資質・能力とその向上策について―日本語教育推進対策調査会報 告―」が示されたのが最初であり、そこでは、国際的な教育者として、言語の教師として、
日本語教育の専門家として、言語や日本語の教授に関する知識や学習者や教育現場の多様
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留学生の出身 韓国(1)、ルーマニア(1)、ドイツ(2)、チリ(1)、インドネシア(1)、
地域 ポーランド(1)、フランス(1)、台湾(1)、中国(3)、米国(1)
交流当日の流 12:45-13:00 自己紹介(地図を見せながら出身国、名前、各国のあい
れ さつを紹介する)
13:00-13:30 オリジナル多文化絵本「ねないこだれだ」の読み聞かせ 13:30-13:50 各国の手遊び、自由遊び
合同授業への <留学生>
準備 ・自国の「こわいもの」のイラストを印刷しておく
・子どものときにやった手遊びを考えておく
<幼年教育学生>
・地図を分かりやすく加工する
・「ねないこだれだ」の絵本をスキャンし、読み聞かせ用教材を作る
合同授業 第1回:11月30日(木)9:00-10:30
・各国のおばけの説明を聞き、5歳児向けの説明を考える(国別グループで)
・留学生に手遊びを紹介してもらい、幼稚園で紹介する手遊びを選ぶ
※この時間で準備が完了しなかった場合は、課外で協力して準備をしてお く
第2回:12月7日(水)9:00-10:30
・リハーサル 表1 交流内容の概要
実践は表2のように計画、実行された。
日にち 実践の計画と実行の概要 協働参与者
2016年 附属幼稚園教員から幼年教育教員に幼稚園での 幼稚園教諭→幼年教育教員 9月中旬 国際交流として留学生の派遣依頼【①】
9月下旬 幼年教育教員より日本語教員に協力依頼【②】 幼年教育教員→日本語教員
- 3 -
関わる様々な専門外の授業など,多岐にわたる諸々の業務に従事しなければならず,仕事 の負担増を如実に感じている(p.6)」ことを明らかにした。地域密着の教員養成大学で ある本学においても派遣留学生数の増加は大きな関心ごとであるものの、それに付随する 交換留学生の受け入れに伴う日本語教育の重要性については、「大学の教育課程への貢献」
を前提として捉えられる傾向が強く、それは留学生教育の担い手である日本語教員の大学 における立ち位置にも大きく影響している。一方で、このような状況の中、地域や学校教 育の現場からは、グローバル化に対応した人材の育成を目指した国際理解教育に留学生を 活用したいという要望が増加している。そしてそれは、大学が積極的に関わる場合でも大 学の教育課程の枠組みの中に捉えられることは少なく、日本語教員や大学の国際交流を担 う職員が主導して行われることが多い。本稿ではその是非を述べることはせず、本学附属 幼稚園からの留学生派遣の依頼に端を発する協働実践において大学の日本語教員である筆 者がどのような役割を担おうとしていたかについて、共同体参加の振り返りや活動メモを もとに観察し、学校教育の国際理解教育における日本語教員の役割について考察したいと 思う。
3.附属幼稚園での多文化絵本読み聞かせを中心とした協働実践 3.1 交流内容の概要
本実践は附属幼稚園での5歳園児対象の国際理解教育への留学生派遣を中心としたもの であり、留学生だけでなく、幼年教育を専攻する国内学生(以下、幼年教育学生)も関わ り、準備と当日の運営を行った。また留学生教育担当の大学教員(筆者。以下、日本語教 員)、附属幼稚園教諭(以下、幼稚園教諭)、本学幼年教育の大学教員(以下、幼年教育教 員)が計画と助言を行った。日本語教育と幼年教育という異分野の者同士が協働で関わる ことで実現した点が特徴であると言える。概要は表1のとおりである。
目的 大学(留学生教育、教員養成課程)と附属幼稚園の協働により、「外国人対 日本人」という二項対立を超え、国内学生、留学生の異文化間能力を育成 すること。
さらに文化多様性に対する園児の興味を喚起するための活動を協働で行う。
交流日時 2016年12月9日(金)12:45-13:50
場所 附属幼稚園
参加者 5歳児園児 約20名
幼年教育講座4回生有志 14名
「日本語コミュニケーション」受講留学生 13名
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留学生の出身 韓国(1)、ルーマニア(1)、ドイツ(2)、チリ(1)、インドネシア(1)、
地域 ポーランド(1)、フランス(1)、台湾(1)、中国(3)、米国(1)
交流当日の流 12:45-13:00 自己紹介(地図を見せながら出身国、名前、各国のあい
れ さつを紹介する)
13:00-13:30 オリジナル多文化絵本「ねないこだれだ」の読み聞かせ 13:30-13:50 各国の手遊び、自由遊び
合同授業への <留学生>
準備 ・自国の「こわいもの」のイラストを印刷しておく
・子どものときにやった手遊びを考えておく
<幼年教育学生>
・地図を分かりやすく加工する
・「ねないこだれだ」の絵本をスキャンし、読み聞かせ用教材を作る
合同授業 第1回:11月30日(木)9:00-10:30
・各国のおばけの説明を聞き、5歳児向けの説明を考える(国別グループで)
・留学生に手遊びを紹介してもらい、幼稚園で紹介する手遊びを選ぶ
※この時間で準備が完了しなかった場合は、課外で協力して準備をしてお く
第2回:12月7日(水)9:00-10:30
・リハーサル 表1 交流内容の概要
実践は表2のように計画、実行された。
日にち 実践の計画と実行の概要 協働参与者
2016年 附属幼稚園教員から幼年教育教員に幼稚園での 幼稚園教諭→幼年教育教員 9月中旬 国際交流として留学生の派遣依頼【①】
