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博士(理学)田中 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(理学)田中 学位論文題名

   Gelation of aqueous gellan solution as studied by ultrasonlc velocity, vlscoelasticity        and circular dichroism.

(超音波音速度、動的粘弾性、円偏光ニ色性を 用いたジェラン水溶液のゲル化に関する研究)

学 位論文内容の要旨

  

本学位論文は植物産生粘質物でゲル形成能を有するジェラン・ガムにっいてその水 溶液のゲル化を、高分子鎖の高次構造形成と巨視的な弾性発現との関係、弾性発現の 特 徴 付 け と い う 観 点 か ら 研 究 し た 結 果 に っ い て 記 述 し た も の で あ る 。

1

.本研究の目的と意義

  

本研究は@ジェラン水溶液のゲル化を観察する有効な手段のーっとして超音波音速 度の測定法を確立し、@ゲル化反応と音速の挙動との関係を明確にし、◎ゲル化過程 で の 水 溶 液 の 粘 弾 性 的 性 質 の 特 徴 付 け を お こ な う 事 を 目 的 と し た 。

  

超音波音速度によるゲル化の観察は、それを示唆する報告がありながらもこれまで 詳細に研究された例がない。本研究によりその実験的手法を確立し、さらに円偏光二 色性を測定した結果を考慮に入れて音速とゲル化とに関して分子鎖の水和という観点 から説明できることを示した。さらにゲル化が音速の挙動に影響を与える場合の条件 に つ い て 知 る た め に 、 希 薄 溶 液 の 体 積 挙 動 と 音 速 度 と を 調 べ た 。

  

また、ゲル化反応にともなう粘弾性の変化を追究し、ジェラン濃度と温度とに対応 して、複数のパターンの周波数分散があらわれる事を明らかにした。そのパターンの なかには従来知られている線形粘弾性の範囲では記述し切れないカ学的緩和現象があ り、本研究でその数学的記述法のーっを提案した。

‑ 239

(2)

2.ジェラン水溶液の音速測定(I)  ―第一竃

  ジェランは微生物産生の細胞外多糖類で繰り返し単位の中にカルボキシル基を一個 含む高分子電解質である。適当な条件で調製した水溶液は高温でゾル、低温でゲルに なる。当初、カリウム塩型ジェランを用いて実験を行った。このサンプルは90℃以上 の加熱により水に溶解し透明な溶液となる。水溶液の音速を測り、同時に落球法によ ルゾルーゲル転移を観察した。音速潤定の結粟、ゲル化にともなって音速は特異的に 減少することを見いだし、降温・昇温を通して音速を測ルヒステリシス・ループを得 た。一方、落球法から定めた水溶液のゲル化温度(Tb)は、音速の減少する温度(T。)

に比べてジェラン濃度に強く依存した。これはゲル化が分子間の凝集により起こると いう考え方と矛盾しないものである。

  以上の結果から音速を測る事によルジェラン水溶液のゾル状態とゲル状態とが明確 に区別される事がわかった。

3. ジ ェ ラ ン 水 溶 液 の 粘 弾 性 挙 動 : ゲ ル 化 に 及 ぼ す 濃 度 の 効 果 ― 第 二 章   カリウム塩型ジェランのゲル化について濃度の影響を調ぺるために動的粘弾性測定 をおこなった。測定結果から得た合成嵒線は、高濃度においてZener型の緩和を示し、

低渥度においては指数的な緩和を示した。また、粘弾性澗定の結果は第ー章で得られ たTbの濃度依存性を指示するものであった。

4. ジ ェ ラ ン 水 溶 液 の 音 速 測 定 (H) 、 円 偏 光 二 色 性 と の 関 係 ― 第 三 竃   次にナトリウム塩型ジェランを用いて実験を行った。このサンプルは冷水に容易に 溶けるものである。ゲル形成能と分子鎖の形態変化との関係の有無を調べるためにゲ ル化過程でC.D.スペクトルを洳定した。その結果、高温ではスペクトルは全く温度 依存性を示さないが、ある温度(Th)以下になると温度低下とともにスペクトルが変 化した。NaClを添加した水溶液においても同様の挙動を示した。塩添加した水溶液の Thは無塩系水溶液に比ベ高温であった。同じサンプルについて音速を測った結果、カ リウム塩型ジェランと同様にゲル化の前後で音速は特異的に減少した。降温・昇温を 繰り返して音速を測ったがヒステリシス独あらわれなかった。そして、Thの値はToと 良く一致した。

