博士(獣医学)今野明弘 学位論文題名
哺 乳動 物 の globule leukocyte の由来に 関する免疫組織化学的研究
学位論文内容の要旨
グッ歯日動物からマウスを、食肉目動物からネコを、そして反芻亜目 動物 から ヤ ギを 供試 動 物と して選択し、哺 乳動物における
globule 1cukocytc (GL)の由来細胞種を確定すべく、組織化学的、免疫組織化学 的、および一部電子顕微鏡的手法によって研究した。本論文の内容を以 下に概説する。
1
. マ ウ ス の 胃 腸 管 に お け る
GLの 分 布 と 免 疫 組 織 化 学 的 性 状
健常マウスの前部小腸を定量組織学的に観察した結果、GL 、すなわち エオシン好性果賈粒を有する上皮内単核球は、絨毛部と陰窩部の両方に認 められた。アルシアン青好性およびヒスタミン免疫活性を示す上皮内肥 満細胞は陰窩部に限局し、残る絨毛部上皮内の単核球のほとんどはCD8 陽性を示した。これらの結果から、小腸絨毛部に分布する
GLのほとん どは
CD8陽性の
T細胞であり、陰窩部に分布するGL のほとんどは肥満細 胞であることが示唆された。
また胃体腺部の上皮内には多数のGL の浸潤が認められ、これらの細胞 はヒスタミンおよびセロトニン免疫活性を示した。さらに同部位の凍結 切片上では
CD8゛
T細胞は非常に少数であったことから、胃粘膜で認めら れ る
GLの ほ と ん ど は 肥 満 細 胞 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
電子顕微鏡的観察におぃても、小腸絨毛部上皮内には顛粒リンバ球 が 、 胃 体 腺 部 上 皮 内 に は 肥 満 細 胞 が 高 頻 度 に 観 察 さ れ た 。
以上の結果から、マウスの消化管上皮内に出現するGL は均質な細胞群 ではなく、顆粒含有
T細胞と肥満細胞からなる不均質な細胞群であり、
この不均質性がマウスおよびラットにおける
GLの由来細胞種に関する
意見の不一致を招いていたものと考えられた。
2
.ネコにおける
GLの全身分布と免疫組織化学的性状
健常 成熟 ネコに おい て、
GLは胃から大腸までの消化管、胆嚢、肝臓の 小薬問 胆管 、およ び膵 臓の小 薬問導管の上皮内に分布していたが、呼吸 器と妊 娠後 期の子 宮を 含む泌 尿生殖器の上皮内には認められなかった。
これ ら の 臓 器 に 分 布す る
GLの 顆粒 は、 上皮下 の肥 満細胞 と異 なり、 抗 バーフ ォリ ン抗体 に対 し陽性 反応を示し、抗ヒスタミン抗体には反応し なか っ た 。 こ れ ら の結 果 か ら 、ネ コ
GLは上皮 内顛 粒リン バ球 である 可 能性が 強く 示唆さ れた 。しか しな がらネ コの
Tリン バ球マ ーカ ーである
CD5、
CD4、
CD8はいずれも陰性であった。/ ヾ一
l・一フォリン様免疫活性を 示す 細 胞 は 、 胎 生 後期 の 胎 子 小腸 の上 皮内に も観 察され 、
GL、すな わ ち有顆粒リンノヾ球の小腸への定着は胎生期に起こることが示された。ネ コ
GLの 上皮 指向性 と顆 粒リン ノヾ球としての特徴は、マウスの腸管に分 布するy6T 細胞のそれらと類似していた。
3
. ヤ ギ に お け る
GLの 全 身 分 布 と 免 疫 組 織 化 学 的 性 状
健常 な成熟 ヤキ と6 ケ 月齢の 子ヤ キにお いて 、GL は 第四 胃から 大腸ま で の消 化管、 胆嚢 、肝臓 の小 薬聞胆管、気管支、および妊娠後期ならび に 分 娩 後
2日 の 子 宮 ( 成 熟 ヤギ ) の 上 皮 内 に 分 布し て い た 。 小 腸への
GLの 出 現 は 、 胎 生 後期 で は 認 め ら れ ず、
2日 齢 以後 か ら 認 め ら れた。
こ れ ら
GLは 、 上 皮下 の 肥 満 細胞と 異な り、ヒ スタ ミン免 疫活 性とべ ル オキ シダー ゼ反 応が陰 性で あった。またアルシアン青染色と酵素消化 法 によ って、
GLの 果頁粒 内に はコンドロイチン硫酸が、上皮下の肥満細 胞 の顆 粒内に はコ ンドロ イチ ナーゼ抵抗性硫酸ムコ多糖が含まれること が 示さ れた。
小腸 から単 離し た細胞 の塗 沫標本と、小腸の凍結切片による免疫染色
の 結 果 か ら 、
GLは
panyぶ
T細胞 マ 一 力 一 で あ る
TcRl‑N24が 陽 性 である
も の の 、 末 梢 血 中 の
yぶ
T細 胞 と 異 な り 、
WC1分 子 が 陰 性 で 、
CD8aが
陽 性 で あ る こ と が 証明 さ れ た 。小腸 にお ける
yぶ
T細 胞の出 現は 、GL が