9月下旬 幼年教育教員より日本語教員に協力依頼【②】 幼年教育教員→日本語教員
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関わる様々な専門外の授業など,多岐にわたる諸々の業務に従事しなければならず,仕事 の負担増を如実に感じている(p.6)」ことを明らかにした。地域密着の教員養成大学で ある本学においても派遣留学生数の増加は大きな関心ごとであるものの、それに付随する 交換留学生の受け入れに伴う日本語教育の重要性については、「大学の教育課程への貢献」
を前提として捉えられる傾向が強く、それは留学生教育の担い手である日本語教員の大学 における立ち位置にも大きく影響している。一方で、このような状況の中、地域や学校教 育の現場からは、グローバル化に対応した人材の育成を目指した国際理解教育に留学生を 活用したいという要望が増加している。そしてそれは、大学が積極的に関わる場合でも大 学の教育課程の枠組みの中に捉えられることは少なく、日本語教員や大学の国際交流を担 う職員が主導して行われることが多い。本稿ではその是非を述べることはせず、本学附属 幼稚園からの留学生派遣の依頼に端を発する協働実践において大学の日本語教員である筆 者がどのような役割を担おうとしていたかについて、共同体参加の振り返りや活動メモを もとに観察し、学校教育の国際理解教育における日本語教員の役割について考察したいと 思う。
3.附属幼稚園での多文化絵本読み聞かせを中心とした協働実践 3.1 交流内容の概要
本実践は附属幼稚園での5歳園児対象の国際理解教育への留学生派遣を中心としたもの であり、留学生だけでなく、幼年教育を専攻する国内学生(以下、幼年教育学生)も関わ り、準備と当日の運営を行った。また留学生教育担当の大学教員(筆者。以下、日本語教 員)、附属幼稚園教諭(以下、幼稚園教諭)、本学幼年教育の大学教員(以下、幼年教育教 員)が計画と助言を行った。日本語教育と幼年教育という異分野の者同士が協働で関わる ことで実現した点が特徴であると言える。概要は表1のとおりである。
目的 大学(留学生教育、教員養成課程)と附属幼稚園の協働により、「外国人対 日本人」という二項対立を超え、国内学生、留学生の異文化間能力を育成 すること。
さらに文化多様性に対する園児の興味を喚起するための活動を協働で行う。
交流日時 2016年12月9日(金)12:45-13:50
場所 附属幼稚園
参加者 5歳児園児 約20名
幼年教育講座4回生有志 14名
「日本語コミュニケーション」受講留学生 13名
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交流では幼年教育で日常的に行われている絵本の読み聞かせを行うこととしたが、絵本 は日本語で書かれたものをベースに多文化・多言語の内容を加えてアレンジすることとし た。活動内容や絵本の選定などの大枠については、活動実施までの時間的制限や国内学生 の参加制限等の問題があり、日本語教員が起案し、幼年教育教員、幼稚園教諭との相談の 上で決定した。日本語教員が【③】の場で絵本の読み聞かせの活動として提案した案と素 材は以下のようなものである。
①あいさつを使った活動
候補)『こんにちは』(理論社)・『ありがとう』(理論社)
②オノマトペを各国語で表現した絵本を聞き比べる活動
候補)『あめぽぽぽ』(くもん出版)・『だるまさんと』(ブロンズ新社)、『とんとんどんどん』(P HP研究所)・『どうぶついろいろかくれんぼ』(ポプラ社)、『だーれかなだーれかな』(童心社)
③多様な言語(方言を含む)で翻訳し、言語の多様性を感じる活動 候補)『ちがうねん』(クレヨンハウス)
④多文化の内容を加え、文化の多様性に触れる活動 候補)『ねないこだれだ』(福音館書店)
日本語教員は、日本語の特異性、言語的多様性、文化的多様性への気づきを促すことに 配慮し活動をデザインし、目的に合っていると判断した絵本を選定している。例えば、日 本語に特徴的なオノマトペを取りあげることにより、留学生にとっては日本語の特異性を 学び、国内学生にとっては母語である日本語を客体化する機会となるよう配慮した。「こ とば」に内在する音や身体性、文化性といった特性を持つ、直感的、感性的表現であると いうオノマトペの特徴により、翻訳時に国内学生と留学生との間に生まれる対話では主体 的な言語使用が意識化されることが期待できると考えたためである。
ここでは、留学生に対する日本語教育(言語、異文化理解に関する知識や技能)を軸と して、留学生だけでなく、国内学生や園児にとっても学びとなる内容を選定しようという 態度が見て取れる。幼年教育に関する知識、日本語を母語とする者にとっての学びについ ては、日本語教員にとっては異分野の領域ではあるものの、自らの専門性との接点を探ろ うとしていると言える(2)。
2)学生間の認知的、言語的非対称性の調整
交流の準備にあたる国内学生と留学生の合同授業(【⑤】)は、計2回行った。第1回合 同授業では絵本の読み聞かせに使用する『ねないこだれだ』(3)のストーリーを確認し、ど の部分に多文化の内容を加えるかを相談した結果、ストーリー終盤のおばけが登場する部 分を各国の怖いもの(妖怪やおばけ)に変更することとなった。さらに事前に準備してき た「自国の怖いもの(妖怪やおばけ)」を国内学生と留学生がペアで紹介しあい、全体で 共有したあと多文化絵本の内容に加える妖怪やおばけを選定した。第2回では追加する部
- 5 -
メールにて交流日の調整 幼稚園教員⇔日本語教員
11月9日 幼稚園教諭、幼年教育教員、日本語教員の3者 幼稚園教員⇔幼年教育教員 の顔合わせ、交流目的と交流内容の相談【③】 ⇔日本語教員
11月18日 日本語教員と幼年教育学生の打ち合わせ【④】 日本語教員⇔幼年教育学生