  以上の結果からジェラン分子鎖の無秩序なコイルから秩序だったへりックス構造ヘ

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の形態変 化に引き 続いてゲ ル形成が 起こる事 が明らかに なった。そして、音速の減少 は分子内 形態変化 に引き起 こされる ものであ る事が示唆 された。この結果はToのジェ ラン濃度依存性が小さIヽと`、う事実と矛盾しな`ヽ。形態変化と音速の減少とについて 分子鎖の 水和状態 の変化か ら説明で きる。ま たへりック ス形成誼塩添加により安定化 されることがわかった。

5. ジ ェ ラ ン 水 溶 液 の ゲ ル 化 過 程 に お け る 粘 弾 性 的 性 貫 の 特 徴 付 け 一 第 四 章   ナトリ ウム塩型 ジェラン水 溶液につ いて温度を変化させて動的粘弾性測定を行った。

低 温に お ぃて は 周波数に 依存しな ぃ貯蔵弾 性率(ゲル 弾性率) があらわ れ弾性固 体と し て振 る 舞っ た 。それよ りも高い 温度では 粘弾性に周 波数分散 があらわ れて粘弾 性固 体 と言 え る状 態 が認めら れ、低周 波数範囲 では平衡弾 性率もあ らわれた 。この状 態に お ける 周 波数 分 散 を特 徴 付け る パ ラメ ー タ ーと し て緩 和 周 波数 、 緩和 強 度、u0に お ける 損 失弾 性 率を得る 為に換算 コール・ コール・プ ロットを 行った。 プロット の結 果 、上 述 の周 波 数分散が コール・ コールの 円弧型緩和 に沿う事 がわかっ た。さら に高 い温度 になると 分散は円弧 型から外 れた。この時水溶液は臨界状態にあると恩われる。

さ らに 高 い温 度 では分散 は非対称 円弧型緩 和を示し、 従来の線 形粘弾性 では記述 でき な ぃ挙 動 であ っ た。この 挙動が拡 張指数型 の緩和関数 を用いて 得られる 計算値と 非常 に 良く 一 致す る 事を示し た。便宜 上この状 態を粘弾性 液体と名 付けると 、粘弾性 固体 状 態、 臨 界状 態 、粘弾性 液体状態 はそれぞ れ換算コー ル・コー ル・プロ ッ卜の高 周波 領 域に 明 確な 差 異がみら れた。こ れ以上高 い温度では 水溶液は 粘性液体 として振 る舞 い、定 常流粘性 率が求まっ た。

  以 上 、ジ ェ ラ ン水 溶 液 のゲ ル 化過 程 に おぃ ては粘弾 性的な観 点から5個 の安定し た 状態が 存在する 事が明らか になった 。

6. 希薄ジェ ラン水溶 液の密度 、粘度、音 速度一第 五竃

  第 四章で記 した実験 結果から 低濃度では 粘性が増 大してもゲル弾性率が現れなぃこ と が示され た。この 時の音速 の挙動を調 べたが、 顕著な変化は現れなかった。さらに 密 度測定の 結果を考 慮に入れ て圧縮率の 挙動を調 べたが、低濃度の水溶液では顕著な 変 化はみら れなかっ た。

‑ 241

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7

.結語一第六童

  

ゲル化にともなって音速は減少することがわかり、音速を測る事によルジヱラン水 溶 液 の ゾ ル 状 態 と ゲ ル 状 態 と を 明 確 に 区 卿 す る 事 が 出 来 た 。

  

ジェラン分子鎖の無秩序なコイルから秩序だったへりックス構造への形態変化に引 き続いてゲル形成が起こる事が明らかになった。そして、音速の減少は分子内形態変 化に引巻起こされるものである事が示唆された。

  

ジェラン水溶液のゲル化過程においては、粘弾性的な観点から五っの安定した状慧 が 存 在 す る 事 が明 ら か に な り 、 そ れ ぞ れ の状 態 の 特 徴 付 け を お こ な っ た。

― ・242

(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

   Gelation of aqueous gellan solution as studied by ultrasonic velocity, vlscoelasticity        and circular dichroism.

( 超 音 波 音 速 度 、 動 的 粘 弾 性 、円 偏光二 色性 を 用 い た ジ ェ ラ ン 水 溶 液 の ゲ ル 化に 関する 研究 )

  植 物 産 生 粘 質 物 で ゲ ル 形 成 能 を 有 す る ジ ェ ラ ン ・ ガ ム に つ いて そ の 水 溶 液 の ゲ ル 化 を 、 高 分 子 鎖 の 高 次 構 造 形 成 と 巨 視 的 な 弾 性 発 現 と の 関 係 、弾 性 発 現 の 粘 弾 性 的 特 徴 に 注目 し 、 そ の 機 構 を 解 明 す る 目 的 で 研 究 を 行 っ た 。