確 認 さ れ な か っ た 胎 生 後 期 の 胎 子 に お い て も 観 察 さ れ た 。
以上 の結果 から 、GLt ま顆粒 含有
Yぶ
T細 胞で あり、 細胞 膜抗原 の性状
か ら 、 末 梢 血 中 の 循環
Yぶ
T細 胞とは 異な る細胞 群で あるこ とが 示され
た。さらに
GLの小腸への定着は胎生後期以前に起こり、GL の特徴であ る 大型細 胞質 内顛粒の形成は、周生期に始まることが示唆された。
上述のごとく、グッ歯目動物の
GLは顆粒リンバ球と肥満細胞からなる
不均質な細胞群であり、また食肉目および反芻亜目動物のGL は顆粒リ
ンバ球のみからなる均質な細胞群であることが明らかとなった。今後
は、
GLとぃう名称を避け、食肉目および反芻亜目動物では上皮内顛粒
リンバ球、グッ歯目動物では上皮内顆粒リンノヾ球または肥満細胞とする
正確な呼称が必要と考えられた。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
岩永敏彦 板倉智敏 小沼 操 橋本善春
学 位 論 文題 名
哺 乳動 物 の globule leukocyte の 由来に 関する免疫組織化学的研究
Globuleleukocyte (GL)は 鳥 綱 お よ び 哺 乳 綱 に 属 す る 動 物 の 粘 膜 上 皮 内 に 分 布 す る 、 エ オ シ ン 好 性 の 大 型 細 胞 質 内 顆 粒 を 有 す る 単 核 球 で あ る 。 本 細 胞 の 由 来 細 胞 種 に つ い て は 、 鳥 綱 で は 異 諭 な く り ン パ 球 説 が 受 け 入 れ ら れ て い る が 、 哺 乳 綱 で は り ン バ 球 説 と 肥 満 細 胞 説 に 意 見 が 分 か れ て い る 。 申 請 者 は 、 ゲ ッ 歯 目 動 物 か ら マ ウ ス を 、 食 肉 目 動 物 か ら ネ コ を 、 反 芻 亜 目 動 物 か ら ヤ ギ を 供 試 動 物 に 選 択 し 、 哺 乳 動 物 に お け るGLの 由 来 細 胞 種 を 決 定 す べ く 、 免 疫 組 織 化 学 的 手 法 を 中 心 と し た 形 態 学 的 研 究 を 行 っ た 。 健 常 成 熟 マ ウ ス の 前 部 小 腸 と 胃 体 腺 部 を 観 察 し た 結 果 、 ア ル シ ア ン 青 好 性 、 セ ロ ト ニ ン 陽 性 、 お よ び ヒ ス タ ミ ン 陽 性 の 肥 満 細 胞と 、CD(clus噺d丗ぱeロエi甜on姆Q陽性 の穎 粒 含 有T細 胞 の 二 種 類 のGLの 存 在 が 示 さ れ 、 マ ウ スGLの 不 均 質 性 が 明 ら か と な っ た 。 こ の 不 均 質 性 が 、 こ れ ま で ゲ ッ 歯 目 動 物 に お け るGLの 由 来 細 胞 種 に 関 す る 意 見 の 不 一 致 を 招 い て い た も の と 考 え ら れ た 。
健 常 成 熟 ネ コ に お い て 、GLは 胃 か ら 大 腸 ま で の 消 化 管 と 、 胆 道 お よ び 膵 臓 の 導 管 の 上 皮 内 に 分 布 し て い た 。 こ れ ら の 臓 器 に 分 布 す るGLは パ ー フ ォ リ ン 様 免 疫 活 性 を 示 し 、 か つ ヒ ス タ ミ ン が 陰 性 の こ と か ら 、 上 皮 内 顆 粒 リ ン バ 球 で あ る こ とカ ミ示 され た。
ネ コGLの 上 皮 指 向 性 と 顆 粒 リ ン バ 球 と し て の 特 徴 は 、 マ ウ ス の 腸 管 に 分 布 す るy6T 細 胞 の そ れ ら と 類 似 し て い た 。
健 常 成 熟 ヤ ギ に お い て 、GLは 第 四 胃 か ら 大 腸 ま で の 消 化 管 、 胆 道 、 気 管 支 、 お よ び 妊 娠 後 期 と 分 娩 後2日 の 子 宮 の 上 皮 内 に 分 布 し て い た 。 こ れ ら の 臓 器 に 分 布 す るGL は 、 ヒ ス タ ミ ン が 陰 性 で 、 ヤ ギ のp組yぶT細 胞 マ 一 力 一 で あ るTcR1一N24が 陽 性 で あ る こ と か ら 、 顆 粒 含 有y6T細 胞 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 し か し 上 皮 内yぶT細 胞 は 、 末 梢 血 中 のyぶT細 胞 と 異 な り 、WCl分 子 が 陰 性 で 、CD8Qが 陽 性 で あ り 、 組 織 定 着 性 の 細 胞 群 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。