11月30日 日本語教員、幼年教育学生と留学生による活動 日本語教員⇔幼年教育学生 12月7日 準備の合同授業(計2回)【⑤】 ⇔留学生
12月9日 交流実施(幼年教育教員、日本語教員参観)【⑥】
12月10日〜 振り返り、幼稚園教諭、幼年教育学生、留学生、 日本語教員←幼稚園教諭・
幼年教育教員、日本語教員が振り返りを交換 幼年教育学生・留学生
【⑦】
表2 実践の計画と実行の流れ
表2に示すように、交流は、上記教員3者間の話し合い→幼年教育学生と日本語教員の 話し合い→留学生と幼年教育学生(+日本語教員)による準備のための合同授業(計2回)を 経て、交流当日を迎えた。その中で日本語教員は幼年教育交流の目的や活動内容を主導的 に提案し(【②】【③】)、協働する異分野の他者との間で「プログラム・コーディネーター」
としての役割を果たしていると言える。また、日本語教員は言語学習や異文化理解に関す る専門知識を生かし、異文化接触や国際理解教育に不慣れな国内学生に対して活動内容の 計画に関する助言を行ったり(【④】)、言語能力的に非対称な国内学生と留学生に対する 認知的・言語的な助言、円滑な協働的相互活動の実現のために双方の意図の代弁をしたり
(【⑤】)といった「授業担当教師」としての役割も果たしていた。
次節では、幼稚園教諭、幼年教育学生、留学生の振り返りの記述や共同体参加者同士の やりとり(主にメール文)を元にそこでの日本語教員の役割を詳細に考察する。
3.2 計画・実行における日本語教員の役割 3.2.1 授業担当教師としての役割
1)日本語・異文化理解に関する知識に基づいた活動のデザイン
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交流では幼年教育で日常的に行われている絵本の読み聞かせを行うこととしたが、絵本 は日本語で書かれたものをベースに多文化・多言語の内容を加えてアレンジすることとし た。活動内容や絵本の選定などの大枠については、活動実施までの時間的制限や国内学生 の参加制限等の問題があり、日本語教員が起案し、幼年教育教員、幼稚園教諭との相談の 上で決定した。日本語教員が【③】の場で絵本の読み聞かせの活動として提案した案と素 材は以下のようなものである。
①あいさつを使った活動
候補)『こんにちは』(理論社)・『ありがとう』(理論社)
②オノマトペを各国語で表現した絵本を聞き比べる活動
候補)『あめぽぽぽ』(くもん出版)・『だるまさんと』(ブロンズ新社)、『とんとんどんどん』(P HP研究所)・『どうぶついろいろかくれんぼ』(ポプラ社)、『だーれかなだーれかな』(童心社)
③多様な言語(方言を含む)で翻訳し、言語の多様性を感じる活動 候補)『ちがうねん』(クレヨンハウス)
④多文化の内容を加え、文化の多様性に触れる活動 候補)『ねないこだれだ』(福音館書店)
日本語教員は、日本語の特異性、言語的多様性、文化的多様性への気づきを促すことに 配慮し活動をデザインし、目的に合っていると判断した絵本を選定している。例えば、日 本語に特徴的なオノマトペを取りあげることにより、留学生にとっては日本語の特異性を 学び、国内学生にとっては母語である日本語を客体化する機会となるよう配慮した。「こ とば」に内在する音や身体性、文化性といった特性を持つ、直感的、感性的表現であると いうオノマトペの特徴により、翻訳時に国内学生と留学生との間に生まれる対話では主体 的な言語使用が意識化されることが期待できると考えたためである。
ここでは、留学生に対する日本語教育(言語、異文化理解に関する知識や技能)を軸と して、留学生だけでなく、国内学生や園児にとっても学びとなる内容を選定しようという 態度が見て取れる。幼年教育に関する知識、日本語を母語とする者にとっての学びについ ては、日本語教員にとっては異分野の領域ではあるものの、自らの専門性との接点を探ろ うとしていると言える(2)。
2)学生間の認知的、言語的非対称性の調整
交流の準備にあたる国内学生と留学生の合同授業(【⑤】)は、計2回行った。第1回合 同授業では絵本の読み聞かせに使用する『ねないこだれだ』(3)のストーリーを確認し、ど の部分に多文化の内容を加えるかを相談した結果、ストーリー終盤のおばけが登場する部 分を各国の怖いもの(妖怪やおばけ)に変更することとなった。さらに事前に準備してき た「自国の怖いもの(妖怪やおばけ)」を国内学生と留学生がペアで紹介しあい、全体で 共有したあと多文化絵本の内容に加える妖怪やおばけを選定した。第2回では追加する部
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メールにて交流日の調整 幼稚園教員⇔日本語教員
11月9日 幼稚園教諭、幼年教育教員、日本語教員の3者 幼稚園教員⇔幼年教育教員 の顔合わせ、交流目的と交流内容の相談【③】 ⇔日本語教員
11月18日 日本語教員と幼年教育学生の打ち合わせ【④】 日本語教員⇔幼年教育学生
11月30日 日本語教員、幼年教育学生と留学生による活動 日本語教員⇔幼年教育学生 12月7日 準備の合同授業(計2回)【⑤】 ⇔留学生
12月9日 交流実施(幼年教育教員、日本語教員参観)【⑥】
12月10日〜 振り返り、幼稚園教諭、幼年教育学生、留学生、 日本語教員←幼稚園教諭・
幼年教育教員、日本語教員が振り返りを交換 幼年教育学生・留学生
【⑦】
表2 実践の計画と実行の流れ
表2に示すように、交流は、上記教員3者間の話し合い→幼年教育学生と日本語教員の 話し合い→留学生と幼年教育学生(+日本語教員)による準備のための合同授業(計2回)を 経て、交流当日を迎えた。その中で日本語教員は幼年教育交流の目的や活動内容を主導的 に提案し(【②】【③】)、協働する異分野の他者との間で「プログラム・コーディネーター」