  申 請 者 は 先 ず 超 音 波 音 速 度 に よ る ゲ ル 化 の 観 察 は そ れ を 示 唆す る 報 告 が あ り な が ら も こ れ ま で 詳 細 に 研 究 さ れ た 例 が な か っ た が 、 本 研 究 に よ りそ の 実 験 的 手 法 を 確 立 し 、 ゲ ル 化 に 伴 う 分 子 鎖 の 水 和 状 態 の 変 化 か ら 説 明 で き る こ と を 示 し た 。   ジ ェ ラ ン は 微 生 物 産 生 の 細 胞 外 多 糖 類 で 繰 り 返 し 単 位 の 中 にカ ル ボ キ シ ル 基 を 一 個 含 む 高 分 子 電 解 質 で あ る 。 適 当 な 条 件 で 調 製 し た 水 溶 液 は 加熱 に よ り 水 に 溶 解 し 透 明 な 溶液 と な る ・ 。 す な わ ち 、 高 温 で ゾ ル 、 低 温 で ゲ ル化 する 。申 請者は 水溶 液の 音 速 を 測 定 し 、 同 時 に 落 球 法 に よ ル ゾ ル ― ゲ ル 転 移 を 観 察 し た。 音 速 測 定 の 結 果 、 ゲ ル 化 に 伴 い 音 速 は 特 異 的 に 減 少 す る こ と を 見 い だ し た 。 ま た温 度 の 下 降 ・ 上 昇 の 際 、 音 速 に 著 し い ヒ ス テ リ シ ス 現 象 が 出 現 す る 。 一 方 、 落 球 法か ら 定 め た 水 溶 液 の ゲ ル 化 温 度 は 、 音 速 の 減 少 す る 温 度 に 比 ぺ て ジ ェ ラ ン 濃 度 に 強く 依 存 し た 。 こ れ は ゲ ル 化 が 分 子 間 の 凝 集 に よ り 起 こ る こ と を 強 く 示 唆 し た 。 以 上の 結 果 か ら 音 速 測 定 に よ ル ジ ェ ラ ン 水 溶 液 の ゾ ル 状 態 と ゲ ル 状 態 と が 明 確 に 区 別 さ れ る 事 を 示 し た 。   次 い で ゲ ル 化 過 程 に お け る ゲ ル 形 成 能 と 分 子 鎖 の 形 態 変 化 との 関 係 を 円 二 色 性 の

仁 利

義 勝

田 田

長 新

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

測定から検討した。高温ではスペクトルは全く温度依存性を示さないが、ある温度 以下になるとスペクトルが急激に変化する。同一試料について音速を測定した結果、

ゲル化領域において音速は特異的に減少した。この温度は音速挙動から得られた特 異的温度と良く一致した。このことからジェラン分子鎖の無秩序なコイルから秩序 だったへりックス構造への形態変化に引き続いてゲル形成が生じることを明らかに した。また音速の減少は分子内形態変化を反映し、分子鎖の水和状態の変化から説 明できる事を示した。

  

ジェラン水溶液について音速挙動、円二色性との関連において動的粘弾性測定を 行った。種々の温度における溶液状態のカ学緩和を特徴付けるパラメ一夕ー、緩和 周波数、緩和強度、平衡弾性率を求める際に換算コール・コール・プ口ットが有効 であることが示唆された。低温においては周波数に依存しない貯蔵弾性率(ゲル弾 性率)が現れ弾性固体として挙動する。それよりも高い温度では粘弾性に周波数分 散が現れ粘弾性固体の性質を示し、低周波数範囲では平衡弾性率が出現し、周波数 分散がコール・コールの円弧型緩和に適合する。さらに高い温度になると分散は円 弧型から外れ、分散は非対称型緩和を示し、この挙動は拡張指数型の緩和関数を用 いて得られる計算値と非常に良く一致する事を明らかにした。両者の中間の温度に おいてゲルとゾルとの臨界状態にある特徴的な緩和挙動を示した。さらに高温領域 において水溶液は粘弾性液体から粘性液体に変化する。ジェラン水溶液のゲル化過 程は粘弾性的な観点から5 つの安定した状態が存在する事が示唆された。それぞれ の溶液状態における緩和機構の特徴とジェラン分子の高次構造との関連性を明らか にした。

  

本研究によルジェラン水溶液のゾルーゲル転移に伴う円二色性、音速および粘弾

性挙動とジェラン分子鎖の無秩序なコイルから秩序だったへりックス構造への形態

変化、引き続いて生じる高次構造の形成に関する基礎的知見が得られた。これらの

一連の成果は広く微生物多糖類の水溶液に観られるゲル形成の機構解明へのひとっ

の道を拓いた点で高く評価でき・る。よって、審査員一同は申請者が博士(理学)の

学位を得るのに十分な資格があると判定した。

参照

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