としての役割を果たしていると言える。また、日本語教員は言語学習や異文化理解に関す る専門知識を生かし、異文化接触や国際理解教育に不慣れな国内学生に対して活動内容の 計画に関する助言を行ったり(【④】)、言語能力的に非対称な国内学生と留学生に対する 認知的・言語的な助言、円滑な協働的相互活動の実現のために双方の意図の代弁をしたり
(【⑤】)といった「授業担当教師」としての役割も果たしていた。
次節では、幼稚園教諭、幼年教育学生、留学生の振り返りの記述や共同体参加者同士の やりとり(主にメール文)を元にそこでの日本語教員の役割を詳細に考察する。
3.2 計画・実行における日本語教員の役割 3.2.1 授業担当教師としての役割
1)日本語・異文化理解に関する知識に基づいた活動のデザイン
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かえを促した。そして「丸くする」という表現が出たのを確認し、「背中を丸くする」と 再度確認を行った(4)。後者の例では、日本語教員が外国語としての日本語習得の難度に 関する知識に基づいて学生間の言語的非対称性を認識し、学生間でそれを調整するための 仲介役を務めたと言える。この教員の介入行動によって国内学生は日本語を客体化する きっかけを得たと期待できる。その後、国内学生から「くくくで引きづり込んて、土の中 に食べちゃう」の部分に対する違和感が提示されるが、その要因については説明すること ができなかった。日本語教員はこの部分の違和感の要因が「引きづり込む」「食べちゃう」
の視点が他の部分(他の留学生の作品を含む)と統一されていないことだと認識し、作品 Aのほかの部分や既に修正が完了している他の留学生の作品の当該部分と比較するよう促 している(5)。話し合いの結果、作品ごとに視点の不統一があっても問題ないという結論 に至り、作品Aについては(10)のように修正された。ここでは日本語教員の言語面の専門 知識に基づいた行動が参加者間の協働的相互活動の実現に寄与していると思われる。
3.2.2 プログラム・コーディネーターとしての役割 1)学びの共同体の構築
本実践では、「(留学生に)5歳園児を対象に、歌や触れ合い遊び、クイズなどをしても らう企画をお願いしたい(メール文より)」という幼稚園側の要望が幼年教育教員から日 本語教員に伝えられた。そこで、まずは幼年教育教員と日本語教員の2者で協働の意思確 認と目的の摺り合わせにおいて、日本語教員から、幼稚園への留学生派遣の依頼に対して 以下の考えを伝えた。
(1)留学生教育における学びが幼稚園側にも意識化された中で依頼を受ける方針である こと
(2)留学生が一方的に「異文化」に関する情報を紹介する活動に終始した場合「外国人 対日本人」という二項対立の構図がかえって強調されるという懸念があること
(3)大学組織間の連携で依頼を受ける場合、幼稚園側、留学生教育に加えて、大学教育 への貢献も視野に入れるべきであること
上記3点からは、日本語教員が園児だけでなく、留学生にとっての学びを顕在化させた 形での協働を実現しようとしていたことが分かる。また、附属園での本実践に国内学生を 巻き込み大学教育の中に位置づけることで、附属園と大学教育、留学生教育の連携による 学びの共同体を構築しようとしていたと言える。このような日本語教員の役割意識の根底 には、前述したような大学内での留学生教育の位置づけの不安定さへの危惧と、大学のグ ローバル志向に伴って拡大する日本語教員の役割意識や期待があると思われる。
2)共同体参加者の対等性への意識付け
日本語教員は、交流の計画にあたって、幼稚園教諭、幼年教育教員との間の交流目的を
- 7 -
分(第1回で選定された留学生の作品)をクラス全員で推敲し、多文化絵本を完成させた。
この計2回の合同授業は国内学生の言語的制限を考慮してすべて日本語で行われた。その 結果、留学生にとっては外国語、国内学生にとっては母語を使用した活動となり、両者の 間に言語的非対称性が生まれることとなった。また、幼年教育を専攻し既に幼稚園での実 習経験のある国内学生と、日本の幼年教育について十分な文化的・専門的知識を有してい ない留学生の間には認知的非対称性も存在することが予想された。そこで、合同授業にお いては、日本語教員は両者への働きかけや助言などの介入行動によって言語的、認知的非 対称性を調整する役割を担っていた。
図1-1は留学生が合同授業前に自身で書いた作品、図1-2は国内学生との合同授業での やりとりを踏まえて修正したあとの作品である。
図1-1 留学生による作品A 図1-2 合同授業後の作品A 日本語教員は、留学生を含めたクラス全体で作品Aの修正のためのやりとりを行った。
この活動では、まず留学生から助詞等の文法の間違いに関する修正箇所((1)(2))が指 摘され、留学生、国内学生が口々に修正案を提示した((6)(7))。その後、国内学生か ら「暗闇(3)」という表現について「5歳児には分からないかもしれない」という懸念が示 される。それに対して国内学生が中心となって「くらーいところ(8)」に修正することを 決定した。一方、別の国内学生からは「猫背」という表現についても同様の懸念が発言さ れた。日本語教員は、留学生の中に意味を理解していない者がいると判断し、「猫背」の 意味を説明するよう求め、数名の学生がジェスチャーによってそれを説明した。それに対 し日本語教員は自らが日本語表現を提示することはせず、「背中を…」と日本語での言い
ルーマニアのこわいもの
ルーマニアに
(1)
寝ない子はBaba Cloautaから 食べちゃう(2)
ぞ!Baba Cloauta暗闇
(3)
から現れる。その姿は猫背で
(4)
鷹のような長い爪 大きな歯を持ち、
そして暗闇
(3)
で見える目で、寝ない子を探している。
寝ない子は誰?
見つけた~
くくくで引きづり込んて、土の中に食べちゃう
(5)
!私の国、ルーマニアで
(6)
は寝ない 子はBaba Cloautaに食べられちゃう(7)
ぞ!Baba Cloautaはくらーいところ
(8)
に現れる。その姿は、
背中を丸めて
(9)
たかのような長い爪 大きな歯を持ち、
そして暗いところ
(8)
も見える目で、寝ない子を探している。
寝ない子は誰?
見つけた~
土の中に引きづり込まれろ
(10)
!- 8 -
かえを促した。そして「丸くする」という表現が出たのを確認し、「背中を丸くする」と 再度確認を行った(4)。後者の例では、日本語教員が外国語としての日本語習得の難度に 関する知識に基づいて学生間の言語的非対称性を認識し、学生間でそれを調整するための 仲介役を務めたと言える。この教員の介入行動によって国内学生は日本語を客体化する きっかけを得たと期待できる。その後、国内学生から「くくくで引きづり込んて、土の中 に食べちゃう」の部分に対する違和感が提示されるが、その要因については説明すること ができなかった。日本語教員はこの部分の違和感の要因が「引きづり込む」「食べちゃう」
の視点が他の部分(他の留学生の作品を含む)と統一されていないことだと認識し、作品 Aのほかの部分や既に修正が完了している他の留学生の作品の当該部分と比較するよう促 している(5)。話し合いの結果、作品ごとに視点の不統一があっても問題ないという結論 に至り、作品Aについては(10)のように修正された。ここでは日本語教員の言語面の専門 知識に基づいた行動が参加者間の協働的相互活動の実現に寄与していると思われる。
3.2.2 プログラム・コーディネーターとしての役割 1)学びの共同体の構築
本実践では、「(留学生に)5歳園児を対象に、歌や触れ合い遊び、クイズなどをしても らう企画をお願いしたい(メール文より)」という幼稚園側の要望が幼年教育教員から日 本語教員に伝えられた。そこで、まずは幼年教育教員と日本語教員の2者で協働の意思確 認と目的の摺り合わせにおいて、日本語教員から、幼稚園への留学生派遣の依頼に対して 以下の考えを伝えた。
(1)留学生教育における学びが幼稚園側にも意識化された中で依頼を受ける方針である こと
(2)留学生が一方的に「異文化」に関する情報を紹介する活動に終始した場合「外国人 対日本人」という二項対立の構図がかえって強調されるという懸念があること
(3)大学組織間の連携で依頼を受ける場合、幼稚園側、留学生教育に加えて、大学教育 への貢献も視野に入れるべきであること
上記3点からは、日本語教員が園児だけでなく、留学生にとっての学びを顕在化させた 形での協働を実現しようとしていたことが分かる。また、附属園での本実践に国内学生を 巻き込み大学教育の中に位置づけることで、附属園と大学教育、留学生教育の連携による 学びの共同体を構築しようとしていたと言える。このような日本語教員の役割意識の根底 には、前述したような大学内での留学生教育の位置づけの不安定さへの危惧と、大学のグ ローバル志向に伴って拡大する日本語教員の役割意識や期待があると思われる。
2)共同体参加者の対等性への意識付け
日本語教員は、交流の計画にあたって、幼稚園教諭、幼年教育教員との間の交流目的を
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分(第1回で選定された留学生の作品)をクラス全員で推敲し、多文化絵本を完成させた。
この計2回の合同授業は国内学生の言語的制限を考慮してすべて日本語で行われた。その 結果、留学生にとっては外国語、国内学生にとっては母語を使用した活動となり、両者の 間に言語的非対称性が生まれることとなった。また、幼年教育を専攻し既に幼稚園での実 習経験のある国内学生と、日本の幼年教育について十分な文化的・専門的知識を有してい ない留学生の間には認知的非対称性も存在することが予想された。そこで、合同授業にお いては、日本語教員は両者への働きかけや助言などの介入行動によって言語的、認知的非 対称性を調整する役割を担っていた。
図1-1は留学生が合同授業前に自身で書いた作品、図1-2は国内学生との合同授業での やりとりを踏まえて修正したあとの作品である。
図1-1 留学生による作品A 図1-2 合同授業後の作品A 日本語教員は、留学生を含めたクラス全体で作品Aの修正のためのやりとりを行った。
この活動では、まず留学生から助詞等の文法の間違いに関する修正箇所((1)(2))が指 摘され、留学生、国内学生が口々に修正案を提示した((6)(7))。その後、国内学生か ら「暗闇(3)」という表現について「5歳児には分からないかもしれない」という懸念が示 される。それに対して国内学生が中心となって「くらーいところ(8)」に修正することを 決定した。一方、別の国内学生からは「猫背」という表現についても同様の懸念が発言さ れた。日本語教員は、留学生の中に意味を理解していない者がいると判断し、「猫背」の 意味を説明するよう求め、数名の学生がジェスチャーによってそれを説明した。それに対 し日本語教員は自らが日本語表現を提示することはせず、「背中を…」と日本語での言い
ルーマニアのこわいもの
ルーマニアに
(1)
寝ない子はBaba Cloautaから 食べちゃう(2)
ぞ!Baba Cloauta暗闇
(3)
から現れる。その姿は猫背で
(4)
鷹のような長い爪 大きな歯を持ち、
そして暗闇
(3)
で見える目で、寝ない子を探している。
寝ない子は誰?
見つけた~
くくくで引きづり込んて、土の中に食べちゃう
(5)
!私の国、ルーマニアで
(6)
は寝ない 子はBaba Cloautaに食べられちゃう(7)
ぞ!Baba Cloautaはくらーいところ
(8)
に現れる。その姿は、
背中を丸めて
(9)
たかのような長い爪 大きな歯を持ち、
そして暗いところ
(8)
も見える目で、寝ない子を探している。
寝ない子は誰?
見つけた~
土の中に引きづり込まれろ
(10)
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字の理解は困難である」旨の指摘があった。このような両者の専門性に基づく意見交換の 場もまた、お互いのリソースを活用した協働的相互活動であったと言える。
4.幼年教育分野との協働における日本語教員の役割
最後に、共同体参加者である留学生、幼年教育学生、幼稚園教諭からのコメントを一部 引用し、本実践の課題を指摘し、そこから浮き彫りになった日本語教員の役割について述 べる。
今回の実践は、留学生の多くにとっても国内学生との協働、幼稚園児との接触といった 未知の体験を含む内容であったが、異なる世代、異なる分野の人との日本語による協働的 相互活動を通じて、日本語能力を自己評価し、他者との助け合いによる学びを実感するこ とができていた。
・手遊びを説明するときにはある言葉を初めに忘れたが、パートナーのHさんに助けても らって大丈夫でした。
・話はできたが、きんちょうしている時に身振りを使いすぎるということが分かりました。
幼年教育学生の振り返りコメントには本実践を異文化体験や母語・自文化の客体化の機 会と肯定的に捉える内容が多く見られた。
・「手をそろえる」を「手をくっつける」に変更したほうが子どもにはわかりやすいと思 い
(筆者注:留学生に)アドバイスしたところ、「くっつける」の意味が分からないと 言われたことに驚いた。(自分の中では後者の方が分かりやすいと思っていたため)
・各国でそれぞれこわがられている存在が異なっていて、いろんなこわいものが知れたの はとても面白かったです。
また自身の異文化接触の体験に幼年教育という専門性に関わる視点が加わったことや、
園児の異文化理解の様子を目の当たりにしたことでさらに幼児への理解といった専門性が 深まったという肯定的な評価もあった。
・これまでの4年間で留学生と関わる機会があまりなかったので、一緒に子どもたちのた めの遊びを考えるなどの活動ができたことはよい経験でした。外国の手遊びについては 私はまったく知らなかったので留学生に教えてもらいながら、それを子どもたちにわか りやすく伝える為にはどうするべきかを考えるのは面白かったです。
・留学生の方の自己紹介のときに、地図を見ながら子どもたちが「近い!遠い!」などと 盛り上がっているところを見て、日本と他の国の位置関係や距離を感じ取ってくれたん だなと分かったのが興味深かった。
しかし一方で、本実践において共同体参加者(国内学生と留学生)の対等性や交流での
- 9 -
確認し、自身の考えを伝えることで方向性のずれを修正しようと試みていた。幼稚園教諭 が日本語教員に対して送った依頼メール(【②】)では「園児にとっては、外国の方と触れ 合う経験はなかなかないので、簡単な挨拶や言葉を教えてもらったり、歌を歌ってもらっ たり、質問に答えてもらったりするだけでも貴重な時間となる」という園側の要望が伝え られている。ここからは幼稚園教諭に交流における留学生側の学びという視点が欠如して おり、留学生を国際理解教育(異文化理解)のインフォーマントと捉えていることが想像 できる。しかしその後、3者の打ち合わせ(【③】)で日本語教員から上記(1)〜(3)
の考えを聞き、打ち合わせ後、幼稚園教諭は「『外国人と日本人という二項対立を超え』
という意味や思いを聞かせていただき、留学生との交流をさせてもらいたいと、漠然と思っ ていたことが、先生のお話を伺うことで、何のためにするのかということが、幼稚園の中 でも明確になった気が」したと伝えている。そして、交流のイベント名を「世界の人と遊 ぼう」または「世界の人たちと友達になろう」としてはどうかと提案するに至った。つま り、【③】の打ち合わせによって、「外国人対日本人」という二項対立への懸念や留学生の 学びという意識の欠如に気づき、園児と留学生がともに学ぶ、協働的相互活動という意識 を共有することで両者の間で交流の目的が一致したと言える。このような幼稚園教諭の意 識の変化は、日本語教員の働きかけによるものと思われる。しかし共同体参加者の対等性 に関する意識付けについては課題も残った。詳細は4で述べる。
3)異分野教員間の専門性の共有
本実践の大きな特徴は幼年教育と日本語教育という異分野の協働であるという点である が、前述の3.2.1の2)で紹介した事例は、合同授業において、幼年教育の知識を有 する国内学生は自身の専門性に基づいて、留学生は自国の文化的事象に関する知識に基づ いて活動に参加していたことを示している。つまり異なる他者同士の学びの共同体におい てそれぞれが自身のもつリソースを最大限に活用し、参加者間の協働的相互活動の実現に 寄与していたと言える。
一方、幼年教育を専門とする幼年教育教員、幼稚園教諭と日本語教育を専門とする日本 語教員もそれぞれの専門性に基づいて協働を実現していた。日本語教員が留学生の学び、
国内学生の学び、さらに大学教育に対する貢献を意識して提案した「留学生と国内学生が 協働で日本語の絵本を翻訳し、それを読み聞かせる」という活動案に対し、幼稚園教諭、
幼年教育教員がそれぞれ園児、幼年教育学生の学びの視点から意見を出し合った。例えば、
日本語教員の提示したオノマトペを多用した絵本には細やかな状況や情緒の理解を伴う擬 態語(例えば雨の降る様子を表す「しとしと」など)が含まれていたが、幼稚園教諭から は「動作で示して理解できる類のオノマトペのほうがよい」との意見があった。また、日 本語教員がこれまでの小学校や中学校での交流経験を生かして、各国のあいさつをカタカ ナで表示したカードを用いたクイズを提案したところ、幼稚園教諭からは「5歳児には文
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字の理解は困難である」旨の指摘があった。このような両者の専門性に基づく意見交換の 場もまた、お互いのリソースを活用した協働的相互活動であったと言える。
4.幼年教育分野との協働における日本語教員の役割
最後に、共同体参加者である留学生、幼年教育学生、幼稚園教諭からのコメントを一部 引用し、本実践の課題を指摘し、そこから浮き彫りになった日本語教員の役割について述 べる。
今回の実践は、留学生の多くにとっても国内学生との協働、幼稚園児との接触といった 未知の体験を含む内容であったが、異なる世代、異なる分野の人との日本語による協働的 相互活動を通じて、日本語能力を自己評価し、他者との助け合いによる学びを実感するこ とができていた。
・手遊びを説明するときにはある言葉を初めに忘れたが、パートナーのHさんに助けても らって大丈夫でした。
・話はできたが、きんちょうしている時に身振りを使いすぎるということが分かりました。
幼年教育学生の振り返りコメントには本実践を異文化体験や母語・自文化の客体化の機 会と肯定的に捉える内容が多く見られた。
・「手をそろえる」を「手をくっつける」に変更したほうが子どもにはわかりやすいと思 い
(筆者注:留学生に)アドバイスしたところ、「くっつける」の意味が分からないと 言われたことに驚いた。(自分の中では後者の方が分かりやすいと思っていたため)
・各国でそれぞれこわがられている存在が異なっていて、いろんなこわいものが知れたの はとても面白かったです。
また自身の異文化接触の体験に幼年教育という専門性に関わる視点が加わったことや、
園児の異文化理解の様子を目の当たりにしたことでさらに幼児への理解といった専門性が 深まったという肯定的な評価もあった。
・これまでの4年間で留学生と関わる機会があまりなかったので、一緒に子どもたちのた めの遊びを考えるなどの活動ができたことはよい経験でした。外国の手遊びについては 私はまったく知らなかったので留学生に教えてもらいながら、それを子どもたちにわか りやすく伝える為にはどうするべきかを考えるのは面白かったです。
・留学生の方の自己紹介のときに、地図を見ながら子どもたちが「近い!遠い!」などと 盛り上がっているところを見て、日本と他の国の位置関係や距離を感じ取ってくれたん だなと分かったのが興味深かった。
しかし一方で、本実践において共同体参加者(国内学生と留学生)の対等性や交流での
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確認し、自身の考えを伝えることで方向性のずれを修正しようと試みていた。幼稚園教諭 が日本語教員に対して送った依頼メール(【②】)では「園児にとっては、外国の方と触れ 合う経験はなかなかないので、簡単な挨拶や言葉を教えてもらったり、歌を歌ってもらっ たり、質問に答えてもらったりするだけでも貴重な時間となる」という園側の要望が伝え られている。ここからは幼稚園教諭に交流における留学生側の学びという視点が欠如して おり、留学生を国際理解教育(異文化理解)のインフォーマントと捉えていることが想像 できる。しかしその後、3者の打ち合わせ(【③】)で日本語教員から上記(1)〜(3)
の考えを聞き、打ち合わせ後、幼稚園教諭は「『外国人と日本人という二項対立を超え』
という意味や思いを聞かせていただき、留学生との交流をさせてもらいたいと、漠然と思っ ていたことが、先生のお話を伺うことで、何のためにするのかということが、幼稚園の中 でも明確になった気が」したと伝えている。そして、交流のイベント名を「世界の人と遊 ぼう」または「世界の人たちと友達になろう」としてはどうかと提案するに至った。つま り、【③】の打ち合わせによって、「外国人対日本人」という二項対立への懸念や留学生の 学びという意識の欠如に気づき、園児と留学生がともに学ぶ、協働的相互活動という意識 を共有することで両者の間で交流の目的が一致したと言える。このような幼稚園教諭の意 識の変化は、日本語教員の働きかけによるものと思われる。しかし共同体参加者の対等性 に関する意識付けについては課題も残った。詳細は4で述べる。
3)異分野教員間の専門性の共有
本実践の大きな特徴は幼年教育と日本語教育という異分野の協働であるという点である が、前述の3.2.1の2)で紹介した事例は、合同授業において、幼年教育の知識を有 する国内学生は自身の専門性に基づいて、留学生は自国の文化的事象に関する知識に基づ いて活動に参加していたことを示している。つまり異なる他者同士の学びの共同体におい てそれぞれが自身のもつリソースを最大限に活用し、参加者間の協働的相互活動の実現に 寄与していたと言える。
一方、幼年教育を専門とする幼年教育教員、幼稚園教諭と日本語教育を専門とする日本 語教員もそれぞれの専門性に基づいて協働を実現していた。日本語教員が留学生の学び、
国内学生の学び、さらに大学教育に対する貢献を意識して提案した「留学生と国内学生が 協働で日本語の絵本を翻訳し、それを読み聞かせる」という活動案に対し、幼稚園教諭、
幼年教育教員がそれぞれ園児、幼年教育学生の学びの視点から意見を出し合った。例えば、
日本語教員の提示したオノマトペを多用した絵本には細やかな状況や情緒の理解を伴う擬 態語(例えば雨の降る様子を表す「しとしと」など)が含まれていたが、幼稚園教諭から は「動作で示して理解できる類のオノマトペのほうがよい」との意見があった。また、日 本語教員がこれまでの小学校や中学校での交流経験を生かして、各国のあいさつをカタカ ナで表示したカードを用いたクイズを提案したところ、幼稚園教諭からは「5歳児には文
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教員および幼稚園教諭、日本語教員がさらに自身の専門性を共有しあい、支えあうことで 解決できると思われる。教育改革の鍵として教師の「同僚性」の重要性が強く認識されて きている。「同僚性」とは近年、学校教育等さまざまな分野で重視されてきている概念で
「同僚性」=「支えあう同僚との関係」と定義される(石田2011)。主として同じ分野、
領域における同僚間について言及されることが多いが、本実践のような異分野の同僚間の 支えあいもまた、佐藤(2010)が指摘するように、教師が「絶えず自らの実践を反省し、
専門家として学び続ける」ための「力量形成の機能を持(p.179)」っていると言える。
グローバル化が進む社会の変化の中で日本語教員の役割も変化が求められており、その 変化に対応する中で、日本語教育の専門家であるという本来の役割が軽視されることに対 する危惧がもたれるという指摘も多い。しかし一方で、今後ますます必要性が増してくる と思われる異分野との協働においても自らの専門性をリソースとして利用しながら役割を 果たしていく姿勢が求められていると言えよう。
参考文献
石田 真理子(2011)「教育リーダーシップにおける「同僚性」の理論とその実践的意義」
『東北大学大学院教育学研究科研究年報』第60巻第1号,pp. 419-436.
岡崎眸「多言語・多文化共生社会を切り開く日本語教育」『大学日本語教員養成課程において必要 とされる新たな教育内容と方法に関する調査研究報告書』,pp.161-186
金田智子(2009)「日本語教師の育成および成長支援のあり方―「成長」にかかわる調査研究の 推進を目指して―」水谷修監修『日本語教育の過去・現在・未来 第2巻 教師』凡人社,p p.42-63
倉地曉美(2016)「大学のグローバル化が日本語教育プログラムと教員の立ち位置に及ぼす影響」
『広島大学日本語教育研究』26号, pp.1-7 佐藤 学(2010)『教育の方法』放送大学叢書
西口光一(2001)「第4章 状況的学習論の視点」青木直子・尾崎明人・土岐哲編『日本語教育 学を学ぶ人のために』世界思想社,pp.105-119
日本語教育推進調査会(1976)「日本語教員に必要な資質・能力とその向上策について―日本語 教育推進対策調査会報告―」(文化庁文化部国語課(1983)『外国人に対する日本語教育の振 興に関する報告』所収)
ヴィゴツキー,L.S.(1962)『思考と言語』柴田義松訳,明治図書出版(原著出版:1930-31)
松尾知明(2015)『21世紀型スキルとは何か―コンピテンシーに基づく教育改革の国際比較』明 石書店
宮島良子・衣川隆生・金村久美・佐藤綾(2016)「日本語教育の社会実装に向けた日本語教員の 役割―多分野との連携事例から見えてくること―」『2016年度日本語教育学会秋季大会予稿
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国内学生の位置づけへの配慮が欠如していたことを指摘する否定的なコメントもあった。
・先生は事前打ち合わせ
(筆者注:日本語教員と幼年学生との打ち合わせ【④】)のとき
「留学生は翻訳の機械じゃない」と言ったけど、交流会のとき日本人学生は司会をやら されて機械のように扱われている感じがした
・留学生が主体的に参加するという点では今回のやり方が適切だと思います。ですが、幼 年教育に携わる身としては、子ども相手にする活動なら子どもに合わせたものがしたい と思ってしまいます。
幼稚園教諭からも本交流が園児にとって貴重な体験となったことを肯定的に評価する コメントがあった。しかし一方で、「幼稚園の子どもたち側に立った意見」として今後 の課題も挙げられた。
・それぞれが自己紹介で自分の国の場所を地図で示してもらったのは、わかりやすくて良 かった。あいさつを教えてもらえたのも嬉しかった。(なかなか覚えられなかったけど
…)
日本語で挨拶してくれたけど、それぞれの言葉でもしゃべってほしかった。(全然わか らない言葉があることを知ると、それが異文化であることをより感じるのではないだろ うか)
・絵本は、大きく映してくれたので、見やすかった。日本語だけでなく、それぞれの言葉 で読んでもらうのがあってもよかった。こわいもののインパクトが一番大きかったかも。
・子どもたちの声では、最後にグループで分かれて行った手遊びが一番楽しかったよう だった。リラックスして触れ合えたのが良かったのだと思う。ただ、全員が同じ経験を していないので、その後クラスみんなで繰り返し手遊び等で遊ぶことができないのが残 念。全員で教えてもらう手遊びや歌などがあったら、良かった。
5 まとめ―異分野間の同僚性の構築と日本語教員の役割―
以上、学校教育の国際理解教育での異分野間の協働実践において大学の日本語教員であ る筆者がどのような役割を担おうとしていたかについて、共同体参加者の振り返りや活動 メモをもとに考察した。その結果、日本語教員が、日本語・異文化理解に関する専門知識 に基づいて活動のデザインをし、日本語教授者としての経験に基づいて学生間の認知的、
言語的非対称性の調整を行うといった授業担当教師としての役割を果たしていることが明 らかとなった。また、幼年教育という異分野の参加者間の学びの共同体の構築、参加者の 対等性への意識付け、異分野教員間の専門性の共有を行い、協働的相互活動を実現するた めプログラム・コーディネーターとしての役割も積極的に果たそうとしていたことがわ かった。
4に挙げた協働参与者からのコメントのうち否定的な内容のものについては、幼年教育